デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治34年3月21日（1901年）

第十五回帝国議会ニ於テ当会社ニ対スル補給利子支出予算案ノ審議セラルヽニ際シ、栄一、貴衆両院議員ノ間ニ奔走シ該案ノ通過ヲ図ル。同案ハ是日衆議院、二十三日貴族院ニ於テ可決セラル。

渋沢栄一　日記　明治三四年　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
三月十八日　晴
午前中島久万吉来、京釜鉄道ノ事ヲ談ス、尾崎三良氏来ル、同ク鉄道ノ事ニ関シ役員組織ノ事ヲ談ス。○下略
三月十九日　晴
○上略　竹内綱・日下義雄二氏来リ京釜鉄道会社ノ事ヲ協議ス○下略
 - 第16巻 p.439 -ページ画像 
三月二十日　晴
午前二三ノ来人ニ接ス、十時貴族院ニ抵リ、追加予算案通過ノ事ニ尽力ス、衆議院委員長栗原亮一氏ニ面会シテ、本案至急議決セラレン事ヲ依頼シ、更ニ貴院ノ諸氏ニ依頼ス○下略
　　○中略。
三月二十二日　曇
午前八時半近衛貴族院議長ヲ其官舎ニ訪ヒ、京釜鉄道ニ関スル追加予算案本日決議セラレン事ヲ依頼シ、且精糖戻税法案ノ事ヲ依頼ス、十時貴族院ニ抵リ、右議案決定ノ事ヲ尽力ス○下略
三月二十三日　曇
○上略　午前十一時貴族院ニ抵リ、頃日来奔走心配スル処ノ京釜鉄道ニ関スル追加予算通過ノ事ヲ尽力ス、原逓信大臣・坂谷芳郎《（阪谷芳郎）》、貴族院議員数名ニ面会シテ懇切ニ依頼ス○下略
　　○中略。
三月廿五日　晴
○上略　十時京釜鉄道事務所ニ至リ、尾崎・竹内・日下・大三輪諸氏ト会社成立ニ関スル要項ヲ協議シ、韓国駐在専務者ノ事ヲ内談ス○下略

築京釜鉄道記　竹内綱手記　　　　　　　　　　（竹内広氏所蔵）
（明治三十四年《同年》）三月十八日衆議院《（二十一日）》ニ於テ、同廿三日貴族院ニ於テ本会社補助ニ関スル予算案可決セラル
委員等ハ本会社ノ補助ニ関スル予算案ニ就キ貴衆両院議員ニ就キ賛同ヲ求メ、異議ナク通過スヘキハ必然ナリシモ、政府ハ事情アツテ議案ノ提出ヲ遷延シ二月末ニ至ルモ猶衆議院ニ提出セラレス、三月八日ヲ以テ衆議院ニ提出サレタルモ、北海道十年計画予算案ト連繋サレタルヲ以テ、北海道案ノ委員会議決ニ至ラ《（サ脱）》ルガ為メ遅延シ、漸ク十八日ニ至リ始メテ本社ノ補助予算案議決シ直ニ貴族院ニ廻付セラレタルモ、閉院間際ニテ多数ノ議案輻輳シタルカ為メ本案ノ議決ハ予期シ難シ、而シテ昨年ヨリ株式ヲ募集シ六月ヲ期シ会社ヲ創立（総会）セントス若シ本案ニシテ此議会ノ議決ヲ経サランカ猶会社ノ創立ハ空シク一ケ年ヲ経サルヘカラス、且ツ韓国政府トノ条約ハ鉄道ノ起工本年九月八日ヲ過クレハ条約ハ無効タラントス、委員等ノ本案ニ対スル苦慮ハ実ニ言フ可カラサルモノアリ（然ルニ如此ニシテ幸ニ本案ノ通過ヲ見ルニ至リシハ独本会社ノ幸ノミナラス国家ノ為メ賀スヘキナリ）

官報　　号外　明治三四年三月二一日
　　　　○第十五回帝国議会衆議院議事速記録第十六号
　　　　　　明治三十四年三月二十日（水曜日）午後一時九分開議
　　　　明治三十四年度歳入歳出総予算追加
　　　　　　（栗原亮一君演壇ニ登ル）
○栗原亮一君（六十二番）マダ日程ガ残ツテ居リマシテ、日程ノ変更ヲ求ムルハ御気ノ毒デアリマスガ、何分期日切迫シテ重要ナル追加予算ガ残ツテ居ツテ、唯今ヤツト委員総会ヲ結了シタ訳デアリマスカラ其ノ要領ダケヲ報告致シテ置キマス、此三十四年度ノ追加予算
 - 第16巻 p.440 -ページ画像 
ハ北海道経営或ハ実業教育費ノ増加、又日本海ノ補助、其他京釜鉄道ノ補助、是等ハ誠ニ重要ナル問題デアツテ、此提出ハ余程前デアリマシタガ、色々ナ法律案ノ関係ガアツテ、此歳入経常部ニアリマス所ノ印紙収入ナルモノモ、印紙税法案ノ運命カ定マラズシテ、其他実業教育ノ方ハ貴族院ノ方ニ法律案ガ回ツテ居リマシタガ可決ニナラズ○中略又此京釜鉄道ノ補助費ハ本年ノ年期ヲ過ルナラバ此権利ヲ失フ位ノ誠ニ危機切迫ノ場合デアリマシテ、是非本議会デ通過シナケレバ成立セントスル会社モ崩レルト云フ訳デアリマスカラ、是モ必要ノモノト認メテ協賛スルト云フコトニ決定シタノデアリマス○中略極要略ダケヲ御報告申上ゲテ置キマス
　　○前掲「築京釜鉄道記」ガ利子補給予算ノ衆議院可決ヲ三月十八日トセルハ誤ナリ。右ノ予算ヲ含ム明治三十四年度歳入歳出総予算追加案ヲ可決セル衆議院及ビ貴族院ノ議事ニツイテハ、官報（号外明治三四年三月二二日）第十五回帝国議会衆議院議事速記録第一七号及ビ官報（号外明治三四年三月二四日）第十五回帝国議会貴族院議事速記録第一七号参照。