デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.15

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

3章 商工業
25節 取引所
1款 東京株式取引所
■綱文

第13巻 p.280-358(DK130029k) ページ画像

明治11年6月1日(1878年)

東京株式取引所開業ス。是ヨリ先栄一等、同所創立ノ允准ヲ得シヲ以テ、創業事務ニ努メツツアリシ処、是年五月四日新ニ株式取引所条例発布セラレ、同七日大蔵省当局ヨリ栄一等先キニ提出セル定款申合規則等ヲ却下、アラタメテ新条例ニ拠リ出願スベキ旨諭達アリ。玆ニ同十日再願、尋イデ是日、遂ニ東京日本橋区兜町ニ資本金二十万円、本邦最初ノ株式取引所ノ開業ヲ見ル。


■資料

調査彙報 第六二号・第一一五頁〔昭和八年一月二〇日〕 東株に関する公私日表 明治十一年一月―五月(DK130029k-0001)
第13巻 p.280-281 ページ画像

調査彙報 第六二号・第一一五頁〔昭和八年一月二〇日〕
    ○東株に関する公私日表
         明治十一年一月―五月
一月十七日 株式取引所創立準備の為め、株主集会を開き、小室信夫氏・福地源一郎氏・渋沢喜作氏・小松彰氏・小林猶右衛門氏の五名を肝煎に選挙し、頭取は他日肝煎中より更に互選を以て推挙なすべき事決定す
一月十九日 一大区十五小区兜町六番地所在旧島田組の家を第一銀行より参千五百円にて買受の件決定。同建物増築修理の件決定す
一月三十一日 互選の結果、肝煎中より小松彰氏を頭取に推挙す
 - 第13巻 p.281 -ページ画像 
二月 日 大蔵卿は株式取引所条例の改正案を太政官に稟伺す
三月 日 堀野治兵衛氏等は資本金七万五千円を以て本町四丁目十六番地に株式取引所を創立せんことを請願せり、然れども既に渋沢栄一氏等の願を聞かれたれば聴許せられず
四月 日 元老院にて株式取引所条例改定第一読会開かる
五月四日 明治七年布告第百七号株式取引所条例廃止し新に太政官布告第八号株式取引所新条例発布さる
五月七日 政府は曩きに渋沢氏等が進達したる定款及び申合規則を却下し、更に新条例に依りて之を改訂再申すべき旨諭達さる
五月十日 大蔵省諭達に依り定款申合規則と共に新取引所条例による創立願書を提出す(文献図版二及三参照)
五月二十二日 開業免状下附につき東京曙、読売新聞其他にて広告す(文献図版四参照)
   ○文献図版略ス。


第一回半季実際考課状 第一―四頁明治一一年六月乃至一二月(DK130029k-0002)
第13巻 p.281-282 ページ画像

第一回半季実際考課状 第一―四頁明治一一年六月乃至一二月
                   (東京株式取引所所蔵)
            東京府下兜町 東京株式取引所
 明治十一年六月一日ヨリ十二月三十一日ニ至ル七ケ月間当株式取引所ニ於テ為セル諸公債証書諸株式ノ売買高及ヒ当所創立ノ顛末、諸勘定ノ各項等ヲ精査シ、今之ヲ蒐集シテ以テ株主各位ニ公示スル左ノ如シ
  附言本年上半季ニ属スル第六月ノ一ケ月ヲ以テ此季内ニ併スモノハ、当時営業日猶浅ク別ニ一ケ月分ノ実際景状ヲ報告セサルニ由ル
    ○取引所創立ノ事
一明治七年太政官第百七号公布株式取引条例ヲ遵奉シ発起人深川亮蔵外十名ハ株式取引所ヲ東京府下兜町六番地ニ創立スヘキノ願書及ヒ創立証書定款申合規則ノ稿案ヲ製シ、明治十年十二月廿五日ヲ以テ之ヲ東京府庁ニ開申シ其奥書官印ヲ得、翌廿六日ニ於テ之ヲ大蔵省ニ上稟ス、同月廿八日創立ノ允准ヲ賜リタリ、而シテ定款申合規則ハ尚御詮議ノ末何分ノ御指令アルヘキニ由リ他日ノ命ヲ俟チテ創立事業ニ着手スヘキ旨ヲ下達セラル
一本年五月太政官第八号ヲ以テ更ニ株式取引所条例ヲ公布セラレ、次テ同月七日ヲ以テ大蔵省ハ最前ノ稟牒即創立証書定款申合規則等ヲ下付セラレ新条例ニ照シ改テ開稟スヘキ旨ヲ下命セラル、是ニ於テ該公布ニ準拠シテ其書類ヲ改正取捨シ同月十日再ヒ東京府庁ノ奥書官印ヲ得、之ヲ大蔵省ニ申稟シ、同月十五日創立ノ允准ヲ蒙リ同月廿二日開業免状ヲ拝賜ス、輙チ六月一日ヲ以テ開業セリ
    ○株主集会決議ノ事
 本年一月十七日株主初度ノ集会ヲ開キ、取引所ノ位置株数ノ金額家屋ノ購入株金徴集ノ方法等ヲ議決シ、小室信夫・福地源一郎・渋沢喜作・小松彰・小林猶右衛門ヲ肝煎ニ選挙シタリ
    ○資本金ノ事
 - 第13巻 p.282 -ページ画像 
 定款第二章第一条ニ照シ資本金三分ノ二ハ開業前ニ在リテ之ヲ大蔵省ニ預クヘキ成規ニ拠リ、本年五月二十日ヲ期シ一株百円ニ付七拾円即チ資本金額廿万円ニ付金拾四万円ヲ徴集シ、起業公債ニ換ヘ全金払込ノ仮証券ト為シ、同月廿一日之ヲ大蔵省ニ預ケタリ、但シ徴集残金六万円ハ九月三十日ヲ限リテ之ヲ集メタリ、時ニ起業公債応募ノ額其予算ニ超過シ我カ取引所引受高モ亦削減ヲ承ケタルニ由リ曩ニ大蔵省ニ預ケタル仮証券ノ下附ヲ申請シ、十一月十四日ニ於テ更ニ起業公債全金払込仮証券八万八千四百円及ヒ秩禄公債証書額面六万六千八百五拾円ヲ預リ、其残余五万三千四百円余ハ之ヲ第一国立銀行ニ預ケタリ


半季実際考課状 第一回・第五頁明治一二年一月一二日(DK130029k-0003)
第13巻 p.282 ページ画像

半季実際考課状 第一回・第五頁明治一二年一月一二日 (東京株式取引所所蔵)
    ○営業事務ノ事
一当取引所売買諸証拠金其他ノ金円共総テ之ヲ第一国立銀行ニ預クヘキヲ定約シ、爾来現ニ之ヲ履行セリ


(芝崎確次郎) 日記簿 明治一一年(DK130029k-0004)
第13巻 p.282 ページ画像

(芝崎確次郎) 日記簿 明治一一年 (芝崎猪根吉氏所蔵)
三十一日○一月 雪止空雲
○上略
株式取引所一件ニ付銀行二階ニおゐて来客、西洋料理出ス、午前十一時後退社《(後)》、跡掃除旁十二時帰宅寝臥
○下略


半季実際考課状 第一回・第二六―二七頁明治一二年一月一二日(DK130029k-0005)
第13巻 p.282 ページ画像

半季実際考課状 第一回・第二六―二七頁明治一二年一月一二日
                     (東京株式取引所所蔵)
    ○役員進退ノ事
一本年○明治一一年一月三十一日肝煎役ノ互選ヲ以テ小松彰ヲ頭取ニ挙ケ又小林猶右衛門ヲシテ支配人ヲ兼任セシメタリ
一五月十九日諸葛信澄ヲ副支配人兼市場目付役ニ命シ、寺田政忠ヲ二等書記方兼勘定方ニ、伊藤幹一ヲ二等書記方兼簿記方ニ、山郷善助・小山全吉ヲ二等簿記方ニ、鈴木登・田中清忠ヲ三等書記方ニ、川村増三郎・堀野元次郎ヲ三等勘定方ニ、杉浦直也ヲ三等簿記方ニ、中条虎三・大塚弁之助ヲ簿記方手伝ニ命シタリ
一五月廿四日志倉光信ヲ勘定方助役ニ、七月五日簿記方手伝中条虎三ヲ三等簿記方ニ、七月廿二日山田金太郎ヲ二等簿記方ニ命シタリ
一八月七日二等簿記方山郷善助ハ其請ニ依リテ雇ヲ解キタリ
一九月十日岩崎鉄三郎ヲ三等勘定方ニ命シタリ


東京株式取引所第一期営業報告 第三四八頁明治一七年四月(DK130029k-0006)
第13巻 p.282-283 ページ画像

東京株式取引所第一期営業報告 第三四八頁明治一七年四月
    第五款 営業事務之事
○上略
    第一項 創業事務ノ事
明治十一年二月五日ヨリ同年五月三十一日ニ至ル三ケ月有余ハ即チ創業ノ時限ニ属スルモノニシテ、此間ニ執行シタル事務ハ啻ニ十百ノミ
 - 第13巻 p.283 -ページ画像 
ナラズ業務創立ノ上願ナリ株金募集ノ事ナリ、銀行ニ対スル借入金ノ事ナリ、建物及ヒ什器買入ノ事ナリ、凡ソ事ノ創業ニ属スル者ハ挙テ之ヲ行ハザルハナカリキ
此創業事務ノ為メニ消費シタル金額ハ合計九千三百〇弐円七拾銭八厘トス、此内建物買入並ニ其増築修繕ニ属スル者六千三百弐拾三円八拾壱銭弐厘、什器買入ニ属スル者千百四拾四円〇八銭三厘、創立費ニ属スル者千八百三拾四円八拾壱銭三厘ナリ、而シテ此費用ハ毎季ノ利益金ヲ以テ之ヲ消却シ、十三年後半季ニ至リテ全ク之ヲ償了セリ


取引所史料 (加藤福太郎編著) 元老院会議筆記抄・第八頁〔昭和一一年一二月〕(DK130029k-0007)
第13巻 p.283 ページ画像

著作権保護期間中、著者没年不詳、および著作権調査中の著作物は、ウェブでの全文公開対象としておりません。
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取引所史料 (加藤福太郎編著) 元老院会議筆記抄・第一五―四二頁〔昭和一一年一二月〕(DK130029k-0008)
第13巻 p.283-303 ページ画像

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法令全書 明治十一年・第二―八頁 太政官布告 第八号(五月四日輪廓附)(DK130029k-0009)
第13巻 p.304-307 ページ画像

法令全書 明治十一年・第二―八頁
太政官布告 第八号(五月四日輪廓附)
明治七年十月第百七号布告株式取引条例相廃シ更ニ別冊ノ通相定候条此旨布告候事
(別冊)
  株式取引所条例
    第一章 株式取引所創立又開業ノコト
第一条 株式取引所ハ株式仲買人ノ集会シテ日本政府ノ諸公債証書及日本政府ノ条例ヲ遵奉シテ発行シタル銀行並諸会社ノ株券等ヲ売買取引スル所ナリ、而シテ之ヲ創立セントスルモノハ其創立願書ヘ其地方長官ノ奥書ヲ受ケ之ヲ大蔵省ヘ差出シ大蔵卿ノ允許ヲ請フヘシ
第二条 此条例ヲ遵奉シテ株式取引所ヲ創立スルニハ其発起人少クトモ拾名以上ニシテ其資本金額ハ弐拾万円以上タルヘシ、而シテ其資本金総高ノ半数以上ニ当ル金額ヲ右発起人総員ニテ出スヘシ
第三条 大蔵卿ハ此創立願書ヲ受領シテ其許可スヘキヤ否ヲ考案シ、或ハ之ヲ許可シ或ハ之ヲ許可セサルコトアルヘシ
第四条 発起人右創立許可ヲ受クルニ於テハ諸般ノ規程ヲ議定シテ創立証書及定款申合規則各二通ヲ製シ株主一同記名調印ノ上、地方長官ノ奥書証印ヲ受ケ之ヲ大蔵省ヘ差出スヘシ
  但創立証書及定款等ハ創立許可ヲ得タル日ヨリ遅クトモ三ケ月間ニ差出スヘシ、若シ右期限内ニ差出サヽルトキハ其許可ハ無効ニ属スヘシ
第五条 右創立証書及定款申合規則ハ左ノ主旨ニ従ヒ各取引所ノ便宜ニ依テ之ヲ製定スヘシ、然レトモ必ス此条例ノ旨趣ニ牴解《(触)》スルヲ得サルヘシ
  創立証書ハ取引所ヲ創立スルニ付株主一同決定シタル綱領ノ条件及ヒ其責任ノ有限或無限有限責任トハ負債償却ノ義務ニ於テ該取引所ノ株券限リ或ハ其株券ノ二倍等其限アルヲ云ヒ、無限責任トハ株主一同相連帯シテ各自ノ資力ヲ竭スニ至ルヲ云フヲ明記シ、必ス之ヲ遵守践行スヘキ旨ヲ政府ニ対シ保証スルモノナリ
  定款ハ取引所ヲ創立スルニ付株主一同其取引ノ便宜ヲ商量決定シテ互相確守スヘキ約束条款ヲ記載スルモノナリ
  申合規則ハ売買取引ニ附売買主双方ノ間ニ於テ取引所ニ対シ確守スヘキ規程ヲ記載スルモノナリ
第六条 大蔵卿ハ右創立証書及定款申合規則ヲ検案シテ不都合ナシト思考スルニ於テハ、之ニ奥書証印ヲ加ヘ免状ト共ニ之ヲ其取引所ニ下付シテ開業ヲ許スヘシ
  但爾后取引所ノ都合ニヨリ其創立証書及ヒ定款申合規則ヲ改正加除セントスルトキハ其時々大蔵卿ノ認許ヲ受クヘシ
第七条 取引所ハ開業前ニ於テ其営業保証ノ為メ資本金高ノ三分二以上ニ当ル現金又ハ公債証書(大蔵省ヨリ指定スル価格ヲ以テ)ヲ大蔵省ニ差出シ預置クヘシ
  但シ開業免状ヲ得タル後満五ケ月ニ至リ猶本文ノ手続ヲナサス又ハ開業セサルコトアルトキハ其免状ハ取消タルヘシ
 - 第13巻 p.305 -ページ画像 
第八条 取引所ハ開業ノ日ヨリ満五ケ年ノ間其営業ヲ保続スルヲ得ヘシ、右満期ニ至リ尚ホ営業セント欲スルトキハ更ニ允許ヲ受クヘシ
第九条 取引所ニ於テ開業免状ヲ受ケタル上ハ、其免状並ニ創立証書ノ写ヲ添ヘ、何月何日ヨリ其商業ヲ創ムヘキ旨ヲ新聞紙又ハ其他ノ方法ヲ以テ世上ニ公告スヘシ
    第二章 株主並ニ株手形ノ事
第十条 各株主ヨリ入金シタル金額ハ分テ百円以上一定ノ株式トナシ株手形ヲ製シ其株主タルモノヘ之ヲ交附スヘシ
第十一条 株主ハ其取引所ノ営業時間ハ何時ニテモ、其金員及ヒ諸帖簿ヲ検閲スルコトヲ得ヘシ
第十二条 株主ハ何等ノ事故アルトモ、其取引所解散ノ期ニ至ラサル間ハ其株金ヲ取戻スコトヲ得ス
第十三条 株主ハ其取引所ノ承認ヲ得タル上、其所持ノ株式ヲ売渡シ又ハ譲渡シヲナスコトヲ得ヘシ
第十四条 株主タルモノハ其取引所ノ役員タラサル時間ハ何時ニテモ仲買人タルヲ得ヘシト雖モ、仲買人トナリタルトキハ仲買人ノ規則ヲ遵守スヘシ、而シテ売買上ニ於テハ之ヲ仲買人ト称スヘシ
    第三章 仲買人ノコト
第十五条 取引所ノ規定ニ従ヒ、相当ノ身元金ヲ差入レ、取引所ノ承認ヲ得テ、自ラ株式売買ノ取引ヲナスモノヲ、其取引所ノ仲買人ト称スヘシ
  但シ仲買人ニ於テ仮令他人ノ依頼ヲ受ケ売買セシモノト雖モ、取引所ニ於テハ都テ仲買人ノ売買シタルモノト看做スヘシ
第十六条 仲買人ノ身元金ハ少クトモ百円以上タルヘシ
第十七条 仲買人ハ丁年者ニ限ルヘシ、且ツ一度身代限ノ処分ヲ受ケタル者ハ、其負債ノ義務ヲ免レタル実証アルニ非サレハ、入社ヲ許サヽルヘシ
    第四章 役員ノコト
第十八条 取引所ノ役員ト称スルモノハ左ノ如シ
  頭取 肝煎
 其他支配人書記方計算方等ノ名義ヲ以テ役員ヲ定ムルハ取引所ノ便宜ニ任ス
第十九条 取引所ノ肝煎ハ少クトモ五名以上ト定メ、株主ノ総会ニ於テ其取引所ノ規定ニ従ヒ現ニ三拾株以上ヲ所持スル株主中ヨリ之ヲ選定シ、又其肝煎ハ同僚中ヨリ頭取壱人ヲ推挙スヘシ、而シテ支配人以下ノ諸役員ハ頭取並ニ肝煎ノ衆議ニ依リ株主又ハ株主外ヨリ之ヲ選任スヘシ
第廿条 取引所役員ノ在職年限ハ一ケ年タルヘシ
第廿一条 頭取ハ取引所ノ事務ヲ総轄シ、取引所一切ノ責ニ任スヘシ
第廿二条 頭取肝煎ハ其仲買人売買上ノ差縺レヲ解キ、違約者ヲ処分スルノ責任アリトス
第廿三条 取引所諸役員職務上ノ責任権限等ハ其取引所ニ於テ適当ノ規程ヲ設ケ、之ヲ定款中ニ記載スヘシ
    第五章 一般ノ規程
 - 第13巻 p.306 -ページ画像 
第二十四条 外国人ヲ取引所ノ株主並仲買人ト為スコトヲ得ス
第二十五条 取引所ニ於テ株式買売取引ヲナス者ハ其取引所ノ承認ヲ経タル仲買人ニ限ルヘシ
第二十六条 取引所ニ関係アル政府ノ官吏ハ其取引所ノ株主タルヲ許サス
第二十七条 取引所ノ役員タルモノハ其取引所ニ於テ売買本人又ハ仲買人トナルヘカラス
第二十八条 取引所ノ役員及ヒ仲買人ハ、他ノ株式取引ヲ為ス会社ノ役員又ハ仲買人或ハ他ノ銀行並ニ諸会社(官許ヲ経タル合本会社)ノ役員タルヲ得ス
第二十九条 取引所ハ其営業ノ為メ緊要ナル地所家屋ヲ除クノ外地所家屋ヲ所持スルヲ許サス、又之ヲ売買スヘカラス
第三十条 政府ニ於テ売買ヲ許シタル諸公債証書及ヒ政府ノ条例ヲ遵奉シテ発行シタル銀行並諸会社ノ株券等ノ売買ヲ除クノ外、此取引所ニ於テ一切他ノ物件ヲ売買シ他ノ事業ヲ営ムヘカラス
第三十一条 取引所ハ第一章第七条ニ掲ケタル営業保証ノ為メ大蔵省ヘ預クヘキ公債証書ヲ除クノ外、自ラ諸公債証書諸株券等ヲ売買シ又ハ之ヲ所持スヘカラス
第三十二条 取引所ハ諸証拠金ヲ使用スヘカラス、又貸附金ヲナスヘカラス
第三十三条 取引所ニ於テ違約人ヲ処分スルハ、其証拠金及ヒ身元金ヲ以テ、其違約ニ依リ相手方ニ於テ失ヒタル利得ト蒙リタル損害トヲ償ハシムルニ止マルヘシ
第三十四条 取引所ハ其取引所ニ於テ株式等ノ売買ヲ認許シタル銀行並諸会社及ヒ新立会社ノ株式ヲ売買スルコトノ依頼ヲ受ルト雖トモ其事情ニヨリ之ヲ停止シ又ハ之ヲ許否スルノ権ヲ有ス
第三十五条 取引所ノ諸願伺届又ハ諸証書約定書及往復ノ文書等取引所一般ニ関スル事件ハ頭取肝煎等コレニ記名調印スヘキハ勿論ナレトモ、必ス其取引所ノ名ヲ署シ取引所ノ印ヲ捺スヘシ
    第六章 売買取引ノコト
第三十六条 取引所ニ於テ為ス所ノ売買取引ハ現場ト定期ノ二様ニ分チ必ス現物ノ受渡シヲ為スヘシ
  但三ケ月ヨリ永キ定期ノ約定ヲナスヘカラス
第三十七条 凡取引所ニ於テ売買ノ約定ヲナシ、其定期ニ係ルモノハ約定金高百分ノ五宛ニ下ラサル証拠金ヲ売買双方ヨリ差入ル可シ、而シテ其期限中相庭ノ高低等ニヨリテハ追証拠金増証拠金等ヲ差入シムルコトヲ得ヘシ
第三十八条 約定取引ノ期限ニ至ツテハ其品種ニ依リ記名書替等其他受渡シノ手続ハ政府又ハ諸会社ノ成規ニ照シ之ヲ履行スヘシ
第三十九条 約定期限内ニ於テ之ヲ転売スルヲ得ヘシト雖トモ、其期日ニ至レハ必ス現物ノ受渡ヲ為スヘシ
第四十条 売買主ニ於テ諸証拠金ノ差入レヲ怠リ又ハ期限ニ至リテ其約定ヲ履行セサル者、及ヒ私ニ売買ノ約定ヲ為シ之ヲ公ニセサルモノ等ハ都テ之ヲ違約人ト為スヘシ
 - 第13巻 p.307 -ページ画像 
    第七章 手数料ノコト
第四十一条 取引所ニ於テ収領スヘキ手数料ハ(売買双方ヨリ)其売買金高現場取引ハ千分ノ一、定期取引ハ千分ノ二宛ニ超ユヘカラス
第四十二条 手数料ハ其決算ノ時ニ至リ売買取引ニ関係スル他ノ債主ニ先ツテ之ヲ収受スルコトヲ得ヘシ
    第八章 検査ノ事
第四十三条 大蔵卿ニ於テ要用ト思考スルトキハ、何時ニテモ官員ヲ派遣シ或ハ其地方長官ヘ達シテ、其取引所ノ業体及ヒ金銀其他諸帖簿等ヲ検査セシムルコトアルヘシ
    第九章 帖簿ノコト
第四十四条 取引所ハ毎日取扱ノ事項ハ勿論金銀ノ出納等凡テ之ヲ詳明正確ニ記載シ、且其簿記ノ方法ニ於テ大蔵卿ノ差図アルトキハ其差図ニ従フヘシ
第四十五条 取引所ニ於テ製定使用スル処ノ諸帖簿ハ其名目用法ヲ詳記シ、之ヲ大蔵省ヘ届出ヘシ
    第十章 諸報告ノコト
第四十六条 取引所ハ売買実際ノ報告及金銀出納表、其他役員ノ進退並株主仲買人ノ姓名等、大蔵卿ノ指命スル処ニ従ヒ、時々報告ヲナスヘシ
    第十一章 納税ノコト
第四十七条 此取引所ハ追テ政府ニ於テ制定施行スル所ノ収税規則ニ遵ヒ相当ノ税金ヲ納ムヘシ
    第十二章 罰則
第四十八条 取引所ノ役員及株主並仲買人等此条例ヲ犯スカ又ハ役員タルモノ株主並仲買人ノ此条例ニ背戻シタルヲ不問ニ措キ又ハ背戻セシメタル実証アルトキハ、役員並ニ本人トモ其事ノ軽重ニ依リ三拾円ヨリ少ナカラス千円ヨリ多カラサル罰金ヲ科スヘシ
第四十九条 検査官員ノ命ヲ拒ミ帖簿書数等《(類)》ヲ差出サヽルカ又ハ其疑問ニ答弁ヲ為サヽル者アルトキハ、頭取又ハ其主任者ニ拾円ヨリ少ナカラス五拾円ヨリ多カラサル罰金ヲ科スヘシ


諸願伺届案決議 自明治一〇年一二月至明治一一年一二月(DK130029k-0010)
第13巻 p.307-308 ページ画像

諸願伺届案決議 自明治一〇年一二月至明治一一年一二月 (東京株式取引所所蔵)
   (彰)
   
    株式取引所創立願書
株式取引所創立之義ニ付、本月七日御達之旨ヲ奉シ、今般太政官第八号公布ニ照準、右株式取引所創立仕度、別紙創立証書並定款申合規則相添、創立之御許可奉願候也
  明治十一年五月十日     株式取引所創立願人総代
                      小松彰
                同
                      渋沢栄一
    大蔵卿 大隈重信殿
   (彰)
   
    株式取引所創立之義ニ付願書
 - 第13巻 p.308 -ページ画像 
私共発起ヲ以、当府下第一大区十五小区兜町六番地ニ於テ株式取引所ヲ創立仕度奉存候ニ付、別紙大蔵省江之願書並創立証書江、御庁之奥書官印御加被成下度、創立証書定款申合規則各正副三通相添、此段奉願候也
  明治十一年五月十日     株式取引所創立願人総代
                      小松彰
                同
                      渋沢栄一
    東京府知事 楠本正隆殿


東京株式取引所創立証書(DK130029k-0011)
第13巻 p.308-309 ページ画像

東京株式取引所創立証書       (東京株式取引所所蔵)
明治十一年五月四日大日本政府ニ於テ制定セラレタル株式取引所条例ニ基キ、株式取引所ヲ創立シ、其商業ヲ経営シ、株主一同ノ利益ヲ謀ル為メ、此証書第五条ニ連署シタル者、協力結社シテ左ノ創立証書ヲ取極候也
    第一条
当取引所ノ総員ハ株式取所条例ノ旨趣ヲ遵奉シ、且取引所定款及申合規則ヲ遵守ス可シ
    第二条
当取引所ノ名号ハ東京株式取引所ト称ス可シ
    第三条
此取引所ハ東京第壱大区拾五小区兜町六番地ニ取建可シ
    第四条
当取引所ノ営業年限ハ開業ノ日ヨリ満五ケ年間タル可シ
    第五条
当取引所ノ資本金ハ弐拾万円ニシテ、壱株ヲ金百円ト定メ、之ヲ弐千株ト為シ、各自所持スヘキ株数並其属籍住所姓名ハ左ノ如シ

  株数         属籍     住所                  姓名
百四拾株此金壱万四千円 長崎県士族 東京府下第一大区壱小区永田町弐丁目壱番地 深川亮蔵
九拾八株此金九千八百円 東京府平民 東京府下第六大区□小区深川福住町四番地  渋沢栄一
                                        ○外九十三名略
合計 株数弐千株此金弐拾万円                        株主九十五名

    第六条
当取引所ノ株主ハ其責任ヲ保証有限ト定ムヘシ、故ニ若シ取引所ノ鎖店又ハ非常ノ損害ヲ受ケタル場合ニ際シテ、其負債及ヒ右ニ関シタル入費ヲ償弁スル為メ、現在所持ノ株高二倍迄ヲ負担シ更ニ出金ス可シ
    第七条
当取引所ノ株主及仲買人ハ内国人ニ限ルヘシ
右ニ掲ル条款ハ株主一同必ス遵守践行スヘキ証拠トシテ、爰ニ姓名ヲ自記シ、調印致シ候也
  明治十一年五月           深川亮蔵(印)
                    渋沢栄一(印)
                      ○外九十三名略
前書之通相違無之候也
 - 第13巻 p.309 -ページ画像 
  明治十一年五月廿日
            東京府知事 楠本正隆
右東京株式取引所ノ創立証書ハ正確ト認メタルニ付、其証拠トシテ爰ニ奥書調印シ、併セテ官印ヲ鈐シ、以テ下付スルモノ也
  明治十一年五月廿二日
              大蔵卿 大隈重信
    大蔵省印


銀行課第一次報告 第一八七―一九三頁明治六年七月―明治一二年六月(DK130029k-0012)
第13巻 p.309-311 ページ画像

銀行課第一次報告 第一八七―一九三頁明治六年七月―明治一二年六月
    第十七款 株式取引所ノ事
○上略
抑株式取引条例ノ頒布アリシヨリ其創立ヲ請願スル者アリト雖モ、該条例ノ趣旨或ハ現時ノ情態ニ適セサル者アリテ未タ之ヲ実施セサル者既ニ三年、是ニ於テカ我大蔵卿閣下ハ尚欧米各国ノ成例及我民間ノ慣法ヲ参酌シ、十一年二月該条例ノ改正案ヲ太政官ニ稟伺ス、太政官ハ之ヲ裁可シ、其五月四日従来ノ条例ヲ廃シ、新ニ改定条例ヲ布告セラル、而シテ大蔵卿閣下ハ該取引所ノ設立ハ猶当分東京大坂各一ケ所ニ限ルヘキ旨ヲ布達セラル、今新旧条例ヲ対照シ、其要旨ヲ観察スルニ旧条例ハ専ラ仲買人ノ責任ヲ重クシ新条例ハ之ヲ取引所全体ニ負担セシム、且旧条例ハ其款項稍細目ニ渉リ、新条例ハ其大綱ヲ挙テ他ハ此旨趣ヲ遵奉シ取引所便宜ノ所定ニ任ス、而シテ旧条例ハ無慮三十七条九十四節、新条例ハ十二章四十九条ニ過ズ、亦以テ其繁簡ヲ推知スベシ、試ニ其条件中異同ノ著キモノ二三ヲ左ニ摘載セン
 旧条例ハ発起人五人以上第二条第一節ニシテ、資本金総高ノ三分一以上ヲ出スモノトシ第三条第二節新条例ハ十人以上ニシテ資本ノ半数以上ヲ出スモノトス第一章第二条而シテ新条例ハ資本金ヲ二拾万以上ト定メ同上旧条例ハ其定限ナク唯売買証拠金ノ員額ヲ量リ凡ソ其四分一ニ応スヘキ金高ヲ以テ限リトス第六条第一節
 新条例ハ創立許可ノ日ヨリ三ケ月以内創立証書及定款申合規則ヲ差出サヽル時ハ其許可ハ無効トシ第一章第四条且開業免状ヲ得タル後五ケ月ニ及ヒ営業保証ノ為メ現金或ハ公債証書預托ノ手続ヲナサス又ハ開業セサル事アル時ハ其免状ハ取消トス第一章第七条而シテ旧条例ハ此等ノ事件ニ及ハス、又新条例ニハ株主中ヨリ現ニ三十株以上ヲ所持スルモノ五名以上ヲ撰ヒ該取引所ノ肝煎トシ第四章第十九条旧条例ハ単ニ十名以上二十名マテノ肝煎ヲ撰挙スルニ止リ第八条第八節曾テ其分限ニ及フコトナシ
以上諸件ハ新条例ニ於テ取引所ノ創立ヲ厳ニシ、資産富有人物着実ナル者多数共同スルニアラサレハ、容易ニ之ヲ企図スル能ハサラシムルモノトシ、蓋シ会社ノ隆替確否ハ専ラ其株主ノ身上如何ニ関係アレバナリ
 旧条例ハ社員即チ仲買人ノ身元金ヲ五百円トシ第十四条第二節新条例ハ百円以上トス第三章第十六条又旧条例ハ社員入社退社ノ期日及証人ノ要不要其人員身上並責任等ヲ定メ第十四条第一節ヨリ第四節ニ至且社員組合ノ法ヲ設ケ其組中ノ負債ハ之ヲ相償フノ義務ヲ帯ハシム第十八条第一節第二節其他手代進退等
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ノ細則頗ル多シ、而シテ新条例ハ此等ノ事件ニ渉ラス
 又旧条例ハ売買約定ノ期限ヲ二ケ月トシ第廿四条第三節新条例ハ三ケ月ヲ超過セシメス第六章第卅六条其証拠金ノ如キ旧条例ハ約定高ノ実価四分ノ一宛トシ第廿六条第二節新条例ハ百分ノ五以上トス第六章第卅七条
以上諸件ノ権衡旧条例ハ厳ニ失シ、新条例ハ寛ニ過クルモノアルカ如シト雖トモ、此取引所タル我邦ニ在テハ創始ノ営業ニ係ルヲ以テ、寛厳孰レカ果シテ其度ニ過スルヤハ未タ予メ認定シ難ク、且ツ旧条例頒布以来一二其創立ヲ出願スル者アルモ、必先ツ証拠金身元金ノ減額ヲ請願セリ、故ニ新条例ニ於テハ姑ク最下ノ額ヲ揚ケテ其定限ヲ示シ、実地経験ノ後ヲ竢テ其適度ニ帰セシメントスルモノナリ
 旧条例ハ取引所ノ資本高三分ノ二ヲ公債証書ニ換ヘ之ヲ国立銀行ニ預ケ其請取書ヲ主管ノ省ニ差出スコトトシ第五条第二節第三節新条例ハ右同額ノ現金又ハ公債証書ヲ直ニ本省ニ預ケ置クコトトナシ、且其公債証書ノ価格ハ本省ノ指定スル所ニ従ハシム第一章第七条
 新条例ハ取引所負債償却ノ責任有限或ハ無限タルコトヲ予定シテ、創立証書ニ明記セシメ第一章第五条又取引所営業保続ノ期限ヲ五ケ年トシ第一章第八条而シテ其営業ノ為メ緊要ナル地所家屋公債証書ヲ除クノ外自ラ該物品及諸株券ヲ売買シ或ハ所持スルヲ許サス、又証拠金ヲ使用シ貸付金ヲナスヲ禁シ第五章第廿九条第卅一条第三十二条又其役員株主仲買人等条例ヲ犯シ或ハ官ノ検査ヲ拒ム等ノ時之ヲ処罰スルノ例ヲ示ス第十二章第四十八条第四十九条加之株主ハ取引所営業時間中ナレバ何時ニテモ其金員及諸帳簿ヲ検閲スルノ権理ヲ得セシム、而テ旧条例ハ此等ノ明文ヲ欠ケリ
 旧条例施行中ハ其税額ヲ取引所ノ現収セル総金高十分ノ四トシ明治八年第八十八号布告現今ハ十分ノ一トス明治十一年第三十号布告
以上諸件ハ新条例ニ於テ取引所ヲシテ専一ニ其業務ヲ経営シ応分ノ利益ヲ得、而シテ其営業ノ保証ヲ確実ニシ、其責任ヲ厳重ナラシムルモノトス
旧条例施行中即チ十年三月渋沢栄一等ハ東京ニ於テ該取引所ノ創立ヲ発起シ、既ニ其許可ヲ得テ、未タ開業ニ及ハサルノ際新条例ノ布告アリ、依テ大蔵卿閣下ハ十一年五月七日該発起人ニ命スルニ更ニ該条例ニ照準シテ出願スヘキ旨ヲ以テス、乃チ其十日渋沢栄一外一名ハ株主総員九十五名ニ代リ資本金弐拾万円ヲ以テ之ヲ東京兜町ニ創立センコトヲ請ヒ、尋テ六月十日五代友厚外九名発起人トナリ右同額ノ資本ヲ以テ大坂北浜ニ創立セント請フテ皆之ヲ許サル、而シテ両所共ニ責任ヲ保証有限トス、其開業免状下付並開業ノ月日左ノ如シ
 東京 十一年五月廿二日開業免状下付 同六月一日開業
 大坂 十一年七月十九日開業免状下付 同八月十五日開業
右両所ノ外猶其創立ヲ請願スル者アリ、即チ十一年三月東京府平民堀野次兵衛等ハ資本金七万五千円ヲ以テ東京本町ニ、其四月大坂府平民高木善兵衛等ハ資本金三万円ヲ以テ大坂今橋ニ創立センコトヲ請フ、然レトモ東京ハ既ニ渋沢栄一等ノ願ヲ聴カレ且ツ高木善兵衛ノ願ハ条例ニ抵触スルヲ以テ共ニ之ヲ許サレス、又同年十二月ニ至テ愛知県令ハ該県名古屋ノ地タル株式取引所ノ設ケ要用ナルヲ以テ、其創立箇所ノ制限アルニ拘ハラス特ニ之カ開設ヲ許サレンコトヲ、管下人民松本
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勘十郎等ノ願書ヲ添テ上申セリ、然レトモ亦之ヲ許サレス
○下略


東京日日新聞 第一九〇三号〔明治一一年四月一〇日〕 雑報(DK130029k-0013)
第13巻 p.311 ページ画像

東京日日新聞 第一九〇三号〔明治一一年四月一〇日〕
    雑報
○株式取引条例の改正ハ近々公布に成る趣なれども、株式取引所ハやはり東京・大坂の両地に一ケ所づゝを設置せらるゝ外か他の地方へは取設けられざるよし


東京株式取引所第一期営業報告 第五四頁明治一七年四月(DK130029k-0014)
第13巻 p.311 ページ画像

東京株式取引所第一期営業報告 第五四頁明治一七年四月
    第二款 株式取引所条例之事
○上略
十年十一年ノ交ニ至リ民間取引所ノ創設ヲ請願スル者漸ク発生スルニ当リテヤ、該条例発布以来既ニ三星霜ヲ経過シ、此間社会ノ進動活劇ノ時期ナリケレバ、其条項中ニハ間々当時ノ状勢ニ適応セザルモノヲ生ジ、之ヲ実施スルニ於テ稍々至難ノ感アルニ至レリ、左レバ大蔵卿ハ更ニ欧米各国ニ慣用スル取引所条例ト我民間ノ現状故例トヲ酌量シテ改正案ヲ起草シ、十一年二月之ヲ太政官ニ上呈セラレ、同年五月四日(第八号布告)新ニ左ノ改訂条例ヲ布告セラルヽニ至レリ
○下略


東京株式取引所第一期営業報告 第七頁明治一七年四月(DK130029k-0015)
第13巻 p.311 ページ画像

東京株式取引所第一期営業報告 第七頁明治一七年四月
    第一款 総況
○上略 翌十一年五月新条例ノ公布アルニ及ヒ、曩ニ上稟セシ定款及ヒ申合規則ヲ却下シ、新条例ニ準拠シテ改正再申ス可キ旨ヲ達セラレタリ謹テ新条例ノ各条ヲ捧読スルニ、之ヲ旧条例ニ比スレハ簡ニシテ明、而シテ仲買人ノ負担売買証拠金ノ制ノ如キハ大ニ減少シ、其他事情ニ適セサリシカ如キ条項ハ都テ之ヲ改正刪除セラル、是ニ於テカ新条例ノ旨趣ニ基キ定款及ヒ申合規則ヲ加除改正シ更ニ之ヲ捧呈シタルニ五月廿日ニ至リ開業免状ヲ下附セラレタリ、是ヨリ先キ家屋市場ヲ兜町五番地ニ卜定シ設備皆既ニ成ル、乃チ六月一日ヲ以テ業務ヲ開始セリ
○下略


東京株式取引所第一期営業報告 第一三六頁明治一七年四月(DK130029k-0016)
第13巻 p.311 ページ画像

東京株式取引所第一期営業報告 第一三六頁明治一七年四月
    第三款 定款及ヒ申合規則之事
○上略
故ニ此定款及ヒ申合規則ハ遂ニ准可ヲ得ス、翌十一年条例ヲ改正セラルヽニ及ヒ、大蔵省ハ五月七日ヲ以テ此稿案ヲ却下シ、改正条例ニ准拠シテ改メテ開申ス可キ旨ヲ達セラル、是ニ於テ其命ニ遵ヒ取捨改正シテ之ヲ再申シ、同月十五日准可ノ命ヲ得ルニ至レリ、此定款及ヒ申合規則ハ当所ニ於テ始メテ実行シタルモノニシテ、其全文ハ左ノ如シ
○下略


東京株式取引所第一期営業報告 第六六―七〇頁明治一七年四月(DK130029k-0017)
第13巻 p.311-313 ページ画像

東京株式取引所第一期営業報告 第六六―七〇頁明治一七年四月
 - 第13巻 p.312 -ページ画像 
    第二款 株式取引所条例之事
○上略
今新旧両条例ヲ対照スルニ、新条例ハ簡ニシテ十二章四十九条ヨリ成リ、旧条例ハ煩ニシテ三十七条九十四節ヨリ成ル、而シテ旧条例ハ専ラ仲買人ノ責任ヲ重クシテ会所ノ弊ヲ防カントシ、新条例ハ取引所全体ノ責任ヲ重クシテ取引所ヲシテ其弊害ノ責ニ任セシメントスルノ意ニ出タルモノヽ如シ、今仲買人ニ対スル新旧両条ヲ対比シテ其責任ノ軽重ヲ示ス可シ
旧条例第十四条(社員ノ規則)ヲ観ルニ社員即チ仲買人ハ条例定ムル処ノ期日内ニ新入又ハ復社スサル可サラス(第一節)入社ノ節ハ株式若《(主)》クハ二年以上入社セル者三名ヲ以テ証人トナサヽル可ラズ、而シテ此証人ハ入社人二年内ニ違約ノ廉アルトキハ各々五百円宛ヲ債主ニ弁スルノ義務アルモノトス(第三節)又同第十八条(社員組合規則)ヲ観ルニ社員ハ五人毎ニ一組ヲ設ケ身元組合ト心得サル可カラズ(第一節)此組合ノ一人破産スルトキハ肝煎ハ自余ノ四人ヲシテ出金セシメ平時ニ於テハ組合毎ニ忠告規正スルモノトス(第二節)又同第十九条(社員手代ノ規則)ヲ観ルニ社員手代ヲ差出ストキハ其宿所姓名等ヲ記シ且廿歳未満ノ者ヲ手代トス《(ル脱カ)》ヲ許サズ(第一節)其他手代ノ進退等ニ関スル条規少カラズ(第二節ヨリ第三節ニ至ル)然リ而シテ新条例ニ於テハ曾テ此等ノ条項ヲ掲ケズ其規定スルモノハ渾テ簡淡ニシテ僅カニ一章三条ニ過キサルナリ、且ツ殊ニ注目スヘキハ仲買人ノ身元金ト其売買諸証拠金ノ事ナリ、旧条例ニテハ身元金ハ五百円ニシテ(第十四条第二節)売買諸証拠金ハ売買条約ノ定価四分ノ一ナリ(第廿六条第二節)然ルニ新条例ニテハ、身元金ハ百円ニ減シ(第三章節十六条《(第)》)証拠金ハ約定金高百分ノ五ニ減シタリ、新令ノ寛大ナルコト自ラ明カナラン、又取引所全体ノ責任ニ関スル新旧両条ノ重要ナルモノ二三ヲ挙示スレハ左ノ如シ
旧条例ニテハ発起人員ハ五名以上第二条第一節ニシテ資本金総高ノ三分一以上第三条第二節ヲ出金スル制ナリシガ新条例ニテハ発起人員十名以上ニシテ資本金額半数以上第一章第二条ヲ出金スルコトトナレリ、又旧条例ニテハ資本金高ハ売買証拠金額ノ凡ソ四分一ニ等シキ金高ニ概算シ別ニ精確ノ定限第六条第一節ナカリシガ新条例ニテハ其高ヲ二十万以上第一章第二条ト定ム、又旧条例ニハ只株主中ヨリ十名以上二十名マデノ肝煎ヲ選挙ス第八条第八節トノミアリテ別ニ株数ノ制限等ナカリシガ新条例ニテハ三十株以上ヲ所持スルモノ五名以上ヲ撰挙シテ肝煎トス第四章第十九条ノ明文アリ、又旧条例ニハ取引所ノ資本高三分ノ二ヲ公債証書ニ換ヘ之ヲ国立銀行ニ預ケ其ノ請取書ヲ主管ノ省ニ差出スコトトシ第五条第二節第三節新条例ニハ右同額ノ現金又ハ公債証書ヲ直ニ大蔵省ニ預クルコトト為シ且ツ其公債証書ノ価格ハ同省ノ指定ニ従フコトトナレリ第一章第七条、又旧条例ノ規定セサルモノヲ新条例ニテ新設シタル者少カラズ、第一取引所負債償却ノ責任有限若クハ無限タルコトヲ予定シテ創立証書ニ明記セシムル事、第二取引所営業年限ヲ五年ト定メタル事、第三取引所営業ノ為メ緊要ナル地所家屋公債証書ヲ除クノ外自ラ該物品及ヒ諸株券ヲ売買シ或ハ之ヲ所持スルコトヲ禁ジ並ニ証拠金ヲ使用シテ貸付ヲ為スヲ禁シタル
 - 第13巻 p.313 -ページ画像 
事、第四取引所営業時間中ハ何時ニテモ其金員及ヒ諸帖簿ヲ株主ノ請求ニ応シテ其検閲ニ供スル事是レナリトス
此他細カニ新旧両条ヲ対照シテ改正加除ノ要点ヲ査覈シ来レバ、一条一項トシテ仲買人ノ責任ヲ寛フシテ取引所全体ノ負担ヲ厳ニスルノ精神ニ出サルモノナリ《(ク)》、独リ会所ノ納税ニ至リテハ大ニ減少セシモノアリ、蓋シ旧条例ニテハ会所ノ税額ハ手数料其他現収セル総金高十分ノ四ナリシガ新条例布告アルニ及ンテ之ヲ廃シテ追テ制定施行スル収税規則ニ遵ヒ相当ノ税金ヲ納ム可シトノミアリテ未タ其税額ヲ定メラレズ、明治十一年九月三十日ニ至リテ手数料其他現収セバ総金高十分ノ一ト定メラレタリ、今此税額ヲ以テ旧条例十分四ノ税額ニ比レハ其税率大ニ低廉ナルコトヲ知ル可シ
○下略


東京株式取引所定款(DK130029k-0018)
第13巻 p.313-319 ページ画像

東京株式取引所定款         (東京株式取引所所蔵)
明治十一年五月十五日大蔵省ノ允准ヲ得、当株式取引所ヲ創立シタルニ付、其営業ノ繁盛ヲ謀リ、爰ニ株主一同協議決定シタル条々左ノ如シ
    第一章 営業ノ事
第一条 当取引所ハ政府ノ諸公債証書、及政府ノ条例ヲ遵奉シテ発行シタル銀行又ハ諸会社ノ株券等、売買ノ取引ヲ為ス所ナリ、而シテ当取引所ニ加入シ、株主ニ列スル人々ハ、創立証書及此定款並申合規則ニ承諾セシ証拠トシテ、必ス記名調印ス可シ
第二条 当取引所ニ於テ売買取引ヲ為スヲ得ルハ、前条ニ掲ケタル種類ニシテ、必ス売買ヲ允許セラレタルモノニ限ルヘシ、且之ヲ売買取引スル規程ハ、必ス此定款並申合規則ニ照準履行ス可シ
第三条 当取引所ニ於テ執行スル売買取引ノ事務ハ、此定款並申合規則ニ従ヒテ、之ヲ頭取及肝煎ニ委任スヘシ、故ニ頭取肝煎ハ其売買ノ約定ヲ監護シ、取引ヲ確実ナラシメ、且取引一切ノ責ニ任ス可シ
第四条 政府又ハ政府ノ条例ヲ遵奉シタル銀行及諸会社ヨリ新タニ発行スル所ノ諸公債証書又ハ諸株式等ヲ売買セント欲スルニ当テハ、頭取肝煎ハ篤ク其理由事実ヲ探知シ、且臨時集会シテ決議施行ス可シ
  但本文ノ場合ニ際シテハ、其売買ヲ認許スルニ要用ト思考スル諸証書報告類ヲ要求シテ、之ヲ其会議ニ付シ、又其発行ノ事由ニ就キ、実際ノ事務ヲ探偵シ、或ハ依頼者ノ請求ニ依リテハ検査役員ヲ派遣スル等、都テ頭取肝煎ノ協議ニ任ス可シ
第五条 当取引所営業年限満期ノ上、尚永続ヲ望ムトキハ、更ニ允許ヲ請ヒテ此業ヲ接続ス可シ
    第二章 資本金ノ事
第一条 当取引所営業ノ確実ナルヲ保証スルタメ、資本金ノ三分ノ二ヨリ少カラサル高ハ、日本政府ノ公債証書ニ換ヘ、之ヲ大蔵省ニ預ケ、其三分ノ一ヨリ多カラサル高ヲ以テ、取引所ノ所用ニ充ツ可シ
第二条 当取引所ノ資本金ハ、各自受持株高ノ三分二以上ニ当ル金高ヲ開業前日マテニ入金シ、其残高即所用金ハ頭取肝煎ノ報知ニ応シ
 - 第13巻 p.314 -ページ画像 
之ヲ出金シ了リ、其株高ニ当リタル株式券状ヲ渡ス可シ
第三条 株主此開業前ノ入金ヲ怠レハ、頭取肝煎ハ速ニ之ヲ除名シテ他ノ入社人ヲ募ルヘシ、又其残額ノ入金ヲ怠ル者ハ、入金済ノ高ヲ併テ競売セシメ、買得人ヲシテ其欠員ニ充ツ可シ
第四条 右開業前ノ入金及ヒ残額ノ入金ヲ怠ル者アルニ付、買得人ヲ募ルモ之レニ応スル者ナキ時ハ、他ノ株主ニ割合ヒ、其持株ヲ増加セシメテ金額ニ充ツ可シ
  但此場合ニ於テハ既済ノ入金ハ之ヲ没収ス可シ
第五条 当取引所ノ資本金高、条例ノ制限ニ抵触セサル迄ヲ増減スルハ、株主ノ集会ニ於テ之ヲ決定スヘシ、而シテ其増減ノ許可ヲ得テ之ヲ施行スルノ方法モ、亦株主ノ衆議ニ因ル可シ
    第三章 役員ノ事
第一条 当取引所ノ役員ト称スル者左ノ如シ
  頭取   一人
  副頭取  一人
  肝煎   三人
  支配人  一人
  副支配人 一人
  書記方  三人
  勘定方  三人
  簿記方  六人
 右ノ如ク定ムト雖モ、営業ノ都合ニ依リ尚之ヲ増減シ、又ハ兼摂代任スルコトアルヘシ、而シテ此役員ハ其職務ニ対シ、取引所ニ於テ定メタル給料ヲ受ク可シ
第二条 当取引所ノ肝煎ハ投票ヲ以テ三十株以上ヲ所持シタル株主ノ中ヨリ選挙シ、其人員ハ五名ト定ムヘシ、而シテ撰挙ノ初集会ハ発起人ノ差定ムル時日場所ニ於テス可シ
第三条 此撰挙ニ応シタル肝煎ハ、同僚ノ内ニ於テ、投票ヲ以テ頭取一名ヲ撰任ス可シ
第四条 頭取肝煎ノ撰挙ハ毎年一月ノ中旬ニ於テ、株主一同取引所ニ集会シ、投票ヲ以テ定ムヘシ、而シテ其集会ノ時日ハ少クトモ十日以前ニ、在職ノ頭取ヨリ之ヲ報知ス可シ
  但株主ノ居所遠路隔絶若シクハ事故アリテ出席シ難キ時ハ、委任状ヲ与ヘタル名代人ヲ出ス可シ
第五条 此投票ヲ以テ撰挙セラレタル頭取肝煎ハ、其上任ノ日ニ当リ各誓詞ヲ為シ、取引所ノタメ能ク規則ヲ奉シ、制限ヲ守リ、詐偽軽忽等ノ挙動ナキ旨ヲ表シ、之ヲ取引所ニ蔵置ス可シ
第六条 頭取肝煎ハ其所有ノ株式中三十株丈ケノ券状ヲ、当取引所ニ預ケ置クヘシ、取引所ハ禁受授ノ印ヲ押シタル保護預リ証書ヲ渡ス可シ
第七条 頭取肝煎ノ在職期限ハ一箇年間トス、故ニ衆議ニ因リ放免スルノ外ハ、必ス勤務スヘシ、若シ期限中不時ノ欠員アル時ハ、仍ホ同僚中及ヒ株主ノ衆議ヲ以テ、之カ代任又ハ補員ヲ命ス可シ
第八条 肝煎中ヨリ一名宛、月番ヲ以テ検査掛ヲ置キ、常ニ取引所営
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業ノ景況及ヒ金銀出納ノ事務ヲ点検ス可シ
第九条 当取引所支配人以下ノ役員ハ、頭取肝煎ノ衆議ヲ以テ、株主ノ中又ハ社外ノ人ヨリ、適宜ニ之ヲ撰任スヘシ、而シテ奉職期限ハ一箇年間トス、其重年勤続ヲ命シ或ハ期内放免スルモ亦、頭取肝煎ノ衆議ニ由ル可シ
    第四章 役員職務上ノ責任権限ノ事
第一条 頭取ハ取引所ノ事務ヲ総轄シ、他ノ役員ヲ指揮シ、取引所一切ノ責ニ任ス可シ
第二条 頭取ハ肝煎分掌ノ事務ヲ定ムル権アルヘシト雖モ、新タニ事ヲ起シ、或ハ既済ノ規程ヲ改正シ、又ハ之ヲ廃止スル等ノ事ノ如キハ、肝煎ノ協議ニ由ラサレハ、之ヲ専決ス可ラス
第三条 副頭取ハ常ニ頭取ノ事務ヲ翼成シ、時トシテ其代理ノ任ニ当ル可シ
第四条 肝煎ハ衆議ヲ以テ、支配人以下ノ役員ヲ撰任シ、其分掌ノ課程権限給料等ヲ定メ、社中差縺ノ事ヲ判決シ、金銭ノ出納ヲ管理シ及凡百ノ施設上ニ付、其順序ヲ立テ、議案ヲ草シ、之ヲ頭取ニ申陳シ、社中一般ノ疑問ニ答弁シ、又ハ社中ノ衆議ヲ取ランカ為メ臨時集会ヲ催スノ権アル可シ
第五条 肝煎ハ支配人以下ノ役員ヲ撰定スルニ付、身元引受人ヲ約スヘシ、而シテ是等ノ役員ニ於テ、規則ヲ犯スカ、或ハ其事務ヲ怠ル等ノ事アル時ハ、相当ノ懲戒ヲ行ヒ、又ハ引受人ニ迫リテ、其償ヲ要求ス可シ
第六条 肝煎ハ仲買人ノ入社退社ヲ許シ、又ハ拒止シ、及ヒ申合規則ニ照シテ、其事務ヲ処分ス可シ
  但是等ノ処分ニ於テ、第七条ノ事情アルニアラサレハ、其決ヲ頭取ニ取リテ後ニ施行ス可シ
第七条 肝煎ハ其同僚中、又ハ頭取ニ於テ、職任不適当ノ行為アルトキハ、株主臨時会議ヲ催シ、無名投票ヲ以テ三分ノ二以上ノ説ニ従ヒ、之ヲ退職セシム可シ
    第五章 株主権利制限ノ事
第一条 株主ハ取引所ノ本主ニシテ、入金高ニ応シタル株券ヲ所持シ株数相当ノ権利ヲ有シ営業上ノ損益ヲ負担スル者ナルカ故ニ、時々ノ景況ニ着目シ、金銭出納及諸帳簿等ノ検閲ヲ求ムルノ権アル可シ
第二条 株主ハ頭取肝煎ノ事務取扱上ニ於テ不適当ノ事アルト認ムルトキハ、何時ニテモ肝煎ノ議ニ加ハリテ、之ヲ弁論スルヲ得可シ
第三条 株主ハ社中ノ総会ニ於テ発言投票ヲナスニ当リ、其所持ノ株数拾箇マテハ壱株毎ニ一説、拾壱株以上百株迄ハ五株毎ニ一説、百壱株以上ハ拾株毎ニ一説ヲ吐クノ権利アル可シ
第四条 役員ニアラサル株主ハ、肝煎ノ承諾ヲ経テ、売買本人又ハ仲買人ト為ルコトヲ得ヘシ、而シテ其初次請求ノ手続ハ、別ニ証人ヲ要セスト雖モ、自余ノ諸件ハ一般仲買人同様タルヘク、且売買上ニ於テハ都テ之ヲ仲買人ト称ス可シ
第五条 株主ハ何等ノ事故アルトモ、取引所解散ノ期ニ至ラサル時間ハ、其株金ヲ取戻ス事ヲ得ス
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第六条 株主ハ第六章ノ手数ヲ了ルニアラサレハ、其所持ノ株式ヲ譲与スヘカラス、又其株式ヲ質入抵当トナシタル者ハ、其質入トナシタル時間中、其株高ニ対シタル発言投票等ノ権利ヲ失フ可シ
    第六章 株式譲引及質入抵当ノ事
第一条 当取引所ノ株式ハ頭取肝煎ノ許可ヲ受ケ、当取引所ノ簿冊ニ引合セタル上ニテ、之ヲ売買譲与スル事ヲ得ヘシ、尤モ其株式券状ノ書替ヲ為ササル時ハ、右取引所ノ損益ハ、其株式券状ノ名前人ニ負担セシム可シ
第二条 定式集会ノ前後十日ヨリ多カラサル時間ハ、株式ノ売買授受ヲ停止シ株式帳ノ書替ヲ為サヽル可シ
    第七章 仲買人ノ事
第一章《(条)》 当取引所ニ於テ自ラ株式売買取引ヲナシ、又ハ他人ノ依頼ヲ受ケテ仲買トナリ、之ニ従事スル者ヲ以テ、総テ仲買人ト称スヘシ此仲買人ハ当取引所ニ於テ定メタル規則ヲ確守ス可シ
第二条 当取引所ノ仲買人タラント欲スル者ハ、書面ヲ以テ肝煎ニ申出ツヘシ、此書面ニハ姓名宿所年齢等ヲ詳記シテ、之ニ調印シ、且二名以上証人ノ連印ヲ要ス可シ
第三条 此書面ヲ落手セハ、肝煎ハ会議ニ於テ其加入ノ可否ヲ決定シ差支ナシト思量スルトキハ、一週日間之ヲ取引所ニ張出シ、他ノ故障ナキヲ認メ、身元金ヲ受取リ、入社ヲ許ス可シ
第四条 仲買人ノ身元金ハ一名毎ニ百円トス、此身元金ハ取引所ニ於テ使用スル事ナキカ故ニ、利息ハ払ハサル可シ
第五条 仲買人入社ノ期限ヲ一箇年トス、故ニ接続入社セントスルトキハ、期限三週日前ニ、肝煎ヘ申出ヘシ、肝煎ハ之ヲ受ケテ一週間取引所ニ張出シ置キ、他ノ故障ナキヲ認メテ之ヲ許ス可シ
第六条 期限退社及臨時退社ヲ望ムトキモ、前条ノ手続ニ拠リ、当取引所ニ連帯シタル勘定其他ノ関係ナキヲ認メタル後ハ、其退社ヲ許シ、身元金ヲ返付シテ、証人ノ責任ヲ解ク可シ
第七条 仲買人若シ当取引所又ハ社中ノ各人ニ対シ、不正ノ所業アルヲ以テ、之ヲ除名スヘキ場合ニ至リテハ、肝煎ノ衆議ニヨリ、其証人ヲシテ相当ノ過怠金ヲ差出サシムル事アル可シ
第八条 凡ソ違約人ノ処分ヲ受ケタル仲買人ハ、其負債ノ義務ヲ了シタル以上、一般ノ規定ニ従ヒ、更ニ仲買人タル事ヲ乞ヒ得可シ
    第八章 仲買人手代ノ事
第一条 仲買人タルモノ其名代トシテ手代ヲ取引所ニ出サント欲スルトキハ、書面ヲ以テ之ヲ肝煎ニ申出ツヘシ、此書面ニハ其手代ノ宿所姓名及ヒ取扱フヘキ事務、金銀取引ノ権ノ有無等ヲ細記ス可シ
第二条 肝煎ハ此書面ヲ一週日間取引所ニ張出シ置キ、他ノ故障ナキヲ認メタル上、衆議ヲ以テ之ヲ許ス可シ、此許諾ヲ得サル前ハ、決シテ手代ヲ取引所ニ出ス可ラス
第三条 手代ノ姓名ハ、其主人ノ姓名ト共ニ取引所ニ掲示シ、其主人ト同一ノ待遇ヲナスヘシ、故ニ其委任ノ権ヲ解カントスルトキハ直ニ書面ヲ以テ肝煎ニ報知スヘシ、肝煎ハ其報知ヲ取引所ニ掲示シ其姓名ヲ削去ス可シ
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第四条 其主人ノ除名セラルル者ハ手代ノ任随テ消滅スヘシ、若シ手代違約人トナリ、取引ヲナス事ヲ禁セラルルトモ、其主人ニ於テ違約ノ弁償ヲナシ了リタルトキハ、主人ハ尚ホ仲買人タル事ヲ得可シ
    第九章 社中差縺取扱方ノ事
第一条 社中仲買人ノ間取引上ニ於テ起リタル差レ縺ハ、他ノ仲人ヲ命シテ之ヲ和解セシムヘシ、若シ和解ニ至ラサレハ、肝煎ノ衆議ヲ以テ、可成丈ケ之ヲ和解スル事ヲ勉ム可シ
第二条 肝煎ハ社外ノ人ト社中ノ人トノ間ニ起リタル差縺レニハ、一切関係スル事ナカルヘシ、尤モ社中ノ仲買人社外ノ人ノタメニ仲買ヲ為シ、退社逃亡死去等ノ事アル場合ニ当リ、其売買本主ト相手タル社中ノ仲買人トノ間ニ差縺レアルトキハ、此限ニアラサル可シ
第三条 此場合ニ於テ、社外ノ売買本主ヨリ、肝煎ノ処決ヲ請求セルトキハ、其売買本主ヲ社中ノ仲買人同様ニ見做シ、之レヲシテ肝煎ノ処決ヲ守リ、決シテ違背セサルヘキ旨ノ誓詞ヲ為サシメ、然ル後之レカ処決ヲ為ス可シ
第四条 取引所ニ於テ取結ヒタル取引約定ハ、他ノ依頼ヲ受ルト否トヲ論セス、都テ其仲買人ノ売買ト看做シ、之レニ関スル一切ノ責ハ皆仲買人ニ帰スヘシ、故ニ取引所ニ於テハ、依頼ヲ為シタル本人ト直接ノ関渉ヲ負フノ理アル事ナシ
第五条 仲買人売買取引ノ事ニ付テ、取引所ニ向ヒ申陳スヘキ事件ハ本人親カラスルカ、又ハ予メ肝煎ノ承認ヲ経タル手代人ニ限ル可シ
    第十章 役員禁例ノ事
第一条 取引所ノ役員タル者ハ、売買取引ノ本人、又ハ仲買人トナル事ヲ禁ス
第二条 取引所ノ役員ハ、売買ノ証拠金及ヒ仲買人ノ身元金ヲ使用スヘカラス、其他ノ有金ヲ私用ニ供スヘカラス、且ツ預リ金其他ノ証書トモ、取引所ノ印証ナキ各自一判ノ証書ヲ用フルヲ禁ス
第三条 取引所ノ役員ハ、取引所ノ名号ヲ仮冒シテ商業ヲ営ミ、自己ノ利益ヲ謀ルヘカラス、若シ之ヲ犯ストキハ、何様ナル事情アリトモ、不正ノ所業ト為シ、肝煎又ハ株主ノ衆議ニ依テ、相当ノ処分ヲ為ス可シ
第四条 取引所ノ頭取肝煎ハ、故意ニ出タル不適当ノ処為アリテ、其取計ヨリ損毛ヲ生スルトキハ、自ラ之ヲ償弁ス可シ
    第十一章 株主集会ノ事
第一条 肝煎撰挙及ヒ定款並申合規則ノ加除改正等、凡ソ社中一般ニ関係シタル事件ハ、総会ニ於テ評議決定シ、三日以内ニ之ヲ大蔵省ヘ申稟ス可シ
第二条 総会ノ決議ハ衆説ヲ採ル、故ニ病気其他已ムヲ得サル事故アリテ欠席スル人々ハ、必ス委任状ヲ授ケタル代人ヲ出シ、而シテ此代人ハ社中ノ人ヲ用フルヲ要ス、若シ代人ヲ出サス、決議ノ後ニ至リ更ニ異論ヲ発スルモ、一切採取セサル可シ
第三条 株主遠隔ノ地方ニ住スルカ、又ハ旅行ヲ為シテ、議事招集ノ期ニ会シ難キ懸念アルトキハ、右二条ノ場合ニ於テ差出スヘキ代人ヲ、予メ委任シ、之ヲ取引所ニ届ケ置ク可シ
 - 第13巻 p.318 -ページ画像 
第四条 凡ソ総会ハ之ヲ定式臨時ノ二様トス、定式総会ハ毎年一月七月ノ両度之ヲ開キ、臨時総会ハ頭取肝煎ノ適当ナリト思考スル場合ニ於テハ、何時ニテモ招集スル事ヲ得ヘシ、又人員十名ニ下ラス、其所持ノ株数当取引所総株ノ五分一ニ下ラサル株主等ヨリ、書面ヲ以テ臨時総会ノ請求アルニ於テハ、何時ニテモ招集セサル事ヲ得サルヘシ
第五条 右ノ請求書ニハ、此総会ヲ要スル事件目的ヲ記載スヘシ、若シ頭取肝煎ニ於テ、十五日間以上謂ハレナク其手続ヲ怠リタルトキハ、請求人自ラ之ヲ招集スルヲ得ヘシ
第六条 総会ノ議長ハ頭取之ニ当ルヲ常例ト為スト雖モ、肝煎又ハ株主ノ請求ニ依テハ、別ニ之ヲ撰挙スル事アルヘシ
    第十二章 純益金配当ノ事
第一条 毎年両度、其半季内ニ取立テタル手数料ノ合高其他ノ利益ヲ合算シ、営業上諸般ノ費用ヲ引去リタル残高、及ヒ公債証書ノ利息ヲ以テ純益金ト為シ、株高ニ応シテ之ヲ割渡ス可シ
  但役員ノ給料及ヒ賞与配当金等ノ割合ハ、営業実際ノ景況ニ依リ株主総会ノ衆議ヲ以テ定ム可シ
第二条 此割合ハ、毎年両度ノ定式集会ニ於テ、頭取肝煎ヨリ半季営業ノ報告ヲ明細ニ為シタル上ニテ、分賦スヘシ
第三条 此純益金壱箇年壱割(即チ百分ノ十)以上ニ当ルトキハ、割賦高ノ十分ノ一ヲ引去リ、之ヲ積立テ以テ非常ノ準備金ト為スヘシ
  但此積立金ノ高、資本金額ノ弐割ニ充ルノ後ハ、之ヲ積立ルトモ又ハ之ヲ割賦スルトモ、其時ノ決議ニ任スヘシ
第四条 此準備金ハ頭取肝煎ノ決議ヲ以テ、公債証書ニ換置ク事ヲ得ヘシ
第五条 若シ当取引所ニ損失アリテ、資本金不足ヲ生スルトキハ、頭取肝煎ヨリ其顛末計算ヲ株主一同ニ公告シ、爾後得ル所ノ利益ヲ以テ其不足ヲ補ヒ了ル迄ハ、配当ヲ止ムル事アルヘシ
    第十三章 報告並検査ノ事
第一条 公債証書株式等日々ノ建相場ハ之ヲ取引所ニ掲示スヘシ
第二条 頭取肝煎ハ取引所ノ簿記ヲ明瞭ニシ、日表月表年表ヲ製シ、毎月及毎半季ニ於テ、之ヲ大蔵省ニ申報スヘシ、故ニ各株主ノ検閲ヲ望ムトキハ、何時ニテモ差支ナク開示スヘシ
    第十四章 印章及簿記日表記録等ノ事
第一条 取引所ニ用フル印章ハ左ノ各顆ノ如シ
(印顆省略)
第二条 取引所ノ印章並頭取以下諸役員ノ印章ハ、其印鑑ヲ大蔵省ニ差出シ、改刻スルトキハ時々之ヲ申陳スヘシ
第三条 取引所ノ簿記、日表其他ノ計算書類ハ、極メテ精確簡明ノ法ヲ要スルヲ以テ、別ニ記程表式ヲ定メ、其主任者ヲシテ一切之ヲ遵行セシムヘシ
第四条 取引所ノ定款申合規則及其他ノ規程、肝煎撰挙、社中集会等ノ諸件ハ、一切之ヲ記録シ、頭取肝煎記名調印シテ以テ、後日ノ証拠参観ニ備フヘシ
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第五条 官府ニ対スル諸願届伺、又ハ官私ニ対スル証書約定書往復文書等ニ至ルマテ、当取引所ノ称号ヲ用ヒ、社印ヲ押シ、頭取肝煎ノ中ニテ之ニ記名調印スヘシ
    第十五章 規則改正ノ事
第一条 此定款ハ株主ノ衆議ニ依リ、大蔵省ノ許可ヲ得テ、之ヲ増減更正スル事アル可シ
右ノ条々ヲ取極メタル証拠トシテ各姓名ヲ記シ調印致シ候也
  明治十一年五月
  深川亮蔵(印)            渋沢栄一(印)          今村清之助(印)
  三井養之助代理木村正幹(印)     三井武之助代理木村正幹(印)   益田孝(印)
  三野村利助(印)           小室信夫(印)          小林吟治郎(印)
  田中平八(印)            岡本善七(印)          木村正幹(印)
  小松彰(印)             福地源一郎(印)         渋沢喜作(印)
  小林猶右衛門(印)          小野善右衛門代理奥村信道(印)  安田卯之吉(印)
  木村静幽《(大倉喜八郎代脱)》(印)  土屋清太郎(印)         諸葛信澄(印)
  中島行孝代理小松彰(印)       吉川長兵衛(印)         米倉一平(印)
  後藤庄吉郎(印)           辻純市(印)           竹中邦香(印)
  井上高格代理近藤潔(印)       田中洋之助代理父田中平八(印)  荒尾亀次郎(印)
  荒尾孝之助幼年ニ付代父亀次郎(印)  阪上市松(印)          須藤吉右衛門(印)
  西村郡司(印)            田中平三郎(印)         田中菊次郎(印)
  原三郎治(印)            原兵吉代原三郎治(印)      松沢与七(印)
  須藤勘兵衛(印)           野村儀兵衛(印)         川崎芳之助(印)
  阪本兵助(印)            岩田定吉(印)          後藤精一(印)
  紫崎守三(印)            原兵一郎代原三郎治(印)     藤島卯平(印)
  高橋藤吉(印)            高橋恒次郎(印)         上野四郎左衛門(印)
  阪上平次郎(印)           竹口武兵衛(印)         上野七郎右衛門(印)
  鈴木源十郎(印)           辻金五郎(印)          岩塚利兵衛(印)
  徳田孝平代落合成吉(印)       前島栄太郎(印)         高橋又四郎(印)
  中村清蔵(印)            中村彦五郎(印)         中村平次郎(印)
  西村七右衛門(印)          辻忠次郎(印)          小川幸助(印)
  荒尾源三郎幼年ニ付代父亀次郎(印)  新井弥兵衛(印)         平林仁平代寺田政忠(印)
  小山直三(印)            鶴岡長次郎(印)         新井慶治郎(印)
  高橋金之助(印)           井染得佶(印)          川島半十郎(印)
  庄田大助(印)            中台彦助(印)          寺田政忠(印)
  鬼沢六三郎代杉山功(印)       新井忠次郎代杉山功(印)     古家清次郎代杉山功(印)
  岡田慶蔵代新井慶治郎(印)      高野藤吉(印)          宮木清助(印)
  秋山甚蔵(印)            花島新七(印)          増淵七兵衛(印)
  高木喜兵衛(印)           吉野甚三郎(印)         土志田武兵衛(印)
  鹿嶋新兵衛(印)           川崎甚三郎(印)         井上庄吉(印)
  好川保兵衛(印)           伊東幸三(印)
前書之通相違無之候也
  明治十一年五月廿日 東京府知事 楠本正隆(印)
右定款ノ件々ハ之ヲ承認シタル証拠トシテ爰ニ奥書調印スルモノ也
  明治十一年五月廿二日 大蔵卿 大隈重信(印)
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東京株式取引所申合規則(DK130029k-0019)
第13巻 p.320-324 ページ画像

東京株式取引所申合規則 (東京株式取引所所蔵)
 明治十一年五月十五日大蔵省ノ允准ヲ得、爰ニ株式取引所ヲ設立シタルニ付、売買上緊要ノ事項ニ於テ総員確守スヘキ規程ヲ議定シタル条々左ノ如シ
    第一款 売買並約定ノ事
第一条 当取引所ノ売買ハ、諸公債証書及諸株式共額面百円ヲ以テ切手一枚ト定メ、一枚以上何枚ニテモ売買約定ヲ為ス事ヲ得可シ
  但売買取組ノ呼価ハ額面百円ヲ以テシ、而シテ旧公債証書ノ如キ其実価現ニ五十円未満ノモノハ、数箇ヲ併セ、凡百円ニ当ルヲ以テ切手一枚ト定ムヘシ
第二条 取引所ニ於テ為ス所ノ売買ハ、現場定期ノ二様ニ分チ、而シテ定期売買ト雖モ、本場帳入前ニ於テ之ヲ買戻シ、又之ヲ売渡シタルハ、現場勘定ト為スヘシ
第三条 当日ノ売買ハ本場限リ帳入トシ、本場引後ノ売買ハ翌日ノ本場ニテ帳入ト定ムヘシ
  但定期売買ノ帳入ハ本場ノ平均直段ヲ以テシ、又現場ノ勘定ハ取組直段ニ従フヘシ
第四条 定期約定ノ売買ハ毎月末ノ日十二月ハ二十五日ヲ以テ仕切日ト定メ、其期限ハ三仕切即チ三ケ月ヲ踰ヘサルヘシ
第五条 約定期限内甲ヨリ乙ニ売リシ株式ヲ乙ヨリ甲ニ買戻シ、又甲ノ乙ヨリ買ヒシ株式ヲ甲ヨリ丙ニ売渡ストキハ、其時々売買授受ノ手続ヲ了シ、損益決算ヲ為スヘシ
    第二款 立会剋限並休日ノ事
第一条 当取引所営業ノ時間ハ毎日午前八時ヨリ午後五時マテノ間ニ於テシ、其開閉ノ時限及ヒ本場立会ノ時間ハ、必ス柝ヲ鳴シテ之ヲ報スヘシ、而シテ其時間ヲ前後長短スル時ハ、必ス三日以前ニ掲示スヘシ
第二条 休業ハ連月日曜日並定式ノ祝日祭日ニ限ルヘシ
第三条 臨時ノ休会又ハ定例ノ休暇ヲ変更スルトキハ、時々之ヲ掲示スヘシ
    第三款 売買証拠金ノ事
第一条 売買双方ヨリ差入ヘキ証拠金ハ左ノ四様ニ定メ、毎日定剋之カ出納ヲ為スヘシ
  第一本証拠金
  一実価五拾円以上六拾円未満ノモノハ  三円
  一同 六拾円以上八拾円未満ノモノハ  四円
  一同 八拾円以上百円未満ノモノハ   五円
   余ハ之ニ準ス
  但本日売買高実価弐千円マテハ、翌日正午十二時ヲ限リ之ヲ差入ヘシ
  第二半証拠金 本証拠金ノ半額
  但連日ノ売買差引実価弐千円以内ハ差入ルニ及ハス、其以外ノ分ニ対シ、右ノ割合ヲ即日午後四時マテニ差入ヘシ
 - 第13巻 p.321 -ページ画像 
  第三追証拠金 本証拠金ノ半額
  但売買約定直段ヨリ本証拠金ノ半数ニ当ル相場ノ昂低アルトキハ其損方ヨリ此割合ヲ以テ幾回ニテモ追証拠金トシテ翌日本場立会マテニ之ヲ差入ヘシ、且其日ノ相場ニ荒高下アリテ三円ノ本証拠金ヲ差入レタルモノニ弐円、四円ノモノニ三円、五円ノモノニ四円ノ昂低ヲ生スルトキハ其損方ヨリハ此追証拠金ヲ即日午後四時マテニ差入ヘシ、尤此追証拠金ハ相場其元直段ニ復スル時ハ亦之ヲ差戻スヘシ
  第四増証拠金 本証拠金ト同額
  但約定期日前十日ニ至レハ前ニ売買取結アル枚数ニ対シ之ヲ差入ルヘシ
第二条 相場非常ノ昂低アルカ又ハ仲買人中不穏当ノ売買ヲ為スト認ムルトキハ、頭取肝煎ハ決議ノ上特ニ増証拠金ヲ差入シムル事アルヘシ
  但此増証拠金ハ頭取肝煎ニテ相当ト思量スル高ヲ定メ即日之ヲ差入シムヘシ
第三条 仕切期限前十日内ニ於テ新ニ売買約定ヲ為ス者ハ本証拠金並同額ノ増証拠金ヲ一時ニ差入ルヘシ
    第四款 手数料並仲買口銭ノ事
第一条 当取引所ノ手数料ハ其売買金高ニ応シ之ヲ収受スヘキモノタリト雖モ、条例ノ制限ヲ超エサル迄ハ当分ノ内左ノ通相定ムヘシ
  定期取引手数料 切手壱枚ニ付 金六銭
  現場取引手数料 右同     金三銭
  但書替其他別段依頼ニ付テノ諸雑費ハ此限ニアラス
第二条 仲買口銭ハ其仲買人ト依頼人トノ示談ニ任スト雖モ、取引所ニ領収スル手数料ニ応シ之ヲ取極メ前以テ肝煎ニ申出テ承認ヲ受クヘシ
第三条 此手数料並口銭ハ決算ノ時ニ至リ売買取引ニ関スル他ノ債主ニ先タツテ之ヲ収受スル事ヲ得ヘシ
    第五款 仲買人心得方ノ事
第一条 仲買人等既ニ売買ヲ為シ畢ラハ其約定高及ヒ直段ノ相違等之レナキ様注意スヘキハ勿論ニ付、必ス銘々ノ手帳ト取引所ノ帳記トヲ引合セタル上退場スヘシ、若シ之ヲ怠リ後ニ苦情ヲ申出ルトモ一切取上サルヘシ
    第六款 証拠金預リ切手ノ事
第一条 当取引所ヨリ売買人ニ渡スヘキ諸証拠金ノ預リ切手ハ都テ其約定ヲ為シタル仲買人ノ名宛タルヘシ
  但此切手ヲ抵当トシテ金銭ノ融通ヲ為ス事ヲ許サス
第二条 証拠金預リ切手ハ売買決算ノ節必ス取引所ニ返付スヘシ、若シ切手仲買人手元ニテ紛失セハ速ニ取引所ニ届ケ出ツヘシ、取引所ニ於テハ其趣ヲ詳記シテ掲示ヲ為シ置キ、約定ノ期限ニ至リ尚発見セサルトキハ仮令後日発見スルトモ反古タル旨ノ証書ヲ取リタル上決算出納ヲ為スヘシ
    第七款 定期売買受渡ノ事
 - 第13巻 p.322 -ページ画像 
第一条 売買双方ハ受渡期日ノ午後一時ヲ限リトシテ売方ハ約定ノ公債証書又ハ株式ノ皆高ニ書換、又ハ譲与ノ証書等取揃ヘ買方ハ約定直段ニ応スル代金ノ皆高ヲ取引所ニ差出スヘシ
第二条 取引所ハ期日ニ於テ売買双方ヨリ差出シタル公債証書又ハ株式ト代金トヲ預リ即日役員立会ニテ其受渡ノ手続ヲ了ラシムヘシ
第三条 取引所ノ受渡ニ用フル諸公債証書ハ必ス東京府庁ノ管掌ニ属シ、又無記名ナルカ或ハ諸株式ナレハ府下ニ現存スルモノニ限ルヘシ、而シテ書替方其他受渡シニ差支ヘサル迄ノ手続ハ売方ニ於テ之ヲ負担スヘシ、尤其受渡ニ差支サルヘキヲ認メ一旦受渡シヲナシタル以上ノ義務ハ其権利ト共ニ買方ニ属スヘシ
  但他府県ノ管掌ニ在ルモノト雖モ本文ノ手続ヲ経ルニ於テハ之ヲ代用スルコトヲ得ヘシ
第四条 諸公債証書等ノ受渡ニ於テハ売買人双方直接ノ証書ヲ以テ受授スヘキハ勿論ト雖モ、其時宜ニ依リ売方ハ元持主ヨリノ委任状又買方ハ他ニ転売ノ名指人ヲ以テ其手続ヲ了ルコトヲ得ヘシ
第五条 官庁並諸会社ノ成規ニ於テ公債証書株式等ノ書替ヲ停止シタル時間ニ取結フ現場取引ハ、其売人ヨリ買方ノ相当ト思量セル文体ノ(利子割賦金等請取代理ノ委任状及公債証書株式書換委任状)等ヲ添テ之ヲ取引所ニ差出スヘシ、其定期約定ニシテ書換停止限内期日ノ至ルモノモ亦同様ノ手続タルヘシ
    第八款 臨時休会ノ事
第一条 当取引所非常ノ変災ニ罹ラハ七日以内ニ仮取引所ヲ設ケ接続売買ヲ為サシムヘシ
第二条 右事故ニ由リテ休業スルトモ日数七日以内ハ(休暇日ヲ加算ス)休業前ノ取組ニ接続シテ売買スヘシ、万一八日以外ニ至ルトキハ既ニ売買約定ヲ為セル高ニ対シ本証拠金同額ノ増証拠金ヲ双方ヨリ差入レ置カシムヘシ
  但休業中双方ノ示談ニテ先ニ約定シタル分ニ拠リ買戻シ又売渡ヲ為スハ妨ナシト雖モ必ス取引所ノ承認ヲ受クヘシ
    第九款 違約処分ノ事
第一条 売買主ニ於テ若シ定規ノ諸証拠金ヲ怠リ定剋ニ差入サルモノハ之ヲ違約人ト做シ、肝煎ハ次ノ二十四時間ニ他ノ仲買人ヲシテ売方ノ違約ナレハ其売買高ヲ取引所ノ市場ニ於テ買求メサセ、又買方ノ違約ナレハ之ヲ市場ニ売払ハセ、其不足金並夫カ為メ蒙リタル相手方ノ損失ヲ合セ、其売買ニ対シタル証拠金並ニ其者ノ身元金ヲ以テ之ヲ償ハセ、且此者前キニ既ニ証拠金ヲ差入アル定期約定アレハ都テ之ヲ上文ノ手続ニ付シ其相手方ヘ対シ之カ償ヲ為サシメ、尚余金アレハ前ノ証拠金ヲ差入レサル相手方ヘ配賦スヘシ、而シテ其被損者ニ於テ尚満足セサル時ハ其違約人ヲ相手取公裁ヲ仰クヘシ
  但仲買人半証拠金ヲ差入ルルニ及ハサル株式高ヲ一日ノ内ニ幾度モ売買ナシ、自然損金ヲ生シ之ヲ差入レサルモノハ身元金限リ相手方ヘ配賦シ、之ヲ満足セサルモノハ本条ノ如クナルヘシ、又違約人ノ兼テ差入アル証拠金ニテ相手方ノ損害ヲ償ヒ余金アレハ差戻シ、身元金ハ取引所ニ没入スヘシ、又半証拠金ヲ差入ヘキ当日
 - 第13巻 p.323 -ページ画像 
ニ之ヲ差入スシテ違約ノ処分ニ及ハントスルニ当リ取引所ノ市場時間相後レ実施シ難キ場合有之トキハ翌日ノ本場マテニ之ヲ為サシメ、而シテ若シ其計算上相手方ノ損毛トナラス却テ違約者ノ利得トナルコトアルトキハ之ヲ本人ニ返付スヘシト雖モ其者ハ違約人タルヲ免ルヲ得サルヘシ
第二条 受渡ノ期日定剋ニ至リ其株式又ハ代金ノ差出方ヲ怠リ違約人トナリタルトキハ、其相手方ニ於テ之カ為メ失ヒタル利益ト蒙リタル損耗トヲ合算シ其者ノ証拠金身元金ヲ以テ之ヲ償ハシムヘシ、若シ其相手方ニ於テ満足セサルアレハ、違約者ヲ相手取リ公裁ヲ仰クヘシ、又之ヲ双方ニ於テ怠ルトキハ其約定ハ効ナキモノト為スト雖モ取引所ニ於テハ共ニ之ヲ違約人ト看做スヘシ
第三条 仲買人相対ヲ以テ取引所ノ売買帳ニ記載セス私ニ約定ヲ結ヒ発顕シタルトキハ違約人ノ例ヲ以テ之ヲ処分スヘシ
第四条 凡ソ取引所ニ於テ違約ノ処分ニ及フモノハ之ヲ除名シ、且其身元金ノ残余アレハ之ヲ没収スヘシ
    第十款 規則遺漏ノ件及増減更正ノ事
第一条 此申合規則ニ掲載スル条件実際不便ナルコトアルカ、又ハ遺漏ノ件アルトキハ肝煎ノ衆議ヲ以テ之ヲ補正シ、官ノ許可ヲ得テ施行スヘシ
右取極メタル申合規則ハ当取引所営業上何レモ確守スヘキ証拠トシテ株主並仲買一同記名調印致シ候也
  明治十一年五月
  深川亮蔵(印)            渋沢栄一(印)           今村清之助(印)
  三井養之助代理木村正幹(印)     三井武之助代理木村正幹(印)    益田孝(印)
  三野村利助(印)           小室信夫(印)           小林吟治郎(印)
  田中平八(印)            岡本善七(印)           木村正幹(印)
  小松彰(印)             福地源一郎(印)          渋沢喜作(印)
  小林猶右衛門(印)          小野善右衛門代理奥村信造(印)   安田卯之吉(印)
  大倉喜八郎代(理)木村静幽(印)   土屋清太郎(印)          諸葛信澄(印)
  中島行孝代理小松彰(印)       吉川長兵衛(印)          米倉一平(印)
  後藤庄吉郎(印)           辻純市(印)            竹中邦香(印)
  井上高格代理近藤潔(印)       田中洋之助代(理)田中平八(印)  荒尾亀次郎(印)
  荒尾孝之助幼年ニ付代父亀次郎(印)  阪上市松(印)           須藤吉右衛門(印)
  西村郡司(印)            田中平三郎(印)          田中菊次郎(印)
  原三郎治(印)            原兵吉代原三郎治(印)       松沢与七(印)
  須藤勘兵衛(印)           野村儀兵衛(印)          川崎芳之助(印)
  (阪本兵助脱)           岩田定吉(印)           後藤精一(印)
  柴崎守三(印)            原兵一郎代原三郎治(印)      藤島卯平(印)
  高橋藤吉(印)            高橋恒次郎(印)          上野四郎左衛門(印)
  阪上平次郎(印)           竹口武兵衛(印)          上野七郎左衛門(印)
  鈴木源十郎(印)           辻金五郎(印)           岩塚利兵衛(印)
  徳田孝平代落合成吉(印)       前島栄太郎(印)          高橋又四郎(印)
  中村清蔵(印)            中村平次郎(印)          中村彦五郎(印)
  西村七右衛門(印)          辻忠治郎(印)           小川幸助(印)
 - 第13巻 p.324 -ページ画像 
  荒尾源三郎幼年ニ付代父亀次郎(印)  新井弥兵衛(印)          平林仁平代寺田政忠(印)
  小山直三(印)            鶴岡長次郎(印)          新井慶治郎(印)
  高橋金之助(印)           井染得佶(印)           川島半十郎(印)
  庄田大助(印)            中台彦助(印)           寺田政忠(印)
  鬼沢六三郎代杉山功(印)       新井忠次郎代杉山功(印)      古家清次郎代杉山功(印)
  岡田慶蔵代新井慶治郎(印)      高野藤吉(印)           宮木清助(印)
  秋山甚蔵(印)            花島新七(印)           増淵七兵衛(印)
  高木喜兵衛(印)           吉野甚三郎(印)          土志田武兵衛(印)
  鹿島新兵衛(印)           川崎甚三郎(印)          井上庄吉(印)
  好川保兵衛(印)           伊東幸三(印)
前書之通相違無之候也
  明治十一年五月廿日 東京府知事 楠本正隆(印)
右申合規則ノ件々ハ之ヲ承認シタル証拠トシテ爰ニ奥書調印スルモノ也
  明治十一年五月廿二日 大蔵卿 大隈重信(印)


東京日日新聞 第一九三八号〔明治一一年五月二二日〕 雑報(DK130029k-0020)
第13巻 p.324 ページ画像

東京日日新聞 第一九三八号〔明治一一年五月二二日〕
    雑報
○株式取引所ハ先ごろ既に創立許可を得たれバ、兜町よろひ橋ぎハの島田の跡を買受け夫々の普請も出来あがり、その株主たちより創立証書および申合規則をさし出したれバ今明日内にハ資本金三分二を公債証書にて大蔵省へ納め(多分ハ此たびの起業公債にて呼価拾七万円ほども買入るゝべし)開業免状を受けたる上ハ、六月一日ごろに開業を行ふべき見込のよし、尤も仲買人ハ保証人両人身元金百円と申す事ゆゑ、此節ハ毎日毎日引きもきらず多人数の申込にて公債証書を取扱ふものハ今や遅しと開業の日を待かまへて居ると申すと


中外物価新報 第九五号〔明治一一年五月二二日〕 東京商況(DK130029k-0021)
第13巻 p.324-326 ページ画像

中外物価新報 第九五号〔明治一一年五月二二日〕
    東京商況
聞く東京株式取引所ハ去る十五日大蔵省の允准を得て兜町に設立し、開業免状の下附を得バ直ちに開業の運ひなりと、而して此株式取引所に於て執行する所の詳細ハ該取引所より広告あるへしと雖も、吾輩の聞き得たる所を記載して諸君に報し、併せて其性質を述るハ敢て間言語に非すと信す
扨此取引所に於て売買する所のものハ、政府の諸公債証書及政府の条例を遵奉して発行したる銀行及諸会社の株券等にして、差向き売買するものハ秩禄並新旧の三公債証書なり、而して今回発行の起業公債証書も亦第一割出金を為せし後ハ、公債仮証券を以て売買を始るなるべし、又銀行株券の如きも追々売買を為すに至らん、其売買の手続ハ定期(当月翌月翌々月三仕切)現場の二様にして額面百円を以て切手壱枚となし、旧公債証書の如き現に五十円未満のものハ数箇を併せて凡そ百円に当るものを以て切手一枚となし、何枚にても売買するを得せしむ、売買を為すものハ双方より本証拠金として切手一枚に付
 実価五十円以上六十円未満のものは   三円
 - 第13巻 p.325 -ページ画像 
 同六十円以上八十円未満のものハ    四円
 同八十円以上百円未満のものハ     五円
を本日売買実価二千円迄ハ翌日正午迄に挿入れしめ、若し当日売買の実価差引二千円以上に及ぶときハ其以上の分に対し第二証拠金として本証拠金の半額を即日挿入れしむ、又売買取組の後ち相場昂低して其差本証拠金の半額に当るときハ其損方(昂れば売人低れバ買人)より追証拠金として本証拠金の半額を翌日本場迄に挿入れしめ、非常の荒高下ありて本証拠金半額以上の昂低を生ずる時ハ此追証拠金を即日挿入れしむ(此二様の追証拠金ハ相場の昂低により幾回にても挿入れしめ元相場に復する時ハ差戻す)約定期日前十日(五日限なれバ五月廿一日)に至れば増証拠金として本証拠金と同額を挿入せしむ、若し仕切期限十日内に於て売買を為すときハ本証拠金と増証拠金とを一時に挿入れしむ
此取引所の受渡に用ふる証公債証書《(諸)》ハ必ず東京府庁の管掌に属したるもの、又無記名なるもの、諸株式なれば府下に現存するものに限るべく、而して書換其他受渡に差支へざる迄の手続ハ売方に於て負担すべし、尤も他府県の管掌に在るものと雖も受渡に差支なき迄の手続を経しものハ代用することを得るなり
官庁及諸会社の成規に於て、公債証書株式等の書換を停止したる時間(公債利子下附の際の如きを云ふ)に取結ぶ現場取引ハ、其売人より買方の相当と思量せる文体の委任状(利子割賦金受取代理及公債証書株式書換の委任状)を添て取引所に差出べく、定期約定にして書換停止限内に期日の至るものも亦同様の手続を以て売買を了するを得べし此取引所の仲買ハ別に員限なく仲買身元金として一名毎に百円を取引所に出し、二人以上の証人を得バ入社を許るすと云ふ、尤此百円の金ハ取引所に於て使用すること無きを以て別に利子等ハ払ハざることなり
此株式取引所を設立するハ何等の旨趣に基くものかと疑ふものあらんか、其旨趣たる至て明白なり、抑今日の日本ハ昔日の日本ならず、従前政府の借財ハ悉く公債証書となり、奉還家録も公債証書となり其数少しとせず、加ふるに国立銀行の設立も既に八十の上に出、其他米商会所の如き政府の条例を遵奉して公立する会社ハ逐次増殖の勢あり、又益々奨励して増殖せしめさるべからず、而して此公債証書及銀行会社の株式等ハ世人の資本を托し依て安んずるものにして頗る重大の関係を有し、其売買の金額も何千万を以て算するに至れり、斯く重大の関係あり巨額の売買あるものハ可及的時価を公にせざるべからず、之れ取引所を要する所以の第一なり
試に秩録公債証書発行《(禄)》の際を反顧せよ、当時東京にて八十円内外の取引ありしも、遠国にてハ七十円以内を以て買締めらるゝもの少しとせず、之れ相場の公ならざる弊にして近来にてハ世人も如斯迂濶なる事もあらざるべしと雖も、仔細に眼を点すれば未だ必らずしもなきを保すべからず、而して政府の公債も従前の新旧両種の如きハ追々償却に就く可しと雖も漸次有用の事業を興起せんには新債(今回の起業公債の如き)を増殖すべし、又人民も何時迄も今日の形容に甘するものな
 - 第13巻 p.326 -ページ画像 
らず或ハ鉱山に或ハ鉄道に或は製造に着手すべく、而して独力の弁ずべからさるものハ必や株券を発し有力者を募り公立の会社を興さゞるべからず、株式の売買も従て旺盛に至るハ必然なり、然るに此取引所なく公の相場を知り得ず、従前の如く売手買手相対の相場に委する時ハ政府会計の緩急も想像するに途なく、又民間の融塞を測知するに由なく、会社の盛衰を知るべき術なく、特に自己の臆測を以てするに過ぎざるを以て、人気の進暢を抑へ為めに有益の事業も因循に流れ、商売も活溌ならざるに至らん、之れ取引所を要する所以の第二なり
其他此取引所設立に就て直接に効験あるものハ銀行会社の営業に勉励し、且危険を冒さす実着を専らとするに在り、如何となれば銀行会社の営業着実にして且勉励し、利益の配当割合よき時は取引所に於て該銀行会社の株券ハ衆の信用を得て価を昂貴し、若し営業上投機に類する危険の所為あるか又は利益配当の割合あしき時ハ、忽ち取引所に於て衆の信用を墜し其株券の相場低下するを以てなり
或ハ云ん、株式取引所を設立するの旨趣効験ハ粗命を了せり、而して此売買を為さんとするに何を以て相場の昂低を推測して可ならんやと抑公債証書及株式等ハ豊凶の変あるものにあらす、又供給に増減あるものにもあらず、通常物産の形状を以て昂低を卜すべからず、最も深く注目すべきもの三あり、其第一ハ政府及銀行会社の信憑と平素の営業如何にあり、第二ハ世間商売の盛衰に在り、世間の商売旺盛にして資本融通忙しきときハ、金融者ハ貯蔵の公債証書株券を売却し正貨を得んと欲するを以て相場下落し、若し不景気にして資本不融通なる時ハ之を買収して正貨に換んとするを以て相場騰貴せん、第三ハ平常売買の際何人の手に多く所有するかを知るにあり、如何となれハ仮令市場に売品なきも商人の手に多く所有する時ハ、格別の騰貴あるべからず、然るに農家若くハ華士族等無商売にして唯其利子配当を以て満足するものゝ手に多きときハ再び容易に市場へ現出せざるを以て必ず相場の昂貴を来すべし、其他一時投機者の所為に因て多少の影響を起すものありと雖此取引を為すものハ第一に此三項を注意せざるべからず吾輩嘗て聞く、欧米各国孰れの国にも此取引所あらざるなく、而して其取引頗る旺盛にして又大に権力を有せり、就中英国倫敦米国紐育なる株式取引所は、万国の公債証書を取引為し、現に我が国の公債証書(内地の分と異なり)も同所に於て取引せり、其権力の重大なこと政府新に国債を募らんとする時ハ必ず此取引所に協議発令すると云ふ、実に盛なりと云ふべし、畢竟此取引盛ならざれば工業も商売も拡張すべからず、今や東京府下に一の取引所あり、又大坂府下に於ても不日設立の企ありと、吾輩敢て期望す、東西相対して此取引を日一日より旺盛にし、漸次欧米各国の如き権力を得て為めに有要の工事を興し商売の途繁盛ならしめんことを


中外物価新報 第九六号〔明治一一年五月二五日〕 東京商況(DK130029k-0022)
第13巻 p.326-328 ページ画像

中外物価新報 第九六号〔明治一一年五月二五日〕
    東京商況
吾輩ハ前号に於て東京株式取引所開設に付て聊所見を陳述せしが、今現在市中に売買する三種(新旧秩)の公債証書及起業公債証書と第一
 - 第13巻 p.327 -ページ画像 
国立銀行の株式との一ケ年平均利子の歩合を算出して諸君の便覧に供す
  ○新公債証書 額面ニ付
即今買収するものと看做し元金                  六十八円廿銭
当五月より来る明治廿九年十二月迄十八年八ケ月間の利子但し年四分 七十六円
末年に額面百円を得て元金を差引益金               卅一円八十銭
右得益金〆て百七円八十銭
 元金に割合十八年八ケ月間平均一ケ年の利子           八分四厘七毛に当
  但し此証書ハ四分の利足なるを以て原価に割合時ハ五分八厘余に当ると雖ども年々抽籤あるを以て価格割高なるなり、今仮に末年迄籤に中らざるものと看て算す
  ○旧公債証書 同前
即今買収するものと看做し元金    廿一円四十五銭
一ケ年可請取年賦金         二円
 右一年の利子と看做九分三厘二毛
  但し此証書ハ元金年賦割戻にして利子抽籤ともなきを以て即今買収すれば残年賦四十四年此割賦金八十八円にして其内十一年間ハ元金(買収代価)へ戻し入とするときハ残り三十三年にして六十六円余ハ利益に当る
右の内元金を引去り全益金六十六円四十五銭
 元金に割合四十三年八ケ月間平均一年の利子 七分一厘一毛ニ当
  ○秩禄公債証書 同前
即今買収するものと看做し元金       九十九円廿銭
当五月より向六ケ年八ケ月間の利子但年八分 五十六円
末年ニ額面百円ヲ得て元金を差引益金    八十銭
右得益金〆五十六円八十銭
 元金に割合六年八ケ月間平均一ケ年の利子 八分五厘九毛に当
  但し此証書ハ八分の利足なるを以て原価に割合時ハ八分零六毛余に当れど今仮に末年迄籤ニ当らざるものと看て算す
  ○起業公債証書 同前
明治十二年七月買収するものと看做し元金       八十円
明治十二年六月より向二十三年六ケ月間の利子但年六分 百四十一円
末年に額面百円を得て元金を差引益金         二十円
右益金〆百六十一円
 元金に割合廿三年六ケ月間平均一年の利子 八分五厘六毛ニ当
  但し此証書ハ六分の利足なるを以て元価に割合時ハ七分五厘に当れど年々抽籤あるゆへ、仮りに五ケ年目に籤に当り、額面の金を得ると看るときは五ケ年間平均一年の利子一割二分五厘に当る
  第一此証書の便利なることハ無記名なるを以て売買とも更に手数を要せず、利足附の紙幣を所有するに異ならざるなり
  又即今此証書を引請んとするものハ便宜により第一より第三迄の割払を一時に入金する時ハ其呼高六分の利子ハ入金の節直ちに受取り、所謂前利なれバ余程割合よきことなり
  今本文に掲ぐるものハ此等の便益を除き割払金差出済公債証書下
 - 第13巻 p.328 -ページ画像 
附後に買収せしものとし、且末年迄籤に当らざるものと看做て算出せり
  ○第一国立銀行株式 一株(百円)ニ付
当一月中買収のものと看做し元金    百十円
一年(二季)の配当金第九回報告に拠る 十四円
 元金割合一年の利子一割二分七厘余
  但即今の譲渡ハ一株に付百二十五円位なれど最早当半季配当にも近きを以て仮りに当一月譲渡のものを以て算出す


諸願伺届案決議 自明治一〇年一二月至明治一一年一二月(DK130029k-0023)
第13巻 p.328 ページ画像

諸願伺届案決議 自明治一〇年一二月至明治一一年一二月 (東京株式取引所所蔵)
 明治十一年五月廿八日
    (彰)
  頭取   支配人(印)    書記方(印)(印)(印)
  肝煎(印)
当株式取引所ノ義過ル廿二日開業免状御下付相成候ニ付而ハ来ル六月一日開業仕候、此段御届申上候也
  月 日             東京株式取引所
                    頭取
                     小松彰
     大蔵卿   大隈重信殿
  各通
     東京府知事 楠本正隆殿


第一回半季実際考課状 第五頁及第九頁明治一一年六月乃至一二月(DK130029k-0024)
第13巻 p.328 ページ画像

第一回半季実際考課状 第五頁及第九頁明治一一年六月乃至一二月
    東京府下兜町            東京株式取引所
    ○営業事務ノ事
一当取引所六月一日ヲ以テ開業シタリ、但シ数日前ヨリ諸新聞紙ヲ以テ之ヲ公告シ、且五月廿八日ニ於テ予メ之ヲ大蔵省東京府警視分署ニ開申セリ


中外物価新報 第九八号〔明治一一年六月一日〕 東京商況(DK130029k-0025)
第13巻 p.328-329 ページ画像

中外物価新報 第九八号〔明治一一年六月一日〕
    東京商況
○予て報道せし株式取引所ハ本日開業にて其式にハ内務大蔵両卿を始め府知事国債局長其他の貴官も臨場あり、仲買人ハ数十名登場して初立会を初め中にハ未だ不馴にて十分の売買を為し得ざるものもありたれど、其売買の数ハ(三仕切合して)旧二百廿五枚新三百枚秩四百三十三枚にて〆て九百五十八枚なり、其景況頗る盛にして将来必ず盛大に至らんこと現に本日の立会に於て其前兆を現ハせり
○東京株式取引所相場
旧公債証書 六月限寄付廿一円五十三銭七銭八銭大引平均廿一円五十六銭 二番五十三銭五銭引 七月限寄付廿一円五十八銭六銭五銭大引平均廿一円五十六銭 二番五十五銭引 八月限寄付廿一円五十八銭六銭七銭五銭大引平均廿一円五十六銭 二番五十二銭六銭七銭引
新公債証書 六月限寄付六十五円九十銭大引平均六十五円九十銭 二番八十五銭引 七月限寄付六十五円九十銭八十七銭大引平均六十五円八十八銭 二番八十六銭五銭引 八月限寄付六十五円八十五銭七銭六
 - 第13巻 p.329 -ページ画像 
銭五銭六銭七銭五銭四銭二銭大引平均六十五円八十五銭 二番八十五銭四銭三銭引
秩禄公債証書 六月限寄付九十九円五十銭大引平均九十九円五十銭
二番四十五銭八銭六銭引 七月限寄付九十九円三十銭より廿五銭二銭五銭二銭大引平均九十九円廿五銭 二番廿五銭四銭三十銭引 八月限寄付九十九円十五銭七銭廿五銭八銭六銭四銭五銭七銭大引平均九十九円廿三銭 二番廿五銭より八銭三十二銭四銭五銭六銭五銭四十銭五銭二銭三十九銭四十五銭六銭引


東京日日新聞 第一九四七号〔明治一一年六月一日〕 【○本日ハ東京株式取引…】(DK130029k-0026)
第13巻 p.329 ページ画像

東京日日新聞 第一九四七号〔明治一一年六月一日〕
○本日ハ東京株式取引所の開場式にて伊藤内務卿・大隈大蔵卿を始め陸奥・林・前島・郷・楠本・千田・岩崎の諸君も来場せられ午饗の饗応ありて午後二時より立会を始め、夫より株主仲買人等へも饗応あり、其間だ陸軍楽隊の奏楽もあり、夜ハ毬灯を懸け馬鹿囃しなどもある由なれバ昼夜ともに盛んなることなるべし、其の詳しき次第ハ明後日の紙上にゆずる


東京日日新聞 第一九四八号〔明治一一年六月三日〕 【○一昨一日ハ朝より生…】(DK130029k-0027)
第13巻 p.329 ページ画像

東京日日新聞 第一九四八号〔明治一一年六月三日〕
○一昨一日ハ朝より生憎く雨天なりしが兜町なる東京株式取引所ハその開業式を執り行なひたり、其様を見るに前後の両門にハ西洋風の緑葉環を作り日の丸の国旗を掲げ、立会場より廊下に掛けて数百の紅毬灯をかけ渡し、帳場の正面にハ何かなる神を祭りたるか紅白の鏡餅を置き一対の神酒を備へ、其側にハ両米商会社諸銀行新聞社《(所カ)》より開業を祝して贈りたる品物ならびに数駄の酒樽をつみ上げたり、午後一時ごろには伊藤内務卿・大隈大蔵卿・林内務少輔・楠本知事・郷・吉原・千田・岩崎・中井の諸君も来場せられ、陸軍楽隊の奏楽などありて午飯の饗応あり、尤とも伊藤・大隈の二公ハ御用ありて午飯の後にお出に相成る、扨て午後二時に至りていよいよ本場立会の開業を行ふ、時に頭取肝煎差配人たちハ帳場の高座に上りて挨拶の祝辞を述べ御定りの拍手三回の国礼を行なふ、夫より旧新秩禄三種の限月売買をはじめ来会の諸公も高座の後より親しく其様を見物せられ、右の本場すみて直に二番を立てたり、但し初日の事なれバ不馴にてありたれども売買ハ十六七万円の取組を成し、いかにも繁昌に至るべき吉兆を顕ハしたり、右の立合すみて後に仲買人にハ場所にて酒肴を振舞ひ、馬鹿ばやしを初め又楼上に於てハ株主および新聞社員たちへ滞なく開業したる次第を報告し、立会場の外にハ酒樽の鏡をぬきて来社の人へふるまひたり、尤も雨天ゆゑ同夜の催しの趣向ハなかりしかども中々に賑かなる事なりしと云へり


朝野新聞 第一四二一号 〔明治一一年六月四日〕 【兜町の株式取引所は…】(DK130029k-0028)
第13巻 p.329 ページ画像

朝野新聞 第一四二一号〔明治一一年六月四日〕
○兜町の株式取引所は開業より大繁昌にて此の景気では米商会所を圧する様にならうと云ふ評判、公債証書の流通が善くなつて一同の便利に成ると市中でも大喜び
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銀行雑誌 第七号・第一―五頁〔明治一一年六月二九日〕 株式取引所ノ事(DK130029k-0029)
第13巻 p.330-331 ページ画像

銀行雑誌 第七号・第一―五頁〔明治一一年六月二九日〕
    株式取引所ノ事
株式取引所ノ我カ国ニ於ケル識者之ヲ企望スルノ久シキト政府之ヲ勧誘スルノ厚キトニ拘ハラス明治七年ノ末条例頒布以来殆ント五年ノ星霜ヲ経テ本年六月ニ至リ初テ東京株式取引所ノ創立ヲ見ルニ至ル者ハ豈ニ其条例ノ我カ国情ニ適セサルニ由ルカ決シテ然ラズ、蓋シ我カ国運ノ未タ至ラサルガ為メナリ、余輩カ所謂ル気運ナルモノハ単ニ公債証書ノ増加ト相場ノ流行トヲ謂フニアラス、即チ公共精神ノ発達是レナリ、之ヲ細言スレバ我カ国民漸ク合資協力ノ便益ナルヲ悟リ株券ヲ発行シ、又之ヲ売買スルノ気運稍々至リ竟ニ今日取引所創立ノ挙アルニ至リシナリ、若シ其レ然ラスシテ徒ニ公債証書ノ奴隷トナリ相場師ノ集会所トナリテ已ムトナサハ誰カ又之ヲ企望シ之ヲ勧誘スルモノアランヤ、余輩ハ左ニ英国株式取引所ノ沿革ヲ略記シ、以テ株式取引所ノ他ノ諸会社ニ向テ何等ノ関係ヲ有シ何等ノ便益ヲ与フルヤヲ示サントス
英国株式取引所ノ起源ハ英蘭銀行《バンク.ヲフ、イングランド》ト時ヲ同ス、英蘭銀行ノ創立スルニ当テ英国政府ハ為換手形・地金銀ノ売買其他質物流込ノ物件ヲ糶売シ及ヒ其株券ヲ売買スルノ免許ヲ与ヘタリ、是ニ於テ株式ノ相場始メテ英国ニ起リ豪商富估各地ヨリ来集セリ、当時ハ銀行ノ搆中ニテ此相場ヲ為シ居タリシガ「ウイルレム」三世ノ時ニ外戦久シク結ンテ解ケス、公債大ニ増加シ相場益々盛ニシテ千七百年ノ頃ハ銀行ニテ営ミ難キ程ニ至リシヲ以テ、之ヲ「チヱンヂ・アルレイ」街名ニ移セリ、爾後或ハ軍事或ハ奢侈或ハ官庫欠乏等ヨリシテ公債次第ニ増加シ相場頗ル勢力ヲ得タリ、然ルニ相場師ノ所為タル稍欺騙ニ類シ其弊惧ルベキモノアルヲ以テ、千七百三十二年「ジヨン・バーナード」氏カ発議ヲ以テ英国議院ハ限月売買禁止ノ法ヲ決定セリ、然レトモ相場ノ取引ハ更ニ衰ヘス、千七百三十三年仲買人等再ヒ之ヲ「スウイーヂングス・アルレイ」街名ニ移シ、始メテ「スツトク・ヱキスチヱンヂ《(マヽ)》」ト称シ、何人ニテモ六ペンスノ金員ヲ払フモノハ取引ヲナスコトヲ許セリ、千八百年代ノ末ニ外戦再ヒ起リ従テ公債益々増加スルニ当リ、取引所亦面目ヲ一新シ、委員ヲ撰ヒ資金ヲ募リ「ケヱペル・コールト」ニ於テ取引所ヲ新築セリ、此新築落成ノ後ハ自由取引所ヲ廃シ投票ヲ以テ定メタル人員ニ限リ年々若干ノ身許金ヲ払ヒテ取引スルコトヲ許セリ、此時ニ当リ英国政府ハ取引所ヲ媒介トシテ巨額ノ公債ヲ募リ以テ其軍費ニ供シタレハ取引所ハ大ニ其勢力ヲ増シ復タ動カスベカラサルニ至レリ、此軍全ク終ルノ後数年間内外無事更ニ公債募集ノ挙ナキヲ以テ取引所ハ必ラス衰微ニ赴クベキカ如シト雖トモ、却テ益々盛大ニ至レリ然ル所以ノモノハ何ソヤ、英国貿易ノ景況漸ク進ミ財主ハ争テ外国政府ノ公債ニ出金シ、諸会社競ヒ起リテ本国及ヒ殖民地其他外国ノ鉄道ヲ築造スル等ノ為メニ発行セル証券ハ殆ント公債証書ノ総額ニ超ヱ、之ニ加ルニ鉱山・水道・瓦斯・堀割・銀行・保険其他各種ノ会社アリテ皆ナ取引所ニ因テ其株券ヲ発売シ又ハ之ヲ売買スルヲ以テ、現今ニ至リ其情況ヲ察スルニ英国株式取引所ハ実ニ英国貿易ノ中心ニシテ諸
 - 第13巻 p.331 -ページ画像 
会社ノ基本ト云モ決シテ不可ナカルヘシ
右ハ余輩カ英国株式取引所ノ沿革ニ就テ聞ク所ノ概略ナリ、今我カ株式取引所ノ起源ヲ察スルニ大ニ英国ト其趣ヲ異ニシ、単ニ公債ノ奴隷ト相場師ノ集会所トナラスシテ全ク他ノ諸会社発達ノ機ト密附シテ同行一体ナルカ如シ、果シテ然ラハ我カ取引所ノ漸ク進ンテ英国取引所現今ノ域ニ達スルハ思フニ遠キニアラサルベシ、是レ余輩カ深ク我カ取引所ニ望ム所ナリ


自明治十一年至同四十年沿革及統計 (東京株式取引所編) 第五―六頁〔明治四一年一一月〕(DK130029k-0030)
第13巻 p.331-332 ページ画像

自明治十一年至同四十年沿革及統計 (東京株式取引所編)
                      第五―六頁〔明治四一年一一月〕
    東京株式取引所ノ起原及沿革
本邦株式取引所ノ起原ハ近ク明治維新ノ後ニ在リ、我東京株式取引所ハ乃チ之レカ嚆矢ニシテ其創立実ニ明治十一年五月ニ在リ
先是明治七年十月我政府ハ株式取引所条例ヲ制定発布セラレタリ、当時社会ノ状態未タ其必要ヲ認メサルカ如クナルノミナラス該条例中我国情ト実地ノ取引ニ適切ナラサルノ条項多々有之、是ノ故ニ当時該条例ニ遵拠シテ株式取引所ヲ創設センコトヲ企図シタルモノアリト雖モ時機未タ熟セサルト条例ノ完備セサルガ為メ竟ニ成功ヲ見ルニ至ラスシテ止メリ
斯クテ明治十年ノ交ニ迨ヒ、国立銀行続々各地ニ起リ従テ銀行紙幣ノ発行ニ対スル保証用トシテ国債証券ノ需求漸ク多キヲ加ヘ、一般社会モ亦之ヲ需求スルコト頻リナルヲ以テ其売買日一日ヨリ増加セリ、是ニ於テ世間初メテ取引ノ公開市場ナキカ為メ其売買上大ニ不便ヲ感スルモノアルニ至レリ
然ルニ明治七年十月発布ノ株式取引所条例ハ前述ノ如ク実地ニ適切ナラサルノ嫌アリシヲ以テ、渋沢栄一・小松彰・益田孝・小室信夫・三野村利助・深川亮蔵・渋沢喜作等ノ諸氏相謀リテ一方ニハ取引所条例改正ノ意見ヲ具シテ当局者ノ採択ヲ請ヒ、他ノ一方ニハ大ニ同志ヲ四方ニ募集シタルニ天下翕然トシテ同意ヲ表スル者多シ、是ニ於テ乎資本金弐拾万円ヲ以テ株式取引所創立ノ議全ク調ヒ、明治十年十二月二十六日ヲ以テ創立願書ヲ時ノ大蔵卿ニ進達シ、同二十八日創立許可ノ命ニ接シタリ、但シ定款及申合規則ハ同時ニ之ヲ准許セスシテ他日何等ノ指令ヲ与フヘキ旨ヲ達セラレタリ
居ルコト数月、明治十一年五月政府ハ改正株式取引所条例ヲ公布セラル、之ヲ旧条例ニ比スルニ条文稍ヤ簡明ナルノミナラス旧条例中不備ノ点ハ概ネ之ヲ改正増補シテ稍ヤ実際ニ適切ナルモノトナセリ、是レ一ハ政府自ラ時勢ノ進歩ニ促カサレテ此改正ヲ為シタルベシト雖モ抑亦渋沢・小松等諸氏カ改正意見ヲ具シテ当局者ノ参考ニ供シタルノ功ニ依ラスンハアラス
此ノ改正条例ノ発布ト共ニ政府ハ曩キニ渋沢氏等ガ裁可ヲ得ンカ為メニ進達シタル定款及申合規則ヲ却下シ、更ニ新条例ニ依リテ之ヲ改訂再申スヘキ旨ヲ達セラル、是ニ於テ発起人諸氏ハ新ニ定款及申合規則ヲ議定シ設立願書ト共ニ之ヲ再呈シ、五月十五日ヲ以テ設立免許ヲ得タリ、既ニシテ諸般ノ設備全ク成リ同年六月一日ヲ以テ業務ヲ開始シ
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タリ、当時就任ノ役員ハ頭取小松彰・肝煎小室信夫・福地源一郎・渋沢喜作・小林猶右衛門ノ五氏ナリ
○下略


諸願伺届案決議 自明治一〇年一二月至明治一一年一二月(DK130029k-0031)
第13巻 p.332 ページ画像

諸願伺届案決議 自明治一〇年一二月至明治一一年一二月 (東京株式取引所所蔵)
(朱書)  (彰)
第三拾一号
株式取引所条例第十一章第四拾七条ニ拠リ御制定可相成税金ノ多寡及ヒ御施行ノ時期ハ推測難仕事ニ御座候処、当株式取引所開業以降日《(マヽ)》タル殆ト三月、取引ノ景況売買ノ員数漸ク一定ノ地位ニ至リ将来損益ノ予算此際ニ於テ略見込モ相就候ニ付而者窃ニ他日御徴収可相成税額割合ノ儀ヲモ配慮仕居候事ニ有之、其多寡寛厳ハ此取引所ノ性質効用ニ応シ至当ノ御決定可有御座儀ニテ空想ヲ未発ニ抱キ可申筋ニハ無御座候得共、創立ノ初ヨリ株主一同企望仕居候次第モ有之、且既往三ケ月ノ実際景況ニ拠リ将来ヲ推測シ其損益ノ概要ヲ臚陳シ以テ参照ニ奉供候儀者必シモ無用ノ業ニ有御座間敷存候ニ付、本年下半季実際出納ノ予算ヲ掲出シ、謹テ之ヲ申呈仕候、其書中載スル取経費《(マヽ)》ノ項ハ売買出来高平均一日凡千枚ニ応スル諸件ノ設備ニ消耗仕候実数ニ御座候故、今別帋出来高一日二千枚ト仮定仕候時ハ随テ其額ヲ増シ候儀当然ノ事ニ御座候得共、節減ヲ旨トシ姑ク支弁シ得ヘキコトト定メ計算仕候儀ニ御座候、出額ニ於テハ既ニ此ノ如ク節減ノ算法ヲ用ヒ、而シテ入額手数料ノ項ハ却テ実際収入ノ高ヨリ増加仕候儀者将来ノ商況必ス幾何ノ繁盛ヲトスヘキ一般ノ公説ヲ採リ候儀ニテ、殊ニ用意ノ算法ト御認察可被下候、爰ニ別帋損益予算書相添此段謹テ奉申上置候 以上
                  東京株式取引所
  明治十一年八月二十三日       頭取
                     小松彰
    大蔵卿 大隈重信殿


諸願伺届案決議 自明治一〇年一二月至明治一一年一二月(DK130029k-0032)
第13巻 p.332-333 ページ画像

諸願伺届案決議 自明治一〇年一二月至明治一一年一二月 (東京株式取引所所蔵)
    (彰)
    
  東京株式取引所明治十一年下半季損益概算
    入之部
一金四千八百七拾四円七拾五銭   抵当公債証書利子
  但起業公債証書呼高拾七万円半年分利子
一金弐千五拾八円         儲蓄公債証書利子
  但資本金三分ノ一六万円之内創立費家屋什器買入代等金五千百拾七円五拾弐銭七厘(惣費用高九千百拾七円五拾弐銭七厘之所四千円ハ資本七分金之内ニテ引去候ニ付如斯)除之残金五万四千八百八拾弐円余ヲ以テ起業公債六万八千六百円(百円代価八拾円ノ積リ)ヲ買得ル見込
一金壱万三千五百円 手数料
  但壱ケ年営業日数三百日壱ケ月二十五日之積リニテ半季百五十日間一日出来高枚数弐千枚と見込内定額千枚現場千枚ノ積
 合金弐万四百三拾弐円七拾五銭
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    出之部
一金六千三百八拾四円八拾弐銭三厘 経費
  但金弐千三百八拾四円八拾弐銭三厘ハ十一年七月マテ現費仕払金四千円ハ八月ヨリ十二月マテ五ケ月分壱ケ月凡八百円つゝ之見積
一金九百三拾六円五拾弐銭八厘 創立費並家屋什器償却
  但純益金壱万四千四拾七円九拾弐銭七厘之内十五分ノ一該費金九千百拾七円五拾弐銭七厘之内ヘ償却之見込
一金千三百拾壱円拾四銭 積立金
  但純益金之内創立費家屋什器償却金九百三拾六円五拾弐銭八厘引残金壱万三千百拾壱円三拾九銭九厘ノ十分一積立金之見込
一金弐千六円 賞与手当
  但純益金之内前ニ備金弐千弐百四拾七円六拾六銭八厘引残金壱万千八百円弐拾五銭九厘ノ百分ノ十諸役員ヘ賞与手当ノ見込
一金九千七百九拾四円弐拾五銭九厘 株主配当金
  但資本金弐拾万円ニ割付一ト株ニ付金四円八拾九銭七厘一ケ年九分七厘九毛余ノ利ニ当ル
 合金弐万四百三拾弐円七拾五銭


諸願伺届案決議 自明治一〇年一二月至明治一一年一二月(DK130029k-0033)
第13巻 p.333 ページ画像

諸願伺届案決議 自明治一〇年一二月至明治一一年一二月 (東京株式取引所所蔵)
過刻上申仕置候当取引所本年下半季損益概算書中手数料ノ項ニ付、六七二ケ月現実収入ノ金額出来高枚数ニ割付、一枚ニ付何程ニ相成候ヤノ御尋問ニ由リ左ニ仕訳入御覧候、右ハ定期ノ枚数割合ニ多キト期日受渡ニ限リ出来高一枚ニ付十二銭即売買双方ヨリ各六銭ヲ徴集致シ候トノ所以ヨリ平均一枚ニ付五銭〇五ノ割合ニ当リ候得共、将来出来高相増シ候ニ応シ定期減少現場増加候儀ハ必然ノ事ニ御座候間、通シテ一枚ニ付四銭五厘ノ割合ト御見極置被下度此段申上置候也
  明治十一年八月二十三日
                東京株式取引所頭取
                      小松彰
  銀行課長代理
    山崎忠門殿


諸願伺届案決議 自明治一〇年一二月至明治一一年一二月(DK130029k-0034)
第13巻 p.333-334 ページ画像

諸願伺届案決議 自明治一〇年一二月至明治一一年一二月 (東京株式取引所所蔵)
(彰)    (朱書)
第三十五号
    立会時限並ニ株式売買ノ儀ニ付御届
当株式取引所本場立会時限午後二時ニ御座候処、来ル二十日ヨリ午前十時ト為シ、随テ二番商ノ時限ヲ午後二時ト定メ可申、並ニ銀行諸会社ノ株式売買立会ノ儀当分ノ内毎月両度五日廿日ト為シ、来ル二十日ヨリ挙行可仕、其時限ハ本場引跡ニ続キ而シテ現物並ニ当月限ノ約定ニ為致候積リ決定仕候、尤五日二十日休暇ニ際シ候時ハ其次日立会可仕候此段御届申上候 以上
  明治十一年九月十六日      東京株式取引所 印
                    頭取
                     小松――――印
 - 第13巻 p.334 -ページ画像 
    大蔵卿 伊藤博文殿


中外物価新報 第一三〇号〔明治一一年九月二一日〕 東京商況(DK130029k-0035)
第13巻 p.334 ページ画像

中外物価新報 第一三〇号〔明治一一年九月二一日〕
    東京商況
○株式取引所○中略
株式相場(昨廿日初立会)九月限
第一銀行百五十円 兜町米商会所百三十円 蠣殻町同二百八十円 株式取引所百三十三円より四十二円五円


中外物価新報 第一三二号〔明治一一年九月二八日〕 東京商況(DK130029k-0036)
第13巻 p.334 ページ画像

中外物価新報 第一三二号〔明治一一年九月二八日〕
    東京商況
○株式取引所
○株式取引所本日受渡高 旧公債六万六千円 新公債九万五千八百円秩禄五万九千二百円 金禄一万六千五百円 第一銀行株一株 蠣殻町米商会所一株 東京株式取引所一株


銀行集会理財新報 第八号第一丁ォ―第四八丁ゥ〔明治一一年一二月一六日〕 ○銀行集会第十七回録事(DK130029k-0037)
第13巻 p.334 ページ画像

銀行集会理財新報 第八号第一丁ォ―第四八丁ゥ〔明治一一年一二月一六日〕
    ○銀行集会第十七回録事
十二月二日択善会第七回ノ会同ヲ築地精養軒ニ於テ開設ス、盟主ハ第十四国立銀行(信州松本)会員ハ第十五国立銀行北川亥之作・戸田欽堂、第一同渋沢栄一・三井八郎次郎○中略計三十九名ナリ
○中略
第七次同氏○栄一ハ頃日東京株式取引所ヨリ此会同ニ照会セシ諸銀行株式売買ノ委托状案ヲ示シ、尚不日輪札ヲ以テ之ヲ回達スベキコトヲ報道セリ(本文已号ヲ付シ下ニ載ス)
○中略
(已)
株式取引所条例第一章第一条及其取引所定款第一章第四条ニ拠リ当銀行(会社)ノ株式ハ其取引所市場ニ於テ現場及ビ定期トモ其株主ノ望ニ任セ売買為致候ニ付、自今立会中ハ売買ノ儀御承認被下度、尤モ何時ニテモ其取引所ノ御考案ニ由リ売買取引停止セラレ候共異議無之候依テ当銀行(会社)創立証書定款及ビ本年上半季実際考課状相添此段及御照会候也
  月 日                  何之誰印
  東京株式取引所頭取
    何之誰殿


諸願伺届案決議 自明治一〇年一二月至明治一一年一二月(DK130029k-0038)
第13巻 p.334-335 ページ画像

諸願伺届案決議 自明治一〇年一二月至明治一一年一二月 (東京株式取引所所蔵)
 明治十一年十月十九日
    (彰)
  頭取 支配人(印)  書記方(印)
  肝煎(印)
    銀行諸会社株式売買立会之儀ニ付御届
銀行諸会社株式売買立会之儀毎月二回五日廿日ニ挙行仕来リ候処、来ル十一月ヨリ当分ノ内毎土曜日ト改定仕候、尤其時限等ハ総テ是迄之通ニ
 - 第13巻 p.335 -ページ画像 
御座候、此段御届申上候 以上
  明治十一年十月 日       東京株式取引所
                    頭取
                     小松彰
    大蔵卿 伊藤博文殿


調査彙報 第六三号・第一四五頁〔昭和八年二月二〇日〕 東京株式取引所(DK130029k-0039)
第13巻 p.335 ページ画像

調査彙報 第六三号・第一四五頁〔昭和八年二月二〇日〕
  ○東京株式取引所
    開業当時の立会場
 次の一文は某古老の手簡ではあるが、当時の東株取引所の立会状態が如何にも良く現はれて居ると思つたので此処に載せることにした。
  文献二一 某古老の手簡
 立会場はタタミ敷にて参観席はなく芝居の花道(通行道也、高さ一尺五寸位)に似た所ありし
 客は今の様に来て居らず、寧ろ無と云ふてよし
 手振りは立ちて振れり
 場立ち机を前に置かず
 冬場立ちの内、杉平と云ふ仲買のみは帳場格子に机を囲ひて控へしは目立ちて見えたり、場内は昔の芝居見の如く、赤毛氈や、火入等を持込み、芝居見物に異らず
 立会開始は小使が(株)印のはんてんを着て拍子木を打つ
 場合は仲買人の居る所と五尺位高し、然して畳を引き詰めたり
 寄付は早き者勝にして皆初よりザラバなり
 役員の服装は羽織袴なり、洋服は一人も無し
 場内総てランプなり、瓦斯未だなし


第一回半季実際考課状 第二五―二六頁明治一一年六月乃至十二月(DK130029k-0040)
第13巻 p.335 ページ画像

第一回半季実際考課状 第二五―二六頁明治一一年六月乃至十二月
           東京府下兜町 東京株式取引所
    ○営業景況ノ事
一当取引所営業ノ景況ハ本状各科ノ条項ニ開陳スト雖モ再ヒ其概要ヲ掲出シ以テ閲覧ニ便ス
 諸公債ノ売買ハ開業以降漸ク昌盛ニ向ヒ八月下旬九月初ニ於テ大ニ其数ヲ増加シタリ、而シテ金禄公債証書売買解禁ノ命下ルヤ市場ノ景況ハ偏ニ閙熱ノ情ヲ露ハスモ其実際取引ハ解禁以前ノ増進ニ似サリシカ、十二月ニ至リテ稍々増加ノ勢ヲ顕ハシ益々前途ニ昌栄スヘキノ徴ヲ示シタリ
 当市場ニ売買スル各種公債ノ多寡ヲ計較スルニ金禄ヲ多トシ、秩禄之ニ次キ、旧新二債ト起業ト又之ニ次ク、近日ノ如キハ殆ト金禄其九分ニ居リ他ノ四種ヲ合シテ一分ト云フモ可ナリ
 銀行諸会社株式ノ売買未タ甚タ少シ、但シ其中ニ在リテ当取引所ノ株式ハ常ニ多数ニ居ル
 景況大略此ノ如シ、営業ノ全体ニ於テ逐次盛昌ノ形況ヲ占得シタルハ株式価格ノ増進ノ一事ニ就キテモ之ヲ明証スルニ足ルヘシ
 - 第13巻 p.336 -ページ画像 

東京株式取引所第一期営業報告 第七―一七頁明治一七年四月(DK130029k-0041)
第13巻 p.336-339 ページ画像

東京株式取引所第一期営業報告 第七―一七頁明治一七年四月
    第一款 総況
○上略
当所創立以来専ラ売買セシ者ハ新、旧、秩禄此三品ハ創業ノ日ヨリ之ヲ売買ス金禄九月ヨリ売買ヲ開始ス起業十一月ヨリ売買ヲ開始ス五種ノ公債ナリキ、此内尤モ売買ノ盛ナリシハ金禄公債証書トス、此公債証書ハ流通多額ニシテ給需他ノ四種ニ超越シ其取引日ニ多キヲ加ヘ、十一年九月ヨリ十二月ニ至ル四ケ月間ニ於テ既ニ九百六十余万円ノ高ニ上レリ、是年九月二十日第一銀行ノ請求ニ応シテ其株券ヲ売買シタリ、是ヨリ先キ当所ノ株券ハ七月十五日ヲ以テ売買ヲ始メタレトモ、他ノ官准会社株券ノ当市場ニ現レタルハ第一銀行ヲ以テ嚆矢トス、亜テ兜町米商会所・蠣殻町米商会所株券モ亦其売買ヲ開キタリ、此等ノ株券ハ其取引高未タ太タ多カラサリシモ亦当所繁栄ノ幾分ヲ助成シタル者ノ如シ、営業漸ク進歩ノ兆ヲ顕ハスニ当リ尚勉メテ其売買取引ノ進路ヲ円滑ナラシメンコトヲ望ミ、無記名公債証書ヲ以テ売買諸証拠金ニ代用スルコトヲ許シ、半証拠金売買実額二千円ノ制限ヲ拡充シテ四千円ト為シ、現場売買手数料切手一枚金三銭ヲ減シテ二銭ト為シ、仲買人身元金ヲ確実ナル銀行ニ預托シテ幾分ノ利子ヲ収メ以テ利益ノ増加ヲ計リシコトアリキ
故ニ創業日猶浅キニモ拘ラズ十一年間ノ出来高ハ公債(額面)二千六百五十六万五千四百円株式二百五十三株而シテ売買手数料ハ一万〇六百余円ヲ収入シ、且一株四円五拾銭ノ配当ヲ為スヲ得タリ
爾来商勢駸歩シ旧、新、秩禄、起業ノ四公債ハ其取引漸次ニ減少スルニモ拘ラス金禄公債ハ日ニ月ニ其売買ヲ増加シ、又第二銀行・横浜洋銀取引所後チ横浜株式取引所ト改正セリ第六銀行ノ株券取引ヲ開始シ、諸株式ノ売買随テ大ニ増加スルニ至レリ、故ニ十二年上半季ニ於ケル惣出来高ハ公債証書五千七百四拾九万八千九百円、諸株式弐千六百九拾壱株アリテ之ヲ前季ニ比スレハ公債ハ三千余万円株式ハ二千四百株ヲ増加シ、又同年間ノ売買手数料ハ弐万弐千百十四円ニシテ配当金ハ三円ヲ増シテ七円五拾銭ノ配賦ヲ為シタリ
此年間ニ於テ申合規則ヲ改正シタルコト寡カラス、今其重要ノモノヲ掲クレハ諸株式ノ売買手数料ヲ序理シ 定期ハ一株六銭現場ハ一株三銭ナリシヲ改メテ定期一株ノ実価百円以上弐百円未満ハ金弐拾銭、弐百円以上三百円未満ハ金廿五銭、三百円以上ハ金三拾銭ト為シ、其現場取引ハ都テ此半額ニ準減スルニ改ム公債株式ノ直取引ヲ開始シ及増証拠金ヲ当分追徴セサルコトトナセリ、此等ハ即チ売買上ニ多少ノ便益ヲ与ヘタルモノト信ス
十二年下半季ニ至テハ商勢少ク退歩シタル状アリ、新、旧、秩禄、起業ノ四公債ハ益々其取引高ヲ減少シ金禄モ亦前季ニ比シテ凡ソ弐千弐百余万円ヲ減シタリ、故ニ此半季間ノ諸公債ノ出来高ハ総計三千四百弐拾五万千五百円ニシテ前季ニ比スレバ凡ソ弐千三百余万円ヲ減ス、然レトモ株式ノ出来高ハ大ニ其数ヲ増シ前季ニ比スレハ凡ソ十余倍ヲ増加セリ、加ルニ其十月十四日以来金銀貨売買ノ業務ヲ開始シ、僅々三ケ月ニシテ其取引高弐千百拾四万余円ノ多キニ上レリ、故ニ此半季間ノ諸種売買手数料収入高ハ壱万九千五百七拾二円ニシテ之ヲ前半季ニ比スレバ凡ソ二千五百円ヲ減シタリト雖トモ、尚前季ト同額七円五拾銭
 - 第13巻 p.337 -ページ画像 
ノ配当ヲ為スヲ得タリ
此半季間ニ在リテ亦種々ノ改正ヲ定款及ヒ申合規則ニ加ヘタリ、金禄売買ノ呼価百円ヲ収メテ十円トナセリ、是レ其売買並ニ計算上ノ便益ヲ謀ルニ由ル、又諸株式ノ証拠金ヲ平均売買実価ノ十分一ト改ム、是レ諸株式ノ証拠金ニシテ其徴収ノ制ヲ異ニスルトキハ計算上錯雑ノ虞アランコトヲ恐レテナリ、金銀貨ノ売買ヲ始ムルニ及テ定款及ヒ申合規則ヲ改正シ、其取引ニ必須ノ諸件ヲ追加シ、亜テ大蔵卿ノ命ヲ奉シテ受渡ノ定刻ヲ厳ニシ、又銀行課長ノ命ニヨリ仲買人ノ取締ヲ厳重ニシタルコトアリキ
十二年九月ニ於テ金銀貨ノ売買ヲ始メシヨリ、市場漸ク活溌ノ状ヲ現シ、十三年上半季ニ至テハ商況累リニ上進シ、公債株式ノ出来高公債ハ二千二百十五万三千四百円、株式ハ三千五百〇二株ハ前季ニ比シテ公債ニ二百余万円、株式ニ五千余株ヲ減シタレトモ、其減シタル者ハ金銀貨ノ出来高ヲ以テ之ヲ補充シテ尚余リアルノ有様ナリケレバ、市場ハ常ニ昌盛繁閙ナリキ、故ニ此年間ノ売買手数料ハ二万五千〇五十七円ヲ収入シ、之ヲ前季ニ比スレハ凡ソ五千余円ヲ増加シ、其配当金モ九円ニ上レリ、蓋シ此半季間ニ於テ公債株式ノ出来高減少シタル者ハ市場ノ取引専ラ金銀貨ノ一方ニ偏倚シタルニ因ル、而シテ銀貨ノ取引ハ殊ニ活溌ヲ極メ僅々三月余ニシテ凡ソ三千余万円ノ取引高ニ及ヘリ、我ガ大蔵卿ハ其売買ヲ以テ投機空相場ニ類スル者アリト為シ、一時之ガ取引ヲ停止セラル四月十四日亜テ条例ノ改正アリ、当所ハ之ヲ奉シテ定款及ヒ申合規則ヲ改メ、仲買人ヲ甲部公債株式仲買人乙部金銀貨仲買人ノ二類ニ分チ、而シテ金銀貨仲買人ハ一層其取締ヲ厳重ニシ、且ツ其身元金ヲ千二百円ニ増加シ、五月四日解停ノ命アルヲ待テ再ヒ其売買ヲ始メタルニ、商況旧ニ依リ益々昌盛ヲ極メタリ、斯ノ如ク銀貨ノ売買活溌ナリシヲ以テ、公債株式ノ取引ハ稍々其数ヲ減少セリ
五月十九日更ニ金銀貨ノ定期売買ヲ禁止セラレテヨリ其業全ク廃休ノ姿トナリ、其仲買人ハ或ハ業ヲ株式仲買ニ転シ或ハ全ク其業ヲ擲テ退社スルニ至レリ、十五年七八月ノ交ニ至リ、再ヒ銀貨ノ現場取引ヲ始ムルモ遂ニ成立セス、市場復タ金銀貨売買ノ声ヲ聴クナシ、蓋シ当市場ノ取引ハ公債株式金銀貨ノ何タルヲ問ハス、期ヲ定メ約ヲ固クシ以テ現品ヲ授受スルヲ常トス、夫ノ現場取引預ケ合ト称スルノ類ハ絶ヱテ無キ所ト為ス、故ニ定期売買ニシテ一タヒ禁止セラルヽアラバ其営業ノ萎靡スルハ必然ノ数ノミ、金銀貨売買ノ衰込ニ帰スル、全ク之ニ因ル、金銀貨ノ売買全ク止ミ市場一旦衰頽ノ状況ヲ現シタレトモ、十三年下半季八九月ヨリ更ニ又公債株式ノ売買取引ヲ熾ニシ、公債ハ一億六千四百五十二万九千五百円、株式ハ四千六百六十三株、之ヲ前季ニ比スレバ公債ニ一億三千余万円、株式ニ一千百余株ヲ増シ、手数料収入高ハ五万八千九百五十円ニ上リ、配当金ハ二十二円五十銭ニ進ミタリ、蓋シ俄ニ斯ノ如キ盛況ヲ現ハシタルハ他故アルニ非ス、投機者流専ラ意ヲ銀米ノ相場ニ注クモノ、制令禁遏ノ為メニ其熱心ヲ我カ公債株式ノ売買ニ注キタルニ由ルノミ
十四年上半季ニ至テハ商況又更ニ進動シ、公債ハ一億七千六百五十七万二千六百円、株式ハ六千七百〇二株、売買手数料ハ七万三千〇九十
 - 第13巻 p.338 -ページ画像 
九円、配当金ハ又増シ二十五円ト為ルニ至レリ
是ノ一時ノ盛況ハ必シモ永久持続ス可キモノニ非ラサルヲ察シ、只管基礎ヲ鞏固ニシテ他日ノ不虞ニ備ヘンコトヲ謀リ、仲買人ノ証拠金ハ大抵之ヲ確実ナル銀行ニ預ケテ相当ノ利子ヲ収メ、積立金ヲ増シ、贅費ヲ減シ以テ窃カニ警戒スル所アリ、又仲買人ニ対シテハ申合規則ヲ改正シテ其取締ヲ厳ニシ、又株式ノ定期ヲ三ケ月ニ延長シ且少シク手数料ヲ増加シテ営業ノ方針ヲ戒メタリキ
十四年下半季ニ至リ商況果シテ反対ノ状ヲ現シ、是ヨリ漸ク凌夷ノ一方ニ傾ケリ、同半季間ノ惣出来高公債ハ四千五百六十八万円、株式ハ三千三百七十四株、手数料収入額ハ一万九千四百廿五円、配当金ハ十円ニ減ジ、十五年ニ至テハ上半季ノ出来高公債ハ四千八百十七万円、株式ハ千七百三十二株、手数料収入額ハ二万千百六十五円、配当金ハ十円、同下半季ノ出来高公債ハ二千三百〇八万円、株式ハ二千百四十一株、手数料収入額ハ一万〇七百七十五円、配当金ハ七円ニ下レリ、右三季間ニ於テ其商況小異ナキニ非ズト雖モ、之ヲ十四年上半季前ニ比スレバ常ニ沈淪平和ニシテ変状ヲ見ス、時ニ定款及ヒ申合規則ニ脩正ヲ加ヘテ役員ノ責任及権限ヲ明カニシ、仲買人ノ取締方法ヲ厳ニシ以テ内ニ自ラ警戒ヲ加ヘタルノミ
十六年上半季ニ於テハ出来高少ク増加シテ、公債ハ二千九百九十八万円、株式ハ三千四百五十一株トナリ、手数料収入額ハ一万六千九百三十七円ニ増シ、配当金ハ九円ニ上リ、商勢少ク回復シタルカ如シト雖モ、復タ往日ノ盛況ニ似サルナリ、十六年四月以降、仲買人納税規則(十五年十二月六十五号布告)ヲ実施セラレテヨリ、大坂横浜取引所及各地米商会所ニアリテハ頓ニ其商況ヲ変シタルニ拘ハラス、当所独リ幸ニ甚シキ衰頽ヲ来サヾルハ其税額銀米ニ比シテ頗ル軽ク、且既ニ銀貨売買ノ利益ニ依頼セサルノ習慣ヲ養成シタルアルノ功ニ由ルヘシ然ルヘシ《(四字衍カ)》然レトモ此ノ六十五号布告納税規則ニ就テハ当所ノ仲買人尚且之ヲ喋々セシ者ナキニ非ス、当任者時々其撫諭ニ苦メリ、玆ニ左表ヲ掲ケテ本記ノ局ヲ結ブ可シ

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 年次        項目           諸公債出来高  諸株式出来高    金銀貨出来高      手数料収入高  毎株割賦金              百円位       株       百円位         円 銭      円 十一年下半季  二六、五六五・四     二五三        ……   一〇、九八〇・五七   四・五〇 十二年上半期  五七、四九八・九   二、六九一        ……   二二、一一四・五二   七・五〇 同年下半季   三四、二五一・五   九、一七九  二一、一四七・七   一九、五七二・五一   七・五〇 十三年上半季  三二、一五三・四   三、五〇二  三四、九一四・四   二五、〇五七・六一   九・五〇 同年下半季  一六四、五二九・五   四、六六三             五八、九五〇・二五  二二・五〇 十四年上半季 一七六、五七二・六   六、七〇二             七三、〇九九・二四  二五・〇〇 同年下半季   四五、六八〇・七   三、三七四             一九、四二五・七一  一〇・〇〇 十五年上半季  四八、一七六・八   一、七三二             二一、一六五・五三  一〇・〇〇 同年下半季   二三、〇八八・二   二、一四一      九五・〇   一〇、七七九・六九   七・〇〇 十六年上半季  二九、九八一・四   三、四五一             一六、九三七・九一   九・〇〇 全計     六三八、四九八・四  三七、六八八  五六、一五七・一  二七八、〇八三・五四  一一・二五 



是ニ由テ之ヲ観ルニ、創業ヨリ十四年下半季ニ至ル三年間ハ商況漸次ニ上進シ、十四年下半季ニ於テ頓ニ衰退シ、爾後第一期営業年末ニ至
 - 第13巻 p.339 -ページ画像 
ル二年間ハ其景況甚シキ変動ナキモノヽ如シ、之ヲ約言スレバ盛時三年衰時二年ト云フモ可ナランカ
凡ソ商業ニ盛衰アル猶歳ニ寒暑アルカ如シ、前三年盛栄ニシテ後二年衰退シタルモ亦是レ自然ノ数ノミ、況ンヤ其盛衰ハ世間一般ノ景況ト伴随シタル者ノ如クニシテ、特ニ当所ノ営業ニノミ盛衰アリシニ非サルヲヤ、但其盛衰ノ跡ニ就キ之ヲ観察スルニ、他ノ景況ニ関ハラス時ニ或ハ活劇ヲ極メタル者アリ、是レ深ク推究セサル可カラサル所ナリ将サニ商況ヲ叙スルニ方リ之ヲ悉サントス


明治憲政経済史論(国家学会編) 第三四七―三四八頁〔大正八年四月〕(DK130029k-0042)
第13巻 p.339 ページ画像

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中外物価新報 第一五八号〔明治一二年一月四日〕 【吾輩ハ例に依り昨明治…】(DK130029k-0043)
第13巻 p.339 ページ画像

中外物価新報  第一五八号〔明治一二年一月四日〕
吾輩ハ例に依り昨明治十一年中の商況を略陳して読者諸君に報ぜんとし、先づ政府の公布に於て直接に商業上に大関係を有せしものを枚挙すれば則ち左の如し。
○中略
五月四日第八号公布を以て株式取引条例を更定せられ、我が東京株式取引所ハ同十五日大蔵省の允准を得て兜町に設立し六月一日開業して新旧秩禄公債証書の限月並現場売買を始め、九月十一日より金禄公債証書の売買を始め、同廿日より第一銀行兜町蠣殻町両米商会所株式取引所の株式売買を始め、十一月一日より起業公債証書の売買を始めたり
○下略


調査彙報 第六一号・第一〇〇―一〇一頁〔昭和七年一二月二〇日〕 東京株式取引所に関する文献(二)(加藤福太郎)(DK130029k-0044)
第13巻 p.339-340 ページ画像

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大隈侯八十五年史(同史編纂会編) 第一巻・第七四八―七四九頁 〔大正一五年一二月〕(DK130029k-0045)
第13巻 p.340 ページ画像

大隈侯八十五年史(同史編纂会編)  第一巻・第七四八―七四九頁〔大正一五年一二月〕
 ○第四編第三章 財政上の新施設
    (五)備荒儲蓄法の実現
○上略
また渋沢が東京株式取引所を設立するに当り、当時議論が二派に分れて、一はそれを有害とし、一は「経済社会になくてはならぬ機関である」と主張して相争ふた際、時の大蔵卿であつた君○大隈は、賛否両派の意見を公平に聴取し、慎重にその利害得失を考へた末、その設立を必要とした。それで君は渋沢に力を仮して、明治十一年、その創立を許可したのである。



〔参考〕竜門雑誌 第五四六号・第五三―六四頁〔昭和九年三月二五日〕 兜町縁起考(一)(DK130029k-0046)
第13巻 p.340-348 ページ画像

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〔参考〕中外物価新報 第一七九四号〔明治二一年三月二七日〕 ○故小松彰氏の小履歴(DK130029k-0047)
第13巻 p.348 ページ画像

中外物価新報  第一七九四号〔明治二一年三月二七日〕
○故小松彰氏の小履歴 兼て報ぜし如く小松彰氏ハ医薬其効なく一昨廿五日午前三時四十七年を一期として溘然死去せられたり、葬儀ハ明廿八日午後一時飯田町三丁目の自邸を出棺、駒込吉祥寺へ葬る由、依て東京米商会所及東京株式取引所並両所仲買人よりハ花を贈り、又同日ハ本場に引続き二番の立会を繰上、役員及び仲買人一同会葬に赴く筈なり、又同氏が履歴の大要を聞くに、氏ハ旧信州松本の藩士にして曾て佐久間象山翁に随いて京師に上り、其後明治四年丹後の旧久美浜県の権知事に任ぜられて生野県知事を兼ね、翌明治五年豊岡県の権令に転じ、程なく同県令に昇進し、其後文部の大丞に転任せられしが、明治九年冠を掛て民間に下り、翌十年の暮より東京株式取引所創立の事に尽力し、同十一年六月同所を開業するに及て其頭取となり、同十二年一月株主総会に於て渋沢栄一氏が頭取に選ばるゝに及びて同肝煎を勤められしが、同十三年七月事故ありて之を辞し、同十四年七月再び株式取引所に入て其頭取となり、同十九年十月の臨時株主総会の際其職を罷められ、更に昨廿年十一月東京米商会所の頭取に推選せられしも何分病痾の為めに碌々出勤する能ハず、此程迄熱海に於て加養されしも、病の次第に重り行く故自邸に帰りて尚ほ名医の治術を乞ハれたれど、命数にや終に米商会所頭取を以て歿せられたるなりと聞けり


〔参考〕商海英傑伝 (瀬川光行著) 第一ノ六三―六四頁〔明治二六年四月〕(DK130029k-0048)
第13巻 p.348-349 ページ画像

商海英傑伝(瀬川光行著)  第一ノ六三―六四頁〔明治二六年四月〕
    今村清之助君伝
○上略 君思へらく、凡そ人世の失敗は失敗の日に失敗するにあらす、必す其最も得意の時に於て失敗を醸すこと彼の平野屋市五郎其他諸家の滅亡の事跡に徴して昭々たり、殊に洋銀相場の営業は一時の変動にして一家を傾くるもの屡々なり、吾今にして他に確実なる一事業を計画せすんは数年間辛苦経営したる家産も一朝水泡と化するやも図るべからすと、此に於て他に一事業を起さんことを決心し、明治十年東京堺町へ太物綿類及両替の商店を開き、横浜の商店と共に営業を励み日々京浜間を往復せり、当時秩禄公債証書の売買盛んに行はれしかは後来其取引の益々繁昌に赴かんことを予考し、土屋清太郎・藤田熊太郎・
 - 第13巻 p.349 -ページ画像 
岡本善七・増井久右衛門其他の諸氏と謀り同処に於て各種公債証書の定期売買を開始したり、是実に我国に於ける株式取引所の濫觴なり
翌十一年に到り商業社会に於て弥々株式取引の必要起り、渋沢栄一・福地源一郎等の諸氏株式取引所の創立を企てしか、一方に於て已に以前より実際其営業に従事しつゝある両替店即ち君の仲間にても其創立を計画せり、君其両々対峙するの不得策なるを悟り岡本善七・土屋清太郎の諸氏と合併のことに尽力し、数日苦心奔走の結果漸く合併の協議整ひ、君亦た発起人となり株式取引所の創業を完成し、両替商等打寄りて取組ある定期の売買を該取引所に移し、其両替商等と共に株式取引所の業務に従事することを率先誘導し、君も重役を辞して仲買人となり、専ら事業の発達を幇助したり、同年商店を南茅場町に移し明治十六年迄一も営業上に失敗なきを以て資産漸く豊かに、随て彼の貯蓄の金高も日々の積立と殖利の方法に拠り莫大の増加を見るに至れり


〔参考〕中外商業新報 第三三二三号〔明治二六年四月六日〕 東京商業会議所新任議員之略伝(第七) ○今村清之助君(DK130029k-0049)
第13巻 p.349-350 ページ画像

中外商業新報  第三三二三号〔明治二六年四月六日〕
  東京商業会議所新任議員之略伝(第七)
    ○今村清之助君
○上略
嘗て横浜に金穀相場会社の起るや君率先して之が仲買となり、又撰ばれて委員と為る、次て弗屋を開業し洋銀相場を以て営業とせり、当時曩きに閉店せし彼の平野屋の商店及地所は偶然君の手に入しと云ふ、又一奇と称すべし、然れども君の業とする洋銀相場は事已に投機に属すれば一勝一敗は其常にして時に意外の失敗を招きし事ありしも、彼の恩人たる貯蓄箱は常に之が救助の任に当り、君をして此大難を免れしめたり、故に信用日に益々厚く営業月に愈々繁盛を極めたり、依て君以為らく、凡そ人世の失敗は失敗の日に失敗するにあらず、必ずや其最も得意の時に於て失敗を醸すなり、此理彼の平野屋市五郎氏其他諸家滅亡の事蹟に徴して昭々たり、殊に我営業の如きは一時の変動遂に一家を傾くること甚だ多し、余今にして他に確実なる営業を作り以て不時の変に応ぜずんば、数年間辛苦経営せる家産も亦一朝水泡と化するやも知るべからずと、此に於てか他に一事業を起さんことを決心し、明治十年を以て東京日本橋区堺町に太物綿類及び両替の商店を開くに至れり、是より君は京浜の間に往来し益々営業に勉励せり、当時東京に於て秩禄公債証書の売買盛んなり、君其取引の後来益々繁昌すべきを予想し、土屋清太郎・藤田熊太郎・岡本善七の諸氏と謀り君の両替店に於て各種公債証書の定期売買を開始せり、是実に我国に於て後日株式取引所の創立ある起元なり、同十一年我商業社会の現況は益益株式取引の必要を生ぜしを以て、渋沢栄一・福地源一郎等の諸氏は株式取引所の創設を企てたり、然るに他の一方には従来已に営業に従事せる両替商即ち君の一派も亦た其創設を計画せり、君此に於て其両両相対峙するの不得策なるを悟り、岡本善七・土屋清太郎の諸氏と謀り両者合併の事を尽力し、数日苦心奔走の後ち終に其結果を為すに至れり、依て君亦其の発起人となり株式取引所の創業を完成し、已に組織せる両替商諸氏の定期売買を之に移したり、是より君は其の両替商
 - 第13巻 p.350 -ページ画像 
諸氏と共に力を協せ率先誘導し、且其重役たることを辞し自ら奮て之が仲買人と為り、又其委員に撰ばれ専ら事業の発達を幇助せり
○下略


〔参考〕今村清之助君事歴 (足立栗園著) 第九三―九六頁〔明治三九年九月〕(DK130029k-0050)
第13巻 p.350-351 ページ画像

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〔参考〕東京日日新聞 第五〇二三号〔明治二一年八月一日〕 ○東京取引所の顛末(DK130029k-0051)
第13巻 p.351 ページ画像

東京日日新聞  第五〇二三号〔明治二一年八月一日〕
    ○東京取引所の顛末
○上略
 斯く米相場の繁昌を極めたる時に当り、公債の相場は隠然として両替屋の間に行はれ明治八九年の頃より人形町辺にて両替商が集会して現に取引をぞ為したりける、而して政府にても是を公然たる場所に於て取引せしむべしとありて乃ち明治十一年に株式取引所条例を発したれば、東京にては渋沢益田大倉の諸氏その発起人となり創立を謀り、小松彰・渋沢喜作・福地源一郎の諸氏その役員となりて現存の株式を兜町には取設たり、然れども当初は売買の出来高も少なく活溌なる相場は専ら米商に在て、株式は先づ沈着したる姿にて数年を送りたりき
○下略


〔参考〕東京名所鑑 (相沢求著[相沢朮著]) 巻之上・第六四頁〔明治二五年九月〕(DK130029k-0052)
第13巻 p.351 ページ画像

東京名所鑑(相沢求[相沢朮]著)  巻之上・第六四頁〔明治二五年九月〕
○株引取引所《かぶひきとりひきしよ》《(マヽ)》 明治八九年の頃人形町辺にて両替商等集会して公債証書の取引を為たりしか、十一年株式取引条例を発布せられ、大倉・渋沢等発起人となりて兜町米商会社跡へ取引所を設立す、毎朝相場を立、各株券の売買の高下を定る所なり、谷元道之氏頭取たり
  一ひらの紙を数多の黄金にも
    かへて宝とたふとミにけり   安房 小原弘道


〔参考〕明治商工史 (渋沢栄一撰) 第一五五―一五六頁〔明治四四年三月〕(DK130029k-0053)
第13巻 p.351-352 ページ画像

明治商工史 (渋沢栄一撰)  第一五五―一五六頁〔明治四四年三月〕
  第十一章 株式取引所(東京商業会議所頭取東京株式取引所理事長 中野武営)
    三 株式取引所の発達
○上略
 東京株式取引所の業務開始 居ること数月明治十一年五月、政府は改正株式取引条例を公布せらる、之れを旧条例に比するに其の条文簡明にして、且つ稍々実情に適応する所あり、殊に旧条例中の最大欠点
 - 第13巻 p.352 -ページ画像 
ともいふべき売買証拠金の制限の如き、仲買人身元保証金額の如き大に之れを低減し、其他不適当の点は概ね之れを改正増補したり、是れ一には政府自ら時勢の進歩に促されて此の改正を為したるなるべしと雖も、抑々亦渋沢等の諸氏が条例改正の意見を具して、当局者の参考に供したる功に由らずんばあらず、此改正条例の発布と同時に、政府は曩に渋沢氏等が裁可を得んが為めに提出したる定款及申告規則を却下し、更に新条例に拠りて改訂再申すべき旨達せられたるを以て、発起人諸氏は新に定款及申合規則を議定し、設立願書と共に再び之れを進達し、五月十五日を以て愈々設立免許を得、尋で諸般の設備成るを待ちて、同年六月一日より業務を開始し以て今日に至る
 東京株式取引所開業の日より市場に於て売買したるは、僅に新旧及び秩禄の三公債に止れり、株式取引条例に拠れば官准の商工業会社株券も亦之れを売買することを許せしも、当時会社株券の市場売買に上るもの一も之れあらざりき、既にして同年七月に至り同取引所株券の売買を開始し、尋で金禄、起業両公債並に兜町及蠣殻町両米商会所株券をも亦売買するに至れり、然るに是等会社株券の売買取引高は甚だ僅少にして、纔に株式市場繁栄の幾分を副ゆるに過ぎず、而して其の売買取引の盛に行はれたるは公債証券、就中流通最も多額にして需給亦他に超越せる秩禄及び金禄公債の両証券なりとす、今左に明治十一年六月より十二月に至る七ケ月間、各種公債及び諸株式売買総出来高表を掲げて、当時市場の売買状勢の一班《(斑)》を示さん。
    明治十一年自六月至十二月七ケ月間各種公債及諸株式売買高

  種目  売買出来高(公債ハ額面)  種目        売買出来高(公債ハ額面)
                 円                     株
 旧公債証書   四、七一一、九〇〇 第一国立銀行株            一八
 新公債証書   一、七七六、三〇〇 東京株式取引所株          二〇一
 秩禄公債証書 一〇、三一八、四〇〇 兜町米商会所株             六
 金禄公債証書  九、六一三、一〇〇 蠣殻町米商会所株           二八
 起業公債証書    一三八、六〇〇 合計(公債証書株式) 二六、五五八、三〇〇円 二五三株

 之れを近時の売買商況に比するに其の勢全然相反するものあり、亦以て当時世間の需求公債の一方に傾きて、株式の需求極めて鮮かりしことを知るに足る。
○下略


〔参考〕兜街繁昌記 (岡本鷸園栗田藤太郎編) 第九―一一頁〔明治四五年五月〕(DK130029k-0054)
第13巻 p.352-353 ページ画像

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〔参考〕時事新報 〔大正一五年一〇月六日〕 ビジネスセンター(2)兜町盛衰記(二)(DK130029k-0055)
第13巻 p.353-354 ページ画像

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〔参考〕大阪毎日新聞 〔昭和三年一〇月一一日〕 株屋町五十年 儲け頭は三井家 東西市場盛衰記〔二〕(DK130029k-0056)
第13巻 p.354-356 ページ画像

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〔参考〕日本会社企業発生史の研究(菅野和太郎著) 第四一一―四一八頁〔昭和六年七月〕(DK130029k-0057)
第13巻 p.356-358 ページ画像

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