デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治37年12月30日（1904年）

是日栄一、当会ニ貸費基金ヲ寄附ス。

埼玉学生誘掖会十年史　同会編　　年表・第三頁　大正三年一〇月刊
　　　　埼玉学生誘掖会十年史年表略
明治三十七年
○中略
　十二月三十日　男爵渋沢栄一氏より貸費基金を寄付せらる
○下略

埼玉学生誘掖会十年史　同会編　　第二六頁　大正三年一〇月刊
　○第一篇　埼玉学生誘掖会史
　　　　第一期　会員組織時代
○上略
学資の貸与は本会の最も其急施を希望する処なりしも、奈何せん新築工事に資金の全力を傾注せるを以て、暫く其実施を他日に期するの止むを得ざるを遺憾とせしが、会頭男爵渋沢栄一氏及田島竹之助氏より特に貸費基金を寄附せられしかば、玆に貸費実施の端を開けり。因て本会貸費規程を制定し、三十八年一月より実施することゝせり。

埼玉学生誘掖会十年史　同会編　　後付・第一頁　大正三年一〇月刊
　　　　寄附者名簿
○上略
貸費基金之部
　　　　　　　円
　　　　　五〇〇　　　　　　　　　　男爵　渋沢栄一
　　　　　三八四　　　　　　　　　　　　　田島竹之助
　　　　　三〇〇　　　　　　　　　　男爵　佐野延勝
　　　　　三〇〇　　　　　　　　　　　　　渋沢義一
　　　　　一五〇　　　　　　　　　　　　　指田義雄
　　　　　　五〇　　　　　　　　　　　　　松崎伊三郎
　　計一、六八四
○下略

 - 第27巻 p.123 -ページ画像 

埼玉学生誘掖会十年史　同会編　　年表・第三―四頁　大正三年一〇月刊
　　　　埼玉学生誘掖会十年史年表略
明治三十八年
　一月十二日　会員田島竹之助氏より貸費基金を寄附せらる
○中略
　一月廿六日　貸費規程制定せらる

埼玉学生誘掖会十年史　同会編　　第二七―三〇頁　大正三年一〇月刊
　第一篇　埼玉学生誘掖会史
　　　　第一期　会員組織時代
○上略
　　　　　埼玉学生誘掖会貸費規程
　　　　　　第一章　貸費基金ニ関スル事
第一条　貸費基金ハ左ノ二項ヨリ成立スルモノトス
　一　本会支出金
　二　寄附金
第二条　本会支出貸費基金ノ額ハ、本会経済ノ状況ニ依リ随時之ヲ定ムルモノトス
第三条　寄附ニ依ル貸費基金ハ、本会々員又ハ会員外ヨリ貸費基金トシテ寄附シタル金額ヲ以テ之ニ充ツルモノトス
第四条　寄附者ハ、特ニ其貸費ヲ受クヘキ本人又ハ其専修スヘキ学科ヲ指定シテ寄附スルコトヲ得、此場合ニ於テ本会ハ其指定サレタル本人ニシテ貸費生タルニ相当ナル資格ヲ有スル限リハ、寄附者ノ希望ニ応スルモノトス
第五条　寄附ニ係ル貸費基金ニハ、寄附者ノ姓ヲ冠シ何々貸費基金ト称シ、其出納計算ヲ明カニシ、毎年一回寄附者ヘ報告スルモノトス
第六条　貸費基金ノ出納保管ニ関スル事務ハ、本会々計主任之ヲ管理スルモノトス
　　　　　　第二章　事務管理ニ関スル事
第七条　本規程ノ施行ニ関スル諸般ノ事務ハ、特ニ其主管ヲ定メタルモノヽ外本会寄宿舎監督之ヲ管理スルモノトス
第八条　左ノ事項ハ理事会ノ決議ヲ経、会頭ノ認可ヲ得テ施行スルモノトス
　一　本会支出貸費基金額ヲ定ムルコト
　二　貸費生在学ノ種類ヲ定ムルコト
　三　貸費ノ出願ニ対シ許否ヲ定ムルコト
　四　貸費金額及期間ノ決定・変更・停止ニ関スルコト
　五　貸費ノ償還ニ関シ特別ナル処分ヲ為スコト
　六　本規程ノ加除・修正ニ関スルコト
　右ノ外主管者ニ於テ、本条ノ規定ニ依ルヲ必要ト認ムル事項
　　　　　　第三章　貸費及其償還ニ関スル事
第九条　本会貸費生タルコトヲ得ルモノハ、左ノ資格ヲ有スルモノニ限ル
 - 第27巻 p.124 -ページ画像 
　一　本県出身学生ニシテ現ニ本会指定学校ノ在学者タルコト
　二　学力優等・品行方正・身体健全ナルコト
第十条　貸費生タルコトヲ欲スルモノハ、貸費願書ヲ差出シ許可ヲ受クヘシ
　貸費願書ニハ父兄又ハ親戚連署シ、学業履歴書・戸籍謄本・体格保証書ヲ添付スヘシ
　貸費生タルノ許可ヲ受ケタルトキハ誓約書ヲ提出スヘシ、誓約書ニハ本会ニ於テ承認ヲ与ヘタル二名ノ保証人連署スヘシ、但保証人中ノ一名ハ、本会々員タルコトヲ要ス
第十一条　貸費金額及其期間ハ、本人在学々校ノ種類・学業ノ程度・家産ノ状況等ヲ酌量シ、本会ニ於テ之ヲ定メ又ハ変更ス
第十二条　貸費生ニシテ左ノ事故ニ該当スルトキハ、既定ノ貸費額ヲ減スルコトアルヘシ
　一　私ノ事故ニ依リ二週日以上引続キ休学シタルトキ
　二　疾病・傷痍又ハ不得已事故ニ依リ六十日以上休学シタルトキ
第十三条　貸費生ニシテ左ノ事故ニ該当シタルトキハ貸費ヲ停止シ、既ニ貸与シタル金額ノ償還方法ハ、第一項ノ場合ニハ第十五条ノ例ニヨリ、其他ニ在ツテハ本会ノ指定スルトコロニ依ル
　一　他ヨリ給費又ハ貸費ヲ受ケ本会ノ貸費ヲ要セサルニ至レルトキ
　二　疾病・傷痍等ノ為メ成業ノ目途ナキトキ
　三　不得已事故ノ為メ半途ニシテ退学シタルトキ
第十四条　貸費生ニシテ左ノ事故ニ該当シタルトキハ貸費ヲ停止シ、既ニ貸与シタル金額ハ直チニ償還セシム
　一　退学又ハ停学ノ処分ヲ受ケタルトキ
　二　学業怠慢・品行不良・落第連続等ノ事故ニ依リ、到底成業ノ目途ナキモノト本会ノ認メタルトキ
　三　本会ノ体面ヲ汚損シ、又ハ本会ニ対シ背徳ノ行為アリト本会ノ認メタルトキ
第十五条　貸費生ハ、卒業後六ケ月ヲ経過シタル月ヨリ起算シ、貸費ヲ受ケタル月数ニ等シキ期間内ニ於テ、貸費元金ニ年六分ノ利子ヲ加ヘ月賦償還セシム
　但全額ヲ一時ニ償還シ、又ハ月賦額ヲ高メ償還期間ヲ早ムルハ、本人ノ随意タルヘシ
第十六条　貸費生ハ、学年試験毎ニ学業成績ヲ本会ヘ報告スヘシ
第十七条　貸費生ニシテ在学中又ハ貸費償還完済以前ニ死去シタルトキハ、其死去後ニ係ル弁済義務ヲ免除ス
○下略