デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治19年3月26日（1886年）

銀行集会所ニ於テ同盟銀行臨時集会開カル。栄一出席シ預金利息ノ協定ニ付協議ス。衆議一致セルモ後反対アリ、ヨツテ本案ハ姑ク之ヲ中止ス。

集会録事　従明治十五年第一月　（東京銀行集会所所蔵）
　　　　○臨時会録事
明治十九年三月二十六日、同盟銀行臨時集会ヲ開キ、来会スルモノ二拾五名ナリ、委員第一国立銀行頭取渋沢栄一氏ハ各位ニ告ケテ曰ク、本日諸君ノ協議ヲ要スルハ当座預金利息ノ件ニ係レリ、本件ハ昨廿五日委員会ヲ開キ本日ノ会議ヲ必要ナリト議了シタルニ因リ、卒ニ各位ノ来会ヲ請ヒタル所ナリ、元来預金利息ノ如キハ各行便宜ニ高低スヘク敢テ約束ヲ以テ一定スル事ハ甚タ易カラサルモノナリト雖トモ、大阪同盟銀行ノ如キハ同盟外許多ノ私立銀行アルヲ以テ其約束モ殊ニ難事ナリト思惟セシニ、敢テ障碍セシ所ナク其約束ノ行ハレシヲ以テ之ヲ見レハ、我同盟銀行モ亦一致共同シテ預金利息ヲ一様ニ低落スルモ又難事ニアラサルヘキヲ以テ、各行均シク其割合ヲ低減シ、四月一日ヨリ画一改定スルモノハ如何ト、此ニ於テ衆論群起各意見ヲ陳述セシカ、要之議案ニ従違スルノ二派タルニ過キス、渋沢氏曰ク、議案ヲ賛成セラルヽモノ多数ナリト雖トモ、其不賛成者ノ説モ亦以テ大ニ理アリトス、小子以為ラク、各自境遇ト事情ト一ナルヲ得サルカ為メニ其営業ノ事項ヲ一切同一ニ約束セントスルハ到底為シ能ハサルモノナレハ、本議ノ如キモ敢テ多数ヲ以テ小数ヲ制セントスルハ固ヨリ望マサル所ナリ、因テ利息最高ノ極度ヲ定メ、同盟約束シテ之ヲ確守スルモノハ如何ト、各位之ヲ可ナリトシ、而シテ其極度ヲ定ムルモノ、或ハ四分ト為シ、或ハ三分六厘トスルノ二説ニ分レ、遂ニ四分ノ説ニ定マリタリ、然ルニ本日来会セサルモノアルヲ以テ、之ヲ一決スルヲ得ス仍テ本議ノ顛末ヲ将テ其来会セサル所ノ各行ニ照知シ、其同意ヲ俟テ四月一日ヨリ約束ニ依ルヘキコトニ決議セリ
　補録本文来会セサリシ各行ヘ照知シタリシニ、数行ノ内不同意ヲ執ルモノアリテ竟ニ一決ヲ得ス、故ニ本案ハ姑ク中止スルモノトセリ

委員決議　自明治十六年至同廿二年　（東京銀行集会所所蔵）
明治十九年三月三十日　(印)
　　委員栄一印(印)(印)(印)(印)
 - 第6巻 p.127 -ページ画像 
　　本月二十六日臨時集会ニ於テ御協議有之候当座預金利息一様ニ逓減ノ義ニ付、欠席相成候数行ヘ御協議ニ及候処、第三銀行等ニテハ大ニ不同意ヲ陳ヘラレ、協議相成兼候ニ付、同盟銀行ヘハ左按ノ通輪札ヲ以テ（又ハ郵便）御通知相成候方可然ト奉存候、此段相伺候也
以輪札啓上仕候、陳ハ本月二十六日臨時集会ニ於テ協議相成候当座預金利息一様逓減ハ、当日欠席数行ノ内不同意ノ向モ有之候ニ付、当分右議案ハ其儘中止致候方と存候、又当日御協議相成候銀行損札交換手数料廃止ノ義ハ、一同異議無之ニ付、来ル五月一日ヨリ実施相成度、則チ大蔵省ヘ御届いたし、且各地国立銀行ニモ夫々通知致置候、右御通知申上候也
　　年　月　日　　　　　　　　　　　　　　銀行集会所