デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.3.6

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

7章 経済団体及ビ民間諸会
1節 商業会議所
2款 東京商工会
■綱文

第19巻 p.93-100(DK190013k) ページ画像

明治21年8月22日(1888年)

是ヨリ先、大村五左衛門ノ建案ニヨリ肥料糠濫製取締ノ儀ニ就キ審議セシガ、是日栄一当会会頭トシテ東京・京都・大阪・神奈川・兵庫・三重・愛知・静岡・和歌山ノ各府県知事宛書ヲ送リ、管下ニ於ケル肥料糠濫製ノ取締方ヲ依頼ス。


■資料

東京商工会議事要件録 第三二号・第一三―二七頁 (明治二一年六月)刊(DK190013k-0001)
第19巻 p.93-97 ページ画像

東京商工会議事要件録  第三二号・第一三―二七頁 (明治二一年六月)刊
  第十六定式会
          (明治二十一年五月廿一日開)
  第廿九臨時会
    会員出席スル者 ○二十九名
○上略
次ニ会長(渋沢栄一)ハ是ヨリ第一号議案ヲ議スベキ旨ヲ告ゲ書記ヲシテ之ヲ朗読セシム
(第一号議案)
    肥料糠濫製取締ノ儀ニ付建議
 元来糠ノ義ハ肥料及牛馬ノ飼料ニ必要ナル品物ニシテ其品柄ノ如何ニヨリテハ頗ル有害ノ結果ヲ生スル事ナシトセズ、是レヲ以テ往時旧幕府ノ頃ニハ其品柄ニ関シ厳重ナル取締法有之御維新後ニ於テモ明治十七年頃迄ハ金剛砂早搗ノ法ヲ禁セラレ、随テ糠ニ雑物ヲ混和スル者ノ如キハ夫々処分セラレタルコトモ有之候処、明治十七年十二月東京府甲第四拾七号布達ヲ以テ全ク此金剛砂早搗ノ禁ヲ解カレタルヨリ取締法自ラ弛緩トナリ、爾来各地製産者ハ此機ニ乗シ奸策ヲ逞シ糠ノ目方及ビ分量ヲ増大ニセンガタメ殊更ニ之ニ多量ノ砂ヲ混和スル者有之、近来ニ至リ此弊一層甚シク相成、現ニ府下ヘ入津スル紀州・摂州・尾州・勢州・泉州・播州・遠州・三州・駿州・相州・山城等ノ糠及ビ地糠ト称スル種類ノ中ニハ時々多量ノ雑物ヲ混和シタルモノ甚タ多ク有之、中ニハ啻ニ砂ノミナラス大鋸屑・籾殻麦・黍・粟ノ糠等ヲ混和シタルモノ不少、抑モ早搗ノ禁ヲ解カレタルモノハ固ヨリ充分ノ試験ヲ遂ゲラレ其ノ無害ナル事ヲ確認セラレタル事ナルベクシテ、糠ノ中ヘ砂ヲ混和スルニモ其分量ヲ所謂早搗ニ必要ナル度合ニ止ムルトキハ敢テ左迄ノ害ハ有之間敷存候得共、
 - 第19巻 p.94 -ページ画像 
今日府下ニテ往々取扱フモノヽ如ク殊更ニ多量ノ砂又ハ他ノ雑物ヲ混和シタルモノニ至リテハ肥料ノ効能ヲ薄弱ニシ、殊ニ之ヲ牛馬ノ飼料ニ充ツル時ハ有害ノ結果ヲ生ズベキ事必然ニシテ、若シ此儘ニ之ヲ放任スルニ於テハ其弊益々増長シ其極竟ニ農業ノ改良上容易ナラザル障碍ヲ与フベクト深ク憂慮致居候、依テ我ガ組合ニ於テモ夙ニ之ヲ憂ヒ其弊害ヲ矯正致度種々苦心仕候得共、抑モ府下ニ於テ我ガ組合外ニ立チテ糠ヲ取扱ヒ候者ハ其数甚ダ多ク、且其製産地モ数府県ニ渉リ候事ナレバ何分我ガ組合一個ノ力ヲ以テ中々其目的ヲ達シ難ク当惑仕候、就テハ何卒此儀ヲ本会ノ一議題トシテ御提出相成衆議ノ上其筋ヘ上申シテ相当ノ取締法御制定相成候様致度、若シ万一斯ヽル取締ヲ御制定難相成筋ノモノニ御座候ハヾ、セメテハ本会ノ名義ヲ以テ各製産地ニ於ケル地方庁ヘ照会ノ上各製産者ヘ厚ク論達相成候様致度此段建議仕候也《(諭カ)》
  明治廿一年一月廿三日   五拾三番会員 大村五左衛門
  東京商工会々頭
    渋沢栄一殿
会長(渋沢栄一)問フテ曰ク、糠ノ製造ニハ是迄取締法ナカリシヤ
五十三番(榎本保兵衛)答テ曰ク、糠ハ御維新前迄軍馬ノ飼料トシテ幕府ヘ上納シタルヲ以テ厳重ノ取締法アリシガ御維新後ニハ廃絶シタリ、尤明治十七年頃迄ハ金剛砂早搗ノ法ヲ禁ゼラレタルニ付糠ニ砂ヲ混和スルノ弊ナカリシガ同年十二月此禁ヲ解カレテヨリ其弊大ニ増長シ、現ニ大阪地方ニハ糠ニ混和スベキ砂ヲ製シ故ラニ之ヲ糠屋ヘ売ル者アリト云ヘリ、旧幕ノ頃ニハ糠ハ重ニ麦ノ肥料ニ使用シ随テ秋季ノ際ニノミ売買アリタルニ付当府下ニテ売買スル高一ケ年ニ付十万俵ニ出デザリシガ、近来其用途ノ拡張スルニ従ヒ其売買高モ漸ク増加シ今日ニ於テハ一ケ年ニ付五十万俵以上ニ達スルニ至レリ、扨斯カル濫製ノ糠ハ果シテ如何ナル有害ノ結果ヲ生ズルヤニ就テハ未ダ精細ノ調査ヲ遂ゲズト雖トモ、農家ヨリ聞ク所ニ拠レバ大鋸屑ヲ混和シタル糠ヲ麦ノ肥料ニ使用スル時ハ大ニ麦ノ発生ヲ妨害シ其葉赤クナル事アリト云ヘリ、又此濫製ノ盛ニ成リタル為メ当業者ノ困難少カラズ、現ニ当組合員中某ナル者ガ嘗テ兵庫出ノ糠五百俵ヲ引取リテ他ヘ売渡シタル事アリシガ、其糠ノ中ニハ混和物多カリシ為メ買主ヨリ売主ガ詐偽品ヲ売リタリトノ事ヲ其筋ヘ告訴シ売主ハ之ガ為メ警視庁ヘ拘留セラレタリ、然ルニ其糠ハ特ニ粗悪品ヲ精良品ト詐リテ売リタルニアラズシテ只下等品ヲ相当ノ相場ニテ売渡シタル迄ナリトノ申訳立チ、某ナル者ハ其後凡一週日ヲ経テ放免セラレタルガ、時恰モ秋季ニ際シタルヲ以テ同人ハ大ニ損害ヲ蒙リタリト云フ、其他府下ノ当業者ガ粗悪ノ糠ヲ農家ヘ売ルニ当リ、農家ニテハ固ヨリ其糠ノ粗悪品タル事ヲ承知シテ買ヒナガラ偶々糠ノ相場低下スル時ハ故ラニ其糠ノ粗悪ナル事ヲ主張シテ直段ヲ引カシムルガ如キ事アリ、旧幕ノ頃ニハ糠一石ノ目方ハ凡十六貫目位ニ過ギザリシガ今日ニ於テハ其分量ハ左程増加セザルモ其目方ハ十貫目乃至二十貫目《(マヽ)》トナレリ、混和物ノ多量ナル事以テ知ルベキナリ
 - 第19巻 p.95 -ページ画像 
会長(渋沢栄一)問フテ曰ク、府下ニ於ケル糠屋ノ数ハ如何ン
五十三番(榎本保兵衛)答テ曰ク、専ラ下リ糠ヲ取扱フ者ハ十人位アリ、其他地糠ヲ取扱フ者ニ至リテハ其数三百余人アリ
会長(渋沢栄一)問フテ曰ク、此等ノ糠屋ニハ夫々組合ノ設アリヤ
五十三番(榎本保兵衛)答テ曰ク、下リ糠問屋及二番組ト称スル糠問屋ニハ組合アリ、然レトモ其他ノ糠屋ニハ全ク組合ノ設ナシ
会長(渋沢栄一)問フテ曰ク、糠ノ濫製ヲ禁ズルニ当リ、例ヘバ鴉片若クハ「ダイナマイト」ニ於ケルガ如キ極メテ厳重ナル取締法ヲ設クル時ハ必ズ当業者ノ困難ヲ生ズベシ、嘗テ数年前奥州ニテ本穀米ニ水ヲ灌グノ弊害流行シタルニ当リ、其筋ニ於テハ此弊害ヲ矯正センガ為メ厳重ナル取締法ヲ設ケ逸々現物ヲ撿査セラレタル事アリシニ、之ガ為メ売買ノ渋滞ヲ来シ大ニ当業者ノ困難ヲ惹キ起シタルニ付、其後此取締法ハ終ニ全ク廃止セラレタリト覚ユ、抑モ建議者ハ如何ナル方法ニヨリテ、此濫製ヲ矯正スルノ見込ナルヤ
五十三番(榎本保兵衛)答テ曰ク、現ニ大阪ニテハ数年前迄組合ノ役員ヲシテ逸々現物ヲ撿査セシメタル事アリシガ、斯ノ如キ方法ニ拠ル時ハ以テ濫製ノ弊害ヲ矯正スルヲ得ベシト思考ス
十六番(益田克徳)問フテ曰ク、建議者ノ要望スル所ハ諭達ニ止ムルノ見込ナルヤ、将タ法律ヲ以テ禁ズルノ意ナルヤ
五十三番(榎本保兵衛)答テ曰ク、可成ハ法律ヲ以テ禁ジタシト雖トモ、若シ斯ヽル取締法ヲ制定シ難キモノトセバ責メテハ諭達丈ニテモ望ミタシトノ意ナリ
二十三番(岩谷松平)曰ク、糠ノ種類ニヨリテハ直段ニ開キアリテ現ニ精良品ハ高ク売レ粗悪品ハ安ク売ルヽノ実アルニ付、其改良ハ組合ノ申合ニヨルヲ可トス、別段ニ取締法ノ制定ヲ其筋ニ請フノ必要ナシ
五十八番(益田孝)曰ク、有害品若クハ詐偽品ヲ売ルモノアル時ハ刑法ヲ以テ之ヲ処罰スベキ事勿論ナリトス、良シヤ有害品若クハ詐偽品ト云フ程ニアラザルモ既ニ牛馬ノ飼養ニ傷害アルノ事実アルニ於テハ其救正ヲ求ムル事敢テ無理ナラザルガ如シ、兎ニ角此事ハ幹事及建議者ヲシテ充分実地ヲ調査セシメ然ル後更ニ再議シテハ如何ン
三番(梅浦精一)曰ク、凡物品ニ濫製ノ弊アルハ独リ糠ノミニ止マラズ、然ルニ今特ニ糠ニノミ取締法ヲ設クベシト云フハ豈不都合ニアラズヤ、又府県ニ照会シテ諭達ヲ請フトスルモ自動ノ力ニヨラズシテ単ニ他動ノ力ニヨラントスル時ハ其効力甚ダ薄弱ナルベシ故ニ例ヘバ先ヅ組合員同盟シテ斯ヽル濫製品ハ互ニ之ヲ謝絶スベシト云フガ如キ規約ヲ定メ、然ル後本会ヨリ此事ヲ各府県ヘ通知シテ輸達《(諭)》ヲ請フ事トスベシ
四十九番(日下部三之助)《(日下部三之介)》曰ク、濫製品ナリトテ之ヲ鑑別スルニ学理上丁寧ナル撿査ヲ要スル程ニアラズシテ買人一見シテ直チニ其精粗ヲ見分クルヲ得ベケレバ敢テ法律ニヨリテ之ヲ拘束スルノ必要ナシ、況ンヤ既ニ粗悪品ハ需用者ノ好マザル処ナリトスレバ、仮
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令特別ノ取締法ヲ設ケザルモ製造人ハ自ラ其品位ヲ精良ニシ自家ノ信用ヲ維持スル筈ナルニ於テオヤ、之ヲ要スルニ斯ノ如キ濫製ノ弊害ヲ矯正セントスルニハ組合ノ力ニヨルヲ可トス、決シテ法律ノ力ニヨルベカラザルナリ
二十五番(丹羽雄九郎)問テ曰ク、米ヲ搗ク為メニ用ユル砂ノ分量ニ制限アリヤ
五十三番(榎本保兵衛)答テ曰ク、制限ナシ
二十五番(丹羽雄九郎)問フテ曰ク、砂ヲ混和シタル糠ハ一見シテ之ヲ識別スルヲ得ベキヤ
五十三番(榎本保兵衛)答テ曰ク、砂ヲ混和シタル糠ハ直チニ見分クルヲ得ベシ、然レトモ大鋸屑ヲ混和シタルモノニ至リテハ当業者ト雖トモ容易ニ之ヲ見分ケ難キ程ナリ、且ツ過剋来諸君ノ中濫製ノ弊害ヲ矯正スルニハ法律ノ力ニヨラズシテ組合ノ力ニヨルベシトノ論アリタレトモ、如何ニセン府下ノ営業者ニハ尽ク組合アルニアラズシテ若シ当組合員ニ於テ濫製品ヲ拒絶スルモ他ノ営業者ニ於テ之ヲ拒絶セザル時ハ到底矯正ノ効ナカルベシ、是本員ガ不得已此建議案ヲ提出シタル所以ナリ
二十五番(丹羽雄九郎)曰ク、濫製ノ弊害ヲ矯正スルノ精神ニ於テハ固ヨリ異議アルニアラズ、然レトモ例ヘバ砂ノ如キ果シテ搗米ノ節ニ混和シタルモノナルヤ、将タ其後特ニ混和シタルモノナルヤヲ鑑別スルハ実際ニ為シ得ベカラザル所ナルニ付、余ハ遺憾ナガラ本案ヲ賛成スル事能ハザルナリ
十六番(益田克徳)曰ク、斯ノ如キ弊害ヲ矯正スルニハ組合ノ力ニヨルヲ最モ上策トス、若シ糠ガ食用品ニシテ人身ノ健康ヲ害スル程ノモノナラバ法律ニヨリテ濫製ノ禁止ヲ求ムル事固ヨリ至当ナリト雖トモ、今熟々此議案ニ記載スル所ヲ見ルニ砂ヲ糠ニ混和シタリトテ之ガ為メ敢テ左迄ノ害果ヲ与フルモノトモ覚エズ、是余ガ直チニ本案ヲ賛成シ難キ所以ナリ、蓋シ斯ノ如キ濫製品ヲ大小麦ノ肥料ニ用ユルニ当リ果シテ其発生ヲ妨害スルノ事実アラバ之ヲ撿束スル事亦敢テ不当ニモアラザルベシ、依テ兎ニ角本案ハ猶篤ト実地ノ害果ヲ調査シテ然ル後更ニ再議スル事トシタシ
二十三番(岩谷松平)曰ク、砂ヲ混和シテ米ヲ搗ク時ハ搗キ上ガリ美シキガ上ニ減リ目立タズ加フルニ又労力ヲ省クノ便利アリ、故ニ仮令多少ノ害アリトスルモ到底之ヲ禁止スルヲ得ザルベシ、蓋シ建議者ハ濫製品ヲ識別スル事甚ダ困難ナリト申セドモ、例ヘバ多量ノ砂ヲ混和シタル糠ノ如キ桝目ニハ変リナシトスモ目方ニハ変リアルベキ筈ニ付、其精粗ヲ吟味スル事ハ実際左迄ニ困難ナラズト信ズ
二十番(大倉喜八郎)曰ク、会員ヨリノ建議ト申セバ耳立チテ聞ユレトモ其実只営業者ガ困難ノ情況ヲ開陳シテ互ニ其救正法ヲ相談スル迄ニ過ギズ、故ニ若シ果テ其取締上ニ相当ノ方法アリトセバ本会ヨリ其筋ニ向テ之レガ施設ヲ望ムニ於テ何ノ憚ル所カアラン、現ニ海外ヘ輸出スル茶ノ如キモ一時ハ大ニ濫製ノ弊害アリシガ其筋ニ於テ取締法ヲ設ケラレテヨリ漸ク其弊害ヲ矯正スルヲ得タルニ
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アラズヤ、蓋シ其筋ヘ建議スルニ当リ実地ノ弊害ヲ調査スル事固ヨリ緊要ナレバ余ハ兎ニ角委員ヲシテ之ヲ調査セシメン事ヲ望ム
右ノ外猶各員ノ間ニ多少ノ議論アリシガ衆議ノ末終ニ本案ハ理事本員ニ於テ篤ト実地ノ弊害ヲ調査シ、然ル後更ニ之ヲ再議スルニ決ス


東京商工会議事要件録 第三三号・第三―一一頁 (明治二一年九月)刊(DK190013k-0002)
第19巻 p.97 ページ画像

東京商工会議事要件録  第三三号・第三―一一頁 (明治二一年九月)刊
   第十七定式会
           (明治二十一年八月二十日開)
   第三十臨時会
    会員出席スル者 ○三十二名
○上略
会長(益田孝)ハ是ヨリ定式会ヲ開クベキ旨ヲ告ゲ、規程第五章第二十二条ニ依リ明治二十一年上半季間定式事務ノ成蹟ヲ報告ス
  自明治二十一年一月至同六月 半季間事務ノ報告
○中略
    会員ノ建議   五件
○中略
○肥料糠濫製取締ヲ要スルノ議
  本件ハ五十三番会員大村五左衛門ノ建議ニ係リ其要旨ハ近来各地ニ於テ糠ノ目方及分量ヲ増大ニセンガ為メ殊更ニ之ニ多量ノ砂又ハ雑物ヲ混和スルノ弊アリ、斯ノ如キ濫製品ハ肥料ノ効能ヲ薄弱ナラシメ牛馬ノ飼養ニ害アルモノニ付相当ノ取締法ヲ制定セラレタシト云フニ在リ、即チ明治二十一年五月二十一日第二十九臨時会ニ於テ之ヲ審議シタルニ本案ハ兎ニ角理事本員ニ於テ篤ト実地ノ弊害ヲ調査シ、然ル後更ニ之ヲ再議スベシト云フニ決シ、其後先ヅ農商務省農務局ニ向テ砂又ハ雑物ヲ混和シタル糠ノ動物又ハ植物ニ対スル効害如何ンヲ問合ハセタルニ同局ヨリ右ハ要スルニ甚ダシキ効害ナキ旨ヲ回報セラレタルニ付、本案ハ追テ次会ニ於テ再議スベキ筈ナルガ其成跡ハ更ニ次季ヲ期シテ報告スベシ
   ○是日栄一差支アリテ欠席ス。


東京商工会議事要件録 第三三号・第二九―三一頁 (明治二一年九月)刊(DK190013k-0003)
第19巻 p.97-98 ページ画像

東京商工会議事要件録  第三三号・第二九―三一頁 (明治二一年九月)刊
  第十七定式会
          (明治二十一年八月二十日開)
  第三十臨時会
    会員出席スル者 ○三十二名
○上略
次ニ会長(益田孝)ハ是ヨリ臨時会ヲ開キ第一号議案ヲ議スベキ旨ヲ告ゲ且ツ曰ク、第一号議案即チ肥料糠濫製取締ノ件ニ就テハ本年五月廿五日ニ開キタル幹事会ノ議決ニ基キ濫製糠ノ動植物ニ及ボスベキ効害如何ヲ農務局長ニ問合セタルニ、其後六月十日附ヲ以テ雑物ヲ多量ニ混和スルニアラザレバ格別ノ害ナシト回答アリタリ往復ノ書面ハ参考部第一号及第二号ニ掲グ依テ更ニ本月七日幹事会ヲ開キ本件ニ就キ審議ヲ尽シタルニ、畢竟農務局長ヨリ前陳ノ如キ回答アリシ以上ハ今日殊更ニ取締法ノ制定ヲ其筋ニ望ムノ必要ナカルベシ、併シ今日ノ儘ニ放任シ置ク時ハ雑物混和ノ弊益々増長シ、遂ニ商業上並農業改良上ニ有害ノ結果ヲ来スノ
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懸念ナキニアラザレバ、此際本会ヨリ東京府及各製産地ノ地方庁ニ照会シテ雑物混和ノ弊害ニ就キ其管内ノ製産者ニ厚ク説諭ヲ請フベシト云フニ決シタルニ付、試ニ其照会案ヲ取調ベ置キタリトテ即チ書記ヲシテ之ヲ朗読セシメ、衆員ノ意見ヲ問フタルニ全会異議ナク之ヲ可決シタリ(照会書ハ八月二十二日附ヲ以テ東京府外二府六県ヘ宛テ発送シタルガ其全文ハ参考部第三号ニ掲グルヲ以テ重複ヲ厭ヒ玆ニ之ヲ略ス)
   ○是日栄一差支アリテ欠席ス。


東京商工会議事要件録 第三三号・第三九―四七頁 (明治二一年九月)刊(DK190013k-0004)
第19巻 p.98-100 ページ画像

東京商工会議事要件録  第三三号・第三九―四七頁 (明治二一年九月)刊
 ○参考部
(第一号)
    ○(濫製糠ノ動植物ニ及ボスベキ効害如何ニ付農務局長ヘ照会書)
近来糠ノ製造追々粗悪ニ流レ、現ニ当府下ヘ入津スル紀州・摂州・尾州・勢州・泉州・播州・遠州・三州・駿州・相州・山城等ノ糠及地糠ト称スル種類ノ中ニハ多量ノ砂ヲ混和シタルモノ頗ル多ク、甚シキニ至リテハ啻ニ砂ノミナラス大鋸屑・籾殻・麦黍粟ノ糠等ヲ混和シタルモノ不少趣ヲ以テ本会員ノ中ヨリ其濫製取締ノ義ニ付別紙ノ通リ建議書ヲ提出致候ニ付、目下本会委員ニ於テ其得失審査中ニ御座候処、抑モ前陳ノ如キ濫製品ハ果シテ畜類ノ飼養上又ハ植物ノ培養上有害ノ結果ヲ生スルモノニ御座候哉、其辺至急承知仕度ニ付何卒別記ノ事項御調査被成下学理上並ニ実験上ノ諸説御諭示被成下候様仕度、此段奉願上候也
                 東京商工会々頭
                      渋沢栄一
  明治二十一年六月五日
    農務局長 宮島信吉殿
      別記
一砂・大鋸屑・籾殻・麦・黍・粟等ノ糠ヲ混和シタル肥料糠ヲ牛馬ノ飼料ニ用ユル時ハ之ガ為メ其畜類ノ健康ヲ傷害スベキヤ否ヤ
一同上ノ肥料糠ヲ麦類ノ肥料ニ用ユル時ハ之ガ為メ其植物ノ発育ヲ妨害スベキヤ否ヤ
一前二項ノ場合ニ於テ其有害ト否トハ混和物ノ分量ニ関係スルモノナルヤ、若シ然ル時ハ其分量ノ程度概略如何ン
(第二号)
    ○(同上ニ付農務局長ヨリ回答書)
本月五日付ヲ以テ米糠中混合物ノ畜類及植物ニ対スル効害有無之儀調査方御依頼之趣了承、則別紙之通ニ有之候間右ニテ御承知相成度此段及回答也《(候脱)》
  明治二十一年六月廿日  農商務省農務局長 宮島信吉
    東京商工会々頭 渋沢栄一殿
      (別紙)
一米糠ヲ畜類ニ与フルノ目的ハ主トシテ其中ニ含有スル蛋白質・含水炭素物及脂肪ヲ供スルニアリ、然ルニ砂ハコノ三要素ヲ含有スルモノニアラザレバ、之ヲ混和シタルモノハ従テ其効用薄弱ナルベキハ勿論ナリト雖、混合ノ割合少ナキトキニ於テハ敢テ畜類ノ健康ヲ害
 - 第19巻 p.99 -ページ画像 
スルニ至ラズ、但其ノ割合多キニ至レハ有害ナリ
 大鋸屑及籾殻ハ重ニ繊維ヲ含有スルモノニシテ上述ノ三要素ヲ含有スル少ナキニヨリ之ヲ混合シタルモノハソノ効固ヨリ純一ノ米糠ヨリ遥ニ劣レリトス、抑畜類飼料ノ全体ヨリスレハ米糠ハ其ノ一少分ニ過キズ、而シテ大鋸屑及籾殻等ノ混合物ハ亦ソノ幾分ニ外ナラザレバソノ影響スル所従テ僅少ナルカ故ニ畜類ノ健康上ニ有害ノ結果ヲ及ボスモノニアラザルベシ、麦・黍・粟等ノ糠ハソノ効用稍々米糠ヨリ劣レトモ要スルニソノ成分大同小異ナレハ有効ノ度稍々薄カルベキモ決シテ有害ノモノニアラス
一植物ニ肥料ヲ施スハソノ目的重ニ窒素・燐酸・剥篤亜斯ノ三主要分ヲ供スルニアリテ、米糠ヲ肥料ニ施用スルハ則主トシテソノ窒素ヲ含有スル事多キガ故ナリ、然ルニ砂ハ之ヲ含有スルモノニアラザルヲ以テ之ヲ混合シタルモノハソノ効験ヲ減殺スルハ明白ナレトモ、コノ混合アルカ為メニ決シテ被害ヲ植物ニ及ボスモノニアラス
一大鋸層及籾殻《(屑)》ハ要分ノ含量少ナク、且分解遅緩ナレバ其ノ効米糠ヲ単用スルニ比スレハ遥ニ劣ルト雖亦決シテ有害ノモノニアラス
 麦・黍・粟等ノ糠ハ其効験稍々米糠ヨリ劣レルモ寧ロ有効無害ノモノナリ
一籾殻・大鋸屑・麦・黍・粟等ノ糠ニ関シテハ更ニ論スルノ要ナシ、独リ砂ハ其混合ノ割合全重量五分(例ヘバ百匁ニ付五匁ノ割)以下ナレハ無害ナルベキモ、此ノ割合以上ノモノハ其健康ヲ傷フノミナラズ砂ハ畜類ノ歯ヲ磨消スルモノナルカ故ニ混合ノ多少ニ係ハラズ忌ムベキモノトス、唯五分以下ナレハ直接ニ其健康ヲ傷フニ至ラザルノミ
(第三号)
    ○(肥料糠濫製取締ノ義ニ付東京府外二府六県知事ヘ照会書)
近来糠ノ製造追々濫悪ニ失シ現ニ当府下ヘ入津スル紀州・摂州・尾州・勢州・泉州・播州・遠州・三州・駿州・相州・山城等ノ糠及地糠ト称スル種類ノ中ニハ多量ノ砂・大鋸屑・籾殻・麦・黍・粟ノ糠等ヲ混和シタルモノ不少ニ付、其筋ニ於テ相当ノ取締方法ヲ御制定相成候様致度旨先般本会々員ノ中ヨリ意見書ヲ提出シタル者有之、依テ先ヅ本会ヨリ農商務省農務局ニ向テ此等濫製品ノ動物又ハ植物ニ対スル効害如何ヲ問合セ候処、同局ニ於テ御審査ノ上右ハ要スルニ其効用薄弱ナルハ勿論ナレトモ、動物又ハ植物ニ効害ヲ与フル事無之旨回報有之、然ルニ猶熟々実際ノ景況ヲ案ズルニ右濫製ノ弊害ハ近頃ニ至リ益々増長ノ勢ヲ呈シ現ニ今日当府下ニ於テハ特ニ糠ニ混和スベキ大鋸屑ヲ製シテ販売スル者有之、又各製産地ノ中ニ於テモ糠ニ混和スベキ土砂類ノ製造ヲ専業トスル者サヘ有之候程ノ景況ニシテ、殊ニ其濫製品ノ中ニハ製法頗ル巧ニシテ実業者ト雖トモ容易ニ之ヲ鑑別シ難キモノモ有之随テ正当ニ糠ヲ販売スル者ハ勿論之ヲ需用スル者モ大ニ困難致居候趣ニ御坐候、蓋シ糠ハ農産ノ肥料及牛馬ノ飼料ニ必要ナルモノニ付、若シ今ニシテ此害ヲ救正セザル時ハ、終ニ其販路ヲ杜塞スルニ至ルノミナラズ農業及牧畜ノ改良上ニモ亦大ナル影響ヲ及ボスズキハ《(ベ)》必然ト奉
 - 第19巻 p.100 -ページ画像 
存候、就テハ何卒御庁ニ於テ御管下ノ製産者ヘ厚ク御説諭被成下此弊害ノ全ク消滅候様御尽力被下度偏ニ希望仕候、依テ此段具陳仕候也
                 東京商工会々頭
  明治二十一年八月二十二日
                      渋沢栄一
    東京府知事 男爵 高崎五六殿
    京都府知事    北垣国道殿
    大坂府知事    建野郷三殿
    神奈川県知事   沖守固殿
    兵庫県知事    内海忠勝殿  (各通)
    三重県知事    山崎直胤殿
    愛知県知事    勝間田稔殿
    静岡県知事    関口隆吉殿
    和歌山県知事   松本鼎殿


東京商工会議事要件録 第三七号・第四―六頁 (明治二二年三月)刊(DK190013k-0005)
第19巻 p.100 ページ画像

東京商工会議事要件録  第三七号・第四―六頁 (明治二二年三月)刊
  第十九定式会  (明治廿二年二月廿三日開)
    会員出席スル者 ○三十二名
○上略
次ニ会長(渋沢栄一)ハ是ヨリ本議ヲ開クベキ旨ヲ告ゲ、先ヅ規程第五章第二十二条ニヨリ明治二十一年下半季定式事務ノ成跡ヲ報告ス
  自明治廿一年七月至同年十二月 半季間事務報告
○中略
    政府ヘ建議   四件
○肥料糠濫製取締ノ義ニ付各府県知事ヘ建議
  本件ハ前季既ニ報告シタルガ如ク五十三番会員大村五左衛門ノ建議ニ係リ、明治二十一年五月廿一日第二十九臨時会ニ於テ一旦之ヲ審議シタルニ、兎ニ角実地ノ弊害ヲ調査スベシト云フニ決シ、其後農務局ニ向テ砂又ハ雑物ヲ混和シタル糠ノ動植物上ニ及ボス効害如何ヲ問合ハセタルニ、右ハ要スルニ甚ダシキ害ナキ旨ノ回報ヲ得タルニ付、更ニ同年八月二十日第三十臨時会ニ於テ之ヲ審議シタルニ、農務局ヨリ前陳ノ如キ回答ヲ得タル上ハ特ニ取締法ノ制定ヲ其筋ニ望ムノ必要ナシト雖トモ、若シ全ク之ヲ放任スルニ於テハ濫製ノ弊害益々増長シテ商業上農業上ニ有害ノ結果ヲ生ズベキニ付、各製産地ノ地方庁ニ照会シテ製産者ニ説諭ヲ請フベシト云フニ決シタルニ付其照会文ハ理事本員ニ於テ之ヲ調成シ、同月二十二日附ヲ以テ此旨ヲ東京府外二府六県知事ヘ宛テ照会シタリ
○下略