デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治24年3月16日（1891年）


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是ヨリ先、為替券切断発送ノ件ヲ協議ス。是日右ヲ再議ニ付シ討議セシモ遂ニ廃按ト決ス。

会議録事　　自明治二十二年一月至明治二十三年十二月　（東京銀行集会所所蔵）
　　　　○第百八回同盟定式集会録事○明治二三年一二月一五日
次ニ第百三十二国立銀行、都合ヲ以テ退盟申出タレハ規程第二十条ニ依リ許諾スヘキコトヲ報告シ、夫ヨリ本議ニ移リ為替券切断発送ノ件ヲ協議ニ付シテ謂ク、抑本案ハ本年九月中前島逓信次官ノ照会ニ係ルモノニシテ、従来為替券ヲ発送スルニハ盗難等ヲ避ンカ為メ、書留ノ手続ヲ為シテ之ヲ郵送スト雖、往々盗難ノ憂ヲ免レサルヲ以テ、近時英国ニテ専ラ奨励シアル処ノ方法ニ倣ヒ、為替券発送ノ際、印章及緊要ノ文字ニ係ラサル様之ヲ切断シ、其一片ヲ甲便ニ付シ、他ノ一片ヲ乙便ニ付スルコトヽナサハ、容易ニ窃取セラルヽコトナカルヘキヲ以テ其方法ヲ奨励セント云ニアリシカ、或ハ国立銀行条例第九十一条ニ抵触スルノ嫌ナシトセサレハ、当時其趣ヲ以テ回答シ置タレトモ、本条ノ精神タル畢竟銀行ヲ保護セラレタルモノナレハ、其方法ニヨリ或ハ妨ケナキカ如ク再案セシヲ以テ、今諸君ニ協議ヲ要スル所以ナリ
　長谷川一彦氏曰、為替券発送ノ際切断シテ甲乙両便ニ之ヲ発送スルトセバ甲ハ船便ヲ以テシ、乙ハ陸便ヲ以テ発送セハ如何
会長曰、海陸両便ヲ以テ発送セハ或ハ之ヲ防キ得ヘキカ如シト雖、実際至難ノコトナラン
　佐々木勇之助氏曰、国立銀行条例第九十一条ハ銀行ヲ保護スル点ヨリ切断スルコトヲ禁シタルモノナレハ、敢テ当路ノ経伺ヲ要セスシテ可ナリ、且之ヲ実施スルモ銀行者ヨリ勧誘スルニ及ハサルモノト思考セリ
　三輪信次郎氏曰、果シテ之ヲ便利トナシ実行スルモ依頼者ニ不安ノ念慮ヲ発セシムルノ憂ナキヤ、如何トナレハ為替券ヲ切断スルモノハ其銀行ニ向テ十倍ノ金額ヲ弁償セシムルノ明文アレハナリ
会長曰、本条ハ銀行ヲ保護スルモノナレハ、依頼者ニ左ル杞憂ヲ懐カシムルコトナカルベシ、何ントナレハ銀行ニテ割印ヲ為シテ之ヲ交付スレハ、切断ノ責ハ銀行ニアルコト自ツカラ判明ナレハナリ
　佐々木勇之助氏曰、仮令之ヲ便利ナリトスルモ銀行ヨリ之ヲ奨励スルハ、甚タ宜シカラサレハ依頼者ノ意ニ任スルコトヽナサンコトヲ望ム
会長曰、本案ハ至急ヲ要スル件ニアラサレハ其便否得失ハ諸君ノ熟慮ヲ俟チ、次会ニ於テ協議シテハ如何一同々意ニヨリ之ニ決ス
　　　　○第百十一回定式会議録事
　　　　　　　　　　　　　　　　　　栄一印　(印)
夫ヨリ会長○渋沢栄一ハ前会ノ協議ニ係ル為替手形切断発送ノ件ヲ再議ニ付シ、其取調ヲ嘱托セシ佐々木慎思郎氏ヨリ説明スヘキ旨ヲ告ク
佐々木慎思郎氏曰、小子モ充分調査セシニアラザレトモ、外国ニ於テハ斯ル事例ナキカ如シ、故ニ強テ之ヲ勧誘センヨリハ寧ロ組手形ヲ用ユルノ安全便利ナルニ如カストシテ本案ノ効用十分ナラサル旨ヲ述ヘシニ、佐々木氏ト意見ヲ同フスルモノ多数ナルヲ以テ、会長ハ一時本
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議ヲ中止廃案トスヘキ旨ヲ示シ、衆皆同意シテ之ニ決セリ
　　　　為替券切断発送ノ議案
従来為替券ヲ発送スルトキハ、逓送途中盗難其他ノ危険ヲ避ンカ為メ書留ノ手続ヲ為シテ郵送スルヲ通例トスレトモ、多数ノ手ヲ経過スル内ニハ或ハ窃取セラルヽ事往々ニシテ之アリ、夫カ為メ手形発送人ノ便利ヲ欠クノミナラス、手形ヲ振出シタル銀行及逓送主管ノ筋ニ於テモ手数ヲ要スルヲ以テ其安全ヲ期センカ為メ玆ニ一案ヲ提出シテ各位ノ意見ヲ問ハント欲ス、抑本案ノ方法ハ近時英国等ニテ専ラ行ハルヽ処ノ手形切断発送法ノ意ヲ斟酌シタルモノニシテ、別紙雛形ノ如ク為替手形及送金手形面緊要ノ文字或ハ印章ニ係ラサル様券面中央ニ……ヲ施シタル用紙ヲ使用スルコトト為シ、而シテ其手形発送ノ節之ヲ切離シテ其一片ヲ甲便ニ其一片ヲ乙便ニ付スルコト為スカ故ニ容易ニ窃取セラルヽノ憂ナキノミナラス此方法ニ依レハ書留料ヲ省略シテ安全ヲ期スルノ利益アレハ一般ニ実施セラレンコトヲ希望スルナリ、然ルニ或ハ国立銀行条例第九十一条ニ抵触スヘキヤノ懸念モ之アリト雖、本条ノ精神ハ他人カ悪意ヲ以テ銀行ニ対シ、或ハ改描或ハ詐偽ノ行為ヲナサンコトヲ保護セラルヽニ外ナラサルヘシ、且本案ノ如キハ手形ヲ切裂クトハ云ヘカラスシテ謂ハヽ其製作法ニ注意ヲ加ヘタル迄ノモノニテ、其旨趣一般ノ安全ヲ期スルモノナレハ此方法ニ依リ実施スルモ本条ニ対シ敢テ妨ナカルヘシ
　但本議ヲ施行スルニ付、同盟銀行ノ議決ノミニテ直ニ施行スルカ又ハ大蔵大臣ヘ経伺スルカ

　（欄外朱書）
　廿三年十二月十五日定式会議ニ於テ委員長ヘ提出
　廿四年三月十六日定式会議ニ於テ廃案トナル(印)
（表面）
　　　　　送金手形
　　　　　　　　　　　依頼人
甲（番　）　　　　　　　　　何之誰出
　　金何円也
　右金高正ニ受取候ニ付此代リ金於其地何　之　誰殿又ハ此甲乙両紙持参人ヘ御払渡可被下候也
　明治何年何月何日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　何々銀行
乙（番　）何々銀行御中
（乙裏面）
　　　　　　心得書
　一此手形ハ逓送中紛失又ハ盗火難等ノ災厄ヲ免レンカ為メ、甲乙両片ニ割キ用ユルヲ得ル、故ニ之ヲ甲乙弐通ト為シ、時ヲ違ヘ或ハ日ヲ異ニシ（壱通ハ午前壱通ハ午後ト為スカ如シ）差出ストキハ並郵便ニ委スルモ遭難ノ憂ナカルヘシ
　一此手形ハ甲乙両片紙相待テ完全ノモノトナル故ニ、一片紙ノミニテハ無効タルヘシ
　一此手形ヲ両片ト為シ、用ヒタルトキ一片紙紛失又ハ盗火難等ニ罹リ、当銀行ニ於テ其事由ヲ当然ト認ルトキハ、頼人ヨリ其事由ヲ記シタル証人連署ノ証明書ヲ徴シ、前ノ手形ヲ取消シ、更ニ新手
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形ヲ製シ相渡スヘシ