デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治25年1月6日（1892年）


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大阪同盟銀行ヨリ銀行家団体ヲ組織セントノ照会アリシモ、応ジ難キ旨ノ回答ヲナスベキコトヲ決議ス。

集会録事　　自明治二十四年一月至明治二十五年十二月　（東京銀行集会所所蔵）
　　　　○第百十九回定式会議録事　○明治二五年一月六日
次ニ大阪同盟銀行総代田中市兵衛、松本重太郎両氏ヨリ旧臘二十九日附書面ヲ以テ全国々立銀行大懇親会ヲ開キ、親睦ヲ厚フスルト共ニ銀行者間ニ於テ鞏固ナル一団躰ヲ組織シ、目下衆議院議員選挙ニ付大ニ運動スル処アラント欲スレハ、我同盟銀行ニモ同意ヲ望ムトノ照会アリシ旨ヲ陳ヘテ之ヲ衆議ニ付セリ
　園田孝吉氏曰、営業上ノ便利ヲ計ランカ為メ同業者ノ大会ヲ開クハ敢テ非トスル所ニアラサレトモ、政治上ノ運動ヲ為サンカ為メ銀行者トシテ大会ヲ開クカ如キハ業務柄如何アランカ、尤モ単ニ銀行者ノ運動ヲ要スルコトアラハ格別ノコトナリト雖、今日ハ斯ノ如キ時機ニ非ラサルナリ
　渋沢栄一氏曰、抑大阪ノ銀行者ハ熱心ノ余リ大会ヲ催サントノコトナルヘシト雖、蓋シ銀行者カ斯ノ如キ所為アルハ其本分ヲ過マリシノミナラス世人ノ嘲リヲ招クノ嫌アレハ、我同盟銀行者ハ寧ロ政治上ニ冷淡ナリトノ譏リヲ受クルモ之ヲ賛成スル能ハサルヘシ
　山中隣之助氏曰、紙幣消却ノ事ヲ以テ之ヲ開クハ既ニ我同盟ニ於テモ嘗テ其議ナキニアラサレトモ、今日政党ノ軋轢甚シキ時ニ当リ、銀行者カ斯ノ如キ団体ヲ組織スルコトアラハ或ハ政府ノ内命ナリ抔ト嫌疑ヲ招クコトナシトセサレハ、寧ロ此際ハ充分慎ムヘキノ時ナリト考フ
　中上川彦次郎氏曰、一個人ノ資格ヲ以テ運動スルハ敢テ差支ナシト雖銀行者カ一致ノ上団体ヲ組織スルカ如キハ誠ニ方角違ノ事ニシテ仮令大会ヲ開クコトアルモ到底一致ノ効能ナカルヘシ
会長曰、諸氏ノ説已ニ然リトスルトキハ、大阪ノ照会ニ対シ甚タ冷淡ナルカ如クナリト雖、来意ニ応シ難キ旨、回答スヘキノ外ナカルヘシト思惟セリ、衆意如何ト云ニ、皆同意ヲ表シタルヲ以テ、直ニ田中・松本両氏ニ対シ不同意ノ旨ヲ電報シ、尋テ回答状ヲ可差出事ニ決セリ