デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治26年10月14日（1893年）

是ヨリ先、全国各地ニ銀行団体ヲ組織スベキ方案ヲ決議シ、各国立銀行ニ照会書ヲ発シテ同意ヲ受ク。依ツテ先ヅ当組合銀行ヲ以テ関東銀行会ヲ組織セントシ、栄一委員ノ一人トシテ規程草案ヲ審議ス。是日来ル二十三日ヲ以テ第一回関東銀行会ヲ開催スベキコトヲ報道ス。

集会録事　自明治二十六年一月　　（東京銀行集会所所蔵）
 - 第6巻 p.328 -ページ画像 
　　　　○第百三十四回定式会議録事
明治廿六年七月十五日年後五時ヨリ同盟銀行定式会議ヲ開キ、渋沢委員長首メ来会スルモノ総テ二十名ナリ
○中略
次ニ全国々立銀行ニ適当ノ部署ヲ定メ、営業上諸般ノ協議往復ニ便ナランコトヲ望ム旨ヲ述ヘ、東京、大坂、九州、中国、四国等ハ既ニ同盟ヲ組織シテ各其団体ヲ成セリト雖、東海道、北陸道並ニ奥羽地方ノ各銀行ハ未タ之ナキヲ以テ、其最寄ニ於テ之ヲ組織セハ事大小トナク自他ノ便益ヲ得ヘケレハ、未タ其設ケアラサル地方銀行ニ対シ注意ヲ喚起シテハ如何、ト云フノ議ニ皆同意ヲ表シタルヲ以テ其照会向等ハ総テ常委員ニ一任スヘキ事ニ決シ、同七時三十分閉会晩餐ノ後退会セリ、当日出席員左ノ如シ
　　　　　　　　　第一国立銀行　　　渋沢栄一　○外一九名氏名略
　　　　○第百三十六回定式会議録事　○明治二六年九月一五日
次ニ本年七月同盟銀行定式会議ニ於テ決定シタル全国各地ニ銀行団体ヲ組織スヘキ方案ハ、之ヲ大別シテ、東京、大坂、中国四国、九州、名古屋、北越、奥羽、北海道ノ八区ト仮定シ、而シテ未タ団躰ノ設ケアラサル各地国立銀行ニ対シ之ヲ照会セシカ、皆同意賛成シテ其団躰組織ノ準備ニ着手セシ旨ヲ回答セシニ付、先ツ当地組合ニ属スル団躰ノ組織会同方法等ヲ規定セサルヘカラス、或ハ地方組合銀行ヲ現在ノ同盟ニ加入セシムヘシトノ説アレトモ、遠隔ノ地方ヨリ毎月来京スルハ頗ル不便有ルノミナラス、其経費モ亦随テ増加セサルヲ得ス、此ヲ以テ別ニ関東銀行会トモ称スヘキ一団躰ヲ組織セハ自他ノ便宜ナルヘシト思惟シ、爰ニ其規程草案ヲ設クルヲ以テ其大体ヲ議スルヲ要スヘキ旨ヲ陳フ、衆皆其大体ニ於テハ異議ナキヲ表スレトモ、但其独リ国立銀行ヲ団体ト為スハ甚タ妥当ナラサルヲ以テ私立銀行モ亦入会シ得ラルヘキ方法ヲ要スルトノ説全会一致ヲ以テ之ニ決シ、其草案上国立ノ二字ヲ刪除シ尚委員ニ於テ字句ヲ修正シテ之ヲ関東銀行会組合銀行ヘ知照シ開会ノ日確定スヘキ者ト為シ、而シテ目今本会ノ組合銀行タルモノハ東京同盟銀行ト予定ノ各地国立銀行トヲ以テスルコトニ定メ同七時閉会晩餐ノ後退散セリ
　　　　　　当日出席員
　　　　　　　　　第一国立銀行　渋沢栄一　○外三一名氏名略
　　　　照会書（八月四日）
国立銀行紙幣消却法ニ関係ノ件ニ付テハ専ラ当集会所ヨリ各御行ヘ御照会申上来候処、追々国立銀行営業期限ノ満了ニモ接近致候ニ付、今後ハ唯該消却方法ニ関シ候事項ノミナラス、営業上諸般ニ渉リ益共同一致ノ働ヲ要シ候時機ニ推シ移リ候様相考候、就テハ其最寄ノ便宜ニ従ヒ同業組合トモ可申様ノ者ヲ相設ケ、其団躰ヲ以テ相互間ノ通信往復ヲ開キ候様相成候ハヽ其一部ノ意向一途ニ出テ候ノミナラス、全国同業者中ノ意向モ随テ一轍ニ帰シ、今後何事ヲ御協議申上候ニモ自他ノ便益ヲ得候事不尠儀ト存候、現ニ当地並大坂、中国四国、九州ニハ夫々同盟会ノ設有之候ニ付、当集会所ノ推想ヲ以テ各地交通ノ便益ヲ謀リ、別紙之通区別ノ見込相立候ニ付、御参考迄ニ呈貴覧候、就テハ
 - 第6巻 p.329 -ページ画像 
最寄御同業者中御申合被下何分之御回示被下度此段得御意度如此御座候　敬具
○東京同盟銀行委員会　同会ハ本月六日午後五時ヨリ東京銀行集会所ニ開キ、委員渋沢栄一、園田孝吉、安田善次郎三氏ノ外、佐々木慎思郎、佐々木勇之助、三村君平ノ諸氏モ参加シ、関東銀行会規程草案ニ就キ審議ヲ為シ且ツ来ル十月廿三日東京ニ於テ開会スヘキ事ニ決シ、夫ヨリ銀行条例貯蓄銀行条例修正ノ件ニ付協議ヲ為シ同九時閉会セリ
　　　　○第百三十七回定式会議録事
明治廿六年十月十四日午後五時ヨリ同盟銀行第百三十七回定式会議ヲ開キ、渋沢委員長首メ来会スルモノ弐拾六名ナリ
渋沢委員長ハ会長席ニ着キ会議ニ先タチ前会ノ協議ニ係ル関東銀行会規程草案ハ本月六日委員会ノ修正ヲ経、且来ル廿三日第一期関東銀行会ヲ開クヘキニ決シ、之ヲ地方各組合銀行ヘ通牒シタルコト、曩ニ北越団躰ニ仮定シタル長岡第六十九国立銀行ハ便宜上関東銀行会ニ加入スルヲ要求セシニ因リ、二俣第百卅八国立銀行ノ例ニ傚ヒ委員之ヲ承諾シタル事、又第十五国立銀行取締役細川護久氏薨去ニ付浅野長勲氏ヲ其後任ニ撰定シタル旨同行ヨリ通知アリシ事等ヲ報道セリ
次ニ今回創設シタル関東銀行会ハ我東京同盟銀行ノ発起ニ係ルヲ以テ同盟銀行ノ支店ニシテ其本店関東銀行会ヘ加入セシモノハ其重複ヲ省キ独其本店ヲ以テスヘキヤ、又ハ其支店モ依然同盟ニ存スヘキヤノ議問ヲ発シタリシニ、衆説独本店ヲ以テシテ支店ヨリ出席要求スル時ハ則本店出席員トシテ参列スルヲ得ヘケレハ実際差支ナカルヘシト雖、今敢テ之ヲ除クハ穏カナラサルヲ以テ其支店ノ任意タルヲ可トスルニ帰シテ之ニ決スルニ因リ、乃チ会長ハ本議ニ関係アル支店ノ諸氏ハ本議ノ旨ヲ領セラレ、若シ其除名ヲ要スル者ハ来ル二十日迄ニ銀行集会所ヘ其由ヲ通知スヘキ旨ヲ告ケ皆之ヲ肯諾セリ
次ニ第一期関東銀行会開設以前私立銀行ノ加入ヲ望ム者ハ之ヲ加入スヘキカ或ハ時宜ニヨリ我ヨリ進ンテ勧誘ヲ試ムヘキヤヲ議問セシニ加入ヲ望ム者ハ之ヲ承諾スルモ妨ケナシト雖、若シ勧誘スルトセハ一二ノ銀行ニ止マラスシテ一般ニ及サヽルヘカラサレハ特ニ加入ヲ望ムモノニ限リ委員之ヲ許否スヘシトト《（衍カ）》ノ説多数ナルヲ以テ之ニ決セリ
次ニ第一期関東銀行会ヘ銀行条例及貯蓄銀行条例ニ対スル我同盟銀行ノ意見ヲ提出スルハ如何トノ議問ヲ発シ、且云銀行条例ハ曩ニ修正ヲ加ヘテ已ニ帝国議会ニ提出シタルコトアリシカ、今回ハ其修正案ヲ措キ単ニ其第五条即一人又ハ一会社ニ対シ資本金高十分ノ一以上ノ金額ヲ貸付、又ハ割引ノ為メニ使用スルコトヲ得ストノ規定ノ刪除ヲ要シ貯蓄銀行条例ハ実際無用ニ属スルヲ以テ全廃スルヲ要シ、之ヲ貴衆両院ヘ建議スヘシト異議ヲ為ス者アリ、云関東銀行会ノ成立スルヤ直ニ法律問題ヲ論議スルカ如キコトアラハ世人ハ必ス関東銀行会ハ両条例ヲ修正センカ為メ組織セシモノナラントノ推想ヲ起スヘシ、然レトモ必之ヲ提出セントナラハ充分ノ説明ヲ付シ、開会以前ニ各銀行ヘ送付シテ其熟慮ヲ要セサルヘカラサルモ到底其時日ナキヲ以テ宜シク之ヲ次会ニ譲ルヘシト、然ルニ本問題タル今突然提出スル者ニアラスシテ既ニ世人ノ脳裡ニ浸潤セシ問題ニシテ、殊ニ銀行者ノ利害著ルシキモ
 - 第6巻 p.330 -ページ画像 
ノナレハ他ノ非議ヲ招クノ恐アラサルヘシ、思フニ昨年銀行条例ノ議会ニ於テ否決セラレシハ其原因修正ノ価値ナキカ故ニアラス、提出ノ時機宜シカラサリシカ為メニシテ況ンヤ貯蓄銀行条例ノ如キハ当路ニ於テモ亦其完全タルヲ以テセサル者ノ如クナルニ於テオヤ、本年若シ提出セサルトキハ又其不便不利ヲ忍ヒテ一年ノ日子ヲ俟タサルヘカラス、要之銀行条例ハ単ニ第五条ノ刪除ニ止メ貯蓄銀行条例ハ全廃ノ意見ヲ提出スヘシトノ説多数ナルヲ以テ遂ニ之ニ可決セリ