デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

2章 交通
2節 鉄道
1款 東京鉄道組合
■綱文

第8巻 p.433-445(DK080031k) ページ画像

明治9年7月10日(1876年)

京浜間鉄道払下ニ付曩ニ政府ニ呈出セル政府トノ約定書ニ対シ、政府ハ払下代価三百万円ヲ三百十万円ニ追増シタル新草案ヲ内達ス。是日第十八回会議ニ於テ工部卿伊藤博文之ニ臨ミ追増ノ所以ヲ演述シ、新草案ニ関シテ栄一トノ間ニ質疑応答アリ、後衆議ニ付シ次回会議ニ於テ之ヲ決定ス。


■資料

鉄道回章留(DK080031k-0001)
第8巻 p.434 ページ画像

鉄道回章留                (渋沢子爵家所蔵)
以輪札敬申仕候、陳者来ル十八日第十七回定式会議ニ於テ、先般御上申相成候御請願之其前御指令相成候時《(マヽ)》ハ、同日ハ定款申合規則等之御決議ヲ要スヘク候得共、頃日政府ノ御模様ヲ承リ候ニハ御請願之儀は御許容可相成趣ニ候得共、十八日前御下命之有無は難計候ニ付、若シ十八日前御下命無之時ハ、同日之御会議ニ於テハ敢テ緊重ノ件ハ無之候得共、前回ニ御協議仕候決議件名録並肝煎権限総理代人権限事務章程真本ニ御調印ヲ相願、其他輪札ヲ以テ御廻議ヲ要スヘキ事件之小程規ヲ可相設事務取計申度候、依之同日ハ右御調印ニ付御実印御小印共両様御持参被下度候、御実印ハ権限書類ニ捺シ、御小印は件名録ニ捺スヘク儀ニ御坐候、又件名録ニ御調印ノ儀ハ前回御協議之通以来毎会御決議ノ件ヲ即日記載致シ御捺印可相成儀ニ付、御小印は以来毎会御持参御座候様仕度候、此段申報仕候間、輪札以刻付御順達周尾ヨリ御返却可被下候也
  四月十三日○明治九年          渋沢栄一


東京鉄道組合会議要件録 第二巻・第三一―三六頁(DK080031k-0002)
第8巻 p.434-435 ページ画像

東京鉄道組合会議要件録 第二巻・第三一―三六頁
                 (株式会社第一銀行所蔵)
   ○第十七回定式会議 明治九年四月十八日於第一国立銀行閣内開之
                 出席人名
                      大村純熙代理稲田又左衛門
                      亀井玆監代理清水格亮
                      伊達宗城伊達宗徳代理西園寺公成
                      毛利元敏代理難波舟平
                      毛利元忠代理柏村信
                      毛利元徳
                      井伊直憲井伊直安代理金田師行
                      山内豊範代理山田東作
                      徳川慶勝代理井上喬
                      松平慶永代理武田正規
                      松平茂昭
                      池田慶徳池田輝知代理河崎真胤
                      蜂須賀茂韶代理小室信夫
                      前田利嗣代理神尾真養
                      池田茂政池田章政代理立野橘太郎
                      松平頼聡代理三宅十郎
                      久松勝成久松定謨代理橋本太柱
                      九条道孝代理藤井祐澄
                      榊原政敬代理塩谷正直
                   会頭 渋沢栄一
 - 第8巻 p.435 -ページ画像 
                   欠席 池田徳潤
                   同  前田利同
    第一節
右各員ハ午後一時下ニ着席シ、会頭ハ頃日伊藤工部卿ニ面晤シ聞ク所ノ政府ニ於テ鉄道御払下代価ノ増額ヲ徴求セント欲スル事情ヲ演述ス
    第二節
会頭ハ輪札ヲ以テ回議ニ付スヘキ小事件(会議規則議事ノ権限第九条)ノ如キモ亦小シク体裁ヲ設ケサレハ其異同スル所瞭然タラス、宜シク輪議規則ヲ定ムヘキコトヲ立議シ、而シテ其草案ヲ以テ衆議ニ付ス、乃チ各員異議ナク原案ニ従ツテ決定ス
    第三節
又会頭ハ三月廿三日輪議ニ付シ、同廿九日東京府ニ請願セシ墨料ノ件ハ、同三十日指令アツテ允聴セラレサルコトヲ演述ス
    第四節
既ニ前会ノ決議ニ係ル肝煎権限及ヒ総理代人権限事務章程ノ清本ニ於テ各位実印ヲ鈐捺ス
    第五節
各員ハ又決議件名録ニ初テ小印ヲ捺ス
    第六節
三肝煎各組合ノ遠近相均シカラサル者ヲ改メ、更ニ組合割ヲ定メ、而シテ其名表ヲ作リ、各員之ヲ領収ス
右会議畢テ午後二時三十分一同退場ス


鉄道回章留(DK080031k-0003)
第8巻 p.435-436 ページ画像

鉄道回章留                (渋沢子爵家所蔵)
    ○
乾第八号輪札ヲ以テ敬申仕候、時下軽暑之候各位閣下益御壮栄奉欣喜候、陳者来ル十八日定式会議可相開之処未タ御請稟之御下命無之、就而は同日敢テ御協議ヲ要スヘキ事件無御座候間、同日ハ御延会之儀ト御承領可被下候、尤明日ニも御下命御座候上ハ更ニ臨時御会議之義御報知可申上候、輪札刻付ヲ以テ御順達自周尾御返却可被下候也
  五月十六日○明治九年          渋沢栄一
    ○
乾第九号輪札《(写)》ヲ以啓申仕候、時下蒸暑之候各位閣下益御清穆起居勝常奉欣喜候、陳は先般御請稟之儀未タ政府之御指令ヲ得ス、右ニ付来ル十八日ハ敢テ御会議ヲ被要候件無之候間、先ツ御休会被下度候、尤今日ニモ御下命有之候ハヽ更ニ御開議ノ日御報告可仕候、此段御諒承可被下候、輪札刻付ヲ以御順達周尾ヨリ御返却被下度候也
  六月十六日○明治九年午後〇時十分    渋沢栄一
 御連名略之
  追而工部卿殿先頃生野鉱山御出張之処本月上旬御帰京ニ付其趣再三御指令之事ハ御催申上置候得共、今日迄何トモ御下命無之儀ニ候、尤尚此上精々御催申上候心得ニ御坐候、為念此段申上候也
    ○
乾第十号輪札ヲ以啓申仕候、時下黴雨之候各位閣下益御清康起居万順
 - 第8巻 p.436 -ページ画像 
奉忻慰候、陳者嘗テ御上申相成候御約束条款等之儀は、此程正院ヨリ工務省江御下附相成、同省ニ於テ御取扱之上結約相成候筈御結定之趣今日工部卿閣下《(決カ)》ヨリ内示御座候、就テハ更ニ御会議ヲ要スヘキ事件御座候ニ付、来ル十日第十八回臨時御会議相開キ可申候条、此段御領承被成下、同日午前十時迄ニ御賁臨可被下候、輪札刻附ヲ以テ御順達周尾ヨリ御返却可被下候也
  七月五日○明治九年午後四時十分     渋沢栄一
  追而前書十日之御集会ニ於テハ官府御約定之要旨ハ大略御決定相成候運ニ仕度見込も御座候間、可成御自身御臨席御座候様奉願候


東京鉄道組合会議要件録 第二巻・第三六―五〇頁(DK080031k-0004)
第8巻 p.436-438 ページ画像

東京鉄道組合会議要件録 第二巻・第三六―五〇頁
                  (株式会社第一銀行所蔵)
   ○第十八回臨時会議 明治九年七月十日於第一国立銀行閣内開之
                 出席人名
                      徳川慶勝代理井上喬
                      池田慶徳代理河崎真胤
                      大村純熙代理稲田又左衛門
                      池田章政
                      池田輝知池田徳潤代理勝部静男
                      久松勝成久松定謨代理河東坤
                      前田利嗣代理松田郷之
                      井伊直慶井伊直安代理金田師行
                      松平慶永松平茂昭代理武田正規
                      松平頼聡代理三宅十郎
                      山内豊範代理山田東作
                      前田利同代理浅野長雄
                      榊原政敬代理塩谷正直
                      九条道孝
                      毛利元忠代理柏村信
                      毛利元敏
                      伊達宗城
                      毛利元徳
                      伊達宗徳代理井関盛艮
                      蜂須賀茂韶代理小室信夫
                      亀井玆監
                      伊達宗徳家令西園寺公成
                      亀井玆監家令清水格亮
                   会頭 渋沢栄一
                   臨席 伊藤工部卿
                      芳川二部大丞
    第一節
右各員着席ノ上、工部卿ハ衆ニ対シ本日此議場ニ参臨セシ所以ハ固ヨ
 - 第8巻 p.437 -ページ画像 
リ工部卿ノ本任ニアラス、今回政府ヨリ嘗テ立会申請スル所ノ稟牒ヲ下付セラレ、且自今工部省ニ於テ其申牒ヲ裁批スヘキコトト其裁批ニ就キ已ニ政府ノ意見アル所トヲ垂示セラルヽヲ以テ、更ニ扜格日ヲ渉ランコトヲ恐レ、因テ政府ト立会トノ間ニ介立シ其裁批スヘキ内情ヲ示シ、而シテ立会ノ請求スル所ヲ聞キ、以テ其挙措ヲ今日ニ決セント欲セラルヽコトヲ演述セラレ、且左ノ三件ヲ説明セラル
第一件 拾万円追増ノ挙ハ官敢テ前令ノ錯誤スル所ト為スヘカラス、如何トナレハ六郷鉄橋ノ如キ沿江土民ノ水患ヲ訴ルニ由リ其架亘ヲ延長シ以テ工費ノ追増ヲ生スルカ故ナリ、且其挙ヤ到底人民ノ安全ヲ保ツヘキ者ニシテ抑又立会ノ其財産ヲ増有スル所ナレハ、又敢テ之ヲ拒ムヘキノ理ハナカルヘシ、然而シテ其拾万円ハ鉄道年賦金七年ノ後更ニ三年ノ平納ヲ允サントス、且夫拾万円ノ金タル僅カニ立会其一年ノ純益ヲ抛テ足レリト為ス者ニアリ、然レトモ余ハ之ヲ慫慂スル者ニ非スシテ只其拾万円ヲ肯セサルトキハ、政府其払下ケヲ允准スヘカラサル所以ヲ告示スルニ過キサルノミ
第二件 立会約束案第十三条地税ノ蠲除ヲ乞フカ如キハ、其軌道ヲ限リ地税ヲ蠲除シ、其他ハ皆収税ノ地ニ籍スヘシ
第三件 同上十八条ヲ削リ代ルニ左ノ三款ヲ以テスル者ハ如何、是蓋政府ノ為メニ欲スル者ニアラスシテ立会ノ為メニ計ル所ナリ
  其一既済ノ金額ヲ以テ本鉄道一部ノ株券ト為シ、官私共有スルヲ得セシムル事
  其二年限ヲ定メ利子ヲ附シテ公債ト為ス事
  其三他ノ立会ヲ設立セシメ、之ヲ相続セシムル事
    第二節
於此テ総理代人ハ衆論ノ帰向スル所ヲ取テ追増拾万円ハ其年賦ニ於テ更ニ政府ノ優待アランコトヲ請求シ、且昨年来官ノ指令スル所ヲ論シテ拾万円ノ追増ヲ快諾スヘカラサル所以ヲ曲説弁論シ、以テ其請求スヘキ所ヲ賛成シ、且後席ニ於テ再議ヲ起シ、以テ決答スヘキコトヲ述ヘ、又左ノ二件ヲ稟問ス
第一件 軌道ノミヲ除税トナシ、其他〔ステーシヨン〕等ヲ以テ収税ノ地ト為スハ果シテ何等ノ理由アリヤ
第二件 各所ノ〔ステーシヨン〕ハ実地ニ就テ限界シ、其幾分カ無税ノ地ニ属センコトヲ請フヘシ
工部卿ハ右ノ稟問ニ就テ更ニ弁説セラルヽコト、左ノ二条ノ如シ
第一条 軌道ヲ以テ無税ニ属シ、而シテ〔ステーシヨン〕其他ノ地ヲ以テ税地トナスヘキハ固ヨリ意味深長ナルニアラス、夫今ノ鉄道ナル者ハ其官築ニ係ルヲ以テ幅員甚タ広濶ニ過ク、若シ之ヲ民有ニ属シテ其税ヲ課セサルトキハ、恐クハ後世民築ノ鉄道ヲシテ又如此ノ広積ヲ有セシメサルヲ得サルヘシ、是此御払下ニ於テ更ニ税地ニ籍スル所以也
第二条 又試ミニ工部省ノ内意アル所ヲ看ヨ、夫レ七年ノ後鉄道ノ全体ヲ付度スルニ当リ列車器械等目前其用ニ足ル者ヲ以テスルハ蓋軌道交附ノ通法ト雖トモ、官別ニ横浜ノ倉庫ニ於テ三拾
 - 第8巻 p.438 -ページ画像 
万円許ノ予備器機ヲ積ム者アリ、由テ宜シク交付ノ際其幾分ヲ以テ之ヲ立会ニ付与スヘシ、如此者交附ノ通法ニ越ル所ト雖トモ、抑又予備品ノ一日モ欠クヘカラサルニ居ル者ナルヲ以テ然リ、官注意スル所已ニ斯ノ如シ、何ソ其涓々タル〔ステーシヨン〕ノ地税ヲ論スルノ比ニアランヤ
於此テ総理代人ハ又左ノ一件ヲ質疑セリ
    器械ノ予備ヲ存スヘキハ已ニ約束案六条ニ於テ自ラ其意味ヲ包含ス、且彼ノ倉庫中ノ物料ノ如キハ曩キニ下付セラレシ仕訳書中ノ費目ニ関係スル所ノ者ニアラスヤ
工部卿ハ又之ニ答弁スルコト左ノ如シ
    彼ノ三百万円ハ其倉庫内ノ物料ヲ包含スル者ニアラス、且其倉庫ノ如キハ特リ東京横浜間ノ鉄道ノミニ関係スル者ニアラス、神戸大坂等皆之ニ関シ而シテ各所ノ鉄道ニ於テ其物料ヲ需用スルトキハ、其代価ヲ計リ以テ各所ノ費用ニ編算スル所ノ者ナリ
    第三節
因テ総理代人ハ更ニ衆議ヲ撰ヒ、乃チ工部卿ニ対シ〔ステーシヨン〕無税ノ件及ヒ十万円追増ノ件ハ能ク再議ヲ尽シテ決定シ、来ル廿日ヲ限リテ再案ノ事情ヲ回陳スヘキコトヲ確答シ、於此テ一同議場ヲ退キ工部卿並芳川工部大丞ハ玆ニ帰散セリ
   後席
                       会員ハ如前席
    第一節
已ニ前席畢テ更ニ此後席ヲ開ク、此時午後五時ニ際ス、総理代人即チ会頭ハ各位ニ対シ、約束案第二条ニ政府付箋ヲ以テ拾万円ノ追増ヲ求ムル所ハ已ニ工部卿ノ断言アリ由テ各位ハ如何ノ回答ヲ為スヤ、夫此鉄道ノ会合ニ於ル明治六年ニ始リ今玆ニ四年、其間挙措段落アリ、而シテ今日ノ会議ハ既ニ其第十八回ニ係ル、又躊躇スヘカラサルノ時タリ、須ラク此一会ヲ以テ其興廃ヲ決スヘキコトヲ問議ス、於此テ小室信夫ハ第一答議ヲ起シ、各員之ニ同スルヲ以テ乃チ左ノ一件ヲ決定ス
  一 事已ニ玆ニ至ル、殆休否ノ両断ニ迫レリ、而シテ今日ニ及ヒ又休ムヘカラサルノ勢タリ、何ソ拾万円ヲ論シテ此立会ヲ瓦解ニ属スルヲ為サンヤ、由テ拾万円ノ追増ヲ諾シ、其上納ノ如キハ七年ノ後更ニ無利足十ケ年賦ヲ以テ平納スヘキコトヲ申請シ、其納レラレサルトキハ則又衆議ヲ以テ再案スヘシ
    第二節
会頭ハ前席ニ於テ工部卿ノ内示セラレシ約束原案ニ政府ノ付箋及ヒ工部卿ノ付箋アル謄本ヲ以テ第一節ノ定議ニ随ヒ之ヲ裁定スヘキコトヲ述ヘ、乃チ衆議ヲ撰ヒ以テ第二条十万円追増ノ件、第六条物件交附ノ件、第十三条停車場無税ノ件、第十八条儲策三款ノ件等決定ス
右会議畢テ会頭ハ明日大蔵卿工部卿ニ面晤シ、今日更定ノ稟案ヲ内申センコトヲ陳述シ、而シテ一同退場ス、時ニ午後七時下


鉄道回章留(DK080031k-0005)
第8巻 p.438-440 ページ画像

鉄道回章留                (渋沢子爵家所蔵)
 - 第8巻 p.439 -ページ画像 
    ○
    第二節
会頭ハ前席ニ於テ工部卿ノ内示セラレシ約束原案ニ政府ノ付箋及ヒ工部卿ノ付箋アル謄本ヲ以テ第一節ニ随ヒ裁定スヘキコトヲ述ヘ、乃チ第二条十万円追増ノ件、第六条物件交附ノ件、第十三条停車場無税ノ件、第十条儲策三款ノ件等更ニ裁定スル所左ノ如シ
一第二条原案ノ全文ヲ刪リ、代ルニ左ノ一章ヲ以テス
  右三百万円ノ代価ハ政府ニ於テ是迄此鉄道建築ニ付テ仕払タル一切ノ費用及ヒ向後川路《(崎カ)》ノ木橋ヲ鉄橋ニ改作シ、軌道ヲ並行ニスル費用等ヲ見積リタルモノニシテ、三百円《(万脱カ)》ノ外同シク鉄橋架亘ノ増費金十万円ヲ三百万円年賦上納済ノ翌年ヨリ無利足十ケ年則《(賦)》ニ上納スヘシ、然ルニ於テハ此鉄道ニ於テ政府ヨリ別ニ代価ノ増額ヲ立会ニ徴求スルコトナカルヘシ
一第六条原案○中略又ハ之ヲ新造スヘキコト勿論ナレトモ、概略別紙記載スル現今所用ノ要具丈ケハ年賦済云々ヲ改テ「又ハ之ヲ新造スヘキコト勿論ナレトモ、所要ノ要具ハ年賦済」云々ト為ス
一第十三条原案全文ヲ削リ、代ルニ左ノ一章ヲ以テス
  此鉄道ニ属スル軌道敷地及ヒ各駐車場ノ地所ハ、特別ノ許可ヲ以テ其地税ヲ蠲除シ、其他ノ地所ハ相当ノ地税ヲ上納スヘシ
一第十八条原案全文ヲ削リ、代ルニ左ノ一章ヲ以テス
  此立会ニ於テ年賦期限中若シ無余義事情ニ際会シ、総高ノ金額ヲ皆納スルコト能ハサル時ハ、政府ニ於テ左ノ三ケ条中ノ一ヲ撰テ之ヲ処分スヘシ
  一既済ノ金額ヲ以テ本鉄道一部ノ株券ト為シ、官私共有スルヲ得セシムル事
  一年限ヲ定メ利子ヲ附シテ公債ト為ス事
  一更ニ株主ヲ募リ此立会ヲ相続セシムル事
一原案第三条中其不定ヲ以テ○○○ヲ挿入スル所ニ大蔵省ノ三字ヲ塡ム、是政府ノ付箋ニ従フ者ナリ
一同結尾ニ日本政府ノ○○○ト此立会云々ト記載スル所ヲ改メ「日本政府ト此立会云々ト為シ、又同盟連署ノ筈ニ於テ大蔵卿並工部卿ノ文字ヲ載スル是亦政府ノ付箋ニ従フ所ナリ
    ○
乾第拾壱号以輪札啓上仕候、然者昨日御会議之鉄道御払下ニ付政府江対シ御約定相願候廉々之中、別紙三ケ条ハ今日伊藤工部卿殿江申上候処、早々御決議御許可相成候趣ニ候、就而は右御約定書ハ不日調印之運ニ相成可申ニ付、其順序ハ尚工部卿殿江稟議之上御通達可申上候得共、不取敢右御許可相成候段御報知申上候、将又右御許可申上《(之)》ハ定款申合規則及立会ト銀行との御約定等取究申度候ニ付、来ル十八日之定式会議ハ勿論開場之心得ニ候間、此段併テ御承知被下度、右之段御報知迄可得貴意如斯御座候、輪札例之通御順達可被下候也
    九年七月十一日           渋沢栄一
尚々本文三ケ条速ニ御許可相成候義は、実ニ望外之事ニ而此立会隆盛之徴候ト別テ奉慶賀候也
 - 第8巻 p.440 -ページ画像 
 一昨日御会議ノ要件録ハ今日取調中ニ付、出来次第更ニ以輪札可供御回覧候事

一追増十万円内外之金額ヲ無利足十ケ年賦ニテ上納之事
一駐車場処必用之地ヲ分界シテ軌道同様無税ニ相成度事
一総金額上納年賦中皆納不相整節処分方之箇条ヲ加入候事
    ○
乾第拾弐号以輪札啓申仕候、陳者去ル十日第拾回臨時会議要件録編製候間《(八脱)》、御回達仕候、御一覧済例之通御順達周尾ヨリ御返却可被下候也
  子七月十四日午後五時三十分      渋沢栄一
    ○
乾第十三号輪札ヲ以テ啓申仕候、陳者第十九回定式会議要件録編製仕候間、例之通供御回覧、輪札御順達周尾ヨリ御返却可被下候也
  九年七月廿二日午後二時十分       渋沢栄一
二伸、去ル十八日御定約相成候通来ル廿四日ハ例刻御集会可被下候也
    ○
鉄道払下約定書別紙之通被改正度、尤要用之処ハ従前ニ据置不用之部並ニ重複之処削除候心得ニ御座候、御異存無之候得ハ、至急調印之運ニ取掛申度候、小生も来月六日頃出帆大臣殿ニ随従北海道へ罷越可申内定も御座候故余日無之候、此約定取結候ニ付テハ最初払期限之処不極ニ有之候様覚候ニ付、是も御取極約定中御改正相成度候也
  七月廿六日○明治九年
                          博文
    渋沢栄一殿
    ○
乾第十五号輪札《(写)》ヲ以テ啓申、今日別帋写之通工部卿ヨリ恵書有之、且政府ト御取結可相成約束条款夫々取捨モ相示候ニ付テハ、急速右内示ニ随ヒ決定整頓之上、不日条約鈐印之御手続ニ可取計候ニ付、来廿八日臨時会議相開キ可申候、依而同日ハ例刻ヲ以テ御賁臨可被下候、此段申報仕候、輪札刻付御順達周尾従御返却可被下候也
  九年七月廿六日午後五時○下       渋沢栄一
    池田慶徳様
    徳川慶勝様
    松平慶永様
    池田茂政様
    亀井玆監様
    松平茂昭様
    池田章政様
    伊達宗徳様
    池田輝知様


東京鉄道組合会議要件録 第二巻・第六九―七三頁(DK080031k-0006)
第8巻 p.440-442 ページ画像

東京鉄道組合会議要件録 第二巻・第六九―七三頁
                  (株式会社第一銀行所蔵)
   ○第廿一回臨時会議 明治九年七月廿八日於第一国立銀行閣内開之
 - 第8巻 p.441 -ページ画像 
                 出席人名
                      毛利元徳毛利元忠代理
                      柏村信
                      池田慶徳池田輝知池田徳潤代理
                      勝部静男
                      榊原政敬代理
                      塩谷正直
                      大村純熙代理
                      稲田又左衛門
                      毛利元敏代理
                      難波舟平
                      井伊直徳井伊直安代理
                      金田師行
                      九条道孝
                      山内豊範代理
                      山田東作
                      久松勝成久松定謨代理
                      河東坤
                      松平頼聡代理
                      三宅十郎
                      松平慶永松平茂昭代理
                      武田正規
                      前田利嗣代理
                      神尾直養
                      前田利同代理
                      古市之峯
                      蜂須賀茂韶代理
                      小室信夫
                      伊達宗徳代理
                      井関盛艮
                      伊達宗城
                      亀井玆監
                   会頭 渋沢栄一
                   欠席 徳川慶勝
                   同  池田茂政
                   同  池田章政
    第一節
右各員着席ノ上会頭ハ、今日ノ会議ハ、一昨日工部卿ノ恵書アリ、曰ク更ニ前日内示ノ約款草案ニ刪正ヲ加フ、若シ其阻碍スル所ナクンハ須ラク之ヲ決定スヘシ、又随テ年賦上納金ノ初季限ヲモ決定スヘシト因テ其草款ト旧案トニ拠テ斟酌折衷別ニ稿案ヲ設ク、宜シク之ヲ議定シ速カニ其修約ヲ了スヘシ、又第一国立銀行ト修約スヘキ稿案ノ如キハ嘗テ議定スル所ト雖トモ、爾来屡政府ノ約束案ヲ改ムルヲ以テ既ニ抵触スル所ノ者アリ、宜シク之ヲ再訂シ、以テ銀行ニ照会シ、而シテ速カニ修約スヘキ等ノコトヲ演述ス
    第二節
会頭ハ前節ノ新草案ヲ執ツテ旧案並今回工部卿内示ノ草案トニ照ラシテ展読シ、逐条衆議ヲ撰テ以テ之ヲ決定ス
    第三節
会頭ハ嘗テ議定スル所ノ第一国立銀行トノ約束案ヲ執ツテ更ニ逐条衆議ヲ撰ヒ、以テ其政府ノ約束案ニ抵触スル所ヲ再議決定ス
    第四節
会頭ハ衆員ニ問フニ、明日工部卿ニ謁シ本日決定スル約束稿ヲ呈スルニ当リ、若シ卿ノ之ヲ批点スルアツテ其旨意ヲ変セス其字面上ヲ改ムルニ過キサルトモ、猶之カ為メ会議ヲ起スヘキヤ否ヲ以テス、小室氏
 - 第8巻 p.442 -ページ画像 
之ニ答議シ、苟クモ其旨意ヲ改ムルヲ以テ故ラニ会議ヲ開クヘカラス其第一条徴求第七条永久等文字ノ如キ全体ノ得失ニ関スル件ヲ除クノ外ハ取捨改正一ニ総理代人ニ委托スヘシ、而シテ若シ不得已事アレハ徴求ノ字ハ刪除スルアルモ、永久ノ字ハ保存スルコトヲ勉メシムヘキコトヲ述、乃チ衆員之ニ同セリ
右会議畢テ会頭ハ更ニ衆員ニ対シ、明日工部卿ニ謁晤シ、其事情ニヨレハ速ニ之ヲ報知シ、修約ノ順序ヲ整ヘヘキコトヲ告ケ、衆員之ヲ領シ而シテ一同退場ス、時ニ午後六時下


鉄道回章留(DK080031k-0007)
第8巻 p.442-444 ページ画像

鉄道回章留                  (渋沢子爵家所蔵)
    ○
一第一政府ト取結ベキ約束案第三回ノ改正、已ニ決定ニ係ル第一国立銀行トノ約束案ノ再訂ナリ、右両件夫々議定相成候、文章上ニ於テ大ニ改ムル所アリト雖モ、其趣意ニ於ハ聊モ前案ニ相当候事無之就《(違カ)》キ、少しク相違いたし候廉ハ鉄道代価上納期限ハ当九年七月ヲ第一季トシ来る明治十六年一月迄ニ三百万円皆納可致、当七月分ハ已時日過去リ候事ニ付、八月五日ヲ以テ上納可致ト衆議決定ニ相成、依テ右決定約束案ヲ今朝総理代人工部省江持参致し候都合ニ付、不日御調印之場合ニ至リ可申と相心得申候、尤弥御調印之節ニは総理代人より今壱度報知有之申候、右鉄道代金已後年々一月五日七月五日ノ両季ニ相納メ候様決定ニ付、銀行江右金円振込時日ハ上納ノ五日前ニ振込可申約束ニ是亦衆決仕候、昨日之多決大略前件之通リニ付詳細ニ至リテハ他日会議要件録ノ輪回ヲ待チ御承知可被下候、先は不取敢此段上申仕度候
一各議員会場ニ臨ミ小室氏発言、前会不足金拾七万有余各出金高ニ振懸出金センコトヲ略論定セシナレトモ、拙者ニ於テハ少しク情実も有之度今会之《(マヽ)》ヲ決答センコトヲ乞ヘリ、爾後再三出金之都合ヲ相考候得とも蜂須賀家ニ於テハ此上出金スルノ力ナシ拙者ヨリ動議ヲ起し各議員既ニ此説ニ御同意有之今更拙者右様御答致スハ実ニ赤面之至ニ候得共、如何共致シカタシ依之此段御答御断申旨陳述有之タリ、右ニ付衆議再度前日論定スル通リ不足金額拾七万有余ハ銀行ニ於テ其都度々ニ借入、政府ヨリ下附スル所ノ利金ヲ以テ右負債ヲ償却スルコトニ決セリ
 七ケ年皆金上納之後株券ヲ発行スル際ニ当リ端金有之テハ不都合ニ付、不高拾八万円《(足脱カ)》ヲ銀行ヨリ借入レ、残ル弐百八拾二万円ヲ同盟廿六名ニテ担任センコトニ決定ス、其概算左ノ如シ
 御家ノ七ケ年ニ出金高分  下附利子ヲ以テ銀行江償却高   七年ノ末株金高
  三千八百五拾四円    弐百四拾六円          四千百円
 次テ組合定款前会ノ後ヲ議シ文面ヲ改ムル左ノ如シ
    第四条 元五条
右三百万円ノ内現今同盟廿六名ニテ弐百八拾二万円ヲ七ケ年ニ集合スルコトヲ誓約セシニ付、向後政府ヨリ下附セラルヽ利足ヲ以テ之ニ充ツヘシ
    第五条 元六条
 - 第8巻 p.443 -ページ画像 
鉄道御払下ケ代価上納済迄ノ間ハ第一国立銀行館内ヲ借受ケ立会ノ事務ヲ所弁スベシ
    第六条 元七条
元案ノ通リ
    第七条 元九条
年賦上納未済之時間ニ於テ同盟ノ中其担当金ノ全額又ハ幾分ヲ他人ニ譲ラント欲スル者ハ一同協議ノ上其承諾ヲ得テ之ヲ譲渡スベシ
議事右ニテ終ル、後会日限ハ追而渋沢氏より報告有之事
  七月廿九日○明治九年
    ○
乾第拾六号輪札ヲ以テ啓申、別紙廿一回臨時会議要件録並政府ト取結フヘキ約束書草案同御議定分共供御回覧候、例之通御順達周尾より御返却可被下候也
  九年七月廿九日             渋沢栄一
    ○
乾第十七号輪札ヲ以テ啓申、昨日御約束之通今日工部卿ニ相謁シ、約款増補ノ事情陳述仕候処、其全体ニ於テハ異義ヲ生セス、只第一条中少シク文字ノ校正有之、又第三条但書中十六年六月ハ第十四季ニ充テ云々ノ議ハ工部卿更ニ其然ラサルコトヲ暁知セラレ、乃チ第十三季迄ニ被相改申候、右ハ嘗テ御領承之為在候通強テ十四季ノ利足ヲ得ント欲セハ鉄道ノ利益ヲ下附セラレサル様可相成ニ付不得已承諾仕候、其他新ニ一章ヲ挿ミ彼ノ三百万円ノ内各位御担保ノ金額ヲ記載可致旨工部卿之嘱命ニ随ヒ第十九回ニ於テ御議定相成候担保金一覧ヲ差上同表第三段御担保合額之処ヲ記載被致候様申上置候、先ツ右之通ニ而工部卿ハ領納被致候得共、猶一応大最早大蔵卿《(脱アルカ)》ニ於テ御異存ハ有之間敷ニ付、其御確定之上ハ官ニ而清書両卿捺印之上両三日中ニ御下命可相成筈ニ御坐候間、其節ハ各位御捺印ノ儀御報可仕候、先は此段申上度輪札刻付ヲ以テ御順達周尾ヨリ御返却可被下候也
  九年七月廿九日午後六時十五分      渋沢栄一
追申、前書之通ニテ御結約相済候ニ付テハ、最前此願書ハ東京府ヲ経還達候儀ニ付、府庁ヘ之御達ハ太政官又ハ工部省ト被成下度旨ヲモ工部卿江申述候通リ承諾被致候
銀行トノ御約定書ハ昨日御議定之通リニテ浄書弐冊相製シ置、前書官府との御約書御調印之序ヲ以御捺印相願可申ト存候
本文之振合ニ付八月五日ニ於テ第一季上納之手順ニ相成候間、未タ其手当トシテ銀行江御振込無之方ニハ八月一日迄ニ御担保之金額御振込有之度、此段モ申上候也
   ○東京鉄道組合ヨリ申請スル所ノ稟牒ト云フハ明治九年三月十日呈出ノ「東京横浜間鉄道御払下請願御許可相成候ニ付更ニ上申仕候書付並政府トノ約束書」ヲ云フ。明治九年三月八日ノ項下ノ記事(本巻第四二六頁)参照。
   ○政府ノ始ノ指令書ハ、明治八年十月三十一日ノ項(本巻第三九八頁)参照。
   ○右ノ三月十日上申書ハ東京府権知事楠本正隆ヨリ正院宛伺書ト共ニ三月二十四日回送セラレ、同月二十七日太政大臣三条実美ヨリ工部省ニ右ニ関スル意見ヲ下問アリ、工部卿伊藤博文ハ四月十日付答申書ヲ上ル。正院ニ於テハ更ニ大蔵省ノ意見モ参酌シテ後、七月三日工部省宛達ニヨリ、会社ト
 - 第8巻 p.444 -ページ画像 
ノ折衝ヲ命ス。コノ間ニ於ケル政府修正案ハ次掲工部省記録参照。
   ○第二十一回組合会議ニ提出セラレタル伊藤工部卿内示ノ新草案ト云フハ今之ヲ詳カニセサレトモ、後是歳八月五日調印セル鉄道払下条約ノ各条項ト略同シキモノナルヘシ。之ヲ第十八回臨時会議前席ニ於ケル工部卿提案及ヒ組合修正案(第十八回臨時会議後席ニテ決定ノモノ)ト比較対照スレハ第二条十万円追増ノ分ハ七ケ年後ヨリ無利足十ケ年賦払込ヲ許シ、第十三条軌道ノ外停車場地所無税ヲ認メ、第十八条儲策三款ハ工部卿ノ提案ヲ認メシムル等ヲ要点トスル妥協案タル如シ。(明治九年八月五日ノ項参照)


工部省記録 第五巻(DK080031k-0008)
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工部省記録 第三巻(DK080031k-0009)
第8巻 p.444-445 ページ画像

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