デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治13年1月20日（1880年）

是ヨリ先、敗裂銀行紙幣交換済廃札逓送方法及同予防方法ニ付キ協議ス。是日逓送方法ニ付キ上申ス。後又同予防方法ニ付キ上申セリ。

東京経済雑誌
　○第四号・第一二七頁〔明治一二年四月二九日〕
　　　　○択善会第二十二回録事
○中略
第七次、会頭ハ第四十四銀行ヨリ敗裂銀行紙幣逓送法ヲ大蔵省ニ稟候シ其指令ヲ得ルニ因テ、此会同ニ稟議スル所ノ一翰及ヒ該稟候文写ヲ展読シ、而シテ発議シテ云、此稟議ノ旨ハ至当ナルヲ以テ速ニ同盟連署シテ上申スヘキカ、若シ将タ再ヒ熟案シテ挙措スベキカ、各位ノ決議ヲ冀望スト、肥田昭作君答テ云、本案ハ本行ノ関係極メテ大ナルヲ以テ願クハ更ニ熟案ノ上後会ヲ俟テ商議セント、因テ会頭ト之ヲ第四十四銀行ニ回示シ、該行領意セリ

　○第五号・第一六七頁〔明治一二年五月二九日〕
　　　　○択善会第二十三回録事
○中略
第四次、肥田昭作君ハ会頭ニ報道シテ曰ク、前会第四十四銀行ヨリ敗裂銀行紙幣逓送法ノ為メ此会同ニ稟議スル者アリテ敝行ノ如キハ其関係尤大ナルヲ以テ審案ノ為メ後会ヲ俟テ答議スヘキコトヲ陳述セリ、後敝行按スルニ該稟議ノ旨ハ前日同盟ヨリ再三上申スル者アレハ、之カ指令アルヲ俟テ取捨スルハ如何、且思フニ同盟ノ上申スル者ハ本ナリ、該行ヨリ稟議スル者ハ末ナリ、宜シク本ヲ理シテ後ニ末ヲ修ムヘキナリ、然レトキ又諸君ノ取捨スル所アレハ之ヲ領聴シテ後ニ議スヘキナリト、会頭衆ニ問テ曰ク、今肥田氏陳述ノ如キハ大ニ其理アル者ナリ、而シテ第四十四銀行ニ在テハ元来其遅緩スルヲ欲セサルヘシト雖トモ、然レトモ先ツ上申ノ指令ヲ得テ、後ニ之ヲ議スル者ハ如何ト衆皆之ニ同意シ、該銀行モ亦敢テ要急セサルヲ以テ衆意ニ従ヒ施行スヘキ旨ヲ回答セリ

　○第一五号・第五七頁〔明治一二年一一月二九日〕
　　　　○択善会第廿七回録事
○中略
第四次、渋沢君ハ敗裂銀行紙幣逓送法稟候文案ヲ示シ、叢議シテ曰ク向キニ此会同ノ協議ヲ以テ敗裂紙幣交換法ヲ決定シ、大蔵省ノ允認ヲ得テ既ニ之ヲ施行スルニ因リ、又其交換済廃幣ノ逓送法ヲ設ケサルヘカラス、前日既ニ第四十四銀行ヨリ本件ノ意案ヲ商議セシカ当時未タ交換法ノ決定セサリシヨリ暫ク之ヲ後ニシタリ、今ヤ宜シク其法ヲ決
 - 第5巻 p.654 -ページ画像 
議シ諸銀行一般之ヲ施行スヘキニ際スルヲ以テ玆ニ本案ヲ発議スル所ナリト、乃チ原案ヲ宣読シテ議決ヲ求ム、肥田昭作君曰ク、毫モ本案ニ於テ異議スル所ナシ、但タ望ム所ハ逓送スル廃幣ニ於テ慎密ナル消印方法ヲ設ケテ一様ニ之ヲ守リ、諸行異同ナカランコトヲ要スト、辻金五郎君曰ク、聞ク所ニ依レハ消印ノ如キ通例ノ印肉ヲ用ユルトキハ石鹸汁等ヲ以テ洗除スルヲ得ヘシト、果シテ然ラバ其逓送途中ニ於テ盗奪奸作等ノ虞アルヲ免カレス、宜シク之カ厳防ノ方法ヲ設クヘキヲ要スト、肥田昭作君又曰ク、今消印法ヲ設クルヲ要スルト雖之ヲ本案ト倶ニ決定スルヲ求ムルニアラス、要スル所ハ本案ノ逓送法ニ次テ其方法ヲモ設立スルニアリト、渋沢君曰ク、諸君ノ議スル所極テ肝要ナル者ニシテ其方法ノ如キハ或ハ廃幣ニ孔ヲ穿チ或ハ他ノ方手ヲ以テ十分防奸ヲ要スルニ因リ諸君ト与ニ各考案ヲ設ケ後会ヲ俟テ之ヲ開陳シ其適当ナル者ヲ撰テ決定スヘシ、本案ノ如キハ之ニ先ンシテ議決スルヲ要スト、諸位原案ニ異議ナク、之ヲ連署上申スヘキコトニ決定セリ

　○第一七号・第五八六頁〔明治一二年一二月二五日〕
　　　　○択善会第廿八回録事
一　敗裂銀行紙幣交換済逓送予防法ヲ議シテ曰ク、前会議方法ヲ設クルノ議ヲ発シ今会ヲ期シテ各其考案ヲ示スヘキニ決定シタルニ因リ、後第一銀行・第二十銀行等ノ考案書ヲ得テ今之ヲ携持セリ、思フニ諸君モ亦必ス前議ニ背カスシテ考案スル所ノモノアラン、然ルニ此方法ノ決議ハ之ヲ全国ノ諸銀行ニ及スヘキヲ以テ、今タ衆議ヲ速了スルヲ得ス、再ヒ後会ヲ俟テ熟議スヘキハ如何ト、諸氏皆本議ニ同セリ

第一国立銀行半季実際考課状　第十三回　第一〇頁〔明治一三年一月一八日〕
一又同盟連署ヲ以テ敗裂銀行紙幣交換済廃札逓送ノ為メ盗難予防法ヲ設ケ、且並郵便ヲ以テ逓送スヘキ旨ヲ稟候ス、未タ指令ヲ領セス

東京経済雑誌
　○第二〇号・第九八―九九頁〔明治一三年二月一四日〕
○上略
第二次、会頭ハ諸位ニ告テ曰ク、昨臘十九日連名ヲ以テ大蔵省ニ上申セシ銀行敗裂紙幣逓送法之儀ニ付稟候ハ本年一月十六日駅逓局ヘ上申スヘキ指令アリ、然ルニ原牒洋墨ヲ以テ之ヲ写シタレハ只其官名ヲ改正シテ同局ニ上申スルヲ得サルヲ以テ改写シ、前例ニ照ラシ第一銀行総代トシテ其廿八日上申セリ、昨年月積金会計ハ上半季表下半季表歳計表等総テ印行シテ以テ頒付シ、同年十二月分ハ数部ヲ以テ輪閲ニ付シタリ、以上諸項ハ輪札ニテ照知スル所ナリ、前会後ノ処理ニ係ルヲ以テ此ニ再報ス
○中略
第四次、会頭ハ前会発議スル敗裂銀行紙幣交換済廃幣逓送予防法、第一銀行第二十銀行ノ両考案書ヲ示シ、併セテ諸行ノ考案ヲ問フ、蓋第一銀行ノ立案ハ鉄製打抜印ニ交換済ノ文字ヲ彫シ文字輸廓共断続宜ニ従ヒ其打穿シテ紙体ヲ断砕セシメサルノ法ナリ、第二十銀行ノ立案ハ廃幣ノ上辺ヲ存シテ其余幅ヲ分断スルノ法ナリ、三輪氏曰ク敝行略々
 - 第5巻 p.655 -ページ画像 
考案スル所ハ、縦横線ノ印ヲ造リテ廃幣ノ表裡ニ押捺スルノ意ナリ、会頭曰ク一説ニ拠レハ通常ノ印肉ハ刷洗シ得ヘキ恐レアリト、以テ予防ヲ得ス、市原氏曰ク、敝行ノ考案ハ幣面大蔵卿ノ印ヲ抜取ルヘキ意ナリ、原六郎氏曰ク、紙幣ニ用ユル精肉ヲ以テ消印スルヲ要ス、若シ紙幣ニ用ユル者ト同色ヲ不可ナリトセハ新ニ別色ヲ要求スヘシ、辻氏之ヲ駁シテ曰ク、精肉ハ燥湿常ナラスシテ其用法極メテ難ク永ク貯フヘカラサル者ナリト、種田氏曰ク、敢テ其預防印式ヲシテ同一ナラシムルヲ要セス、現在諸銀行同一ヲ得ルト雖トモ、将来又幾銀行ノ興ルヲ計ルヘカラス、諸氏或ハ駁シ或ハ弁シ或ハ質シ互ニ以テ研究セリ、会頭曰ク、打抜印押截断ノミ三法議題トナル者ナリ、宜ク其一ニ決定スヘシ、原六郎氏更ニ議シテ曰ク、打抜印ノ法ニ従フヘシト、衆皆之ニ同セリ、会頭曰ク、印法既ニ一定スルヲ得タリ、宜シク又印文形容ヲ一様ニスルヤ否ヲ議定スヘシト、皆曰ク、一様ニ従フヲ要スト、独種田氏従ハスシテ曰ク、之ヲ一様ニスルハ果シテ何等ノ理由カアルト会頭曰ク、若シ其レ一様ナルヲ得ハ互ニ其式様ヲ照知スルノ煩ナカルヘシ、然ラサレハ全国百五十有余ノ銀行ニ於テ誰レカ能ク一々式様ヲ記臆スル者カアル、試ニ問フ、各自別様ナレハ果シテ何等ノ便利アリトス、小子諸君ノ意中ヲ洞見スルヲ得スト雖トモ、諸君相共ニ同式ヲ要スルハ安ンソ其一目瞭然タルヲ欲セサルニアランヤ、故ニ諸君ニ代テ之ヲ弁スルナリト、而シテ又印文形容ヲ議定スルヲ求ム、三輪氏曰ク、ケシインノ字ヲ用ユヘシ、而シテ之ヲ諸銀行ニ照知スルヲ要ス、辻氏此説ニ同シ、而シテ其字形輪廓ノ如キハ敢テ細議ヲ須ヒス、幹事ニ任シテ妥定スルヲ論ス、原六郎氏曰ク、輪廓ノ分寸ニ至テハ千態万状ノ敗幣ニ打抜キ得ラルヘキ分寸ヲ度ツテ製造スルヲ要スト、会頭曰ク、既ニ此ノ如クナレハ輪廓内ケシインノ字ヲ刻スルト定メ、其式様ヲ図シテ幹事銀行ヨリ照知スヘキカ、諸位之ヲ可トス、会頭曰ク、然ラハ其式様及ヒ照知文案ヲ設ケ、而シテ駅逓局ノ批准ヲ俟テ之ヲ大蔵省ニ開申シ、交換規則ノ如ク処理スヘキヲ以テ諸君之ヲ領セヨト、衆皆領意セリ

　○第二二号・第一七五頁〔明治一三年三月一五日〕
　　　　○択善会第三十次会録事
○中略
第一次、会頭渋沢君ハ会務数件ヲ報告ス、其一ニ曰ク、敗裂銀行紙幣逓送預防打抜印方法ハ前会其大要ヲ決議シ、後又輪札ヲ以テ其図式及大蔵省駅逓局ヘ上申スルノ文案ヲ議シ、第二十銀行修正説ニテ駅逓局ヘノ上申文案中預メ其逓送法ヲ各地郵便局及取扱所ヘ照知ヲ乞フノ文意ヲ刪除スルヲ除クノ外、尽ク原案ノ如ク決議セリ、其二ニ曰ク、昨年十二月十九日連名稟請セシ当坐小切手印税ノ件ハ前月二十八日允准セラレサルノ指令アリ、因テ幹事銀行ヨリ之ヲ大坂銀行会ニ通知スヘシ、諸君之ヲ領セヨ、其三ニ曰ク、前会決議ノ為替日附ヲ設クヘカラサルノ件ハ爾後大坂銀行会ニ回答セリ、未タ其従違ヲ領セス

第一国立銀行半委実際考課状[第一国立銀行半季実際考課状]　第十四回　第九―一〇頁〔明治一三年七月一九日〕
一一月廿日、択善会同盟連署シテ駅逓局ニ申牒シ、銀行敗裂紙幣逓送
 - 第5巻 p.656 -ページ画像 
方法ヲ稟候ス、因テ尋問セラルヽ所アツテ遂ニ二月十二日ヲ以テ該紙幣ハ帯封ヲ以テ郵送スルヲ許サス、但タ糊封郵送ヲ禁セス、而シテ封上敗裂紙幣等ノ字ヲ記スヘカラサル旨ヲ指令セラレタリ