デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.2.19

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

7章 経済団体及ビ民間諸会
1節 商業会議所
2款 東京商工会
■綱文

第18巻 p.323-359(DK180033k) ページ画像

明治18年8月7日(1885年)

是日栄一当会会頭トシテ、先ニ農商務卿西郷従道ヨリ諮問セラレタル倉庫条例ノ儀ニ付キ復申案ヲ進達シ、併テ建案ニヨル貸倉営業ノコトヲ建議ス。


■資料

渋沢栄一書翰 萩原源太郎宛 (明治一七年)九月一七日(DK180033k-0001)
第18巻 p.323 ページ画像

渋沢栄一書翰  萩原源太郎宛 (明治一七年)九月一七日  (萩原英一氏所蔵)
倉庫会社条例之義ニ付浄書類御遣し被下落手仕候、御手数万謝之至ニ候、右原稿ハ手許ニ控置度候間御写取之上御返し可被下候、且日附ハ今月今日、名宛ハ品川農商務大輔ヘ内呈せし義ニ候為念申上候
○中略
  九月十七日               渋沢栄一
    萩原源太郎様


東京商工会議事要件録 第八号・第一三―三五頁 明治一八年一月二七日刊(DK180033k-0002)
第18巻 p.323-328 ページ画像

東京商工会議事要件録  第八号・第一三―三五頁 明治一八年一月二七日刊



 第四定式会
 第八臨時会
 (明治十七年十二月二十五日午後五時三十分開)





    会員出席スル者 ○四十五名
○上略
会長(渋沢栄一)ハ是ヨリ此度新ニ農商務卿閣下ヨリ下附セラレタル倉庫条例諮問案ヲ討議スベキ旨ヲ告ゲ、先ヅ書記ヲシテ議案ヲ朗読セシメ、且ツ不審ノ廉アラバ説明委員ニ質議スベキ旨ヲ告グ
                    東京商工会
別紙問目書ノ件々其会ヘ及諮問候条、遂審議報告可致此旨相達候事
  明治十七年十一月十三日
                 農商務卿西郷従道
(別紙)
 - 第18巻 p.324 -ページ画像 
    諮問案
 貨物ノ集散頻繁ナル地方ニ於テハ商品保管倉庫ノ商業上ニ必要ナルハ固ヨリ論スルヲ待タス、故ニ東京大坂ヲ始メ其他取引稍頻繁ナル地方ニ於テハ漸ク之ヲ創設スル者アルニ至レリ、然ルニ現今設立セル者ハ組織未ダ完全ナラザルガ故ニ其便益亦未ダ商業上ニ顕著タラザルハ寔ニ遺憾ト云フベシ、依テ今之レニ関スル条例ヲ制定シテ以テ之レヲ保護セントスルニ付緊要ノ件々ヲ諮問スル事左ノ如シ
第一 商品保管倉庫ノ営業ハ一個人ニ許シテ可ナル者カ、又ハ資本ヲ以テ成立ツ会社ニノミ許スベキモノカ、若シ会社ニノミ許スベキモノトセバ其資本高ハ創業者ノ自定ニ任スベキヤ
第二 該営業ヲ一個人ニ許ストキハ其営業保証ハ倉庫ニ属スル地所建物等ニテ然ルヘキヤ、又ハ相当ノ保証金ヲ地方庁ニ預ケシムヘキカ
  該営業ヲ会社ニノミ許ストセハ其営業保証ノ方法如何
第三 営業用倉庫ハ石造・煉化造・土造等ニ限ルト否ラサルトノ利害如何
第四 預リ貨物ノ種類ハ営業者ノ自定ニ任スベキヤ、将タ条例ヲ以テ之ヲ規正スルヲ利アリトスルヤ
第五 預リ証券ハ売買・抵当ノ二種ニ分チ発行セシムルヲ可トスルカ又ハ一枚ノ証券ヲ以テ此二種ニ通用セシムルヲ可トスルカ
第六 倉敷其他ノ手数料等ノ割合ハ総テ営業者ノ自定ニ任スルヲ以テ便ナリトスルヤ
第七 預リ貨物ノ抵当流レ若クハ期限後庫出シヲ為サヾルトキハ、営業者ニ於テ公売ノ処分ヲ施シ、而シテ倉敷及ビ手数料其他公売ニ関スル諸入費等ハ、他ノ債主ニ先チ之レヲ領収スルノ特権ヲ与フルノ利害如何
第八 預リ貨物ノ品質ニ依リ予メ欠減ノ程度ヲ定ムルノ得失如何
第九 預リ貨物ノ価格ハ営業者ノ評定ニ任スルヲ以テ便ナリトスルヤ
第十 預リ証券ノ授受ノ際成ルヘク現品ヲ点検セシムルヲ至当トナスヤ
第十一 営業者ニ於テ空証券又ハ事実ヲ詐リタル証券ヲ発行シ、其他之レニ類似ノ行為アルニ於テハ其之ヲ処分スルノ方法如何
第十二 主務ノ官庁ヨリ臨時保管貨物ノ撿査ヲ為スノ得失及其方法如何
 前項ノ外重要ト認ムル件アラバ成ルベク精密ニ討議スヘシ
五十九番(益田孝)曰ク、本案第五項中預証券ハ売買抵当ノ二種ニ分チ云々トアリ、斯ル証券ハ従来本邦ニ於テ使用シタル慣例アラザルニ付、願ハクバ其用方等ニ就テ詳述セラレタシ
番外一番(鶴田貫次郎)曰ク、抑モ預証券ハ倉庫営業者ガ保管貨物ニ向テ発スル所ニシテ、若シ預托者ノ都合ニヨリ其儘之ヲ他ヘ売ラントスルトキハ現品ヲ授受スルノ手数ヲ要セズシテ直チニ此証券ヲ以テ之ガ所有権ヲ転移スルヲ得ルハ勿論ナリト雖トモ、時宜ニヨリテハ預托者ニ於テ其儘之ヲ抵当ニ供セント欲スル事アリ、是レ預証券ヲシテ売買・抵当二種ノ利用ヲ達セシムルヲ以テ最モ便
 - 第18巻 p.325 -ページ画像 
利トスル所以ナリ、而シテ今此第五項ニ於テ問フ所ノ要旨ハ二枚ヲ発シテ各一種ノ利用ヲ帯バシムルヲ可トスルカ将タ一枚ヲ発シテ二種ノ利用ヲ兼ネシムルヲ可トスルカト云フニ在リ
十六番(益田克徳)曰ク、本案第一項ニ商品保管倉庫ノ営業ハ一個人ニ許シテ可ナルモノカ、又ハ資本ヲ以テ成立ツ会社ニノミ許スベキモノカトアリ、余ノ見ル所ニテハ一個人ト云ヒ会社ト云ヒ別段其間ニ区別ヲ要セザルモノヽ如シ、蓋シ本項ノ精神ヲ案ズルニ或ハ一個人ニ許ストキハ弊害アリトノ趣意ヲ含ムモノナランカ、若シ欧米諸国ニ於テ如此実例アラバ願ハクバ之ヲ教示セラレタシ
番外一番(鶴田貫次郎)曰ク、一個人ト云ヒ会社ト云ヒ其他人ニ対スル責任ノ如キハ彼此固ヨリ軽重ナシト雖トモ其営業ノ規模ニ至リテハ其間自ラ大小ノ差アリ、抑モ倉庫営業ノ如キハ多分ノ資本ヲ要スルヲ以テ一個人ノ之ヲ経営スル事能ハザルノ事情ナシトセズ現ニ仏国法制官ノ中ニテハ斯ノ如キ営業ハ会社ニ非ザレバ之ヲ営ムベカラズトノ説ヲ持スル者アリト聞ケリ、蓋シ商品ノ種類ヲ限リテ保管スルモノヽ如キハ、一個人ニテ之ヲ営ミ得ベシト雖トモ夫ノ開港場ニ在リテ総テ輸入品ヲ一手ニ保管スルモノヽ如キハ、到底合本会社ニ非ザレバ之ヲ営ム能ハザルナリ、故ニ本項諮問ノ趣意ハ斯ノ如キ営業ハ条例ヲ以テ会社ニ限リ之ヲ許シ一個人ニ許サヌ様ニシテハ如何ント云フノ精神ニ過ギザルナリ、尤本項ハ第四項ト密切ノ関係ヲ有スルガ故ニ各員予メ玆ニ注意セラレタシ
九十九番(浅野彦兵衛)曰ク、本案第七項ニ預リ貨物ノ抵当流レ若クハ期限後庫出シヲ為サヾル時ハ云々トアリ、此等ハ如何ナル場合ヲ云フカ
番外一番(鶴田貫次郎)曰ク、預托者ガ倉庫営業者ヨリ発スル所ノ証券ヲ抵当トシテ他ヨリ金員ヲ借入レ、期限ニ至リ之ヲ返償セザル時ニハ法律ニヨリテ之ヲ抵当流トスルカ、或ハ相当ノ約束又ハ会社ノ規則ニヨリテ之ヲ抵当流トスルノ場合アリ、又預托者ガ其商品ヲ倉庫ヘ預托シテ庫出シ期限ヲ過グルモ之ヲ庫出シセザルノ場合アリ、要スルニ本項ハ此等ノ場合ニ施スベキ処分法ヲ問フモノナリ
十一番(犬塚駒吉)曰ク第九項中価格トハ如何ン
番外一番(鶴田貫次郎)曰ク、価格ナル語ハ通常相場若クハ直打ト解スル事アレトモ、此ニ所謂価格トハ例ヘバ原価或ハ製産入費ト云フガ如ク、要スルニ営業者ガ保管商品ヲ失ヒ之ヲ弁償スルガ如キ場合ニ於テ能ク其損失ノ程度ヲ定ムルニ足ルベキ標準ヲ云フナリ
五十九番(益田孝)曰ク、本案第一・第二ノ両項ハ共ニ営業資本ニ関スルモノナリ、抑モ本案ノ精神ハ営業者ノ責任ヲ有限トスルノ意ナルカ、将タ無限トスルノ意ナルカ、是ハ文面外ニ渉ルト雖トモ敢テ説明ヲ乞フ
番外一番(鶴田貫次郎)曰ク、責任ニ就テハ目下政府ニ於テ会社法編纂中ニ付、立案者ニ於テハ未ダ何レトモ之ヲ指定シタル事アラズ但シ本案第二項中ニ在ル営業保証ノ事タル暗ニ有限ノ意ヲ包含スルヲ見レバ暫ク其責任ハ有限ト見做スモ不可ナカラン
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九十八番(吉田幸作)曰ク、営業者保管商品ヲ失ヒ之ヲ弁償スル場合ニ於テ、若シ甚シキ相場ノ高低アラバ何ヲ以テ其標準ト為スヤ
会長(渋沢栄一)曰ク、此問ハ敢テ説明者ノ答弁ヲ煩ハス迄モナシ、抑モ営業者ガ保管ノ商品ヲ失ヒ之ヲ弁償スル場合ノ如キハ、恰モ海上保険会社ガ難破ノ商品ヲ弁償スルニ当リ予定ノ価格ニ因ルト一般ニシテ、毫モ時価ノ高低ニ関スルモノニ非ザルナリ
九十八番(吉田幸作)曰ク、第七項中ニ在ル保管商品ノ抵当流トナリタル場合ノ如キ、若シ時価低落ノ為メ元利ヲ償フ事能ハザル事アラバ其損失ハ如何スルヤ
会長(渋沢栄一)曰ク、時価高低ヨリ生ズル損益ハ其物品ヲ抵当ニ取リタル債主、又ハ商品所有者ニ関係スベキモノニシテ倉庫営業者ニ於テハ毫モ之ガ痛痒ヲ感ゼザルナリ
於是会長(渋沢栄一)ハ質議ヤヽ尽キタルヲ以テ各員ニ向ヒ、是ヨリ各々意見ヲ述ブベキ旨ヲ告ゲシニ四十三番(梅浦精一)ヨリ本案ハ商業社会ニ至大ノ関係ヲ有スルガ故ニ直チニ之ヲ決スルヲ好マズ依テ先ヅ会長ヨリ委員数名ヲ指名シテ逐条審議セシメ、然ル後猶充分各員ノ熟慮ヲ経テ之ヲ議決スベシトノ議ヲ発シ五十九番(益田孝)九十七番(笠井庄兵衛)四十番(隅山尚徳)九十九番(浅野彦兵衛)等ノ賛成アリシガ委員ノ人員ヲ議スルニ当リ、四十三番(梅浦精一)六十三番(柿沼谷蔵)八番(大塚藤平)ハ七名ニテ可ナリト云ヒ、四十番(隅山尚徳)ハ少クモ十二名ヲ撰挙スベシト云ヒ、共ニ多少ノ賛成アリシニ付、会長(渋沢栄一)ハ先ヅ之ヲ起立ニ問ヒシニ七名ヲ可トスル者十九人、十二名ヲ可トスル者二十四人、即チ多数ニヨリ委員ハ十二名ヲ撰挙スル事ト定メ追テ会長ヨリ之ヲ指名スルニ決ス
  (会長ハ其後委員トシテ左ノ十二名ヲ指名シタリ依テ参考ノ為メ玆ニ附記ス)
               五番       前川忠七
              十六番       益田克徳
              四十番       隅山尚徳
             四十三番       梅津精一
             四十五番       渡辺治右衛門
             五十八番《(マヽ)》  渋沢喜作
             五十九番《(マヽ)》  川原英次郎
             六十三番       柿沼谷蔵
             七十四番       鳥海清左衛門
              八十番       小室信夫
             八十二番       山中隣之助
             八十四番       荘田平五郎
会長(渋沢栄一)ハ本案倉庫営業ノ義ニ関シ別ニ意見ヲ有スル旨ヲ以テ副会頭(益田孝)ニ其席ヲ譲リ、更ニ会員席(八十一番)ニ就キ其意見ヲ陳述ス、即チ左ノ如シ
八十一番(渋沢栄一)曰ク、抑モ倉庫営業ハ欧米諸国ノ海関ニハ各々之ニ附属スル倉庫会社有テ恰モ海関上ノ一制規ニ属スル者ノ如シ而シテ此会社ハ一般商賈ノ依頼ニ応ジテ輸入品ヲ保管シ、海関ニ
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於テハ此倉庫ヘ預托スル所ノ輸入品ニシテ内地ノ消費ニ供スルモノニハ之ニ輸入税ヲ課スルト雖トモ、若シ其儘之ヲ再輸出スル者ニハ此会社ノ保管ヲ信用シテ別段輸入税ヲ徴収セザル者トス、又預托者ニ於テ其商品ヲ預托ノ儘売買セントスル時ハ只預証券ニ裏書シテ容易ニ其所有権ヲ移転スルヲ得ルハ勿論都合ニ因テハ之ヲ抵当トシテ金融ヲ達スルモ亦預托者ノ自由ナル所トス、又此倉庫ニ附着シテ公売所ナル者アリ、場内ニハ見本品ヲ陳列シ一々現品ヲ点撿スルノ労ヲ要セズシテ直チニ其預托商品ヲ売買スルヲ得、且ツ其預托商品ニシテ偶々抵当流トナルガ如キ場合ニハ夫々定規有テ公売所ニ於テ直チニ之ヲ糶売スルヲ得ル等、其融通ヲ助ケ取引ヲ便スル事実ニ不尠、是欧米諸国ニ於テ今日倉庫営業ノ甚ダ盛ナル所以ナリ、然ルニ従来我国ノ倉庫ニハ関税未済ノ商品ヲ保管スルガ如キ特例ナキハ勿論、其倉庫ヘ預托スル商品ノ如キモ概ネ荒荷ト称シ品位雑駁ナルガ上ニ荷造極テ粗末ナルモノ多キガ故ニ公売所ヲ設ケ見本ヲ以テ売買スル等ノ事容易ニ為シ能ハサルヘシ且ツ其倉庫ハ荒荷ヲ貯蔵スルガ故ニ之ガ構造モ区々ニシテ随テ撿束法モ充分ナラズ、殊ニ我国ニ於テハ貸借上抵当品ノ如キハ仮令返済ノ期日ヲ失スルモ、改メテ所有者ノ承諾ヲ得ザレバ之ヲ処分シ難キ等種々ノ不便アルガ為メ倉庫営業ノ発育実ニ甚ダ微弱ヲ極メ現ニ東京・大阪等ニ於テハ近頃倉庫会社ヲ設立シタルモノアレトモ在来ノ慣習ニ制セラレテ其真正ノ効用ヲ発顕スル事能ハズ、山形県下酒田港ノ如キ一旦其筋ヨリ倉庫会社設立ノ許可ヲ得シモ営業上確実ノ目途ナキノ故ニヤ未タ開業ノ運ニ至ラザルモノアリト聞ケリ、之ヲ要スルニ我国ノ商売ハ概シテ現金取引ニシテ手形ノ必要甚ダ少ク、随テ倉庫会社ヘ預托スル商品ノ如キ保管ノ儘之ヲ数人ノ間ニ転売シタルノ例ハ未ダ嘗テ聞カザル所ニシテ、只今日迄幸ニ倉庫会社ノ成立ヲ保維シタルモノハ纔ニ其預証券ヲ仕払保証トシテ銀行ヨリ金融ヲ得ルノ一途アルニ因ルノミ、然ルニ元来当局者ニ於テハ預托商品ニ対シテ約束手形ヲ発スル習慣ノ如キハ全ク真正ナル手形ノ発育ヲ助長スルノ効ナシトテ寧ロ此習慣ヲ制止セラレントスルノ情況アルニ付、従来倉庫会社ガ纔ニ頼テ以テ其命脈ヲ保チタル一条ノ活路モ今ヤ漸ク将ニ杜絶セラレントスルノ運ニ際セリ、是実ニ我国倉庫営業ノ今日迄萎靡振ハザル所以ニシテ之ヲ彼ノ欧米諸国ノ倉庫営業ニ比スルニ其効用ノ大小豈ニ霄壌ノミナランヤ、然ラバ今日我国ニ於テハ全ク倉庫営業ヲ要セザルヤト云フニ余ハ断乎トシテ其然ラザルヲ信ズルナリ、夫レ倉庫営業ノ融通ヲ助ケ取引ヲ便スルノ一機関タルハ欧米諸国ノ現状ニ照シテモ明カナル所ニシテ、若シ我国ノ取引ヲシテ永ク現金売買ナラシメバ其効用格別顕著ナラザルニ似タリト雖トモ、若シ一朝商業進歩シテ約束売買ノ慣習発生スルニ至ラバ商業社会ニ於テ益々其必要ヲ感ズルハ必然ノ勢ニシテ、予メ之ガ需用ニ応ズルノ準備ヲ為スハ亦今日ノ急務ナリトス、豈今日ニ於テ其発育ヲ忽ニスベケンヤ、蓋シ政府ニ於テ一旦条例ヲ制定シテ倉庫営業ヲ保護セラルヽニ至ラバ幾分カ之ガ発育ノ効ナキニアラザルベシト雖ト
 - 第18巻 p.328 -ページ画像 
モ、抑モ我国倉庫営業ノ衰況ニ陥リタルノ実勢前陳ノ如クナルヲ見レバ、此際仮令尋常ノ条例ヲ以テ之ヲ保護セラルヽモ余ハ到底完全ノ結果ヲ前途ニ期シ難キヲ恐ルヽナリ、故ニ余ハ今本会ニ於テ此諮問案ニ答申スルニ当リ更ニ一歩ヲ進メ適当ノ方法ヲ以テ特ニ之ヲ保護セラレタキ旨ヲ併テ建議セン事ヲ望ム、而シテ其方法ノ細目ニ至リテハ未ダ熟案セズト雖トモ先ヅ仮ニ東京・大坂ヲ以テ商業世界ノ大二区ト定メ、両大区ニ属スル地方ニ就テ倉庫営業必要ノ地ヲ挙グレバ其東京ニ属スルモノハ四日市・横浜・石巻・箱館・秋田・酒田・新潟ノ数所ニシテ、大坂ニ属スルモノハ西京神戸・大津・敦賀・伏木・赤馬関・長崎等ノ数所トス、故ニ右等ノ各地ヲ以テ暫ク将来倉庫営業ヲ発生セシムベキ必要ノ場所ト定メ其中仮リニ東京・大坂ニ於テ各々倉庫会社ノ本店ヲ置クモノトシ他ノ要地ヘハ便宜支店ヲ置テ之ヲ総括セシメ而シテ其会社ノ資本金ハ両地各凡金百万円ト定メ先ヅ其半額丈ヲ募集スルモノトシ其募集金ノ十分四ヲ以テ倉庫・家屋等ノ営業資本ニ供シ、残十分ノ六ハ公債証書ニ換ヘ営業保証トシテ政府ヘ上納セシメ、政府ニ於テハ日本鉄道会社ヲ保護セラルヽノ例ニ傚ヒ当分ノ中該会社ノ営業純益ニ対シ年八分位迄ヲ保証セラレン事ヲ要ス、此保護法ニ拠レバ若シ会社ノ純益ヲ仮ニ六分トスル時ハ仮令全株金百万円ヲ募集シタル場合ニ於テモ政府実際ノ保証額ハ一会社ニ付テ僅ニ二万円ニ過ギズ、又其純益ヲ五分ト仮定スルモ猶其保証額ハ三万円ヲ出デズシテ而モ甲地ニ便ニシテ乙地ニ便ナラザルガ如キ不偏ニ失スル事ナク彼此共ニ同一ノ利益ヲ享受シ得ベキナリ、若シ此建議ニシテ幸ニ採択セラルヽヲ得バ政府ハ年々僅小ノ支出ヲ以テ充分倉庫営業ノ発育ヲ助クルヲ得、遂ニ五七年ヲ出デズシテ我国ニ完全ナル倉庫営業ノ成立ヲ必期シ得ベキヲ信ズルナリ、願ハクバ各員熟考ノ上本議ニ賛成アラン事ヲ
於是会長(益田孝)ハ各員ニ向ヒ本議ノ可否ニ就キ充分意見ヲ述ブベキ旨ヲ告ゲタルニ、各員ノ中本議ノ要旨ニ就キ二三ノ問答アリタル後終ニ総員其大体ヲ賛成セシガ、猶衆議ノ上其方案ノ細目ハ発議者ニ於テ之ヲ調成シ一応委員ノ意見ヲモ問フタル上、更ニ次会ヲ期シテ之ヲ審議スベキニ決シタリ


東京商工会議事要件録 第九号・第一九―二八頁 明治一八年三月一四日刊(DK180033k-0003)
第18巻 p.328-329 ページ画像

東京商工会議事要件録  第九号・第一九―二八頁 明治一八年三月一四日刊
  第五定式会  (明治十八年二月廿七日午後四時三十分開会)
    会員出席スル者 ○七十一名
○上略
次ニ会長(渋沢栄一)ハ明治十七年下半季定式事務ノ成跡ヲ報告ス、即チ左ノ如シ
   自明治十七年七月至同十二月 半季間事務ノ報告
○中略
    政府ヨリ下問   三件
○中略
 - 第18巻 p.329 -ページ画像 
○倉庫営業ノ義ニ付農商務省ヨリ下問
  本件ハ明治十七年十一月十三日附ヲ以テ西郷農商務卿閣下ヨリノ御諮問ニ係リ、其要旨ハ今般其筋ニ於テ新ニ新例ヲ制定シテ倉庫営業ヲ保護セラルヽニ付参考ノ為メ緊要ノ件々ヲ審議シテ報答スベシト云フニ在リ、即チ十二月二十五日第八臨時会ニ於テ之ヲ審議シタルニ先ヅ委員ヲ撰ンデ之ヲ審案セシムベシト云フニ決シタルニ付、其後会長ハ十二名ノ委員ヲ指名セシガ年内既ニ余日ナキニ付、是ハ追テ明治十八年ニ至リ更ニ委員会ヲ開キテ審案セシムベキ見込ナリ ○中略
  又八十一番(渋沢栄一)ハ本案ヲ議スルニ当リ目下我国倉庫営業ノ振ハザル仮令条例ヲ以テ之ヲ保護スルモ猶充分其発育ヲ期シ難キノ事情アルニ付、本会ニ於テハ更ニ一歩ヲ進メ此諮問ニ答申スルニ当リ併テ政府ニ向ヒ適当ノ方法ヲ以テ特ニ之ガ発育ヲ保護セラレタキ旨ヲ建議スベシトノ説ヲ発セシガ、遂ニ満場ノ賛成ヲ得タルニ付其細目ノ方案ハ発議者ヲシテ之ヲ調査セシメ、追テ明治十八年ニ至リ更ニ次会ヲ期シテ之ヲ審議スベキ見込ナリ


渋沢栄一書翰 萩原源太郎宛 (明治一八年)四月二五日(DK180033k-0004)
第18巻 p.329 ページ画像

渋沢栄一書翰  萩原源太郎宛 (明治一八年)四月二五日   (萩原英一氏所蔵)
○上略
倉庫条例復申書案ハ一覧之上更ニ可申上候、右ニ付御下問案も御廻し被下正ニ落手仕候
○中略
  四月廿五日               渋沢栄一
    萩原様


東京商工会議事要件録 第一四号・第六七―八六頁 明治一八年八月二二日刊(DK180033k-0005)
第18巻 p.329-333 ページ画像

東京商工会議事要件録  第一四号・第六七―八六頁 明治一八年八月二二日刊
 ○参考部
    ○(倉庫条例ノ義ニ付復申書)
  昨十七年十一月十三日附ヲ以テ御諮問有之候倉庫条例ニ関スル件ニ就テハ其後数回ノ会議ヲ開キ篤ト其得失ヲ審議致候処、遂ニ別紙答案ノ通リ議決仕候、依テ別紙相添此段復申仕候也
                    東京商工会会頭
  明治十八年八月七日           渋沢栄一
    農商務卿 西郷従道殿
(別紙)
      問
第一 商品保管倉庫ノ営業ハ一個人ニ許シテ可ナルモノカ又ハ資本ヲ以テ成立ツ会社ニノミ許スベキモノカ、若シ会社ニノミ許スベキモノトセバ其資本高ハ創業者ノ自定ニ任スベキヤ
      答
商品保管倉庫ノ営業ハ資本ヲ以テ成立ツ会社ニノミ許シ、而シテ其資本高ハ創業者ノ自定ニ任セズ相当ニ御制限相成度奉存候
 商品保管倉庫ノ営業ハ預リ証券ヲ発行シテ貨物ヲ保管スルモノニシテ、其営業ノ取締向等真成合本ノ組織ヲ以テ成立ツ会社ニノミ許シ
 - 第18巻 p.330 -ページ画像 
候方至当ト奉存候、而シテ其営業ノ摸様ハ各地商売ノ繁閑ニヨリ伸縮ヲ要スル事勿論ナレバ、其資本ハ各地画一ノ御制限ニ無之少クトモ何万円ヲ限ルト申位ニ御定相成候方実際ノ便利可有之奉存候、蓋シ商品保管倉庫ノ営業ハ独リ倉庫建築等ノ為メノミナラズ其営業上信用ヲ博スル為メ特ニ相当ノ資本ヲ必須トスルモノニ付、若シ之ヲ創業者ノ自定ニ任シ候時ハ、或ハ僅小ノ資金ヲ以テ漫リニ不相応ノ事業ヲ発企シ、結局本業一般ノ信用ヲ毀損候様ノ事無之トモ難申、依テ其資本高ハ、此弊害ヲ防グニ足ルヲ度トシテ御制限相成度希望仕候
      問
第二 該営業ヲ一個人ニ許ストキハ其営業保証ハ倉庫ニ属スル地所建物ニテ然ルベキヤ、又ハ相当ノ保証金ヲ地方庁ニ預ケシムベキヤ、該営業ヲ会社ニノミ許ストセバ其営業保証ノ方法如何
      荅
既ニ商品保管倉庫ノ営業ヲ合本会社ニノミ許スト定ムル上ハ其営業保証ノ方法ハ凡ソ其会社株金高十分ノ四五迄ヲ払込ミ、倉庫建築等ノ費用ヲ除クノ外之レヲ公債証書ニ換ヘ地方庁ニ預托セシメ度、尤土地ノ情況ニヨリテハ特例ヲ以テ地券其他確実ナル不動産ヲ以テ公債証書ニ換フルヲ得セシメ度奉存候
 政府カ商品保管倉庫営業ノ信用ヲ保護セラルヽニハ営業保証ノ方法ヲ制定セラレン事最モ必要ナル所ニ御座候得共、従来各地ノ慣習ニヨリ其営業ノ情況ヲ同フセサルニ付其資本払込ノ割合ヲ凡十分ノ四五迄トシ、其中ニテ倉庫新築等ノ費用ヲ弁シ、他ハ悉ク営業ノ保証トシテ公債証書ニ換ヘ之ヲ地方庁ニ預托セシメ度、而シテ土地ノ模様ニヨリ公債証書ヲ買入レ難キ場合ニ於テハ特例ヲ以テ地券其他ノ不動産ニシテ、果シテ確実ナル市価ヲ保持シ得ベキモノハ之ヲ以テ公債証書ニ換フルヲ得セシムルノ便法御施設相成度希望仕候
      問
第三 営業用ノ倉庫ハ石造・煉瓦造・土造等ニ限ルト否ラザルトノ利害如何
      答
営業用ノ倉庫ニハ別段厳重ナル制限ヲ置カレズシテ只煉瓦造・石造又ハ土造等要スルニ火災盗難ヲ防ギ、商品ヲ保護スルニ足ルヘキモノハ総テ御許可相成度奉存候
 東京・大坂其他各開港場ノ如キ苟クモ商品出入ノ頻繁ナル土地ニ於テハ従来貸庫ナルモノ有之、此等ノ倉庫ハ所有者ガ各商賈ノ需要ニ応ジテ建設シタルモノニシテ、其構造或ハ米穀ノ貯蔵ニ適スルアリ或ハ生糸ノ貯蔵ニ適スルアリ、故ニ今条例ヲ遵奉シテ新ニ本業ヲ営マント欲スル者ハ此等ノ倉庫ヲ使用スル事必然ニ付、今遽ニ厳重ノ制限ヲ置カルヽ時ハ実際ノ不便不少ト想察仕候、依テ其建築ハ煉瓦造・石造又ハ土造ノ中営業者ノ撰ム所ニ任シ、要スルニ火災盗難ヲ防ギ商品ヲ保護スルニ足ルベキモノハ総テ御許可相成度希望仕候
      問
第四 預リ貨物ノ種類ハ営業者ノ自定ニ任スヘキヤ将タ条例ヲ以テ之
 - 第18巻 p.331 -ページ画像 
ヲ規正スルヲ利アリトスルヤ
      答
預リ貨物ノ種類ハ概ネ営業者ノ自定ニ任シ、只危険質・爆発質・腐蝕性物等ノ如キ他ノ商品ヲ害スヘキ物品等ニ限リ条例ヲ以テ厳重ニ御禁止相成度奉存候
 預リ貨物ノ種類ハ元来土地ニヨリテ大ニ異同有之、固ヨリ条例ヲ以テ規正スベカラザルモノニ付総テ営業者ノ自定ニ御放任相成度、而シテ本文ニ掲グル各品ノ如キハ共ニ他ノ商品ヲ損害スベキモノニ付只此等ニ限リ総テ条例ヲ以テ厳重ニ御禁止相成度希望仕候
      問
第五 預リ証券ハ売買・抵当ノ二種ニ分チ発行セシムルヲ可トスルカ又ハ一枚ノ証券ヲ以テ此二種ニ通用セシムルヲ可トスルカ
      答
預リ証券ハ目下ノ現況ニヨレバ一枚ヲ以テ売買・抵当ノ二種ニ通ゼシメ候方便利ト奉存候
 預リ証券ヲ売買・抵当ノ二種ニ分チテ発行セシムルハ甚ダ良制ニシテ在来其慣習アルノ土地ニアリテハ之ヲ実施スルニ最モ便利アリトス、是レ蓋シ欧米諸国ニ於テ此制度ノ盛ニ行ハルヽ所以ナラン、然ルニ従来我国ニ於テハ手形取引ノ発育甚ダ不充分ニシテ殊ニ今日倉庫ニ保管スル貨物ハ荒荷ト称スルモノ最モ多ク、其取引ハ概ネ実物ヲ撿査シテ後売買価格ヲ定ムルヲ常トシ、随テ其預リ証券ハ売買用ニ供スル場合甚タ稀ニシテ重ニ抵当用ノ一途ニ供スルニ過ギズ、左レバ今我国ニ於テ此制度ヲ実施スル時ハ貨主ニ於テハ甚タ便利アルガ如シト雖トモ、預リ証券ノ買主ハ更ニ之ヲ売却スルニ当リ故障アラン事ヲ恐レ(偶々其商品他ニ抵当タル時)保証券ヲ抵当ニ取リタル債主ハ負債主ノ返済ヲ誤リタル時面倒ヲ生ゼン事ヲ恐ルヽ(偶々其商品既ニ他人ノ所有ニ帰シタル時)等、要スルニ取引上種々ノ混雑ヲ来シ、仮令其ノ良制タルニモ拘ラズ却テ実際ノ不便ヲ生ズル事可有之奉存候、由是観之此制度ハ他年預リ証券ヲ売買用ニ供スルノ慣習起ルノ日ニ至ラバ其効能固ヨリ著明ナルベシト雖トモ、先ヅ目下ノ現況ニヨリテ之ヲ観ルニ一枚ヲ以テ売買・抵当ノ二種ニ通ゼシムルノ制度ハ却テ実際ニ適応セリト奉存候
      問
第六 倉敷其他ノ手数料等ノ割合ハ総テ営業者ノ自定ニ任スルヲ以テ便ナリトスルヤ
      荅
倉敷其他手数料等ノ割合ハ全ク営業者ノ自定ニ任シ候方最モ便利ナリト奉存候
 倉敷其他手数料ハ元来営業ノ費用ヲ標準トシテ算出シタルモノニシテ、恰モ物価ノ如ク法律ノ能ク制シ得ベキモノニ非ズ、而シテ各地商売ノ摸様ト慣習ノ如何トニヨリ其高低ノ度ヲ同フセザルモノアリ例ヘバ府下深川問屋ノ如キハ其収益ヲ倉敷料ニ期セズシテ専ラ口銭ニ求ムルノ慣習アルヲ以テ、其倉敷料ノ割合ハ口銭ニ比シテ自ラ低度ニアルノ情況アリ、故ニ其割合ハ全ク営業者ノ自定ニ任シ毫モ御
 - 第18巻 p.332 -ページ画像 
規正無之様仕度希望仕候
      問
第七 預リ貨物ノ抵当流レ若クハ期限後庫出シヲ為サザルトキハ営業者ニ於テ公売ノ処分ヲ施シ、而シテ倉敷及手数料其他公売ニ関スル諸入費等ハ他ノ債主ニ先タチ之ヲ領収スルノ特権ヲ与ルノ利害如何
      答
預リ貨物ノ抵当期限ヲ経過シ、若クハ預リ期限後庫出ヲ為サザル時ハ営業者ニ於テ公売ノ処分ヲ施シ、而シテ倉敷料及手数料其他公売ニ関スル諸入費等ハ、他ノ債主ニ先ダチ之ヲ領収スルノ特権ヲ与ヘ候事ハ最モ適当ノ御制度ト奉存候
 従来貸借上抵当品ヲ取リタル債主ハ負債主ガ返済ノ期日ヲ失スルモ其所有権猶負債主ニ属スルヲ以テ其承諾ヲ得ザレバ直チニ之ヲ処分シ難キ事アリ、故ニ負債主(預証券ノ名宛人)ガ返済ノ期日ニ臨ミ故意ニ失踪シテ時日ヲ遷引スルノ実例往々有之、此等ノ場合ニ於テ営業者ハ一時倉敷料及手数料ヲ収入スルノ途ヲ失シ、其困厄実ニ少カラス、又商品預托者ガ期限後其商品ヲ出庫セザル場合ニ於テモ営業者ハ其処分ニ苦ミ、其困厄亦少カラス、是営業者ニ本文ノ如キ特例ヲ与ヘラレン事ヲ最モ必要トスル所以ニ御座候、若シ果シテ此特例ヲ与ヘラルヽ時ハ益々本業ヲ安固ナラシムルヲ得ルハ勿論、債主(預証券ヲ抵当ニ取ル者)及負債主(預証券ノ名宛人)間ノ取引ヲ確実ナラシムルヲ得、結局商業上ノ便益ヲ進捗スル事少々ナラズト奉存候、依テ若シ此等ノ期限ヲ失スルモノ有之候時ハ先ヅ営業者ヲシテ必ズ相当ノ猶予日限ヲ与ヘシメ、而シテ此期限内ニ約束ヲ履行スル事能ハザル時ハ之ヲ公売セシメ候様仕度希望仕候
      問
第八 預リ貨物ノ品質ニ依リ予メ欠減ノ定度ヲ定ムルノ得失如何
      答
預リ貨物ニハ総テ欠減ノ程度ヲ定メザル方可然奉存候
 預リ貨物欠減ノ定度ハ其品質ノ精粗及在庫時間ノ長短等ニヨリ一様ナラザルハ勿論ノ義ニシテ、殊ニ時候ノ寒暄・土地ノ乾湿・貯蔵場所ノ良否等ニヨリテハ、啻ニ欠減ヲ見ザルノミナラズ、時ニ或ハ却テ其形体量目ニ増大ヲ致ス所ノ商品モ可有之ニ付、其欠減ノ定度ヲ定メン事ハ蓋シ実際ニ為シ能ハザル事ト奉存候、今仮リニ営業者ニ於テ予メ之ヲ定メ、彼ノ米商会所ノ格附ノ如ク其御筋ノ御認可ヲ受クルモノトスルモ、若シ商品預托者ニ於テ不便ヲ訴フル時ハ此定度ハ全ク無効ニ帰セザルヲ得ズ、依テ欠減ノ定度ハ予メ之ヲ定メズシテ各地従来ノ慣行ニヨリ営業者及商品預托者相対ノ契約ニ御放任相成候ヨリ外ニ他策無之ト奉存候
      問
第九 預リ貨物ノ価格ハ営業者ノ評定ニ任スルヲ以テ便ナリトスルヤ
      答
預リ貨物ハ寧ロ其価格ヲ定メシメザル方却テ実際ニ便利ナリト奉存候
 抑モ預貨物ノ価格ヲ定メシムルハ該貨物損失弁償ノ時ニ当リ営業者及商品預托者ノ間ニ無益ノ紛議ヲ生セシメサルカ為ナルヘシ、然レ
 - 第18巻 p.333 -ページ画像 
トモ既ニ他日ノ標準タラシメントセハ当初之レヲ定ムルニ当リテ双方ノ紛議ナキヲ保セス、依テ預貨物ハ総テ其価格ヲ定メシメズシテ其弁償法ニ関シテハ兼テ営業者及商品預托者ノ間ニ適宜ノ約束ヲ結バシメ、若シ営業者ガ該貨物ヲ失フ場合ニ於テハ此約束ニヨリテ弁償セシメ候方却テ実際ニ便利ナリト奉存候
      問
第十 預リ証券ノ授受ノ際成ルベク現品ヲ点撿セシムルヲ至当トナスヤ
      答
預リ証券授受ノ際ハ該証券受取人ノ望ニヨリ随意ニ其現品ヲ点撿セシメ候方至当ト奉存候
 預リ証券授受ノ際必ス現品ヲ点撿セシムルモノトスルハ大ニ取引上ノ手数ヲ要シ候得共、預リ貨物ノ中ニハ品位極メテ雑駁ニシテ全ク券面ノミニ依リテ其品質ヲ定メ難キモノ不少ニ付、預リ証券授受ノ際該証券受取人ノ望ニヨリテハ随意ニ現品ヲ点撿セシムルモノト致候方至当ト奉存候
      問
第十一 営業者ニ於テ空証券又ハ事実ヲ詐リタル証券ヲ発行シ、其他之ニ類似ノ行為アルニ於テハ其之ヲ処分スルノ方法如何
      答
営業者ニ於テ空証券又ハ事実ヲ詐リタル証券ヲ発行シ、其他之ニ類似ノ行為アルニ於テハ刑法ヲ以テ御処分可相成ハ勿論、猶行政上特別ノ御処分ヲモ必要ト奉存候
 営業者若シ空証券又ハ事実ヲ詐リタル証券ヲ発行スルガ如キ行為アルニ於テハ、本業一般ノ信用ヲ毀損シ取引上不容易禍害ヲ来スヘキニ付、此場合ニ於テハ刑法ノ正条ヲ以テ厳重ニ処分セラレ、且ツ被害者ヲシテ其損害ヲ要償スル事ヲ得セシムヘキハ勿論猶其犯状ノ摸様ニヨリテハ営業ヲ停止シ、若クハ禁止スル等行政上別段ノ御処分ヲモ必要ト奉存候
      問
第十二 主務ノ官庁ヨリ臨時保管貨物ノ撿査ヲ為スノ得失及其方法如何
      答
主務ノ官庁ニ於テ臨時保管貨物ノ撿査ヲセラルヽハ本業ヲ保護スル為メ必要ノ御制度ト奉存候ヘドモ、其撿査ハ可成取引上ニ妨ゲナキ時間ヲ以テセラレ度奉存候
 主務ノ官庁ヨリ臨時掛官ヲ派シテ保管貨物ヲ撿査セラルヽハ本業ノ信用ヲ保護セラルヽ為メ必要ノ御制度ト奉存候得ドモ、本業ハ常ニ多数ノ貨物ヲ保管シ取引ノ都合ニヨリテハ特ニ其出入急速ヲ要スル事有之ニ付、苟クモ其撿査ノ方法宜ヲ得ザル時ハ取引上ノ妨害実ニ不少、仍テ例ヘバ米穀ノ如キ雨天ニハ其取引最モ少ク、生糸ノ如キ日曜日ニハ其取引甚タ少キ等ノ事実有之候ニ付、此辺ニ充分御注意ノ上可成取引上ニ妨ゲナキ時間ヲ撰ンデ御撿査相成候様御制定有之度希望仕候
 - 第18巻 p.334 -ページ画像 


東京商工会議事要件録 第一四号・第八六―九八頁 明治一八年八月二二日刊(DK180033k-0006)
第18巻 p.334-337 ページ画像

東京商工会議事要件録  第一四号・第八六―九八頁 明治一八年八月二二日刊
 ○参考部
    ○貸倉営業ノ義ニ付建議
凡ソ貨物ノ集散頻繁ナル地方ニ於テ貸倉営業ノ必要ナルハ今更ニ申上候迄モ無之義ニシテ、我国ニ於テモ商業稍盛ナル地ニ於テハ必ズ其出入品ヲ貯蔵スベキ倉庫有之候得共、未ダ之ガ保管証書ヲ発付シテ其預託品ノ安全鞏固ナルヲ保証スルヲ以テ専業トスル者無之、只商賈各自所有ノ倉庫ヲ以テ僅ニ其商品ヲ積入ルヽノ便ニ供スルニ過ギズ、加之其方法区々一定セズシテ時トシテハ酒醤油又ハ油類等ヲ貯蔵スベキ倉庫ニ米穀又ハ其他ノ雑貨ヲ貯蔵シ、又此等ノ数種ヲ一庫中ニ混蔵シ為メニ貨物ノ性質ヲ害シ市価ヲ損スル事不少、且其貯蔵貨物ニ対シテ蔵主ヨリ預リ証券ヲ発付スル事アルモ固ヨリ正確ノ順序ヲ経ザルモノナルニ付、商業社会ノ信用ヲ得テ売買又ハ抵当ノ用ヲ弁スル事能ハズ、商業取引ノ区域ヲ狭小ナラシメ其開進ヲ障碍スル事蓋シ焉ヨリ甚シキモノ無之ト奉存候
近来ニ至リ東京・大坂其他一二ノ地方ニ於テ倉庫会社ナルモノヲ創設シ、一般商賈ノ為メニ貨物保管ヲ専業トスル者相起リ候得共、元来売買取引ノ手続ヨリ商品ノ種類ニ至ルマテ内外彼此逕庭アルヲ以テ欧米諸国商業地ノ倉庫会社ト其営業ヲ同フスル事能ハズ、独リ関税未済ノ商品ヲ保管スル等ノ特例ヲ得ザルノミナラズ我邦ノ商品ハ概ネ天産物ヲ主トスルニ付、見本ヲ以テ直チニ売買ヲ決スルガ如キモ亦容易ニ為シ能ハザル所ニ有之、故ニ彼ノ欧米諸国商業地ノ倉庫会社ニ在テ最モ必要ナル公売所ノ如キモ随テ其設立ヲ今日ニ期スベカラザル所以ニ御坐候、左レバ此等ノ会社ハ単ニ其保管商品ニ対シテ預証書ヲ発行スルト雖トモ未ダ其預証書ヲ以テ之ヲ輾転売買スルノ便ヲ見ル能ハズ、是レ彼ノ欧米諸国商業地ノ倉庫会社ニ比スレバ其効用大ニ懸隔スル所ニ有之候、然リ而シテ従来問屋業ヲ営ム者ハ専ラ其収利ヲ貨物ノ販売手数料・口銭等ニ仰ギ、倉敷料ニ至リテハ相競フテ之ヲ低下スルノ情況有之候ヨリ此等ノ会社モ勢在来ノ慣習ニ制セラレテ倉敷料ヲ引上グル事ヲ得ス、随テ其収入ハ支出ヲ償フニ足ルモノ甚ダ少キノ状況ニ御座候、如斯此等ノ会社ガ商業上ニ得ル所ノ便益甚ダ薄小ニシテ其営業上ノ収利モ亦極メテ薄小ナルニモ拘ラス僅ニ其預リ証書ヲ保証トシテ銀行又ハ其他ヨリ金融ヲ得ルノ一途アルヨリ、幸ニ今日ニ至ル迄其命脈ヲ保続シタルニ過ギスシテ、其開進発達ハ今日ノ現況ヲ以テスレハ到底期スル事能ハサル処ニ御座候
然ラハ貸倉営業ハ目下我国ノ商業上ニ緊急ナラズトスルカ、本会ニ於テハ決シテ其然ラサル事ヲ確信仕候、抑モ貸倉営業ノ融通ヲ助ケ取引ヲ便スルニ必要ナル機関タルハ欧米諸国商業地ノ現状ニ照シテ明カナル処ニ有之、然ルニ今日我国ニ在リテ未タ顕著ナル効用ヲ発現スル事能ハサルモノハ畢竟我国ノ商業猶幼穉ニシテ其取引多クハ皆現金売買タルニ起因スル義ニ御座候得共、若シ一朝商業進歩シテ約束売買ノ習慣発生スルニ至ラバ商業社会ニ於テ益々此機関ノ必要ヲ感スルハ必然ノ義ニ候ヘバ、今ニシテ其発育ヲ助クルノ道ヲ講シ予メ之ガ需用ニ応
 - 第18巻 p.335 -ページ画像 
ズルノ準備ヲ為スハ実ニ今日ノ一大急務ナリト奉存候
景状斯ノ如クナルニ付、今我国ニ於テ貸倉営業ノ発育ヲ助ケントスルニハ先ヅ条例ヲ制定セラレテ其営業上ニ相当ノ保護ヲ与ヘラルベキ事固ヨリ至当ノ順序ト奉存候得共、既ニ実際ノ情況前陳ノ通リナルニ付此際只条例ヲ頒布セラレテ通常ノ御保護ヲ与ヘラレ候トモ到底真成堅固ノ貸倉業ヲ今日ニ成立セシメ候ハ無覚束義ト奉存候、就テハ今日我政府ニ於テ更ニ特別ノ御保護ヲ此貸倉業ニ与ヘラレン事本会ノ深ク企望スル処ニ御坐候、但シ貸倉業ノ成立ハ未ダ其数ヲ制限セラルヽモノナラザルニ付今後全国各地ニ起ルベキ貸倉業ニ就キ尽ク特別ノ御保護ヲ与ヘラレ候義ハ御実施上為シ能ハザル事ニ候得共、果シテ此特別ノ御保護ヲ以テ正確ノ貸倉業ヲ発育セシメラレントスルニハ自ラ適当ノ方法有之候義ト奉存候、本会熟々其方法ヲ案ズルニ此貸倉業設立ノ地ヲ先ヅ東京・大坂ノ二ケ所ト定メ、其他各地商業枢要ノ場所ニ於テ其設立ヲ望ム者ハ都テ此二ケ所ノ商業区域ニ従テ之ガ支社タラシメ、而シテ其本支店設立ノ順序及資本金ノ定度其募集方等ニ至ル迄概ネ別紙甲号方案書ノ如クナラシメバ全国ノ要地ヲシテ悉ク確実ナル貸倉業ノ設立ヲ得セシムベキ義ト奉存候、而シテ今仮リニ本会ノ概筭スル処ニ拠レバ其営業上ノ損益ハ別紙乙号予筭書ノ如ク相成候ニ付、試ニ政府ガ其利益ヲ御保証相成候モノトセバ果シテ全国各地ニ該営業ヲ興立セシムルヲ得ベキニ付、御保護ノ金額ハ極メテ少クシテ其商業ノ便益ヲ裨補スヘキハ実ニ莫大ノ事ト奉存候、依テ今倉庫条例御制定ニ関スル御諮問ニ対シテ本会ノ意見ヲ復申スルニ当リ併テ別紙甲乙両号書面相添此段建議仕候也
                 東京商工会々頭
  明治十八年八月七日
                      渋沢栄一
    農商務卿 西郷従道殿
(甲号)
     方案書
 一特別ノ保護ヲ以テ貸倉会社ヲ設立セシムルニハ先ツ東京及大阪ノ二ケ所ニ於テ各々大会社ヲ組織セシムベキ事
 一右二ケ所ノ大会社ハ各地枢要ノ場所ニ於テ其支社ノ設立ヲ望ム者アルトキハ、先ツ充分其土地ノ情況ヲ詳察シ果シテ貸倉ノ設立ヲ要スルモノト認ムルニ於テハ其支社ヲ設立スヘキ事
 一全国ニ於テ其支社ヲ設立スヘキ地ハ当分左ノ数所トスヘキ事
   四日市  横浜  石巻  函館  秋田  酒田  新潟  西京  神戸  大津  敦賀  伏木  馬関  長崎
 一右数所ニ設立スヘキ貸倉会社ハ其土地ノ摸様ト商売ノ都合ニヨリ東京ノ会社ニ属スヘキモノト大阪ノ会社ニ属スヘキモノトヲ区分スベキ事、例ヘバ横浜ニ設立スルモノハ東京ニ属セシメ、神戸ニ設立スルモノハ大阪ニ属セシムルガ如シ
 一右二会社ノ営業資本金ハ各々百万円ト定メ、先ツ其半額ヲ募集シ残半額ハ営業上ノ都合ニヨリ漸次募集スヘキ事
 一右募集金額ノ中十分ノ三ヨリ四迄ヲ倉庫家屋等ノ営業資本ニ供シ残十分ノ六ヨリ七迄ヲ公債証書ニ換ヘ営業保証トシテ政府ヘ預ケ
 - 第18巻 p.336 -ページ画像 
シムベキ事
 一政府ハ十ケ年ヲ限リ該二会社ノ純益ヲ年八分迄保証セラルベキ事
 一政府ハ特ニ該二会社ノ管理官ヲ置キ其営業ヲ充分監督セラルベキ事
(乙号)
     計算書
                   一会社ニ付
 一金百万円              資本金
   内
   金三拾万円       倉庫千五百戸前敷地共買入代金
                但シ一戸前敷地共平均金弐百円ノ見積リ
   金八千円        営業用家屋並ニ什具買入代金
                但シ本支店共併テ八ケ所分見積リ
   金六拾九万弐千円    七分利付金禄公債証書額面七拾万〇六千百円買入代金
                但シ額面百円ニ付金九拾八円余ノ見積リ
   以上
      損益予筭
   金四万九千四百二十七円 公債証書額面七拾万〇六千百円ニ対スル一ケ年ノ利子
   金弐万七千円      倉庫千五百戸前十ケ月ノ倉敷料
                但シ一戸前ニ付一ケ月平均金壱円八拾銭ノ見積リ
   金弐万弐千五百円    同十ケ月ノ保管料
                但シ米一俵ノ相場平均金弐円ト仮定シ、一戸前ニ付五百俵ツヽヲ保管スルモノトスルトキハ、千五百戸前ニ付一ケ月平均七拾五万俵ヲ保管シ、此価額金百五拾万円トナルニ付、其千分ノ一半ヲ保管料トシテ収入スルニ於テハ其十ケ月ノ保管料本項ニ記スルガ如シ
   合計金九万八千九百二十七円
   内
   金三千円        倉庫千五百戸前家屋税
                但シ一戸前ニ付平均金弐円ノ見積リ
   金千百弐拾五円     同地税(地価百分ノ二半)
                但シ一戸前ニ付敷地十五坪ト筭スルトキハ千五百戸前ノ敷地弐万二千五百坪トナルヘシ、今一坪ノ地価平均金弐円トシテ総地価金四万五千円ノ見積リ
   金弐万八千八百円    営業費
                但シ一ケ月一ケ所ニ付平均金三百円ツヽノ見積リニテ本支店共合テ八ケ所ニテ一ケ年分
   金弐千七百円      倉庫修繕費
                但シ倉敷料壱割ノ見積リ
   合計金三万五千六百弐拾五円
  差引
   金六万三千三百〇二円             純益金
 - 第18巻 p.337 -ページ画像 
 会社ノ資本金ハ別紙甲号方案書ノ如ク一会社ニ付金百万円ト定メ、其中先ツ凡五拾万円ヲ募集シ、余ハ追テ各地商業ノ摸様ヲ詳察シ漸次募集スベキノ見込ニシテ、以上計算書ニ掲クル処ハ仮リニ全額ヲ募集シタルトキノ予算ヲ示シタルモノナレトモ、若シ半額ヲ募集シタルトキモ固ヨリ此割合ニヨリテ営業シ得ベキ見込ナリ、而シテ此予算ニヨリテ営業スルトキハ凡年六分三厘ノ純益ヲ生ズベキ見込ナレバ、今政府ニ於テ会社ノ純益ヲ年八分迄保証セラルヽモノトスルトキハ実際保証セラルベキ金高一会社ニ付一ケ年凡金一万七千円ニ過キズ(仮令全額ヲ募集スルトスルモ)蓋シ此ノ予算ハヤヽ切リ詰メタル見積リナレトモ、実際営業ノ上ニテハ猶幾分ノ純益ヲ増スヘキ見込アリ、殊ニ今般条例ヲ制定シテ倉庫営業ヲ保護セラルヽ上ニ又別紙甲号方案書ノ如ク特別ニ之ヲ保護セラルヽトキハ、将来倉庫営業ハ益々商業社会ノ信用ヲ得随テ此会社ヨリ発スル預証券ノ如キ取引上欠クベカラザルノ要具トナルヘキニ付、為メニ手形ノ進歩ヲ助長スルノ効能亦少カラザルベシ、果シテ然ラハ従来貸倉ヲ営業スルモノヽ如キハ必ス其倉庫ノ管理ヲ此会社ニ委託スベキニ付、此会社ハ逐年其営業ノ区域ヲ広ムルヲ得遂ニ開業ヨリ第十年ニ至レバ少クモ年九分以上ノ純益ヲ見ルベキナリ


東京商工会議事要件録 第一五号・第四一―七四頁 明治一八年九月五日刊(DK180033k-0007)
第18巻 p.337 ページ画像

東京商工会議事要件録  第一五号・第四一―七四頁 明治一八年九月五日刊



 第十四臨時会
 第七定式会
(明治十八年八月十四日午後六時四十五分開会)





    会員出席スル者 ○三十三名
○上略
次ニ会長(渋沢栄一)ハ是ヨリ定式会ヲ開クベキ旨ヲ告ゲ本年一月ヨリ六月迄半季間事務ノ成跡ヲ報告ス、即チ左ノ如シ
  自明治十八年一月至同年六月 半季間事務ノ報告
○中略
    雑事   六件
○中略
○倉庫営業ノ義ニ付農商務省ヨリ下問ノ件
  本件ハ前季既ニ報告シタルガ如ク明治十七年十一月十三日附ヲ以テ農商務卿閣下ヨリ諮問セラレタルモノニシテ、其後ノ会議ニ於テ之ヲ審議シタルニ先ヅ委員ヲシテ其答申案ヲ調査セシムベシト云フニ決シ、即チ会長ハ十二名ノ委員ヲ指名シタルニヨリ此等ノ委員ハ六月六日集会シテ其答申案ヲ調成シ、且ツ兼テ八十一番渋沢栄一ノ立案シタル貸倉営業ニ関スル建議案ニ就テモ既ニ其審査ヲ遂ゲタリシガ、其文案ハ本季中未ダ全会ノ議決ヲ得ルノ運ビニ至ラザルニ付其顛末ハ追テ次季ヲ待テ報告スベシ
○下略


東京商工会議事要件録 第一七号・第六―二一頁 明治一九年三月二〇日刊(DK180033k-0008)
第18巻 p.337-338 ページ画像

東京商工会議事要件録  第一七号・第六―二一頁 明治一九年三月二〇日刊



 第九定式会
 第十六臨時会
(明治十九年二月廿八日午後四時開会)





 - 第18巻 p.338 -ページ画像 
    会員出席スル者 ○六十六名
○上略
次ニ会長(渋沢栄一)ハ規程第五章第廿二条ニヨリ明治十八年下半季定式事務ノ成跡ヲ報告ス
  自明治十八年七月至同年十二月 半季間事務報告
○中略
    雑事     八件
○中略
○貸倉営業ノ義ニ付建議ノ件
  本件ハ既ニ前季ニ於テ報告シタルガ如ク八十一番渋沢栄一ノ発議ニ係ルモノニシテ、其後委員会ニ於テ審議ヲ遂ゲ八月三日第十三臨時会ノ可決ヲ経、同月七日附ヲ以テ倉庫条例ノ答申案ニ添ヘテ之ヲ農商務卿閣下ヘ進達シタリ
○下略
   ○右ノ復申並ビニ建議ハ直チニ実行ニ移サレズ。



〔参考〕第二次勧業会商務部日誌 勧業諮問会編 第一―八頁 明治一七年一一月刊(DK180033k-0009)
第18巻 p.338-341 ページ画像

第二次勧業会商務部日誌 勧業諮問会編 第一―八頁 明治一七年一一月刊
明治十七年十月九日ヨリ本省議事室ニ於テ第二次勧業会商務部ノ会議ヲ開キ同月十三日ニ終ル
      ○
    勧業会規則
第一条 本会ハ勧業上ノ得失利害ヲ談シテ将来ノ施設ニ資益スルヲ以テ主旨トス
第二条 会員ハ農商工山林ノ事務ニ関スル府県ノ主務者ヲ以テ之ニ充ツ
第三条 会頭一名理事書記若干名ヲ置キ、農商工山林ノ四局員ヲ以テ之ニ充ツ
第四条 農商工山林ノ四局ヨリ主務員ヲ出シ質問或ハ答弁ニ充ツ
第五条 本会ハ午前九時ニ始メテ午後三時ニ終フ
第六条 会員着席ノ順序ハ抽籤ヲ以テ之ヲ定ム
第七条 発言者ハ起立シテ陳述スヘシ、但二名以上同時ニ起立スルトキハ会頭ノ指定スル所ニ従フ
第八条 開会中互ニ雑話スル事ヲ得ス
第九条 会員疾病其他ノ事故ニ依リテ闕席スルトキハ会頭ニ届ケ出ツヘシ、若出席中退場セントスルトキハ理事ヲ経テ会頭ニ届ケ出テヽ退場スヘシ
      ○
    第二次勧業会商務部問題
○中略
第二項 商品保管倉庫設立ノ可否及其取締法如何
 (説明)此倉庫ハ商品ヲ預リ之ニ対シテ手形ヲ発行シ、其手形ニ依テ専ラ商品上金融ノ便利ヲ与ヘ、兼テ其売買ヲ簡易ナラシムルノ目的ニ出ツルモノナリ、今ヤ本邦商業ノ各要地ニ如斯倉庫ノ必要ヲ
 - 第18巻 p.339 -ページ画像 
感スルヤ、之ヲ必要トセハ其取締法規ハ如何、又従来之ニ類スル倉庫ヲ設立セシ地方アリヤ、之レアレハソレニ由テ商業上ニ如何ナル影響ヲ与ヘシヤ
  但シ明治十五年十一月商況月報雑録仏国共同倉庫法律及其概設ヲ参看スヘシ
○中略
      ○
    第二次勧業会商務部会員
  会頭
   農商務大書記官            品川忠道
  主務員
   農商務権大書記官           百武兼行
兼理事 同 権少書記官           河上謹一
   農商務省御用掛            伊賀陽太郎
    同                 川村選
   農商務二等属             友松氏敬
    同 四等属             鬼頭悌二郎
    同 六等属             宇多良温
   農商務省御用掛            鶴田貫次郎
  理事
   農商務二等属             太田信厚
   農商務省御用掛            松田直清
  書記
   農商務九等属             広津直人
   農商務省御用掛            横尾一郎
    同                 木村時中
    同                 川崎武彦
    同   雇             水谷由章
      府県会員
  一番      東京府三等属      金田敬親
  二番      京都府二等属      板原直吉
  三番      大坂府三等属      林宗親
  四番      同  御用掛      小幡琢十
  五番      神奈川県一等属     増田知
  六番      同   六等属     浅田徐五郎
  七番      兵庫県一等属      加藤正義
  八番      兵庫県七等属      斎藤政矩
  九番      長崎県二等属      川崎胖
  十番      新潟県一等属      高木惟矩
  十一番     同  八等属      萩原房生
  十二番     函館県六等属      井深基
  十三番     同  八等属      佐久間千代美
  十四番     埼玉県二等属      山中福永
  十五番     埼玉県八等属      大島信
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  十六番     群馬県六等属      加藤義質
  十七番     千葉県一等属      中村衡平
  十八番     茨城県五等属      河井貞一
  十九番     栃木県六等属      樺山喜平太
  二十番     三重県四等属      岩本勿
  廿一番     愛知県三等属      渡辺平四郎
  廿二番     静岡県三等属      大塚義一郎
  廿三番     山梨県六等属      中田亮平
  廿四番     滋賀県六等属      田村正寛
  廿五番     岐阜県四等属      奥宮雄三郎
  廿六番     長野県五等属      吉松集躬
  廿七番     福島県五等属      渡辺明義
  廿八番     宮城県六等属      飯島一景
  廿九番     岩手県七等属      鹿討直五郎
  三十番     青森県七等属      中島健三
  三十一番    同  御用掛      松井平太郎
  三十二番    秋田県三等属      高城守久
  三十三番    同  御用掛      竜田退蔵
  三十四番    山形県一等属      氏家直綱
  三十五番    同  七等属      原田卯三郎
  三十六番    石川県四等属      石田磊
  三十七番    富山県三等属      湯浅則利
  三十八番    同  九等属      斎藤十郎
  三十九番    福井県十五等出仕    南克太郎
  四十番     同  十七等出仕    千本貫一
  四十一番    島根県三等属      野中景徳
  四十二番    同  七等属      藤岡直蔵
  四十三番    鳥取県三等属      小田信樹
  四十四番    岡山県二等属      寺島太一
  四十五番    広島県一等属      杉山新十郎
  四十六番    山口県五等属      玉井進
  四十七番    和歌山県二等属     平田綱一郎
  四十八番    徳島県三等属      多田能次郎
  四十九番    同  九等属      服部三樹之介
  五十番     高知県御用掛      三浦蘇一
  五十一番    愛媛県三等属      四屋継之
  五十二番    同  九等属      宇喜多秀穂
  五十三番    福岡県五等属      石野寛平
  五十四番    大分県三等属      中村幸蔵
  五十五番    佐賀県一等属      渡並竧
  五十六番    熊本県七等属      陣内宗六
  五十七番    宮崎県七等属      木佐貫重節
  五十八番    鹿児島六等属      宮原知貞
  五十九番    沖縄県
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  六十番     札幌県御用掛      田内捨六
  六十一番    根室県五等属      赤壁二郎
  六十二番    宮城県御用掛      播磨屋久治
  六十三番    山梨県七等属      村上是哉
○下略


〔参考〕第二次勧業会商務部日誌 勧業諮問会編 第一八〇―二三五頁 明治一七年一一月刊(DK180033k-0010)
第18巻 p.341-358 ページ画像

第二次勧業会商務部日誌 勧業諮問会編  第一八〇―二三五頁 明治一七年一一月刊
書記第四項問題 ○第二項問題ヲ第四項ニ変更ス ヲ朗読ス
王務員(鶴田貫次郎)唯今書記ノ朗読シタルカ如ク本問題ニ付テハ既ニ倉庫ノ仕組並ニ其精神ヲモ了解セラレタルヘキユヘニ各員ニ於テハ最早充分此問題ニ就キ評議スヘキ要点ヲ覚知セラレン事疑ナシト雖モ、抑モ此問題ノ如キハ他ノ問題ト違ヒ幾分カ耳新シキ仕組ノモノニシテ、言ハヽ新法創定ノ基礎タルヘキ議件ナルノミナラス目今本省講究中ノモノナレハ、会頭ニ於テモ亦各員ヨリ続々新説ヲ発言セラレン事ヲ望マル故ニ、其意ヲ貫カンカ為メ幾分カ蛇足ニ属スベキ部分モアルヘケレトモ、試ミニ外国ニ専ラ行ハルヽ所ノ方法ヲ借リテ其要点ヲ摘出シ、以テ一ハ発議参考ノ一助ニ供シ、一ハ以テ議点ノ秩序ヲ設クルノ用ニ備ヘントス、其要点即チ左ノ如シ
  第一目 此仕組ノ倉庫ハ商業上ノ一大機関タル事
  第二目 英仏倉庫仕組ノ差別
  第三目 倉庫手形ノ効用
  第四目 倉庫発行手形流通上実際ノ状況
  第五目 商業ノ不振ヨリシテ商業社会及ヒ其社会外ヘ波及スル影響
  第六目 立法ノ旨義
    此仕組ノ倉庫ハ商業上ノ一大機関タル事
 此仕組ノ倉庫ハ商業上ノ一大機関ニシテ既ニ欧米各国ニテ数年前ヨリ之ヲ施行シ、商業ヲシテ活溌ナラシムルノ要具トナスモノナリ、五大洲中英国ノ如キハ其設立最モ古クシテ最モ能ク実際ニ行ハル、是レ一ニ商売繁昌ノ故ニ因ルヘシト雖、有名ナル経済学士ノ言ニヨレハ此法能ク英国ヲシテ各国ノ上ニ出テヽ商売上全地球ニ冠タラシメタリト、真ニ然ルヘシ、試ミニ今一証ヲ引カンニ英京倫敦ニハ広大ナル船渠倉庫ナルモノ即チ「コンメルシヤール・ドツク」「ウエストインジヤン・ドツク」「ロンドン・ドツク」「セントカトリーヌ・ドツク」等ノ七ケ所アリテ、何レモ大会社ニテ之ヲ維持シ、其他ノ大都会ニ於テモ亦然リ、其効用ノ大ナル推シテ知ルヘキナリ、而テ此倉庫法ノ旨趣ハ、経済学士ノ語ニ依レハ商品上ノ金融法トテ農工商ニ拘ハラス小資本ノ転用ヲ数回ナラシメテ之ニ大額ノ功用ヲ得セシムル事是レ其本旨ニシテ、傍ラ売買上無限ノ手数ヲ省略セシムルモノナリト云ヘリ、即チ今朗読シタル説明中ニ云フ所ノ金融ノ便利ヲ起シ及ヒ売買ヲ簡易ナラシムルノ目的ヲ達スルノ仕掛ナリ、但シ金融ノ便利ヲ得セシメ及ヒ売買ヲ簡易ナラシムルニハ種々ノ方法アレトモ、此倉庫法ノ仕組ニ依テ得ラルヽ所ノモノハ次ノ目ニ及ンテ之ヲ述フヘシ
 - 第18巻 p.342 -ページ画像 
    英仏倉庫仕組ノ差別
 今此目ニ就テ細項ヲ挙クレハ陳述スヘキ件種々アレトモ、其要点ヲ言ハンニ先ツ第一ニ英国ト仏国トハ其倉庫ノ仕組ヲ異ニセリ、則チ英国ノ如キハ古来ノ習慣ヨリ成立タル倉庫ニシテ政府ハ之カ為メニ別ニ規律ヲ設ケサレトモ、仏国ニテハ然ラス、堅固ナル法律ヲ立テ之ヲ守ラシメ其法律モ数次改正ノ后今日ノ仕組ニ至リタルモノナルカ、元来仏国ハ此法ヲ英国ニ学ヒシモノナリ(千八百四十八年仏国商業上ノ状況)仏国法律ノ沿革ハ長談ニ属スレハ暫ク略ス、唯法律上尤モ重要ナル二三点ヲ挙クレハ、目今英国ニテハ特別ノ法律ヲ設ケス倉庫ノ興廃一ニ其自由ニ放任スト雖、其実際ノ効用極テ広クシテ都合ヨク行ハレ、仏国ノ如キハ精確ナル倉庫ノ法律ヲ設ケタリト雖其法未タ能ク商民ノ風習ニ浸潤セス、実際商業上ニ影響スル効能頗ル少キカ如シト云フ、是レ立法上ノ注意ヲ促スヘキ点ナリ、故ニ此倉庫ニ関シテ言ヘハ英国ニテハ法ナクシテ能ク実際ニ行ハレ、仏国ニテハ法アリト雖実際其効少シト云フヘシ
    倉庫手形ノ効用
 此目モ随分長談ニ渉ルヘキ事項ナレトモ、時間ニ限リアル事ナレハ事項モ省キ、又一事項中ニテモ成ルヘク之ヲ略演シテ唯其大要ノミヲ朋ラカニセントス、即チ第一目ニ於テ述ヘタルカ如ク金融ノ便即チ其第一ニ居ルナリ、抑モ凡ソノ銀行ニ於テハ概シテ売レ口速カナル商品ヲ抵当ニ取ルヲ最モ希望スルモノナレハ、抵当手形ヲ引受ケ物品価格ノ七割カ八割位ヲ貸付スルコト万々明白ナル事ナレトモ、此ノ如ク信用最モ多キ物品ノ手形ナレハ銀行ヨリ他ノ理財会社ヘモ裏書ニテ流通スルカ故ニ此手形ハ資本ノ多キ所ニ転々売買セラレ、一債期中ニテモ理財家カ此等ノ貸付ノ為メニ其資本ヲ沈滞セシムルノ患ナキモ亦タ金融上ノ一利ト云フヘシ、而シテ此手形ハ抵当ヲ証スル手形ナレハ本邦民間今日ノ如ク別ニ一々抵当証書ヲ作テ証券印紙ヲ貼附スルカ如キ面倒モナキナリ、故ニ此ノ如ク商人ニ手数ト雑費トヲ省略セシムルヲ得ハ商業ニ幾分カノ便利ヲ生スヘシ、左レハ是レ物品売買上ノ大利ナリ、物品ヲ取引スルニ請取書モ入ラス、手形即チ之ニ代テ皆之ヲ務ムル訳ナリ、第二ニハ前目中ニ申ス如ク仏国ノ如キハ倉庫ノ手形ハ皆ナ大抵取引所ニ集リ取引所ノ手形売買世話人ノ面前ニテ手形ヲ以テ商品ヲ取引スレハ、売買人ノ双方毎日同所ニ集リ坐ナカラ売買ヲ取結フ事ヲ得ルナリ、現今本邦ニテ多数ノ商品ヲ買入レントスレハ先ツ各地ニ発信シテ之ヲ問合スカ、又ハ買入手代ヲ四方ニ派遣スルカ、又ハ市中処々ニ車ヲ飛シテ奔走スル等労苦ト時間ト雑費トヲ無益ニ費シテ之カ為メニ商品ヲシテ高直ナラシム、此等ノ原素ヲ省略シタランニハ、国家経済上ノ稗益少ナカラス、又第三ニハ農工商ニ拘ハラス凡ソ商売ヲ営ム者各自ノ営業資本ヲ百倍ニ使用シ得ラルヽ事モ亦タ其一利ナリ、例ヘハ東京ノ商人ニテ資本金千円ヲ有シ、常ニ田舎ノ籾米ヲ買込ミテ卸売ヲ営ム者アランニ、此商人初メハ千円ニテ三百俵許ノ米ヲ田舎ヨリ買ヒ来リ、之ヲ倉庫ニ預ケテ倉庫ヨリ融通用ノ抵当手形ヲ受取リ来リ、之ヲ銀行ニ持参シテ先ツ八百円ヲ借入レ、一方ニテハ売買手形ヲ以テ取引所
 - 第18巻 p.343 -ページ画像 
ニ至リ差額二百円乃至弐百五拾円ニテ此米ヲ七日間ニ売捌クト見做セハ、其頃ノ七日間ニ銀行ヨリ借入レノ八百円ヲ以テ又田舎ヨリ米ヲ買来リテ之ヲ倉庫ヘ預ケ、倉庫ヨリ両用ノ手形ヲ領受シテ銀行ヨリ六百五拾円ヲ借受ケ、又其次ノ七日間ニ新手形ニテ借入レタル六百五拾円ヲ以テ田舎ニテ米ヲ仕入レ、倉庫ヨリ又手形ヲ受取テ五百五拾円ヲ借リ得ヘキカ故ニ数回利徳ヲ生スヘキハ云フマテモナシ、右二十一日間ニ千円ノ資本ニテ三千円ノ通用ヲナスヘシ、而シテ其売払ノ度毎ニ若シ利潤ヲ得ル事壱割トスルトキハ此廿一日間ニ三百円ノ利益アリ、然ルニ現今本邦商賈ノ有様ニテハ此ノ如キ金融出来サルカタメ二十一日間ニ千円ノ資本ニテ三百円ノ収利ヲ得ル能ハサルヘク、若シ商品ヲ以テ借金セントスレハ其売米ヲ質屋ノ庫ニ入レテ擒ニセラレテ頓ニ売方ニ差支ヘルカユヘニ商売ハ出来難シ、右ノ訳合ナレハ唯独リ此利徳アルノミヲ以テモ商品保管倉庫仕組ノ農工商ヲ益スル事照々トシテ明ラカナリ、此例ニテ十分明瞭ナレトモ今又工人ニ就キ其例証ヲ引カンニ、爰ニ生糸製造人アランニ其営業資金ヲ弐万円ト見做シ製造用ノ資本トシテ其半額壱万円ヲ用ユルト仮定シ、此製造人先ツ残額壱万円ヲ以テ繭ヲ買込ミ之カ製造費ニ千円ヲ費シテ製糸ヲ為ンカ、此壱万壱千円ニ当レル生糸ヲ倉庫ニ送リテ預リ手形ヲ受取リ、此手形ヲ以テ銀行ヨリ壱万円ヲ借リ入レ、翌日壱万円ノ繭ヲ買来リテ二度目ノ製造ヲナシ得可シ、而シテ製造日数七日間ヲ経タル後又前同様倉庫ノ手形ヲ用ヒテ銀行ヨリ九千円程ヲ借リ来リ、又製シテハ又預ケ数回同一ノ手続ヲ反復シ、第三度目ニ銀行ヨリ八千円ヲ借用スルヲ得テ皆等シク製糸ニ用ヒテ一週間ヲ費ヤセシモノト見做ストキハ、三週間即チ廿一日間ニ三万八千円ノ繭ヲ製糸スルヲ得ルナリ、而シテ利徳トシテ資本高ノ壱割ヲ得ルモノトナセハ僅カ此廿一日ノ問ニ三千八百円ノ収利トナルヘシ、壱万円ノ資本ヲ入レ僅カニ三週間ニシテ此利ヲ得ラルヽハ実ニ倉庫手形ノ功能ニ依ルモノニテ、実ニ奇妙ノ如クニ思ハルレトモ理ニ於テ誤リナシ、又一方ニテハ売買手形ニテ製糸ヲ売捌キ借入金額ト売代トノ差ヲ収入スレハ其利益ヲ増加スル事幾許ナルヘキヤ、好シ然ラサルモ商品ノ未タ売レサルニ之ヲ利用シテ以テ新資本ヲ得テ工業ヲナスヲ得ハ工業者ノ幸何事カ之レニ過ギン、此ノ如ク工業者ノ利益愈々多キヲ加ヘハ随テ其製造品モ低価ニ至ルヘキ筈ニテ、製造物モ随テ饒多ニ及フヘケレハ消費者モ常ニ廉価ニテ手ニ入ルヽヲ得ヘキ道理ナリ、但シ以上ノ代価及ヒ日数並ニ利益ノ割合ハ仮定ノモノナレハ実際ニ適当スル計算ニ非ザレトモ其道理ハ則チ一ナリ、又第四ニハ手形ヲ代用シテ売買ヲ簡易ナラシムルハ無論裏書法ノ効能ナレトモ唯手形ト金子トヲ引替ヘタルノミニシテ、物品ノ売買ヲ完結スルトキハ物品ヲ受授スルノ労ナク、手数ヲ省ケ運賃モ省ケ商業上ニ簡便ノ工夫ナリ、今一例ヲ以テ其事実ヲ摘出スレハ、仙台ノ商賈カ横浜ノ倉庫ニ在ル物品ヲ買ハンニ、手形ナレハ坐ナカラ之ヲ買得テ其物品ヲ横浜ヨリ直接ニ仙台ニ運送スルニ止マルヘケレトモ、今日ノ如キ有様ニテハ仙台ノ商賈ハ遥々横浜ニ趣カサレハ横浜ノ物品買入ヲ為シカタシ、左モナクハ横浜ノ物品仙台到着迄ニハ途中ニテ先ツ数
 - 第18巻 p.344 -ページ画像 
回仲継商人ノ手ヲ経テ一々手数料口銭等ヲ取ラレ、運賃モ亦タ幾回トナク取ラレ其上ニ時間ト雑費ト労力トヲ重ヌルカ故ニ、仙台ノ消費者ハ外国ヨリ横浜ヘ輸入スル物品ヲ非常ノ高価カ或ハ幾分カノ高価ニテ買ハサルヲ得サル訳合ナリ、今日ノ如ク水陸運搬ニ不便ヲ極ムル時代ニハ殊更手形ヲ以テ物品売買ヲ取組ヨリ外ニ最モ便利ナル趣向ハ之ナキナラン、又第五ニハ倉庫ヨリ好都合ナル手形ヲ発行スルニ至ラハ商家ノ面目ヲ一新スヘシ、其故ハ商人ノ物品取扱ヒノ手数ヲ省キ、其代用物タル手形ニ依テ売買ヲ結了シ得ルユヘ商家傭人ノ員数ヲ減シ、又銘々必ス土蔵抔ヘ備ヘ置クニ及ハスシテ皆共同倉庫ヲ当テニスルヲ得ヘシ、故ニ此ノ如キ仕組ノ倉庫アル地方ノ商人ハ主人ト書記ト簿記役ト手代三名位都合六名程ニテ大抵ハ頗ル盛大ナル商業ヲ経営スル事ヲ得ル筈ナリ、尤モ小売商ノ如キハ此限ニ非ス、之ニ由テ共同倉庫ノ仕組弥々完全ナルヲ得ハ従来ノ問屋モ土蔵モ追々不用ニナリ、手代小僧ノ減員スルノ日アルヲ見ルヘシ、是亦此仕組ノ倉庫ヨリ発生スル所ノ結果ナリ、是故ニ此倉庫カ本邦各地ニ成立スルニ随テ問屋ノ如キモ諸入費ヲ省キ、問屋ト工業者トノ間ニ成立ツ封建商業ノ余習ヲ除クヲ得ルニ至ルヘキカ、結局其目的ハ商工業ニ便利ヲ与ヘテ徒労徒費ヲ省カシメ、消費者ヲシテ内外ノ物品ヲ下直ニ買ヒ得セシメントスルニアリ、此ノ如キ倉庫全国各地ニ行ハルヽ時ハ商業社会ヲ一変シテ其利益実ニ世間ニ普及スル事トナルヘシ
    商業ノ不振ヨリ商業社会内外ヘ及ホス所ノ影響
 前条ニ於テ倉庫手形ノ功能ヲ陳述シテ商人ノ便益ト消費者ノ幸福トヲ明ラカニシタルカ故ニ、更ニ商業社会内外ノ景状ニ付テ別段述フヘキ事ナシト雖トモ、蛇足ナカラ今日実際ノ有様ニ付キ商業ノ振ハサル為メニ不便利ナル例証ヲ挙ケテ以テ倉庫手形ヨリ生スル便益ヲ詳ヒラカニセントス、試ミニ輸入貨物ニ付テ一例ヲ挙ケンニ、英国ヨリ横浜ヘ輸入スル物品ニ付テ申サハ仙台鎮台兵ノ着服ニ用ユル羅紗ハ横浜ノ外商ヨリ同地引取問屋之ヲ引取テ東京ノ商人ニ売リ、東京ノ商人ハ又熊谷ヤ高崎或ハ其他ノ商家ニ転々販売シ、各地数度ノ運搬ヲ経テ数回ノ運賃ト数人ノ手数料トヲ費スカユヘニ横浜ニテ拾円ノモノモ僅カ百里許ノ仙台ニテハ拾五円トナル、即チ本邦人殊ニ内地ノ人々ハ高価ヲ払ハサレハ外国ノ貨物ヲ用ユル能ハス、仙台ノ商人若シ此普通ノ手続ヲ重ヌル貨物ヲ待サラント欲セハ遠隔ナル横浜ヘ出張店ヲ設クルカ、又ハ手代ヲ派遣シテ買入シムルカ、左ナクハ発信シテ引取商ニ依頼スルカノ三点ニ出テサルヲ得ス、而シテ引取商ニ依レハ相場ノ実ヲ求メカタク、手代ヲ派遣スルモ出張店ヲ設クルモ是皆等シク入費ノ嵩ムモノナレハ、到底沿道処々数人ノ手数ヲ経テ常道ヲ経過シ来ル物品ヲ買入ルヽト同一ノ結果ヲ生シテ殆ント同一ノ割合ニ当リ、結局労シテ功ナキモノナリ、又内地ニテ其土地産出ノ貨物ト他県物産トノ間価格甚タ相懸隔スル所以ノモノハ全ク商業ノ機関未タ備ハラサルニ根スルモノナランカ、是等ノ類枚挙ニ遑アラス、実ニ国家ノ不経済ヲ極ムルモノナリ、其原因恐クハ商業社会ノ組立尚未タ不便ノ地位ニ在ルノ因テ然ラシムルモノト云テ
 - 第18巻 p.345 -ページ画像 
可ナランカ
    立法ノ旨義
 今般本邦ニ於テ此仕組ノ倉庫設立ヲ既ニ必要ナリト感シタル以上ハ先ツ第一ニ仏国ノ如ク中央政府ニ於テ法律ヲ設ケテ之ヲ行ハシメンカ、又英国ノ如ク自由ニ放任シ政府カ之ニ干渉セスシテ此大便利ノ商業機関ヲ創立セシメントスルカノ問題ナリ、元来我邦ノ問屋ナル者ハ稍ヤ英国ノ仲買人ニ似寄タル処モアルモノナレハ英風ニ傚テ今日ノ問屋ヲ利用シ、問屋ノ倉庫ト手代トニ依テ手形ヲ発行セシムルコソ実ニ本邦文明ノ程度ニ適スルナランカト云フ論説頻ニ盛ナレハ此迄ハ宜ク各員ノ御評議アリタキ肝要ノ点ナリ、尤モ右ニ付発議ノ要点ヲ指示スル事切要ナルトキハ更ニ之ヲ述フヘシ、但シ其ノ要点ハ左ノ如シ
  商品保管倉庫設立ニ付政府ノ法律ヲ要スルヤ如何
  同倉庫設立ノ方法
  設立免許ノ年限
  倉庫営業者身元保証ノ事
  営業規則ノ事
  倉庫構造ノ事
  営業取締ノ事
  物品欠減ノ定法
  物品類別ノ事
  預リ期限ノ事
  手形面ヘ書込方
  預ケ目録書ノ事
  貨物撿査ノ事
  庫敷料収入期限ノ事
  保険ノ事
  手形紛失処分法ノ事
  公売処分ノ事
  倉庫営業者兼業許可ノ事
  手形ノ制法英ニ倣ハンカ将タ仏ニ倣ハンカノ事
    罰法
 以上口述スル所ハ即チ説明ノ敷衍ニテ聊カ諸君ノ御参考ニ供スルマテノモノナリ、故ニ各員宜シク全体ノ事ニモアレ要点各部ノ事ニモアレ又地方情況ニ付倉庫新法ノ便利ナル仕組ヨリ之レニヨリテ将来商業上ニ波及スヘキ影響ニ至ルマテ曲サニ発議アラン事ヲ希望ス、又此類ノ倉庫アル地方ノ会員ニハ問題ノ説明ニモ記載ノ通、倉庫会社創立ノ時ヨリ今日ニ至ルマテノ其営業ノ実況ト之カ商業上ニ影響ヲ与ヘタル有様トヲ陳述セラレンコトヲ望ム
 又説明ノ但書ニ就キ(即チ明治十五年十一月商況月報雑録仏国共同倉庫法律及ヒ其ノ概説中ニ付キ)疑点アラハ十分ニ御質問アリテ苦シカラス、玆ニテ敷衍終尾ニ至リタレハ今ヨリ懇ニ御発議アラン事ヲ冀フ
会頭(品川忠道)散会ヲ告ク、時ニ午後第三時二十分
 - 第18巻 p.346 -ページ画像 
      ○
十月十三日午前第九時五分一同着席
会頭(品川忠道)昨日市場ノ慣習ニ付テ高説ヲ承リシニ猶五県会員ヨリ意見書出テタリ、然レトモ何レモ大同小異ナルヲ以テ日誌ニ加ヘテ追テ印刷ニ附セシムヘキモ玆ニ之ヲ朗読セシメス、倉庫営業ノ事ニ付テ出テタル書取アリ、之ヲ朗読セシムヘシ
書記三十九番(福井県南克太郎)四十番(同千本貫一)ノ書取ヲ朗読ス
会頭(品川忠道)倉庫ノ沿革等ニ付テハ昨日主務員ヨリ一通リ仏蘭西ノ組織ニ依テ陳述セシカ、地方ニヨリ素ヨリ斟酌セサルヘカラサルヘシ、之ヲ日本ニ適用センニ甲地ニ要スルモ乙地ニ要セサルアルヘシ、我カ邦ニテモ従来此類ノ営業者アルヘケレトモ土蔵一ト戸前何円ト大縛リノ価ヲ定メテ貸ス位ノ事ニテ、預証書ノ制モナク之ヲ抵当ニスルモ信用ナシ、元来商品ノ売買ヲ為スニ其地ニ到リテ荷物ヲ改メ自分ノ土蔵ニ入レ置カ子ハ尚安心モナラヌ様ニテハ活溌ナル売買トハ言ヒカタシ、昨日仏国ノ大都ニ行ヒ来リシモノヲ説明セリ、猶同国ニテ用ユル預リ証書ニ付テ簡単ニ言ハンニ、同国ニテハ之ヲ上下二枚ニ切割ル様ニ印刷シテ倉庫会社ヨリ発給シ、頗ル便利ナルモノニテ、其下ノ半分ハ荷主カ金ヲ要スルトキ銀行ニ携ヘ行テ元価千円ノ品ナレハ八百円ヲ借入ルヽヲ得ヘク、上ノ半分ハ倉庫会社ニ預ケタル荷物ノ証書ニテ規則モ殊更ニ能ク整ヒ居リテ、自由ニ荷物ノ撿査モ為シ得ラルヽ故ニ此証書ニモ充分信用アリテ、之ヲ以テ商品ノ売買スルヲ得ルナリ、故ニ商品ノ市価ヲ実際壱千百五拾円ト仮定セハ銀行ヨリノ借用金高ヲ除キ剰余ノ三百五拾円内外ヲ以テ此証書ヲ常ニ売買スルヲ得ヘシ、但シ右荷物ヲ倉庫会社ヨリ取出ストキハ銀行ニ至リテ借用金八百円ト其日マテノ利子トヲ払ヒシ上、売買証書貸借証書ヲ営業会社ヘ持チ行キテ蔵敷料ト雑費トヲ払フテ荷物ヲ受出スヘキ簡易ノ方法ナリ、英国ノ倉庫会社ハ仏国ノモノト異ナリテ其証書モ分割スヘキモノニアラス、去レトモ壱千箇ノ商品ヲ預ケテ百箇宛拾枚トカ二百箇宛五枚トカ初メヨリ其預リ証書ヲ数枚ニ分チテ受取リ、之ヲ市場ニ売買スルヲ得ヘク、又銀行ニ持行キテ抵当借ヲ為ス事モ容易ニテ、仏国ノ如ク分割シテ貸借ト売買トノ両様ニ併用スルヲ得サルノミナリ、今我邦ニ取リテハ此二種ノ中何レノ方用ヒ易カルヘキヤ、又条例ヲ設ケテ発布セラルヽ事トナラハ如何今日仏英両国ニ行ハルヽモノハ右二種ナルカ、将来果シテ此条例ノ出ツルトキハ、或ハ此ノ二種ノ中ニテ何レ方カ便益アルモノヲ用ヒラルヽ事ナラント信ス、各位ノ所見何レニ在リヤ、十分陳述アランヲ望ム
三番(大坂府林宗親)会頭ヨリ精神ヲ承リ弥以テ今日此倉庫ノ設ケヲ必要ナリトス、且ツ其必要トスル所以ヲ述ヘンニ抑モ大坂ニハ昔時諸藩ノ蔵屋敷アリテ此蔵屋敷ヨリ該物産ニ対スル手形ヲ出シ、商業家ハ之ヲ其商業上ノ便ニ供シタリ、而シテ其現物ハ該蔵屋敷ニ有リシヲ以テ今日ヨリ見ルトキハ即チ一ノ倉庫ノ預リ証書ナリ、当時ハ之ニ依テ便利ヲ受ケタル事少シトセス、故ニ大坂ノ商人間ニ於テモ此挙ノ如キハ全ク之ヲ必用的トスルノ感アルノミナラス、現今ノ商
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況ヲ挽回センニハ斯ノ如キ便利ノ具ナカルヘカラス、故ニ之カ保護及ヒ其取締法ニ付テハ英仏現行ノ法律ト我カ内地ノ実況トヲ酌量アリテ至急相当ナル保護法ノ設ケアラン事ヲ望ム、既ニ大坂ニテハ十六年来有志者ノ発起ヲ以テ一ノ倉庫会社ヲ設立セシモ、如何セン純然タル私則ニ依ルト設立日尚ホ浅キトヲ以テ、府下ノ商業上ニ著シキ影響ヲ与ヘタル程ノ成蹟ヲ見サルモノヽ如シト雖モ、漸次振起シテ本年上半期間ニ此業務ニヨリ大坂本店ニテ三千七拾余円ノ利ヲ得タルニ至レリ、之ヲ以テ見ルモ数年ヲ出スシテ相当隆盛ノ域ニ達スヘキモノト思ハル
五十四番(大分県中村幸蔵)商品保管倉庫ノ設立ヲ要スル事ハ説明員ヨリ縷々陳述致サレシ如ク商業上緊要ノモノナレハ、本県ノ如ク商業微々タル地ト雖モ該倉庫ノ設立ハ大ニ望ム所ナリ、何ントナレハ従来各地方ノ物産ハ重ニ旧藩々ニ於テ租税ニ徴収シタルヲ以テ一ノ物産取纏メ所アリシニヨリ、之レヲ扱フ商業者ハ其藩庁ノ徴収セシ物産ヲ目的トシ積船ヲ廻シテ買取ルモ、一時ニ多量ノ荷物ヲ得テ運転自由ナリシカ、租税ノ金納ニ改メラレシ後ハ物産ノ一ト纏メニナルヘキ場所ナキニ付、船積ヲ廻セハ忽チ相場ヲ引揚クルノミナラス、急速荷物ヲ買集メル事叶ハスシテ終ニ多数ノ荷物ヲ扱フ場合ニ至ラス、為メニ田舎ノ地方ハ物産渋滞シテ販路ニ苦シミ、資力アル商業者モ地方ノ物産ヲ取扱フ途ヲ失シテ資金ノ運転ヲナサス、漸次商業奮ハサルノ気勢ニ赴ケリ、殊ニ地租納税期前ニ至ルトキハ米穀ヲ始メ他ノ諸物産モ相場ノ下落スルヲ常トスレハ、該物産ニ対シ銀行等ヨリ貸金ヲナサントスルモ確実ナル物品ノ預リ所ナキ為メ抵当トナスヲ得サルニ付、此保管金庫ヲ設立シ其発行スル所ノ手形ヲ以テ抵当トスルトキハ、銀行等ハ簡易ニシテ確実ノ抵当品ヲ得テ資金運転ノ途ヲ開キ、商家ハ物産ノ集リ場所ニ就テ目的ヲ達スルノ途ヲ得テ大ニ商業上ニ活動ヲ与フルニ至ラン、既ニ本県下豊前中津ニハ大坂ノ例ニ傚ヒ倉庫会社ヲ設立セント目下其出願中ニテ、地方人民モ大ニ希望スル景況アルニヨリ保管倉庫条例ハ速ニ頒布アラン事ヲ望ム然リト雖トモ該倉庫ハ其取締法ノ如何ニ依リテハ或ハ空手形ヲ発行スル様ノ弊害ヲ生スルモ計リ難キニ付、其確実ノ方法ハ主務局ニ於テ充分御取調アラン事ヲ希望ス、又法律等ノ発行ニ付テハ田舎ト都会ト倉庫ノ構造及ヒ其資金ニ区別ヲ立ラレタシ、都会ハ火災等アル故構造ヲ堅固ニセサルヲ得サレト田舎ハ火災ノ憂ナキ故ニ其辺ヲ何トカ寛ニシテ許可アラン事ヲ望ム、又該倉庫田舎ニ立タサレハ都会ノミニ設立スルモ品物取寄方ニ付キ困却スル所アルヘシ、故ニ田舎ハ寛ニセラレタキモノト思考ス、将タ倉庫ヲ設クルニハ都会ニハ銀行或ハ貸金会社アレトモ、田舎ニハ銀行ノミナルカユヘ貸金ニ高利ヲ貪リ一般ニ商業進歩ノ途ヲ開ク能ハサル故、田舎ニテハ銀行ヨリ薄利ニテ貸出ス様特ニ保護アリタシ、又預リ商品モ其地方ニヨリ凡ソニ品名ヲ限リ置カサレハ取締上却テ不便ナラン、故ニ先ツ本県ニ於テハ米・麦・青莚・製糸・製茶・製蝋・砂糖・烟草・大豆等ノ如キモノト定メタキ見込ナリ
二番(京都府板原直吉)倉庫ノ必用ナルハ勿論ナリ、今之ヲ設立セン
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ニ初メヨリ大クスルモ行ハレス、元来商品ヲ抵当トスルモノハ資本ナキモノトシテ擯斥セラレ為換ヲ組ム事サヘ猶恥ルノ風習アル今日ユヘ、漸次歩ヲ進ムルニアラサレハ行レ難ク一時ニハ之レニ依テ金融ノ円滑ヲ計ル事モ六ケ敷カルヘシ、併シ京都ノ商業モ何時迄モ今日ノ姿ニ止ルマシク進歩発動スヘキユヘニ今日ヨリ設立ノ計画ヲ為サヽルヘカラス、将来其便宜ヲ知ルニ至ラハ之レヲ恥ルノミナラス却テ之レニ依ラサルヲ得サルニ到ラン、右ノ事情ユヘ大坂ト取引ノ要地タル伏木ヘ昨年六月ニ倉庫ノ少ナルモノヲ設ケタルニ、初メハ信用ナカリシモ倉庫ハ確実ニ営業スルヨリ人民モ次第ニ其ノ便利ヲ感シテ今日ハ其景況大ニ宜シク、十六年六月ヨリ十二月迄ノ下半季ニ八百三拾六円許ノ利益アリ、資本ハ弐万円ノ見込ナリシモ未タ壱万円ノ上ニ出テス、之レニテスラ半期ニ如此利益有リ、其預品ノ種類ハ米・麦・大豆等ヲ重トシ、京都ト伏木ニ第一国立銀行ノ支店アリテ其預券ニ対シテ金ヲ貸出シ、本年一月ヨリ六月迄ノ倉庫ノ利益ハ千百弐拾円ニテ之ヲ昨年ニ比スレハ五分ノ二ノ利益ヲ増シタリ、昨年ハ百石ノ米ヲ持参スレハ百石ノ預リ手形ヲ渡シタリシカ、今日ハ之レヲ割リテ三枚トモ四枚トモ為スユヘ預ケ人ニ於テモ拾枚ノ手形ノ内三枚ヲ留置キテ残リ七枚ニテ金融ヲ計ルノ便利ヲ得タリ、依テ其営業次第ニ繁昌シ、第一国立銀行ニ於テ昨年ハ弐万三千円余ヲ貸出シタリシニ、本年上半期ニ於テハ三万五千円余ニ上レリ、此景況ニ依レハ漸次盛大ニ赴クヘク最初ハ第一国立銀行支店ニテモ力メテ貸出シタルニ今ハ他ノ銀行商家モ貸出ス事ニ到レリ、此迄ニ至ルハ実ニ容易ノ事ニアラサリシ、故ニ実際倉庫ハ何処迄モ必用ナリ、今後益信用ヲ置ク様ニ英仏等ニ傚ヒ簡易ノ取締法ヲ設ケラレナハ会社人民共ニ充分便利ヲ受クヘク、京都府下ニテ資本ヲ注クヘキハ先ツ此等ノ事業ト存ス、左スレハ土蔵一ツナクテハナラヌト云フ様ナル卑屈ノ考モナクナリテ資金モ集リ、之レヲ営業トスルモノモ追々興ル事トナルヘシ、其法ヲ布カルヽニハ極高尚ナルヲ忌ム、差向ハ百石ヲ拾枚ニ分タル位ノ処ニ斟酌アラハ行ハレ易カルヘク、英国ノ法ニ傚フコソ宜カラン事ト思ハル
五十三番(福岡県石野寛平)問題ノ主意ハ会頭ノ説明ニ依テ承知セリ尚発言ノ人モアルヘケレハ簡単ニ申述ヘン、抑モ倉庫会社ハ我カ日本国ニ於テハ事新ラシク起サントスルモノニハアラスシテ古来ヨリ之レ有リシモノニシテ、其之レアリシトキノ事ヲ聞クニ大ニ便益ヲ与ヘタルニ疑ヒナシ、況ンヤ完全ナル方法ヲ以テ将来設ク可キ倉庫会社ニ於テヲヤ、故ニ本員ハ大声ヲ発シテ之ヲ賛成スルナリ、其取締方ハ準則ヲ布キ厳重ナル条項ヲ設ケテ之ヲ保護セスンハ利ノアル処又弊害ナキヲ保ツ可ラス、是大ニ戒心ス可キ所ナリ、且夫レ倉庫会社ノ方法ハ英仏等ノ現行法ヲ斟酌セラルヽモノトセハ、委托販売ト為換ヲ為ス事トノ二項ハ適宜タル可キ旨ヲ明ラカニ其準則ニ加ヘラレタシ、然スルトキハ土地人情ニヨリ利益ヲ見ル事アラン、真ニ今日ノ姿ニテハ銀行ノ働キモ未タ充分ニ運動セサル処アリ、是レ特ニ倉庫会社ニ於テ右二項ヲ併セ営ム事ヲ許サント望ム所以ナリ
六十番(札幌県田内捨六)倉庫ノ設立ハ今日ノ急務ニシテ商業繁昌ノ
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地ニ太タ必要ナルハ言ヲ俟サル所ナレトモ、県下ノ如キハ人口モ少ナク物産ノ販路ニモ差支ヘアリ、故ニ繁昌ノ地ニ倉庫会社ノ設ケアリテ此物産ノ販路ヲ得ルニ至ラハ宜シカラン事ト思ハル
会頭(品川忠道)倉庫会社ヲ設立シテ其営業ヲ為サントスルニ当リ、金銭上ノ利益ノミヲ謀ルノ精神先タツトキハ失敗ヲ招クノ基ナルヘシ、且設立ノ目的立チテモ之ヲ実行スルニ臨ミテハ自ラ取捨斟酌セ子ハナラヌ事アルヘシ、本員ノ考ヘニハ此倉庫会社ヲ立ルニハ先ツ其場所ヲ択ミ水陸運輸ノ便ヲ占メタル地ヲ得ルヲ第一トシ、而シテ其倉庫会社ヘ盛ニ荷物ヲ引入レシムルヤウ誘導センニハ公衆ノ為ニ便益ヲ謀ルノ精神アラサル可カラス、是等ノ倉庫ニハ人夫モ多ク雇ヒアリ、又荷物揚卸シノ為メニモ軽便ノ工夫ヲ設ケアリテ定雇ノ人夫モ常ニ仕事ノ多キヨリ其賃銭モ自ラ低廉ナルヘク、随テ預ケ人モ多キヲ致シ営業モ隆盛ニ趣クヘキ事ナレトモ、何分ニモ公衆ノ為メニ便益ヲ与フルノ精神アルヲ以テ緊要ナリトス、只今何番カノ陳述セラレタル如ク其地方々々ニヨリ斟酌シテ行フトキハ差支ノ廉モ之レアルマシク、而シテ之ヲ行フニ当リテハ公衆ニ便利ヲ与フル事ト利益ヲ謀ル事トノ権衡ヲ取ラサルヘカラス
七番(兵庫県加藤正義)主務員ニ問フ、明治十五年十一月商況月報中雑録ノ仏国共同倉庫法律第五条ニ云フ所ノ記載方ハ、預リ証券ニモ同様書込ヘキ筈ナルヤ
主務員(鶴田貫次郎)保証券ノミナリ
七番(兵庫県加藤正義)然ラハ預リ証券ヘ記載セサル所以ハ何ソヤ
主務員(鶴田貫次郎)従前ハ両方ニ記載シタレトモ改メテ斯クシタルナリ
七番(兵庫県加藤正義)然ラハ倉庫会社ヘ行ネハ其期限ヲ知ルニ由ナキヤ
主務員(鶴田貫次郎)然リ、従前ハ預リ証券ヘ書込タレトモ、商業上取引ノ場合ニ不都合アリテ商人ノ此書込ヲ嫌フカユヘニ特ニ法律ニテ之ヲ廃シタルモノナリ
七番(兵庫県加藤正義)又月報中一四四七葉ノ一行目ニ保証券ヲ携帯スルモノカ負債金ヲ返済ストアルハ如何ナル理由ナリヤ
主務員(鶴田貫次郎)其文意ハ負債主ハ期限前ト雖トモ借金ヲ返済シ得ルヲ云フナリ
七番(兵庫県加藤正義)然レトモ保証券ヲ持チ居ルモノ負債主ニアタルト云フ事解シ難シ
主務員(鶴田貫次郎)本行中其保証券トアルハ預リ証券ノ誤字ナラン能ク取調ノ上后刻確答スヘシ
会頭(品川忠道)月報ニハ印刷ノ誤リアルユヘ恐ラクハ誤リナルヘシ
七番(兵庫県加藤正義)倉庫ノ必要ナルハ勿論ナレト、問題ニ取締法云々トアルカ我国ハ初メテノ事ユヘ仏国ノモノヲ斟酌シテ此位ナレハ差支ナシト云フ迄論究スルモ差支ナキヤ
会頭(品川忠道)差支ナシ
七番(兵庫県加藤正義)神戸ニ確実ナル倉庫ヲ設立スレハ金融モ好クナリ、荷主モ集リ物貨モ集マリ仲買問屋等モ大ニ便利ヲ得テ相場ヲ
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崩サレ又ハ踏斃サレル等ノ憂ヲ防クニ足ラン、人民モ既ニ此辺ニハ気ノ附キ居ル程ノ事ユヘ是非トモ之ヲ設立致シタキモノナリ、又説明中ニ従来之レニ類スルモノアリヤトノ廉アルユヘ之ニ答ヘテ言ハンニ、兵庫ニハ大坂ヨリ支店ヲ設ケテ既ニ此倉庫ヲ営業トスルモノアリ、之ニ依テ商業上ニ如何ナル影響ヲ与ヘタルカ其細密ノ事ニ至テハ分明ナラサレトモ、昨年十二月頃ニハ金利日歩四厘五毛位ナリシニ右倉庫開店ノ為メニ弐厘五毛迄ニ下リタリト云フ、本員ニ於テハ果シテ然ルヤ否ヲ保スルヲ得スト雖モ市中ノ評ニハ上ニ述ヘタルカ如シ、兎ニ角右倉庫ノ設立ニ依テ問屋仲買等資本ナキモノモ商業ヲ営ミ易ク荷造リ方等モ倉庫ノ為メニ改良ヲ促サルヽ場合アリト云フ、又商人ノ言ニ兵庫ノ支店ハ大坂倉庫会社本店ノ規則ヲ用ユルカユヘニ些ト厳重ニ過ルト云ヘリ、然レトモ本員ハ兵庫人民ノ不規則ニ慣レタルカ故斯ク感スルナラント思考セリ、然レトモ商人ノ言フ所ハ手形ヲ売買スルニ届ケヲナサ子ハナラス之ヲ大坂ノ人ニ売ルニモ同様届ケテ而ル后其売買ヲ為サヽルヲ得ス、又時間モ九時ヨリ三時迄ト定リ居ルユヘ余リ窮屈ナリトノ事等是レナリ、其当否ハ暫ク措キ此会社ハ昨年十二月廿四日ヨリ本年九月十九日迄日数二百七十日間ノ預リ高米八万四千五拾八石壱斗壱升五合、雑穀弐千三百四拾八石九斗七升三合五夕、鯡粕壱万四千七百九拾壱石壱斗九升六合、数ノ子九拾石五斗弐升五合、白子六百三拾三石六升五合、煙草百八拾丸、帆木綿七拾本、苧百八拾丸ニテ、之レニ対シ融通会社支店ニ於テ、貸出シタル金高四拾弐万三千三百弐拾弐円ナリシ、之レニ因テ前陳ノ如ク商業上ニ幾分カ便利ノ影響ヲ生シタルナリ、又取締法如何ト云フ廉ニ対シテ申述ン、之ヲ如何ナル法ニセハ適当ナルカト云フニ未タ一年ニ足ラサル経歴ニテ能ク分リ兼ヌレトモ、先ツ本員ノ考ヘニテハ商人社会相互ノ信用甚タ薄キカ故ニ動モスレハ不取締ヨリシテ彼我迷惑ヲ被ムル事アリ、到底人民相互ノ契約ヲ以テ玆ニ信用ヲ得テ確実ナル会社ヲ設立スルハ六ケ敷事ナレハ、彼ノ株式取引所ノ如ク政府ヨリ充分干渉保護ヲ加ヘラルヽ事ニ致シ度、折角設立スルモ倒ルヽ様ノ事アリテハ甚タ後害ヲ遺スノ恐レ有リ、又会社カ相場ニ関スルハ禁セラルヽ様ニイタシタシ、一枚ノ手形ヲ二ツニ割キ用ユルハ今ノ日本ニテハ未タ適切ナラサレトモ、条例ハ矢張リ分裂使用ヲ許スノ方法ヲ以テ設ケサルヘカラス、又預リ手形ニ対シテ貸金ヲ為シタル債主其貸金不払ノ際裁判所ヘ訴出ルハ迂遠ニシテ実際差支ヘモアルヘキ事ユヘ別ニ裁判ヲ要セス、直チニ其商品ヲ売払ヒ之レニ対シテ先取ノ特権ヲ有スルモノト致シタシ、又預リ手形ヲ売買スルトキ一々会社ニ於テ之ヲ簿冊ニ記入スルハ事実其煩ニ堪ユヘカラス、裏書ノミニテ通用セシムル事トシ、之ヲ簿冊ニ記入スルト否トハ買主ノ都合ニ任セタシ、又売買双方ヨリ保証金ヲ会社ヘ差入レシムシル事トセハ如何ン、又倉庫ニ預クル商品ノ評価ハ之ヲ為シ居レトモ自今之ヲ為サスシテ済マス事ニ致シタキ事ナリ、之ヲ法律ニ加ヘ置カレン事ヲ望ム
九番(長崎県川崎胖)本県ニ於テハ未タ倉庫ノ設立モ之レナキ事ユヘ其取締法等ニ付テハ如何ニシテ実際ニ適スルヤ否ヤヲ知ラサレトモ
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既ニ七番・二番並三番等ヨリ縷々陳述モアリ・此取締法ハ折衷シテ之ヲ立ラルヽ事ト致シタシ、倉庫ノ設立ハ飽迄モ希望スル処ニテ今日ノ商業不振ハ実ニ是等ノ設ケナキニ因ルト思ハル、尤本県ニ於テ本年一月中ヨリ右主意ヲ以テ夫々勧奨ヲ加ヘタルニ有志者発起シテ該倉庫設立ノ計画中ユヘ政府ヨリ法律出ツルトキハ満足ナリ、猶参考迄ニ陳述ス、既ニ先年モ松田某ナルモノ倉庫ヲ設ケタレトモ当時貸金ノ運転劇ケシク且ツ金利ノ高キヨリ、倉庫ハ貸金ノ割合宜シキニ傾ケラレテ終ニ倉庫営業ノ方ハ見合ス事トナリシト云フ、他ニハ別段陳述スル程ノ事モ之ナシ
三十五番(山形県原田卯三郎)本県ニ於テモ亦此倉庫ノ設立ヲ可トセリ、県下酒田港ニ於テ旧藩治中之ニ類セシ倉庫有リシカ、此ノ倉庫ハ米穀ヲ預リテ倉敷料ヲ収ルヲ主トシ商法上ノ隆盛ヲ計ル為メニ設ケタルモノニアラサルヲ以テ、米質ノ良否ヲ問ハス濫リニ多量ヲ預リシ処、腐敗虫蝕等ノ損害ニヨリ遂ニ廃絶ニ属シタリト云フ、此倉庫ハ既ニ斯クノ如キ目的ヨリ成立タルモノニシテ商法ノ道ヲ滑カニセシモノニ非サルヲ以テ、当時商法上ニ与ヘタル影響ハ別ニ之ヲ述ヘスシテ将来倉庫設立ニ要スヘキ条項ヲ述ヘントス、即チ
  第一 政府ヨリ倉庫営業上ニ要スル一般ノ法律ヲ布カレン事ヲ望ム
  第二 府知事県令ニ於テ設立ヲ必要ナリトスルトキハ人民ヲ誘導シテ設立ヲ謀ルヘキ事
  第三 設立ニ当テハ其地ノ商法会議所又ハ商工諮問会員ノ意見ヲ問ヒ主務卿ノ認可ヲ得ヘキ事
  第四 倉庫ハ地方ノ景況ニヨリ米或ハ糸ト一種ニ限リ預ルヘキト又ハ二種以上ヲ預ルヘキトノ制限ヲ立ル事
  第五 身元保証金ヲ要スヘキ事
 前述ノ外仏国倉庫会社ノ法等ヲ斟酌シ二三ケ条陳述シタキ件アレトモ、時間ヲ費スノ恐アルヲ以テ別ニ筆記書ヲ呈スヘシ
三十六番(石川県石田磊)倉庫ノ必用ハ申ス迄モナク必用ナリト思考ス、尚ホ従来之レニ類似セシモノアリヤニ付テ言ハンニ昨年県下ニ出願人有リテ拾万円ノ資金ヲ以テ米・雑穀・砂糖・肥物ヲ預ル倉庫会社ノ設立ヲ願出タリシニ、是レハ他ノ会社ノ如キト異リテ危険ノモノト思ヒシユヘ其規則書ヲ添ヘテ本省ヘ伺ヒシニ人民相対ニ任スヘキ旨指令アリタリ、其後此会社ノ景況ヲ見ルニ資金モ纏ラス稍泣寝入リノ姿ナリ、好シ其資金ノ三分一ナリ半分ナリ集リテ開業シタルモノト仮定スルモ実際営業シ行クハ覚束ナキモノナリシナルヘシ如何トナレハ政府ノ保護モナク身元金モナク信用モ薄カリシモノナレハナリ、果シテ之ヲ設立スルコトヽスレハ余程其取締法ヲ厳ニシテ保護ヲ加ヘ株式取引所米商会社等ヨリ一層手厚クシテ今一歩強クイタシタシ、否ラサレハ空券ヲ出ス等ノ恐アリ、又委托販売ヲナサシムルハ便利ナルニハ相違ナキモ大ヒナル弊害ヲ醸スノ恐アリトス
会頭(品川忠道)物ニ迷ヒアルトキハ事ノ鈍ルヲ常トス、故ニ一事業ヲ起サンニハ其迷ヒヲ避ケサルヘカラス、倉庫会社ニ預カルヘキ物品ニ制限ヲ立ツルハ勿論緊要ノ事ナレトモ地方ニヨリ甲乙其要ヲ異
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ニスル今日ユヘ強チ一様ニ整備完全ヲ望ムヘキニ非ス、尤東京・大坂・横浜ノ如ク物品ノ輻輳スル地ニハ完全ノモノヲ設立スルニハ若ク事ナキモ、製茶ト生糸トヲ一所ニ置ク事モ出来キ難キ事ユヘ夫々方法ヲ設ケテ之ヲ別ニシ雑貨ハ雑貨ニテ自ラ之ヲ別所ニ置カサルヘカラス、故ニ従来設立シアルモノヲ之レニ向ケテ使用スル事トスレハ此倉庫ハ生糸ニ適シ是ハ製茶ニ適スルトシテ区別ヲ立テサルヲ得サルヘシ、先刻何番会員カ預リ手形ノ偽造物出テトンノ御懸念アリ至極御尤ノ事ナレトモ此手形ハ素ヨリ簡単ノモノニアラスシテ銀行手形程ノ厳重ニハアラサルモ偽造シ易キモノニ之レナク、赤色ノ目印ナト付ケアリテ一見シテ倉庫ノ手形ナルヲ知ラルヽホトノモノナレハ偽造ノ一点ハ深ク憂フルニ足ラサルヘク、且ツ厳重ノ取締ヲ為ストキハ空手形ニ流ルヽ事モアラサルヘシ、故ニ偽造空手形等ノ出ツル恐レナシト信シテ其迷ヲ避ケラレン事ヲ望ム
六十二番(宮城県播磨屋久治)本員モ倉庫会社ノ必用ナル事ヲ感セリ本県下ニ於テハ奥羽水陸運輸会社ナルモノアリテ殆ント問題ノ倉庫会社ニ類似シタルモノナリ、先ツ県下ノ情況ヲ述ヘ然ル後希望スル所ノ要点ヲ言ハン、此運輸会社ハ資本金拾万円ニシテ倉庫及船舶等ノ資金ニ充テ、而シテ商貨ヲ保管シテ之ニ預券ヲ附与シ、第一国立銀行ハ其預リ券ニ対シテ貸付ヲナス事ニ契約セリ、今日其業ノ行ハルヽケ所ハ宮城県下ヲ主トシ福島・山形・岩手県下等ニモ及ホセリ(福島・山形・岩手等ニハ支店アリ)其事業ノ景況ハ創業ノ際ナルヲ以テ預物品ノ種類ヲ凡ソ二拾九種(確トハ述ヘ難キモ)ニ限レトモ、発火品等危険ノモノハ之ヲ除キ追々ニ物品ノ種類ニ拘ラス取扱フノ見込ナリ、此ノ会社ハ昨年秋ニ業ヲ開キ本年六月迄ニ金融ヲ助ケタル事弐拾余万円ニシテ金融逼迫ノ為メニ時価ヲ左右セシメサルノ効能アリ一体租税納期ニ迫レハ時価ノ如何ニ拘ラス物品ヲ売却セサルヲ得サルニ、此ノ会社ニテ物品ヲ預カリ金融ヲ与フルユヘ時価ヲ落サヽルノ傾向アリ、尤モ是レハ此六七ケ月間ノ景況ニシテ石ノ巻其他弐拾余ケ所ニ支店ヲ設ケ各其地方ニ就テ借得ラルヽユヘ金融一方ニ偏セサルノ効験有リ、此ノ会社等設立セサル処ハ金利日歩ニテ四厘位ナレトモ該会社ノ支店アル地ニテハ弐厘ヨリ弐厘五毛ニ止マリ金融ヲ助クル事一ト方ナラス、随テ業務モ亦盛ナリ、故ニ今日ニ於テハ倉庫ハ此方ニテ設立スルユヘ其業務ハ会社ニ於テ取扱ヒ呉レタシト云フモノアルニ至レリ、是レ倉庫サヘアレハ金融ノ便利ヲ得ラルヽ事ト知リタル故ニシテ、独リ官吏ノミナラス人民モ亦利益有ルヲ知レリ、故ニ此類ノ倉庫ハ之ヲ弐拾余ケ所ニ止メスシテ隣県ニ迄モ拡メ充分便利ヲ得セシメタキ事ナリ、問題ニハ各要地トアレト斯クノ如キ事業ハ可成充分ニ拡張セサルヘカラス、又之ヲ永遠ニ保持スヘキ考ハ我県下ニ取テ言ヘハ彼ノ運輸会社ノ如キ最モ信用ヲ取ラサルヘカラス、該会社ニ於テハ幸ニ空手形ナト発スルノ恐レナク又発スルノ事情モナシ、是レ県庁ニテ監督スルニ因ルコトニテ危害ヲ未前ニ防クハ緊要事ナリ、故ニ此ノ如キ会社ノ設立ハ充分撿束ノ法例ヲ布キ現今行ハルヽ銀行撿査ノ如ク臨時ニ其業務ヲ撿査セン事ヲ望ム、此倉庫会社ハ地方ニ依リ資本金拾万円ニテヨキモノアルヘケレト資
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本金ノ多キ方ニ信用ノ帰スルハ言フ迄モナキ事ユヘ全国一様ニ政府ヨリ保護アルニ於テハ幸福ナリ、則政府自ラ幾分ノ株主ニ加ハリ成ルヘク金利ヲ低廉ニセシムル方法立テハ単ニ人民カ金融ノ便ヲ得ルノミナラス低利ノ金ヲ使用スル為メニ事業モ間接ノ発達ヲ為スニ至ラン、又従来之レニ類似ノモノナカリシヤト言フニ亦決シテナキニアラス、尤維新後ハ旧慣ヲ破壊スルノ傾キト倶ニ漸次衰廃ニ帰セシナレトモ畢竟新ニ移ルノ気風有ルヨリ玆ニ至リシ事ナラン、維新前ノモノニ付キ御参考ニモナランカト其実況ヲ陳述センニ本県内ニハ非サレトモ、秋田地方ニ土港《(崎脱)》ト云フ船着場アリ、旧時玆ニ十二軒ノ廻船問屋アリテ株式ニ依リ営業セシカ此株式問屋ニ行ハレタル一例ヲ挙クレハ、例ヘハ米千石ヲ此問屋ニ預ケ、其預リ券ヲ持行キテ函館・福山等ニ至リテ売ルヲ得タリ、此預券ハ金貨ト同様ニ取引ヲ為セシハ実ニ当代ノ美事ト云フヘシ、今爰ニ米千石ヲ福山地方ニ売ルヲ約シ、拾分一ノ手金(約束金ニシテ拾分一ハ慣習ナリシ)ヲ取リ、更ニ現米ヲ期月マテニ回漕セントスルモ如何セン此米ハ他ニ抵当品トナリ居レリ、依テ借金ヲ掛戻サン為メ価五千円ノモノナレハ六分即チ三千円ノ補金ヲ船主ヨリ取リテ債主ニ弁償シ、以テ現米ヲ約定ノ地ニ送リ受渡之節補金及ヒ運賃金ハ船主ニ返却シ、余金ハ懐ロニ収メ更ニ商業ニ就キシナリ(若シ或場合ニ於テ買主金員ニ差支ヘ若クハ其他ノ事故アリテ現品ヲ受クルヲ得サレハ手金ヲ棄却シ売主事故アル時ハ手金ヲ倍返ニスルノ慣例ナリキ、但シ約定後廻漕荷物ニ付テハ此ノ限ニアラサリシナリ)此他商品ト商品トノ為換受渡及ヒ商品預券ト手形ノ為換等信用ヲ以テ取引セシノ例蓋又少カラス、又問屋ト船トノ関係ハ日本船ハ一般ニ大坂廻船御法ニ依リテ惣テ之ヲ契約ノ慣法ト為シタリト云フ、是等ハ倉庫ニシテ廻船ノ事ト問屋ノ事迄モ並セ行ヒシモノニテ当時ハ旧藩政府ニ於テ保護アリシ事ニテ更ニ弊アルヲ見サルカ如シ、維新後ハ之レニ代フル法律ナキヨリ此ノ如キ有様ニ至リシ事ナレハ今日ニ於テハ是非トモ倉庫ヲ設立スル事トシテ其取締法ヲ布カレ商業上ノ便利ヲ増進シ其災害ヲ防カレン事ヲ希望ス、今日ハ日歩弐厘五毛ヲ常トシ高キハ三厘五毛低キハ弐厘ナリ、銀行ニテモ壱割弐歩位ノ配当ナクテハ立行マシク此等ト結約スルモ到底充分ニ利子ヲ安フスルヲ得サルヘシ、故ニ政府ヨリ特別ノ保護アリテ日本銀行ノ如ク政府自ラ幾分ノ株主トナリテ倉庫会社ニ於テ保管セシ物貨ニ対シ低利ノ貸金ヲ為スヘキ資本ニ充テシムレハ民間ノ金融ヲ増進シテ忽チ倉庫会社ノ必要ヲモ感スルニ至ラン、故ニ政府モ株主トナルノ特典アラン事ヲ希望ス、又輿論カ倉庫設立ノ必用ナル事ニ帰シタル上ハ一日モ早ク着手アリタキモノナリ、敢テ愚考ヲ述ブ
五番(神奈川県増田知)倉庫設立必要ナルハ言ヲ俟タサル所ニシテ、果シテ設立セハ之ニ因テ商業ヲ活溌ナラシムルハ疑ヒヲ容レス、其取締法如何ニ付テハ別段考案ナシト雖モ只政府ノ法律ヲ以テ保護セラレン事ヲ望ム、尤モ横浜ニハ倉庫会社及均融会社有リ、其実況ハ嘗テ貴局員出張ノ上親シク取調ラレタルヲ以テ篤ト御承知ノ事ト信ス、右両社共今日ニ於テハ殆ント休業同様ノ有様ナリ、他ニ何等ノ原因アルヤ否ヲ知ラスト雖モ斯ク衰頽シタルハ全ク信用ナキニ因ル
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事ト思考ス、抑モ該二社ノ起ルヤ曾テ両三年前聯合生糸荷預リ所ナル者ヲ設立シタルニ種々ノ紛紜有リテ終ニ廃絶シ、之ニ尋テ右両会社トナリシ者ト思ハル、今日ハ一ケ所ニ二箇ノ札ヲ掛ケ居レトモ世間ニテ信用セサル故カ斯ク不振ノ現況ナリ、即チ其生糸ハ三井物産会社トカ又ハ亀善・野惣其他売込商ノ手ニ落チ、茶モ亦夫々ノ商店ヘ持行テ此倉庫会社ヘハ依頼セス、是レ別ニ不正ノ事ナトアルニアラサル事ト信スレトモ斯ク不繁昌ナルハ全ク信用ヲ得サルニ坐シ、其ノ信用ヲ得サルハ政府ノ保護ナキニ依ル者ト信ス、今七番会員ノ述ヘタル如ク株式取引所条例ノ如キモノヲ設ケテ信用ヲ得セシムル様法律ヲ以テ定メラレタシ、而シテ横浜ハ地所ニ乏シト雖モ之ヲ求メハナキニハアラス、現在ノ弁天橋際ノミニ限ラサルヘク港内沿海又ハ川添等ノ地ヲ求メハ巨大ノ倉庫堅牢ノ倉庫ニ要スル場所ハ猶充分アルヘキモノト信セラル、故ニ玆ニ希望スル点ハ充分ニ世人ヲシテ信用ヲ置カシムヘキ法律ノ発布アラン事是レナリ
会頭(品川忠道)一言致シタキ事アリ、抑倉庫会社ノ営業ヲ創ルムニ当リ只人ノ品物ヲ持テ来ルヲ待ツノミニアラサルハ諸君モ御承知ノ事ナルヘク、倉庫会社ニ於テハ物品ヲ預リ、其販路等ニモ注意ヲ用ヒサルヘカラス、地方ニヨリ其ノ物品ノ異ナルハ勿論ナルヘク、宮城県下等ニ於テモ米ヲ預カル倉庫第一ナルヲ以テ此種ノ倉庫ニシテ果シテ設立スル事トナレハ米穀ノ輻輳スル事従前ニ倍蓰スルハ自然ノ勢ナリ、而シテ殊ニ納税期限等ニ際スレハ米穀ヲ此倉庫ニ預ケ入レテ以テ一時ノ金融ヲ開クヲ得、其便益大ナリト雖モ、又其預ケ入レタル多量ノ米穀ヲ一時ニ売出シ為メニ米価ヲ低落セシムルノ恐レナキ能ハス、此辺ハ其倉庫ニ於テモ予メ十分注意セサルヘカラサル所ナリ、倉庫会社ノ必要ナルハ諸君ノ陳述モアリシ通リ疑ナキ所ニシテ、右米価ノ大下落ヲ惹起スカ如キ事アリトスルモ是レハ注意ノ如何ニ在ル事ニシテ、倉庫会社其モノヽ悪キニハアラス、是レ其注意ヲ要スル所以ナリ、蛇足ナカラ一言シ置ク事爾リ
三十八番(富山県斎藤十郎)倉庫会社設立ノ必要ナルハ本員ニ於テモ之ヲ信セリ、本県高岡町ニハ許可ヲ得テ設立シタル倉庫会社アリ、併シ未タ盛大ニハ至ラス、此度ノ問題ニ倉庫ノ項アリシヲ以テ其景況ヲ問ヒ答書ヲ得タルユヘ御参考ノ為メ之ヲ呈スベシ
四十五番(広島県杉山新十郎)本県ニ於テモ倉庫会社ノ設立ヲ望ムハ勿論ナリ、其取締法ハ各員ノ説ノ通リニテ他ニ然ルヘキ良法アルヲ知ラス、且御諮問ノ後段ニヨリ我県下ニ是迄設立シアル倉庫会社ノ情況ヲ一言シテ聊カ御参考ニ供セントス、一体広島ハ日用ノ米麦ハ常ニ品不足ヲ告ル土地ユヘ絶エス之ヲ貯ヘ置カサルヲ得スシテ此等ノ取引ハ随分頻繁ナリ、其他藍・綿・肥シ物等ノ類モ余程ノ取引ヲナセリ、故ニ此倉庫ナルモノアラサレハ一ハ金融ニ差支ヘ一ハ保管ノ道モ立チ難キヨリ去ル十五年ノ春屈指ノ商家数名申合セテ共同倉庫ヲ設ケタリ、之ヲ広島倉庫会社ト云フ、此会社ハ之ニ因テ一般ノ金融ヲ滑カニシ商品ノ保管ヲ為スノミナラス荷主ノ依托ニヨリテハ之カ販売ノ紹介ヲモナスノ規約ナリシト雖モ、他ノ人民ニ於テハ発起セシ有志家程ノ感覚ナキヨリ当初ハ此業更ニ行ハレス、空ク倉番
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ヲ為シ居ルノ姿ナリシ、是レ倉庫ノ必用ナルヲ知ラサリシニ因ルモノナリ、於是会社ハ殊更ニ某々ノ商人ヲ促カシ物品ヲ預リテ其便利ヲ知ラシメタルヨリ、昨今ハ漸ク其便利ナルヲ知ルニ随ヒ追々緒ニ就クモノヽ如シ、現今迄ノモノハ全ク有志者ノ協同上ニ出タルモノナルユヘ自ラ信用モ薄ク斯ク微々タルモノナレトモ猶此上法律ヲ以テ保護セラルヽ事トナリ、且ツ其取締法ヲ設ケ便益ヲ与フルトキハ此等ノ倉庫モ決シテ今日ノ如キモノニハ止マラサルヘシ、殊ニ広島ノ河口ノ築港モ已ニ着手シ、猶山陰・山陽交通道路ノ修築モ今将ニ着手セントス、此二事業ハ共ニ三ケ年ヲ期シテノ起業ニテ竣功ノ日ニ至ラハ其運送ノ物貨ハ実ニ今日ノ比ニアラサルヤ必セリ、此時ニ至ラハ益々倉庫ノ必用ヲ感スヘキナリ
四十七番(和歌山県平田綱一郎)倉庫設立ノ可否ニ至リテハ恐ラク之ヲ否トスルモノアラサルヘシ、本員ニ於テモ素ヨリ希望スル所ニシテ、第一項問題ニ対シ陳述セシ如ク実ニ商業ノ盛衰ハ一国製産物ノ消長ニ関スルモノナレハ鋭意商業ノ隆盛ヲ図ラサル可ラス、而シテ今日ノ有様ヲ改良スルハ商家資本ノ活動ヲ滑ニスルニ在リ、其ノ活動ヲ滑ニスルニハ共同倉庫ハ是非トモ必用ナリ、手形条例ハ既ニ発布セラレシカ倉庫ニ付テハ未タ条例ノ発布モアラス、故ニ手形ヲ利用スルヲ得ス、手形条例ト商品保管倉庫条例トノ並ヒ行レン事ヲ希望ス、本県ハ商業ニ富ムト云フ地位ニ非サルヲ以テ従来之レニ類似ノモノモ別段ナキ故ニ其事跡ニ付テハ述フヘキモノナキモ、倉庫会社取締法ニ付キ十五年出版ノ月報ニ掲ケラレタル英仏ノ倉庫ノ組織取締法等ヲ䤁酌シテ我国ニ適当ノモノヲ述ヘンニ、先ツ倉庫条例ヲ発布セラレン事ニテ、而シテ其条例中必要ト認ル条々ヲ左ニ述ヘンニ第一倉庫ヲ設立スルニハ中央政府ノ許可ヲ受ル事米商会所・銀行等ト同一ナラシムル事、第二設立出願ハ地方庁ヲ経由シ、地方長官ニ於テ願人ノ身元ヲ調査シ其意見ヲ添ヘシムル事、第三国立銀行・米商会所ト同様ニ政府ノ監督ヲ受クル事、第四願人ノ身元保証金トシテ公債証書或ハ地券ヲ預ケシムル事、第五ハ営業者ニ手形売買等ノ業務ヲ兼業セシメサル事、第六売買双方ノ裏書ヲ以テ其所有権ヲ移転セシムル事、第七預リ品ニ対シテ保険ヲ附スル事、第八返済期限ヲ過クレハ裁判ノ力ヲ仮ラス随意ニ其預リ品ヲ権利者ニ於テ販売スル事、第九預リ券ニハ一定ノ文例ヲ定ムル事、第十手形ヲ以テ銀行等ト金融ノ便ヲ計ラシムルニ一層ノ便益ヲ与ル事、第十一営業人ハ暫ク国税ヲ免除スル事、第十二手数料及ヒ倉敷料ノ制限ヲ設ケタキ事、第十三預ケ物品ノ詐偽ヲ予防スル事是ナリ
三十二番(秋田県高城守久)本員ニ於テモ倉庫ハ必要ノモノト考フ、且ツ玆ニ一ノ希望アリ、倉庫会社条例中ニハ資本金高ヲ定メラルヽ事ナランカ其資本金ノ範囲ヲ広フシ地券ヲ活用シテ之ニ充テシムル事ト為ス是レナリ、例ヘハ資本金拾万円ナレハ其壱分ヲ正金ニシ、九分ヲ地券抵当ニテ済マセル事トスレハ便宜ナルヘク、万一会社ニ損失アリシトキハ評価人ヲシテ評価セシメ、公売ノ上其株金ヲ払入ルヽ約束ヲ為シ置カハ危険ノ事モアルマシク、只此公売ニ付スル道サヘ付キ居ラハ夫レニテ宜シカルヘク、地券株ニアラサルヤウ致シ
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置キタシ、又倉庫会社ニテ荷物ノ保管ヲナサスシテ貸金ノミヲナスモノアリト聞ク、此貸金ヲ為ス事ハ之ヲ禁セラルヽヤウ致シタシ、而シテ説明中ニモ之レアル取締法ハ実行ノ上ニアラサレハ其可否ヲ知リ難キモ、之ヲ制定セラルヽ事ナラハ英仏ノ法ヲ斟酌折衷シテ十分保護セラレタシ、従来県下ニハ倉庫類似ノモノナシ、只県下或港ニハ預リ米ヲ為シ、其預リ券ヲ銀行ヘ持行キテ金ヲ借入ルヽモノアリ、尤モ旧藩政ノ頃ニハ倉庫類似ノモノアリシト雖モ其仕組ハ略ホ六十二番ノ陳述セシモノヽ如クナルユヘ此ニ贅セス
会頭(品川忠道)倉庫ハ三府五港ノミニ設立セシムレハ足ラントノ感モアランカ、此倉庫ナルモノハ何レノ地ニ於テモ必要ナラサルハナシ、例ヘハ山ヨリ茶芽ヲ持チ帰リテ製造ノ後俵ニ入レ、適当ノ倉庫ナキタメ土間ニ積置キ二ケ月三ケ月ヲ過クル中ニハ香気モ抜ケ易ク味モ亦随テ減スル事ナルヘシ、其後之ヲ得意先ニ送ルニ此ニモ倉庫ナキタメニ之ヲ雑貨ノ土蔵ニ入レ或ハ臭気アルモノト混同シテ数月ヲ積置クヨリ開港場ニ持行ク頃ニハ終ニ全クノ不良品ニ変スル等ノ事アルハ遺憾限リナキ事ナリ、過刻三府五港ノミニ設クレハ可ナラントノ説モアリシヤニ思フカ、決シテ然ルニアラス、地方々々ニヨリ大ナリ小ナリ之ヲ設ケサルヘカラス、故ニ此倉庫ハ相当ノ組織ニテ之ヲ各地ニ設立致シタキ事ト思考ス
二十九番(岩手県鹿討直五郎)本県ニ於テハ倉庫会社類似ノモノト云ニハアラネトモ倉敷料ヲ取リテ物品ヲ預ル所二三ケ処アリテ大ニ便利ナルヲ知レリ、又昨年秋期ニ至リ物価ハ下落シ地祖ハ上納セネハナラス農家大困難ヲ生シタル際、県下花巻地方ニ於テ勧業世話掛ノ斡旋ニテ農家ノ米ヲ預リテ金ヲ貸附ケ、好景気ニ復シタル節其米売却シテ金融ヲ滑ニセシコトアリ、旁倉庫ハ商家ノミナラス製産者ニモ便利ヲ与フルモノナレハ、相当ノ者ヲ設立スル事ハ切ニ希望スル所ナリ、就テハ此倉庫営業ニ肝要ナルモノハ信用ニシテ手形発行モ信用厚カラサレハ行ハレ難カルヘシ、故ニ願人アルトキハ其身元ヲ糺シ身元金ヲ政府ニ出サシメ充分保護勧奨シテ信用ヲ得セシムル様ニ致シタク、此他取締法等ノ如キハ彼是斟酙《(酌)》シテ適当ノ者ヲ設ケラレタシ、左スレハ其手形モ信用ヲ得テ金融モ滑ニナル事疑ナカラン
二十二番(静岡県大塚義一郎)只今迄此問題ニ付キ意見ヲ陳ヘサリシハ商業繁昌ナル地方各員ノ意見ヲ承ハル為メナリシカ、本県ニ於テモ此倉庫ヲ設立セシメント欲シ商法会議所ニ諮詢セシ事アリ、其次第ハ他日書取ニテ差出スヘシ、就テハ東京市中ニ行ハルヽモノニ付テ概略ヲ承知致シ度ク、願クハ会頭ヨリ一番会員ニ指名セラレテ其一言ヲ煩ハサン事ヲ希望ス
一番(東京府金田敬親)東京ニハ倉庫会社アリ、創立日尚浅ク且ツ其組織法未タ完全ナラスト雖トモ、此前半季ニテ預リタル雑品四拾弐万箇、米弐拾九万俵ナリト云フ、斯ク好結果ヲ得タルハ人民ニ便利ヲ与フルカ故ナラン、此後条例頒布ニ至ラハ倉庫会社ノ組織モ自ラ定マルヘキ事ナレトモ、本員ノ考ヘニテハ先ツ一ケ処ノ資本金拾万円以上トシテ之ヲ無限責任トシ、倉庫ノ築造方ヲモ定メテ其ノ預ルヘキ商品ノ種類ヲ限リ、而シテ手形ハ仏国ノ如ク二ツ割ニナスハ民
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情ニ適セサルヘキユヘ、英国風ニ致ス方宜シカルヘク、手数料等モ成ルヘク低廉ニ致シタク此等ノ点ニ付テハ最モ政府ノ保護監督ヲ希望セサルヲ得ス、又倉庫会社ノ設立余リ多キニ過ルトキハ之カ為メ競争ヲ生シ却テ其効用ヲ害スヘキハ火ヲ視ルカ如ク明ラカナルユヘ相当ノ数ニ制限スヘシ、右陳述スルカ如キ組織ハ他ノ地方ヘハ適用致シ難キヤモ計ラレサレト東京ハ他府県トハ之ヲ特別ノモノト致シ置キ、彼ノ米商会所、株式取引所ニ対シ鼎足ノ勢ヲ為サシメン事ヲ希望ス
十七番(千葉県中村衡平)壱番ニ問フ、今一番ハ倉庫会社一ケ所ノ資本ヲ拾万円ト言ハレシカ是ハ現今ノモノニ付テ将来ヲ謀ラレタルモノナリヤ、東京ノ如キ大都会ニテ拾万円位ニテモ好キヤ、如何ノ割合ニヨリ右ノ如ク考ヘラレシヤ弁明ヲ乞フ
一番(東京府金田敬親)先ツ拾万円ニテ宜シカラント思フ、倉庫築造等ノ費用ヲ除カハ拾万円位ニテ足ラン、最モ本員ニ於テモ拾万円ニ限ルヘシト云フニアラス、拾万円以上ト云フナリ、先ツ拾万円位ノモノヲ初メトシテ漸次二拾万円、三拾万円ノモノヲ起サスヘキナリ
十七番(千葉県中村衡平)現今東京ニ設置シアルモノハ、其ノ資本金弐拾万円ヨリ多額ナラン如何ニヤ
一番(東京府金田敬親)本員モ多額ナリトハ聞キ居レト、何分信シ難シ
二十四番(滋賀県田村正寛)会頭並ニ各会員諸君ノ高説モアリテ倉庫会社ノ必要ナル事ハ既ニ十分之ヲ知悉シタレハ、今更ニ之ヲ陳述セス、然レトモ本県下ニハ昨十六年十一月ニ設立シタル倉庫・融通ノ二会社アリ御参考ノ為メ其要ヲ一言スヘシ、倉庫取締法ハ七番等ノ説アリシユヘ之ヲ略シ右二会社ノ全体上ヨリ陳述センニ其設立以来商業上ニ影響ヲ与ヘタル点ニ付テハ一々之ヲ指摘シ難キモ、其預リ品ハ米穀・菜種・肥物等ヲ以テ重モナルモノトシ、設立日尚浅フシテ充分ノ所ニハ達セサレトモ既ニ弐拾七万余円ノ手形ヲ出シ且割引高ハ五万五千余円アリ、此等ノ金高ハ即チ其商品ノ尚未タ売レサル前ニ金ニナリシモノニシテ、是レ丈ケハ確ニ商業上ニ其影響ヲ与ヘタル証ナリ、又此他農業上ニ及ホシタル影響ヲ述ヘンニ昨年米価ハ下落シ納税期限来リテ金融逼迫シ金利ハ壱割五分・弐割ニ上リ、市街ハ左程ニアラサリシモ田舎ハ大困難ニ遭遇シタリ、此際右会社出来シタルヲ以テ県官ニ於テ勉メテ人民・戸長等ニ懇諭シ其融通ノ途アルヲ知ラシメタルヨリ之カ為メニ預ケニ来リタルモノモアリ、又一方ニ手形ヲ金円ニ交換スル低利ノ融通場アルヲ知リシカ為メ縦ヒ爰ニ預ケ来ラサルモ其ノ影響ハ一般ニ波及シ、遂ニ利子モ壱割以内ニ入リ農家ニ於テモ大ナル便利ヲ得タリ、是レ其与ヘタル影響ノ大略ナリ、後来敦賀・中仙道等ノ鉄道竣功ノ日ニ至ラハ県下大津ノ如キハ愈々物貨輻輳スルニ至ルハ必然ノ勢ニ付、右二会社ノ如キモ政府ヨリ法規ヲ設ケ保護セラルレハ益々信用ヲ堅固ニシ愈々盛ンナルヘシ、然レトモ此類ノ会社ハ目下一箇独立ニテハ行レ難シ、既ニ第一項問題ニ付テモ述ヘタル如ク会社法定マラサレハ単ニ民約ニテハ信用自カラ薄キノ憾ミアリ、且ツ又県下倉庫会社ノ申合条款ヲ見ル
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ニ保険ノ法ナク仮令ヘ預リ品ノ天災等ハ勿論鼠喰腐敗等損害アルモ其責ニ任セストアリ、是レニテハ保管ヲ請フモノモ信用ヲ置ク事薄シ、畢竟完全ナル倉庫ノナキニ由ルヘシ、此辺ノ処ハ其宜キヲ得ルヤウ商務局ニ於テ御詮議アラン事ヲ希望ス
四十六番(山口県玉井進)本県下ニハ倉庫会社之レナシ、併シ米・綿ノ二種ニ付テハ似寄ノ営業者アレトモ問題ニ応スヘキホトノモノニアラサルヲ以テ詳細ヲ陳述セス、其設立ハ必要ニシテ大ニ望ム処ナリ、赤間関ハ之ヲ設立スルノ要地タレハ誘導シテ設立セシメ漸次其他ノ要地ニ設ケシメント欲ス、取締法規ノ如キハ今日ニ於テ未タ見込ナシ
十二番(函館県井深基)倉庫ハ必要ナリ、我カ函館港ニ於テハ既ニ有志者数名此会社ヲ設立セント目下専ラ計画中ナリ、曩ニ清仏開戦ノ電報達シタルトキ昆布ノ価俄ニ下落シ、弐百七八拾円ヨリ三百円位トナリ製産者大困難ニ陥リタルユヘ、或ル会社ヨリ貸付金ヲ為シテ融通ノ途ヲ付ケタルニ、久シカラスシテ四百円以上ノ価格ニ復セリ是等ノ事アリシヲ見テモ倉庫会社ノ必要ナルハ言ヲ俟タス、其取締法等ニ至リテハ各員ノ意見ニ同シキユヘ此ニ贅セス
五十六番(熊本県陣内宗六)本県ニ於テモ倉庫会社ノ行ハレン事ハ頗ル希望スル所ナリ、但シ我ガ県ニハ倉庫会社ノ設ケハアラサレトモ一昨年来管内人民ノ協同力ヲ以テ庁下ニ物産陳列場ヲ設立セシカ、先般来該場ヨリ此説明書ニアル手形ニ稍類似セル預リ切手ヲ振出スノ方法ヲ設ケタリ、併シ此場ハ常ニ資本金之ナキユヘニ二三ノ銀行ニ於テ資金ヲ振出ス手段ヲ設ケ、陳列場ト銀行トノ間ニ結約シ、是ニ因テ商業上ノ金融ヲ滑ラカニスルハ勿論、管内物産ノ第一重ナル米穀ノ如キ者ヲシテ売買ヲ簡易ナラシムルニ至リナハ、独リ当地方ノ商業ノミナラス他地方ノ購求者ニモ頗ル便利ヲ与フヘシトノ目的ニテ、銀行頭取及ヒ支配人等モ前陳資金振出ノ求メヲ諾シ已ニ昨今之ヲ実施スル処ニテ、例ヘハ預ケ人ノ望ニ由リ百俵ノ米ヲ十口ニ分ケテ預リ切手ヲ出ス事ヲ得ルモ、此切手ヲ以テ売買スルカ如キハ未タ法律ノ許サヽル処ナルヲ以テ、現米見本或ハ倉庫ノ現品ヲ一覧セシメテ売買ヲ履行スル丈ケノ手続ニ止メ、認可ヲ与ヘタルニ実施ノ手続キハ寔ニ確実ナレトモ尚甚タ狭隘ナルノ姿アリ、故ニ預リ切手ヲ以テ売買流通ノ法ヲ布カレナハ尚一層商業上ニ活路ヲ与ヘ通商上便利少ナカラサル見込ニ付、何分速ニ説明書ノ前段ニ出ツル処ノ簡易ナル預リ切手ヲ発行シ得ル会社法ヲ設ケラレン事ヲ冀望ス、尤モ此会社ノ設立人ハ成ルヘク身元金ヲ官庁ニ預ケ置カシムル事ニ致サレタシ
十番(新潟県高木惟矩)本員ニ於テハ各員ノ意見モアレハ別段ニ陳述セス書取トシテ呈スヘシ
会頭(品川忠道)此問題ニ付テハ各員ヨリ充分陳述セラレ、甚タ満足ニ存スル所ナリ、就テハ商務部ノ会議ハ此ニ終リヲ告クル事トシ、本日ハ嘗テ申述ヘ置キタル商業学校ヲ一覧ニ供シタク同学校ハ木挽町十丁目ニ在リ、午後二時迄ニ各員同校ヘ賁臨アラン事ヲ希望ス
会頭(品川忠道)終会ヲ告ク、時ニ零時二十分ナリ
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〔参考〕明治前期 財政経済史料集成 第二〇巻・第六七九頁 昭和八年一一月刊(DK180033k-0011)
第18巻 p.359 ページ画像

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