公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15
第20巻 p.306-308（DK200022k） ページ画像
明治26年3月16日（1893年）
是ヨリ先農商務省商工局長斎藤修一郎ヨリ当会議所ニ対シ香水用カナンガ油ノ原料取調ノ依頼アリシガ、取調成ルニヨリ是日栄一当会議所会頭トシテ之ヲ同省商工局長若宮正音ニ答申ス。
第二回東京商業会議所事務報告 第三一頁 明治二六年四月刊（DK200022k-0001）
第20巻 p.306-307 ページ画像
第二回東京商業会議所事務報告 第三一頁 明治二六年四月刊
一香水用「カナンガ」ノ儀ニ付、農商務省商工局長ヨリ照会ノ件
本件ハ明治二十五年八月十日附ヲ以テ斎藤商工局長ヨリノ照会ニ係
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リ、其要旨ハ本邦ニ於ケル香水用「カナンガ」ノ原料産出ニ関スル実況ヲ報告アリタシト云ニ在リ、依テ其後当業者ニ就キ調査中ナリ
第三回東京商業会議所事務報告 第三〇―三一頁 明治二七年四月刊（DK200022k-0002）
第20巻 p.307-308 ページ画像
第三回東京商業会議所事務報告 第三〇―三一頁 明治二七年四月刊
一香水用「カナンガ」ノ儀ニ付、農商務省商工局長ヨリ照会ノ件
本件ハ前回ニ報告シタル如ク明治二十五年八月中斎藤商工局長ノ照会ニ依リ、其後当業者ニ就キ調査ノ上明治二十六年三月十六日附ヲ以テ左ノ如ク若宮商工局長ヘ回報シタリ
過般香水用「カナンガ」油ノ原料取調ニ関スル件ニ就キ、在里昂帝国領事ヨリ其筋ヘ照会文ノ写並ニ該品ノ見本ヲ添ヘ御照会ノ趣承知仕候、依テ其後当業者ニ付夫々取調候処、概略別紙ノ通リニ付此段及御回報候也
明治二十六年三月十六日
東京商業会議所会頭 渋沢栄一
農商務省商工局長 若宮正音殿
（別紙）
「カナンガ」原料ニ関スル取調書
一ロイニス氏著植物書ニ拠ルニ「カナンガ」(Cananga)ハ東印度ニ産スル芳香植物ニシテ「カナンガ」ハ即チ同国固有ノ名ナリ、此植物ハ元来自然生ナレドモ時トシテハ人工ヲ以テ培養スルコトアリ、其花ヨリ製シタル油ヲ「イランイラン」(Ylang Ylang)ト称ス云々トアリ、又近着ノ独逸レイプヂツク府某商会ノ報告ニ拠ルニ、「カナンガ」ハ元来東印度ニ産シタレドモ、今日ハ瓜哇ニ於テモ盛ニ産出ス、而シテ近来品払底ニシテ相場上進セリ、「カナンガ」ヲ蒸溜シテ製スルモノ即チ「カナンガ」油ナリ云々トアリ
一今回送附ノ見本ヲ当業者ニ示シ其鑑定ヲ求メタルニ此見本ノ原料ハ多分日本産樒実ト同種ナラントノ説アリ、依テ更ニ或専門学士ノ説ヲ叩キタルニ「カナンガ」ト樒トハ稍ヤ類似ノ植物ニシテ「カナンガ」ハ番茘枝科(Anonaceæ)ニ属シ、樒ハ木蘭科(Magnoloceæ)ニ属シ、二者共ニ其所属ヲ異ニスト雖トモ共ニ兄弟科ナリ、然リト雖トモ此見本ハ極メテ小量ニシテ充分ノ試験ヲ遂ケ難キニ付、日本ニ産スル樒実ヲ以テ果シテ見本ト同一ナル香油ヲ製シ得ベキヤハ確信シ難シト云フ
一前項記スル処ニ拠レハ、日本産樒実ヲ以テ果シテ見本ト同一ナル香油ヲ製シ得ベキヤハ明ナラズト雖トモ、当業者ノ説ニ拠レバ現ニ日本ニ於テ樒実ヲ以テ鬢附油ノ原料ニ供スル事モアリト云ヘハ、或ハ日本産樒実ヲ以テ「カナンガ」ノ原料ニ代用スルヲ得ベキヤモ知ル可カラズ、依テ試ニ日本産樒実ノ見本一包ヲ添ヘテ参考ニ供ス
一日本産樒実ハ従来多少外国ヘ輸出スルコトアリ、今試ニ大蔵省主税局編纂外国貿易年報ニ拠リ明治二十年ヨリ二十四年ニ至ル其輸出額ヲ示セバ左ノ如シ（貿易年報中英語Star aniseト記シ大茴香ト訳スルモノハ即チ樒実ナリ、又別ニ星形茴香或ハ八角茴香ト訳スルコトアリ）
大茴香輸出額
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年次 数量 金額
明治二十年 三七九、三〇九斤 五、八三八円
同二十一年 四七一、五六七〃 八、三六五〃
同二十二年 二九四、九三七〃 一〇、九三二〃
同二十三年 二〇三、三七一〃 一一、一七九〃
同二十四年 一、二九六、〇七八〃 六三、八八八〃
又前記明治二十四年ノ輸出額ニ就キ更ニ其国分ケヲ示セハ左ノ如シ
地名 斤量 元価
香港ヘ 四二九、三一七斤 二一、九〇〇、六六〇
支那ヘ 八五七、八〇八〃 四一、六一二、一二〇
英国ヘ 一、〇〇〇〃 四五、〇〇〇
英領印度ヘ 二、四一〇〃 一二〇、五〇〇
露国ヘ 二、四一三〃 一〇二、八五〇
比律賓群島ヘ 九〇〇〃 四〇、〇〇〇
西班牙ヘ 二、二三〇〃 六六、九〇〇
一東京市ニ於テ樒実ヲ販売スル重立チタル商人ハ左ノ如シ
東京市日本橋区本町四丁目三番地
中川宇八
同 本町三丁目
円城半右衛門
同 伊勢町塩河岸
吉野惣兵衛
同 室町三丁目
平沢重助
同 本石町四丁目
松沢常吉
一樒実ノ相場ハ需要・供給ノ多少ニヨリ一定セスト雖トモ、和百斤ニ付凡金三・四円以上七・八円位ニシテ、時トシテ十円以上ニ上ルコトモアリト云フ