デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

7章 経済団体及ビ民間諸会
1節 商業会議所
3款 東京商業会議所
■綱文

第20巻 p.587-608(DK200075k) ページ画像

明治28年8月17日(1895年)

是日栄一当会議所会頭トシテ、海運振張ノ方法ヲ大蔵大臣伯爵松方正義・農商務大臣子爵榎本武揚逓信大臣渡辺国武ニ建議シ、同月二十三日建議書ノ写ヲ全国各商業会議所及貴衆両院議員ニ発送ス。


■資料

東京商業会議所月報 第二三号・第六頁 明治二七年七月 【○六月五日午後六時、本会議所事…】(DK200075k-0001)
第20巻 p.588 ページ画像

東京商業会議所月報  第二三号・第六頁 明治二七年七月
○六月五日午後六時、本会議所事務所ニ於テ臨時会議ヲ開ク、当日出席会員三十三人ニシテ、左ノ件々ヲ審議シ、午後十時四十分閉会ス
○中略
多数ヲ以テ海運振張ノ方法調査ノ為メ議長 ○渋沢栄一ノ指名ニヨリ委員九名ヲ選挙スルコトニ決シ、乃チ議長ハ左ノ諸君ヲ指名ス
                   益田孝君
                   荘田平五郎君
                   佐久間貞一君
                   大江卓君
                   岩谷松平君
                   野中万助君
                   奥三郎兵衛君
                   今村清之助君
                   中野武営君


東京商業会議所月報 第二三号・第八頁 明治二七年七月 【○同月 ○六月二十七…】(DK200075k-0002)
第20巻 p.588 ページ画像

東京商業会議所月報  第二三号・第八頁 明治二七年七月
○同月 ○六月二十七日午後五時三十分、本会議所事務所ニ所《(於)》テ委員会議ヲ開キ、海運振張方法調査委員長ノ選挙ヲ施行シ、午後六時閉会ス、其選挙ノ結果左ノ如シ
               委員長 中野武営君


東京商業会議所月報 第二四号・第六―七頁 明治二七年八月 【○同月 ○七月四日午後五時四十…】(DK200075k-0003)
第20巻 p.588 ページ画像

東京商業会議所月報  第二四号・第六―七頁 明治二七年八月
○同月 ○七月四日午後五時四十分、本会議所事務所ニ於テ委員会議ヲ開キ、海運振張ノ方法調査ノ件ヲ審議シ、午後七時四十五分閉会ス
○中略
○同月 ○七月十一日午後五時卅分、本会議所事務所ニ於テ委員会議ヲ開キ、海運振張ノ方法調査ノ件ヲ審議シ、午後九時廿分閉会ス
○同月十七日午後六時、本会議所事務所ニ於テ委員会議ヲ開キ、海運振張ノ方法調査ノ件ヲ審議シ、午後十時十五分閉会ス
○中略
○同月 ○七月二十五日午後六時、本会議所事務所ニ於テ委員会議ヲ開キ海運振張ノ方法調査ノ件ヲ審議シ午後九時閉会ス


渋沢栄一書翰 萩原源太郎宛 (明治二七年)一〇月五日(DK200075k-0004)
第20巻 p.588 ページ画像

渋沢栄一書翰  萩原源太郎宛 (明治二七年)一〇月五日   (萩原英一氏所蔵)
○上略
海運之義ニ付委員会御開之処是又不参仕候、中野 ○武営君ヘ可然御申上可被下候
右至急得御意候 不一
  十月五日                渋沢栄一
    萩原源太郎様


東京商業会議所月報 第三一号・第一頁 明治二八年三月 【○二月六日午後五時、本会議所事…】(DK200075k-0005)
第20巻 p.588-589 ページ画像

東京商業会議所月報  第三一号・第一頁 明治二八年三月
 - 第20巻 p.589 -ページ画像 
○二月六日午後五時、本会議所事務所ニ於テ委員会議ヲ開キ、海運振張方法調査ノ件ヲ審議シ、午後七時三十五分閉会ス


東京商業会議所月報 第三二号・第一二―一三頁 明治二八年四月 【○三月四日、本会議所…】(DK200075k-0006)
第20巻 p.589 ページ画像

東京商業会議所月報  第三二号・第一二―一三頁 明治二八年四月
○三月四日、本会議所事務所ニ於テ第五回定期会議ヲ開ク、当日ノ出席者ハ左ノ如シ
 益田克徳 ○外三十七名氏名略
午後五時開議、会頭渋沢栄一君議長席ニ着キ、左ノ件々ヲ議事ニ附シ午後八時四十分閉会ス
○中略
    一、各委員補欠選挙ノ件
本件ハ満場一致ヲ以テ会頭ニ其指名ヲ託スルコトニ決ス、依テ其後会頭ハ左ノ如ク指名ヲ為シタリ
○中略
 海運振張調査委員九名ノ内欠員五名  荘田平五郎君
                   大江卓君
                   奥三郎兵衛君
                   佐久間貞一君
                   野中万助君


東京商業会議所月報 第三二号・第一六頁 明治二八年四月 【○同月 ○三月十五日午後五時、…】(DK200075k-0007)
第20巻 p.589 ページ画像

東京商業会議所月報  第三二号・第一六頁 明治二八年四月
○同月 ○三月十五日午後五時、本会議所事務所ニ於テ委員会議ヲ開キ、海運振張方法調査ノ件ヲ審議シ、午後十時三十分閉会ス
○中略
○同月 ○三月二十日午後六時、本会議所事務所ニ於テ委員会議ヲ開キ、海運振張方法調査ノ件ヲ審議シ、午後九時四十五分閉会ス


東京商業会議所月報 第三五号・第三頁 明治二八年七月 【○同月 ○六月二十九…】(DK200075k-0008)
第20巻 p.589 ページ画像

東京商業会議所月報  第三五号・第三頁 明治二八年七月
○同月 ○六月二十九日午後五時十五分、本会議所事務所ニ於テ委員会議ヲ開キ、海運振張方法調査ノ件ヲ審議シ、午後九時四十分閉会ス


東京商業会議所月報 第三六号・第二頁 明治二八年八月 【○同月 ○七月十七日…】(DK200075k-0009)
第20巻 p.589 ページ画像

東京商業会議所月報  第三六号・第二頁 明治二八年八月
○同月 ○七月十七日午後六時、本会議所事務所ニ於テ委員会議ヲ開キ、海運振張方法調査ノ件等ヲ審議シ、午後八時閉会ス


東京商業会議所月報 第三七号・第九頁 明治二八年九月 【○八月十二日、本会議…】(DK200075k-0010)
第20巻 p.589 ページ画像

東京商業会議所月報  第三七号・第九頁 明治二八年九月
○八月十二日、本会議所事務所ニ於テ第四十七回臨時会議ヲ開ク、当日ノ出席者ハ左ノ如シ
 加東徳三君 ○外十九名氏名略
午後六時四十分開議、会頭渋沢栄一君議長席ニ着キ、左ノ件々ヲ議事ニ附シ、午後八時十五分閉会ス
    一、海運振張方法調査報告ノ件(委員提出)
本件ハ全会一致ヲ以テ原案ニ可決ス

 - 第20巻 p.590 -ページ画像 

東京商業会議所月報 第三七号・第一〇頁 明治二八年九月 【○同月 ○八月十二日…】(DK200075k-0011)
第20巻 p.590 ページ画像

東京商業会議所月報  第三七号・第一〇頁 明治二八年九月
○同月 ○八月十二日午後四時三十分、本会議所事務所ニ於テ委員会議ヲ開キ、海運振張方法調査ノ件ヲ審議シ、午後五時閉会ス


東京商業会議所月報 第三七号・第一一頁 明治二八年九月 【○同月 ○八月十七日…】(DK200075k-0012)
第20巻 p.590 ページ画像

東京商業会議所月報  第三七号・第一一頁 明治二八年九月
○同月 ○八月十七日、海運振張方法ノ儀ニ付大蔵・農商務・逓信三大臣ヘ建議書ヲ進達ス(建議書ノ全文ハ参照ノ部第一号ニ掲載ス)


東京商業会議所月報 第三七号・第一一―一八頁 明治二八年九月 【○参照第一号 八月十七日海運振張…】(DK200075k-0013)
第20巻 p.590-599 ページ画像

東京商業会議所月報  第三七号・第一一―一八頁 明治二八年九月
○参照第一号
 八月十七日海運振張方法ノ儀ニ付大蔵・農商務・逓信三大臣ヘ進達シタル建議書ハ左ノ如シ
    海運振張方法ノ儀ニ付建議
謹テ惟ミルニ、目下我国ノ状勢ニ於テ海運振張ノ極メテ必要ナルコトハ既ニ輿論ノ公認スル所ニシテ今更ニ喋々ヲ要セス、衆議院カ曩ニ航路拡張ノ儀ニ付政府ヘ建議シタルモノハ蓋シ亦此趣意ニ外ナラサルナリ、本会議所ニ於テモ夙ニ我商業ノ発達上海運振張ノ特ニ必要ナルコトヲ確認シタルヲ以テ、昨年以来専ラ其方法講究中ノ処今ヤ漸ク其調査ヲ終リタルニ付、玆ニ其意見ヲ具シテ以テ閣下ニ上呈ス、仰キ願ハクハ閣下ニ於テ速ニ本建議ノ要旨ヲ採納セラレンコト切望ノ至ニ堪ヘス、此段本会議所ノ決議ニ依リ謹テ建議仕候也
  明治廿八年八月十七日
             東京商業会議所会頭 渋沢栄一
    大蔵大臣  伯爵 松方正義殿
    農商務大臣 子爵 榎本武揚殿  (各通)
    逓信大臣     渡辺国武殿
    海運振張ニ付意見書
海運事業ニ三要素アリ、曰ク海員・造船業・海運営業即チ是ナリ、今海運ノ事業ヲ保護奨励セントスルニハ斉シク此三要素ヲ補助誘掖シテ其併進ヲ期セサルヘカラス、若シ其保護一方ニ偏スルトキハ徒ラニ人民ノ投機心ヲ鼓舞シテ一業ニノミ狂奔スルノ弊ヲ馴致シ、一時ハ事業振興ノ仮装ヲ呈スルモ一タヒ其保護ヲ止ムルトキハ忽ニ復タ衰微ヲ来シ、其結果ハ適々莫大ノ国費ヲ支消シテ一時ノ快夢ヲ買フニ過キス、結局外国人ヲシテ其利益ヲ独占セシムルニ至ラン、例ヘハ今多額ノ保護金ヲ与ヘテ独リ造船業ヲ奨励センカ、其事業ハ一時発達シテ多数ノ新造船ヲ見ルコトアルヘシ、然レトモ之ニ応シテ良海員ノ数増加スルコトナク又海運営業ノ規模拡張セサルトキハ、其新造ノ船舶ハ外国ノ海運業ニ資スルニ止マリ、本邦海運業ニ其効ヲ及ホス事ナカルヘク、又単ニ海運営業者ヲ保護センカ其事業一時発達シテ世界ニ雄飛スルニ至ルモ、其海員ハ外国人ニシテ其船舶ハ外国ノ築造ニ係ルニ於テハ本邦海運事業ノ名アルモ其実ナク、若シ国家一朝外国ニ事アルノ日ニ当リテハ我船舶ハ殆ント其用ヲ為スヘカラサルナリ、抑モ国家カ海運事業ヲ保護スル所以ノモノハ其ノ目的啻ニ商業ノ発達ヲ幇助スル為メノミニアラス、国家有事ノ日ニ於テ大ニ用フル所アランカ為ナリ、故ニ
 - 第20巻 p.591 -ページ画像 
之ヲ保護奨励スルニハ要スルニ前記三要素ノ併進ヲ期シ、以テ本邦海運事業ヲシテ其独立発達ノ基礎ヲ確立セシメサルヘカラス、今試ニ其方法ヲ示セハ左ノ如シ
  第一 海員養成ノ事
海員ノ養成ニ二途アリ、其一ハ船長・運転士・機関士ノ養成、其一ハ水夫・火夫ノ養成トス
一船長・運転士・機関士ノ養成
(一)商船学校ヲ拡張シ第一着手トシテ現在ニ二倍ノ生徒ヲ養成スルヲ度トシ、尚ホ漸ヲ以テ其員数ヲ増加スルノ方針ヲ取ルヘシ
   船長・運転士・機関士ノ養成ハ現今商船学校ノ任スル所ニシテ其教育ノ方法ハ同校創立以来既ニ殆ント二十年ノ実験ニヨリ今ヤ漸ク将ニ完備ノ域ニ達セントスルノ際ナレハ、此点ニ就テハ別ニ改良ヲ加フルノ必要ヲ見ス、只実地練習ノ程度ヲ一層進ムルヲ以テ足レリトスヘシ、然レトモ商船学校ノ規摸ニ至リテハ聊カ狭小ニ失スルノ感ナキヲ得ス、蓋シ現今同校ニ於テ養フ所ノ生徒ノ数ハ航海科八十余名、機関科八十余名、合セテ百六十余名ニシテ毎年ノ卒業生両科ヲ通シテ三十名ニ過キス、是現在ノ情況ニ応シ不足ヲ感スル所ナリ、現ニ日本郵船株式会社ノ如キ今猶船長・運転士・機関士ノ中多数ノ外国人ヲ雇使スルヲ見レハ以テ其不足ノ事実ヲ証スルニ足ルヘシ、左レハ今後若シ海運事業ヲ拡張セントスルニハ少クモ現時ニ倍数ノ生徒ヲ養ヒ、倍数ノ卒業生ヲ出スヲ必要ナリトス、或ハ之ニ満足セスシテ百名ノ卒業生ヲ出スヲ必要ナリト説ク者アリ、然レトモ之ニ応スル練習船ノ設備及卒業生就職ノ未来ヲ考慮スルトキハ斯クノ如ク俄ニ其規摸ヲ拡張スルハ聊カ危険ナキニ非ス、左レハ今商船学校ノ規摸ヲ拡張スルニ当リテハ漸進ノ主義ヲ取ルヲ安全ノ策ナリトス、是今日ニ於テ倍数ヲ以テ拡張ノ度合ヲ得タルモノト認ムル所以ナリ
(二)航海科生徒ノ練習船トシテ遠洋航海ニ堪フヘキ風帆船二艘ヲ増置シ、此練習船ハ汎ク世界ノ運送業ニ従事セシムヘシ
   蓋シ良海員ヲ養成スルハ汽船ニ望ムヘカラス、必スヤ帆船ニ依テ其心胆ヲ鍛ヒ其技術ヲ練ラサルヘカラス、或ハ実地練習生ヲ外国ノ帆船ニ依頼スルノ方便ナキニ非サルヘシト雖トモ、一艘ニ両三名ヲ容ルヽニ過キサルヘケレハ、百名ノ生徒ヲ尽ク外国船ニ依頼センコト到底期シ得ヘキ所ニアラス、現時商船学校ニ一ノ稲穂丸アリト雖トモ、凡二十名ノ生徒ヲ練習セシムルニ足ルノミ、故ニ此学校ノ教育ヲ完備セントスルニハ是非適当ナル帆船ヲ増置セサルヲ得ス、今充分ヲ望ムトキハ四・五艘ヲ備ヘタシト雖トモ、其経費ト運航ノ始末ヲ考フルトキハ大ニ顧慮スヘキモノアレハ、先ツ遠洋航海ニ堪フヘキ帆船二艘以上ヲ備フルヲ以テ相当ナリト信ス、而シテ此帆船二艘ヲ新造スルトキハ其費用頗ル多額ヲ要スヘシト雖トモ、此等ノ練習ハ必スシモ新船ニ限ルニアラサレハ、今仮ニ古船ヲ購入スルトセハ其費用ハ凡二十万円以内ニテ足ルヘシ、若シ好機会ニ乗スルトキハ十万
 - 第20巻 p.592 -ページ画像 
円ヲ以テモ備ヘ得ルコト敢テ望外ニ非サルナリ、又練習船ノ運航ハ敏活ナル商業者ノ手腕ヲ煩ハスヲ要ス、若シ単ニ之ヲ練習ニ供スルコト海軍省ノ練習船ノ如クナラシメンカ、其年々ノ経費莫大ニシテ一商船学校ニ対シテ或ハ不釣合ノ支出トナルヘシ故ニ之ヲ使用スルニハ世界ノ運漕業ニ供スルヲ以テ其目的トナサヽルヘカラス、蓋シ現時帆船ハ常ニ汽船ニ凌駕セラルヽノ勢ナレハ利益ヲ得テ其操業ニ当ランコトハ到底望ムヘカラストスルモ、今若シ之ヲ実験アル商業者ニ託スルモノトセハ、甚シキ損失ヲ蒙ラスシテ之ヲ維持スルコト亦敢テ難キニ非サルヘシ
(三)政府ハ行政上ノ処理ヲ以テ国民ノ気風ヲ海事ニ誘ヒ、商船学校ヲシテ有力者ノ協力ヲ得セシムル事ヲ勉ムヘシ
   本邦ノ如キ海国ニ在リテ一般ニ国民ノ海事思想ヲ涵養スルコトノ必要ナルハ今更ニ呶々ヲ要セサル所ナル故ニ、政府ハ苟モ行政上ノ処理ヲ以テ国民ノ海事思想ヲ鼓舞スヘキ方法アラハ其施設ヲ怠ルコトナク、以テ国民ノ有力者ヲシテ海事教育ヲ翼賛スルノ観念ヲ発動セシムルコトヲ必要ナリトス、国民ノ気風一タヒ勃興センカ学校ノ品位自ラ高マリ、良海士ノ輩出センコト期シテ待ツヘキナリ
(四)熟練セル水夫・火夫ニ学芸ヲ授ケ海員ノ免状ヲ得セシムヘシ
   海士ニ最モ貴フ所ハ技術ノ熟練、胆力ノ勁健ニ在リ、故ニ商船学校ニ於テ海士ヲ養成スルノ外猶別ニ実地練習ノ功ヲ積ミタル水火夫ニ学芸ヲ授ケ、之ヲシテ運転士・機関士タルノ免状ヲ得セシムルノ道ヲ設クルコトヲ要ス、果シテ然ルトキハ適良ノ海士ヲ得ルニ於テ其効果少カラスト信ス
二水夫・火夫ノ養成
(一)国家ハ日本海員掖済会ニ補助金ヲ与ヘ、其事業ノ拡張ヲ助ケ、以テ大ニ水夫・火夫養成ノ任ニ当ラシムヘシ
   一般ノ海員即チ水火夫ノ養成ハ現今日本海員掖済会ナル協会アリテ熱心ニ従事スル処ナレトモ、該協会ハ海事ニ熱心ナル士人カ限アル私財ヲ擲テ維持スル処ナレハ、其資金ハ未タ以テ完全ナル事業ヲ挙クルニ足ラス、然レトモ該協会ノ創立ハ十数年以前ニ在リテ事業ヤヽ緒ニ就キ其功績見ルヘキモノアリ、今此協会ヲ基礎トシテ朝野士人ノ力ヲ合セテ大ニ其事業ヲ拡張スルノミナラス、国家モ亦幾許ノ補助金ヲ与ヘテ之ヲ作興スルトキハ海員奨励上大ニ其功ヲ収ムルコトアラン、蓋シ善良ノ水火夫ヲ養成スルニハ其技術ヲ練ルノミナラス、其気象ヲ高尚ニ導クコト亦極メテ緊要ニシテ、之ヲナスハ法律命令ノ能クスル処ニアラス、社会先進ノ士之ヲ誘掖奨励シ、之ヲ保護救恤シ、玆ニ至リテ始メテ其目的ヲ達スルコトヲ得ヘシ、今国家ニシテ該協会ヲ補助シ之ヲシテ海員ノ保護人タラシムルトキハ該協会ハ益々其規摸ヲ拡張シ、社会一般ノ勢力ヲ借リテ海員ノ技能志尚ヲ誘掖スルコト必然ナリ
(二)国家ハ日本海員掖済会ニ補助金ヲ与フルノ一条件トシテ、該協会ヲシテ熟練セル水夫・火夫ニ学芸ヲ授ケ、以テ良海士ヲ教育ス
 - 第20巻 p.593 -ページ画像 
ルノ任ニ当ラシムヘシ
   前ニ述フルカ如ク、実地ニ熱練セル水火夫ヲ抜擢シテ運転士・機関士タラシムルハ、一方ニ於テ胆力勁健ナル良海士ヲ得ルノミナラス、一方ニ於テ水火夫ノ志尚ヲ高ムルノ利益アルカ故ニ斯ノ如キ水火夫ヲ誘掖指導シテ海士タルニ必要ナル学芸ヲ受ケシムルコトハ亦極メテ肝要ナリトス、然リ而シテ此等水火夫ニ学芸ヲ授クルニハ日本海員掖済会ヲシテ其任ニ当ラシムルヲ最モ便利ナリト信スルニ付、今該協会ニ補助金ヲ与フルトセハ之ヲ以テ其一条件トナスコトヲ要ス
  第二 造船業奨励ノ事
造船業ノ奨励ハ本邦所用ノ船舶ヲ築造シ得ルニ止ラス、大ニ此事業ヲ発達セシメ更ニ進ンテ外国造船業ト併進シ得ルノ基礎ヲ築クニ在リ、左ニ其要ヲ掲ク
(一)国家ハ造船奨励金ヲ附与シテ造船業ヲ保護シ、以テ其発達ヲ希図スヘシ
   本邦ニ於ケル造船及機関構造ノ技術ハ近来著シク発達シ、今日ニ於テハ第一等ノ船舶ヲ築造スルコト決シテ難キニアラス、然ルニ未タ本邦ノ造船業カ外国ノ造船業ト充分競争スルヲ得サルモノハ、要スルニ彼ノ造船費我ニ比シテ大ニ低廉ナルニ因ラスンハアラス、蓋シ本邦ニ於テ総噸数一千噸以上ノ商船ヲ築造シタルハ木造汽船小菅丸・鋼製汽船須磨号ノ二艘ニ過キサレハ、未タ実際内外造船費ノ比較ヲ得ルニ足ラス、仮リニ予算ヲ以テ之ヲ試ミントスルモ英国造船費ニ時々高低アリ、又本邦輸入材料ニ為替相場ノ変化アリテ到底精確ノ比較ヲ得ヘカラサルモ、兎ニ角内国造船費ノ英国造船費ニ比シテ高価ナルコトハ実業者ノ争ハサル所ナリ、故ニ若シ此事業ヲ今日ノ儘ニ放擲センカ、技師・職工ニ其技能アルモ造船業ヲ本邦固有ノ技術トナサンコトハ其機会ノ来ル時節ナカルヘシ、是今日国家カ造船奨励金ヲ附与シ以テ本邦造船業ヲ保護スルノ必要アル所以ナリ
(二)奨励金ヲ附与スヘキハ総噸数一千噸以上ノ鉄製又ハ鋼製ノ汽船ニ限ルヘシ
   総噸数一千噸未満ノ船舶ハ現ニ本邦船造所中数ケ所ニ於テ築造スル所ニシテ、其造船費ハ英国ノ低廉ナルニ及ハサルモ、斯ノ如キ船舶ヲ英国ヨリ本邦ヘ回航スルニハ割合ニ多分ノ費用ヲ要シ、結局本邦ニ於テ築造スル方便利ニシテ且費用少ナキノ実況アルカ故ニ、此種ノ船舶ハ我ニ於テ充分彼ト競争スルコトヲ得ヘシ、又帆船及木造船ハ世界船業ノ大勢衰退ヲ免カレスシテ之ヲ奨励スルノ必要ヲ見ス、独リ総噸数一千噸以上ノ鉄製又ハ鋼製ノ汽船ニ至リテハ、之ヲ本邦ヘ回航スルニ当リ相当ノ運賃ヲ収受スルコトヲ得ルカ故ニ、仮令充分ノ利益ヲ得サルモ亦大ナル損失ヲ受クルコトナシ、故ニ此種ノ船舶ニ至リテハ到底我ニ於テ彼ト競争スルヲ得ス、是奨励金ノ附与ヲ総噸数一千噸以上ノモノニ限リタル所以ナリ
(三)奨励金ノ割合ハ総噸数一噸ニ付凡ソ金弐拾円、実馬力一ニ付金
 - 第20巻 p.594 -ページ画像 
六円ヲ相当トスヘシ
   奨励金ノ割合ハ統計ノ計算ニ基テ算出スルヲ当然トスレトモ、精確ナル統計ヲ得ルノ途ナキカ故ニ相当ノ割合ヲ算出スルコトヲ得ス、強テ之ヲ求ムルモ要スルニ想像ノ計数ニ止マリ書面ノ体裁ヲ粧フニ過キサレハ、寧ロ初ヨリ外国ノ事例ト実業者ノ見込ニ従フテ之ヲ定ムルヲ可ナリトス、今本邦ニ於テ総噸数一千噸以上ノ汽船ヲ製造スルニ当リ一噸ニ付金二十円、一馬力ニ付金六円ノ奨励金ヲ与フルトキハ格段ナル装置ヲ要スル船舶ノ外ハ総テ本邦ノ製造ニ帰スルコトハ疑ヲ容レサル所ナリ、或ハ外国ニテハ造船奨励ノ一手段トシテ造船ノ材料ニ向テ海関税ヲ免除スルコトアリ、本邦ニ於テモ之ヲ実施スヘシト説ク者アリ、此言不可ナルニアラス、然レトモ実際ニ於テ其輸入材料ノ中造船ノ材料ト否ラサルモノトヲ甄別スルハ頗ル難事ニ属シ、若シ一歩ヲ誤ルトキハ之カ為メ弊@ヲ開クノ恐アリ、故ニ今造船業ヲ奨励スルニハ単ニ船舶ノ噸数及実馬力ニ応シテ奨励金ヲ与フルノ簡明ナルニ如カス
(四)奨励金ノ附与ハ十ケ年ヲ期限トシ、満期ニ至リ其額ヲ改定スヘシ
   現今本邦ニ於テハ造船ノ材料甚タ乏シク、今鋼製普通貨物船一隻ヲ築造スルトセンニ、其全価中凡三分二ハ輸入材料ノ価ニシテ、三分一ハ工費ト見積ルヲ得ヘシ、然レトモ鋼鉄類ノ製造モ年ヲ経スシテ本邦ニ興ルコトアルヘキニ付、奨励金ノ割合ヲ永年ニ確定スルハ宜ヲ得タルモノニアラス、宜シク十ケ年ヲ一期トシ、此一期ヲ試ミテ更ニ爾後ノ割合ヲ改定スルヲ可トス
(五)造船材料ノ輸入税ノ割合増加スルトキハ奨励金ノ割合モ従テ増加スヘシ
   造船材料ノ輸入税増加スルニ従ヒ造船費モ亦増加スヘキハ自然ノ結果ナリ、然リ而シテ前ニ述フル奨励金ハ畢竟造船費ヲ補フノ趣旨ヲ以テ之ヲ附与スルモノナレハ、今造船材料ノ輸入税増加ノ場合ニ於テハ奨励金ノ割合モ亦之ニ応シテ増加スヘキコト事理当サニ然ルヘキ所ナリ
(六)軍艦ノ築造ハ官設造船所ノミニ止メス、亦之ヲ民設ノ造船所ニモ命シ、一般造船者ノ技術ヲ培養スヘシ
   軍艦ノ築造ヲ民設造船所ニ命スルコトハ技師・職工ノ技術ヲ熟練セシムル為メ最モ有益ノ挙措ナリトス、甲鉄戦闘艦ノ製造ハ之ヲ現時ノ民設工場ニ試ミ得ルノ限ニアラサルヘシト雖モ、巡洋艦・海防艦ノ類ニ至リテハ之ヲ試ミルコト決シテ難事ニ非サルヘシ、蓋シ其築造費ハ外国ニ託シテ之ヲ築造スルヨリ高価ナルハ避クヘカラサルモ、造船事業ヲ独立セシメントスルニハ国家ハ価ノ高低ニ拘ラスシテ之ヲ本邦人ノ手ニ委ネ本邦人ノ技術ヲ奨励シ、以テ官立以外ノ工場ニ於テモ容易ニ軍艦ヲ築造スルノ能力ヲ培養スルコトヲ要ス
(七)造船規則ヲ定メ、此規則ニ適合スル船舶ニ非サレハ奨励金ヲ与ヘス、又日本船トシテ登籍ヲ許サヽルヘシ
 - 第20巻 p.595 -ページ画像 
   船舶ニ奨励金ヲ附与スルニハ其築造ニ就キ相当ノ条件ヲ定ムルコトヲ要ス、若シ否ラスシテ其築造ノ如何ヲ問ハス無条件ニ之ヲ附与スルトキハ、粗造ノ船舶増加シテ遂ニ国家ノ不利ヲ来スノ恐アリ、是レ決シテ造船奨励ノ精神ニアラサルナリ、故ニ今造船奨励法ヲ実施スルニ当リテハ別ニ造船規則ヲ設ケテ造船上必要ナル条件ヲ定メ、此条件ニ適合セサルモノハ之ニ奨励金ヲ附与セサルハ勿論、日本船トシテ登録ヲ許サヽルコトトスヘシ
  第三 海運営業奨励保護ノ事
海運ノ営業ヲ奨励保護スルニ二途アリ、其一ハ一般ノ奨励保護、其一ハ航路ノ拡張保護トス
   一般ノ奨励保護
外国航海ニ従事スル船舶ハ其種類ト航海里程トニ準シ奨励金ヲ附与スヘシ、左ニ其要ヲ掲ク
(一)帝国ノ船籍ニ在ル汽船ノ本邦ト外国トノ航海及東経百度ヨリ百五十度迄ニテ赤道以北ノ河海ニ在テハ外国ト外国トノ間ノ航海ヲモ併セテ奨励金ヲ附与スヘシ
   一般ノ奨励保護ヲ実施スルニ就テハ遠洋ノ航海ヲ主トシ、近海ノ航海ハ之ヲ保護スルニ及ハスト説ク者アレトモ、抑モ新嘉坡以東支那朝鮮沿岸浦塩斯徳ニ至ル一帯ノ邦土ハ将来我国産ノ販路ヲ開キ、国力ヲ伸張スル上ニ於テ最モ属望スヘキ地域ナルヲ以テ、先ツ此間ノ航権ヲ我ニ収メ、之ヲ以テ日本航海船ノ領域トナスコトハ実ニ刻下ノ急務ナリトス、是特ニ近海ノ航海ニ重ヲ置キ、凡東経百度ヨリ百五十度迄赤道以北ノ河海ニ在リテハ外国ト外国トノ航海ヲモ併セテ奨励金ヲ附与セント欲スル所以ナリ
(二)奨励金ヲ附与スルモノハ総噸数一千噸以上ノ汽船ニ限ル、一千噸未満ノ汽船ハ之ヲ附与セス、又漁船・遊船ノ類モ之ヲ附与セス
   総噸数一千噸未満ノ船舶ハ実際ニ於テ殆ント外国ヘ航海スルコトナク、偶朝鮮南岸ノ如キ小船ノ航海ニ堪フル場所ナキニ非サルモ国家ハ小船ノ外国通航ヲ奨励スルノ必要ナク、又帆船ノ如キハ世界船業ノ大勢上退歩ヲ免カレサルモノナレハ之ヲ奨励スルモ充分ノ効果ヲ期スルコトヲ得ス、是奨励金ヲ附与スヘキ船舶ヲ一千噸以上ノ汽船ニ限リタル所以ナリ、又汽船《(漁カ)》・遊船ノ航海ハ其目的全ク海運以外ニ在ルモノナレハ、今海運奨励ノ範囲内ニ於テ之ヲ保護スルハ決シテ其当ヲ得タルモノニアラス、是此等ノ船舶ヲ保護外ニ置キタル所以ナリ
(三)奨励金ハ船舶ノ大小速力ト航海里程トニ拠リテ之ヲ附与スヘシ其割合左ノ如シ
  第一等 総噸数三千五百噸以上 速力十五海里以上
      一噸航海千海里ニ付  金六拾五銭
  第二等 総噸数二千噸以上   速力十二海里以上
      一噸航海千海里ニ付  金三拾五銭
  第三等 総噸数一千噸以上   速力十海里以上
      一噸航海千海里ニ付  金弐拾五銭
 - 第20巻 p.596 -ページ画像 
   船舶ノ大小ヲ定ムルニハ登簿噸数ニ依ラスシテ総噸数ヲ標準トスヘシ、登簿噸数ハ実際船舶ノ大小ヲ示スモノニアラスシテ、例ヘハ同形ノ船舶ニテモ、速力強大ナルモノハ之カ為メ機関室ノ広大ヲ要スルヲ以テ、之ヲ速力微弱ナルモノニ比スレハ其登簿噸数却テ少量ナルカ如キコトアリ、是船舶ノ大小ヲ定ムルニ当リ総噸数ヲ以テ標準ト為シタル所以ナリ、又総噸数三千五百噸以上速力十五海里以上ノ船舶ハ軍用運送船ニ適スルモノニシテ、且ツ其築造費及維持費モ通常ノ商船ニ比シ多分ヲ要スルヲ以テ、之ヲ第一等船トシ奨励金ノ割合ヲ高メテ六十五銭トセリ蓋シ日本ノ近海ヲ航海スル通常ノ商船ニ在リテハ総噸数二千噸未満速力十二海里未満ノモノ多分ヲ占メ、其以上ノモノハ最モ少シトス、是総噸数二千噸未満速力十二海里未満ノモノヲ第三等船トシ、其以上ノモノヲ第二等船トシ、其間奨励金ノ割合ニ等差ヲ立テタル所以ナリ
(四)前項ニ定ムル奨励金ノ割合ハ築造ノ初年ヨリ五年マテノモノニハ全額ヲ附与シ、爾後一年ヲ経ル毎ニ百分ノ五ツヽヲ減シ、築造後二十年ヲ経タルモノニハ全ク之ヲ附与セサルモノトス
   外国航海ノ船舶ニ奨励金ヲ附与スルノ主旨ハ、要スルニ其船舶ノ実力ヲ助長スルニ在リテ、老朽ノ船舶ニ奨励金ヲ附与スルカ如キハ固ヨリ海運保護ノ精神ニアラサルナリ、是船舶ノ年齢ニ応シ奨励金ニ等差ヲ附シタル所以ナリ
(五)外国築造ノ汽船ハ本邦ノ船籍ニ登録ノ後三ケ年ヲ経過セサレハ此奨励金ヲ附与セス
   外国ニテ築造シタル船舶ニ奨励金ヲ附与スルコトハ本邦ノ海運ヲ保護スルノ精神ニ反スルノ看ナキニアラスト雖トモ、現時ノ情態ニ於テ若シ之ヲ保護外ニ置クトキハ或ハ本邦海運ノ発達ヲ阻害スルノ恐アリ、故ニ外国築造ノ船舶モ亦保護ノ恵沢ニ均霑セシムルコトヽセリ、然レトモ無条件ニ奨励金ヲ附与スルトキハ或ハ弊害ヲ生スルノ恐アリ、是本邦ノ船籍ニ登録ノ後三ケ年ヲ経過スルニアラサレハ奨励金ヲ附与セスト定メタル所以ナリ
(六)特約ヲ以テ助成金ヲ受クルノ航路ニ在ル汽船ハ奨励金ヲ附与セス
   政府ト格段ナル契約ヲ結ヒ助成金ヲ受クルノ航路ニ在ル汽船ニ奨励金ヲ与フルトキハ其保護二重トナルノ恐アリ、是斯ノ如キ汽船ニハ奨励金ヲ附与セスト定メタル所以ナリ
(七)奨励金ヲ受クル船舶ハ其保護ニ対スル義務トシテ国家有事ノ日ニ政府ノ用ニ供スルノ規定ヲ設ケ、其貸船料モ予メ定メ置クコトヲ要ス
   奨励金ヲ受クル船舶ヲシテ戦時ニ際シ国家ニ責任ヲ尽サシムルコトハ極メテ緊要ナリ、故ニ相当ノ規定ヲ設ケ国家有事ノ日ニ於テハ之ヲ政府ノ用ニ供スヘキハ勿論、其貸船料ノ如キモ予メ其額ヲ定メ置クコトヲ要ス
(八)前項ノ義務ノ外何種ノ義務モ之ニ附随セシムヘカラス
   船舶ニ奨励金ヲ附与スルニ当リ之ニ郵便逓送其他ノ義務ヲ帯ハ
 - 第20巻 p.597 -ページ画像 
シムルハ極メテ不得策ナリトス、若シ此種ノ義務ヲ帯ハシムルモ之ヲ実行スルコト甚タ難クシテ、強テ其義務ヲ果サシメントスルトキハ船主ハ之カ為メ繁雑ノ手数ヲ要シ、結局奨励金ノ効力ヲ微弱ナラシムルコト蓋シ意想ノ外ナルヘシ、故ニ奨励金ヲ附与スルニハ相互的利益交換ノ念慮ヲ挿マサルコトヲ要ス
(九)奨励金ノ附与ハ十ケ年ヲ期限トシ、満期ニ至リ其割合ヲ改定スヘシ
   此奨励法ハヤヽ試験的ニ属スルモノニシテ永久ニ確定スヘキモノニアラス、故ニ其施行期限ヲ十ケ年トシ、満期ニ至リ其成蹟ト時ノ事情トヲ参照シテ之ヲ継続若クハ改正スヘシ
政府ハ海軍附属軍用船ノ規則ヲ設ケ、海軍省ノ定ムル方式ニ依リ其監督ノ下ニ築造シ、戦時巡洋艦ニ代用スヘキ汽船ニ対シ一定ノ助成金ヲ給与スルノ法ヲ定ムヘシ
   本邦ノ如キ海国ニ在リテハ巡洋艦ニ代用スヘキ商船ヲ築造シテ之ヲ維持スルコト最モ望ム所ナリト雖トモ、一般奨励法ノ能ク其築造ヲ促スニ足ラサルハ論ヲ待タス、是前ノ一般奨励法中ニ特ニ此種ノ船舶ヲ掲ケサル所以ナリ、蓋シ速力十八海里乃至二十海里ニシテ総噸数五六千噸以上ノ商船ヲ築造セシメンニハ、特ニ海軍附属軍用船ノ規則ヲ定メ海軍省ノ指定スル方式ニ依リ其監督ノ下ニ築造シタル船舶ニハ之ニ一定ノ助成金ヲ附与スルト云フカ如キ規定ヲ設ケ、以テ其築造ヲ奨励スルコトヲ要ス
外国通航船ニ対シ税関ノ収ムル手数料ハ之ヲ全廃スルカ、又ハ大ニ其金額ヲ減スヘシ
   現行ノ税関規則ニ拠レハ本邦人所有ノ外国通航船カ各開港場ニ於テ貨物ヲ積卸スルトキハ入港手数料十五円、出港手数料七円ヲ負担セサルヲ得ス、今若シ仮ニ本邦ノ下ノ関ト朝鮮国釜山トノ間ニ小汽船二艘ヲ以テ毎日出発ノ定期航海ヲ開クモノトセハ其出入港手数料ハ年額凡ソ八千余円トナルヘシ、是豈驚クヘキノ負担ニ非スヤ、故ニ斯ノ如キ負担ハ全ク之ヲ免除スルカ、否ラサレハ大ニ之ヲ軽減スルコトヲ要ス
   航路ノ拡張保護
大洋ハ世界ノ共有物ニシテ、航路ハ外国貿易ノ通路ナリ、今若シ共有ノ大洋アルモ我占有ノ航路アラサレハ外国貿易ハ常ニ他人ノ通路ニ依ラザルベカラス、今本邦ノ貿易ヲ拡張シ国力ヲ増進セントスルニハ先ツ外国航路ヲ拡張シテ之ヲ我占有ニ帰セシメサルヘカラス、然レトモ此事タル莫大ノ国費ヲ要スルノミナラス、一タヒ之ヲ開設スルノ後忽ニ之ヲ閉止スルカ如キハ国家ノ体面ヲ損シ、且ツ之カ為メ将来大ニ貿易ノ発達ヲ阻害スルノ恐アリ、故ニ国家カ之ヲ拡張セントスルニハ予メ慎重ノ考慮ヲ尽シ、一旦之ヲ実行スル以上ハ飽ク迄其素望ヲ貫徹スルノ方針ヲ取ラサルヘカラス、今本邦ノ現状ニ応シ其重要ナル航路七線ヲ撰ミ施設ノ大小緩急ヲ陳述ス
 天津線路 本邦ヨリ朝鮮及北支那ノ諸港ヲ経テ天津又ハ牛荘ニ達スルモノ
   此線路ハ将来一層貿易ヲ開誘スルノ目的ヲ以テ、一週間一回ノ定期郵船トシ、速ニ開設スルコトヲ要ス
 - 第20巻 p.598 -ページ画像 
 上海線路 本邦ヨリ上海ニ達スルモノ
   此線路ハ当分一週間一回ノ郵船ヲ以テ足レリトス
 浦塩斯徳線路 本邦ヨリ朝鮮ノ諸港ヲ経テ浦塩斯徳ニ達スルモノ
   此線路ハ天津線路ニ斉シキ目的ヲ以テ、一週間一回ノ定期郵船トシ、速ニ開設スルコトヲ要ス
 支那海線路 本邦ヨリ支那南部ノ諸港ヲ経テ東京・西貢若クハ暹羅ニ達スルモノ
   此線路ハ本邦製造品ノ販路ヲ拡張スルノ目的ヲ以テ、凡二週間一回ノ定期郵船ヲ設クヘシ、此設備モ亦速ナルコトヲ要ス
 欧洲線路 本邦ヨリ沿道ノ諸港ヲ経テ倫敦若クハリバーブールニ達スルモノ
   此線路ハ本邦ヲ世界商業ノ中央ニ聯絡スルモノニシテ将来最モ緊要ナルモノトス、然レトモ其開始ニ当リ資本ヲ要スル莫大ニシテ、世界有数ノ大郵船ト並ヒ立テ衡ヲ争ハントスルニハ之ニ附与スベキ助成金モ亦タ多額ヲ要スベク軽々着手スベキノ線路ニ非ス、故ニ先ヅ其楷梯トシテ日本郵船株式会社ノ孟買通航ノ貨物船ヲ定期郵船ニ拡張シ、傍ラ定期貨物船ヲ欧洲ニ試航セシメ、漸次之ヲ拡充シテ完全ナル定期郵船タラシムルノ方針ヲ取ルベシ
 米国線路 本邦ヨリ米国ノ西海岸ニ達スルモノ
   此線路ハ速力強大ナル優等ノ大汽船ヲ以テ一ケ月一回以上ノ定期郵船トシ、世界大道ノ一部ヲ占有スルヲ以テ目的トス、故ニ之ニ用フル汽船モ現時太平洋ヲ航スル数線ノ郵船ヨリ一層優等ナルヲ要ス、前文ニ陳述セル巡洋艦ニ代用スヘキ種類ノ汽船ハ恰モ此線路ニ適当スルモノナリ、政府ハ国力振張ノ趣意ヲ以テ時機ヲ見テ此航路開設ノ処置アランコトヲ望ム
 濠洲線路 本邦ヨリ沿道諸港ヲ経テ濠洲メルボルン若クハアデレードニ達スルモノ
   此線路ハ現今航路ノ存立セサルヲ機トシ、速ニ之ヲ本邦ノ占有トスルヲ以テ目的トシ、凡一ケ月一回ノ定期郵船ヲ設クルコトヲ要ス
  第四 費用予算ノ事
前記ノ事項ヲ実施スルモノトシ、差向キ之ニ要スル経費ノ概算ヲ左ニ掲ク
   海員ノ養成

 商船学校練習船二艘買入代    金弐拾万円
 同校経費年額          金五万円
 同校練習船費年額        金壱万円
 日本海員掖済会補助金年額    金壱万円
     一時ノ支出       金弐拾万円
  合計
     毎年ノ支出       金七万円
   造船業ノ奨励

本邦ニ於テ現時大船ヲ築造シ得ヘキ民設造船所ハ数ケ所ニ過ギス、今奨励金ヲ附与スルカ為メ造船業ノ起ルコトアリトスルモ十ケ年ノ期限ニ対シ大資本ヲ此業ニ投スル者多カラサルヘク、又其技師・職工モ急ニ其数ヲ増加シ得ヘキモノニ非サレハ、十ケ年間毎年平均一汽船ヲ築造スル造船所四ケ所ヲ得ルニ過キサルヘシ、其汽船一艘ノ平均噸数ヲ
 - 第20巻 p.599 -ページ画像 
二千五百噸、実馬力弐千五百トスレハ、一艘ノ奨励金六万五千円ニシテ四艘合計金弐拾六万円ナリトス
   海運営業ノ奨励保護
一般ノ奨励保護ノ為メニ要スルモノ
 第一等船ハ其平均噸数四千噸トシテ、一ケ年五万海里ヲ航海スルモノトスレハ、新船ニシテ奨励金ノ全額ヲ受領シ年額拾参万円トス、十二ケ年ヲ経過セル後奨励金ノ割合四拾弐銭弐厘半ニ下ルトキハ其年額八万四千五百円ニ減ス
 第二等船ハ其平均噸数二千五百噸トシテ、一ケ年四万海里ヲ航海スルモノトスレハ新船ニシテ奨励金ノ全額ヲ受領シ年額参万五千円トス、十二ケ年ヲ経過シ奨励金ノ割合弐拾弐銭七厘半ニ下ルトキハ年額弐万弐千七百五拾円トス
 第三等船ハ其平均噸数千五百噸トシ、一ケ年参万五千海里ヲ航海スルモノトスレハ新船ニシテ奨励金ノ全額ヲ受領シ年額壱万参千百弐拾五円トス、十二ケ年ヲ経過シテ奨励金ノ割合拾六銭弐厘半ニ下ルトキハ年額八千五百参拾壱円ニ減ス
 船数ヲ予算スルハ純然想像ニ属スルモ試ニ之ヲ計算スベシ、現在海外ニ通航スル汽船ハ日本郵船株式会社ノ命令航路ノ外十艘内外ヲ出テサルヘシ、而シテ現今第一等船ノ種類ニ入ルヘキモノナク向後亦格段ナル必要ニ因ルニ非サレハ斯ル大速力ノ船ヲ見ルコトナカルヘシ、奨励法ノ為ニ汽船ノ外航ヲナスモノ増加スルトナスモ、第二等船十五艘、第三等船二十五艘ノ上ニ出ツルコトナカルヘシ、又其汽船ハ新古相半スルモノニシテ平均十二ケ年ヲ経過セルモノトシテ、金額ヲ予算スレハ

 第二等船十五艘  此年額金参拾四万千弐百五拾円
 第三等船二十五艘 此年額金弐拾壱万参千弐百七拾五円
  合計      金五拾五万四千五百弐拾五円
 若シ此ニ第一等船一艘ヲ加フルトキハ
          此年額金八万四千五百円
  再合計     金六拾参万九千弐拾五円
定期郵船ノ助成金ハ其約束ノ条件ニ従テ増減スヘク、今其条件ヲ仮設シテ予算ヲ試ミルノ必要ヲ見ズ、宜シク当局者ニ於テ利害ヲ精査考究シ必要適当ノ程度ヲ定ムルコトヲ要ス
定期郵船ノ助成金ヲ除キ他ノ費用ヲ総計スレハ
        一時ノ支出  金弐拾万円
 一海員ノ養成
        毎年ノ支出  金七万円
 一造船業ノ奨励毎年ノ支出  金弐拾六万円
 一海運営業一般ノ奨励毎年ノ支出
               金六拾参万九千弐拾五円
     一時ノ支出     金弐拾万円
  合計
     毎年ノ支出     金九拾六万九千弐拾五円
   以上



東京商業会議所月報 第三七号・第一一頁 明治二八年九月 【○同月 ○八月二十三日、海運振…】(DK200075k-0014)
第20巻 p.599-600 ページ画像

東京商業会議所月報  第三七号・第一一頁 明治二八年九月
 - 第20巻 p.600 -ページ画像 
○同月 ○八月二十三日、海運振張方法ノ儀ニ付、其筋ヘ進達シタル建議書ノ写ヲ全国各商業会議所及貴族・衆議両院議員ニ発送ス
   ○本巻明治二十七年六月二十七日、同二十八年八月十二日ノ条、並ニ本資料第二十三巻所収「農商工高等会議」明治二十九年十月二十二日ノ条参照。



〔参考〕東京商業会議所月報 第三九号・第四頁 明治二八年一一月 【○同月 ○十月七日、…】(DK200075k-0015)
第20巻 p.600 ページ画像

東京商業会議所月報  第三九号・第四頁 明治二八年一一月
○同月 ○十月七日、海運振張方法ノ件ニ付本会議所ノ意見ニ賛同シ、逓信・大蔵・農商務三大臣ヘ建議シタル旨四日市商業会議所ヨリ通知書ヲ接受ス



〔参考〕東京商業会議所月報 第四二号・第一頁 明治二九年二月 【○同月 ○一月四日、…】(DK200075k-0016)
第20巻 p.600 ページ画像

東京商業会議所月報  第四二号・第一頁 明治二九年二月
○同月 ○一月四日、海運振張方法ノ儀ニ付、長崎商業会議所ヨリ回答書ヲ接受ス(回答書ノ全文ハ参照ノ部ニ掲載ス)



〔参考〕東京商業会議所月報 第四二号・第一―二頁 明治二九年二月 【参照 一月四日、海運振張…】(DK200075k-0017)
第20巻 p.600-601 ページ画像

東京商業会議所月報  第四二号・第一―二頁 明治二九年二月
    参照
 一月四日、海運振張方法ノ儀ニ付長崎商業会議所ヨリ授受シタル回答書ハ左ノ如シ
本年 ○明治二八年八月二十日附ヲ以テ御照会相成候海運振張方法建議ノ件ニ付、当会議所ハ別紙ノ通リ議決ノ上、本月十八日其筋ヘ提出致候条此段及御回答候也
  明治二十八年十二月廿八日
            長崎商業会議所会頭 松田源五郎
    東京商業会議所会頭 渋沢栄一殿
(別紙)
    海運振張方法ノ儀ニ付建議(写)
本年八月十七日東京商業会議所ハ閣下ニ上呈スルニ海運振張方法ニ関スル一意見書ヲ以テセリ、該意見書ノ大体ニ就テハ本会議所ノ同意シ且其施設ノ一日モ速カナランコトヲ切望スト雖トモ、一・二ノ点ニ於テ聊カ其所見ヲ異ニスルモノナキニアラス、何ソヤ曰ク、第一海員ノ養成ニ関スル事、第二外国通航船ニ対シ徴収スル手数料ニ関スル事是ナリ、請フ以下之ヲ陳セン
  第一 海員ノ養成ニ関スル事
東京商業会議所ハ其意見書中、海員養成ノ事ト題スル項ニ於テ言ヘラク、商船学校ヲ拡張シ第一着手トシテ現在ニ二倍ノ生徒ヲ養成スルヲ度トシ、尚ホ漸ヲ以テ其員数ヲ増加スルノ方針ヲ取ルヘシト、此意見ニ就テハ本会議所ハ亦敢テ一点ノ異議ナキノミナラス、我邦今日ノ状勢ニ於テ極メテ適切ノモノタルコトヲ認ム、然リト雖トモ当今ノ商船学校官制ニ拠レハ東京ニ一商船学校ヲ設置スルノ外、大坂及函館ニ分校ヲ置キ簡易ノ学術及技芸ヲ教授スルアルノミナルヲ以テ、今日船舶ノ航路・運用・機関ニ関スル学術及技芸ヲ習得シ、異日海運事業ニ身命ヲ委ネント欲スル者ハ総テ遠ク笈ヲ負フテ東京ニ遊学スルカ、然ラスンハ大坂若クハ函館ノ商船学校分校ヲ以テ甘ンスルノ外アルヘカラ
 - 第20巻 p.601 -ページ画像 
ス、九州及其附近ニ在住シ海運ニ関スル学術技芸ヲ攻修セントスル青年子弟ノ不便不利夫レ幾許ソ、去レバ今若シ東京商船学校ニ於テ養成スル生徒ノ員数ヲ二倍スルニ付要スル経費ノ幾分ヲ割ヒテ、更ニ九州附近ノ地方ニ一商船学校ヲ起ストセン歟、独リ幾多ノ失意ナル海運事業志望者ヲシテ優ニ其業ニ楽シマシムヘキノミナラス、国民一般ノ海事思想ヲ涵養スルノ上ニ於テ裨補スル処鮮少ナラストセス、而シテ元来九州ハ海外諸国ニ附近スルヲ以テ本来ノ眼目タル海員養成ノ上ニ於テ幾多ノ便益ヲ得ヘシ、是洵ニ所謂一挙両全ノ策ナルモノニアラスヤ是故ニ本会議所ハ今日大ニ海員ヲ養成セントスルニ方リ、其方針ヲ一東京商船学校ノ規摸ヲ拡張スルノミニ止メス、之ニ要スル経費ノ幾分ヲ以テ別ニ九州附近ニ一商船学校ヲ設ケ、東西相呼応シテ海員養生ニ努メシメンコトヲ切望セスンハアラス、然リ而シテ愈ヨ九州附近ニ一商船学校ヲ起スモノトセハ孰レノ地ヲ以テ之ニ充ツヘキカ此点ニ就テハ、固ヨリ当局者ノ撰定ニ任セサルヘカラスト雖トモ、造船所船渠ノ設ケアリ大船巨舶ノ出入頻繁ニシテ不知ノ間自然ニ海事上ノ智識ヲ練磨スルノ便アル我長崎港ノ如キハ蓋シ商船学校設立地トシテ適当ナルモノト信スルナリ
  第二 外国通航船ニ対シ徴収スル手数料ニ関スル事
外国通航船ニ対シ徴収スル手数料ニ付、東京商業会議所ハ海運営業奨励保護ノ事ト云ヘル章中一般ノ奨励保護ト題スル項ニ於テ、外国通航船ニ対シ税関ノ収ムル手数料ハ之ヲ全廃スルカ又ハ大ニ其金額ヲ減スヘシトセリト雖トモ、本会議所ノ視ル処ヲ以テスレハ此手数料ハ須ラク全廃スルノ可ナルヲ信ス、何トナレハ此手数料タル啻ニ当業者ノ負担トシテ重キニ失スルノミナラス、此手数料徴収ノ制アルヨリシテ船舶ノ出入手続ヲ煩冗ナラシメ、延ヒテ貿易業者ヲシテ往々商機ヲ誤マリ咄嗟ノ間異常ノ損失ヲ被ラシメタルノ事例尠少ナラス、而シテ此悪結果ハ仮令手数料ヲ軽減スル事アルモ到底芟除スヘカラサルナリ、是本会議所カ東京商業会議所ノ如ク単ニ手数料ノ減額ノミヲ以テ満足セス、全然之ヲ廃止センコトヲ希望シテ已マサル所以ナリ
以上二点ハ海運振張ノ方法ニ付本会議所ノ意見トシテ特ニ政府ノ採納ヲ請ハント欲スル処ノモノタリ、而シテ其他ニ到リテハ渾テ東京商業会議所ト其所見ヲ同フスルヲ以テ、仰キ願ハクハ政府ニ於テ同会議所意見ノ趣旨ニ則リ着々施設ノ上刻下ノ急ニ応セラレンコトヲ、右本会議所ノ議決ヲ以テ建議仕候也
               長崎商業会議所
  明治廿八年十二月十八日         松田源五郎
    大蔵・農商務・逓信三大臣宛
右之通ニ候也
  明治廿八年十二月廿八日
                      松田源五郎



〔参考〕法令全書 明治二九年下巻 内閣官報局編 刊 法律第十五号(官報三月二十四日)航海奨励法(DK200075k-0018)
第20巻 p.601-603 ページ画像

法令全書 明治二九年下巻  内閣官報局編 刊
法律第十五号(官報三月二十四日)
 - 第20巻 p.602 -ページ画像 
    航海奨励法
第一条 帝国臣民又ハ帝国臣民ノミヲ社員若ハ株主トスル商事会社ニシテ、自己ノ所有ニ専属シ帝国船籍ニ登録シタル船舶ヲ以テ帝国ト外国トノ間又ハ外国諸港ノ間ニ於テ貨物・旅客ノ運搬ヲ営業トスル者ニハ、此ノ法律ノ規程ニ依リ其ノ船舶ニ対シ航海奨励金ヲ下付ス
第二条 此ノ法律ニ依リ航海奨励金ヲ受クヘキ船舶ハ、総噸数一千噸以上ニシテ一時間十海里以上ノ最強速力ヲ有シ、逓信大臣ノ定ムル造船規程ニ合格シタル鉄製又ハ鋼製汽船ニ限ル
第三条 航海奨励金ヲ受ケムトスル船舶ノ所有者ハ其ノ船舶ニ対シ予メ逓信大臣ノ認許ヲ受クヘシ
第四条 左ノ船舶ハ航海奨励金ヲ受クルコトヲ得ス
 第一 此ノ法律施行以後帝国船籍ニ登録ノ際製造後五箇年ヲ経過シタル外国製造ノ船舶
 第二 製造後十五箇年ヲ経過シタル船舶
 第三 帝国政府ノ命令ニ依レル航路ニ使用スル船舶
第五条 航海奨励金ハ総噸数一千噸ニシテ一時間十海里ノ最強速力ヲ有スル船舶ニ対シ総噸数一噸航海里数一千海里ニ付二十五銭ヲ支給シ、総噸数五百噸ヲ増ス毎ニ其ノ百分ノ十、最強速力一時間一海里ヲ増ス毎ニ其ノ百分ノ二十ヲ増給ス、但シ総噸数六千五百噸以上又ハ最強速力一時間十八海里以上ノ船舶ニ対シテハ総噸数六千噸又ハ最強速力一時間十七海里ノ船舶ニ対スル割合ニ依リ支給ス、航海奨励金ハ製造後五箇年ヲ経過セサル船舶ニ対シテハ全額ヲ支給シ、五箇年ヲ経過シタル船舶ニ対シテハ一年毎ニ其ノ百分ノ五ヲ逓減ス
 航海奨励金ヲ算定スルニハ一噸未満一海里未満ノ端数ヲ算入セス
第六条 航海里数ハ各港間ノ最近航路ニ依リ之ヲ算定ス
 帝国各港ヘ寄港シ外国ヘ発航スル船舶ニ在テハ最終ノ寄港地ヲ起点トシ、又外国ヨリ発航シ帝国各港ニ寄港スル船舶ニ在テハ最初ノ寄港地ヲ終点トシテ其ノ航海里数ヲ算定ス
 航海里数ヲ証明スルニハ寄港地官庁ノ寄港証明ヲ以テスヘシ
第七条 逓信大臣ハ命令ヲ発シ相当ノ金額ヲ給与シテ第三条ノ認許ヲ受ケタル船舶ヲ公用ノ為ニ使用スルコトヲ得
 船舶所有者前項ノ給与金額ニ対シ不服アルトキハ其ノ通知ヲ受ケタル日ヨリ三箇月以内ニ裁判所ニ出訴スルコトヲ得
 前項ノ出訴ハ使用ヲ停止セス
第八条 第三条ノ認許ヲ受ケタル船舶ノ所有者ハ、逓信大臣ノ命令ニ依リ左ノ割合以内ニ於テ其ノ費用ヲ以テ航海修業生ヲ該船舶ニ乗組マシメ、同大臣ノ定ムル手当ヲ支給スヘシ
  総噸数一千噸以上二千五百噸未満   二人
  総噸数二千五百噸以上四千噸未満   三人
  総噸数四千噸以上          四人
第九条 第三条ノ認許ヲ受ケタル船舶ノ所有者ハ逓信大臣ノ許可ヲ受クルニ非サレハ外国人ヲ其ノ本支店ノ事務員若ハ該船舶ノ職員ト為スコトヲ得ス、但シ外国ニ於テ死亡其ノ他止ムヲ得サル事故ニ因リ船舶職員ニ欠員ヲ生シタルトキハ該地官庁ノ公認ヲ経テ之ヲ補フコ
 - 第20巻 p.603 -ページ画像 
トヲ得、此ノ場合ニ於テハ該船舶ノ所有者又ハ船長ヨリ直ニ逓信大臣ノ許可ヲ請フヘシ
第十条 第三条ノ認許ヲ受ケタル船舶ノ所有者航海奨励金ヲ受ケ航海スル場合ニ於テハ、逓信大臣ノ命令ニ従ヒ該船舶ニ郵便吏員ヲ無賃乗船セシメ及該船舶ヲ以テ郵便物・小包郵便物・郵便用品及小包郵便用品ヲ無料ニテ逓送スヘシ
第十一条 第三条ノ認許ヲ受ケタル船舶ノ所有者及其ノ承継人ハ航海奨励金ヲ受ケ航海スル期間並其ノ航海ヲ終リタル日ヨリ三箇年間其ノ船舶ヲ外国人ニ売渡・貸渡・交換・贈与・質入・書入スルコトヲ得ス、但シ其ノ船舶ノ既ニ受ケタル航海奨励金ヲ償還シタルトキ又ハ天災其ノ他抗拒スヘカラサル強制ニ因リ航行ニ堪ヘサルトキ若ハ逓信大臣ノ許可ヲ得タルトキハ此ノ限ニ在ラス
第十二条 逓信大臣ハ此ノ法律ニ依リ船舶所有者ノ義務ニ属スル事項ニ付テハ直ニ其ノ代人若ハ船長ニ命令ヲ下スコトヲ得
第十三条 詐偽ノ所為ヲ以テ航海奨励金ヲ受ケタル者又ハ第十一条ノ規程ニ違背シタル者ハ一年以上五年以下ノ重禁錮ニ処シ二百円以上千円以下ノ罰金ヲ附加ス
 前項ノ罪ヲ犯サムトシテ未タ遂ケサル者ハ刑法未遂犯罪ノ例ニ依リ処断ス
第十四条 此ノ法律ニ依リ逓信大臣ノ発スル命令又ハ第九条ノ規程ニ違背シタル者ハ二十円以上五百円以下ノ罰金ニ処ス
第十五条 此ノ法律ヲ犯シタル者ニハ刑法数罪倶発ノ例ヲ用ヰス
第十六条 詐偽ノ所為ヲ以テ航海奨励金ヲ受ケタル者ハ其ノ因テ得タル金額ヲ償還セシメ、第十一条ノ規程ニ違背シタル者ハ其ノ既ニ受ケタル航海奨励金ヲ償還セシム
第十七条 船舶所有者此ノ法律ヲ犯シタルトキハ逓信大臣ハ航海奨励金ノ下付ヲ停止スルコトヲ得、第十二条ノ場合ニ於テ其ノ代人又ハ船長ノ犯シタルトキ亦同シ
第十八条 前数条ノ罰則ハ商事会社ニ在テハ其ノ各条ニ掲クル所為ヲ為シタル業務担当ノ任アル社員若ハ取締役ニ之ヲ適用ス
第十九条 此ノ法律ハ明治二十九年十月一日ヨリ施行ス



〔参考〕法令全書 明治二九年下巻 内閣官報局編 刊 法律第十六号(官報三月二十四日)造船奨励法(DK200075k-0019)
第20巻 p.603-604 ページ画像

法令全書 明治二九年下巻  内閣官報局編 刊
法律第十六号(官報三月二十四日)
    造船奨励法
第一条 帝国臣民又ハ帝国臣民ノミヲ社員若ハ株主トスル商事会社ニシテ、逓信大臣ノ定ムル資格ヲ備フル造船所ヲ設ケ船舶ヲ製造スル者ニハ、此ノ法律ノ規程ニ依リ其ノ製造船舶ニ対シ造船奨励金ヲ下付ス
第二条 此ノ法律ニ依リ造船奨励金ヲ受クヘキ船舶ハ鉄製又ハ鋼製ニシテ、総噸数七百噸以上ヲ有シ、逓信大臣ノ定ムル造船規程ニ従ヒ其ノ監督ヲ受ケ製造シタルモノニ限ル
第三条 造船奨励金ハ総噸数七百噸以上一千噸未満ノ船舶ニ在テハ船体総噸数一噸ニ付金十二円、一千噸以上ノ船舶ニ在テハ一噸ニ付金
 - 第20巻 p.604 -ページ画像 
二十円ヲ支給シ、其ノ機関ヲ併セ製造シタル場合ニハ一実馬力ニ付金五円ヲ増給ス、但シ帝国内ノ他ノ工場ニ於テ機関ヲ製造セシメタルトキト雖、予メ逓信大臣ノ許可ヲ得タルトキ亦同シ
第四条 造船奨励金ヲ受クヘキ船舶ノ船体及機関ニハ逓信大臣ノ定ムル規程ニ依ルノ外、外国製品ヲ供用スルコトヲ得ス
第五条 詐偽ノ所為ヲ以テ造船奨励金ヲ受ケタル者ハ一年以上五年以下ノ重禁錮ニ処シ二百円以上千円以下ノ罰金ヲ附加ス、其ノ因テ得タル造船奨励金ハ之ヲ償還セシム
 前項ノ罪ヲ犯サムトシテ未タ遂ケサル者ハ刑法未遂犯罪ノ例ニ依リ処断ス
第六条 此ノ法律ヲ犯シタル者ニハ刑法数罪倶発ノ例ヲ用ヰス
第七条 前二条ノ罰則ハ商事会社ニ在テハ其ノ所為ヲ為シタル業務担当ノ任アル社員若ハ取締役ニ之ヲ適用ス
第八条 此ノ法律ハ明治二十九年十月一日ヨリ十五箇年間之ヲ施行ス



〔参考〕東京商業会議所報 第二五号・第二八―二九頁 大正九年五月刊 ○海員労働総会出席員送別会演説速記(DK200075k-0020)
第20巻 p.604-605 ページ画像

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冊子版の『渋沢栄一伝記資料』をご参照ください。

〔参考〕日本海員掖済会五十年史 同会編 第三一―三四頁 昭和四年五月刊(DK200075k-0021)
第20巻 p.605-606 ページ画像

日本海員掖済会五十年史 同会編  第三一―三四頁 昭和四年五月刊
○第一編一般ノ沿革(上)
    逓信省補助金下附
明治二十九年四月逓信大臣ヨリ本会ノ事業補助トシテ年額金壱万円ヲ下附セラルヽコトヽナレリ。是ヨリ先キ東京商業会議所ニ於テ戦後事業ノ振興策ヲ議シ、大イニ海運ト海員トノ関係ヲ論ジ、戦後貿易上ノ運輸ニ資スル商船ノ数増加スルモ其乗組海員ノ数増加セザレバ為メニ権衡ヲ失ヒ、国家経済上大ナル蹉跌ヲ生ズベシトノ請願書ヲ出セルアリ、為メニ貴衆両院ノ建議トナリ政府亦之ヲ容レ遂ニ此ニ及ベルナリ
     命令書
 第一条 其会ノ事業ヲ補助スル為メ国庫ハ明治二十九年度ヨリ向五年間毎年度金一万円宛下附スヘシ
  毎年度下附スヘキ補助金ハ之ヲ十二分シ毎月其一分ヲ支給スヘシ但シ厘位未満ノ端数ハ年度ノ最終月ニ至リ併テ之ヲ支給スヘシ
 第二条 其会ハ航海機関ノ学科ヲ具備スル海員養成所ヲ設置スヘシ前項ノ海員養成所ハ逓信大臣ノ指定スル場所ニ設ケ必要ノ校舎器具ヲ備ヘ、毎年百八十名以上ノ高等海員ヲ養成スヘシ
 第三条 其会ハ水火夫養成規則ヲ設ケ毎年六百名以上ノ水火夫ヲ養成スヘシ
 第四条 其会ハ品川・横浜・大阪・神戸・馬関・長崎・函館其他ノ要地ニ海員寄宿所ヲ設置シ海員宿泊ノ便宜ニ供スヘシ
  前項ノ海員寄宿所ハ各所ヲ通シテ少クモ百八十名ヲ宿泊セシムルニ足ル必要ノ準備ヲ為スヘシ
 第五条 其会ハ前条ノ各地ニ事務員ヲ置キ水火夫其他ノ海員ヲ船舶ニ媒介シ海員就職ノ便利ヲ計ルヘシ
 第六条 其会ハ海員救済ノ方法ヲ設ケ疾病災厄ニ罹ル海員ヲ扶助スヘシ
 第七条 海員養成所・水火夫養成・海員寄宿所・海員媒介・海員救済ニ関スル諸規程及其会ノ会則ハ其制定改廃ノ都度速カニ逓信大臣ニ届出ツヘシ
  逓信大臣ニ於テ不適当ト認ムル規程ハ之カ矯正ヲ命スヘシ
 - 第20巻 p.606 -ページ画像 
 第八条 其会ハ事務ノ成績ヲ調査シ毎年一回逓信大臣ニ具状スヘシ
 第九条 逓信大臣ハ必要ノ際帳簿及ヒ証憑書類ヲ提出セシメ主務官吏ヲシテ其会ノ会計ヲ監査セシムヘシ
 第十条 其会ニ於テ此命令書ノ条項ニ違背シタルトキ又ハ逓信大臣ニ於テ其会ノ事務不整理ト認ムルトキ又ハ第二条乃至第六条ノ目的ヲ達スル能ハスト認ムルトキハ補助ヲ停止若クハ廃止スルコトアルヘシ
  補助ノ停止若クハ廃止ヲ命シタルトキハ発令ノ翌日ヨリ補助金ヲ支給セス
 第十一条 此命令書ノ有効期限ハ明治二十九年四月一日ヨリ明治三十四年三月三十一日迄満五箇年トス
  右命令ス
   明治二十九年四月一日    逓信大臣 白根専一
本項補助金ハ命令書期限終了後尚継続セラレタリシモ、日露戦役ニ際シ経費節約ノ為メ半額ニ減ゼラレ、其後引続キ下附ヲ受ケ居レリ。



〔参考〕海運興国史 畝川鎮夫著 第二七〇頁 昭和二年七月刊(DK200075k-0022)
第20巻 p.606 ページ画像

海運興国史 畝川鎮夫著  第二七〇頁 昭和二年七月刊
○第二編 第二章 第二節 第四項 日清役の前後
    三、航海業保護法の制定
 維新以来政府が我海運の振興発展を図るが為め或は一社を偏庇して擅恣に流れしめ、或は二社を保護して無益の競争を敢てせしめる等幾多苦き経験を積む間にも、海外航路の拡張と国内海運の整備は日一日緊要の度を加へ、之れが助成の益々急務なるを痛感されて来た。
されば政府は屡々航海奨励法案を議会に提出したが恰も官民衝突の折柄とて衝突に亜ぐに解散を以てし其目的を達せず漸く第八議会となつて自由党員西山志澄等の航路助成に関する建議案、河島醇等の船舶保護に関する建議案、小室重弘等の海員養成に関する建議案が一時に提出され、一般の風潮亦保護政策の促進を望んで止まなかつたから政府は更に第九議会に航海奨励法並に造船奨励法の二案を提出し、其協賛を得て両法は明治二十九年三月発布(法律第十五号・第十六号)され何れも同年十月一日から実施さるゝことゝなつた。○下略



〔参考〕海運興国史 畝川鎮夫著 第八四二頁 昭和二年七月刊(DK200075k-0023)
第20巻 p.606 ページ画像

海運興国史 畝川鎮夫著  第八四二頁 昭和二年七月刊
 ○第二編 第三章 第四節 日清役から明治末年
    第二項 造船奨励法制定の効果
 日清戦役は我海運・造船界に全然一新紀元を劃し、二十六年末現在に汽船六百八十隻約十七万七千噸を有せしものが、戦後二十九年には一躍八百七十九隻三十七万三千噸に激増し、翌三十年には更に一千三十二隻四十四万四千噸に突飛したが、之より先政府は戦後の施設として廿九年三月航海奨励法と共に造船奨励法を発布した。前者は航海業の発展を期し、後者は造船業の保護奨励であるが、両法とも畢竟造船業の保護奨励といふことに帰着する。○下略



〔参考〕海運興国史 畝川鎮夫著 第二七七―二七九頁 昭和二年七月刊(DK200075k-0024)
第20巻 p.606-608 ページ画像

海運興国史 畝川鎮夫著  第二七七―二七九頁 昭和二年七月刊
 - 第20巻 p.607 -ページ画像 
 ○第二編 第二章 第三節 第一項 保謹政策と海運の発展
    二、航海奨励法の成績
 航海奨励法並に特定航路補助及命令航路等の制度の下に定期船会社は前述の如く殷賑を極めたが、不定期船にありても北海道炭礦鉄道会社が大型船を購入して自己の石炭を海外に輸出するため航海業兼営を企図(後中止)し、三井物産又同様の計画を進めて新造船を註文する等、船舶増加し航路発展して政府の保護政策は意想外の効果を収め、航海奨励法発布の年には奨励金を受くる資格あるもの僅に日本郵船の土佐丸一隻のみであつたものが、翌三十年には郵船十隻(総噸五七、六四五噸)、商船一隻、三井物産四隻(九、三五八噸)、合計十五隻六万八千六百七十五噸、三十一年には二十七隻十二万六千百八十二噸に激増し、爾来年により増減あるも左の如き数を示した。
     航海奨励認許証書下附船舶累年比較表

図表を画像で表示航海奨励認許証書下附船舶累年比較表

  以下p.608 ページ画像  年度 日本郵船株式会社  大阪商船株式会社 東洋汽船株式会社  三井物産株式会社 三菱合資会社   山陽汽船株式会社 合計    隻  噸      隻  噸     隻  噸      隻  噸     隻  噸     隻  噸     隻  噸 二九  一  三、九六八 ―― ――    ―― ――     ―― ――    ―― ――    ―― ――    一    三、九六八 三〇 一〇 五九、六四五 一  一、六七二 ―― ――     四  九、三五八 ―― ――    ―― ――    一五  七〇、六七五 三一 一六 九一、七六八 四  六、七三六 三  一八、三二〇 四  九、三五八 ―― ――    ―― ――    二七 一二六、一八二 三二 一八 九五、八二四 一  一、六七二 三  一八、三二〇 五 一二、四八六 二  四、四一六 ―― ――    二九 一三二、七一八 三三  五 二二、八八一 ―― ――    ―― ――     五 一三、六一五 二  四、四一六 ―― ――    一二  四〇、九〇七 三四 一〇 三四、七六六 一  一、六六九 ―― ――     五 一三、六二七 一  一、七一七 ―― ――    一七  五一、七七九 三五  五 二四、一五三 一  一、六六九 ―― ――     五 一三、六三一 三  七、二八六 ―― ――    一四  四六、七三九 三六  七 二五、〇三九 一  一、六六九 ―― ――     四 一一、五八八 三  七、二八六 ―― ――    一五  四五、五八二 三七 ―― ――     一  一、六六九 ―― ――     一  二、〇二九 一  二、七九五 ―― ――     三   六、四九三 三八  二  八、五〇二 四  六、三一五 ―― ――     一  三、七一二 二  五、五六九 二  三、三五九 一三  二七、四五七 三九 一四 六〇、五三一 六 一〇、四〇五 ―― ――     八 二五、一一四 二  五、五七六 二  三、三五九 三四 一〇四、九八五 四〇  八 三一、八九四 六  七、九四〇 ―― ――     三  八、二一四 三  八、三五四 ―― ――    二〇  五六、四〇二 四一 一〇 五八、九六五 八 一二、一五八 五  四一、八九五 五 一七、三一六 三  八、三七四 ―― ――    三一 一三八、七〇八 四二 一四 八三、四七二 六 一七、八三五 一   四、七一三 四 一二、七六五 ―― ――    ―― ――    二五 一一八、七八五 四三 一〇 五二、四七七 三  三、八〇六 一   四、七一三 三 一〇、七二二 二  五、五七六 ―― ――    一九  七七、二九四  以下p.608 ページ画像  四四 一一 五八、八六七 二  二、五六二 三  一七、二〇七 三 一二、七二四 二  五、五七六 伏  斗     二一  九六、九三六 



   (備考)二九年度は十月以後とす、三井物産株式会社は四十一年前は三井物産合名会社を示し、四十二年度は両社船を包含す
以上統計の示す如く奨励法実施と共に合格船は急激なる増加を告げ三十二年には二十九隻十三万三千七百十八噸となつて政府の予算を超過する十倍余、此勢ひを以てすれば歳出総予算に甚大の影響を来たす惧れがあるから、此年政府は法律第九十六号を以て航海奨励法を改正し其第五条の末項に「三十二年十月一日以後帝国船籍に登録する外国製造の船舶には前二項の規定により支給すべき航海奨励金の半額を支給す」と追加した。爾来新造船の外国註文を手控へたると、船齢漸く傾くもの増加して資格を失ふ船舶が多く一般運輸に当るものよりも却つて三井・三菱の石炭船が比較的多額の奨励金を攫得する如き奇現象を生じた。されば奨励法の恩典を受くる船舶は年により増減常なく、而かも欧米航路は当時経営困難であつたので郵船会社は之れを他の孟買線・濠洲線同様特定航路にされることを請願し、政府は之に対する特別助成案を第十議会に提出したが、漸く三十三年一月より欧洲線は政府の特定航路となり、シヤトル線も三十四年十一月から命令航路となつて会社は多額の助成金を得ることゝなつた。
 而して航海奨励法により政府の費した奨励金は左の如し。

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      円 二九年  ――           三二年  三、九五七、三一五 三〇年    七〇八、三八三    三三年  一、一八八、七六一 三一年  二、五八〇、八〇二    三四年    九〇六、二〇三  三五年    六七六、三〇〇    四〇年    九六一、七八〇 三六年    八〇二、四三二    四一年  一、三四六、五一二 三七年     二八、三一〇    四二年  二、七六三、〇四九 三八年     八二、三七五    四三年  一、八一四、三一二 三九年    九八三、〇二三