デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

3章 商工業
25節 取引所
6款 東京商品取引所
■綱文

第14巻 p.237-249(DK140022k) ページ画像

明治26年11月12日(1893年)

是ヨリ先、東京商品取引所設立ニ際シ、浜口吉右衛門等ト田中平八等トノ両派競願シテ譲ラズ。農商務省商工局長若宮正音、之ガ協調ヲ計リ、栄一及ビ東京府知事三浦安ニ仲裁ヲ依頼セントシ、是日栄一ヲ兜町ニ訪フ。栄一両派ヨリ無条件一任ヲ受クルニアラズンバ応ゼザル旨ヲ答フ。然レドモ両派無条件一任ヲ肯ンゼザルヲ以テ商工局長ノ斡旋モ亦空シカラントス。


■資料

中外商業新報 第三四一七号 〔明治二六年七月二五日〕 ○東京商品取引所設立の請願(DK140022k-0001)
第14巻 p.237 ページ画像

中外商業新報 第三四一七号 〔明治二六年七月二五日〕
○東京商品取引所設立の請願 田中平八・池上仲三郎・矢島平造の三氏は同志五十三名の総代として、東京商品取引所設立の請願書を昨日農商務大臣に提出したり、其取引すべき商品は石油・油・塩外二三品なり


中外商業新報 第三四二二号〔明治二六年七月三〇日〕 ○物品取引所発起人会(DK140022k-0002)
第14巻 p.237-238 ページ画像

中外商業新報 第三四二二号〔明治二六年七月三〇日〕
○物品取引所発起人会 頃日中洲枕流館に於て実業派の組織に係る物品取引所発起人会を開きし由は已に報道せしが、尚ほ昨日同所に於て協議したる議案は左の如し
    取引所発起人会決議要項
 一資本金額を二十万円とす
 一倉庫設置資本金を五万円とす
 一株式額面は一株金五十円とす
 一売買証拠金は三分より一割迄とす
 一取引手数料は千分の二より八迄とす
 一仲買人身元保証金は五百円とす
  但し二種已上を兼業するものは五百円を加ふ
 一仲買人員は一百人とす
 一取引所設置の場所は日本橋区箱崎町三丁目一番地とす
 一取引所敷地家屋及什器購入費を金三万円とす
  但金二万五千円  地所家屋購入費
   金五千円    什器購入費
 一創立費を金四千円とす
 一創立事務所を設置する事
  場所は便宜の地を選ぶこと
  書記  一人
  小使  一人
  筆墨紙薪炭其他雑費は適宜取計ふこと
 - 第14巻 p.238 -ページ画像 
 一重役被選挙権は三十株以上とす
 一重役人員は左の如し
  理事長 一名
  理事  三名
  監査役 二名


中外商業新報 第三五〇〇号〔明治二六年一一月一日〕 ○東京商品取引所設立願書の却下(DK140022k-0003)
第14巻 p.238 ページ画像

中外商業新報 第三五〇〇号〔明治二六年一一月一日〕
○東京商品取引所設立願書の却下 東京商品取引所設立に付ては紳士派と商士派の二派に分れ出願中なりしが、右は同地区内に於る同種の商品に付き出願をなしたる旨を内諭せられ、昨日東京府庁は両者の設立願書を却下せしとなり


中外商業新報 第三五〇〇号〔明治二六年一一月一日〕 商品取引所設立委員の運動(DK140022k-0004)
第14巻 p.238 ページ画像

中外商業新報 第三五〇〇号〔明治二六年一一月一日〕
○商品取引所設立委員の運動 東京商品取引所設立発起人として所謂実業・商人両派より農商務省へ差出したる設立認可申請書は昨日に至りて共に却下せられたるを以て、実業派の設立委員及専任委員は同日午後日本橋倶楽部に集会し協議の上直に申請書を認めて再び農商務省に差出したり、農商務省が双方の申請書を却下したるは如何なる深意の存するや勿論識るべからすと雖も、其理由とする処は取引所法の規定に適合せさる廉ありと云ふにあり、若し夫れ単に取引所法に適合せざるの故を以て却下せらるゝものなりとせは是非もなき次第なれども他に深意ありとせば、尚傔焉たらざるものありとて大に運動すべき決心なりとかや


中外商業新報 第三五〇一号 〔明治二六年一一月二日〕 ○取引所委員帝国ホテルの夜会(DK140022k-0005)
第14巻 p.238 ページ画像

中外商業新報 第三五〇一号 〔明治二六年一一月二日〕
○取引所委員帝国ホテルの夜会 一昨日午後五時より新設取引所各委員の会主にて同ホテルに夜会の催あり、来賓は農商務大臣・次官・若宮局長・島田参事官・早川秘書官等其他東京米穀・株式両取引所の理事長・理事等にて、余興には如燕の講談、津賀太夫の義太夫、柳一の手品等あり、頗る盛会にて散会せしは午後十時過なりしといふ


中外商業新報 第三五〇一号 〔明治二六年一一月二日〕 商品取引所設立委員運動上の決議(DK140022k-0006)
第14巻 p.238 ページ画像

中外商業新報 第三五〇一号 〔明治二六年一一月二日〕
○商品取引所設立委員運動上の決議 前号に記す如く実業派商品取引所設置委員は一昨日集会協議の末申請書の却下に対して大に運動することに決したるか、尚ほ其運動方法に就き同日決議了たる事項は左の如しとなり
 一今回願書を却下せられたるに付ては直に再願をなし吾々実業家の団体は飽迄も其結合を堅くし、九品の当業者は倶に共に相提携して其素志の貫通を謀るべし
 一本件に関して将来発起人総会の必要を認めたるときは何時にても専任委員は之を通知し、発起人は其通知に応して集会すへし
 一農商務大臣に面謁し願書却下の理由を質議したる上将来の方針を定め、其運動は総て各専任委員に依托すべし
 一前数項の決議は之を各委員に《(マヽ)》各々其組合の発起人に報告すべし
 - 第14巻 p.239 -ページ画像 

中外商業新報 第三五〇二号 〔明治二六年一一月三日〕 ○商品取引所委員の具状に対する摸様(DK140022k-0007)
第14巻 p.239 ページ画像

中外商業新報 第三五〇二号 〔明治二六年一一月三日〕
○商品取引所委員の具状に対する摸様 東京商品取引所設立専任委員渋沢喜作・浜口吉右衛門・伊井吉之助・渡辺治右衛門・柿沼谷蔵・田村利七・広瀬新平・児島喜三郎・小池左一郎の諸氏は前号に記載したる決議に随ひ商品取引所設立願書却下に対する掛官の意見を質問し、併せて事情を具陳せんため一昨一日午後後藤農商務大臣を農商務省に訪問したるも、折柄大臣の出省なきを以て転じて東京府庁に出頭し、三浦知事に面会して事情を具陳したるに、知事は一伍一什聞終り、扨て各々の申さるゝ処一応尤もにして前日呈出したる申請書も主務省へ進達すべき筈なれども、却下の当日直に進達するも穏かならざるを以て府庁は篤と査考したる上兎も角もする積りなり、さては申請書は尚本庁に留め置く様係官にも命じ置きたる旨を述べ委員も一先引取りたるが、昨二日午後諸氏は又々農商務省に出頭し大臣に面会を求めたれ共能はず、依て若宮商工局長に面して具さに商品取引所の実業者より組織せざるべからざるの事情を縷陳したる所、同局長より諸氏の言ふ所尤もなれば猶ほ熟考すべしとの返答あり、是にて諸氏は引取りたるが、夫等の件に付来六日午後一時より又々日本橋倶楽部にて委員会を聞くと云ふ


中外商業新報 第三五〇三号 〔明治二六年一一月五日〕 ○商品取引所設立に関する府庁の調査(DK140022k-0008)
第14巻 p.239 ページ画像

中外商業新報 第三五〇三号 〔明治二六年一一月五日〕
○商品取引所設立に関する府庁の調査 東京商品取引所設立願書は此程双方共却下せられしが、同日直に商人派は九品を以て、又紳士派は五品を以て再ひ出願せり、而して商人派発起委員は府知事に面会し両派の実情を親しく陳する処ありたるを以て、知事は双方発起人の身元等を調査し之に意見を附て農商務省に進達する筈なりと云ふ


中外商業新報 第三五〇四号 〔明治二六年一一月七日〕 ○東京商品取引所創立委員の決議(DK140022k-0009)
第14巻 p.239 ページ画像

中外商業新報 第三五〇四号 〔明治二六年一一月七日〕
○東京商品取引所創立委員の決議 曾ても報せし如く東京商品取引所創立委員(所謂商人派)は昨六日日本橋倶楽部にて委員総て廿七名出席の上去二日同専任委員渋沢喜作・浜口吉右衛門等の諸氏が農商務省にて若宮商工局長に面談したる折、同局長は他の一派との合同出来得べきものならば合同の上願書を差出すべし、若し又合同出来ざれば同省に於て調査の上相当の処分をなすべしと答へたる事に付会議したる処、全委員一致にて到底他の一派と合同為し難き旨同局長に回答する事に決議したるが、専任委員の諸氏は一同打揃ふて本日又々農商務省に出頭し右決議の趣を答申し同省の処分に委すると云ふ


中外商業新報 第三五〇五号 〔明治二六年一一月八日〕 ○東京商品取引所委員と若宮局長(DK140022k-0010)
第14巻 p.239-240 ページ画像

中外商業新報 第三五〇五号 〔明治二六年一一月八日〕
○東京商品取引所委員と若宮局長 実業派東京商品取引所設立委員は渋沢喜作氏を除く外一同昨日午後一時農商務省に出頭して、若宮局長に面会し、一昨日の決議に基き到底合同して設立を出願する能はざる旨を答申せして《(マヽ)》局長は、この事たる余一人にて執れへも許否の判断を下し難きを以て、東京府知事と東京商業会議所会頭及余の三名に一任
 - 第14巻 p.240 -ページ画像 
されたし、而して余は知事及ひ会頭の二人が一致して賛成する方に設立を許可すへしと答へしかは、委員も種々問答の末、然らは局長の意見に任すべし、依て知事と会頭と熟議ありたき旨を復申して引取りしと云ふ


中外商業新報 第三五〇七号 〔明治二六年一一月一〇日〕 ○東京商品取引所発起委員の決議(DK140022k-0011)
第14巻 p.240 ページ画像

中外商業新報 第三五〇七号 〔明治二六年一一月一〇日〕
○東京商品取引所発起委員の決議 所謂実業派の計画に係る東京商品取引所発起委員等は、頃日農商務省が単に取引所法第二条(同種の物件を売買する取引所は一地区一箇所に限り設立することを得)に依り其設立認可出願書は所謂紳商派の計画に係る東京商品取引所設立認可出願書と共に却下された事に不満を抱き、爾後後藤大臣に或は若宮商工局長に面して其却下の事由を質し頻りに運動する所あり、遂に三浦東京府知事・渋沢東京商業会議所会頭等の意見を聞き然る後農商務省は之が許否を決することとなれり、右に就き其発起委員等は某所に会合して左の決意をなしたり、其要に曰く
 一両派発起委員の身元の取調を請ひ其適否の調査済みたる上は一刀両断の所置を仰ぐべき事
 一仮令如何なる仲裁人現はれて合同を勧むるも断して之を謝絶すべき事
 一八品中一品なりとも之を他に譲るが如きも断じて之を謝絶すべき事
等なり、固より其仔細は之を知らすと雖も其決意の条条は如何なる事あるも変更すまじとの事なり


中外商業新報 第三五〇七号 〔明治二六年一一月一〇日〕 東京商品取引所両派の仲裁如何(DK140022k-0012)
第14巻 p.240 ページ画像

中外商業新報 第三五〇七号 〔明治二六年一一月一〇日〕
○東京商品取引所両派の仲裁如何 若宮商工局長は東京商品取引所商人派に対し、東京府知事及商業会議所会頭の意見を聞きたる上何分の処置をなすべき旨懇諭せられたるが、若し然ることありとせば渋沢氏は一個の資格を以て答ふべきや、或は会頭の資格を以てするや、若し会頭の資格を以てするとせは同会議所の意見に拠らさるべからず、而して今商業会議所一部の人の意見を聞くに、会議所が斯る諮問に答ふる如きは到底出来ざることと思はる、故に渋沢氏一己人の意見として開陳するの外なかるべしといへり、孰にしても若宮局長は三浦・渋沢両氏の仲裁を以て穏便に両派合同の実を挙けしめんと欲するに外ならざるべきか


中外商業新報 第三五〇九号 〔明治二六年一一月一二日〕 ○実業派取引所委員の決意動かすべからず(DK140022k-0013)
第14巻 p.240 ページ画像

中外商業新報 第三五〇九号 〔明治二六年一一月一二日〕
○実業派取引所委員の決意動かすべからず 一昨日若宮局長は実業派の計画に係る商品取引所委員を農商務省に召喚し、例の仲裁に就て縷縷諭示する処ありし語中渋沢栄一氏に仲裁を托するも同氏は一己の資格にして商業会議所会頭の資格に非らずとありしに《(衍カ)》が、同取引所委員等は稍や前説に異なりし点あるを疑ひ、一己の渋沢氏に其仲裁を托するも其詮なかるべしとて断然之を謝絶したれども、同局長は渋沢氏にも協議の上何分の詮議に及ぶへしとのことにて引取りしとなり
 - 第14巻 p.241 -ページ画像 

中外商業新報 第三五〇九号 〔明治二六年一一月一二日〕 ○商品取引所三品派の総会(DK140022k-0014)
第14巻 p.241 ページ画像

中外商業新報 第三五〇九号 〔明治二六年一一月一二日)
○商品取引所三品派の総会 東京商品取引所三品派の発起人は昨日中洲枕流館に総会を開き、実業派発起人と仲裁の事に関し、若宮商工局長より、同局長及三浦府知事・渋沢栄一の三氏に一任あり度且つ委任承諾の受書を差出されたしとの談示に付協議ありし由


中外商業新報 第三五一〇号 (明治二六年一一月一四日) ○若宮商工局長又々実業派委員を招く(DK140022k-0015)
第14巻 p.241 ページ画像

中外商業新報 第三五一〇号 〔明治二六年一一月一四日)
○若宮商工局長又々実業派委員を招く 若宮商工局長は昨十三日午前十一時頃東京商品取引所実業派委員に向ひ午後農商務省へ出頭ありたき旨通牒したるを以て、専任委員土屋六三・方波見平兵衛・小池佐一郎・浜口吉右衛門・柿沼谷蔵・広瀬新平・児島喜三郎・神原倉次郎諸氏は午後打揃ふて出頭し同局長に面会したり、同局長は諸氏に向ひ、商品取引所許可の儀に就て渋沢栄一・三浦安両氏に向て仲裁を求められては如何との意を述べたるに、諸氏は之に答へて曰く、元来吾々発起人が認可を出願したるは農商務省へ出願したる迄にして決して省外に関係を有せず、故に農商務省が省外の意見を参酌して許否を決せらるゝは農商務省の随意に属すべしと雖も、吾々発起人が省外に向て仲裁を求むるは吾々の素志にあらざれば徹頭徹尾農商務省の許可を仰ぐの外なきなり、左りながら他発起委員の意見をも一応確めんため委員総会を開き追て何分の回答をなすへき旨を述べて引取りたる由
○三品実業家の同盟 実業派の東京商品取引所にて、売買せんとする綿・綿糸・塩の各問屋連中は若しも此度出願中の商品取引所を排斥し他の出願に対して設立の許可を与ふるが如き事あらば吾々同業者は相誓て其取引所に就き商品の売買取引を為さざるべし、若し同業者中一人たりとも此盟約に違反する者あらば断然仲間取引を一切拒絶すべしとの同盟を結びたりと云ふ
○東京商品取引所実業派発起委員総会 東京商品取引所実業派発起委員は別項の如く若宮商工局長より懇諭されたる事に就き意見を確めんため、明後十六日午後銀行集会所に於て発起委員総会を開く由


中外商業新報 第三五一〇号 〔明治二六年一一月一四日〕 ○仲裁内談に関する渋沢氏の返答(DK140022k-0016)
第14巻 p.241-242 ページ画像

中外商業新報 第三五一〇号 〔明治二六年一一月一四日〕
    ○仲裁内談に関する渋沢氏の返答
東京商品取引所設置に関する両派の競争に就ては主務省に於ても大に之を憂へ、何とかして折合はしめ円滑に其成立を謀んとて過般来交々双方の委員を集めて協議に尽力するも、何分実業派は其名の如く実際老実なる多数の実業家を以て団結したるものなれば、其意気柔なるが如くにして決して柔ならず益々堅剛にして根強き所あるより、当局者も止むことを得ず東京商業会議所会頭渋沢栄一・東京府知事三浦安の両氏に調停仲裁の事を依頼せんとて若宮商工局長には数ケ条の仲裁案を草し之を携て一昨十二日渋沢氏を兜町の自邸に訪ひ東京市の為めに此労を執られんことを懇談したり、然るに渋沢氏は之に答へて云へるよう「元来東京商品取引所設置に付き斯の如く競争軋轢し其儘中廃するは当業者の不幸と云はざるべからず、故に苟も円滑に取纏るの途あ
 - 第14巻 p.242 -ページ画像 
らば之を調和するは独り当業者の利便なるのみならず又東京市の面目なるべし、而して之を調停するには其中間を働き双方を納得せしむる人物を要すべし、今予等を以て其中間の機械となし働かしめんとするの意なれば予亦敢て之を辞せざるべし、然れども今此仲裁を唯一農商務省より依頼すべしとの事なれば断じて其需めに応ずることを得ず、併しながら百六十余名の発起人より成れる一派と五十余名より成れる一派と此両派ともに全く仲裁の事を一任し、之に対しては一人たりとも決して異議を申立てずとの事にて双方一同よりの委任あらば、予は乍不及之を引受け仲裁調和の労を厭はざるべし、先づ夫迄は設令ひ農商務省よりの依頼あるにもせよ之に応ずること能はず云々」との意味を以て答へられたり、故に若宮商工局長には別項にも記せる如く昨日又実業派専務委員を農商務省に招きて種々協議したりと云ふ。


中外商業新報 第三五一一号 〔明治二六年一一月一五日〕 ○東京商品取引所設立希望者二団体の取纏方法(DK140022k-0017)
第14巻 p.242-243 ページ画像

中外商業新報 第三五一一号 〔明治二六年一一月一五日〕
    ○東京商品取引所設立希望者二団体の取纏方法
東京に商品取引所を設立せんと希望するもの二団体あり、一は所謂実業派一は所謂三品派なり、同種物品の取引所を同一市街に二ケ所以上設立することを得ざるは法律の明示する所なるを以て政府は過般共に之を却下したり、其意蓋し両派をして一致合同せしめんとするにありて絶体的に之を不認可と決定したるにあらざるや明かなり、然るに両派は互に確執して一致合同せざるのみならず益々相反目するの状勢にあり、於是農商務省は取引所許否の処分としては敢て障碍を見ることなしといへども商業発達の点に就ては慊然たらざるを得ずと為し、商工局長若宮正音氏は三浦府知事と熟議の上左の取纏方法に依りて之を取纏むることゝすれば、蓋し円滑に取引所を設立し商業発達上幾許の補益あるべしと協議一決したるは十余日以前のことなり
 東京には商品の取引所設立を希望する者二団体あり
  一は油・綿・塩の三品を取引せんとするものにして雨宮敬次郎外五十五人の出願なり
  一は塩・砂糖・油・肥料・綿糸・綿・金属・雑穀・木綿の九品を取引せんとするものにして井岡晢太郎外五十四人の出願なり
 便利の為め前者を甲と名け後者を乙と称し、以下甲乙を以て之を区別す
 此甲乙両者各其発起の認可を農商務省に出願せり、農商務省は之を調査するに、甲乙両者共に敢て法律命令に違ふことなきを認めたり乍去同種物件の取引所を同一の市街に二ケ所以上を設立するを得ざるは法律第五号取引所法第二条に依て判然たり
 仍て農商務省は両者の出願を却下し、合同一致するにあらざれば其発起を認可し難き旨を地方長官に通牒したり、是真に已むを得ざる当然の処分なり
 然るに両者は合同一致の熟議を為さず、各々独立して更に其発起認可を申請せり
 蓋し此儘放任し置くときは到底該取引所設立の見込あるを必すべからず、商業の発達上遺憾甚だし、於是之が善後策を考按するに、甲
 - 第14巻 p.243 -ページ画像 
乙両者は之を商工局長たる若宮正音、東京府知事たる三浦安、東京商業会議所会頭渋沢栄一の三氏に一任し、此三氏に於て適良と認むる所に依り(或は一方を止めしむるとも、若くは双方五分五分に歩み合はしむるとも、又は七分三分・四分六分・九分一分にするとも何様のことにするとも)毫も異存なしと予約して之を無条件に一任し了ることゝ為し、此三氏熟議を遂け適良なりと思考する所を甲乙両者に示すときは何様の方法にても之に従て改めて発起認可を申請することにすれば、蓋し円満に此取引所を設立し以て商業の発達整斉を図るを得べし
  但し商工局長たり知事たり会頭たる職務を以て之を考査するにあらす、三氏共に一己人の資格を以て之を考査すべきは勿論なり
 尤も若宮正音は取引所設立許否の判断を為すへき主務大臣の指揮を受け許否判断の取調を為すへき当局者なるを以て、自ら其方法を言説するは穏当ならざるの嫌あり、故に渋沢・三浦両氏の意見言説を聞き其所見を適良なるものとするの外なし
 又三浦・渋沢二氏の説若し合体一致せさるときは到底此一任を謝絶するの外なし
 而して甲乙両者共に之を無条件に一任し了るも三浦・渋沢の二氏に於て自ら此事に当るを肯ぜざるときは此一任の方法は成立せざること勿論なり
仍て爾後若宮氏は両派に対し自分及び渋沢・三浦の三名に一任すべき旨を懇示し且つ当時京阪地方へ旅行中の渋沢氏の帰京を待ちつゝありしか、渋沢氏も去る十一日夜帰京したるを以て直ちに同氏に熟議したるに、渋沢氏も亦其適良なる取纏方法たるを認められたる由なれども前号の紙上にて記述せし如く今日に於て如何にも直ちに着手する場合に至らざるのみ、而して雨宮派に於ても右に掲くる取纏方法に従ひ全く無条件にて一任する旨を一昨日書面にて若宮局長へ答申し、今は此関係者五方の内四方即ち若宮氏・三浦氏・渋沢氏及ひ雨宮派は此方法に一致し、実業派専任委員諸氏も亦一昨日農商務省に出頭し若宮局長に面したる時の模様は既に昨日の紙上に記載したるが如くにして、発起人一同協議を遂け来る十七日迄に諾否を決答すべき旨を陳述したりといふ、左れば此事の適良に纏ると否とは取引所設立の成否に関し其成否は唯実業派発起人諸氏の意見如何に繋るものと云ふべし


中外商業新報 第三五一三号 〔明治二六年一一月一七日〕 ○実業派東京商品取引所創立発起人断じて無条件仲裁に任せず(DK140022k-0018)
第14巻 p.243-244 ページ画像

中外商業新報 第三五一三号 〔明治二六年一一月一七日〕
    ○実業派東京商品取引所創立発起人断じて無条件仲裁に任せず
曩に実業派東京商品取引所創立発起人専任委員が若宮商工局長の諭告に依りて東京府知事たる三浦安・東京商業会議所会頭渋沢栄一及び農商務省商工局長なる若宮正音の三氏に無条件の仲裁を求むるの諾否は来十七日頃を以てせんと約束したる結果に依り、予起《(記)》の如くこの派の発起人総会は昨十六日午後一時より銀行集会所楼上に開かれたり、会する者百二十余名、専任委員の棟梁株たる渡辺治右衛門氏先づ会長席に着きて若宮商工局長の諭告に関する事の仔細を陳述し、而して自派
 - 第14巻 p.244 -ページ画像 
の計画に係る商品取引所と所謂紳士派の計画に係る商品取引所と合同するの意あるや否に就て衆員の意見を資《(質カ)》す、渡辺会長の言未だ終らざるに疾くも
 我々は合同は不同意なり
 我々は無条件仲裁は不同意なり
との声起り満場一致賛成し議は遂に之を決す、之に尋で
 我々の意見は既に合同不同意、無条件仲裁不同意に決したれども、若し条件付仲裁とならば大概の事は専任委員に一任しては如何
との説もありしかと、敢て之に賛成する者もなく自然消滅に帰し、衆員の決意毫も動かすべからず、於是渡辺会長は今日決議の次第は具さに若宮商工局長に答申すべき旨を告げこゝに散会す
既に昨日の総会に於て斯る議決あるべしとは専任委員が若宮局長に対する語気に依りて之を察するに足るべく、又兼て発起人諸氏等が語る処に依りても之を知るに足るべきなり、夫れ斯の如く実業派発起人諸氏の意志は遂に動かすべからす、果して然らば当局者は如何に之を処断すべき乎、到底同派の発起人等が主張せる如く当局者行政の模様に依りて一刀両断の詮議に及ふより外之なかるべき也
○商品取引所経費支出の決議 別項に記せる如く実業派東京商品取引所発起人総会に於て無条件仲裁不同意の議決を為し、之に尋で経費支出の件をも協議し、各組合より百五十円宛を支出し尚ほ不足することあらば其時に到り各組合に於て又々等分に負担すべき事をも議決せしとなり


中外商業新報 第三五一四号 〔明治二六年一一月一八日〕 ○実業派専任委員の意向 (商品取引所仲裁謝絶の理由)(DK140022k-0019)
第14巻 p.244-246 ページ画像

中外商業新報 第三五一四号 〔明治二六年一一月一八日〕
    ○実業派専任委員の意向
             (商品取引所仲裁謝絶の理由)
実業派東京商品取引所発起人中の専任委員諸氏は一昨日発起人総会解散後日本橋石町の柏木に会合して、若宮商工局長に其決議の要を答申すべき打合等に就て協議する処ありしが、其会合に参列せし人々は
 田村利七・児島喜三部・浜口吉右衛門・柿沼谷蔵・鳥海清左衛門・渡辺治右衛門・伊井吉之助・小池佐一郎・広瀬新平・西川宗兵衛
等諸氏なり、劈頭この打合の議に上りしものは
  若宮商工局長に対し如何に答申すべき乎
の一事是なり、勿論総会の議決に依り無条件仲裁は不同意なりと答ふるに過ぎずと雖も其仲裁に就て不同意を唱ふるには自から理由なかるべからず、其答申の振合と其仲裁謝絶の理由に就てはこゝに充分熟議を凝らし置かさるべからずとの事にて各自其意のある処を述ぶ、而して若宮商工局長に対して答申すべき振合は先づ
 懇篤なる御諭示の次第は具さに発起人一同に申聞かせ、さて無条件仲裁の諾否に就て各自の意見を質したる処過日不取敢私共専任委員の所存申上げし通り無条件仲裁は断じて承服仕らず、不本意ながら此段御答申上ぐ
との極めて簡短なる答申を為すべしと云ふことに決す、於是或る一人曰く
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 無条件仲裁の謝絶は可なり、勿論我々の意見もここに在り、発起人総会の決議又動かすべくも非ず、乍併若し無条件の仲裁を謝絶することあるは条件付仲裁ならば之を承諾すべきや如何との推問ある時は果して之に如何に答ふべき乎
との議起る、或る一人は曰く
 若宮商工局長の諭示は無条件仲裁に在り、而して之に答ふるには承服せずと云ふより外なし、されば条件付仲裁の事は全く別儀にして若しこの推問ある時は再び発起人総会を開きてお答仕らんと答ふるより外なし
とのことにて若宮商工局長に答申すべき振合は先づこゝに定まる、而して又或る一人は曰く
 我々同志は頑として他と合同せざるに在り、既に我々他と合同せず他の派又頑として其計画を止めさる時は到底主務省に於ても両者の設立を許可すべくも非らず、果して然らば我々の願志は遂に之を遂ぐる能はざるべきなり、若し渋沢・三浦・若宮氏等条件付仲裁を承諾せよとあるに於ては之を諾し、我々に充分利益なる合同なれば敢て不可なきが如し如何
との説起るや、或る一人は勃然としてこの軟派の説を駁して曰く
 我々商人が執拗にも其仲裁を謝絶せんとするもの畢竟万々止を得ざるものあるか為めのみ、若し他と合同して商業機関たるこの取引所をして隆盛発達せしむることを得べくんば、斯迄に愛嬌を失して我意を主張せざるべし、互に自己の商業をして自由に便利に盛大に営まんと欲して而してこの取引所を設立せんと欲す、故にその機関たるこの取引所を支配するに其志を同ふせざる人々と合同して之を為さんとするは到底其希望を遂くること能はさるや明なり、されば合同して其希望を遂くること能はすんば寧ろ最初より合同を肯ぜざる方我々商業上の利益たらん、而して我々合同を欲せず他又其計画を止めず主務省之を許可せざることあらば万々止むを得ざる次第なりとて断念するに在るのみ
硬派の勢敢て当るべからず、又或る一人は曰く
 世の所謂紳士派が商品取引所の設立を計画したるもの蓋し其意のある処は自己の利益を計るに非らずして我々商人に利便を与へんとするに在るや推して知るべく、即ち一片の義気より親切にもこの計画を起したるものに外ならざるべし、而して人動もすれば彼の派を目して我々商人派の敵手として認むるものあり、即ち取引所法に依れば同一の地域内に同種の商品を売買するを許さゞるものにも拘はらず、彼の派我々の売買せんとする商品を売買せんと欲し恰も競走の姿あるを以てなり、然れども彼を我の敵手なりと認むるは大に非なるなり、畢竟彼の派の人々は蓋し我々商人の創業の意に乏しきを知るよりこの計画を起し依て以て其利便を与へしめんとするに在るのみ、豈他あらんや、然るに我々商人はこの取引所の設立に限り敢て他の手を藉らず奮然その計画に従事す、我々商人が斯迄に団結して事を起さんとす、古来未だ曾て其例なし、畢竟する所この奮発心を起したるものは全く彼の派の勧誘に依れりと言はざるを得ず、既に
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彼の派の人々が我々商人の為に計画せし事業は我々商人自ら熱心に之を起さんとするものなり、果して然らば彼の派の人々は義気既に貫徹し親切既に尽せりとして専ら我々商人に其計画を任じて可なり思ふに我々が斯迄に決意して其計画に従事せるを察すれば彼の派の人々大に其心を安し其計画を止めて我に任じ、我々亦彼の派の人々に向て其功を感謝せしむるの日あるや蓋し近々に在らん
との説もあり、硬軟温和の諸説紛々として起りしも、其大勢硬派の力最も強く到底其決意動かすべからざるものありしとなり


中外商業新報 第三五一四号 〔明治二六年一一月一八日〕 ○実業派専任委員の答申(無条件仲裁の謝絶)(DK140022k-0020)
第14巻 p.246 ページ画像

中外商業新報 第三五一四号 〔明治二六年一一月一八日〕
    ○実業派専任委員の答申
             (無条件仲裁の謝絶)
別項に記す如く実業派の計画に係る東京商品取引所発起専任委員諸氏は昨日発起人総会の議決に基き、昨日午後農商務省に出頭若宮商工局長に面会して、渋沢栄一・三浦安一・若宮正音の三氏に無条件仲裁委任の一条は一同承服せざる旨を答申に及びけるに、若宮同局長は答申の趣委細承知せり、最早此上は致方なし、何れ近々何分の詮議に及ぶより外之なしとの返答あり、一同退出せしとなり
されば仲裁談はこの委員の答申と局長の返答とに依りて既に破れたるなり、蓋し此上は主務局長が行政の都合に依りて紳士・実業両派の願意を却下するか、将た紳士派の願意を容れて実業派の願意を退くるか将た又実業派の願意を客れて紳士派の願意を退くるか、一刀両断の詮議を待つより外之なかるべき也


中外商業新報 第三五一四号〔明治二六年一一月一八日〕 ○実業派取引所の発起人更に増加す(DK140022k-0021)
第14巻 p.246 ページ画像

中外商業新報 第三五一四号〔明治二六年一一月一八日〕
○実業派取引所の発起人更に増加す 実業派商品取引所発起人中諸金属部の発起人は是迄十五名なりしか、今度左の十二氏より加盟を申込み都合二十七名に増加せるを以て、一両日中に発起人追加願書を農商務省へ差出す筈なりと云ふ
    諸金属部新加盟者
 湯島七右衛門 森岡平右衛門 桑原七兵衛
 梅岡正吉   浅井半七   三崎芳之助
 森田卯兵衛  佐野勘兵衛  梅岡米七
 森友嘉蔵   中村重兵衛  竹内嘉三郎


中外商業新報 第三五二〇号〔明治二六年一一月二六日〕 ○東京商品取引所発起委員大に運動を始めんとす(DK140022k-0022)
第14巻 p.246-247 ページ画像

中外商業新報 第三五二〇号〔明治二六年一一月二六日〕
    ○東京商品取引所発起委員大に運動を始めんとす
東京商品取引所発起委員会は予記の如く過日開きし同発起専任委員会の協議に依り一昨夜霊岸島の川文方に開かれたり、其協議の要旨は今後運動の方法に就てなり、之に関する発起委員の意見は発起専任委員の意見と等しく、大に進んで主務省の詮議を促すべしと主張するあり又暫らく主務省の為す処を見たる後其詮議を促すも尚ほ遅きに非ざるべしと唱ふるもありしかど、結局前者の説多数にして大に運動を試むる事に決せり、其運動の方法は
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 来二十七日専任委員等挙て農商務省に出頭、先づ大臣に面謁を求めて其設立認可の速ならんことを情願し、尚ほ主務局長にも都合に依り面会して大に其詮議の速かならんことを促し、若し大臣の返答如何に依りては他の各大臣をも歴訪して具さに陳情することあるべし又東京府庁に三浦知事を訪ふて若し農商務省が再ひ設立認可請願書を却下するが如きことある時に当りては同知事に於て具さに其意見を付して其認可の必要なることを同省に具状されたき旨を望むこと
に定め、各員愈よ奮て其願意を貫徹するに奔走尽力すべきを盟いて散会せしとなり


中外商業新報 第三五二一号 〔明治二六年一一月二八日〕 ○実業派の同盟果して破裂すべき乎(DK140022k-0023)
第14巻 p.247 ページ画像

中外商業新報 第三五二一号 〔明治二六年一一月二八日〕
    ○実業派の同盟果して破裂すべき乎
東京商品取引所設立の請願、紳士・実業両派よりして起るや、主務局長百方其合同を慫慂す、然るに紳士派は猫の如くなりて其合同を望み実業派は頑として之を望まず、今後の処分は主務局長の方寸に在りて存す、而して実業派は主務局長の処分に依りて其願意を貫徹する歟、然らすんば紳士派断念して其設立の計画を止むるを待つ歟に在りと云へり、然るに紳士派は如何に決心せるか吾々未だ其意のある処を聞かさるが故に之を知らず、人或は曰ふ、紳士派は只管実業派の同盟破裂するの期あるを待ち其時に乗じ大に願意を貫徹するに尽力せんと欲するに在るが如しと、何に依りて之を知れるか、或夜紅葉館に開ける宴会の席上に於て紳士派中の有力と聞へし某氏之を公言せしに依りて知りしとなり
吾々は果して紳士派中の某氏斯る公言をなしたるや否や其事の実否を知らずと雖も、古来例なき熱心を以て成りし実業派の同盟にして某氏の言の如く万々破裂するが如きことあるべしとも思はれず、然れども若果して其同盟に破裂するが如きことあらんか勢事の成らざるは言を待たず、而して事若し成らずんば実業派の諸氏果して世に何の面目かある、又暖簾の汚れは如何にして之を雪かんとするか、吾々は実業派諸氏が今日までに団結せし同盟をして破裂せしめ、又今日までに熱心せる計画をして中途に廃すが如きことは万々之なきを信ずるものなり


中外商業新報 第三五二一号 〔明治二六年一一月二八日〕 若宮商工局長の確答(DK140022k-0024)
第14巻 p.247-248 ページ画像

中外商業新報 第三五二一号 〔明治二六年一一月二八日〕
    ○若宮商工局長の確答
予記の如く東京商品取引所発起専任委員は昨日午後袖を聯ねて農商務省に出頭、後藤大臣に面謁を求めけるも、同大臣には公務多忙の故を以て面謁することを得ず、更に若宮商工局長に面会し予て出願せる同取引所設立認可に就て之を促かしけるに、同局長は之に答へて曰く
 商工局長は取引所法の規定に従て之を処分する外他に其法あるを知らず、同法は一地域内に同一の商品を売買取引するを許さず、然るに府下には之を設立せんとするもの両者あり、而して商工局長は一方に之を許可して一方に之を許可せずと云ふが如き一刀両断の処分は決して之を為し能はず
となり、依て同専任委員は其理由を質し且其処分を促したるも、同局
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長断じて之を聞かざるを以て止を得ず一同本意なく退出せしとなり、尚ほ詳細は聞得て報道する処あるべし


中外商業新報 第三五二二号 〔明治二六年一一月二九日〕 ○実業派今後運動方針に就て(DK140022k-0025)
第14巻 p.248 ページ画像

中外商業新報 第三五二二号 〔明治二六年一一月二九日〕
    ○実業派今後運動方針に就て
東京商品取引所発起専任委員が若宮商工局長に其設立認可の処分を促しけるに、同局長は三品(紳士派)九品(実業派)両者ともに法律に依りて許可すべき権利を有するものなれば其一方を許可して其一方を許可せざるが如き事は為す能はずと答へしに、同発起専任委員等も強て其処分を促すこともならず本意なく退出せしを斯くてあるべきに非らざれば
 愈よ法律家に就て其法文の精神を質し果して主務局長は之が一刀両断の処分を施し得べきものに非らざるや否やを研究し、然る後今後の運動方法を協議せんとし
 又其法文の研究頗る可なりと雖も幸い議会の開会もあることなれば楠本正隆氏(日本橋区選出議員)に依りて其筋に之を質問すべし
との意見を抱けるもあれども両者ともに未だ確定するに至らず、依て近々発起委員会か又は発起人総会を開きて大に今後の運動に就て協議する処あるべしとなり


中外商業新報 第三五三〇号 〔明治二六年一二月八日〕 ○東京商品取引所専任委員会(DK140022k-0026)
第14巻 p.248 ページ画像

中外商業新報 第三五三〇号 〔明治二六年一二月八日〕
○東京商品取引所専任委員会 実業派の計画に係る東京商品取引所専任委員会は昨七日午後四時より霊岸島の永秀亭に開会されたり、其協議の要は同取引所の設立に関し主務大臣を始め各大臣に呈出すべき陳情書に就て熟議し、尚ほ主務省の詮議を待つも空しく時日を経過するのみなれば之より大に振て其処分を促すべき運動の方法等を議定せしとなり


中外商業新報 第三五三一号 〔明治二六年一二月九日〕 ○実業派更に進んで主務局長の処分を促さんとす(DK140022k-0027)
第14巻 p.248-249 ページ画像

中外商業新報 第三五三一号 〔明治二六年一一月九日〕
    ○実業派更に進んで主務局長の処分を促さんとす
嚮に実業派の計画に係る東京商品取引所発起専任委員が農商務省に出頭、若宮商工局長に其設立許否の詮議を促しけるに
 農商務省は他に(三品派の計画を指す)同種の商品を売買取引せんと欲して其取引所の設立を出願せるものあれは、等しく其設立の許可を受くべき資格あるものに向ひ其一方を許可して一方を許可せざるが如きことは取引所法第二条(同種の物件を売買取引する取引所は一地区一箇所に限り設立することを得、但し、其地区は農商務大臣之を定む)に依り断じて其処分を為す能はず、若夫この法文を解するものあり、農商務省は斯る一刀両断の処分を施すことを得べしとするものあらば、試に其解釈を聞き大に之を熟考して其許否の詮議を凝らすことあるべし
とありしより、法理を弁ぜざる同専任委員等は速に其設立許否の詮議を仰がんと欲するまゝ法理に精しき某々法律家に就て其法文の解釈を求む、某法律家之に解釈を下して曰く
 - 第14巻 p.249 -ページ画像 
 一地区内に於て同種の物件を売買取引せんと欲して甲乙両者其取引所の設立を出願するものある時は主務省は職権に依り其許否の処分を為し得べきこと論を待たず、若夫甲乙両者合同計画して其設立を出願するに非らずんば之を許可せずとして其処分を等閑に付するか如きは、即ち主務省の職権上為すべきものにあらず
と、其解釈に迷ふたる専任委員等にはこの解釈を聞て大にうる処あり益々其決心を固くして更に運動の方針を定め、先づ主務局長に向て速に其許否の詮議を尽されんことを促すことに決定せしとなり