デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

2章 交通
2節 鉄道
1款 東京鉄道組合
■綱文

第8巻 p.492-497(DK080037k) ページ画像

明治9年10月28日(1876年)

是ヨリ先、華族会館ニ於テ華族ノ金禄公債証書ヲ集合シテ管理運用セントスル企テアリ。玆ニ於テ東京鉄道組合華族ノ出資之ニ吸収セラレ愈々難渋トナラントスルヲ以テ、是日臨時会議ニ於テ特ニ鉄道払下年賦金ヲ右管理ノ外ニ置カン事ヲ華族会館督部長岩倉具視ニ請願スルニ決シ、栄一ニ願書ノ起草ヲ委ヌ。同月三十一日草案成リ之ヲ輪議ニ付ス。然レドモ其願意容レラレズ。


■資料

鉄道組合会議要件録 第三巻(DK080037k-0001)
第8巻 p.492-496 ページ画像

鉄道組合会議要件録 第三巻 (株式会社第一銀行所蔵)
    第廿七回臨時会議 十月廿八日於第一国立銀行閣内開之
                 出席人名
                     榊原政敬代理
                      塩谷正直
                     松平慶永松平茂昭代理
                      武田正規
                     井伊直憲井伊直安代理
                      金田師行
                     久松勝成久松定謨代理
                      河東坤
                     亀井玆監代理
                      橋本至実
                     大村純煦代理
                      稲田又右衛門
                     池田茂政池田章政代理
                      水原久雄
                      毛利元徳
                     松平頼聡代理
                      三宅十郎
 - 第8巻 p.493 -ページ画像 
                     徳川慶勝代理
                      井上喬
                     九条道孝代理
                      藤井祐澄
                     前田利同代理
                      浅野長雄
                     小室信夫代理
                      近藤潔
                     毛利元敏代理
                      難汲舟平
                     前田利嗣代理
                      北川亥之作
                      池田慶徳
                     池田輝知代理
                      勝部静男
                      伊達宗城
                     毛利元忠代理
                      柏村信
                     伊達宗徳代理
                      西園寺公成
                 総理代人 渋沢栄一
                 欠席   山内豊範
                 同    池田徳潤

    第一節
右一同着席ノ上総理代人ハ演説シテ曰、本日ノ儀ハ前約ノ如ク第廿五回会議ノ発案ニ係ル禄券運用方法三策ヲ撰定スヘキニ在リ、然ルニ会館○華族会館ノ意見ナル者アツテ已ニ此組合ノ権理ヲ牽制セラルヽニ際シ今我ニ撰ハント欲スル方法ハ彼ノ抳メントスル所ノ者ニシテ、且各位カ会館ニ対スル所ノ衷情ハ之ヲ推測スヘカラスト雖トモ、若シ平直ニ之ヲ論スレハ、去ル十八日第廿五回ノ会議ニ於テ各位カ委嘱アルヲ以テ其照管スル所ハ已ニ去ル廿五日第廿六回会議ニ於テ演説スル如クナレハ、今其三法ニ就テ之ヲ撰定スルハ条理上聊妨ケナカルヘシ、然リト雖トモ会館ノ意見ヲ以テ之ヲ与奪スル者トセハ、其撰定スル所モ恐クハ実際ニ於テ徒法ニ属スルコトモアラン、加之已ニ毛利君ノ如キ特別ノ説アルヲ以テ之ヲ考フレハ、先ツ能ク彼此ノ情勢ヲ鑑ミサルヘカラス、而シテ栄一ハ固ヨリ其事理ノ在ル所ニ従ツテ拮据スルコトヲ厭ハサル者ナリ、因テ問フ各位ハ彼ノ三法外ニ於テ更ニ新案ヲ求メントスルカ、抑三法ニ就テ撰定セントスルカ、請フ其卓論ヲ発出スヘシ
於是テ池田輝知代理勝部静男ハ第一動議ヲ起シテ曰、方法撰定ノコトハ暫ク措キ、先ツ会館ニ向ツテ其牽制スル所以ヲ問ヒ、然後再議スヘシ、伊達宗徳代理西園寺公成ハ第二動議ヲ起シテ曰、勝部氏ノ説可ナリト雖トモ、其牽制ノ所以ヲ問ヒ、之ニ因テ若シ此組合ノ存亡ニ関スルトセハ、恐ラクハ坐シテ死ヲ俟ツニ幾カラン、如カス彼ノ第三法ナリ将タ第二法ナリ之ヲ撰ンテ内稟シ、其批裁ヲ取ツテ決定スヘシ、然ルトキハ存亡名アリ、縦ヒ此組合ノ瓦解ニ属スルモ庶幾クハ公衆ニ対シ以テ辱ル所ナカルヘシ、於玆テ総理代人ハ第二動議ハ稟法ヲ以テ可ナル者ト雖トモ事叙ヲ以テ先後スル者ト為シテ之ヲ取ラス、而シテ第一動議ヲ取リ之ヲ以テ各位ノ同否ヲ問フニ各位皆之ニ同ス、但毛利元徳ハ前説ノ如ク組合会館ニ両従スルヲ以テ内稟ノ連署ニ加ルコトヲ諾セス、又前田利同ハ担保金額ハ禄券ニ依ラス支弁スヘシト云フヲ以テ連署ヲ辞シ、九条道孝モ亦之ニ同ス
    第二節
 - 第8巻 p.494 -ページ画像 
総理代人ハ各位ニ問フニ、已ニ前節ノ如ク内稟ニ決スルトキハ速力ニ其草案ヲ作ルヘシ、而シテ之ヲ議定センカ為メニ臨時会議ヲ開カンカ或ハ輪議法ニ付スヘキカヲ以テス、各位皆輪議法ニ付スヘキコトヲ望ム、又各位ニ問フニ、内稟ノ草作ハ文辞平静ニシテ推奥討微ノ意ヲ芒露セサランコトヲ要スルヲ以テス、於是テ勝部静男ハ第一動議ヲ起シ若シ其稟情ヲ容レラレサルトキハ、其所以ヲ明示アランコトヲ要スル字句ヲ点綴スヘキコトヲ以テス、因テ総理代人ハ其意ハ之ヲ点綴スヘク、而シテ其文辞ハ猶平静ニシテ芒角ナキコトヲ要スヘキヲ以テ、更ニ之ヲ各位ニ問フ、各位皆然リト為ス
    第三節
総理代人ハ各位ニ告テ曰ク、已ニ輪議法ニ付シ内稟草案ヲ議定スヘキコトニ決定セリ、然ルトキハ其稟牒開申ノ日、若シ其請願ヲ容レラレサルモ此組合ハ猶未タ以テ瓦解スル者ニアラス、其際更ニ各自ノ安危ヲ審案シ、以テ持存スヘキ方策ヲ必究スヘキニ在ラン、毛利元忠代理柏村信モ又諄説シテ曰、若シ内稟ノ容レラレサルトキハ其担保金額ヲ維持スヘキ各位ハ素ヨリ禄券ヲ恃マサル者タレハ、更ニ本位ニ復シテ履約スヘク、其維持スヘカラサル各位ノミ更ニ禄券運用ノコトヲ再願シ、或ハ他策ヲ案シ、勉メテ共立ノ手段アランコトヲ要ス、各位皆之ヲ諾ス
右会議畢リテ一同退場ス、時午後七時

坤第二号輪札ヲ以テ啓申、去ル廿八日第廿七回臨時会議ニ於テ御決定相成候禄券之儀ニ付、岩倉公ヘ上申書之儀は同日肝煎各位ニ於テ更ニ御協議之上、各位ヨリ池田慶徳公・伊達宗城公ニ宛テ開申相成候方順序ニモ可有之事ト被相決、右は文例上聊差別有之而已ニ而上申之旨意ニ於テ異変無之儀ニ付、別紙之通輪議案ヲ以テ及御回達候条、輪議規則ニ御照準之上早々御順達周尾ヨリ御返却可被下候也
  明治九年十月卅一日午後四時十分
                      渋沢栄一

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 (朱書) 此壱部組合中池田慶徳公ヲ除ク     徳川慶勝様     池田輝知様     池田茂政様 壱 通 池田章政様     松平慶永様     松平成昭様     伊達宗徳様     亀井玆監様 


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 (朱書) 此壱部組合中伊達宗城公・前田利同公・九条道孝公ヲ除ク     松平頼聡様     前田利嗣様 壱 通 井伊直憲様     毛利元敏様     榊原政敬様     井伊直安様 


 - 第8巻 p.495 -ページ画像 

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 (朱書) 此壱部組合中毛利元徳公ヲ除ク     小室信夫様     山内豊範様     久松勝成様 壱 通 久松定謨様     大村純熙様     池田徳潤様     毛利元忠様 



二申、去ル廿八日会議日誌ハ方今編製中ニ付、不日可及御回送候間、此段乍序申上置候也
一本文御輪議相済各通御返付相成候上、其御異同ヲ判定シ、多数ニ依リテ弥御上申可相成節ハ、本牒清写致シ、更ニ御捺印之儀御報知可仕候也

    禄券之儀ニ付悃願書輪議案
禄券御発行之儀、公布相成候ニ付、当会館ニ於テハ衆華族之為メニ其禄券ヲ堅固ニ保有シ家産上ニ困難無之様之ヲ併セテ会館ニ於テ管理セラレ、其運用方法ヲモ設ケラルヘキヲ以テ各自一己ニ禄券相用候儀ハ難相成旨御諭告之趣領承仕候、然ルニ拙者共儀ハ嘗テ同盟致シ、家禄ニ拠テ鉄道ノ事業ニ志シ、東京横浜間ノ軌道其外一切御払下之儀相願御許可之上本年八月五日政府ト御約束相結ヒ、尋テ年賦金ヲモ上納致シ候、抑モ此事業之儀ハ政府ノ御特准ト同盟ノ素志ト産業ノ堅固ナルト一モ尋常一様ノ平事ニアラス、殊ニ率先ノ効アツテ已ニ内外ニ欽慕セラレ誠ニ望外ノ光栄ヲ荷ヒ、感激之至ニ御座候、已ニ如此家禄ヲ以テ其計算ヲ立テ候儀ニ付此上ハ更ニ禄券ニ拠ルノ外方策無之候、蓋御諭告ノ如キハ到底同族ヲ愛顧セラルヽノ探キヨリ万一猥リニ禄券ヲ軽用シ、愆ツテ烏有ニ帰シ、竟ニ家産ノ安危ニモ関係スヘキ者有之候テハ不相成ニ付、不得止事覊縻撿束之方法ヲ被設候儀ト推測仕候、果シテ然ラハ拙者共鉄通事業之如キハ前顕之事情ニ而其安危得失ハ政府ノ条約ニ譲ツテ敢テ論スルヲ俟タサレハ、御愛顧ノ深キ処ニ於テモ尤満足致サレ候儀ト被存候間、拙者共廿壱名所属之禄券中ニテ右鉄道御払下年賦金ニ充候分丈ケハ覊縻撿束之方法外ニ擱レ候様奉願候、万一此事情御聴容不破下トキハ終ニ此組合モ維持仕兼候哉ト痛心仕候ニ付、右御聴容不相成ノ理由ハ寧口御垂示被下、私共一同安堵ノ地ヲ得候様御暁諭有之度、此段併セテ稟請仕候也
  明治九年十一月 日                 同盟連署印
    池田慶徳殿
    伊達宗城殿
   ○華族会館ハ明治六年十二月正親町公董・秋月種樹外五名首唱シテ華族通款社ヲ創メ、書籍館ヲ建設セントシテ岩倉具視ニ諮リ、其賛成ヲ得、翌七年一月松平慶永・伊達宗城・池田慶徳外四名ノ発起ニ成ル麝香間祗候華族ノ集会ト合併シ、同年二月会議局・書籍局・講義局・少年勉学局・翻訳局・雑務局・会食所等ヲ包含スル華族大会館建設ノ議ヲ起シ、同年六月一日創立セラルヽニ至ル。初メ嵯峨実篤ヲ副館長ニ、松平慶永・伊達宗城・中御門経之幹事ニ、池田慶徳幹事兼会計局長トナル。翌八年十月、天皇臨幸アリ。九年一月開館式ヲ挙ケ、同年四月岩倉具視館長、池田慶徳副館長トナ
 - 第8巻 p.496 -ページ画像 
ル。而シテ九年五月ニハ宮内省令ニヨリ全華族ヲ六部ニ分チ、督部長(岩倉具視)副督部長(池田慶徳)及部長(伊達宗城外五名)ヲ置キ、華族ニ関スル一切ノ事務ヲ管掌セシムルヤ、其後局ヲ麹町区永田町二丁目ノ会館内ニ置キ総テ此処ヨリ発令ス。後明治十年一日十日ヨリ部長局ハ公立役局トナリ、会館ハ依然私立ノ体ヲ存シ、一邸ニ併居スルモ是ヨリ公私ノ別判然トナレリ。(以上華族会館誌自第一巻至第四巻ニ拠ル)
    即チ右悃願書ヲ池田慶徳・伊達宗城ニ宛テタルハ華族会館副督部長並ニ同第一部長タレハナリ。
   ○華族会館ノ意見及諭告ニツキテハ明治九年九月十八日ノ項所収「参考」岩倉公実記・華族会館誌ノ記事(本巻第四七一・四七三頁)参照。
   ○右ノ悃願書ハ後呈出セスシテ廃ム。明治九年十一月十日ノ項参照。


雨夜譚会談話筆記 上巻・第一三〇―一三二頁(DK080037k-0002)
第8巻 p.496 ページ画像

雨夜譚会談話筆記 上巻・第一三〇―一三二頁
  第六回昭和二年四月廿六日 於飛鳥山邸
○上略 此の華族組合では、斯くて奥羽の計画を変更して横浜のものゝ払下を受けることになつた。私の考へでは鉄道の実際さへよく判れば輿論は之に向ひ資本は困難なく集るであらうとして居た。すると又此処に鉄道経営が違却するやうなことになつた。それは岩倉具視さんが華族の資金を以て十五銀行を起し、之を利用して奥州の鉄道を起さうとした為め、組合に加入して居る華族がそちらへも此方へも資金を出すことは出来ない始末になり、結局岩倉さんの説に従ふことになつたので、私は「岩倉さんの措置が余りに暴戻である」と云ふと、先では「怪しからんことを云ふ」と云つて居たが、結局鉄道払下のことは中止の已むなきに到つた。此の十五銀行を華族が起したのは明治十年で、此年西南戦争があつた為め、大蔵省で資金に窮したが、太政官札を増加する訳にも行かないので、大銀行から札を発行させそれを資源にしやうとしたので、之は大隈さんの考へであつたらしく、岩倉さんが中心となり華族を集めて十五銀行を創立した。それには毛利も前田も池田も仲間になつた。私共は「其方の出資をお断りなさい」と云つたが、岩倉さんが承知せず、致方なくそちらへ出資する為め、こちらの横浜鉄道払下の方は、已むなく中止せねばならぬ運命となつたのである。然し半期二十幾万円づゝを払込んで居たので一ケ年半で七十万円近くを納入してあつた。それを解約の為め返してもらつた。それが為めに民業として折角発展すべき気運にあつた鉄道が此処に頓挫したと云ヘる。又此の返してもらつた金は前回に話した通り海上保険会社と、東洋紡績に合併した大阪紡績の前身三軒家の紡績の資金になつたのである。


鉄道回章留(DK080037k-0003)
第8巻 p.496-497 ページ画像

鉄道回章留(株式会社第一銀行所蔵)
    ○
乾第廿四号輸札を以啓申、去月廿八日第廿七回臨時会議要件日誌編製仕候間御回覧供候、去廿五日第廿六回之分ハ日誌編輯仕置候得共、別段御議之廉モ無之、只演説而已ニ而其書取ハ已ニ謄本数部供御順覧候儀ニ付、更ニ日誌ハ御回達不仕此段御諒承可被下候、輪札早々御順達周尾ヨリ御返却可被下候也
  明治九年十一月二日午後二時十五分
 - 第8巻 p.497 -ページ画像 
                    渋沢栄一
  伊達宗城様  承候
  松平頼聡様  同
  前田利嗣様  同
  井伊直憲様
  毛利元敏様
  前田利同様  同
  九条道孝様
  此方様    同