デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

3部 身辺

1章 家庭生活
4節 趣味
3款 漢詩
■綱文

第29巻 p.229-243(DK290072k) ページ画像

明治6年―同41年(1873-1908年)

栄一ノ漢詩ハ、初メ尾高惇忠ニ学ビタルモノニシテ、折リニ感懐ヲ托スルコト終生ニ及ブ。即チ、是間ニ於ケル作詩マタ少ナカラズ。


■資料

青淵詩存 渋沢栄一遺著 孫敬三輯 巻末 昭和八年刊(DK290072k-0001)
第29巻 p.229 ページ画像

青淵詩存 渋沢栄一遺著 孫敬三輯 巻末 昭和八年刊
    青淵詩存跋
祖考青淵翁所賦之詩凡二百五十余首輯為一巻題曰詩存、初祖考従尾高藍香翁学間賦詩才力既非凡、既而時勢搶攘祖考投身于志士之間、尋遊欧西明治維新後則興業通貨百事萃一身曾無虚日、則其為詩亦唯触境感時忠愛纏綿衝口而出殆不遑構想鍛詞也 ○中略
  昭和八年秋          渋沢敬三識  


青淵詩存 渋沢栄一遺著 孫敬三輯 第一三―二三丁 昭和八年刊(DK290072k-0002)
第29巻 p.229-233 ページ画像

青淵詩存 渋沢栄一遺著 孫敬三輯 第一三―二三丁 昭和八年刊
   解印二首 明治六年
無復吟辺物累牽。酒詩欲試小游仙。孤身此際所何似。雲外閑鷗湖上船。
官途幾歳費居諸。解印今朝意転舒。笑我杞憂難掃得。献芹留奏万言書。
   先考晩香君十年忌霊前感賦 明治十三年
庭訓当年有義方。霊壇尚見旧文章。傷心却在為言裏。独対帳前幽恨長。
   詠菊憶先考晩香君
白羽金銭好傲霜。任他秋色委荒涼。請看百卉凋衰後。有此幽叢晩節香。
   黒沢尻途上 明治十五年
宿雨初晴新緑鮮。江村午暖地生煙。白藤黄菜花多少。愛個郷園四月天。
   盛岡客中向井氏招飲余於秀清館館県令島君之旧宅
山自秀霊水自清。雅筵談熟酒頻傾。高堂猶見召公沢。匹似甘棠存旧情。
   宿生保内村 秋田県下 仙北郡
緑樹成陰暁色幽。乱山四繞水西流。風光自与京城異。六月初旬重客裘。
   抵船川港
雨歇頑雲未放山。望迷帆影有無間。小游不恨風濤悪。探得北溟第一湾。
   角間川途上
行遍長松断続間。雨余沙滑路如刪。暮煙遠抹群峰暗。
 - 第29巻 p.230 -ページ画像 
一白只看鳥海山。
   宝光院小祥志感 明治十六年
霊壇無物慰悵然。烏兎回頭已一年。記得曖依村荘夕。梧桐葉落雨如煙。
   同奠詞
歌子弄璋脩母儀。阿琴篤二克相随。慇懃寄語九原路。家政今無異旧時。
   将赴西京途上口占 明治二十年前後
僅理旅装意便清。平安従是幾行程。却嗤客路亦多事。到処江山訂旧盟。
   富岳
函山昨望峰頭雪。駿海今看光景真。富岳与吾如骨肉。相迎相送遠游身。
   詠岳呈静岡正二位公
高風払尽世間塵。一白清姿逐歳新。無復雲煙蔽標格。依然氷雪護天真。
   興津途上矚目
海雲半引岳雲還。薩坨浦頭曙色殷。洲嘴途窮湾転処。月残清見寺辺山。
   桶狭間懐古
長征直欲略京畿。一跌可憐心事違。遺恨愛知原上月。猶看孤雁背人飛。
   冬日過桶狭間
路入小邱凸凹間。夕陽紅没暮雲還。悲風落木霜威凛。月暗英雄埋骨山。
   関原懐古
籌定将軍樹纛牙。俄然西陣乱如麻。可憐石豎見機拙。漫賭乾坤付大爺。
   松力楼即事
好是高楼対酒時。愛他夕翠入詩思。笑吾客路匆忙裏。品柳評花亦一奇。
   井筒楼戯賦
芳園百卉競嬌姿。折得寒梅花一枝。多情今留瓶裏去。春風護否再游時。
   追悼阪谷朗盧先生題興譲館壁 明治二十六年
山光水色総関情。古館幾年失主盟。今日高堂人不見。階前只聴読書声。
   追悼義子平九郎二首 明治二十七年
力尽虞淵徒倒戈。雄思果見忽蹉跎。無情最是黒山月。長使乃翁嘆逝波。
逝波流水令人嗟。往事算来歳月賖。愁殺当年風雨悪。一宵吹落未開花。
   題平九郎遺刀
烏兎何時能雪寃。九原無復慰幽魂。遺刀今夜挑灯見。
 - 第29巻 p.231 -ページ画像 
猶剰当年旧血痕。
   寄井上伯駐在朝鮮京城
鶏林豈莫物華新。利用厚生妙在人。好是厳霜粛殺後。和風一道点陽春。
   甲午冬病口癌医師来将施切断因賦一絶以自遣
少年豪侠気如雲。一剣欲支百万軍。豈料雄思銷尽後。衰顔因病見刀痕。
   詣日光廟 明治二十八年
老樹森森高聳天。鐫金閣在玉楼前。名場早已占霊地。廟宇巍然三百年。
   伊達正宗
独眠煌煌光射人。遺姿尚見有精神。惜君徒賦東陬月。鉄馬不吟上国春。
   衣川懐古
数世名流一代雄。古祠留得路西東。千秋不尽衣川水。尚見愁波向朔風。
   平泉懐古二首
山勢猶看扼朔方。追懐往事客愁長。判官館接中尊寺。無復人祠吉次郷。
韜踪鞍馬僅存身。誰使王孫回九春。鉄賈若無当日計。牛郎不免乱離人。
   詣源判官祠
一撃先清輦轂塵。流離再投旧知人。誰言薄命為終始。殊域別存未死神。
   還暦 明治三十三年
頓驚節序又加新。塵界何辺養我真。今是昨非都若夢。徒迎六十一年春。
   北越途上
汽笛一声人入煙。崎磯修短幾山川。映眸豈啻能州景。雲外又看靺鞨天。
   賀古河翁加冠
休言老去更加冠。齢近古稀仍壮顔。天佑羨君多景運。福如東海寿如山。
   新潟竹枝三首
濃水汪洋入海流。長橋尽処是揚州。白頭狂杜重来宿。十五年前旧酒楼。
園林雨後絶塵埃。節近清和軽暑催。花信却疑無秩序。桜花杏李一時開。
小院午静碧紗新。幽草緑陰最可人。不惜薫風紅紫褪。桜桃以外別存春。
   飯盛山懐古
誰使忠魂付水漚。残塋詣到涙痕稠。無情最是東山月。長照当年血髑髏。
   還家
 - 第29巻 p.232 -ページ画像 
垂楊梨花十日程。薫風吹袂旅魂清。小游莫怪多韻事。到処江山訂旧盟。
   韓国雑吟
    釜山鎮懐古
懸軍想昔扼嶙峋。尚見古塁護要津。只惜厳霜専粛殺。却忘滋雨潤斯民。
    京仁鉄道途上即事二首
曲浦長橋鉄路平。車窓載夢向京城。曠原秋尽風蕭寂。汽笛時成虎吼声。
復与韓山訂旧盟。客中光景総関情。重来頓喜行程速。旬日三回入帝京。
    上倭将台
霜満南山落木紛。遺蹤尚見銷愁雲。漢城日暮西風急。憶起当年鬼将軍。
    書感
八道何辺認帝猷。居民只見事優游。嵯峨山岳汪洋水。却使行人促覇愁。
    輓藍香尾高先生二首 明治三十四年
人間何処認清姿。夢破春宵玉漏遅。長憶藍香書院夕。庭前秉燭学詩時。
酬和追随五十年。今宵道骨絶塵縁。憶君格物致知学。応向九原開別天。
   航西雑詩 明治三十五年
    臨発有作
僅理旅装意転清。欧雲米水幾行程。不嫌言語欠明解。好与江山訂旧盟。
    太平洋航海中偶成二首
掃除塵事出京城。又試鵬程万里行。回首忙閑如隔世。船窓尽日聴濤声。
火輪一路向東馳。地転天旋斗柄移。莫道青年難重遇。有斯一日再来時。航海中重逢五月二十日蓋航太平洋者数理上必重一日也
    巴里二首
一花一草総関情。触目山河皆旧盟。俯仰豈無今昔感。秋風吹夢入巴城。
那帝宮辺花闘紅。凱旋門外月横空。回頭三十年前事。都在有無依約中。
    武侖公園
那翁豪侈蹤銷沈。往事追懐涙満襟。愛此園林存故態。秋風尚護旧時陰。
    羅馬懐古
荒城廃苑昼蕭条。巨刹唯看護寂寥。児女尚知千古事。向人仔細説前朝。
    印度海上偶成二首
火雲映水水連空。一路片帆東復東。午夢覚来無個事。
 - 第29巻 p.233 -ページ画像 
閑移吟榻趁涼風。
漂蕩煙波旬日余。胡床静坐似僧居。閑中亦有忙機在。僅倦囲碁又読書。
    支那海上偶成二首
落日沈波天色昏。牀頭一夢覓無痕。火輪馳尽南清海。雲外青螺是厦門。
飛鳥倦来漸思還。船馳翠靄碧波間。今朝喧噪人争報。天末先看淡水山。
   病中偶成五首 明治三十六年
耳無糸竹目無書。一臥困頓旬日余。却笑此中禅味在。大迷想是大悟初。
蒼顔殊見鬢毛摧。宿痾中宵痛更催。辛苦擬忘塵外事。忽和暁夢入思来。
絶交簡篇半月余。人情世事両相疎。胸中唯有一経在。妙処随時自巻舒。
厭此憂愁多属身。養痾何処護吾真。可憐枕上蕭蕭夢。不趁煙波趁世塵。
安神知命豈無方。禅意観来甚杳茫。一臥三旬何所悟。笑他面壁九年長。
   賀松方伯古稀 明治三十七年
経綸夙見姓名揚。偉業功成能葆光。福寿君家何所似。宛然天保九如章。
   悼横山大尉戦死
勇士不忘喪其元。果看壮烈報 皇恩。無情大石橋頭月。空照精忠未死魂。
   喜日韓協約成賦呈統監伊藤貴爵 明治四十年
協約章成意浩然。政治修交両能全。好将巨海掣鯨手。枉向細流煮小鮮。
○下略


渋沢栄一 日記 明治一七年(DK290072k-0003)
第29巻 p.233-234 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治一七年     (渋沢子爵家所蔵)
芳園百卉競嬌姿。折得寒梅花一枝。多情今留瓶裏去。春風護否再遊時。
駒隙駸々年再移。来遊却恨誤佳期。牛王祠畔花凋落。緑葉成陰子満枝。
幽草緑陰尚勝春。白雲堆処一亭新。平生常恨年華促。客裏却看光景真。
   金泉楼即事
無復繊毫承俗紛。高楼眠覚已斜曛。添水蛍火捲簾見。隔岸蛙声歌枕聞。
幽草緑陰尚勝春。白雲堆処一亭新。平生未遇閑日月。客裏風光却属身。
   倉沢途上
浦々薫風送細漣。軽帆遠去杳如煙。雲意不知光景美。
 - 第29巻 p.234 -ページ画像 
半捲富峰未現巓。
   甲申六月来遊敦賀港賦似郷之豪族諸子
潮洗松根沙似氈。山光映水々連天。浦頭豈啻景勝富。湊合北溟来去船。
   汽車発敦賀抵長浜途上即事
山河満目感無窮。勝地尚看雲物豊。重畳峰巒透邐水。興亡当日幾英雄。
烏兎匆々年再移。来遊却恨誤佳期。牛王祀畔花蕭散。緑葉成陰子満枝。
  ○日記巻末ニ一括シアリ。


渋沢栄一 日記 明治一九年(DK290072k-0004)
第29巻 p.234-235 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治一九年     (渋沢子爵家所蔵)
   亀井戸観梅
池塘雨過緑参差。傍水多看売酒家。春暖菅公祠畔路。好携女伴探梅花。
  ○「青淵詩存」第三十九丁「年次不明」ニ所収。
   杉田観梅
幽禽声断寂春山。行到渓流凸凹間。一路清風香馥郁。梅花只作白雲看。
  ○「青淵詩存」第三十九丁「年次不明」ニ所収。
   春日遊江島
一邸一壑足幽情。嵐翠煙波三日程。休怪帰遺多好句。玆游奇絶冠平生。
  ○「青淵詩存」第三十九丁「年次不明」ニ所収。
   題大倉氏巡欧貿易意見書
論理縦横意有余。精神只向此篇舒。賈生当日治安策。輸与君家一巻書。
通商可講販鬻昌。起工開場豈無方。従来権勢縁民力。未必文明果富強。
  ○右ノ一首「青淵詩存」第三十八丁「年次不明」ニ所収。
   曖依村荘偶成
李白桃紅映窓紗、小院午閑細雨斜。好是泥濘妨行楽。軽寒数日護残花。
   仙石原矚目
雨洗峰巒緑樹新。原頭矚目総清真。最怡淡靄指蓮岳。猶見軽紗隔美人。
  ○「青淵詩存」第四十一丁「年次不明」ニ第二句以下「原頭光景総天真淡雲籠岳未全掩恰見軽紗隔美人」トシテ所収。
潮拍断岸砕如銀。一道如線架水浜。引到頓覚雲物改。軽車早過不知親。
   上田
山自秀霊水自清。重来無物不関情。任他今日少相識。只与閑鷗訂旧盟。
   帰家
 - 第29巻 p.235 -ページ画像 
一声汽笛促帰休。屈指遊蹤十四州。鴻爪春泥知幾処。幽情偏向越山稠。
   ○日記巻末ニ一括シアリ。


渋沢栄一 日記 明治三八年(DK290072k-0005)
第29巻 p.235 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治三八年     (渋沢子爵家所蔵)
一月十三日 少シク曇 軽暖
○上略
過日植村澄三郎氏ヨリ依頼セラレタル題麦酒ノ一絶ヲ賦ス(醸造芳醇別有方。盛来金粟郁余香。占春何啻蘭陵酒。勧此一杯琥珀光。)
○下略
   ○中略
一月二十一日 曇 風ナシ
○上略
曾テ植村氏ノ依托ニヨリ麦酒ニ題スル一絶ヲ賦シ之ヲ長谷川正直ニ諮リシニ同氏修正意見ヲ示サル
 醸造芳醇別有方。醗醅麦気満缸香。占春何啻蘭陵美。勧此盈々琥珀光。
  ○印ヲ付セシハ長谷川氏ノ修正シモノナリ。


渋沢栄一 日記 明治四〇年(DK290072k-0006)
第29巻 p.235 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治四〇年     (渋沢子爵家所蔵)
僑居好在半江湾。偸得春晴一日閑。笑我経綸談罷後。机辺書債積如山。
   ○右ハ一月三十一日ノ末尾ニアリ。前日ヨリ、栄一風邪ニテ就蓐ス。是日ハ「風邪全愈セサルヲ以テ褥中ニ在テ書類ヲ検閲シ、且諸方ヘ書状ヲ認ム」ト記ス。


竜門雑誌 第七九号・第二〇頁 明治二七年一二月 青淵先生の近作を得たれば左に掲く(DK290072k-0007)
第29巻 p.235 ページ画像

竜門雑誌  第七九号・第二〇頁 明治二七年一二月
  青淵先生の近作を得たれば左に掲く
    明治甲午冬病口癌医師来将施切断因賦一絶以自遣
少年豪侠気如雲。一剣欲支百万軍。豈料雄思銷尽後。衰顔因病見刀痕。
   ○中略
    寄井上伯駐在朝鮮京城
鶏林豈莫物華新。利用厚生妙在人。好是厳霜粛殺後。和風一道点陽春。


竜門雑誌 第一四七号・第三一頁 明治三三年八月 北越途上 青淵先生(DK290072k-0008)
第29巻 p.235 ページ画像

竜門雑誌  第一四七号・第三一頁 明治三三年八月
    北越途上        青淵先生
汽笛一声人入煙。崎磯脩短幾山川。映眸豈啻能州景。雲外又看䍪羯天。


竜門雑誌 第一四九号・第二二頁 明治三三年一〇月 ○賀古河翁加冠 青淵先生(DK290072k-0009)
第29巻 p.235 ページ画像

竜門雑誌  第一四九号・第二二頁 明治三三年一〇月
    ○賀古河翁加冠     青淵先生
 休言老去更加冠。 齢近古稀仍壮顔。
 天佑羨君多景運。 福如東海寿如山。
 - 第29巻 p.236 -ページ画像 


竜門雑誌 第一五一号・第三一頁 明治三三年一二月 ○韓国雑吟五首(DK290072k-0010)
第29巻 p.236 ページ画像

竜門雑誌  第一五一号・第三一頁 明治三三年一二月
  ○韓国雑吟 五首
   京仁鉄道途上即事     青淵先生
曲浦長橋鉄路平。車窓載夢向京城。曠原秋尽風蕭寂。汽笛時成虎吼声。
   同
復与韓山訂旧盟。客中光景総関情。重来頓喜行程速。旬日三回入帝京。
   釜山鎮懐旧
懸軍想昔扼嶙峋。尚見古塁護要津。只惜厳霜専粛殺。却忘滋雨潤斯民。
八道何辺認帝猷。居民只見事優游。嵯峨山岳汪洋水。却使征人促覊愁。
   上倭将台
霜満南山落木紛。遺蹤尚見鎖愁雲。漢城日暮西風急。憶起当年鬼将軍。


竜門雑誌 第一五二号・第一八頁 明治三四年一月 ○哭藍香尾高先生二首(DK290072k-0011)
第29巻 p.236 ページ画像

竜門雑誌  第一五二号・第一八頁 明治三四年一月
   ○哭藍香尾高先生 二首
                青淵先生
人間何処認清姿。夢破春宵玉漏遅。長憶藍香書院夕。庭前乗燭学詩時。
酬和追随五十年。今宵道骨絶塵縁。憶君格物致知学。応向九原開別天。


竜門雑誌 第一五六号・第三六頁 明治三四年五月 ○新潟竹枝 青淵先生(DK290072k-0012)
第29巻 p.236 ページ画像

竜門雑誌  第一五六号・第三六頁 明治三四年五月
   ○新潟竹枝        青淵先生
濃水汪洋入海流。長橋尽処是揚州。白頭狂杜重来宿。十五年前旧酒楼。
園林雨後絶塵埃。節近清和軽暑催。花信却疑無秩序。桜桃杏李一時開。
小院午静碧紗新。幽草緑陰最可人。不惜薫風紅紫褪。桜桃以外別存春。

   ○飯森山懐古       同上
誰使忠魂付水漚。残塋詣到涙痕稠。無情最是東山月。長照当年血髑髏。


竜門雑誌 第一六二号・第八頁 明治三四年一一月 ○青淵先生還暦祝賀会紀事(DK290072k-0013)
第29巻 p.236-237 ページ画像

竜門雑誌  第一六二号・第八頁 明治三四年一一月
 ○青淵先生還暦祝賀会紀事
   ○紀念扇面に写されたる青淵先生の詩歌
当日来会せられたる貴紳に向ひ紀念の為め贈られたる先生自作の漢詩は
 - 第29巻 p.237 -ページ画像 
 頓驚節序又加新  塵界何辺養我真
 今是昨非都若夢  徒迎六十一年春
   ○中略。
とありて、孰れも先生の筆跡を美麗なる扇面に写せるものにして実に真筆の観あり、而して他の片面には孰れも故滝和亭翁の手に成れる柏の画を着色印刷されたりと云ふ
   ○栄一ノ還暦祝賀園遊会ハ十一月二十三日、王子邸ニ催サル。本巻「還暦」ノ条参照。


竜門雑誌 第一六八号・第二八頁 明治三五年五月 ○欧米旅行途上口占(DK290072k-0014)
第29巻 p.237 ページ画像

竜門雑誌  第一六八号・第二八頁 明治三五年五月
    ○欧米旅行途上口占
                青淵先生
僅理旅装意転清。欧雲米水幾行程。不嫌言語欠明解。好与江山訂旧盟。
○下略


竜門雑誌 第一七〇号・第三六頁 明治三五年七月 ○太平洋航中偶成(DK290072k-0015)
第29巻 p.237 ページ画像

竜門雑誌  第一七〇号・第三六頁 明治三五年七月
    ○太平洋航中偶成
                青淵先生
掃除塵事出京城。又試鵬程万里行。回首忙閑如隔世。船窓尽日聴濤声。


竜門雑誌 第一七三号・第二一―二二頁 明治三五年一〇月 ○青淵先生より本社々長に宛てたる書翰(DK290072k-0016)
第29巻 p.237 ページ画像

竜門雑誌  第一七三号・第二一―二二頁 明治三五年一〇月
  ○青淵先生より本社々長に宛てたる書翰
   ○本文略。
  九月廿日
                          栄一
    篤二殿
倫敦の客舎にて一夜月のいときよく旅客の窓にさし入りければ
  ○和歌二首略。
 一邱一壑総関情。 相見山河皆旧盟。
 俯仰豈無今昔感。 秋風送夢入巴城。


竜門雑誌 第一七四号・第五八頁 明治三五年一一月 青淵先生の漢詩及狂歌(DK290072k-0017)
第29巻 p.237 ページ画像

竜門雑誌  第一七四号・第五八頁 明治三五年一一月
  ○青淵先生の漢詩及狂歌
   ○印度洋上偶成
火雲連水水浸空。一路孤帆東復東。午夢覚来無個事。閑移吟榻趁涼風。
放浪煙波旬日余。胡床静座似僧居。閑人自有忙機在。僅倦奕棊又読書。
   ○台湾海上偶成
落日沈波海色昏。牀頭一夢覓無痕。火輪行尽南清路。雲外青螺是厦門。
飛烏《(鳥)》倦来既思還。船馳翠靄紫微間。今朝喧噪人争報。天末先看淡水山。
 - 第29巻 p.238 -ページ画像 


竜門雑誌 第一八七号・第二五頁 明治三六年一二月 ○病中偶成(DK290072k-0018)
第29巻 p.238 ページ画像

竜門雑誌  第一八七号・第二五頁 明治三六年一二月
    ○病中偶成
                青淵先生
耳無糸竹目無書。一臥困頓旬日余。却笑此中禅味在。大迷想是大悟初。
蒼顔殊見鬢毛摧。宿痾中宵痛更催。辛苦擬忘塵外事。忽和暁夢入思来。
絶交簡篇半月余。人情世事両相踈。胸中唯有一経在。妙所随時自巻舒。
厭此憂愁多属身。養痾何処護吾真。可憐枕上蕭蕭夢。不趁煙波趁世塵。
安神知命豈無方。禅意観来甚杳茫。一臥三旬何所悟。笑他面壁九年長。


竜門雑誌 第一九八号・第三四頁 明治三七年一一月 ○悼横山大尉戦死(DK290072k-0019)
第29巻 p.238 ページ画像

竜門雑誌  第一九八号・第三四頁 明治三七年一一月
    ○悼横山大尉戦死
                渋沢栄一
勇士不忘喪其元。果看壮烈報皇恩。無情大石橋頭月。空照精忠未死魂。


竜門雑誌 第二三一号・第一七頁 明治四〇年八月 喜日韓協約成賦呈(DK290072k-0020)
第29巻 p.238 ページ画像

竜門雑誌  第二三一号・第一七頁 明治四〇年八月
   喜日韓協約成賦呈
   統監伊藤貴爵閣下
協約章成意浩然  政治修交両能全
好将巨海掣鯨手  抂向細流煑小鮮
              青淵渋沢栄一


青淵先生六十年史 竜門社編 第二巻・第九五八頁 明治三三年六月再版刊(DK290072k-0021)
第29巻 p.238 ページ画像

青淵先生六十年史 竜門社編  第二巻・第九五八頁 明治三三年六月再版刊
 ○第六十章 家庭
    第五節 宝光院伝
○上略
 悵然懐旧涙潜然  烏兎回頭已一年
 長憶曖依村荘夕  梧桐葉落雨如煙」
 長女已帰早挙児  小郎阿妹又遊嬉
 慇懃寄語九原路  家事復無異旧時」
○下略


青淵先生六十年史 竜門社編 第二巻・第九三一―九三六頁 明治三三年六月再版刊(DK290072k-0022)
第29巻 p.238-240 ページ画像

青淵先生六十年史 竜門社編  第二巻・第九三一―九三六頁 明治三三年六月再版刊
 ○第五十九章 雑事
    第二十四節 文辞
○上略
  詩
    伊達政宗
 - 第29巻 p.239 -ページ画像 
 独眼煢々光射人  遺姿尚見有精神
 惜君徒賤東陬月  鉄馬不吟上国春
    衣川懐古
 数世名流一代雄  古祠留得路西東
 千秋不尽衣川水  尚見愁波向朔風
    平泉懐古
 山勢長看扼朔方  追懐往事容愁長
 判官館接中尊寺  無復人祠吉次郷
    又
 韜踪鞍馬僅存身  誰使王孫大志伸
 鉄賈君無当日計  牛郎不免乱離人
    詣源判官祠
 一撃先清輦轂塵  流離再投旧知人
 誰言薄命為終始  殊域別存未死神
    桶挟間懐古《(狭)》
 長征直欲略京畿  一跌可憐心事違
 遺恨愛知原上月  猶看孤雁背人飛
    冬日過桶挟間
 路入小邱凸凹間  夕陽紅没暮雲還
 悲風落木霜威凛  月暗英雄埋骨山
    関原懐古
 籌定将軍樹纛牙  俄然西陣乱如麻
 可憐石豎見機拙  慢賭乾坤付大爺
    詣日光廟
 老樹森々高聳天  鐫金閣在玉楼前
 名場早已占霊地  廟宇巍然三百年
    詠岳呈静岡正二位公
 高風払尽世間塵  一白清姿逐歳新
 無復雲煙蔽標格  依然氷雪護天真
    富岳
 函山昨望峰頭雪  駿海今看光景真
 富岳与吾如骨肉  相迎相送遠游身
    将赴西京途上口占
 僅理旅装意便清  平安従是幾行程
 却嗤客路亦多事  到処江山訂旧盟
    興津途上矚目
 海雲半引岳雲還  薩陀浦頭曙色殷
 洲嘴途窮湾転処  月残清見寺辺山
    黒沢尻途上
 宿雨初晴新緑鮮  江村午暖地生煙
 白藤黄菜花多少  愛個郷園四月天
    宿生保内村
 緑樹成陰暁色幽  乱山四繞水西流
 風光自与京城異  六月初旬重客裘
 - 第29巻 p.240 -ページ画像 
    盛岡客中
 山自秀霊水自清  雅筵談熟酒頻傾
 高堂猶見召公沢  正似甘棠存旧情
    抵船川港
 雨歇頑雲未放山  望遥帆影有無間
 小游不恨風濤悪  探得北溟第一湾
    角間川途上
 行遍長松断続間  雨余沙滑路如刪
 暮煙遠抺群峰暗  一白只看鳥海山
    上田客次
 層嶂畳巒総有情  廿年来宿上田城
 相逢不怨少相識  好与江山訂旧盟
    神代楼雑詩
 楼対峰巒緑作堆  客窓淡愛絶塵埃
 閑雲出岫散還聚  忽向前山為雨来
    其二
 浴後清風涼徹裾  山窓恰好月来初
 閑人亦有消閑具  僅倦奕碁還読書
    金泉楼即事
 幽草緑陰尚勝春  白雲堆処一亭斜
 平生未遇閑日月  客裏風光却属身
    逸題
 細雨如煙暮景斜  離筵柳色影鬖髿
 京城従是春蕭寂  懶見牛王祠畔花
  ○文久三年ヨリ明治二年ニ至ル作詩ヲ参考トシテ左ニ掲グ。右以前ハ本資料第一巻ニ収ム。



〔参考〕青淵詩存 渋沢栄一遺著 敬三輯 第七―一三丁 昭和八年刊(DK290072k-0023)
第29巻 p.240-243 ページ画像

青淵詩存 渋沢栄一遺著 敬三輯  第七―一三丁 昭和八年刊
   辞家 文久三年
豈説紛紛世路難。此行誓欲斬楼蘭。男児為国辞桑梓。一任人成狂暴看。
   発江戸宿程谷
寂寂寒灯驚夢頻。海山従是幾酸辛。酔歌昨夜水西客。翻作孤衾于役人。
   望富岳
自是扶桑第一尤。崑崙不許説明儔。玲瓏高聳青霄裏。屹爾臨他五大洲。
   吉原
一角洲渚水作湾。海雲半引暁雲還。乾沙夾路総松樹。只自樹間看富山。
   由井
夾路林松送又迎。竹輿咿軋帯煙行。海山一碧天将暮。飽聴怒濤打岸声。
   岡崎
 - 第29巻 p.241 -ページ画像 
岡崎西去望漫漫。路在巨松断続間。従是神京知不遠。雲辺先認勢州山。
   入京
行行五十有三程。難奈帰心寸寸生。風雨蕭然逢坂路。満襟紅涙望神京。
   泊涙華
吐虹事逝歎帰歟。胸裏乾坤一巻舒。飄泊浪華城外夜。鯨灯紅下読家書。
   寧楽
祠前松柏寺前楼。遺趾猶看千古秋。児女能知旧帝都。向人仔細説来由。
   甲子元旦二首 元治元年
暁風吹雪漏声頻。楼外物光僅覚新。豈料天涯流落裡。又迎二十五年春。
曙色暉暉九陌新。客窓儘愛絶来賓。寸心遠在関山外。一搨枉迎京洛春。
   送石崎三鹿遊於淡路島二首
細雨如煙暮景斜。離筵柳色影鬖髿。京城従是春蕭寂。懶見牛王祠畔花。
緑意紅情娓娓新。図南幾日役精神。憐君搏虎擒竜手。枉探播山淡海春。
   題竹洞山水同石崎三鹿鈴木秋蘭賦
白雨半収山現巓。嵐光浮動一村煙。寺門僧去昼蕭寂。陣陣薫風緑満川。
   鴨涯春感七絶二首
芳霧綵雲無限春。雨余橋畔水声頻。東風隔岸翻紅袖。多是宴酣逃酒人。
孤灯宴散酒空醒。不識漏声已幾更。人定橋辺春夜寂。半簾残月水禽鳴。
   又七律二首
客裡匆匆春又来。自憐生意慰孤哀。軽風弄影橋辺柳。微雨吹香籬落梅。
夾水絃歌声断続。面楼山色翠崔嵬。摠為雲物解幽恨。更把覊愁入酒杯。
危楼高在碧流瀕。芳夢翠簾好絶塵。煙暖籬辺鶯語滑。雪消澗底水声頻。
多愁少歓天涯客。易雨難晴京洛春。宿酔覚来倚搨坐。又看隔岸探花人。
   失題
登臨且欲慰幽情。一望却憐万感生。巨刹高廊春満眼。斜風雨暗帝王城。
   別薩人三島某
分袂決然情奈何。離筵況復水三叉。秦楚従是路雖遠。要見洛陽晴後花。
   訪阪谷朗盧 慶応元年
芳雨彩雲随処新。此間転欲試吟呻。催来紅友為通刺。
 - 第29巻 p.242 -ページ画像 
先探君家無限春。
   寄大森子操用前韵
逢著頓驚意気新。興酣情緒却難呻。数行銀燭一簾雨。這裡知君別駐春。
   詠史
強将殊命試征行。臨別幾回歎彼蒼。夢裡蛟竜終不起。長教蛇蝎悩君王。
   留別富三二首
卸簦随処是吾郷。訂交幾旬又理装。偏愛君将折楊手。和他幽恨送征行。
客裡猶驚歳月遷。桃紅李白一年年。小留此際休言短。春自早鶯到杜鵑。
   別府手枕石
厭這風浪耳辺忙。懶向高廊供棟梁。夕霧暁嵐吹不起。畢生占得黒甜郷。
   詠史五首
権謀早已埣 皇基。一倒乾坤只自知。却怪私家経画拙。庖厨半具供他児。
欲覓父兄共追随。可憐棲鳥出巣時。夜来吹徹落梅曲。早被東風聖得知。
徒欲椰揄争一隅。危機再失豈天乎。英雄千古厭権略。却惜此公少覇図。
不怪余威窮日辺。自由斡地又旋天。雄図難久君休恨。手大不便煮小鮮。
将他席巻括嚢力。及我孤塁断壁隅。守備不全君莫笑。慣家末路見遺図。
   客裏秋懐二首
平生無夢到家郷。疎傲枉欽落帽郎。此際自驚還自難。三年客裡作重陽。
頓驚時節入新霜。帰思無由憶帝郷。催喚隣人強侑酒。酔来聊作小重陽。
   失題
西走東馳不暫休。危機蹉跌遂難収。経営却作自家計。又愧当年馬少游。
   聴琴
溌剌清絃好絶塵。悲音悽愴自伝神。当年設使有此曲。悩殺潯陽送客人。
   失題
不謂遠戌久隔年。多情元自在相憐。香閨有待衾如水。懶向紅雲暖処眠。
   捕魚図 慶応三年
風吹簑笠雨翻河。網裏捕魚知幾多。一夜子陵仙去後。好山好水奈渠何。
   自題小照
 - 第29巻 p.243 -ページ画像 
対鏡吾還疑我真。雪磨氷厲幾精神。浮華除却少年志。断髪也為学射人。
   偶成 明治二年
午夢覚来帰与濃。嫌他塵事悩疎慵。趁涼時向駿台望。又被頑雲遮富峰。
   星夕時同二三旧友飲于水西寺北某楼偶追懐曾遊不堪凄然也戯賦二絶以自慰並示同遊之客
児女凝粧競倚楼。家家修竹願糸稠。相逢今夜河辺夢。翻使幽人促客愁。
欲遣孤悶強挙扈。且看星斗漸相移。女郎不管這中恨。楼上高吟乞巧詞。
   書懐
翻雲覆雨太忽忙。回首世波真渺茫。七歳漫遊驚索莫。一場短夢歎滄桑。
推思来者事堪識。黙数既往亦断腸。満目残山兼剰水。懶追軽棹柳辺涼。
   又
維新偉績欲無痕。剔抉未知探本原。公議輿論果何用。千秋誰慰大寃魂。
   七月十三日瘴風癘雨共到会蘐水杉浦翁有詩所示因次其韻以自慰
雄志蹉跎鬢漸摧。厭聞巷議更喧豗。為伯為将任他幹。探柳訪梅独占魁。
人海竜驤還鼠竄。世途雨合又雲頽。狂風昨夜覆高厦。修理誰懐柱石寸。
   余之客滞于東京事関外務之末時雲物変移雖漸属隆盛之運然宿弊猶未全除吏胥或弄法事多抑滞瑣瑣鶏肋之事延至于六旬之久雖勢宣然而其煩悶鬱結亦可想耳矣会杉浦翁有詩所贈句中頗齎警誡孤憤之意致意慇懃厚情可掬也因次韵却寄
夙把浮華付幻塵。既灰心緒豈求伸。齎香休嫌牀頭画。山麝難薫物外身。客舎之壁常掲麝香之画原詩及之故云爾