デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治26年7月5日（1893年）

第二回鉄道会議是月一日ヨリ開カレ、是日栄一、
 - 第23巻 p.126 -ページ画像 
会議ニ出席シテ神鶴電気鉄道敷設ノ件、房総線電車鉄道免許状下附ノ件ヲ議シ、次イデ十五日報告アリ。栄一委員タリ。

第二回鉄道会議議事速記録　　第三号　明治二六年七月五日
　明治二十六年七月五日（水曜日）午後一時三十分開議

　　　　議事日程　明治二十六年七月五日
　　一　神鶴電気鉄道敷設ノ件
　　一　房総電車鉄道免許状下附ノ件

　　　　出席
　　議長代理　　児玉源太郎
　　議員　　　　佐藤里治　　仙石貢　　寺内正毅　　谷干城　　渋沢栄一　○外十四名氏名略
○議員一同著席
○議長代理（児玉源太郎）　是ヨリ開会シマス、議事日程ノ神鶴電気鉄道敷設ノ件、之ヲ議事ニ掛ケマス　○中略
○三番（伊藤大八）　○中略　此問題ハ線路ノ選定ト云フ者ハ出来テ居ル、馬車鉄道ニ許シタ線路ハ是カラ是迄ト云フコトハ已ニ分ツテ居ル、此問題ニ就テ簡単ニ討究スベキ所ハ、電気鉄道デ許シテ宜イカ否カト云フコトヲ研究スレバ事ガ足ルノデアル　○中略　兎ニ角此電気鉄道ト云フモノヲ許シテモ差支ヘナキヤ否ヤト云フコトヲ、今少シ研究シテ看タイト思フ、夫故此問題ニ付テハ委員デモ可笑シイガドウカもう少シ研究ヲシタイモノデゴザリマス、委員ニ附託シテ調ベテ貰フト云フコトヲ何時デモ私ハ担ギ出シテ甚ダ何デアルガ、若シサウナレバ私モ大変望ム所ガ適フ　○中略
○二番（仙石貢）　○中略　私モ三番ノ説ヲ賛成シテ、委員ニ附シテ然ル後決スルガ宜シイト思ヒマス
○二十三番（渋沢栄一）　三番ノ委員説ハ二番ノ賛成ニ依ツテ大ニ確マツタヤウデアリマスガ、私ハ是ニハ反対デアツテ、電気ノ事ニ就テノ委員ヲ選ブト云フコトハ、或ハ御諮詢以外ノコトニ超越シハシマイカト気遣フノデアリマス、技術ノコトハ除クト云フ事ハ、既ニ御書附ニモアル次第デ、好シ御書附ガナクテモ会員トシテハ其立派ノ御方ハ別ニ知ラレテ居ルノデハアリマスマイカ、然ルヲ此会ガサウイフ調査ヲスルト云ヘバ、日モ亦足ラズトハ相成リハシマスマイカ、斯カル新規ノ仕事ニ就イテ此事ハ差支ナイト思ヒマスル、但シ電気鉄道ニ就テハ斯様々々ノモノデアリマスカラ、技師ニ質シ、計算ニ需メ、其筋ニ計算サセタガ宜シカラウト云フコトヲ、此ノ諮詢ニ御答ヘスルト同時ニ意見ヲ附シテ逓信大臣ニ御注意スルノハ格別デアルガ、特ニ其調査ノタメニ委員ヲ選ブト云フノハ、或ハ私ハ超越トデモ申シマセウカ、迚モ行ハレナイコトデハナイカト思フ、或ハ此敷設ニ対シテハ電気鉄道ハ相当セヌ、之ニ対シテハ不賛成デアルトカ、又ハ大ニ宜シイトカ、若クハ神鶴ト云フガ其実三田迄デ一ノ軽便鉄道ダカラ宜シカラウトカ
 - 第23巻 p.127 -ページ画像 
悪ルカラウトカ云フ御注意ハ格別ダガ、委員ヲ設ケテ電気ノコトヲ調査スルト云フノハ不同意デアル、次ノ房総ノ線ニ就テモ他ノ比較線或ハ第二期ノ予定線ニ関係シヤウト思ツタナラバ、ソレニ就テノ委員ヲ設ケルナラ至極宜シイデアリマセウガ、電気ト云フ技術的ノコトニ調査委員ヲ設ケルト云フノハ不同意デアリマス
○中略
○議長代理（児玉源太郎）　唯今三番カラ委員説ガ出マシテ、夫レニ定数ノ賛成者モ御座イマス、之ニ御同意ノ方ハ起立ヲ願ヒマス
　　起立者　　少数
○議長代理（児玉源太郎）　此案ノ延会ト云フコトニ御同意ノ御方ハ起立ヲ請ヒマス
　　起立者　　過半数
○議長代理（児玉源太郎）　多数デアリマス
○二十三番（渋沢栄一）　今日ハ私ハ体屈《（マヽ）》デアリマスカラ是デ御免ヲ被リマス
　　　○神鶴電気鉄道ハ兵庫県神戸市ヨリ養父郡谷上村ヲ経テ有馬郡三田ニ至ル馬車鉄道ノ既ニ敷設ヲ許可セラレタルヲ電車ニ変更セントシテ、明治二十四年十月三十一日仲喜一郎外十六名ヨリ出願ニ及ベルモノ、ソノ途中ニハ日本ニ於ケル最初ノ斜面鉄道ヲ設ケ、布引山巓マデ鋼鉄索ニテ車輌ヲ引揚グル計画ヲ含ミシガ、是日議案決セズ、延会トナリ、七月十五日不許可ニ決ス。

第二回鉄道会議議事速記録　　第六号　明治二六年七月一五日
　明治二十六年七月十五日（土曜日）午後一時十五分開議

　　　　議事日程　明治二十六年七月十五日
　　一　諮詢第三十五号諮詢第三十三号房総電車鉄道免許状下附ノ件ヲ取消シ、更ニ房総鉄道敷設免許状下附ノ件
　　一　諮詢第三十二号神鶴電気鉄道敷設ノ件　○外二件略ス

　　　　出席
　　議長　　川上操六
　　議員　　佐藤里治　○外二十名氏名略ス、栄一欠席ス。
○議員一同著席
○議長（川上操六）　是ヨリ開会致シマス、委員長ノ報告ヲ読マセマス
　　　〔書記朗読〕
　別冊ノ調査ニ拠リ熟考スルニ、電気鉄道ハ重量ヲ分割シテ間断ナク送達スルニ最便利ナルモノニシテ、一定ノ時間ニ於テ列車トシテ一時ニ送達スルモノニ於テハ、其特質ヲ利用スル所未タ其精細ナル実蹟判明ナラサルモノトス、故ニ通常ノ鉄道ヲ敷設スヘキ地形ニシテ且ツ旅客及ヒ貨物ヲ間断ナク送達スル必要ナキ所ニ於テハ、特ニ此方式ヲ撰フヘキモノニ非ラスト思考ス
右及報告候也
　　明治二十六年七月十五日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　委員長　渡辺洪基
 - 第23巻 p.128 -ページ画像 
　　　　　　　　　　　　　　　　　　委員　　佐藤里治
　　　　　　　　　　　　　　　　　　同　　　仙石貢
　　　　　　　　　　　　　　　　　　同　　　伊藤大八
　　　　　　　　　　　　　　　　　　同　　　寺内正毅
　　　　　　　　　　　　　　　　　　同　　　石黒五十二
　　　　　　　　　　　　　　　　　　同　　　箕浦勝人
　　　　　　　　　　　　　　　　　　同　　　角田秀松
　　　　　　　　　　　　　　　　　　同　　　渋沢栄一
　　　　鉄道会議議長川上操六殿
　　（別冊ハ委員会速記録ナルヲ以テ玆ニ略ス）
○十九番（渡辺洪基）　此電気鉄道調査委員ヲ本員等其任ニ当リマシテ所デ兎ニ角此方ノ専門家ヲ呼ンデ話ヲ聴カナケレバナラヌト云フコトニナリマシタ、即チ別冊ニアリマス所ノ第一ヨリ第五ニ至ル所ノ問題ヲ発シマシテ、一日会議ヲ開キ、ソレカラ段々調ベテ見マスルト云フト、此ノ報告書ニ書イテアリマス通リノ訳デアリマシテ、詰リ電気鉄道ト云フモノハ　○中略　時間ヲ限ツテ列車ヲ通スル所、或ハ平坦ナ所デハ格別之ヲ要セヌ、別ニ水力ノ便利ノナイ所ニ於テハ、又通常ノ式ガ今迄ノ経験モ積ンデ多イカラ、安全ナモノデアルト云フコトヲ委員ニ於テ確定致シタノデアリマス、此段報告致シマス
○下略
　　　○電気鉄道ニ関スル調査委員会ハ初メ、七月五日会議ニ於テ諮詢第三十三号房総電気鉄道（千葉県千葉郡蘇我町ヨリ山辺郡大網町ニ至ル）免許下附ノ件ニツキ、栄一外六名ノ委員附託トナリ、更ニ七月七日電気鉄道ニ関スル調査委員ヲ設クル建議案可決セラレ、前述ノ委員ニアハセ附託セラル。仍テ七月十日午前中委員会ヲ開キ、藤岡市助ヨリ電気鉄道ニ関スル説明ヲ聴取シ、是日報告ニ及ベルモノナリ。（第二回鉄道会議議事速記録ニ拠ル）
　　　○第二回鉄道会議ノ開催日並ニ栄一ノ出席左ノ如シ。
　　　　　　明治二十六年七月一日　　　出席（開会）
　　　　　　　　　　　　七月三日　　　欠席
　　　　　　　　　　　　七月五日　　　出席
　　　　　　　　　　　　七月七日　　　出席
　　　　　　　　　　　　七月十日　　　出席　委員会ニモ出席
　　　　　　　　　　　　七月十五日　　欠席
　　　　　　　　　　　　七月二十日　　出席（閉会）
　　　　右ノ中七月一日・七日・十日・二十日各日重要ナル発言ナシ、コノ会議ニ於ケル栄一ノ座席番号ハ第二十三番。（第二回鉄道会議議事速記録・自第一号―至第七号及ビ別冊ニ拠ル）