デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

1章 金融
1節 銀行
6款 択善会・東京銀行集会所
■綱文

第6巻 p.395-397(DK060114k) ページ画像

明治29年3月16日(1896年)

日本銀行課税法案再度議会ニ提出サレタルヲ以テ、当所ハ明治二十五年ノ意見書ノ趣意ニ依リ意見ヲ発表スベキコトヲ決議ス。シカルニ明治三十二年二月ニ至リ日本銀行納税ニ関スル法律案可決サレ、翌三月法律第五十六号ヲ以テ公布サル。


■資料

集会録事 自明治二十六年一月(DK060114k-0001)
第6巻 p.395 ページ画像

集会録事 自明治二十六年一月  (東京銀行集会所所蔵)
    ○第百五十九回定式集会録事○明治二九年三月一六日
次ニ日本銀行課税法案ハ今回ノ議会ニ復タ提出セラレタレトモ、本案ニ付テハ当集会所ハ明治二十五年及二十八年ノ両度意見ヲ草シテ貴衆両院議員ヘ配付セシ所ナリ、元来金融市場ノ枢機ニ居ル同行ニ課税スルカ如キハ、取リモ直サス一般経済社会ニ課税スルト同一ニシテ、戦後経済多端ノ今日ニ於テハ最モ以テ不利益ノ事ニシテ、且従来ノ行掛リヲ以テ此際当集会所ノ意見ヲ発表スルハ尤以テ必要ノ事ナルヘシトノ議起リテ種々討議シ、結局其二十五年意見書ノ趣意ヲ以テ起草シ、併テ之ヲ発表スヘキコトニ決議シ、其起草ヲ会長ニ委托セリ
 - 第6巻 p.396 -ページ画像 

銀行通信録 ○第一五六号・第一六七六頁〔明治三一年一一月一五日〕 日本銀行課税(DK060114k-0002)
第6巻 p.396 ページ画像

銀行通信録
 ○第一五六号・第一六七六頁〔明治三一年一一月一五日〕
    ○日本銀行課税
日本銀行課税は前内閣の当時之を決行することに決定したるも、其方法は発行税、純益税及び単に同行の特権に対し一定の税額を定めて賦課するの三説に分れ、既に調査決了せるも何れを選ぶべきかは未定の由なるが、三法共に税額は多少異なるも何れにしても百五十万円内外なるべしと云ふ、されど新内閣が果して此を踏襲して決行すべきや否やは疑問なり

銀行通信録 ○第一五九号・第二三四頁〔明治三二年二月一五日〕 日本銀行納付金に関する法律案の成行(DK060114k-0003)
第6巻 p.396 ページ画像

 ○第一五九号・第二三四頁〔明治三二年二月一五日〕
    ○日本銀行納付金に関する法律案の成行
政府が第十三議会に提出せる日本銀行納付金に関する法律案の経過は前号の首欄に詳記せしが、一月十四日貴族院に於ける日本銀行課税案の審査特別委員会に於て金子堅太郎氏は日本銀行は同行本来の性質に於て為し得べからざる業務、即ち諸会社の株券を見返担保として貸付を為し、恰も動産銀行と同一の業務を執るは甚だ不都合と云はざる可らず、而して政府は遠からず動産銀行法案を議会に提出するやの説あり、若し同法案にして成立せば、日本銀行に及ぼす影響大なるは勿論之と同時に同行に賦課すべき税率を変更するの必要あるを以て、此処二週間許委員会を延期し動産銀行法案の提出を待て本案を議すべしと発議し、多数を以て延期に決したりしに、二月二日の委員会に於て金子堅太郎氏の発議にて、同案を日本銀行納税に関する法律案と修正し而して衆議院より送附せる発行税千分の十五を修正し、千分の十となし、其他は原案に決し、即日直に委員長より議長に報告せられ、去る六日右修正案は貴族院を通過して衆議院に廻附せられ、去る八日同院の議に上りしが島田三郎氏の動議にて其議事を延期することに決せり

銀行通信録 ○第一六〇号・第四一七―四一八頁〔明治三二年三月一五日〕 日本銀行課税(DK060114k-0004)
第6巻 p.396-397 ページ画像

 ○第一六〇号・第四一七―四一八頁〔明治三二年三月一五日〕
    ○日本銀行課税
衆議院が政府提出日本銀行納付金に関する法律案を修正して兌換券発行税千分の十五を課することに議決し、貴族院に送附するや同院は又之を修正して千分の十とし衆議院に廻附したることは、前号に記せしが、同院にては去る二月十七日貴族院の廻付案に対し、九十四に対する百即ち六の多数を以て不同意の決議を為して両院協議会開会を請求し、玆に同会を開くことゝなり、協議委員は
    貴族院
 曾我祐準 岡部長職 辻新次   三好退蔵 金子堅太郎
 毛利五郎 南郷茂光 富田鉄之助 武井守正 田中源太郎
    衆議院
 井上角五郎 石田貫之助 井手毛三 大岡育造 斉藤卯八
 鈴木重遠  柴四郎   安川繁成 阿部興人 島田三郎
と定まり、正副議長は、
 貴族院 議長 曾我祐準 副議長 岡部長職
 衆議院 同  鈴木重遠 同   石田貫之助
 - 第6巻 p.397 -ページ画像 
当選したり、而して去る二月二十一日の協議会に於ては各院委員互に相持して譲らず、遂に岡部長職、富田鉄之助、田中源太郎、島田三郎、大岡育造、井上角五郎六氏を特別委員として協議せしめしに、特別委員は千分の十二半とすることに協定し、翌二十二日協議委員総会を開きて之を報告したるに、異議なく其報告案を可決して各院へ成案の報告あり、衆議院にては翌二十三日其成案を可決して貴族院に送付し、同院は翌二十四日之を可決して裁可を奏請したり、其案を掲くれは即ち左の如し
    日本銀行納税に関する法律案
 日本銀行は兌換銀行券条例第二条第二項に該当せる保証に拠り発行する兌換券の毎一箇月の平均発行高に対し、其発行税として一箇年千分の十二半の割合を以て政府へ納税すへし、但し政府の特命に依り一箇年千分の十若は其の以内の利息又は無利息を以て政府又は其の他へ貸付けたる兌換券に対しては其の納税義務を免除す
 本法納税の義務は日本銀行の既に負担し及ひ将来に於て負担すへき他の義務と関係なきものとす
 納税期限は一箇年を両度に区分し前半季分を八月三十一日後半季分を翌年二月二十八日限り納むるものとす
右は去る十一日○三月法律第五十六号を以て公布されたり