デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

7章 経済団体及ビ民間諸会
1節 商業会議所
3款 東京商業会議所
■綱文

第20巻 p.608-611(DK200076k) ページ画像

明治28年10月14日(1895年)

是ヨリ先当会議所、中野武営ノ提案セル営業満期国立銀行処分問題ニツキ調査中ナリシガ、是日ノ会議ニ於テ営業満期後国立銀行ヲシテ私立銀行ノ資格ヲ以テ営業ヲ継続セシムルヲ可トスル旨ノ調査案ヲ可決ス。栄一会頭トシテ之ニ与ル。


■資料

第四回東京商業会議所事務報告 第四〇―四一頁 明治二八年四月刊(DK200076k-0001)
第20巻 p.608-609 ページ画像

第四回東京商業会議所事務報告  第四〇―四一頁 明治二八年四月刊
一営業満期国立銀行処分問題調査ノ件
 本件ハ明治二十七年七月六日会員中野武営君ノ提案ニ係リ、其要旨ハ営業満期国立銀行処分問題ニ関シ本会議所ノ意見ヲ定ムルハ必要ナルニ付、先ヅ委員ヲ選挙シテ其調査ヲ附託ス可シト云フニ在リ、
 - 第20巻 p.609 -ページ画像 
依テ之ヲ同日第三十六回ノ臨時会議ニ附シタルニ委員九名ヲ選挙スルコトニ決シ、即チ議長 ○渋沢栄一ノ指名ヲ以テ左ノ諸君ヲ委員ニ選挙シタリ
                    阿部泰蔵君
                    梅浦精一君
                    大江卓君
                    辻粂吉君
                    益田克徳君
                    数江三左衛門君
              (委員長) 中野武営君
                    徳田孝平君
                    中島行孝君
 本件ハ其後委員ニ於テ調査中ナルニ付追テ其報告ヲ待チ更ニ会議ニ附スル見込ナリ


第五回東京商業会議所事務報告 第六一頁 明治二九年四月刊(DK200076k-0002)
第20巻 p.609-611 ページ画像

第五回東京商業会議所事務報告  第六一頁 明治二九年四月刊
一営業満期国立銀行処分問題調査ノ件
 本件ハ前回ニ報告シタル如ク明治二十七年七月中会員中野武営君ノ提案ニ係リ、委員ニ於テ調査中ノ処、其後委員ニ於テ調査ノ上左ノ如ク報告書ヲ提出シタルニ付、明治二十八年一月二十二日第四十一回ノ臨時会議ニ附シ審議未決ニシテ其儘経過シタリシガ、其後岡山商業会議所ヨリ第四回商業会議所聯合会ニ其処分法ノ提出アランコトヲ其筋ニ建議請願スベシトノ議ヲ提案シ、同会ノ決議ヲ経、乃チ之ヲ同年十月十四日第四十八回ノ臨時会議ニ附シタルニ、本件ハ今日ノ情勢固ヨリ必要ノ施設タルベシト雖モ、既ニ京浜各国立銀行ノ如キハ多クハ同盟シテ本件ニ就キ特ニ其筋ヘ建議シ其希望ヲ達センコトヲ勉メツヽアリト云ヘバ、本会議所ハ此際之ヲ可認シ置クニ止メ、別ニ建議請願ノ手続ヲ為サヽルコトニ決シタリ
  昨年七月六日第三十六回臨時会議ニ於テ営業満期国立銀行処分問題ノ調査ヲ附託セラレタルニ付、爾来篤ト審議ヲ遂ケ候処本委員多数ノ意見ハ別紙理由書ノ通リ営業満期後国立銀行ヲシテ私立銀行ノ資格ヲ以テ営業ヲ継続セシメ候方可然ト議決候間、此段及御報告候也
   明治二十八年一月十八日
        営業満期国立銀行処分問題調査委員長
                      中野武営
    東京商業会議所会頭 渋沢栄一殿
(別紙)
    営業満期後国立銀行ヲシテ私立銀行ノ資格ヲ以テ営業ヲ継続セシムルヲ可トスルノ理由
  営業満期後国立銀行ノ処分ニ就テハ従来世上ニ二派ノ議論アリ、一ハ営業満期後国立銀行ヲシテ私立銀行ノ資格ヲ以テ其営業ヲ継続セシムベシトスルモノ、一ハ国立銀行ノ営業年限ヲ猶数年間延期スベシトスルモノ即チ是ナリ、蓋シ延期ト云ヒ継続ト云ヒ各個
 - 第20巻 p.610 -ページ画像 
銀行ノ情況及ヒ各個株主ノ境遇ニ就テ考フルトキハ互ニ其利害ヲ同フセズト雖トモ、今経済上ノ大体ヨリ観察スルトキハ本委員ハ営業満期ヲ機トシ現今ノ国立銀行ヲ変シテ私立銀行ト為スヲ最モ必要ナリト信ス
  案スルニ、現行国立銀行条例中ニハ退守抑制ヲ主トスルノ条項多クシテ是決シテ経済機関ノ活動ヲ促ス所以ニアラス、例ヘハ該条例第五章ノ各条ニ貸附金・利息・預リ金準備等ニ窮屈ナル制限ヲ設クルカ如キ、或ハ第九章第八十二条ニ海外銀行トノ取引ヲ制限スルカ如キ、共ニ皆退守抑制ヲ主トスルモノナリ、今ヤ我国ノ商業ハ益々進歩シテ世界ノ競争場裏ニ立テ大ニ其輸贏ヲ試ムベキノ気運ニ際セリ、此時ニ当リテハ経済機関ヲシテ可成敏捷ニ活動セシメ、内ニ在リテハ殖産事業ノ発達ヲ助ケ、外ニ在リテハ貿易事業ノ拡張ヲ促スノ必要アリ、然ルニ斯ノ如キ抑制的ノ規定ノ下ニ銀行営業ヲ拘束シ、経済機関ヲシテ活動ヲ欠カシムルハ決シテ国家ノ長計ニアラサルナリ
  又今ノ国立銀行ハ明治初年ニ在リテ政府ノ誘導ニヨリテ創立シタルモノニシテ、当時我商業ノ極メテ幼穉ナルノ際ニ当リテハ之ニ各種ノ特典ヲ附与シテ其設立ヲ促シタルハ已ムヲ得サル所ナルベシト雖トモ、今ヤ我商業益々発達シテ其面目ヲ一新シタルコト決シテ旧時ノ比ニアラス、苟モ実際ニ於テ其必要アラシメンカ毫モ他ノ誘導ヲ待タスシテ猶巨額ノ資本ヲ結合シタル私立銀行続々興起スルノ趨勢アルニアラスヤ、然ルニ猶国立・私立ノ両制度ヲ存シ、一方ニ厚クシテ一方ニ薄キカ如キ観ヲ呈スルハ経済機関自然ノ発達ヲ害スルモノト謂ハサル可カラサルナリ
  且夫レ既ニ一旦兌換制度ノ基礎ヲ確保スルノ今日ニ於テハ極メテ厳正ノ主義ヲ取リ、我国銀行紙幣ノ如キ不換ノ性質ヲ帯フルモノハ一日モ早ク其流通ヲ止メテ市場ヨリ其跡ヲ断タシメサル可ラス本委員ノ見ル所ニ拠レバ明治十六年改正国立銀行条例ニ定ムル消却方法ノ如キ猶其遅緩ニ失スルノ憾アリ、然ルヲ況ンヤ国立銀行ノ営業年限ヲ延期シテ斯ノ如キ不換紙幣流通ノ時期ヲ長メントスルニ於テオヤ、是レ本委員ノ断シテ同意スルコト能ハザル所ナリ或ハ曰ク、現行国立銀行条例第四十九条ニ拠ルトキハ銀行紙幣ハ何時ニテモ日本銀行ニ於テ通貨ト引換フルモノナレハ不換ノ性質ヲ帯フルモノニアラズト、然レトモ該条ノ場合ニ於テ通貨ト引換ヘタル銀行紙幣ハ其流通ヲ止ムルニ非ラスシテ再ヒ市場ニ流通スルモノナレバ、其結果タル只一方ヨリ入リテ一方ニ出ツルニ過キサルナリ、豈之ヲ以テ不換ノ性質ヲ帯フルモノニアラスト謂フベケンヤ、或ハ又曰ク、国立銀行紙幣流通ノ期限ヲ数年間延期スルモ実際経済ヲ紊乱スルノ恐ナカルヘシト、夫レ或ハ然ラン、之カ為メ直接ニ経済上著大ノ影響ナシトスルモ本委員ハ兌換制度厳行ノ方針ニ付テハ毫モ之ヲ変スルヲ不可トシ、断シテ最初ノ計画ヲ成就スルヲ期ス、諺ニ曰ク、千里ノ長堤モ蟻穴ヨリ決スト、豈慎重処理セサル可ケンヤ
  之ヲ要スルニ現今国立銀行ノ制度タル、国家ノ進運及時勢ノ必要
 - 第20巻 p.611 -ページ画像 
ニ適応セサルモノニシテ、之ヲ存続スルハ啻ニ経済機関自然ノ発達ヲ害スルノミナラス、亦兌換制度ノ主義ニ反スルモノト謂ハサルベカラズ、是レ本委員ガ営業満期ヲ機トシテ今ノ国立銀行ヲ変シテ私立銀行ト為スヲ必要ナリト信スル所以ナリ
   ○本資料第六巻所収「東京銀行集会所」明治二十三年九月十二日、同二十七年五月二十二日、同年六月五日、同二十九年三月十七日ノ各条、並ニ第七巻所収「関東銀行会」及ビ第四巻所収「第一国立銀行」明治二十八年九月六日ノ条参照。尚、本巻明治二十七年七月二十三日ノ条、並ニ第二十二巻所収「商業会議所聯合会」明治二十八年九月二十七日ノ条参照。