デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

3章 商工業
28節 貿易
12款 日本貿易協会附 商品陳列館
■綱文

第15巻 p.131-139(DK150008k) ページ画像

明治20年7月21日(1887年)

是ヨリ先、大倉喜八郎・松尾儀助・森村市太郎等本邦貿易事業ノ発展ヲ謀リテ貿易協会ヲ設立ス。栄一同会ニ入会シ、是日幹事会ニ出席シテ商品見本陳列所創立ノ必要ヲ説キ、同会幹事ノ賛成同意ヲ得。


■資料

中外物価新報 第一二四三号 明治一九年六月二日 ○貿易協会(DK150008k-0001)
第15巻 p.131 ページ画像

中外物価新報  第一二四三号 明治一九年六月二日
    ○貿易協会
河瀬秀治・大倉喜八郎・松尾儀助・矢島作郎・安田善次郎等諸氏の発起に係る貿易協会は未だ創草の際なれど、海外を歴観したる紳商紳士の入会せらるゝもの追々増加して、其維持資金も已に五千円に達せりと云ふ


中外物価新報 第一二四六号 明治一九年六月五日 ○貿易協会(DK150008k-0002)
第15巻 p.131 ページ画像

中外物価新報  第一二四六号 明治一九年六月五日
    ○貿易協会
同会設置の事に付ては屡々報道せし如くなるが、今聞く所に拠れば、同協会は弥よ京橋区木挽町なる起立工商会社の近傍へ新に建築せらるる由にて、其工事落成の上は全国各地の商況をば電信又は書信にて蒐集し置きて同会員の縦覧に供せらるゝ都合になるべしと云ふ


中外物価新報 第一五九三号 明治二〇年七月二四日 ○貿易協会幹事会(DK150008k-0003)
第15巻 p.131 ページ画像

中外物価新報  第一五九三号 明治二〇年七月二四日
    ○貿易協会幹事会
兼て記せし通り去二十一日夜木挽町六丁目貿易協会に於て開きたる同幹事会の模様を聞くに、同夜は同会員渋沢栄一氏にも出席ありて商品見本陳列所創立の事に関し兼て取調べられたる白耳義・和蘭等の模様を演べ、我国にも是非之を創設したき旨を話されたるに、孰れもみな賛成同意なりしかば、同協会員東京商工会員は勿論広く府下の商人に謀り其賛成を乞ふて更に創立委員を撰み之に一切の取調を托することに極りたる由 ○下略


中外物価新報 第一六四六号 明治二〇年九月二五日 ○商品見本陳列所設立に関する集会(DK150008k-0004)
第15巻 p.131-132 ページ画像

中外物価新報  第一六四六号 明治二〇年九月二五日
    ○商品見本陳列所設立に関する集会
東京商工会及び貿易協会の幹事には商品見本陳列所設立の件に関し一昨日午後五時頃より東京商工会に於て集会を催したるとの事なれば、右設立の事は如何なる運びになりしやと聞くに、当日は別に商品見本陳列所設立草案というが如きものありて、之を議したりといふにはなく、唯其筋より参考の為にとて下附されたる報告書様のものを朗読し互の参考に供したる迄なりと云へり、尤も同陳列所設立に関する大体
 - 第15巻 p.132 -ページ画像 
の趣意組織等は厚意を以て其筋に於て起草し同陳列所の発起人へ示さるゝの都合なれば、其上にて再び集会を開き諸事を決定する筈なりと云ふ、又同日出席されし幹事は、貿易協会よりは渋沢栄一・大倉喜八郎・今村清之助・岡田任一の四氏、商工会よりは梅浦精一・丹羽雄九郎・森島松兵衛の三氏なりし由


中外物価新報 第一六六二号 明治二〇年一〇月一四日 商品見本陳列所設置の計画(DK150008k-0005)
第15巻 p.132 ページ画像

中外物価新報  第一六六二号 明治二〇年一〇月一四日
    商品見本陳列所設置の計画
今や商品見本陳列所設置の問題は漸く我が官民有志者の注目する所となり既に其計画に着手して追々其歩を進むるものゝ如し、寔に喜ぶべきの次第なり、抑も此の商品陳列所設置の議たる敢て今日に初りたるにあらず、其実は外務・農商務・文部の三省に於て疾くより此議ありしも唯其機会を得ざりしが為めに世間へ発表せざりしものならんのみ然るに今春益田孝氏洋行の挙ありしかば此際右三省当局の方々には氏が送別の宴を兼ね渋沢栄一氏をも其席へ招き談偶々此事に及びたれは渋沢・益田の両氏にも最も其挙を賛成し、且つ其目的を達するには単に官立に為すよりも寧ろ官民相協同して挙行するの優れるに若かすとの意見を以てしたるの時に起れり、爾後其筋に於ては篤と協議の上更に渋沢・益田・大倉の三氏を外務省に招ぎ政府も此企には応分の保護を与ふべきに付き、各々方に於ても我が商工業の為に特に此の計画を実行するに勉められたりしとの趣意を持つてせられたるよし、依て最初は東京商工会に於て此事に尽力すへきやとの説もありたれど、何分此企の精神たる全国商工業の改進発達を以て目的とするものなれば、可成的一般の有志家と共に協議すべしとの事にて、遂に去月二十三日を以て東京商工会並に貿易協会よりは各々委員数名を会合せしめ貿易協会の楼上に於て商品見本陳列所設立の相談会を開き、其の組織・維持の方法等を議して、其の結果は既に其の筋へ上申されたるやに聞けり、夫れ今日我邦に於ては官府自ら博物館を設け歴史的美術的の物品を蒐集陳列して一般公衆の観覧に供することあるも、未だ商品見本陳列所を設け、内外各種の原質物・半製若くは製造品の市価・割引・手数料、各品の負担すべき各国関税の割合、各市場に至る滊車滊船の運賃、各市場に輸送する時に要する荷造風袋等の模様及び其の方法、見本品の品質を試験すべき工場等の装置を備へ商工業者の便利を謀るの用意は毫もあることなし、豈遺憾の至りならずや、蓋し今我が商工社会の要務は商工□□を養成するにありと雖も、尚一層手近くして且最も急務とすべきは商工社会の人々をして以上叙述したるが如き各種の事項を示し、競争の利器は唯り資本のみに限らず教育・学理・品位・労力等の諸□に在るを知らしめ、且つ製造家意匠の新案を与へ宇内万邦の製造力を対照すべき標準を与ふるに在るへし、是れ海外商工社界の事情に暗き一般の商工業者を誘導開発するには最も効験あるの方法にして、将来我が商工業の改良発達を謀るには甚だ緊急の要務なればなり(以下次号)


中外物価新報 第一六六三号 明治二〇年一〇月一五日 商品見本陳列所設置の計画(承前)(DK150008k-0006)
第15巻 p.132-135 ページ画像

中外物価新報  第一六六三号 明治二〇年一〇月一五日
 - 第15巻 p.133 -ページ画像 
    商品見本陳列所設置の計画(承前)
商人の智見を進め製造家の意匠を増し又内外の製造業には如何なる優劣あるやを示し、以て我か日本の殖産貿易を改進せしむるは実に目下の急務にして、商品見本陳列所は即ち其要具なり、今や民間有志の諸氏が奮て此の計画の任に当らるゝは蓋し此意に外ならさるべきを信するなり、左れば兼て殖産貿易に熱心なる欧州諸国に於ては夙に此の設ありて着々其効を奏し、且つ種々の事情相抱合して遂に漸く英の製造貿易を侵襲せんとするの勢ひを現せり、故に久しく落付居たる英国も近頃は頻りに其貿易の不振の原因を求め種々の方案を運らすものあるが、中にも商品見本陳列館設置の議論は余程其勢を得たるものゝ如くなれば、遠からずして其議を実行するの日あるべしと思はるゝなり、去りながら其組織方法の如きは各国其揆を一にせず、例へば全く政府の手にて其家屋を建設し其見本を蒐集し、其役員にも政府の官吏を用ひ唯毎年四十磅の地代を支払ふのみにして租税は全く免除せられ、尚見本買入其他諸経費として年々国庫より一千磅を支給し其陳列品を新陳代謝し、以て専ら輸出貿易を進め内地製産業の改進を謀る白耳義国ブラツセル府通商博物館の如ものあり、又、四万マークの資本を以て(其実悉く払込まず)商品陳列所を設置し陳列者より毎一メートル三十マークの場料を徴収し、且つ同所附属の取次代理店にて売捌きたる金高の一分乃至五分の手数料を得、之に依て地代租税等の諸費を支弁し、更に政府の補助を受けざるフランクホルト輸出商品陳列所の如きあり、或は又此組織に類似して専ら商売的に組立て買手の外は漫りに入場を許さゞるスタツトガート輸出見本陳列館の如きものあり、又通商博物館中別に商工業に必要なる技芸練習所の設けある澳地利ヴヰンナ府通商博物館の如きものありて、各々多少の差異ありと雖も、要するに通商博物館は概ね歴史的技術的の為めに(ブラツセル博物館を除き)之を設け、輸出品陳列所は重もに商業取組の為めに計画したる実ありとは英国ムレー氏が倫敦商法会議所執務委員に提出したる報告書に依て明かなり、又通商博物館と商品見本陳列所の組織性質は其間に稍々異なるものありと雖、其目的は孰れも殖産商売の改進発達を企図するに外ならざるなり、而して目下我邦に於て計画中の商品見本陳列所は、如何なる方法に依て組織し又之を維持すべきや、是れ商工社界の一問題なるが故に吾輩は聊か鄙見を開陳し当局者の一読を煩はさんと欲するなり、然れども此如き施設たる我国に在ては、未だ新創の事業に属するを以て、其冗長なるを厭はず、先づ試に白耳義国商業博物館の起業組織に関する一篇の報告書を、左に掲載して読者の瀏覧に供すべし
    白耳義国「ブリヱツセル」府商業博物館に関する取調書
第一該館設立の手続き 抑も白耳義政府に於て該館設立の起原は、該国独立以来領事を外国に駐留せしめ商業上に付報告をなすに当り参考の為商品見本を添付せしむる定則なりしか、年を重ねるに従ひ外務省へ回付せし見本漸次増加し通商局の一隅に積て山を為すに至り、随て之を広く商業者に示すの手段なく実用を為さゞるを当局者に於て感ぜしこと玆に年あり、偶々千八百八十年内国博覧会開設の節右見本を出
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品して商人の参考に供せしめ大に効験ありたれば、一の博物館を設け之を永久に保存せんとの論起り、遂に千八百八十一年国会に其議を提出し承認を得たるを持て当時より漸次之が設置に着手せり、是れ即右設立を惹起したる原因なりとす
第二館員の数 該館掛り役員は合計七名、内
 館長   一名 年俸 四千法乃至五千法
 二等属官 二名 同  二千六百五十法乃至三千法
 三等属官 一名 同  二千百法乃至二千六百五十法
 受付書記 三名 同  千五百法乃至二千法
  外に門番一名 給仕二名 使番一名 小使一名
右役員は何れも通商局の官員にして、館長は局中の一課長なれば凡我が奏任四等官位の等級に当るべし、二等属官の内一名は織物に精しき人物にして織物に用ふる原糸の性質織方の吟味等を為す織物専門業なり、其他の二等属員は見本の区部分の事を専務とし、三等属官は見飾附の事を掌る
三名の受付書記は書類の謄写、外国金銀を法貨に計算方並に記録の事を分業す
第三館員を《(のカ)》守るべき規定の有無 右役員は即ち通商局の官員にして同館へ毎日出張して館務を取扱ふことなれば特別の規定等設け之なき趣にて、本省内にて守るべき章程に従ひ勤務し、館長は即課長なれば館務を管理し属員を総轄す、属員には各々分課ありて通信の草案写字送達等の事を取扱ふこと局内の一課に毫も異ることなし
第四該館処務の順序並に通商局との関係 右問題は密着にして相離れざるを以て之を同時に説明せざるを得ず、前に記する如く館員は通商局より出張せるも《(の脱)》なれば其庶務の場所は異なれとも之を処するの序に至ては差異之なき筈なり、先つ館務に付、例へば何の品何地に通するや、将た其他の需要売価等の事に付本省へ問合せありと仮定するに於ては勿論其書状は該館規則書(即客歳十一月二十日付を以て当館より差し出したる報告第四十三号中のもの)外務省へ宛差出す可きを以て通商局長一覧の上之を館長に差廻し、館長は之に対し回答の草案を起し之を本省に廻し商務局長一覧の上本省にて清書して大臣若くは次官手記の上直に本人へ送達す、而して其草案は館長の手に戻り之を館内に保存す、又取調を要する件ありて在外領事に照会せんとする場合には館長起草して前の手続きを以て送達す、而して館務に関する一切の往復書翰は仮令本省を経由するも館内に保存することなり、此迂廻なる手続きをなすものは蓋し該館は通商局の一部なると諸省の通信は総て大臣若くは次官の名を以てするの定規なるに原因したることにして必ずしも館長に信を置かざるに出でしに非ざるべし、尤も館長に宛て直接通信するもの間々ある趣なれとも矢張り受理して右の手続にて大臣若くは次官の名を以て回答をなす由に聞及べり、将又其書翰即ち往翰には館にて定めたる番号と本省受付課の番号を記す、館の番号は該館にて付し本省にては送達の節之を付す即ち我本省にて送第何号公何何と記するか如し、又た本省に到達する所の該館に関する書信は通商局長より当日の五時には必す取纏めて之を館長に送付するを規則とす
 - 第15巻 p.135 -ページ画像 
第五件目の製し方 件目の製し方ハ前記見本又は商業上問合説明等に関する一切の書類を属員か区部分けにして保存することにして、仮令は織物に関する書類は第何区に属する分なれば其れへ編入し、日附の順序を以て之を一纏にして参考の便に供す、尤も一般の事に関する在外領事と往復公信前記の部に入らざる者は、何々国在留領事国分けにして編成あるを以て之を見出すこと容易なりといふ、又本省より書類の下る時は送達簿の如きものに大意名宛日附を記入して之を共に送ることなり、是れは該館へ書類を送達したる認拠になるものとす(以下次号)


中外物価新報 第一六六四号 明治二〇年一〇月一六日 商品見本陳列所設置の計画(承前)(DK150008k-0007)
第15巻 p.135-137 ページ画像

中外物価新報  第一六六四号 明治二〇年一〇月一六日
    商品見本陳列所設置の計画(承前)
  白耳国「ブリヱツセル府」商業博物館に関する取調書(続)
第六諮問所又ハ略則案中報告課 該館規則書諮問所を頻別《(類カ)》すれば四課あり、縦覧人見本に附したる説明札並に目録書にて了解せざる歟、又ハ尚詳細の事柄を知り得度場合には直に館長に面会して之を質問することにて、館長の心得る丈けは親切に説明し、説明し得ざる事□なれば本人の名刺に其大意を記し領事に照会すべき者は前手続にて問合せたる上更に回報することなり、又同館中に三ケ所の諮問所あり、一ハ館員の内にて外国入札注文の質問に答ふる所にて其他は鉄道郵便電信省よりの出張官吏にして通商局とは更に関係なし、而して其内一ハ内国及外国運賃関税等の事を掌り縦覧人にて商品鉄道《(の鉄道)》の運賃・船賃・外国税額等問合せたる節説明を与ふるを本務とす、此局には内外鉄道船会社の賃銭表並に外国税関目録を備へて之に依て答ふるとなれば鉄道船賃等も凡その処を教示するに過ぎずといふ、其他の局は矢張り同省の出張官吏にして白耳義政府の入札公売仮令は軍陸省《(陸軍)》にて麦何百俵を何日迄に入札買入るゝとか、又は機械買入等の詢問に答ふを掌り又入札に関する明細書を交付し図面を売渡す由、此の二課の官吏は通商局員と全く独立の姿にして、其事務上に付関係なしと雖も館内取締に関しては館長の指揮を受くる事勿論なりとす、之を要するに該館は何人を問はず公衆の縦覧を許すも、其主意たる白耳義国人の便宜を謀り貿易を奨励するを目的とすれば、外国人たることを知りたる以上は見本の分与説明等を与へざる規則とす
第七商品の見本分与の手続 縦覧人の内見本の一部を参考に供し之れに模擬して製造せんと欲する者ある節ハ取次人に申込み之れを館長に通し、館長に於て差支へなしと認むる場合には参考に充る丈けの織物にて云ハヾ凡二三尺も切り断ち分与することあり、請求人ハ名刺を差出して請求することなれば大概ハ名ある製造者若くは商売にして、応対振りにて慥なる人物なることを知るを得れば不正の所業を為すもの之なき趣なり、右分与すべき品柄なれば之を与ふることを得べしと雖も、雛形の如きものにして譬へば靴又は帽子なとを借受け度ことを乞ふときの処分如何を問ひたるに、之れは規則外なれとも館長の見込にて閉館後即午後四時より翌九時半迄ハ貸与ふることあり、蓋し其時間にハ必す返却することにして、決して延期又ハ返却せざる等のことあ
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るなし、但し開館中右の如き見本を場外に持出すに於てハ他の縦覧への妨げをなすか故に閉館後に許可することなり、之を許すハ館長自ら責を負ふ覚悟にて取計ふことなりとの趣なり、要するに該館の目的たる商工業者の便を計りて設立したるものなれは、成べく容易に事を運ぶ様に周旋し且つ官吏がましき様子を現ハさず叮嚀に人に応対し其都合を計ることに尽力せり
第八陳列品の類別 陳列品の類別に付第一注意を要するは本件の区別なり、同館にては之を大別して二とす、第一ハ白耳義国の製造ハ《(マヽ)》必要なる原質又必要ならざるも内国に産出せざる品を陳列し、第二には外国にて製造し他国の市場に輸出せる品を並列せ□蓋し該館の目的たる外国にて製造したる物品の品位と代価とを示し、見本によりて白耳義国人をして之を製するを得せしめ、其初めに製造したる国と局外《(地カ)》の他にて競争するの方便を内国人に与ふるの目的なればなり、扨其品類の区別は之を三段に分ち、又其第一区ハ目下四十四区に分てり、即ち其陳列品の区分法ハ左の如し
 第一区   植物又動物
 第二区   礦石及石材
 第三区   冶金学的の粗製品
 第四区   化学的の製品
 第五区   硝子器類
 第六区   陶器磁器
 第七区   金属糸細工物(但金銀糸細工物を除)
 第八区   燃材用具火燃用具空気流通用具
 第九区   刃物の類
 第十区   外科用具及学術用具
 第十一区  電信及伝話器
 第十二区  工芸用の諸道具
 第十三区  携帯兵糧器の類
 第十四区  楽器
 第十五区  小児の翫具
 第十六区  時計
 第十七区  金銀細工物・鋳物美術品・模様打出し金物細工
 第十八区  金銀珠玉細工物
 第十九区  家具・敷物・壁装飾用紙の類及蓆
 第二十区  椅子張用織物及窓掛等の如き室内飾装用品の類
 第廿一区  彫刻品及大理石細工物
 第廿二区  馬車・荷車
 第廿三区  革細工物の将碁ドミノー等の翫器類、毛払・櫛・籠細工物
 第廿四区  荷造用品・旅具□宿用具
 第廿五区  紡績糸・織物
 第廿六区  男女衣服
 第廿七区  帽子・靴足袋・□掛等衣服附属品
 第廿八区  ダンテル・網織物・縫箔物・組紐の類
 - 第15巻 p.137 -ページ画像 
 第廿九区  紙
 第三十区  文房具・製図画工及美術用の什器
 第三十一区 皮革
 第三十二区 馬具
 第三十三区 獣脂・食用油
 第三十四区 缶詰物
 第三十五区 穀物の粉及其製品
 第三十六区 芥子・胡椒の類・砂糖及砂漬物
 第三十七区 麦酒・葡萄「アルコール」等の如き飲用醗酵物
 第三十八区 化学的洗濯仕上法
 第三十九区 庖厨用具・竹・木製靴
 第四十区  鍾・小飾・呼子・電気呼子其他附属品
 第四十一区 鉄栓・錠・鍵・釘其他一切の金物
 第四十二区 護謨製の物品
 第四十三区 莨・巻煙草・紙巻煙草の類
 第四十四区 紙屑・切れ屑、其他製造用、獣物食用又ハ肥料用に供すべき雑屑物
又第二ハ部分けにして是にハ一区の品を数部に分ち、例へば織物区の内に毛織あり絹布あり綿布あれば之れ等をも分つが如し、第三ハ番号の事にして是ハ一種類の品にして色模様形容等を異にする品に付する番号なり、譬へは紙巻煙草ハ莨区即第四十三区に属する品なれども、其部は紙巻煙草の部にあり、而して紙巻莨にも種々の類あれば一種一箱入の或る品ハ其何部の内第何番なりと区別するの法なり、右ハ該館の定法にして品種整理上より之を附する而已なれば、縦覧人にハ目録と比較の節便利なるの外は効験なきものとす、又器具の如き雑品にては甲に属するや乙に属するや区分判然せざるもの少か《(ら脱)》ざる趣なれど、大躰区分の内最近きものに付編入すといふ、又荷造方の雛形ハ頗る不完全にして僅に三箇の荷造方包の箱備へあるのみ
第十二毎品説明の附し方 陳列品には必ず説明書を附す、其記載方は品物に依り多少の差ありと雖も其順序は第一何々国在留領事寄送品、第二其年月日、第三其何々区、第四何々の部、第五何番、第六産所、第七大小、第八原価若しくハ売価等にして、織物の如きは必ず寸法を記し、又釘の如きは其大小番号並に何箇に付代価を記せり、但原価を記する能ハざる物へは市価を記す、又中には代価を記せず目録を見るべしと略したる分少なからず、右説明にて足らざる時は其区部番号若くハ品名又ハ国名にて目録を調ふれば一層詳かなる説明を得べし
ブラツセル府商業博物館の組織模様等ハ略ほ右の如くにして、尚目録並に雑誌を発行し陳列品の説明を与へ、且毎週領事の報告海外新聞等より商業上必要の事項を編纂して之を実業者に頒ち、又書籍館の設ありて新聞書冊の観覧を便にする等注意至らさる処なしと云ふべきなり


中外物価新報 第一六七一号明治二〇年一〇月二六日 ○商品見本陳列所創立相談会(DK150008k-0008)
第15巻 p.137-138 ページ画像

中外物価新報  第一六七一号明治二〇年一〇月二六日
    ○商品見本陳列所創立相談会
東京商工会及び貿易協会の幹事渋沢栄一・大倉喜八郎・益田克徳・梅
 - 第15巻 p.138 -ページ画像 
浦精一・山中隣之助・河村伝衛・丹羽雄九郎・村田一郎・色川誠一・森島松兵衛・岡田任一等の諸氏には昨日午後二時より四時迄木挽町の貿易協会へ会し、頃日来創立の計画ある商品見本陳列所の事に付き相談会を開き種々経費に関する事共を議されたるが、右創立入費は一万円ばかりにて其内其筋より三四千円位の保護を仰き、尚ほ年々若干の保護をも仰くの見込なれば、夫等の事に付近々其筋の内意をも伺ひたる上再び相談会を開き願書を差出すことに決したる由、右商品見本陳列所と云ふは先頃の紙上にも記したる通り、内外各地貿易品の見本を蒐集し如何なる品物は如何なる国にて産出製造し其代価は若干といふことを当業者に知らしめ、益々我が外国貿易を拡張せしむるの要具にして、目下我国に於て最も必要のものなれば其筋より幾分の保護を得ることに定りたる上は、二百五十名ばかりの会員を広く全国各地より募り、東京府下へ右商品見本陳列所を設立するの見込なりといふ、聞く所に拠れば右陳列所創立に関する事務は大分捗取り、創立願書並陳列所規程等も大抵出来し居れば、其筋より保護の一条が確定しさへすれば直に願書を差出し猶予なく創立に着手する手筈なりと、此種の設立は現実に我商工業に利益を与へ我外国貿易を隆盛ならしむるの効能あること吾々の疑はざる所なれは、一日も早く其創立に着手し一刻も早く其設立を見たきものなり


中外物価新報 第一六八五号 明治二〇年一一月一二日 商品陳列所(DK150008k-0009)
第15巻 p.138 ページ画像

中外物価新報  第一六八五号 明治二〇年一一月一二日
    商品陳列所
東京商工会及び貿易協会の幹事諸氏が発起となり、我全国の商工業者中より凡そ二三百名ばかり会員を募りて創立せんとの企ある商品陳列所の創立願書・規約・事務章程等の草案は已に出来したるを以て、此の程其筋の内閲に供したる処、右は外務・農商務・文部の三省へ関係あることなるに、目下文部大臣には地方巡回中旁々以て未だ何分の沙汰あらざる由なれど、文部大臣にも帰京あり首尾能く打合せを済したる上は、再び之を会議に付したる上公然其筋へ差出し認可を得る筈なりと、尤も官より補助の仕方如何に由りては折角の計画もいかゞ相成るべきや予め期し難けれど、発起人諸氏には商品陳列所の出品は之を内外品に分ち、外国品は凡て同所より買入るゝも、内国品に至りては凡て出品人の依托に由り之を陳列するといふ仕組になす見込なりと聞けり



〔参考〕日本貿易協会五十年史(同協会編) 第二〇―二二頁 昭和一一年一月刊(DK150008k-0010)
第15巻 p.138-139 ページ画像

日本貿易協会五十年史(同協会編) 第二〇―二二頁 昭和一一年一月刊
    第四章 創業時代の活躍
○上略
 之より先き、京橋区出雲橋の東畔に起工した協会 ○日本貿易協会 の新館は明治二十年七月一日に首尾能く竣工するに至つた。新館に移転すると同時に貿易倶楽部なるものを備へ専ら貿易上に関する集会談論に使用する外、玉突台其他各種の娯楽機関となしたが、尚ほ当時の重要輸出品たる生糸及び茶に就ては、特に蚕糸会並に茶業会を設けた外、雑貨類の研究団体をも特設し、之等の団体には何れも一室を提供して熱心
 - 第15巻 p.139 -ページ画像 
に研究を促したのであつた。如上の関係から我が協会は日を追ふて会員を増加したので、新館に移ると同時に幹事五名を増員する事となり会員川村伝兵衛《(マヽ)》・今村清之助・朝吹英二・色川誠一・村田一郎の五氏を推薦してそれぞれ職務を嘱托したので、諸般の事務は著しく整頓し各種の事業は遽かに面目を改むるに至つたのである。
かくて明治二十一年一月となると、渋沢栄一・川村伝兵衛・今村清之助の三氏が幹事に加はつた外、新たに会員となられた人々には
  手嶋鍈次郎  吉田銀三郎    杉浦久太
  淵上理作   福島与助     恵藤卯三郎
  小林義雄   横山孫一郎    森村豊
  安田善次郎  喜谷市郎右衛門  子安峻
  村井保固   梅浦精一     池田浩平
  福間粂吉   木村精幽     大倉孫兵衛
  三野村利助  山西春根     高嶋小金治
  手塚亀之助  諫早酋三郎    星野長太郎
  鈴木善恭   新井領一郎    丸尾文六
  恩田鉄之助  福島良介     下村万太郎
  辻久米吉   高梨千代松    阪田春雄
  綿野吉二   伊集院兼常    山東直砥
  田中平八   奥三郎兵衛    矢嶋正兵衛
  林謙吉郎   林麒一郎
 新旧合せて七十四名の会員を有し、しかも各会員は何れも協会創立の使命を重んじて貿易の伸展に余念のない熱心家ばかりであるから、協会の活動は日を追ふて大に見るべきものがあつた。即ち協会では機関雑誌として明治二十一年二月十五日に『貿易協会雑誌』第一号を発行したが、雑誌の内容は、前記した生糸・製茶の団体が輸出の状況を調査し、それを資料として編輯したものであるから、一般雑誌類とは趣を異にするものゝ、斯業の発達に貢献する処は決して少なくなかつたのである。
 本協会はかく日を追ふて盛大になつて来たので、入会を希望する者も自然増加して来たのであるが、協会では原則として厳選主義をモツトーとし、徒らに会員の増加を求めなかつたから、入会を希望した名士でも容易に入会し得ない実情にあつた。而して協会では当時既に毎月必ず例会を開き、新たに外国から帰朝された公使・領事などを招待して海外事情の見聞に資し、互に研究を積み、応答を重ね、その重要なるものは必ず総会の決議を経て後、協会の意見とし発表するのを常とした。