デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

2部 社会公共事業

6章 政治・自治行政
2節 自治行政
4款 東京市参事会
■綱文

第28巻 p.374-378(DK280040k) ページ画像

明治26年4月26日(1893年)

是日栄一、東京市名誉職参事会員ヲ辞シ、六月八日、再ビ選挙セラル。


■資料

東京市会議事録 第一四巻・第二七号 明治二六年刊(DK280040k-0001)
第28巻 p.374-375 ページ画像

東京市会議事録  第一四巻・第二七号 明治二六年刊
  明治二十六年四月廿八日午後四時五十五分開議
    闕席 九番酒井忠良 ○外十一名氏名略
    出席四十六員
  七番楠本正隆 議長席に着く
一議長ハ本議ニ先タチ市参事会ヨリ報告書 ○略ヲ朗読セシメ、次テ前会ニ於テ水改第四十三議案否決ニ属シタル結果、市参事会員総辞職ノ報道ニ接シタルヲ以テ、本日開会ヲ要セシ旨ヲ告ケ、其報告書名誉職市参事会員芳野世経氏外十一名辞職ノ件ヲ朗読セシメ、之ヲ是認スヘキヤ否ヤヲ諮ヒシニ十番檜山鉄三郎ハ鉄管購買示方書更正ニ関シ、市参事会員其責ヲ荷ヒ聯帯シテ辞職セシハ其高潔自ラ明瞭ナルヲ以テ、別ニ選挙ヲ要セス前任者ニ留任ヲ勧誘スヘシトノ意見ヲ提出シ、十一番角田真平ハ市参事会員ノ職務ハ辞表提出ト共ニ解除シタルモノナレハ、之ヲ承認セストスルトキハ、市制第八条ノ制裁ヲ加ヘサルヘカラサルノ結果ヲ生スヘケレハ、兎ニ角一旦ハ辞職ヲ是認スヘシト論シ、討議ノ末表決セシニ、十番ノ意見ハ四十一人ニ対スル二人(此際出席四十四員)ノ起立ニテ消滅ニ属シ、二人ニ対スル四十一人ノ起立ヲ以テ十一番ノ辞職是認説ニ可決ス
 - 第28巻 p.375 -ページ画像 
○中略
    ○附録
日本鋳鉄合資会社ヨリ水道鋳鉄管購買示方書中第二十一条之更正ニ係ル出願書ニ対シ、市参事会カ認許ヲ与シ当日ハ、拙者共事故有之闕席仕候為メ該議ニハ関ラサリシト雖、其後市会ヘ提出シタル水改第四十三号案ニシテ廃セラレタル上ハ、市参事会員ハ連帯其責ニ任スヘキ者ト存候ニ付、玆ニ辞職致候也
  明治二十六年四月二十六日      東京市参事会員
                      渋沢栄一
                      渡部温
                      鈴木信仁
    東京市参事会東京府知事宛
   ○市参事会員芳野世経・須藤時一郎・松田秀雄・風間信吉・山田忠兵衛・浦田治平・大貫実・長岡護美・松平信正ノ各辞表ヲ略ス。


東京経済雑誌 第二七巻第六七二号・第六一一頁 明治二六年四月二九日 ○東京市参事会員の総辞職(DK280040k-0002)
第28巻 p.375 ページ画像

東京経済雑誌  第二七巻第六七二号・第六一一頁 明治二六年四月二九日
    ○東京市参事会員の総辞職
東京市名誉職参事会員十二名は、当市水道用鋳鉄管購買示法書変更の承諾を市会に求めたるに、市会に於て大多数を以て之を廃棄せし為め袂を列ねて辞職を申出でたり、今其変更の来歴を尋るに、東京市水改第四十三号鋳鉄管購買示方書に依れば鉄管に「東京水道日本鋳鉄合資会社」の十二文字を鋳記する筈なりしが、数万の鉄管に一々之れを鋳出するは非常の手数にして、且つ外国製のものにて是等の文字は鋳出しあらざるに依り、東京市と鋳鉄会社の徽章とを鋳出することに改められたしとの請求を同社よりなしたるに、東京市参事会は別段の大事とも見ず、又古市工事長も変更するも格別の差支なかるべしとの意見にて、富田知事も異議なかりし為め、終に市参事会にては其許可をなすことゝなり、去月三十日を以て其指令を与へ公正証書となし了れり然るに此許可に就き監査会は頻りに不可を鳴らし、議論稍々激烈なるに至りしかば、鋳鉄会社をして其許可取消を承諾せしめんとせしかども、会社に於ては既に公正証書ともなり居り、且つ其許否如何は会社の経費に非常の関係を有するものなれば、到底承諾をなさゞるより、市参事会は已むなく其議案を市会に提出して承諾を求むることゝなりけり、然かるに市会に於ては之を以て参事会の越権なり、市会を軽侮せるものなりとして終に去る廿日廃棄せり、余輩は市参事会の失策たるを認む、然れども市会は其承諾を廃棄して如何にせんとする乎、新参事会亦到底鋳鉄会社をして許可取消を承諾せしむること能はざるに於ては、廃棄の効は徒に参事会員をして更迭せしめたるに過ぎざるにあらずや


東京市会議事録 第二八号・第四―五頁 明治二六年刊(DK280040k-0003)
第28巻 p.375-376 ページ画像

東京市会議事録  第二八号・第四―五頁 明治二六年刊
    ○附録
名誉職市参事会員補闕員ノ選挙ヲ執行セシニ、別紙記載ノ通リ市制第五十一条ニ該当スルノ結果ヲ生セリ、依テ裁決アランコトヲ請求候也
 - 第28巻 p.376 -ページ画像 
  明治二十六年四月廿九日       東京市会議長
    東京府知事宛
「別紙」
    選挙始末書
一名誉職市参事会員補闕員選挙ノ際ハ、出席三十六員ニシテ、得点者左ノ如シ
                九点  山田忠兵衛
                九点  三浦安
                八点  山中隣之助
                七点  渡部温
                三点  渋沢栄一
依テ市制第四十四条一項ニ拠リ最多数ヲ得ルモノ二名ヲ取リ更ニ投票ヲ行ヒシニ、有効票数三十四点ニシテ山田忠兵衛・三浦安十七点ノ得点者トナレリ
○下略


東京経済雑誌 第二七巻第六七三号・第六四四頁 明治二六年五月六日 ○東京市参事会員選挙の結果(DK280040k-0004)
第28巻 p.376 ページ画像

東京経済雑誌  第二七巻第六七三号・第六四四頁 明治二六年五月六日
    ○東京市参事会員選挙の結果
東京市会にては去月廿八日市参事会員の辞職を承認し、同日より翌日に亘り新参事会員を選挙せり、其結果左の如し
  須藤時一郎   松田秀雄   芳野世経
  山田忠兵衛  △仁杉英    鈴木信仁
 △稲田政吉   △桐原捨三  △近衛篤麿
  松平信正    長岡護美   風間信吉
△を附する者は新選にして之を附せざるものは再選なり、故に旧参事会員にして選挙に洩れたるは左の四氏なり
 渋沢栄一  大貫実  渡辺温《(渡部温)》  浦田治平
新選会員中、近衛篤麿公は法定の年齢即ち満三十歳には三日不足せるを以て無効となれり、但し後任は未定なり


東京市会議事録 第一四巻・第三八号 明治二六年刊(DK280040k-0005)
第28巻 p.376-377 ページ画像

東京市会議事録  第一四巻・第三八号 明治二六年刊
  明治二十六年六月八日午後第四時四十五分開議
    闕席 十七番阿部孝助 ○外三名氏名略
    出席五十四員
  七番楠本正隆議長席ニ着ク
一本議ニ先タチ議長ハ東京府知事ヨリノ達書 ○略 ヲ朗読セシメ、右選挙ハ後刻ニ譲リ、之ヨリ前会報道シ置キタル市参事会員半数改選ヲ行フヘキ旨ヲ告ケ、市制第四十四条ニ拠リ一名ツヽ投票ヲ要セシニ、第一回・第二回ノ外ニ孰レモ成規ノ得点者ナキヲ以テ、最多数ヲ得タル者両名ニ就テ決選投票ヲ要シ、選挙結了ノ後チ更ニ左ノ当選人名ヲ朗読セシメ、休息ス
 四十五点  松田秀雄  二十九点  須藤時一郎
 二十八点  青木匡   二十六点  渋沢栄一
 二十六点  今井兼輔  二十九点  桐原捨三
 - 第28巻 p.377 -ページ画像 
   于時午後第五時五十分



〔参考〕東京経済雑誌 第二七巻第六七七号・第七七二―七七三頁 明治二六年六月三日 ○東京市水道改良事業を論す(DK280040k-0006)
第28巻 p.377 ページ画像

東京経済雑誌  第二七巻第六七七号・第七七二―七七三頁 明治二六年六月三日
    ○東京市水道改良事業を論す
近時東京市会の水改事業に於ける討論は、余輩をして聞くに堪へざらしむるもの多し、嗚呼六百五十万円の大事業を為すに当りて、空く此の如き論諍に日月を消するは豈に歎息すべきことならずや
蓋し此論諍の起源は、東京市参事会が市会の議を経ずして、其水道鉄管に鋳出すべき「東京水道日本鋳鉄合資会社」の十二文字を改め、東京市と鋳鉄会社の徽章とを鋳出することを許せしに基けり、是れ素とより越権に相違なし、故に参事会は一同袖を列ねて辞職したり、然れども其主意如何と云ふに、此十二文字に代ふるに徽章を以てすることは、善良なる改正たることは何人も疑はざるべし、然らば則ち斯場合に於ては自ら寛裕の典を立て事業の運行を便利にするの方法を設けざるべからず
東京市会も此改正の善良なることを認むるものゝ如し、然れども之れと同時に日本鋳鉄会社をして幾何か減価せしめんとしたり、故に改選せる市参事会をして日本鉄道会社《(鋳鉄)》に向ひ「最前の示方書に基きて鋳造する乎」、然らざれば「鋳造費幾分を減して徽章を鋳出する乎」の二様の談判を試ましめたり、然るに日本鋳鉄会社は「砂製堅型を用ひて鋳造するものたるを以て、決して鋳鉄費に於て減額を為すべき程のものにあらざること」を回答したり
思ふに此点に於ては種々の事情を錯綜せるものあるべし、然れども余輩は外部より観察するに二箇の惜むべきことあり
 第一 前参事会は減価せずして改鋳を許可したる場合なるを以て、市会も此場合に於ては減価せずして、成るべく堅牢に鋳造すべきことを命するの穏当なることを見る
 第二 日本鋳鉄会社に於ても斯る談判を蒙りし以上は、総額に於て幾分かの減額を為すの穏当なるを見る
然るに此二事共に行はれざりしは惜むべきなり、去れば東京府知事富田鉄之助君が、日本鋳鉄会社に談判の結果を議場に報告するや、議場は沸くが如くにして、種々の議論の紛出したるの末「市参事会は向後本件に関し如何なる処置を為す考なるや、将来の決心を聞かん」との決議を為して了れり、且つ知事の自ら出席して弁明せんことを要求したり
余輩は此等の紛擾は皆な止むを得ざるに出でたることを疑はざるなり然りと雖も、水改事業の大事なることを思へば、此の如き有様にて時日を消するを惜まざるを得ず、故に苟も悪事の存せざる限は、充分に当局者の所為を是認し、其事業の運行を滑かにするの至当なるを見るなり



〔参考〕東京経済雑誌 第二七巻第六八〇号・第八八九頁 明治二六年六月二四日 ○東京市水改第五十号議案(常設委員設置案)の否決(DK280040k-0007)
第28巻 p.377-378 ページ画像

東京経済雑誌  第二七巻第六八〇号・第八八九頁 明治二六年六月二四日
    ○東京市水改第五十号議案(常設委員設置案)の否決
東京市水道改良工事は当初より幾多の困難紛議に遭遇しつゝ市公債を
 - 第28巻 p.378 -ページ画像 
募集して工事に着手せしが、種々の障碍の為めに工事予期の如く捗らず、遂に市会に於て一大紛議を惹起せり、即ち水道改良常設委員設置の議是なり、抑々該委員設置すべしとの建議は昨年の初夏より市会に起り、賛成者ありて議題となり、数回委員を設けて調査せしめたる末市会は終に之を廃棄せり、次で本年に至りて更らに形を変へ市参事会より右常設委員設置の案を提出せられたり(五月十八日提出水改第五十号及び第五十一号)此二議案によれば常設委員は水道改正及市公債に関する事務を掌理するものにして、其組織は市参事会員一名・市会議員三名・市公民中選挙権を有するもの一名より成立ち、其報酬として一人に付金一千円を与へ、車馬賃其他諸費を合て金七千四百七拾九円九十七銭八厘の支出を市会に求めたり、然かるに幾くもなく市参事会は自から該二案の全部を撤回し、更らに水改第五十号として無報酬の委員とはなしぬ(其組織は前に同じ)、東京市会は去五月二十五日其第一次会を開き、直ちに委員五名を挙けて之れを調査せしむることとし、楠本正隆・桐原捨三・星松三郎・白石剛・末吉忠晴の五氏其の選に当りて調査の任に当れり、斯くて六月十九日の市会に於いて調査委員は本案可決の旨を報告せり、爾来二十一日に至るまで三日三夜市会は非常の紛争を極めたり、蓋し其の理由書の如くんは、実に市会の黙過する能はざる事件なりとす、市会に於て之れか為めに紛争を極めたるも亦理なきにあらざるべし、而して十九日より引つゞき二十一日に至るまで賛否双方の間に劇争のありし後、議員四十九名中(出席員五十名中議長芳野氏を除く)二十九名に対する二十名の少数にて常設委員設置の案は終に否決せられたり、按するに常設委員設置の件は唯々簡単なる一案のみ、恰かも公園改良に於ける常設委員の如くなるべし然らは則ち公園改良常設委員の如く円滑に議場を通過するこそ当然なるべきに、此一案の為めに市会創始以来殆んと稀有の紛争を為したるもの、必らずや伏因の之に伴ふなくんはあらず、是れ本市の利害に関係する大問題にして、且つ市会の体面に係ること亦た少からざるなり故に余輩は他日機を見て之を江湖に表明して救治の方法を講することあるべし