デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.3.6

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

1章 金融
1節 銀行
6款 択善会・東京銀行集会所
■綱文

第6巻 p.286-288(DK060077k) ページ画像

明治24年11月16日(1891年)

是ヨリ先、大蔵省ヨリ日本銀行総裁ヲ経テ堆積銅貨使用方案ニ付キ諮問セラル、此日日本銀行ヘノ答申案ヲ決議ス。


■資料

集会録事 自明治二十四年一月至明治二十五年十二月(DK060077k-0001)
第6巻 p.286-288 ページ画像

集会録事  自明治二十四年一月至明治二十五年十二月 (東京銀行集会所所蔵)
            栄一印
    ○第百十五回同盟銀行定式会議録事 ○明治二四年九月一五日 (印)
次ニ会長○渋沢栄一ハ堆積銅貨使用方法ニ関シ今回其筋ヨリ諮詢有リシニ付、其流通方法ニ於テ良策意見有レハ之ヲ陳述センコトヲ求議セリ
 - 第6巻 p.287 -ページ画像 
安藤浩氏曰、千葉・茨城地方ハ全国中銅貨最多キ所ニシテ、国庫収納ハ概ネ銅貨ニシテ、其運用ニ苦シム実ニ一日ニアラザルナリ、蓋シ其原因タル、一体ニ銅貨ノ過多ナルト、該地方ノ小売商人東京ヨリ多ク銅貨ヲ持行トニ在ルモノヽ如シ
佐々木慎思郎氏曰、弊行ニ於テハ多ク銅貨ヲ受取ラサルヲ以テ其詳細ハ知ラスト雖、要之其多饒ナルハ一般ノ認知スル所ナリ
三輪信次郎氏曰、当銀行ハ鉄道会社ヨリ日々銅貨ヲ入レ、殆ント其使用ニ窮スルカ為メニ止ヲ得ス日々五円位ノ打歩ヲ出シテ交換スルヲ常トセリ、一般銅貨ノ過多ナルハ蔽フヘカラザル事実ナルカ如シ
肥田景之氏曰、九州辺モ亦其多キニ苦シミ、現ニ当銀行鹿児島支店ノ如キハ従来沖縄地方ニ於テ紙幣ノ通用ナク重ニ銅貨ヲ用ユルヲ以テ、便船毎ニ多数ノ銅貨ヲ輸送セシカ、該地人民モ已ニ紙幣ノ便利ナルヲ感シ、漸次銅貨ヲ返送シ来リ、鹿児島支店ハ銅貨庫中ニ堆積スルニ因リ、少シク之ヲ出ストキハ還タ日ナラス入テ旧ニ復シ、畢竟其手数ヲ労スルニ過スシテ殆ト運用ニ困却セリ
山本達雄氏曰、先年中日本銀行ニ於テモ沖縄地方ヘ役員ヲ派シテ取調ヲ為セシコトアリシカ、今聞ク所ト同様ノ結果ニシテ、其人民ハ百円ノ銅貨ヲ銀行ニ付シテ紙幣ト交換スルトキハ三十銭位ノ勘定不足ヲ生シ、加之一円三四十銭ノ打歩ヲ引去ルヲ以テ百円ノ銅貨ハ九十八円三四十銭ト交換スルニ過キス、而シテ銀行ヨリノ支払ニ勉メテ銅貨ヲ用ユルトキハ還タ来テ之ヲ引換ヒ、且人民ハ銀行ニ於テ唯打歩ヲ利スルカ如クニ感想セリ
 三輪信次郎氏曰、要之此堆積銅貨ヲ流用スル方法ハ咄嗟良考案モアラサレハ、尚二三週間ノ猶予ヲ与ヘラレタシ
会長曰ク、本案ニ対シ今俄ニ良法モ出テサレハ尚一二週間内ヲ以テ各員熟考シ、良案有ルヲ得ハ当集会所ヘ開陳セラルヘシ、委員ハ之ヲ審査シテ其筋ヘ復申スヘシト、衆之ヲ領意シ、午後十時下散会セリ
    当日出席員
       第一国立銀行 渋沢栄一   ○他二四名氏名略
    ○第百十六回定式会議録事 ○明治二四年一〇月一五日
                       (印)
次ニ前議ニ係ル堆積銅貨散出策ニ付、各自ノ意見ヲ述ヘ且討議スル処アリシカ、要之銀行本支店所在ノ地ハ即概ネ都会広邑ナルカ故ニ自然小貨幣ノ集湊シ、人皆其多キヲ感スルト雖、山村僻地ノ鉱山、若クハ工作場ニ至リテハ大ニ其欠乏ヲ告クルモノアリト云、蓋是小貨幣集散方法ノ宜キヲ得サルニ原因セスンバアラサル歟、尚其辺ニ付今日ヨリ一週間ヲ期シ各位意見ヲ提出スルヲ要ス、若シ其提出ナキトキハ委員ニ於テ取調ヘ、其筋ヘ答申スヘキコトニ決議シ八時下散会セリ
    当日出席員
      日本銀行客員   山本達雄 ○他二六名氏名略
    ○第百十七回定式会議録事 ○明治二四年一一月十六日
次ニ第二議案即補助貨幣聚散方法ニ付日本銀行ヘノ答申書案ヲ提シ衆皆異議ナク原案ヲ以テ速ニ日本銀行総裁ヘ答申スヘキ事ニ議決シ、午後十時退散セリ
 - 第6巻 p.288 -ページ画像 
    当日出席者
         第一銀行   渋沢栄一 ○他二六名氏名略


銀行通信録 第七二号・第六―八頁〔明治二四年二月二八日〕 第二議案 補助貨幣聚散方法諮詢ニ付日本銀行総裁ヘ答申案(DK060077k-0002)
第6巻 p.288 ページ画像

銀行通信録 第七二号・第六―八頁〔明治二四年二月二八日〕
第二議案
    補助貨幣聚散方法諮詢ニ付日本銀行総裁ヘ答申案
銅貨聚散方法ニ付曾テ御諮問ヲ蒙リ候儀モ有之候ニ付、爾後同盟銀行ハ再三会同ノ上種々評議ヲ尽シ候処、補助貨幣ノ必要ナル尚油ノ機械ニ於ケルカ如クニシテ其欠乏ヲ告クトキハ日常百般ノ小取引渋滞シテ忽チ差支ヲ生スヘク、又其供給過多ナルトキハ均シク取引上ニ弊害ヲ見ルニ至ルヘクシテ畢竟政府カ其鋳造ノ特権ヲ有セラルヽモ蓋シ其供給需要ノ平準ヲ保タシムルカ為メナルヘシト奉存候、然ルニ現今東京府下ニ於ケル銅貨流通ノ事情ハ九月中通貨報告書ニ詳述シタル如ク頗ル過溢ノ状況ナルニ付、尚各地方ノ事情ヲ詳カニシ、其需要以外ノ発行高ハ一時之ヲ引揚ケテ国庫ニ保存シ置キ、他日需要ノ起ルニ応シテ漸次供給セラルヽハ目下ノ急務ト相考候得共、此過不及モ時ト処トニ依リ大ニ其情態ヲ異ニスルモノアリ、仮令ハ商業取引活溌ナルカ若クハ生糸製茶等産出ノ時季ニ当リ其取引旺盛ナルトキハ補助貨幣ノ需要増加シテ忽チ欠乏ヲ告クルニ至ルアリ、又曩ニ小銭ヲ要セシ地方モ漸次開進スルニ随ヒ大銭ヲ望ムノ事情ヲ来シ都鄙ノ商店中ニモ小売営業ヲ為スモノハ其結果トシテ補助貨幣常ニ聚堆スルモ製造場ノ如キ許多ノ工夫ヲ使役スルモノハ反テ欠乏ヲ感スルノ類少ナカラサルヘケレハ其過不及ヲ観察スルノ方法ヲ設ケテ其実況ヲ知悉スルニアラサレハ適度ノ流通ヲ見ル能ハサルコトト奉存候、果シテ然ラハ自今貴行ニ於テ補助貨幣流通ノ事ヲ御統理相成、本支店及代理店ニ於テ其交換ノ方法ヲ設ケラルヽハ簡便適当ノ取扱方ニシテ啻ニ其流通ノ実況ヲ知ルニ便ナルノミナラス、其聚散宜シキヲ得ル蓋シ難キニアラサルヘキコトト奉存候
右ハ同盟銀行一同ノ意見ニ付此段答申仕候也
              東京銀行集会所
  明治廿四年十一月十七日    委員長 渋沢栄一