デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

1章 金融
4節 保険
1款 東京海上保険株式会社
■綱文

第7巻 p.656-662(DK070082k) ページ画像

明治39年4月2日(1906年)

是ヨリ先、三十二年六月当会社資本金ヲ百五十万円ニ減ゼシガ、是日臨時株主総会ニ於テ資本金ヲ増シテ三百万円ト為ス。其新株三万株ノ割当方ニ付株主中ニ異議ヲ唱フル者アリ、栄一説得シテ之ヲ可決セシム。


■資料

(東京海上保険株式会社)総会議事録 二(DK070082k-0001)
第7巻 p.656-658 ページ画像

(東京海上保険株式会社)総会議事録 二
  明治三十九年四月二日臨時株主総会議事録
本日午前十一時本社楼上ニ於テ開会○中略
各務鎌吉氏第二号議案ヲ朗読ス
議長○末延道成ハ左ノ如ク本案提出ノ理由ヲ説明ス
 爰ニ提出シタル新株参万株ノ処分案ニ就テハ曾テ先例ナキ方法ナレバ株主諸君中或ハ異様ニ感セラルヽモノモアラン、殊ニ目今ノ如キ当社株式市価ハ払込額ノ殆ド四五倍ニ相当スル状況ナレバ、新株式ハ現在株ニ割当ツルヲ以テ至当ト考ヘラルヽハ一応尤モノ次第ナレ
 - 第7巻 p.657 -ページ画像 
トモ、取締役会カ本案ヲ提出シタルニ就テハ大ニ理由ノ存スル所ナリ
 明治三十年以前ニ当リ当会社カ営業上ノ非運ニ陥リ、明治二十九年一月ノ総会ニ於テハ遂ニ無配当ノ不幸ニ立至リ取締役ハ責ヲ引キ辞任ヲ申出テタルニ、株主諸君ノ懇切ナル御委托ニ依リ取締役中池田氏一人ノ辞任セラレタルノミニテ其他ハ只管株主諸君ノ委托ヲ全クセンコトヲ期シ、専ラ回復ニ勉メタルモ容易ニ其効ヲ奏スルニ至ラズ、明治三十年七月資本金ヲ参百万円ニ増加シ、以テ会社財政維持ノ資ニ充テタリ、然ルニ明治三十一年ニ至リ従前ノ損失一切ヲ切リ捨テ、政府命令書ノ割合ニ依リ保証金ノ下附ヲ請ヒ、同時ニ会社ノ資本金半額ヲ損失塡補ノ為メ切リ捨ツルノ已ムヲ得サルニ至レリ
 右ノ如キ次第ナルヲ以テ会社ガ図ラズモ今日ノ盛運ニ向ヒタルハ旧時ノ株主諸君ガ会社非運ノ際五ケ年ノ久シキ無配当ニ甘ンゼラレタルノミナラズ斯ル際ニ於テ増資ニ応シ、而シテ又減資ニ応シ、一意取締役ノ処置ニ一任セラレ以テ今日ノ回復ヲ謀ラシメタル結果ニシテ、今ヤ本案増資ニ当リ其利益ノ一部ヲ剖テ之ヲ当時ノ株主ニ酬ユル異様ノ感ハアレトモ決シテ失当ノ事ニ非ストシ、取締役会ハ本案ヲ提出シタリ、諸君ハ過去ノ事情ニ照シ本案ニ賛成セラレンコトヲ望ム
馬越恭平氏左ノ反対説ヲ述ブ
 余ハ再三本案ヲ熟読シタルモ甚ダ不思議ナル案ト思考セリ、今議長ノ説明ニ依リ其提出ノ趣旨ハ了解スルヲ得タリ
 第一項ノ功労者ヘ三千株ヲ与フルハ大ニ賛成スル所ナレトモ、第二項ノ明治三十二年六月現在ノ株主ニ対シ百分ノ四拾五ノ新株ヲ分配スルハ甚ダ謂レナキ事ニシテ不思議ノ案ナリト謂ハザルヲ得ズ、提出者ハ其当時ノ株主ガ多年ノ忍耐ニ対スル報酬ナリト言フモ、忍耐ナル株主トハ今日迄持続シタルモノニシテ今日株主ニアラサルモノハ之ヲ忍耐ト言フヲ得ズ、従テ今日株主ニアラサル者ニ新株ヲ与フルハ株式会社ニ一ノ異例ヲ作ルモノニシテ甚タ好マサル所ナリ
 故ニ新旧使用人及重役諸君ノ功労ニ対シ厚ク酬ユルコトハ大ニ賛成スル所ナレトモ、現在会社ニ関係ナキ株主ニ新株ヲ分配スル方法ニ就テハ賛成ヲ表スルヲ得ス
朝田又七氏 馬越氏ノ反対説ニ総テ同意ス
池内久親氏 本案ハ今日株主ニアラサルモノニモ新株ヲ割当ツルモノナルヤ
議長 然リ
池内久親氏 然ラバ原案ニ全然同意ナリ
豊川良平氏 原案ニ賛成シ左ノ意見ヲ述ブ○意見略
渋沢男爵起チテ左ノ演説ヲ為ス
 異例ノ案ヲ提出シタルニ付馬越君ノ御尤モナル御意見モアレド、本案ニ就テハ取締役間ニモ種々ノ議論アリ、自分共ニ於テモ考慮ヲ費シタル末提出シタルモノニシテ、株式会社トシテ徳義ニノミ拘泥シ道理ニ背クガ如キ考ヲ有セラルヽモノモ或ハ之アルベシト雖トモ、会社ノ歴史ヨリ観察スレバ本案ハ最モ穏当ノモノタルヲ発見スベシ
 - 第7巻 p.658 -ページ画像 
抑モ本会社ノ創立ハ其胚胎スル所甚ダ古ク、明治八年ノ頃蜂須賀・池田・伊達等ノ華族諸氏並ニ其他ノ有力者ニ於テ、本邦鉄道敷設ノ議アリタレトモ成立ニ至ラズ、変シテ京浜鉄道払下ノ計画トナリ、政府ニ交渉ノ上其許諾ヲ得テ廿二名ノ有力者ニ於テ右払下資金トシテ積立ヲ行ヒ、其額六拾万円ニ達セリ、然ルニ明治十年十五銀行設立ノ挙アリ、為メニ種々ノ都合ヲ生シ遂ニ京浜鉄道払下ノ願書ヲ取下クルニ至リタルヲ以テ、爰ニ其積立タル金額ハ各自ニ割戻スベキ性質ノモノトナレリ、然レトモ已ニ折角纏マリタル金額ナレバ之ヲ以テ国家有益ノ事業ニ充テンコトヲ思ヒ、海上保険会社設立ノ必要ヲ認メ、岩崎男ヲ勧誘シテ其賛助ヲ乞ヒ政府ニ交渉ノ上明治十二年本会社ノ設立ヲ見ルニ至リタルモノニシテ、本会社ノ株主中華族諸氏ノ多キハ則チ之カ為メナリ、然ルニ本業ニ関スル経験ノ乏シキヨリ成績甚タ良好ナラズ、遂ニ明治二十九年ノ悲境ニ陥リ我々取締役ハ責ヲ引テ辞任ヲ申出テタルモ株主諸君ノ切ナル御委任ニヨリ就職スルニ至レリ、本業ノ性質タルヤ頗ル技術的ノモノニシテ特殊ノ智識ト経験トヲ要スルコトヲ明ニシタルヲ以テ、当事者タリシ故益田氏ハ爰ニ着眼シ、人材ノ養成ニ兼テヨリ計画シタルガ幸ニアンダーライタートシテ会社ノ事務ヲ一任スベキ有為ノ人ヲ得テ本業ニ対シ慎密ノ観察ヲ以テ専ラ励精革新ヲ行ハシメタル結果トシテ幸ニ今日ノ盛運ヲ見ルニ至リタルナリ、蓋シ業務ノ性質冒険的ニ似タルモ最早基礎確立シタル今日以後ニ於テハ、決シテ再ビ前轍ヲ踏ムノ懸念ハアルベカラズト信ズ、是レ畢竟往年ノ株主諸君カ会社ノ悲境ガ連続シタリシニ拘ラズ毫モ動揺スルトコロナク、非常ノ忍耐ヲ以テ難関ヲ経過セシメタルノ致ストコロナレバ、之レニ対シ新株ノ割当ヲナサントスルハ徳義ヲ重ンスル所以ニシテ、諸君ハ右ノ歴史ニ顧ミ本案ニ満場一致ヲ以テ賛成セラレンコトヲ望ム
○中略
議長ハ馬越氏ノ反対説ニ付キ採決スル旨ヲ告ケ、賛成者ノ起立ヲ求ム
 起立者馬越恭平氏(権利数参拾五個)朝田又七氏(権利数拾五個)少数ニ付否決
議長ハ原案成立ヲ宣告シ、次ニ第三号以下六号ニ至ル諸案ヲ一括シテ議事ニ附ス
 満場異議ナク可決○下略
   ○明治三二年六月一〇日既往ノ損失整理ノ為資本金三百万円ヲ一五〇万円ニ減資ス。其払込金ハ半額切捨テ三七万五千円トス。


東京海上保険株式会社社運変遷一覧表(DK070082k-0002)
第7巻 p.658-660 ページ画像

東京海上保険株式会社社運変遷一覧表
             (東京海上火災保険株式会社所蔵)
東京海上保険株式会社社運変遷一覧表○次頁

 (一)創設 資本金六〇〇、〇〇〇円全額払込済
 (二)政府保証 帝国政府ハ当社カ船舶保険ヲ創営セル為、明治十六年十一月二十九日附ヲ以テ上記資本ニ四〇〇、〇〇〇円ヲ差加ヘ当社ノ公称資本金ヲ一、〇〇〇、〇〇〇円ニ増加スルノ命令書ヲ発セリ、但シコノ四〇〇、〇〇〇円ニ対シテ政府ヨリ現

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  以下p.659 ページ画像  年度     損益勘定残高   配当率   社内留保逐年累計   資本額(内払込資本額)   正味資産総額 明治十二年    21.252     6%      4.731       註 600.000          604.731                                (1)(600.000) 〃 十三年   111.644     9,11     47.855         〃            647.855                                    〃 〃 十四年    84.418     11,12     56.499         〃            656.499                                    〃 〃 十五年    18.797     11,10     8.126         〃            608.126                                    〃 〃 十六年    22.016     10,10     34.29       註1,000.000          565.716                                (2)(600.000) 〃 十七年    99.033     10,9 1/2    1.726        〃            598.274                                    〃 〃 十八年    38.221     9,9     25.81          〃            574.190                                    〃 〃 十九年   133.369     9,10     41.818         〃             41.818                                    〃 〃 二十年   145.827     11,11    112.409         〃            712.409                                    〃 〃 廿一年   140.556     10,11    178.191         〃            778.191                                    〃 〃 廿二年   163.12     11,11    264.1          〃            864.100                                    〃 〃 廿三年   136.115     11,13    312.993       註1,200.000          912.333                                (3)(600.000) 〃 廿四年   291.26     15,16    481.4          〃           1,081.400                                    〃 〃 廿五年   241.175    16,16     603.893         〃           1,203.893                                    〃 〃 廿六年   165.931    16,16     661.345         〃           1,261.345                                    〃 〃 廿七年    26.451    16,12     550.894         〃           1,150.894                                    〃 〃 廿八年   213.682    10,0     307.212         〃            907.212                                    〃 〃 廿九年   121.695     0,0     185.517         〃            785.517                                    〃 〃 卅年    169.542     0,0      15.975       註3,000.000          765.975                                (4)(750.000) 〃 卅一年    66.527     0,0      82.502         〃            832.502                                    〃 〃 卅二年   614.65            614.65       註1,500.000          989.650                                (5)(375.000) 〃 卅三年    17.742    10      559.408         〃            986.650                                    〃 〃 卅四年   298.867    10      840.775         〃            934.408                                    〃 〃 卅五年   401.936    12     1,177.71          〃           1,195.775                                    〃 〃 卅六年   398.756    12     1,531.47          〃           1,552.711                                    〃 〃 卅七年  1,069.48     15      2,544.71         〃           1,906.467                                    〃 〃 卅八年  1,180.98     20      3,650.69         〃           2,919.707                                    〃 〃 卅九年  1,238.43     24      4,641.62       註3,000.000         4,025.688                                (6)(750.000) 〃 四十年   937.602    32      5,339.22         〃            5,391.620                                    〃 〃四十一年   812.106    40      5,851.33         〃            6,089.222                                    〃 〃四十二年  1,040.68    40      6,592.01         〃            6,601.328                                    〃 (備考)損益勘定残高=営業勘定正味収支残高+資本収入     社内留保額 =責任準備金、支払備金(明治十六年下半期ヨリ) 法定準備積立金(明治三十年ヨリ)其他諸準備金 及後期繰越金ヲ含ム 



   実ノ払込ヲ受ケズ、今後当社ガ損失ヲ蒙リ之ヲ塡補スルニ資本金ヲ以テスル必要生シタル場合ニ於テ政府ハ其損失額ノ十分ノ四ノ払込ヲナスモノトス、但シコノ払込額ニ対シテハ爾後ノ保険営業収益ヲ以テ返戻スヘキモノトス、依テコノ四〇〇、〇〇〇円ハ政府借金トシテ貸借対照表ニ計上シタリ
 (三)第一回増資 明治二十三年十月十一日帝国政府ハ曩ノ命令ヲ変更シ四〇〇、〇〇〇円ヲ最高限度トスル損失補償ニ改メソノ有効期間ハ明治三十七年十二月三十一日ヲ以テ満了スルコトニシタリ、此命令書ノ改正ニ基キ政府借金ノ計上ヲ廃シ明治二十三年十一月四日開会ノ臨時株主総会ノ決議ニヨリ資本金ヲ一、二〇〇、〇〇〇円ニ増加シ半額払込済トシタリ
 (四)第二回増資 明治三十年七月三十日開会ノ臨時株主総会ノ決議ニヨリ資本金ヲ三、〇〇〇、〇〇〇円ニ増加シ一株ヲ五〇円四分ノ一払込トス
 - 第7巻 p.660 -ページ画像 
 (五)減資 明治三十二年六月十日開会ノ臨時株主総会ノ決議ニヨリ当社既往ノ損失ヲ塡補整理スル為、資本金ノ半額ヲ切捨テ一、五〇〇、〇〇〇円トシ払込資本金ヲ三七五、〇〇〇円トス
 (六)第三回増資 上記損失整理後当社ハ其ノ経営宜シキヲ得、明治三十八年度末ニハ諸準備金三、五〇〇、〇〇〇円ヲ超過シ海上保険ヲ専業トスル外国会社ニ比肩スルニ至リ基礎確立シタルヲ以テ資本金ヲ上述減資以前ノ状態ニ復活セシムル為、明治三十九年四月二日開会ノ臨時株主総会ノ決議ニヨリ新ニ一、五〇〇、〇〇〇円(四分ノ一払込)ヲ募集シ資本金ヲ三、〇〇〇、〇〇〇円ニ増加シタリ、而シテコノ第一回払込ハ明治三十九年五月二十一日ニ終了セリ



〔参考〕東京海上火災保険株式会社六十年史 第三五一―三五五頁〔昭和一五年一〇月〕(DK070082k-0003)
第7巻 p.660-662 ページ画像

東京海上火災保険株式会社六十年史 第三五一―三五五頁〔昭和一五年一〇月〕
 一方会社の営業状態も、既述の通り明治二十七年頃になると著しく不振に陥り、遂に第三十三季(自明治二十八年七月一日至同年十二月三十一日)から第四十一季(自明治三十三年一月一日至同年十二月三十一日)まで五ケ年余に亘つて無配当を継続せざるを得ざるに至つた。
然しかゝる悲境に際しその善後処置が当を得た為と且日露戦争の前後に於ける好況に恵まれた為とに因り、会社の基礎は愈々鞏固となり明治三十八年度末に於ける諸準備金は金三百五十万円を超過するに至り、海上保険を専業とする屈指の外国会社に比しても遜色なきに至つた。
 会社の株式(額面五十円、四分の一払込)も、その頃になると漸く高値を唱へ、明治三十九年三月に入ると最高値は払込額の約五倍強を見るに至つた。
株価の高低は次の通りである。
          三十八年         三十九年        四十年
       最高      最低    最高    最低    最高    最低
        円      円     円      円     円     円
  一月  二六、〇〇  二六、〇〇 四六、五〇  四三、〇〇 五八、〇〇 五八、〇〇
  二月  三一、〇〇  二七、五〇 四六、〇〇  四六、〇〇
  三月  三一、〇〇 △二九、〇〇 六八、〇〇  四五、〇〇
  四月  三〇、五〇  三〇、五〇 七一、〇〇  六八、〇〇
  五月  三〇、五〇  三〇、五〇 六八、五〇 □四〇、〇〇
  六月  三二、八〇  三〇、五〇 四二、五〇  四〇、〇〇
  七月  三五、〇〇  三二、五〇 五四、五〇  四二、五〇
  八月  三五、五〇  三五、〇〇 五八、〇〇  五四、五〇
  九月  三五、八〇  三五、五〇 五八、〇〇  五一、〇〇
  十月  三七、〇〇  三五、八〇 五八、〇〇  五一、〇〇
  十一月 三七、〇〇  三七、〇〇 五八、〇〇  五八、〇〇
  十二月 三七、〇〇  三七、〇〇 五八、〇〇  五八、〇〇
  (註)以上は東洋経済新報から作製した直取引の気配。△印利は益落配当、□印は新株落、三十八年度は利益率一・二割、三十九年度は二割、払込はいずれも十二円五十銭。
於玆、会社の基礎を益々鞏固にし社運の発展を期する為に、資本金を明治三十二年六月以前と同様の金三百万円に増資することゝなつた。
 - 第7巻 p.661 -ページ画像 
 この増資は明治三十九年四月二日開催された臨時株主総会に附議可決せられた。
 新株として募集せらるべき三万株(額面五十円、十二円五十銭払込)の内三千株は功労株として左の如く割当て優先応募せしめた。
 一、一千五百株 各務鎌吉氏
 二、一千株 平生釟三郎氏
 三、五百株 故益田克徳氏遺族
 その残部二万七千株は、左の如く割当てられた。
 一、明治三十二年六月十日現在の株主(その遺産相続人を含む)へその当時に切捨てたる株数(三万株)の割合に応じ一万三千五百株(百分の四十五)を割当て切捨株百株に付四十五株を優先応募せしめる。
 二、明治三十九年四月二日現在の株主へその株数三万株の割合に応じ一万三千五百株(百分の四十五)を割当て現在所有株百株に付新株四十五株を優先応募せしめる。
 前項の方法に依つて生じた端数及申込期日までに応募を承諾しなかつた株式の処分は取締役会に一任せられた。
かくして応募資格者に対しては会社から左の通り通知を発した。
 拝啓、然者当会社臨時総会ニ於テ別紙ノ通リ増資案決議ノ上新株式参万株ヲ募集致ス事ト相成候処、第二号第二項(い)案可決ノ結果トシテ明治三十二年六月十日現在ノ株主(其ノ遺産相続人ヲ含ム)ヘ其当時ニ切捨タル株数百ニ対シ新株四拾五ヲ割当テ新株式ヲ優先ニ応募セシムルコトト相成候間、貴殿ハ当会社ノ株主原簿ニヨリ其当時ノ株主ニシテ御所有株中切捨トナリタル株数ニ対スル新株割当高別紙ノ通リ御通知申上候ニ付、御希望ニ候ハヽ新株式御引受相成度右ノ如ク、現在株主ニ於テ決議アリタル趣旨ハ総会議案第一号ノ理由書ニ掲ケタル如ク当会社ハ創設以来種々ノ変遷ヲ経幾多ノ困難ニ遭遇シ明治二十九年一月ヨリ数季間配当ヲ中止シ、遂ニ明治三十二年六月十日ノ臨時総会ヲ以テ已往ノ損失塡補ノ為メ資本金ノ半額ヲ切捨ルノ已ムヲ得サルニ至リタルモ、爾来幸ニシテ営業其宜シキヲ得テ会社ノ基礎確立シ準備金モ金参百五拾万円ヲ超過スルニ至リ当会社ノ已往ニ徴シ聊カ慶賀スヘキ処ナルカ、畢竟其由来ヲ繹ヌレハ斯業ノ性質カ特殊ノ智識ト多年ノ経験ヲ要シ会社困難ノ時代ハ即チ有益ノ智識ト経験トヲ修養シタルモノニシテ其辛キ経験ノ時代ニアリテ其当時ノ株主カ探ク会社ノ存立ニ留意シ、所有株式ノ切捨ヲ決行シテ会社営業ノ継続ヲ計リ、当事者ヲシテ営業経営ニ専心ナラシメタルノ事実カ漸ク相当ノ果実ヲ結フニ至リタルモノト信スルヲ以テ取締役会ハ当会社特殊ノ歴史ニ鑑ミ此際新株ノ募集ヲ為スニ当リ全新株数参万株ノ内功労者ヘ割当テタル参千株ヲ除キ、残リ弐万七千株ノ半数ヲ割キ之ヲ明治三十二年六月十日現在株主ノ切捨株高ニ割当テ其当時ノ株主ヲシテ優先ニ応セシムルノ議案ヲ提出シ、株主総会ハ之レヲ可決シタル次第ニ有之候、或ハ当時ノ株主ニシテ現今ノ株主タラサル諸君ニ於テ突然ノ通知書ニ接シ御不審ノ廉モ可有之歟ト拝察シ簡単ノ説明ヲ加ヘ仕候間、新株申込及払込手続書御熟覧ノ
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上期日内ニ御手続相願度此段得貴意候也
  明治三十九年四月十九日
            東京市麹町区八重洲町壱丁目壱番地
                   東京海上保険株式会社
        殿