デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治28年9月26日（1895年）

是日第四回定期会第二日ノ会議ニ於テ、戦後経営ニ関スル議案ノ上程サルヽニ際シ、栄一提案者タル東京商業会議所ヲ代表シテ提案理由ヲ述ブ。可決セラル。

明治二十八年九月開設
第四回商業会議所聯合会報告　　第五〇頁　刊
○第二十号議案
戦後ノ経済ヲ調理シ益国家ノ福利ヲ増進スル為メ各商業会議所ハ左ノ件々ヲ行フ事
　一相当ノ方法ヲ以テ戦後経済ノ実況ヲ審査シ、将来ニ執ルベキ方針ヲ議定スル事
　一前条ノ方針ニ従ヒ施設上ノ意見ヲ定メ之ヲ其筋ヘ建議・請願シ、若クハ世間ヘ発表スル事
　一前条ノ場合ニ於テ必要ト認ムルトキハ他ノ商業会議所ヘ協議シテ之カ賛同ヲ求ムル事
右提出候也
　　　　　　　　　　　　　　　　　　東京商業会議所
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　委員　今村清之助
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　同　　渋沢栄一
 - 第22巻 p.33 -ページ画像 

明治二十八年九月開設
第四回商業会議所聯合会議事概録　　第三二―三四頁　刊
　　　○第二日　〇九月二六日午前九時一〇分開議
○上略
会長（奥田正香君）　○中略　次ニ第二十号議案ニ移ラン
　書記長朗読
　　第二十号議案　　（東京提出）
　　　　戦後経済調理ノ件
第一番（渋沢栄一君）本案ニ付テハ別ニ意見ヲ述ブルノ要モナシ、頃日来提出ニナリ、且討議セラレツヽアル議題ハ皆ナ之レガ為ナレバナリ、要スルニ戦後ノ経済ハ最モ注意ヲ要スベキモノナルガ、其中ニモ将来軍備ヲ拡張セハ他ニ税源ヲ求メテ課税スルコトニナルハ国家自然ノ勢ヒニシテ、之レト同時ニ国家ノ進歩ヲ来スベキハ論ヲ竢タス、故ニ戦後経済ノ調理ハ其宜シキヲ得ルコトニ注意セザルベカラズ、況ンヤ償金処分ノ如何ニ依テハ経済ノ上ニ大変動ヲ起スベキニ於テオヤ、国民ノ感念ハ軍備ト云フ一点ニ傾キ居ル様ナルガ、尚ホ軍備ト共ニ実力ヲ養成スルガ必要ナリトノ感念ヲ起サシメンコトヲ要ス、之ヲ喚起スルハ商業会議所ノ責任ナリ、即チ本案ヲ提出セシ所以ナリ、宜シク御賛同アランコトヲ希望ス
第九番（亀岡徳太郎君）・第十二番（岡田元太郎君）・第三十番（中村藤吉君）ハ原案ヲ賛成ス
第三十七番（水登勇太郎君）　本員モ無論賛成ナリ、此事タル商業会議所ノ当ニ為スベキ本分ニシテ、各会議所ニ於テモ調査シツヽアルベキニ、玆ニ殊更之ヲ提出セラレタルハ尚ホ我々ニ向ツテ注意セラルヽモノナルヤ、又ハ是非共本会ニ於テ決議ヲ要スルト云フノ意ナルヤ、一応承ハリタシ
第一番（渋沢栄一君）　別ニ斯様御心得アルベシト云フガ如キ強キ主意ニアラズ、詰リ斯クセラレタシト云フノ希望ナリ、各会議所ニ於テモ御調ベニナルコトヽ思フガ故ニ、私共東京委員ノ二人ガ各会議所ノ意見ヲ問ヒ、幸ニ御同意ヲ得ハ、東京ニテモ調査シ、互ニ其結果ヲ申報シ、聯合シテ其筋ヘ建議・請願シ、若クハ世間ヘ発表セハ大ニ利スルトコロアルベシト云フ考ヘナリ
第五番（浜岡光哲君）　商業会議所トシテ是非為スベキノ事ナリ、故ニ其方法ハ兎モ角ナルガ、本案ハ大ニ賛成ナリ
第四番（萩原彦七君）　此案ノ如キハ可否ヲ決スルノ必要ヲ見ズ、商業会議所ノ当然為スベキノ本分ナレバナリ
第十番（大西五一郎君）　四番ト同意ナリ
第三十七番（水登勇太郎君）　一番ノ説明ノ如ク戦後経済ノ調理ハ頗ル重大ノコトニシテ、極必要ナルヲ以テ特ニ議決シテ調査スル様ニ致シタシ
第五番（浜岡光哲君）　議決ノ上ニ重キヲ置カルヽハ至極感服スル所ナルガ、併シ乍ラ畢竟同意ヲ求ムルニ過キサレハ、敢テ六ケ敷議論スルニハ及ハサルベシ
会長（奥田正香君）　本案ハ当サニ為サヾルベカラザル必要ノコトナル
 - 第22巻 p.34 -ページ画像 
ガ故ニ、不同意者ハナカラン、依テ全会ノ多数ハ異議ナキモノト認メ之ヲ可決シ置クナリ
　　　○本資料第二十一巻所収「東京商業会議所」明治二十九年年三月十二日、同三十年十二月二十八日ノ両条参照。