デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

1章 金融
1節 銀行
6款 択善会・東京銀行集会所
■綱文

第6巻 p.154-156(DK060045k) ページ画像

明治20年12月24日(1887年)

是ヨリ先、諸証書ヘ実印押用ノ旨大蔵大臣ヨリ達シアリ。是日臨時集会ニ於テ原六郎ハ右ノ不可能ナル旨ヲ述ブ。栄一出席シ本件ヲ上申スベキ旨ノ意見ヲ述ブ。衆亦異議ナシ。依ツテ後日上申シ一度却下セラレタルモ後ニ至リテ役印押用不苦旨ノ達シアリタリ。


■資料

銀行通信録 第二五号・第九―一〇頁〔明治二〇年一二月二八日〕 臨時集会録事(DK060045k-0001)
第6巻 p.154 ページ画像

銀行通信録 第二五号・第九―一〇頁〔明治二〇年一二月二八日〕
    ○臨時集会録事
○十二月廿四日、午后五時ヨリ同盟銀行臨時会ヲ開キ来会スル者卅一名ナリ、委員正金銀行頭取原六郎氏ハ起テ諸氏ノ来会ヲ謝シ、本日臨時会同ヲ催シタルハ去ル十五日大蔵大臣ヨリ達セラレシ諸証書ヘ実印押用ノ事ニ付協議セント欲スルニ在リ、右ハ是迄各行区々ニシテ一定セサリシカトモ今回ノ御達アリシ上ハ均シク実印ヲ使用セサルヲ得サルナリ、然ルニ弊行ノ如キハ其取扱頻繁ニシテ必ス自記調印ヲ要スルコトハ到底能ハサル処ナルヲ以テ、各位同感ナレハ充分議ヲ尽シ、便利ノ方法アランコトヲ希望スル旨ヲ発議セシニ、一同々感ヲ告ケ、又第一国立銀行支配人佐々木勇之助氏云、本行ニ於テハ従来諸証書ニ頭取支配人連署ノ例ナリシカ、爾来之ヲ止メ、支配人並ニ計算方之ニ記名調印スヘキ見込ナル旨ヲ述ヘ、其他諸氏各々意見ヲ陳述シテ其記名調印方ニ付種々評議中、第一銀行頭取渋沢栄一氏モ亦来会シ、本件ハ已ニ日本銀行ニ於テモ同感アリト聞ケハ篤ク同行ヘ協議ヲ経テ其筋ヘ内稟ヲ試ミ、然ル後何分ノ協議ヲ為スヘキトノ意見ヲ述ヘシニ一同此議ヲ賛成セリ

 - 第6巻 p.155 -ページ画像 

諸達願並指令綴込 第一号・自明治十一年―明治三十三年(DK060045k-0002)
第6巻 p.155 ページ画像

諸達願並指令綴込 第一号・自明治十一年―明治三十三年
                 (東京銀行集会所所蔵)
客年十二月十五日、第五八壱九号ヲ以テ諸証書ニ押用スル印章之儀ハ、是迄役印相用候向モ有之候処、右ハ明治十年七月第五十号、同九月第六十四号布告之通実印ヲ用フヘキモノニ付、自今総テ実印押用可致儀ト相心得可申旨御達之趣敬承仕候、然ルニ各国立銀行ニ於テハ創立之節ヨリ役印ヲ彫刻シ発行紙幣株券等ヲ始メ都テ記名調印ヲ要スル諸証書類ニハ役印ヲ押捺致シ来リ候処、取扱上却テ公私之区別相立チ便利不尠候ニ付、各銀行ニ限リ従前之通役印相用候様仕度候間、特別之御詮議ヲ以テ御許可被成下度同盟銀行一同ノ決議ニ依リ此段奉懇願候也
  明治二十一年一月十八日       銀行集会所
    大蔵大臣 伯爵 松方正義殿
第四七三五号
願之趣詮議ニ及ヒ難シ大蔵大臣之印
  明治廿一年十月廿五日


銀行通信録 第三七号・第一六頁〔明治二一年一二月二八日〕 第八十九回定式集会 ○明治二一年一二月一五日(DK060045k-0003)
第6巻 p.155 ページ画像

銀行通信録 第三七号・第一六頁〔明治二一年一二月二八日〕
    ○第八十九回定式集会 ○明治二一年一二月一五日
一嘗テ同盟銀行評議ニ依リ大蔵大臣ヘ出願シタル役印押用ノ件ハ詮議ニ及ヒ難キ旨指令セラレ、前会已ニ之ヲ報道セシカ、此回大蔵省坤第六九〇一号ヲ以テ自今適宜役印押用不苦旨ヲ達セラレ、本会ノ素望是ニ於テ貫徹シタル結果ヲ報告セリ


中外物価新報 第二〇〇六号〔明治二一年一二月五日〕 役印の押用を許さる(DK060045k-0004)
第6巻 p.155-156 ページ画像

中外物価新報 第二〇〇六号〔明治二一年一二月五日〕
    役印の押用を許さる
銀行及銀行類似会社に於て諸証書に押捺する印章ハ、当初孰れも役印を用ひ来り、其後去る明治十七年七月第五十号同第九月第六十四号を以て実印を押用すべき旨の布告あり、然れども各銀行にて日々取扱ふ為換証書・送金手形・預金手形・当座取引通帳其他類百千通の書類に一々実印を押用するハ啻に不便極るのみならず、各国立銀行より其資本に応じ已に世間に発行したる一円・二円・五円・十円・二十円等の紙幣にハ其表面の左右に頭取・支配人の姓名を記し、其下に役印を押捺しあれば諸証書の印章にも相変らず役印を用ひ、殆んど黙許の姿となりありしに、昨年十二月大蔵省訓令六十八号を以て必らず実印を押用すべき旨厳達ありしかば、京浜間其他の銀行家ハ曩に坂本町銀行集会所に参集して互に実際上の困難を縷述し、其筋へ歎願書を差出せしも去る十月下旬聞届け難き旨の指令ありしかば銀行家の落胆大方ならず、左りとて此上別に好手段もあらざれば近頃追々実印に改めたる銀行もある由を聞込居りしに、日本銀行にても矢張他の銀行と同様否一層数多き諸証書に重役が一々実印を押用するハ到底為し得られざるの事情を大蔵大臣へ稟請せられし処、本日の官報欄内にも掲ぐる通り同
 - 第6巻 p.156 -ページ画像 
省にてハ右の請願を聴納して役印の押用を差許されたれば当業者ハ何れも其便利を喜び合ひ居れる由