デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.3.6

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

7章 経済団体及ビ民間諸会
1節 商業会議所
2款 東京商工会
■綱文

第19巻 p.262-276(DK190040k) ページ画像

明治23年4月9日(1890年)

是日栄一当会会頭トシテ、先ニ土地収用法公布セラレテ以来鉄道用地収用ノ方法困難トナリ同企業ノ発達ヲ妨害スルヲ以テ、其収用方法ヲ簡便ナラシメンコトヲ内務大臣伯爵山県有朋ニ建議ス。


■資料

東京商工会議事要件録 第四三号・第六―一七頁 (明治二三年四月)刊(DK190040k-0001)
第19巻 p.262-267 ページ画像

東京商工会議事要件録  第四三号・第六―一七頁 (明治二三年四月)刊
  第三十九臨時会 (明治二十三年三月十三日開)
    会員出席スル者 ○三十七名
○上略
次ニ会長(渋沢栄一)ハ第三号議案ヲ議スベキ旨ヲ告ゲ書記ヲシテ議案ヲ朗読セシム
 第三号議案
 別紙ノ通リ本会ノ意見トシテ其筋ヘ建議相成度此段建議候也
  明治廿三年三月三日         四番会員
                      林賢徳
  東京商工会々頭
    渋沢栄一殿
 - 第19巻 p.263 -ページ画像 
 鉄道ノ商工農業務ニ欠ク可ラサル今更喋々ノ弁ヲ要セズ、鉄道ハ我国ノ新事業ニシテ未ダ十分ノ発達ヲ見ルニ至ラズ、随テ一般ノ商工農業上ニ利沢ヲ感スル事ノ十分ナラザルハ蓋シ自然ノ数ナリトハ云ヘ遺憾此上ナキ次第ナルベシ、幸ニシテ近年全国ノ人心漸ク鉄道ニ傾キ所在鉄道会社ヲ設立シテ線路ノ延長ヲ計リ、其余沢ノ及フ所不日ニシテ国内商工農ノ有様ヲ一変セントスル折柄、去年七月法律第十九号ヲ以テ土地収用法ノ発布アリ、従前鉄道用地ハ公用土地買上規則ニ拠リ一旦政府ニ買収ノ上更ニ鉄道会社ニ払下ケタルモノヲ、以来ハ会社ト地主ト直接売買ノ協議ヲ為ス事ト為リタルヨリ為メニ大ニ鉄道起業ノ困難ヲ増シ俄然此事業ノ進歩ヲ遅々タラシメシハ実ニ案外ノ出来事ト申スベキナリ、収用法施行ノ為メ各鉄道会社ノ実際経験シタル諸般ノ困難事中、其最モ大ナルモノハ鉄道用地ヲ買収スルニ方リ会社ト地主トノ示談ヲ以テ終始事ヲ了ハラントスルノ一事ニ在テ存スルモノヽ如シ、抑モ新法ニ定ムル所起業者ト土地所有者ト双方ノ協議熟談ヲ以テ売買ノ事ヲ処弁シ敢テ政府ノ直接幇助ヲ要セサル可キハ事理普通ノ事ナレトモ、之ヲ事ノ質際《(実カ)》ニ徴シテ大ニ予期ニ齟齬スル所アル所以ノモノハ蓋シ国民一般ノ風俗習慣文化ノ程度等猶ホ未ダ此新法ト併行スルコトヲ許サザルモノアルガ為メナルベク、是非モナキ次第ト云フベシ、唯我々ノ憂フル所ハ新法施行ノ為メニ鉄道事業ノ進歩ヲ遅滞セシメ鉄道事業遅滞ノ為メニ商工農業ノ発達ヲ晩クシ、以テ国ノ富強文明ニ損スル事ノ甚ダ大ナルニ在ルガ故ニ此際政府ニ於テハ適宜ノ法令ヲ制シ鉄道用地買収ノ急速処弁ヲ促カスノ処置アラン事我々ノ切ニ希望スル所ナリ
会長(渋沢栄一)曰ク、鉄道用地収用ノ件ニ関シテハ曩ニ各鉄道会社聯合シテ其筋ヘ稟請シタル事アリ、又近頃各地方長官連印シテ其筋ヘ意見書ヲ呈出シタルヤニ聞ケリ、熟々此等書面ニ陳述スル処ヲ伝承スルニ鉄道企業者ガ其用地収用上非常ノ困難ヲ感ズル事ハ着明《(著)》ノ事実ナルガ如シ、蓋シ此件タル土地所有者ノ権利ノ消長ニモ多少ノ関係ヲ有シ頗ル重大ノ事柄ナレバ各員ニ於テモ篤ト熟慮ノ上充分審議セラレタシ
四番(林賢徳)曰ク、余ハ本案ノ建議者ナルニ付聊カ玆ニ一言ヲ弁ズベシ、此建議ノ趣旨ハ決シテ土地所有者ノ権利ヲ害シ用地ヲ廉買シタシト云フニアラズシテ、要スルニ只其用地収用ノ手続ヲ今少シク簡便ニシタシト云フニ過ギズ、抑モ鉄道ノ用地ハ其区域ヲ一所ニ限ルモノニアラズシテ一帯長ク延テ数国ニ跨リ且ツ其方向ハ直線ヲ要スルガ故ニ、随テ其線路ニ当ル土地ノ所有者夥多ニシテ現ニ九州・山陽地方ノ如キ僅ニ一哩ノ土地ニシテ百二十人若クハ百三十人ノ分有ニ帰スル事殆ド常例ナルガ如シ、然ルニ此等多数ノ人ニ就キ逸々収用ノ協議ヲ遂グルハ実ニ容易ノ業ニアラズ、蓋シ企業者ガ土地ヲ収用スルニ当リ相当ノ補償金ヲ出スハ当然ノ事理ニシテ此事ニ就テハ固ヨリ異議アルニアラズト雖トモ、只収用ノ協議ヲ結了スル迄ニ空シク時日ト手数トヲ要スルハ企業者ノ甚ダ困難トスル所ナリ、是此建議ヲ提出シテ其筋ノ注意ヲ請ハントスル所以ナリ、願ハクバ諸君之ヲ領意シテ審議セラレン事ヲ望ム
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二十二番(笠井鉦太郎)問テ曰ク、公用土地買上規則ニヨレバ企業者ハ土地所有者ト売買ノ約束出来次第直チニ工事ニ着手シ得ル様ニ覚ユ、如何ン
四番(林賢徳)答テ曰ク、鉄道ノ用地ハ私設鉄道条例第十五条ニ規定セラルヽガ如ク、一旦公用土地買上規則ニヨリ政府ニ買上ゲラレ然ル後更ニ之ヲ企業者ニ払下ゲラルヽノ手続ニシテ、企業者ハ其土地ヲ受取次第直チニ工事ニ着手シ得ルナリ
二十二番(笠井鉦太郎)問テ曰ク、土地収用法ニ拠ル時ハ企業者ハ容易ニ工事ニ着手スルヲ得ザルヤ
四番(林賢徳)答テ曰ク、幸ニ土地所有者ト協議行届ク時ハ直チニ工事ニ着手スルヲ得ベシト雖トモ、前ニモ述ブルガ如ク協議行届ク迄ニ非常ノ手数ト時日トヲ費サヾルヲ得ズ、而シテ若シ協議行届カザル時ハ審査委員会ノ裁決ヲ得ル迄工事ニ着手スルヲ得ザルナリ
二十二番(笠井鉦太郎)問テ曰ク、建議者ノ精神ハ土地ノ収用ヲ全ク相対ノ協議ニ任スルガ為メ時日延引シテ困ルト云フノ意ナルヤ
四番(林賢徳)答テ曰ク、然リ、審査委員会ノ裁決ヲ仰グ迄ニハ実ニ容易ナラザル手数ト時日ヲ費サヾルヲ得ズ、是企業者ノ最モ困難ヲ感ズル要点ナリ
二十二番(笠井鉦太郎)問テ曰ク、然ラバ建議者ハ公用土地買上規則ヲ復活セン事ヲ望ムヤ
四番(林賢徳)答テ曰ク、決シテ否ラズ
二十番(大倉喜八郎)曰ク、建議ノ趣旨ハ至極尤ナリ、蓋シ此土地収用法ハ欧米ノ制度ニ傚フモノニシテ其精神ハ甚ダ美ナリト雖トモ我国状ニ適セザルヲ如何セン、抑モ農ハ国ノ本ナリト云フ事ハ東西両洋共ニ唱道スル処ナルガ欧米諸国ハ大農国ニシテ数百哩ノ土地ニシテ僅々一二人ノ所有ニ帰スル事多キガ故ニ収用ノ協議ヲ遂グル事甚ダ容易ナリト雖トモ、我国ハ小農国ニシテ僅ニ一哩ノ土地ニシテ猶百数十人ノ分有ニ帰スル事殆ド常例ナルガ故ニ、収用ノ協議ヲ遂グル事極メテ困難ノ事情アリ、之ヲ要スルニ此土地収用法ハ欧米諸国ノ如キ大農国ニ行ハルヽモ我国ノ如キ小農国ニ実施スルハ甚ダ難事ニシテ、今日ノ民度ヨリ見ル時ハ寧ロ公用土地買上規則ニ拠ルヲ却テ適当ナリト信ズ、故ニ余ハ本案ノ趣旨ヲ賛成スルト同時ニ猶一歩ヲ進メ更ニ従来ノ公用土地買上規則ヲ復活セン事ヲ望ム
三十二番(吉田幸作)曰ク、只今二十番(大倉喜八郎)ハ寧ロ公用土地買上規則ヲ復シタシトノ説ヲ発シタルガ成程企業者ノ方ヨリ之ヲ見ル時ハ期ク望ムモ尤ナリト雖トモ、地主ノ側ヨリ之ヲ見ル時ハ亦大ニ困難アルベシ、故ニ余ハ建議者ノ望ノ如ク土地ノ補償額ハ現行収用法ニ定ムル処ニヨリ企業者ト地主トノ協議ニ任スル事トシ、只其手引ヲ其筋ヘ托スル事トシタシ、但シ本案ノ文面上ヨリ見ル時ハ其趣意未ダ徹底セザル処アルニ付可成此事ヲ今少シク明了ニ記載シタシ
五十八番(益田孝)曰ク、現行収用法ニ定ムル所ハ甚ダ完全ナルガ如クニシテ、就中従来ノ公用土地買上規則ニハ行政部ナル内務省ノ裁決ヲ最終トシタルニ、現行ノ収用法ニハ司法部ナル裁判所ノ裁決ヲ
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最終トシタルガ如キハ甚ダ穏当ナルニ似タリ、而シテ此収用法ハ本来地主ノ権利ヲ制裁シタルモノニシテ企業者ハ一旦内閣ヨリ其工事ノ認定ヲ得ル以上ハ何人ノ所有ヲ問ハズ必ズ其土地ヲ収用シ得ル訳ニ付、企業者ハ此点ニ於テ既ニ非常ノ特典ヲ有スルモノト云フベシ然ルニ実際収用ノ手続ニ於テ斯ク甚シキ困難アルハ甚ダ遺憾ナルニ付相当ノ範囲内ニ於テ之ヲ救治スルハ固ヨリ不当ニアラズ、蓋シ過日本案ヲ幹事会ニ附シテ審議シタル節ニ各幹事ハ其大体ニ就テ敢テ異議ヲ唱ヘザリシト雖トモ、其救治ノ方法ニ就テハ各其見ル処ヲ異ニシ其説大要左ノ三種ニ帰セリ(第一説)土地収用法ヲ改正スルハ頗ル難事ナルベキニ付、寧ロ私設鉄道条例第十五条ノ末文ヲイカシ従来鉄道用地ノ民有ニ係ルモノハ一旦公用土地買上規則ニヨリ政府買上ゲ更ニ企業者ヘ払下グベシトアリタルモノヲ、鉄道用地ノ民有ニ係ルモノハ地方庁ニ於テ其所有者ヲ召喚シ企業者ト協議ヲ為サシムベシトノ意味ニ改メン事ヲ望ムベシ、然ル時ハ毫モ土地収用法ニ定ムル所ニ牴触スル事ナクシテ而カモ企業者ノ困難ヲ救済スルヲ得ベシ(第二説)企業者ノ困難ヲ救済スルニハ収用法ニ定ムル所ヲ改正スルニアラザレバ実地ニ効能ナシ、故ニ市区改正条例ノ土地収用法ニ於ケルガ如ク一ノ例外法ヲ設ケ、恰モ頃日各地方長官ガ其筋ヘ建議シタルガ如ク特別ニ鉄道用地買上規則ノ制定ヲ望ムベシ(第三説)本会ニ於テハ敢テ其方法ヲ指定スルヲ要セズ只鉄道企業者ノ困難ナル事情ヲ証明スレバ可ナリ、而シテ其方法ノ如キハ当局ノ意見ニ任ス事トスベシ」是ハ諸君ノ参考ノ為メ一言ス
三番(梅浦精一)曰ク、建議ノ趣意実ニ尤ナリ、現ニ九州地方ノ如キ一哩ノ土地ニシテ百三十人以上ノ分有ニ帰スル事殆ド常例ナリ、然ルニ企業者ハ土地収用法ノ発布以来此等夥多ノ地主ト逸々協議ヲ遂ゲザルヲ得ザルガ故ニ其手数ハ容易ナラズ、又九州鉄道会社ノ如キ各区ノ工事ニ夫々成功年限アリテ企業者ハ此年限内ニ工事ヲ終ラザレバ其筋ノ補助ヲ失フノ事情アリト云フ、是実ニ困難ニアラズヤ、若シ此儘ニシテ之ヲ放任スルニ於テハ我国ノ鉄道事業ハ遂ニ衰滅ニ帰セザルヲ得ザルナリ、蓋シ今日ノ鉄道会社ハ多クハ私設鉄道条例第十五条ノ特例ニ依頼シテ起リタルモノナリ、然ルニ今俄然土地収用法ヲ発布シテ此特例ヲ廃止ニ帰セシメ以テ其会社ヲシテ予期スル所ニ違ハシムルハ、是恰モ一方ニ於テ鉄道事業ヲ奨励シナガラ一方ニ於テ却テ之ヲ防止スルニ異ナラザルナリ、過刻来諸君ノ中ニ其救済ノ方法ニ就テ種々ノ論議モアリタレトモ、抑モ鉄道事業ノ発達ハ商工業ニ利アリト云フ事ハ明白ノ事実ナレバ、今ヤ其事業ノ衰滅セントスルニ当リ本会ヨリ之ヲ救済セン事ヲ共筋ニ望ムハ固ヨリ不当ニアズト《(ラ脱)》信ズ、但シ本会ハ法律家ノ団躰ニアラザレバ敢テ法律ノ文案ヲ具シテ其筋ヘ呈スルヲ要セズ、其方法ノ如キハ一ニ当局ノ意見ニ任シテ可ナリ
六番(橋本辰三郎)曰ク、余ハ嘗テ一万坪ノ地所ヲ買入ルヽニ三十人ノ地主ニ協議シタル事アリ、鉄道企業者ノ困難ハ実ニ之ヲ察スルニ足レリ、而シテ余ハ頃日各地方長官ガ共筋ヘ建議シタルガ如ク別ニ一ノ例外法ヲ設ケン事ヲ望ム、
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二十二番(笠井鉦太郎)曰ク、抑モ鉄道ハ営利事業ニシテ又需用アリテ地価ノ騰貴スルハ経済ノ原則ナリ、然ルニ余リ論鉾ヲ強ムル時ハ地主ノ権利ニ衝突シ為メニ其感情ヲ害スルノ恐ナシトセズ、故ニ本案ハ三十二番(吉田幸作)ノ説ノ如ク只企業者ノ協議上困難ナル事実ヲ縷陳スルニ止メ、要スルニ其論鉾ヲ余リ強メザラン事ヲ望ム
二十五番(丹羽雄九郎)曰ク、土地収用法ノ為メ企業者ノ困難ナル情況ハ建議者ノ説明ニテ甚ダ明了ナリ、然レトモ収用法ノ改正ハ地主ノ権利ノ消長ニモ関スルニ付、土地ノ補償額ヲ定ムルニハ矢張リ収用法ニ規定スルガ如ク双方ノ協議ニ任スルモノトシ只其協議ノ世話丈ケヲ地方庁ニ托スル事トシタシ、蓋シ此事ニ就テハ可成地方庁ニ於テ世話スル様嘗テ其筋ヨリ内訓モアリタル趣ナレトモ、内訓ニテハ其効能微弱ニ付更ニ之ヲ私設鉄道条例第十五条中ニ明掲スル事トシ其協議ノ世話ヲ為ス事ハ是非之ヲ地方庁ノ本務トナサン事ヲ望ム然ル時ハ一方ニ於テハ土地収用法ノ精神ニ牴触スル事ナク、一方ニ於テハ鉄道企業者モ大ニ便利ヲ得ベシト信ズ
十一番(辻粂吉)曰ク、建議案ニハ企業者ガ地主ヘ協議ヲ遂グル迄ノ間ニ生ズル困難ノ事情ヲ細述スベシ、土地収用法ノ精神ニ至リテハ固ヨリ之ヲ動スニ及バズ
五十八番(益田孝)曰ク、土地収用法ニ於テ司法部ノ裁決ヲ最終トシタル如キハ甚ダ適当ニシテ、要スルニ此収用法ノ精神ニ牴触スルノ建議ヲ為ス事ハ本会ノ為メニ取ラザルナリ、故ニ三番(梅浦精一)ノ説ノ如ク本案ハ只企業者ノ困難ナル事情ヲ証明スルニ止メ其方法ニ就テハ何レトモ之ヲ指定セザル方可ナラン
十六番(益田克徳)曰ク、収用法ヲ其儘ニ存シ置キ私設鉄道条例第十五条ノ末文ヲイカスベシトノ論アリタレトモ、成程該条ノ末文ヲイカシ例ヘバ鉄道用地ノ民有ニ係ルモノハ土地収用法ニ拠リ政府ニ於テ協議ノ世話ヲ為スベシト云フガ如ク改ムル時ハ収用法ニ牴触スルノ懸念ナカルベシト雖トモ、斯クテハ地方庁ガ協議ノ世話ヲ為スニハ企業者ノ代理人タル資格ヲ以テ為スベキヤ、其身分ノ事ニ就テモ頗ル面倒ナル議論起ルベクシテ、要スルニ充分企業者ノ困難ヲ救済スルニ足ラザルベシ、故ニ今企業者ノ困難ヲ救済セントスルニハ収用法ヲ改正スルカ、若クハ別ニ例外法ヲ定ムルニアラザレバ到底其目的ヲ達スルヲ得ザルベシ、由是視之三番(梅浦精一)ノ説ノ如ク其方法ヲ指定セザル方稍ヤ穏当ナリト信ズ
二十九番(山中隣之助)曰ク、土地収用ノ事ニ関シテハ地主ト企業者ノ利害一致セザルニ付今一方ヲ利セントセバ必ズヤ一方ノ不利ヲ生ズベシ、故ニ本案ハ只今十六番(益田克徳)ノ述ベタルガ如ク企業者ノ困難ナル事情ヲ細陳スルニ止メ、其方法ハ別ニ指定セザル方可ナラン、而シテ若シ此事情ニシテ一旦其筋ヘ貫徹スルヲ得バ或ハ市区改正条例ノ如ク鉄道用地ノ収用ニ関シ別ニ例外法ヲ定メラルヽヤモ知ルベカラザルナリ
右ノ外猶衆議ノ末本案ハ遂ニ三番(梅浦精一)ノ説ノ如ク只鉄道企業者ノ困難ナル事情ヲ細陳スルニ止メ、其方法ハ別ニ指定セザル事トシ文案ノ起草ハ理事本員ニ托シ直チニ其筋ヘ進達スルニ決ス
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 (此建議案ハ其後理事本員ニ於テ起草シ、四月九日附ヲ以テ内閣総理大臣閣下ヘ進達シタルニ付其全文ハ参考部第三号ニ記載ス)


東京商工会議事要件録 第四三号・第二五―二九頁 (明治二三年四月)刊(DK190040k-0002)
第19巻 p.267-268 ページ画像

東京商工会議事要件録  第四三号・第二五―二九頁 (明治二三年四月)刊
 ○参考部
(第三号)
    ○鉄道用地収用ノ儀ニ付建議
 鉄道ノ殖産興業上必要ノ機関タルハ今更ニ喋々ヲ要セス、是ヲ以テ政府ハ夙ニ種々ノ特例ヲ設ケテ鉄道事業ノ発達ヲ企図セラレタルヨリ爾来鉄道ノ布設ヲ企業スル者陸続トシテ所在ニ起リ、随テ之ガ為メ全国商工農業ノ振起ヲ促シタル事ハ歴々事実ニ就テ之ヲ徴スルヲ得ルニ至レリ、豈慶賀セザルベケンヤ、然ルニ今ヤ其線路益々延長シテ愈々其利用ヲ達セントスルニ当リ前途俄ニ一大障碍ノ発生スルアリテ其進歩ヲ妨グルノ実アルハ本会ノ私ニ憂慮ニ堪ヘザル所ナリ何ゾヤ、曩ニ土地収用法ヲ発布セラレタル以来鉄道企業者ガ其用地ヲ収用スルニ非常ノ困難ヲ感ズル事即チ是ナリ
 熟々是迄鉄道企業者ガ其用地ヲ収用スルノ手続ヲ案ズルニ其人民ノ私有ニ係ルモノハ明治二十年五月十七日勅令第十二号ヲ以テ発布セラレタル私設鉄道条例第十五条ニ規定セラルヽガ如ク、一旦公用土地買上規則ニヨリテ政府ヘ買上ゲラレ然ル後更ニ之ヲ企業者ヘ払下ゲラルヽノ方法ニシテ其措置極メテ簡便ナリ、蓋シ此簡便ナル方法ヲ設クル所以ノモノハ鉄道事業ヲ経営スルニ最モ必要ナルハ先ツ其土地ノ収用ニ在リテ若シ此用地ニシテ容易ニ収用スルヲ得ザルニ於テハ到底其成立ヲ期スルヲ得ザレバナリ、然ルニ明治二十二年七月卅日法律第十九号ヲ以テ一タビ土地収用法ヲ発布セラレ、之ト同時ニ従来ノ公用土地買上規則ヲ廃止セラレタルヨリ爾来鉄道企業者ガ其用地ヲ収用スルニハ先ヅ土地所有者及関係人ト相対ノ協議ヲ為ササルヘカラス、而シテ其協議ノ手続ハ一切企業者自ラ之ヲ弁セザルヲ得ザルニ付之ガ為メ企業者ハ是迄ノ如ク容易ニ其土地ヲ収用スル事ヲ得ズシテ為メニ非常ノ困難ニ遭遇セリ、抑モ鉄道ノ用地タル其線路ノ方向ハ可成的直線ヲ要スルヨリ其区域ヲ一所ニ限ル能ハズ、一帯長ク延テ数県数国ニ跨リ宅地耕地山林原野等ヲ撰バズ之レヲ収用セサルヘカラス、然ルニ我国ハ従来小農ヲ以テ成立スルノ国柄ナルガ故ニ随テ鉄道線路ニ当ル土地所有者及関係人ノ夥多ナル往々数万人ニ達スル事アリ、現ニ九州山陽地方ノ如キ僅々一哩間ノ鉄道用地ニシテ百数十人ノ分有ニ帰スル事殆ド常例ナルガ如シ、企業者ガ此等多数ノ人ニ向テ悉ク収用ノ協議ヲ遂グルハ実ニ非常ノ手数ト歳月トヲ消費セサルヲ得ズ、随テ各区ノ鉄道布設工事ヲ相当ノ期限内ニ竣工スルハ到底望ムベカラザルナリ、是企業者ノ目下最モ困難ヲ感スル所ニシテ若シ此儘之ヲ放任スルニ於テハ今後新ニ企業セントスル者其跡ヲ絶ツノミナラス既ニ企業シテ着手中ノ者ト雖トモ遂ニ其事業ヲ廃スルニ至ラン、果シテ然ラバ独リ企業者ノ困離《(難)》ニ止ラスシテ延ヘテ全国商工農業ノ上ニ及ボス影響亦実ニ少々ナラザルナリ蓋シ人民私有ノ土地ヲ収用スルニ当リ其所有者ト協議シテ相当ノ補
 - 第19巻 p.268 -ページ画像 
償額ヲ定ムルハ固ヨリ当然ノ事理ニシテ、現行土地収用法ノ精神ニ至リテハ敢テ喙ヲ容ルヽ所ナシト雖トモ、独リ奈何セン鉄道企業者ヲシテ収用ノ協議ヲ遂グルニ非常ノ手数ト歳月トヲ費サシメ、為メニ鉄道事業ノ発達ヲ遅緩シ遂ニ此必要ナル機関ヲシテ充分其利用ヲ達スルヲ得ザラシムルハ本会ノ深ク遺憾トスル所ナリ、仰キ願クハ現行土地収用法ニ相当ノ改正ヲ加ヘラレテ鉄道用地収用ノ手続ヲ今少シク簡便ニセラルヽカ、若クハ鉄道用地ニ限リ特ニ収用規則ヲ設ケラルヽカ、要スルニ土地所有者ノ利益ヲ傷害スル事ナクシテ鉄道企業者ヲシテ容易ニ其用地ヲ収用スルヲ得セシメラレン事ヲ望ム、依テ此段建議仕候也
                 東京商工会々頭
  明治二十三年四月九日
                      渋沢栄一
    内閣総理大臣 伯爵 山県有朋殿


東京商工会議事要件録 第四六号・第二―四頁 (明治二三年九月)刊(DK190040k-0003)
第19巻 p.268 ページ画像

東京商工会議事要件録  第四六号・第二―四頁 (明治二三年九月)刊
  第二十五定式会
           (明治二十三年八月二十六日開)
  第四十二臨時会
    ○会員出席スル者 ○二十八名
会長(渋沢栄一)ハ開会ノ趣旨ヲ報ジ先ヅ定式会ヲ開クベキ旨ヲ告ゲ規程第五章第二十二条ニ拠リ明治二十三年上半季間定式事務ノ成跡ヲ報告ス
  自明治二十三年一月至同年六月 半季間東京商工会事務報告
○中略
    其筋ヘ建議   四件
○中略
○鉄道用地収用ノ儀ニ付内閣総理大臣ヘ建議
  本件ハ明治二十三年三月三日四番会員(林賢徳)ノ建議ニ依リ、其要旨ハ従来鉄道用地ヲ収用スルニハ公用土地買上規則ニヨリ一旦政府ヘ買上ゲラレ然ル後更ニ之ヲ企業者ヘ払下ゲラルヽノ方法ニシテ其措置極メテ簡便ナリシモ、昨年七月法律第十九号ヲ以テ土地収用法ヲ発布セラレ、爾来其価ヲ定ムルニハ企業者ト土地所有者ト相対ノ協議ヲ為サヾルベカラザル事トナリタルヨリ企業者ノ困難実ニ非常ナルニ付、此際適宜ノ法令ヲ発シ企業者ヲシテ容易ニ其用地ヲ収用スルヲ得セシメタシト云フニ在リ、即チ明治二十三年三月十三日第三十九臨時会ニ於テ之ヲ審議シタルニ全会異議ナク之ヲ可決シタルニ付其後理事本員ニ於テ文案ヲ調成シ、四月九日附ヲ以テ之ヲ山県内閣総理大臣閣下ニ進達シタリ
○下略
   ○右ノ建議採可サレズ。土地収用法ハ其後明治三十三年三月六日法律第二十九号ヲ以テ更新サレシガ、其第二十二条ニハ依然土地収用ニ際シ、土地所有者及関係人ト協議スルノ必要ナル旨規定セラレタリ。(法令全書明治卅三年上)



〔参考〕法令全書 明治八年 内閣官報局編 明治二二年一二月 刊 ○第百三十二号(七月二十八日輪廓附)○太政官達 院省庁(DK190040k-0004)
第19巻 p.268-270 ページ画像

法令全書 明治八年 内閣官報局編  明治二二年一二月 刊
 - 第19巻 p.269 -ページ画像 
○第百三十二号(七月二十八日輪廓附) ○太政官達     院省庁
公用土地買上規則別紙ノ通相定候条此旨相達候事
(別紙)
公用土地買上規則
第一則 公用土地買上トハ国郡村市ノ保護便益ニ供スルタメ院省使庁府県ニ於テ人民所有ノ土地ヲ買上ルヲ云フ
  但国郡村市ノ保護便益ニ供スル為メ人民ニテ鉄道電線上水等ノ大土工ヲ起ス時ハ、其事業ニヨリ特別官許ノ上此規則ニ準スルヲ得ヘシ
第二則 公用買上ハ必ス其地ヲ要セサルヲ得サルニアラサレハ之ヲ行ハサルモノトス、故ニ人民之ヲ拒ムヲ得ス
  但其地ニ属シタル植物建造物等モ亦本文ニ同シ
第三則 院省使ニテ公用土地買上ヲ要スルトキハ左ノ事由ヲ内務省ニ照会シ、内務省ヨリ地方官ニ諮詢シテ差支ナキ旨ノ回答ヲ得タル上該庁ヨリ太政官ニ上陳允裁ヲ得ルモノトス
 庁府県ニテ公用土地買上ヲ要スルトキハ左ノ事由ヲ具状シテ内務省ニ稟請シ、内務省ヨリ太政官ニ上陳シ允裁ヲ得ルモノトス
  内務省ニ照会又ハ稟請スヘキ事由左ノ如シ
 一土地ヲ買上ルノ事由
 一該地ヲ必需スルノ事由
  其管轄国郡村市
 一該地ノ番号
 一該地ノ字
 一該地ノ地種
 一該地ノ地主
 一東西何程南北何程
 一方積何程
  但該地ノ実測図ヲ添ル者トス実測図ハ近傍ノ地形ヲモ略記スヘシ
第四則 公用ノタメ買上ル地価ハ券面ニ記シタル代価タルヘシ、然レトモ地価相違ヲ生セシ時ハ所有者ト買上ヘキ該庁トノ商議ヲ以テ代価増減スル事アルヘシ
 増補 但明治五年二月十四日以前潰地又ハ用地申付為手当作徳米等ヲ渡シ来リタル土地ハ同年ヨリ同七年迄三ケ年ノ貢納石代平均ノ価ヲ以作徳米七ケ年半ノ金額ヲ一時ニ下渡シ買上ルモノトス
   第百六十号達ヲ以テ但書増補 十八年内務省甲第二十二号達参看
第五則 買上ヘキ土地ニ属シタル植物建造物等ヲ併セテ買上ルトキハ地価ノ外別ニ植物建造物等ノ代価ヲ渡スヘシ、其代価ハ所有者ト買上ヘキ該庁トノ協議タルヘシ
第六則 買上ヘキ土地ニ属シタル植物建造物等ヲ買上ケサルトキハ地価ノ外別ニ植物建造物等ノ転移料ヲ渡スヘシ、転移料ハ所有者ト土地ヲ買上タル該庁トノ協議タルヘシ
第七則 土地ヲ買上ヘキ該庁ハ植物建造物等ヲ買上クルコトヲ要セスト雖トモ、人民植物建造物等ヲ併セテ買上ン事ヲ求ルトキハ第五則ノ通タルヘシ
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第八則 土地植物建造物等ノ買上代価及転移料ノ見込、所有者ト該庁ノ間ニ許多ノ差違ヲ生シ熟議ニ至リ難キトキハ双方ヨリ評価人各一人ヲ出シ地方官之ヲ折衷シテ内務省ノ決ヲ請ヒ之ヲ定ムルモノトス
第九則 地方官土地及ヒ植物建造物等ノ買上ヲ公達シタルトキハ直ニ買上代価ヲ渡スヘシ
第十則 人民買上代価ヲ受取タルトキハ買上ラレタル土地植物建造物等ヲ三十日以内ニ渡スヘシ、然レトモ買上前ニ該庁ト別段ノ契約ヲ結ヒタルハ特別トス
改正 第十一則 土地買上ノ際事業ノ急施ヲ要スルトキハ特ニ其旨ヲ所有者ニ達シ三十日以上ノ期日ヲ定メ代価ヲ申出シムヘシ、其期日迄ニ代価ヲ申出サルカ又ハ代価ニ付双方見込相協ハサルトキハ更ニ建物アル地ハ三十日以上、建物ナキ地ハ十日以上ノ期日ヲ定メ、其期日迄ニ之ヲ引渡スヘキ旨ヲ達スヘシ、但各其期日内ニ双方共現在ノ実況及ヒ其見込ノ代価ヲ詳記シ評価人ノ意見書ヲ添ヘ地方官ノ認印ヲ受置クヘシ
   十五年太政官第六十四号達ヲ以テ第十一則追加 十六年同第五十号達ヲ以テ第十一則改正
追加 第十二則 第十一則ノ場合ニ於テハ所有者ノ請求ニヨリ土地ニ付テハ券面地価十分八ノ金額、建造物等ノ移転料又ハ代価ニ付テハ仮定ノ金額地方官実況ニヨリテ之ヲ定ムヲ渡置キ代価決定ノ上精算スヘシ
   十五年太政官第十四号達ヲ以テ第十二則追加



〔参考〕法令全書 明治二〇年 大蔵省官報局編 刊 勅令第十二号(官報五月十八日)私設鉄道条例(DK190040k-0005)
第19巻 p.270 ページ画像

法令全書 明治二〇年 大蔵省官報局編 刊
勅令第十二号(官報五月十八日)
    私設鉄道条例
○上略
第十五条 官有ノ土地ニシテ鉄道用地ニ必要ナルモノ及第九条ノ土地ハ相当代価ヲ以テ之ヲ払下ケ、其民有ニ係ルモノハ公用土地買上規則ニ拠リ買上ケ会社ニ払下クヘシ、但其土地ニ建物アルトキハ本条ニ準シテ之ヲ処分スヘシ ○下略
  ○第九条ノ土地トハ道路橋梁溝渠運河等ヲ指ス。



〔参考〕法令全書 明治二二年上巻 大蔵省官報局編 刊 法律第十九号(官報七月三十一日)土地収用法(DK190040k-0006)
第19巻 p.270-274 ページ画像

法令全書 明治二二年上巻 大蔵省官報局編 刊
法律第十九号(官報七月三十一日)
土地収用法
    第一章 総則
第一条 公共ノ利益ノ為メノ工事ニシテ必要アルトキハ此法律ノ定ムル所ニ依リ、損失ヲ補償シテ土地ヲ収用又ハ使用スルコトヲ得
 土地ノ使用ハ三年以内ニ限ル、但一年以上ニ亘リ又ハ使用ノ為メ土地ノ形質ヲ変更スルトキ又ハ建物アル土地ハ所有者ノ請求ニ依リ之ヲ収用スヘシ
第二条 左ノ種類ノ工事ニ要スル土地ハ内閣ニ於テ公共ノ利益ニシテ必要ナルコトヲ認定シタル後此法律ヲ適用スルコトヲ得、但国防上ノ工事ニ関スル認定ハ此限ニアラス
 一 国防其他兵事ニ要スル土地
 - 第19巻 p.271 -ページ画像 
 二 政府・府県郡市町村及公共組合ノ直接ノ公用ニ供スル土地
 三 官立公立ノ学校病院其他学芸及慈善ノ用ニ供スル土地
 四 鉄道電信航路標識及測候所ノ建設用地
 五 河川溝渠ノ掘鑿道路橋梁埠頭水道及下水ノ築造用地
 六 防火及水害予防並検疫所火葬場其他公衆ノ衛生ニ要スル土地
第三条 前条ノ工事ノ為メ土地ヲ収用又ハ使用セントスルノ必要アルトキハ起業者ハ工事計画書並図面ヲ製シ地方長官ニ差出スヘシ、地方長官ハ之ヲ審査シ内務大臣ニ具申シ、内務大臣ハ之ヲ閣議ニ提出スヘシ
 前項ノ工事政府ノ起業ニ係ルトキハ主務大臣ハ工事計画書並図面ヲ製シ、内務大臣ト協議シ之ヲ閣議ニ提出スヘシ
第四条 内閣ニ於テ工事ヲ認定シタルトキハ官報ヲ以テ起業者及起業地並工事ノ種類ヲ公告スヘシ
 国防上ノ工事ニ関シテハ主務大臣ヨリ地方長官ニ通知シ、地方長官ハ其土地所有者及関係人ニ通知スヘシ
    第二章 土地収用ノ手続
第五条 工事ノ認定ヲ得タル後起業者ハ工事準備ノ為メ其土地ニ立入リ、測量又ハ検査ヲ為スコトヲ得
第六条 前条ノ場合ニ於テハ起業者ヨリ工事準備ノ為メ立入ルヘキ場所及期日ヲ予メ其地ノ市町村長及各所有者ニ通知スヘシ、但準備ノ為メニ生スル所ノ損失ハ起業者之ヲ補償スヘシ
 若シ補償ニ付協議調ハサルトキハ市町村長一名ノ鑑定人ヲ選ヒ立会ハシメ其金額ヲ定ムヘシ
第七条 工事ノ認定前起業者計画準備ノ為メ其土地ニ立入リ、測量又ハ検査ヲ為スノ必要アル場合ニ於テハ予メ地方長官ノ認可ヲ受クヘシ、但政府ノ起業ニ係ルトキハ主務大臣ヨリ予メ地方長官ニ通知スヘシ
 地方長官前項ノ認可ヲ為シ又ハ通知ヲ受ケタルトキハ其旨ヲ告示シ又ハ其土地所有者及関係人ニ通知スヘシ
 起業者本条第一項ノ測量又ハ検査ヲ為ストキハ其場所及期日ヲ各所有者ニ通知スヘシ、但損失ヲ補償スルトキハ前条ノ例ニ依ル
第八条 工事ノ仕様及収用又ハ使用スヘキ土地ノ区域確定シタルトキハ起業者ハ其仕様書並図面及損失補償金額見積書ヲ所有者及関係人ニ示シ協議ヲ遂クヘシ、但国防上ノ用地ニ関シテハ其区域及損失補償金額見積書ヲ示シ仕様書及図面ヲ添フルヲ要セス
 若シ協議調ハサルトキハ起業者ハ各市町村別ニ左ノ事項ヲ記載シ、前項ニ掲ケタル書類ト共ニ地方長官ニ差出シ土地収用審査委員会ノ裁決ヲ請フヘシ、但政府ノ起業ニ係ルトキハ主務大臣ヨリ其書類ヲ地方長官ニ送付シ土地収用審査委員会ノ裁決ヲ求ムヘシ
 一 収用又ハ使用スヘキ土地ノ番号地目並隣地ノ番号地目
 二 収用又ハ使用スヘキ土地ノ段別若シ建物木石作物等アルトキハ其建坪数量、但土地又ハ建物ニ分割ヲ来ス場合ニ於テハ其全部ノ段別建坪ヲ併セ記スヘシ
 三 土地台帳登記簿ニ依テ知リ得ヘキ所有者及関係人ノ氏名
 - 第19巻 p.272 -ページ画像 
 四 収用又ハ使用ノ時期
 五 損失補償金額並其内訳、但収用又ハ使用スヘキ土地ニ在ル建物木石作物等ノ移転ヲ請求スルトキハ其移転料
第九条 地方長官前条ノ書類ヲ受取リタルトキハ之ヲ市町村長ニ下付スヘシ、市町村長ハ之ヲ市役所又ハ町村役場ニ備置キ十四日間公衆ノ縦覧ニ供スル旨ヲ公告スヘシ、且起業者ヲシテ特ニ所有者及関係人ニ其旨ヲ通知セシムヘシ
 前項ノ公告ニハ土地収用審査委員会ヲ開クヘキ場所・期日・所有者及関係人ヨリ意見書ヲ差出スヘキ場所ヲ記載スヘシ
第十条 収用又ハ使用スヘキ土地ノ所有者及関係人ハ前条公告ノ日ヨリ十四日以内ニ意見書ヲ差出スヘシ、若シ其期限ヲ過ルトキハ意見ヲ申立ツルコトヲ得ス
第十一条 地方長官ハ前条公告ノ日ヨリ十四日間ヲ過キタル後土地収用審査委員会ヲ開クヘシ
 土地収用審査委員会ハ仕様其他ノ手続ヲ審査シ、所有者及関係人ヨリ差出シタル意見書ノ当否、土地収用又ハ使用ノ区域、収用又ハ使用ノ時期並補償ノ金額ヲ裁決スヘシ
 補償ノ金額ヲ裁決スルトキハ先ツ二名以上ノ鑑定人ヲ選ヒ其見積書ノ当否ヲ調査セシムヘシ
第十二条 土地収用審査委員会ハ七日以内ニ裁決ヲ終リ地方長官ニ之ヲ報告スヘシ、但其期限内ニ裁決スルコトヲ得サル事由アルトキハ地方長官ノ認可ヲ経テ其期限ヲ延スコトヲ得
第十三条 地方長官土地収用審査委員会ノ裁決ノ報告ヲ受ケタルトキハ、市町村長ヲシテ之ヲ起業者及所有者並関係人ニ達セシムヘシ
第十四条 地方長官ヨリ裁決ノ達ヲ受ケタルトキハ起業者ハ補償金ヲ所有者及関係人ニ払渡シ、又ハ地方庁ニ預置キ土地ヲ受取ルヘシ、但工事仕様ニ関スル裁決ニ服セス内務大臣ニ訴願シタル場合ハ此限ニアラス
第十五条 土地収用審査委員会ノ工事仕様ニ関スル裁決ニ服セサル者ハ裁決ノ達ヲ受ケタル日ヨリ七日以内ニ内務大臣ニ訴願スルコトヲ得、内務大臣ノ裁決ヲ終ルマテハ起業者其工事ニ著手スルコトヲ得ス、但内務大臣ノ裁決ハ之ヲ終審トス
 補償金額ニ関スル裁決ニ服セサル者ハ裁決ノ達ヲ受ケタル日ヨリ三箇月以内ニ裁判所ニ出訴スルコトヲ得、此場合ニ於テハ起業者其工事ノ著手ヲ猶予セサルコトヲ得
第十六条 起業者土地ヲ受取リタルトキハ其登記ト倶ニ該土地ハ第三十五条ノ場合ニ於テ旧所有者原価ヲ以テ買戻ノ権ヲ有スル旨ノ記入ヲ求ムヘシ
    第三章 損失補償
第十七条 収用又ハ使用スヘキ土地其他ノ補償金額ハ所有者及関係人ヲシテ相当ノ価値ヲ得セシムルヲ目的トシテ之ヲ定ムヘシ
第十八条 収用ノ為メ土地ノ分割ヲ来シタル場合ニ於テ収用地ノ補償価格残地ノ価格ヨリ高キ事実アルカ又ハ残地ノ価格ヲ減スヘキ事実アルトキハ併セテ其損失ヲ補償スヘシ
 - 第19巻 p.273 -ページ画像 
 土地ノ一部ヲ使用スルカ為メ残地ノ損失ヲ来ストキハ其補償ニ付テモ亦前項ニ同シ
第十九条 収用又ハ使用ノ為メ所有者及関係人ニ於テ新ニ道路溝渠橋梁墻柵及井等ヲ設ケサルヲ得サル場合ニ於テハ其費用ヲ補償スヘシ
第二十条 収用ノ為メ土地ノ分割ヲ来シ所有者ニ於テ従来該地ヲ使用セル目的ニ供スルコトヲ得サル場合ニ於テハ、其土地全部ノ収用ヲ請求スルコトヲ得
 収用ノ為メ建物ノ分割ヲ来ス場合ニ於テハ所有者其建物ノ全部並建物ニ属スル土地全部ノ収用ヲ請求スルコトヲ得
第二十一条 収用又ハ使用ノ土地ニ附属スル建物木石等ハ併セテ之ヲ収用又ハ使用シ作物ハ之ヲ収用スヘシ、但所有者ニ於テ其移転ヲ請求スルトキハ移転料ヲ補償スヘシ
第二十二条 所有者補償金額ヲ増サンカ為メ故ラニ建物雑作ヲ修補シ又ハ木石作物等ヲ増加シタル実蹟アルトキハ、之ヲ補償金額中ニ算入セス所有者ヲシテ自費ヲ以テ其土地ノ収用又ハ使用ノ日マテニ之ヲ取払ハシムヘシ
第二十三条 土地ト建物木石作物等ト其所有者ヲ異ニスル場合、又ハ借地人借家人小作人等其土地ニ対シ特別ノ関係ヲ有スル者アル場合ニ於テハ、其収用又ハ使用ニ因テ生スル損失ニシテ金額ニ見積ルコトヲ得ルモノニ限リ各別ニ之ヲ補償スヘシ
 書入又ハ質入トナリタル土地建物ノ補償金ハ地方庁ニ預置カシメ所有者及債主連署シテ其下渡ヲ請求スルヲ竢テ払渡スヘシ
第二十四条 補償金ノ受取人之ヲ受取ルコトヲ拒ムトキハ起業者ハ之ヲ地方庁ニ預置クヘシ
第二十五条 工事ノ仕様並補償金額ノ決定ノ後起業者其土地ヲ収用又ハ使用セサル以前其工事ヲ廃スル場合ニ於テ所有者及関係人之カ為メニ損失ヲ被リタルトキハ、其補償金ヲ請求スルコトヲ得、収用又ハ使用ノ時期ヲ過キテ仍ホ土地ヲ収用又ハ使用セサルトキモ亦同シ
 若シ補償ニ付協議調ハサルトキハ第六条第二項ノ例ニ依ル
第二十六条 収用又ハ使用ノ補償金額ノ決定ニ漏レタル損失ヲ発見シタルトキハ所有者及関係人ハ其収用又ハ使用ノ日ヨリ三箇年以内ニ其補償金ヲ請求スルコトヲ得
 若シ補償ニ付協議調ハサルトキハ土地収用審査委員会ノ裁決ヲ請フヘシ
第二十七条 天災時変ニ際シ急施ヲ要スル公共ノ利益ノ為メノ工事ハ起業者ノ申立ニ依リ郡市長之ヲ認定シ直ニ土地ヲ収用又ハ使用セシムルコトヲ得、但補償ニ関スル手続ハ執行後此法律ニ依リ之ヲ行フヘシ
第二十八条 国防又ハ道路堤防鉄道及埠頭ノ工事ニ供スル土石砂礫ニシテ宅地外ニ在テ所有者使用セサルモノハ此法律ニ依リ之ヲ収用スルコトヲ得
    第四章 土地収用審査委員
第二十九条 土地収用審査委員ハ府県会常置委員ヲ以テ之ニ充テ地方長官ヲ会長トス、地方長官故障アルトキハ上席高等官之ヲ代理ス
 - 第19巻 p.274 -ページ画像 
 工事ノ仕様ヲ裁決スル場合ニ於テハ其工事ノ状況ニ依リ専門技術家ヲ委員中ニ加フヘシ
第三十条 起業者及収用又ハ使用スヘキ土地ノ所有者及関係人並其父子兄弟ハ土地収用審査委員会ノ会議ニ与カルコトヲ得ス
 前項ノ場合ニ於テ府県会常置委員ニ欠員ヲ生スルトキハ補欠員ノ中ヲ以テ補充スヘシ
第三十一条 土地収用審査委員会ノ選任スル鑑定人並第六条ノ鑑定人ハ、其市町村ニ於テ土地ヲ所有シ且前条第一項ニ触レサル者ニ限ル
第三十二条 土地収用審査委員会ハ起業者並所有者及関係人ヲ呼出スコトヲ得
第三十三条 土地収用審査委員会ハ委員半数以上出席スルニ非サレハ開会スルコトヲ得ス
 会議ハ多数ニ依テ決ス若シ可否ノ数相半ハスルトキハ会長之ヲ決ス
    第五章 雑則
第三十四条 収用又ハ使用ノ手続ニ関スル費用土地収用審査委員会並第六条ニ於テ要スル鑑定人ノ費用ハ総テ起業者ノ負担トス、但所有者及関係人ノ書類差出ニ関スル費用ハ総テ其自弁トス
第三十五条 起業者工事ヲ廃シ又ハ其他ノ事故ニ由リ収用シタル土地ノ全部若クハ一部不用ニ帰シタルトキハ起業者ハ直ニ其旨ヲ旧所有者ニ通知スヘシ、若シ其所在不分明ナルトキハ官報及其地方ノ新聞紙ヲ以テ三回以上公告スヘシ
 前項ノ土地ハ旧所有者原価ヲ以テ之ヲ買戻スコトヲ得
第三十六条 前条ノ通知後二箇月以内又ハ公告後六箇月以内ニ旧所有者何等ノ申込ヲ為サヽルトキハ買戻ノ権ヲ失フモノトス
第三十七条 起業者若シ第三十五条ノ通知又ハ公告ヲ為サスシテ他人ニ土地ヲ売却譲与シタルトキハ旧所有者ハ現所有者ニ就テ原価ヲ以テ其土地ヲ買戻スコトヲ得
第三十八条 国防其他兵事上工事ノ急施ヲ要スル場合ニ於テ土地ヲ収用又ハ使用スルハ特ニ定メタル法律ノ条規ニ依ル
第三十九条 北海道沖縄県ニ於テハ土地収用審査委員会ノ為スヘキ事務ハ北海道庁長官沖縄県知事之ヲ行フ
第四十条 市制町村制ノ施行ニ至ラサル地方ニ於テハ此法律ニ依リ市町村長ノ為スヘキ事務ハ区戸長之ヲ行フ
 島司ヲ置キタル地ニ於テハ郡長ノ為スヘキ事務ハ島司之ヲ行フ
第四十一条 明治八年太政官第百三十三号達公用土地買上規則ハ此法律施行ノ日ヨリ廃止ス



〔参考〕日本鉄道史 鉄道省編 上篇・第七三五―七三六頁 大正一〇年八月刊(DK190040k-0007)
第19巻 p.274-275 ページ画像

日本鉄道史 鉄道省編  上篇・第七三五―七三六頁 大正一〇年八月刊
 ○第七章 第二節 私設鉄道
    第一 日本鉄道
(欄外)用地収用ニ関スル請願
二十二年九月二十七日鉄道用地収用ニ関シ日本・阪堺・伊予・両毛・水戸・山陽・大阪・関西・甲武・九州ノ各鉄道会社々長ノ連署ヲ以テ内閣総理大臣ニ請願スル所アリ、其要ニ曰、本年七月法律第十九号土
 - 第19巻 p.275 -ページ画像 
地収用法ノ公布ヲ以テ従来公用土地買上規則ニ依リ民有地ヲ政府ニ買上ケ更ニ会社ヘ払下ケラレタル手続ヲ廃止シ会社自ラ土地所有者及関係人ト直接交渉ヲ要スルコトト為レリ、然ルニ土地所有者及関係人ノ住所姓名ヲ知ラントスルニハ官庁所蔵ノ土地書類ヲ繙クニアラズンハ能ハズ、而シテ其人々ヲ便宜ノ場所ニ招集スルニ当リ何等強制力ヲ有セザル起業者ノ開催ハ殆ト効果アル無シ、斯クシテ収用手続ヲ了ルマテノ遅滞障碍ハ実ニ言外ニ属スルヲ以テ相当ノ期限内ニ工事ヲ竣ランコト殆ト望ムヘカラズ、依テ今後ト雖従前ノ振合ニ拠リ民有地ハ之ヲ政府ニ於テ収用セラレ、然ル上之ヲ会社ニ交付アランコトヲ請願スト十一月五日聴届難シトノ指令ニ接セリ ○下略



〔参考〕日本鉄道史 鉄道省編 上篇・第八二九―八三一頁 大正一〇年八月刊(DK190040k-0008)
第19巻 p.275-276 ページ画像

日本鉄道史 鉄道省編  上篇・第八二九―八三一頁 大正一〇年八月刊
 ○第七章 第四節 私設鉄道条例ニ依ル鉄道
    第四 山陽鉄道
(欄外)土地収用ニ関スル稟請
明治二十二年七月三十一日法律第十九号ヲ以テ土地収用法公布セラレ之ニ依リ私設鉄道条例第十五条ハ消滅シ、従来ノ如ク鉄道用地ヲ一旦政府ニ買上ケ然ル後之ヲ鉄道会社ニ払下クル手続ハ廃止セラレタルニ依リ八月三十一日山陽鉄道会社々長ハ之ニ関シ内閣総理大臣ニ稟請シタリ、其要ニ曰、土地収用法公布セラレタルニ就テハ私設鉄道条例第十五条ニ依リ従来ノ如ク民有地ニ係ルモノハ収用法ヲ以テ一旦政府ニ於テ買収ノ上起業者ヘ払下ケラルルモノト心得ヘキヤヲ伺出テタルニ八月二十一日附ヲ以テ兵庫県知事ハ起業者ヨリ土地所有者及関係人ヘ協議収用スル儀ト心得ヘシト指令セラレタリ、然ルニ鉄道用地ノ性質タル其区域ハ一処ニ限ラズ延テ数国数郡ニ及ヒ宅地・耕地・山林・原野・池沼・堤塘ノ何タルヲ問ハズ、一帯直線ニ横断シ去ルモノニシテ其所有人、関係人ノ多キ実ニ幾百千ヲ数フルニ至ル故ニ土地買収ニ際シ起頭先ツ其所有人名ヲ知ラントスルトキハ官庁ニ蔵スル土地台帳ヲ繙クニ非ザレハ能ハズ、次テ其人々ヲ便宜ノ場所ニ集メテ協議セントスルモ官ノ職権アルニアラザレハ之ヲ召喚スルコト能ハズ、従テ不応者ヲ促シテ強テ出頭セシムルノ道ナキナリ、事ノ初ニ於テ已ニ斯ノ如シ、進テ協議ヲ了リ土地受渡ヲ為スマテニハ困難多大ニシテ到底私設会社ノ私ニ処弁シ得ザルモノト信ス、已ニ今日ノ経験上ヨリ見ルモ公用土地買上規則ニ依リ官ノ手ヲ以テスルモ尚ホ渋滞ノ憂ヲ免レザリキ然ルヲ況ンヤ無職権ノ一箇人ニ於テオヤ、其幾百千ノ所有者ヲ相手ニ収用手続ヲ完フセントスルモ何ソ実際ニ行ハレンヤ、曩ニ当社ハ明治二十年二月十五日民有ノ土地家屋ニシテ鉄道線路ニ当リ或ハ必要ナル停車場・倉庫建築ノ用ニ供スヘキモノハ公用土地買上規則ニ拠リ政府ニテ買上ケ之ヲ会社ニ払下クヘシトノ指令ニ接シ居レリ、其後当社敷設免許状請願ニ対シ二十一年一月四日内閣総理大臣ヨリ従前兵庫県知事ヨリ其社創立委員ニ対シ特許シタル事項ハ総テ消滅シタル儀ト心得ヘシト指令セラレタルモ是ヨリ先已ニ私設鉄道条例ノ公布アリ、其第十五条ノ明文アルカ為ニ特許ノ事実毫モ減損セズ其ママ実際ニ承継スルコトヲ得タリ、然ルニ今回土地収用法ノ為右第十五条ノ全文消滅ニ
 - 第19巻 p.276 -ページ画像 
帰ストセハ事実上ノ支障鮮カラズシテ前途甚タ憂慮ニ耐ヘズ、依テ自今当社用地ニシテ民有ニ係ル土地建物ハ従前ノ通リ土地収用法ヲ以テ一旦政府ニ買収ノ上当会社ニ払下ケラルル様特別ノ詮議ヲ仰キ度云々二十二年九月十三日鉄道局長官ハ内閣書記官長ニ対シ意見ヲ答告シ、山陽鉄道会社稟請ノ趣ヲ賛シタリ、然レトモ十一月五日内閣総理大臣ハ山陽鉄道会社々長ニ対シ稟請ノ趣聴届難キヲ指令シタリ、是年九月二十七日日本鉄道外数会社聯合シ同一趣旨ヲ以テ政府ニ請願スルニ際シ、山陽鉄道会社亦之ニ加ハリシカ十一月五日ヲ以テ聴届難シトノ指令ニ接シタリ