デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

1章 金融
4節 保険
1款 東京海上保険株式会社
■綱文

第7巻 p.594-597(DK070076k) ページ画像

明治11年8月13日(1878年)

是ヨリ先、岩崎弥太郎海上保険事業ヲ経営セントセシガ官ノ允許ヲ得ザリシヲ以テ、栄一当同盟発起ニ加入セン事ヲ説ク。弥太郎全株高三分ノ一ヲ保有スルヲ条件トシテ之ニ応ズ。是日同盟会議ヲ開キ之ヲ承認スルト共ニ資本額ヲ追増スルニ決ス。


■資料

旧鉄道組合同盟海上保険事業開設ニ関スル決議(DK070076k-0001)
第7巻 p.594-596 ページ画像

旧鉄道組合同盟海上保険事業開設ニ関スル決議
                    (株式会社第一銀行所蔵)
明治十一年八月十三日海上保険会社創建ノ議ニ因テ、同盟会同ヲ設ケ左ニ記名スル人員出席セリ
                   九条道孝代理
                      朝山常順
                   井伊直憲井伊直安代理
                      金田師行
                   榊原政敬代理
                      塩谷正直
                   大村純熈代理
                      山川前耀
                   前田利嗣代理
                      北川亥之作
                   松平慶永代理
 - 第7巻 p.595 -ページ画像 
                      鈴木準造
                   松平茂昭代理
                      武田正規
                   久松定謨久松勝成代理
                      河東坤
                   山内豊範代理
                      広瀬実栄
                   徳川慶勝代理
                      井上喬
                      池田茂政
                   池田章政代理
                      水原久雄
                   松平頼聡代理
                      三宅十郎
                   毛利元徳代理
                      笠原昌吉
                   毛利元忠代理
                      柏村信
                   池田輝知代理
                      勝部静男
                   蜂須賀茂韶代理
                      林厚徳
                      亀井玆監
                 総理代人 渋沢栄一
                   欠席 前田利同
                      池田徳潤
総理代人渋沢栄一ハ本日要件ヲ議定スルカ為メニ、先ツ左ノ情由ヲ陳述シ、以テ議案ノ原因ヲ明カニス
 海上保険ノ事業ハ甞テ三菱会社ニ於テ専行ヲ主張セシカ、遂ニ官衙ノ允認スルニ至ラサリシ、此際我同盟ノ間該事業ノ妥議ニ出ツルニ因テ、小子ハ三菱社長岩崎ニ忠告スルニ、我同盟ニ加入スヘキヲ以テシ、且其得失ヲ弁論セリ、爾後尚照議ヲ経テ遂ニ之ニ服シ、我ニ同盟スヘキコトニ決定シ、已ニ本日同社員小野義真ナル者、訪来テ確答ヲ裁セリ、因テ再ヒ議スルニ、我同盟ハ海上保険ノ転案ヲ以テ旧資ノ足ラサル所、之ヲ他ニ募ラントセハ、幸ヒ三菱ハ独立ノ意ヲ転シテ我ニ同盟スルニ因リ、相当ノ資本ヲ出弁シ、且総体資本ノ定度、株主ノ数員、並該社創立ノ日、其役員設置ノ目的等ヲ建議スヘキコトヲ要スルヲ以テセリ、三菱之ニ答テ、役員設置ハ我カ撰定スルニ委セ異議ナシ、株高ハ五十万円モ猶多キヲ覚フ、而シテ三菱ハ其株高ノ三分ノ一ヲ有センコトヲ欲ス、新ニ株主ヲ募ルニ至テハ異議ナク、適宜之ヲ募ルモ妨ケナキヲ以テセリ
右ノ如ク三菱ト照議ヲ以テ、同盟協議シテ左ノ如ク決定セリ
 同盟各有スル所ノ旧鉄道資本金額ヲ減殺セサルヨリハ、新ニ設クヘキ総株高ノ三分ノ一ヲ三菱ニ有セシムルモ妨ケナシ、故ニ三菱社長岩崎弥太郎ノ加盟ヲ領諾スヘシ
 右ノ株金増額ト新加盟トノ情由ヲ以テ、更ニ願書ヲ作リ、之ヲ再申
 - 第7巻 p.596 -ページ画像 
シテ向前ノ願書還付アルヲ請フヘシ
 右願書ハ総理代人之ヲ起草シテ輪議ヲ発スヘシ
  ○「鉄道組合会議要件録附録」(第一銀行所蔵)ニ同様ノ記事アリ。


海上保険会社創立関係書類(DK070076k-0002)
第7巻 p.596-597 ページ画像

海上保険会社創立関係書類 (株式会社第一銀行所蔵)
(自筆)
拝啓過日光臨ニて御打合申上候保険会社之事ニ付華族方御集会之義者来ル十三日午後一時より相開申度右ニて貴方御差支ハ無之哉一応奉伺候、自然御不都合も候ハ、何日ニても日時来諭被下度又御差支無之候ハヽ同日午後二時迄ニ当銀行ヘ御抂駕之程奉願候此段可得芳意
                          早々頓首
  八月八日                 渋沢栄一
    小野義真様
  尚々同日御集会ニ於て先日粗御協議申上候通リ保険会社創立願書を引戻し更ニ岩崎君も発起連中ニ御加入之件衆議ニ附し協同之上其他之件々も打合候筈ニ付右等之義ニ付尚御心附も候ハヽ御垂示被下度且岩崎君へハ前段篤と御打合之上ニて御来臨奉願候 敬白

貴札拝見倍御清適奉敬賀候陳ハ兼而御内話御坐候一条ニ付来ル十三日午後一時より御集会云々御示之趣拝承仕候成丈繰合参上之積ニ御坐候処未タ少々相分兼候義御坐候間、甚自由ケ間敷恐縮之至奉存候へども御確答申上候義は明日迄御待合奉願度勿論右事件ニ付てハ少シも関議無御坐只小生右時日之繰合ニ付不得止御答申上兼候しかし今日ニも相分り次第早速可申上奉存候、此段不悪御承知之程奉願候右故貴答延引仕り謝罪無限候委細は拝眉御詫可申上右耳 匆々拝具
  八月十日                   義(花押)
    渋沢先生几下

過日之呈書ニ対し今朝之御細答拝承仕候、華族方之集会ハ弥以十三日と取究同日午後一時参集之筈ニ候間可成ハ御繰合御来会被下度(但老兄御出会被下兼候ハヽ弥之助君ニハ如何)もし又御来会無之とも頃日来再三御協議申上候通り此会社設立ニ付協同之考案ハ貴方ニも万御異案相生し候様之義無之と確信候間其見込ニて一同へ発言いたし合併之都合決議之運ニ取計可申候間兼而御承知可被下候、右更ニ拝答如此御坐候 匆々頓首
  八月十日                渋沢栄一
    小野義真様
  尚々岩崎君へ宜く御伝声奉願候也

貴答拝承弥明日御取極之よし、実ハ是非とも繰合陪席之積ニ御坐候へども不得已義御坐候間御散会迄は相勤兼候へども三時前迄ハ出席可仕奉存候、尤正一時ニ者必罷出可申候間、他之諸君も早々御来会被下候様御取計被成下候ハヽ本懐無限奉存候、猶委細は拝眉ニ尽し可申候
                          匆々拝具
  八月十二日                  義(花押)
 - 第7巻 p.597 -ページ画像 
    渋沢先生几下
  尚々兼而御相談仕候義者勿論聊も異存無御坐、此段為念認知申候也
  ○栄一岩崎弥太郎ニ海上保険企業ヲ勧メタルコトニツイテハ明治一一年五月一三日ノ項収載、竜門雑誌第二八二号明治四四年一一月「我国保険事業の濫觴」ヲ参照セヨ。
   ナホ岩崎弥太郎ハ既ニ明治一〇年頃ヨリ三菱商会ニ在テ海上保険ヲ独行セント計リシコトアリ。栄一之ニ反対シ大蔵卿大隈重信ニ陳述シ岩崎ノ自挙中止トナリタルコト、東京鉄道組合(本書第八巻)明治一一年三月一八日ノ項収載、鉄道組合会議要件録第三巻ニ見ユ。