デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

1章 社会事業
1節 東京市養育院其他
7款 滝乃川学園
■綱文

第30巻 p.383-392(DK300038k) ページ画像

大正9年9月(1920年)

是月、滝乃川学園、財団法人トナルニ当リ、栄一理事長ニ就任シ、歿年ニ及ブ。


■資料

青淵先生職任年表(未定稿) 昭和六年十二月調 竜門社編 竜門雑誌第五一九号別刷・第二一頁 昭和六年一二月(DK300038k-0001)
第30巻 p.383 ページ画像

青淵先生職任年表(未定稿) 昭和六年十二月調  竜門社編
                竜門雑誌第五一九号別刷・第二一頁 昭和六年一二月
    大正年代
 年  月
 九  九― 財団法人滝乃川学園理事長―昭和六、一一。


(門馬常次) 書翰 竜門社宛 昭和九年一二月一〇日(DK300038k-0002)
第30巻 p.383 ページ画像

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財団法人滝乃川学園寄附行為 刊(DK300038k-0003)
第30巻 p.383-387 ページ画像

財団法人滝乃川学園寄附行為  刊
石井亮一ハ精神薄弱者ノ学理的研究並其ノ保護教養施設ノ健全ナル発達ヲ冀望シ、玆ニ三十年間経営シ来レル旧滝乃川学園所属ニ係ル別紙目録ノ財産ヲ寄附シテ、同志援助ノ下ニ財団法人滝乃川学園ヲ設立シ其ノ寄附行為ヲ定メタルコト左ノ如シ
    財団法人滝乃川学園寄附行為
      第一章 名称
第一条 本財団法人ハ滝乃川学園ト称ス
      第二章 目的及事業
第二条 本学園ハ精神薄弱者ニ対スル教育医療養護ノ施設審査鑑別並ニ斯業ノ普及発達ヲ図ルヲ以テ目的トス
第三条 前条ノ目的ヲ達スル為メ本学園ノ行フ事業ノ概目左ノ如シ
     一、保護教養所ノ設立経営
     一、研究所ノ設立経営
     一、審査鑑別
     一、保護事業従事者ノ養成
     一、其ノ他前条ノ目的ヲ達スル為、特ニ必要アリト認ムル事項
      第三章 事務所及支部
 - 第30巻 p.384 -ページ画像 
第四条 本学園ハ事務所ヲ東京府北豊島郡西巣鴨町字巣鴨百二十六番地ニ置ク
   本学園ハ理事会ノ議決ヲ経テ必要ノ地ニ支部ヲ設クルコトアルベシ
      第四章 資金及会計
第五条 本学園ノ資産ハ左記各項ヨリ成ル
     一、設立者ノ寄附シタル別紙目録ノ財産
     一、設立後受クルコトアルベキ寄附金品
     一、事業ニ伴フ諸収入
     一、其ノ他ノ雑収入
第六条 本学園ノ資産中現金ハ之ヲ確実ナル銀行又ハ郵便官署ニ預入シ、若クハ国債証券其ノ他確実ナル有価証券ヲ購入シテ管理スルモノトス、但シ必要アル場合ハ不動産ヲ買入ルヽコトヲ得
第七条 本学園ノ経費ハ資産ヲ以テ之ヲ支弁ス、但シ全資産ノ内少クトモ金十五万円若クハ是ノ金額ニ相当スル不動産ヲ基本財産トシテ永久ニ之レヲ維持スベシ
第八条 本学園毎年度経費ノ歳入出予算ハ理事会ノ議決ヲ経テ之ヲ定メ、決算ハ其ノ認定ニ附スルモノトス、決算ニハ其ノ年度ノ事業成績報告書及財産目録ヲ添附スベシ
   前項ノ予算決算書其ノ他ノ書類ハ之ヲ事務所ニ備ヘ置キ、維持員ノ求メアルトキハ閲覧セシムベキモノトス
第九条 本学園ノ会計年度ハ毎年四月一日ニ始マリ翌年三月三十一日ニ終ル
     第五章 役員及会議
第十条 本学園ハ維持員十名以上百名以内、理事十名以内ヲ置ク
第十一条 維持員ハ理事会ノ議決ヲ経テ理事長之ヲ推薦ス
   理事ハ維持員総会ニ於テ維持員中ヨリ之ヲ選挙ス 但シ補欠選挙ノ場合ニ在リテハ理事会ニ於テ之ヲ行フ
第十二条 理事ノ任期ハ四年トス 但シ再任ヲ妨ゲズ
   補欠理事ノ任期ハ前任者ノ残任期間トス
   維持員ノ任期ハ終身トス
第十三条 理事中一名ヲ理事長、二名ヲ常務理事トシ、理事ノ互選ニ依リ之ヲ定ム
第十四条 理事長ハ本学園ヲ代表シ理事会・維持員総会ヲ招集シ及其ノ議長トナリ理事会ノ議決ニ基キ事務ヲ総理ス、理事長事故アルトキハ其ノ指名ニ依リ他ノ理事之ニ代ル、理事長ハ其ノ職務ノ一部ヲ常務理事ニ委任スルコトヲ得
   常務理事ハ理事長ヲ輔佐シ其ノ命ヲ承ケテ常務ヲ処理ス
第十五条 維持員総会ハ四年毎ニ之ヲ開ク、第十一条第二項ノ場合ニ於テ維持員総会ニ出席スルコト能ハザルモノハ書面ヲ以テ選挙ヲナスコトヲ妨ゲズ
第十六条 選挙ハ有効投票ノ多数ヲ得タル者ヲ当選者トス、得票同数ナルトキハ抽籤ヲ以テ之ヲ定ム 但シ会議ノ決議ヲ以テ指名推選ノ方法ニ依ルコトヲ得
 - 第30巻 p.385 -ページ画像 
第十七条 第十条ニ定ムル役員ノ外、本学園ニ顧問・相談役・学園長研究所長其ノ他必要ナル職員ヲ置クコトヲ得
      補則
第十八条 本学園ノ事務執行ニ必要ナル細則ハ別ニ之ヲ定ム
第十九条 本寄附行為ハ理事総員ノ同意ヲ得、主務官庁ノ認可ヲ受クルニアラザレバ、之ヲ変更スルコトヲ得ズ
        附則
本法人創立ノ際ニ於ケル当初ノ理事ハ設立者之ヲ選任ス
  大正九年五月十九日
                     右設立者
                      石井亮一
    滝乃川学園財産表
          (大正九年五月現在)
   一、現金之部
 基本金   金参千五百円也
      基本金ノ一部ハ国庫債券ヲ以テ、一部ハ銀行定期預金トシテ保管セリ
 建築資金  金四千円也
      寄宿舎建築資金トシテ現金保管中
   二、不動産之部
 土地    四千二百七十八坪
      所在 東京府北豊島郡西巣鴨町大字巣鴨
      価格 金拾七万千百弐拾円也
 建物    四百六拾八坪
      価格 金弐万参千四百円也
   三、動産之部
 器具器械  価格 金六千三百五拾円也
 電話    同  金千六百二円三拾銭也
 養蚕用具  同  金二千五百円也
 印刷所   同  金五万円也
    総価格 金六万四百五拾弐円参拾銭也
   四、資産総額
 資産総額  金弐拾六万弐千四百七拾弐円参拾銭也
右之通リ相違無之候也
  大正九年五月十九日
                財団法人滝乃川学園設立者
                      石井亮一
    滝乃川学園規則
第一条 当学園は精神の発達障礙顕著なる児童の教育保護を以て目的とす
第二条 教育上の必要に依り入園者は凡て寄宿生たるべし
第三条 入園者は左記の者に限る
  一 年齢六歳以上十五歳以下
  二 入園審査に合格せる者
 - 第30巻 p.386 -ページ画像 
第四条 入園志願者は、本園より送附せる審査報状第一号第二号用紙に指定せる条目にペン若くは毛筆にて明亮に記入し、親展書として学園長石井亮一宛に差出さるべし
第五条 入園審査に合格せる者は、校舎の許す限り何時にても入園することを得べし
第六条 入園者は、其保護者たるべき戸主一名東京市内に一戸を構へたる十年以上の男子一名を保証人として、左の書式に従ひ入園委托証を差出さるべし
      入園委托証
               何府県何郡市町村番地族籍
  参銭収入印紙
                     氏名
                        生年月日
  右之者今般貴学園へ教育御委托致候に就ては本人一身上の事は拙者其責任を負担致すべく、且又万一不慮の異変相生じ候共、決而苦情申出間敷、依て本証書差入置候也
            本籍及現住所
    大正 年 月 日      保証人 氏名(印)
                     職業及本人との続柄
      滝乃川学園 御中
第七条 保証人の氏名住居等に異動ありたる時は直に届出でらるべく又他人に変更したる時は更に証書を差出さるべし
第八条 休学若くは退学せんとする者は、其旨保証人より届出でらる可し
第九条 衣類・寝具は清潔を主とし、屡洗濯に耐ふる品質を選み携帯さるべし
第十条 必要品の外は成るべく携帯品を減少し、且つ高価なる貴重品は携帯せしめざる様注意ありたし
第十一条 生徒の所持品は委托者より其目録を添へて差出さる可し
第十二条 前条の手続を経たる物品は本学園に於て保管の責任を有すべし、但し天災事変又は当人の行為により毀損したる時は本学園其責に任せず
第十三条 外来見舞人は本学園の承諾を経ずして何物をも生徒に渡す可からず、若し該条違犯により事故を生じたる時は、本学園其責任を有せず
第十四条 学費は当分左の如く定む
  園費毎月    金参拾円(二日以上帰宅する者は日割を以て園費を戻す)
  園費とは賄料・教育治療費・監督費・室料・菓子・硯墨筆紙・鉛筆・塵紙・石鹸・歯磨・楊子・斬髪・元結油・入浴・煖温等の諸費を云ふ
   但牛乳及薬用品等を要する時は、別に其費用を申受くることあるべし
   特に看護者を要する時は別に其費用を申受くることあるべし
第十五条 園費は毎月五日迄に前納さるべし
  送金は凡て振替貯金口座東京第参四壱四番に払込まれたし
 - 第30巻 p.387 -ページ画像 
   但し月々の送金を不便とせらるゝ向は数ケ月分を纏めて預け置かるゝも妨げなし
第十六条 父兄若くは保証人の紹介なき者は生徒に面会を謝絶することあるべし
第十七条 本学園に於ては、精神薄弱児童の智能の審査鑑別の依頼に応ず
第十八条 審査鑑別を依頼せんとするものは、本学園規定の審査報状第一号第二号用紙に明亮に記入して提出せらるべし


滝乃川学園寄附金募集依頼状(DK300038k-0004)
第30巻 p.387 ページ画像

滝乃川学園寄附金募集依頼状      (門馬常次氏所蔵)
拝啓、益御清適奉賀候、然者滝乃川学園は明治二十四年石井亮一氏之創立せる所にして、爾来惨憺たる苦心の下に独力経営致来候も、大正九年に至り時勢之進運に鑑ミ組織を更めて財団法人となし、篤志者之援助を得て其規摸を拡張し、現に精神薄弱者の養護・医療、及其学理的研究を目的とする機関としては、本邦唯一のものと称するも敢て過言に無之と存候
然るに本事業は世事の日に繁激なると共に、精神薄弱者の漸次増加するに従ひ必要の度を加へ候為め、縦令欧米に於る如く国家事業として壮大完備の経営は遽に希望し得さるまても、せめては本学園をして適当の発達を遂け、学理実際聯絡調和之域に達し度と、常に焦心苦配致候へとも、未た所期を距ること遠く、甚以て遺憾とする所に御座候、就て私共一同種々熟議之結果、本学園内部の整理と共に研究所及病室の新築並に農事施設に充つる為め、此際大方有志諸君之御賛同を請ふて金八万円を募集仕度と存候間、事情御諒察之上御同情被下、同封寄附金申込書を以て御申込被下度候、依而別紙募集趣意書相添此段拝願仕候 敬具
  大正十一年九月
                  財団法人滝乃川学園
                  理事長 渋沢栄一
   ○別紙募集趣意書・寄附金申込書ヲ欠ク。


集会日時通知表 大正六年(DK300038k-0005)
第30巻 p.387 ページ画像

集会日時通知表  大正六年        (渋沢子爵家所蔵)
九月十三日(木)
午前九時 滝の川学園御参観(安達養育院幹事御同伴)


集会日時通知表 大正一一年(DK300038k-0006)
第30巻 p.387 ページ画像

集会日時通知表  大正一一年       (渋沢子爵家所蔵)
五月十五日  正午   滝乃川学園理事会(同園)
   ○中略。
十一月十四日 午前九時 滝野川学園理事会(同学園)
   ○中略。
十一月三十日 午後二時 滝野川学園へ御出向


竜門雑誌 第四一六号・第五九頁 大正一二年一月 ○滝乃川学園へ御成り(DK300038k-0007)
第30巻 p.387-388 ページ画像

竜門雑誌  第四一六号・第五九頁 大正一二年一月
○滝乃川学園へ御成り 山階若宮殿下並に同妃殿下には、十一月三十
 - 第30巻 p.388 -ページ画像 
日午後二時三十分青淵先生の理事長たる財団法人滝乃川学園に御成あり、先生の御先導にて園内隈なく御巡覧の上、園庭に桂木を御手植遊ばされ、御少憩の後、午後四時三十分御帰還相成りたる由。


渋沢栄一 日記 大正一二年(DK300038k-0008)
第30巻 p.388 ページ画像

渋沢栄一 日記  大正一二年     (渋沢子爵家所蔵)
二月二十五日 曇 寒
○上略 門馬常次氏来リテ、滝野川学院寄附金ノ事ヲ協議ス ○下略


集会日時通知表 大正一二年(DK300038k-0009)
第30巻 p.388 ページ画像

集会日時通知表  大正一二年     (渋沢子爵家所蔵)
六月廿二日 午後三時 滝野川学園ノ件(銀行クラブ)
   ○中略。
六月三十日
午前十一時滝野川学園催新聞記者招待会(同園)


集会日時通知表 大正一三年(DK300038k-0010)
第30巻 p.388 ページ画像

集会日時通知表  大正一三年     (渋沢子爵家所蔵)
六月三日 午前九時 滝乃川学園理事会(銀行クラブ)


渋沢栄一 日記 大正一四年(DK300038k-0011)
第30巻 p.388 ページ画像

渋沢栄一 日記  大正一四年     (渋沢子爵家所蔵)
二月二十日 晴 寒
○上略 滝野川学園戸所氏来訪、委任状ヲ交付ス ○下略


渋沢栄一 日記 大正一五年(DK300038k-0012)
第30巻 p.388 ページ画像

渋沢栄一 日記  大正一五年     (渋沢子爵家所蔵)
一月三十日 曇後晴 寒
○上略 麻生正蔵氏来リ ○中略 結城氏会見ノ際、児童研究所寄附金ノ事ヲ談ス ○下略
   ○中略。
二月十二日 晴 寒
○上略 滝野川学院ヘ宮内省・内務省等ヨリ下賜金アリテ、掛員来リ其事ヲ報告シ、受入ノ手続ヲ為ス ○下略


集会日時通知表 大正一五年(DK300038k-0013)
第30巻 p.388 ページ画像

集会日時通知表  大正一五年     (渋沢子爵家所蔵)
六月廿九日 午后四時 滝野川学園理事会(銀行クラブ)
   ○中略。
十月廿五日 午后四時 滝野学園理事会《(川脱)》(事務所)


集会日時通知表 昭和二年(DK300038k-0014)
第30巻 p.388 ページ画像

集会日時通知表  昭和二年      (渋沢子爵家所蔵)
七月七日 午後三時 滝乃川学園相談会(永楽町事務所)


渋沢栄一 日記 昭和三年(DK300038k-0015)
第30巻 p.388 ページ画像

渋沢栄一 日記  昭和三年     (渋沢子爵家所蔵)
二月二十四日 晴 寒気厳ナラズ
○上略 滝野川学院ヘ東京府ヨリ下賜金ノ件ニ付、戸所氏来リ委任状ヲ捺印交付ス ○下略


財団法人滝乃川学園寄附金募集趣意書 同学園臨時維持会編 昭和六年七月刊(DK300038k-0016)
第30巻 p.388-390 ページ画像

財団法人滝乃川学園寄附金募集趣意書
 - 第30巻 p.389 -ページ画像 
            同学園臨時維持会編  昭和六年七月刊
    財団法人滝乃川学園寄附金募集趣意書
謹啓 財団法人滝乃川学園は、明治廿四年石井亮一氏の創設する所に有之、爾来その独力を以て経営し来れるものに候処、大正九年財団法人に改め、現在に於ては、子爵渋沢栄一氏理事長として学園を代表し石井亮一氏学園長として経営の任に当り居り候。
 同学園は、精神の正常なる発達をなす能はざる児童に対する教育・医療・養護の施設、審査鑑別、並に斯事業の普及発達を図るを目的とし、この目的を達する為め、施行する所の事業、大体次の通りに御座候。
 一、保護教養所の設立経営
 一、研究所の設立経営
 一、児童の審査鑑別
 一、保護事業従事者の養成
 一、その他学園の目的を達するに必要なる事項
 而して、大正十年東京府の委托により、その代用児童研究所としてひろく一般異常児の審査鑑別を開始し、すべて無料を以て公私の施設並に個人よりの依頼に応じ居り候。
 その後同学園に於ては、時勢に鑑みて事業の拡張を企図し、府下北多摩郡谷保村に地を卜して、こゝに校舎及び寄宿舎を建築し、又附属農園設置のため、千葉県三里塚なる御料牧場の一部六万九千六百七十三坪を学園事業の為め特別の御詮議を以て御払下の事と相成候。
 然るに近年一般経済界の不況に遭ひ、その影響を受けて、予定の歩を進むるを得ざるのみならず、経営の上にも頗る困難を告ぐるに至り候こと、斯事業のため甚だ遺憾の次第に御座候へども、こは本事業の経営が一般篤志家の寄附に待たざるを得ざる性質のものにこれあり、誠に已むを得ざる事と存ぜられ候。
 唯、同学園に於ては、旧来の敷地市外西巣鴨町所在四千二百七十八坪の中約三千五百坪の土地を売却してそれぞれの費に充て、将来にも備へ候やう計画を立て居り、之が実現の暁には学園の財政も大に緩和可致次第に候へども、今日の場合予定の如く運ぶを得ず、同学園にとりては創設以来の一大難関に逢着いたし候次第にて、当事者の苦慮心労同情に堪へず、玆に篤志諸君の高情に訴ふるに至り候儀に御座候。
 就之同学園の当面の急を救ひ、これをして本来の使命を達し有終の美を成さしめ度候間、何卒実情御酌量、別記の方法に拠り何分の御寄附たまはり度、御賛成の程奉希候
                          敬具
  昭和六年七月
               財団法人滝乃川学園臨時維持会
                   発起人(五十音順)
                      内田嘉吉
                      大橋新太郎
                      武田秀雄
                      松本烝治
 - 第30巻 p.390 -ページ画像 
                      大橋かう子
                      黒川豊子
                      坂井乙名
                      長谷川仲子
                      穂積歌子
                      堀江義子
                      増田浪江



〔参考〕同方会誌 第三四号・第四五―四六頁 明治四三年一〇月一五日 滝の川学園(DK300038k-0017)
第30巻 p.390-391 ページ画像

同方会誌  第三四号・第四五―四六頁 明治四三年一〇月一五日
○滝の川学園 近時低脳児教育といふ事は漸く教育学者間の問題となりしも、之がために設けられたる特殊教育の学校としては石井亮一氏の独立経営に成る滝の川学園のみなり、而して氏は低脳児以上の薄命児なる白痴の教育をなせり、学園は上毛線王子駅にて汽車を下り左へ畑中の細道を行くこと七・八丁、下瀬火薬庫を右手に見たる左方に敷地八百坪余、建物凡そ五十坪、収容せられたる園児の現員五十二名、年齢は目下八歳を最幼児とし以上廿二・三歳迄なり、教員は総て女子にて廿四名なるが教員とはいふものゝ普通の教壇に立つものとは異なり、保姆となり看護婦となり慈母となり下女となりて、頭より足の爪先迄世話を要するが故に骨の折れる事一通りに非ず、創設は明治廿四年にて最初は岐阜・愛知二県の大震災の際の孤児を収容して孤女園と称したりしが、其の孤女を教育し行く中に一人の白痴児有り、大に教育に骨の折れたるのが抑石井氏をして白痴児教育に趣味を感ぜしめし動機なり、無論白痴児のことなれば十分なる成果を挙げ得べき筈なけれども、中学程度まで進みしもの一昨年一人今年四人あり、又今春は退園して結婚したる女子一人あり、普通に裁縫をなし得るやうになりて退園せし女子もあり、曾て暦を暗記し汽車の発着時間を暗記して誤らぬといふ記憶力のみ特殊の発達をせし者ありしも、今は東京市内の某薬種店の丁稚となり、あまたの薬壜の在所を暗記して大に調宝がられ居れりと、白痴の原因は親の酒毒・黴毒及び懐妊中の母の情態によるもの最も多く、之に次では脳膜炎、頭部の打撲等なるが、現状に就て言へば癲癇性の者過半なり、入園児童の学資は一箇月十五円、教育に要する調度雑品は悉皆学園より給与す、入園児童は勿論中等以上の家庭の児童にて、富豪貴族の児童も少からず、白痴児の意思の薄弱なることは譬ふる物なきほどにて、在園児童中自ら顔を洗ひ衣服を着得る者八人に過ぎずして、何ことにも一々衝動を与ふることを要す、寄宿舎は六畳一室に三人、之に教師一人宛附添ふ、教育は先づ官能四肢の練習より始まる、官能四肢の練習終つて後に幼稚園科・小学科・中学科と次第に進む、教授は一人一人に脳の疲労程度を測定して教授を定む、一人の教授時間長きは四十分間短きは四分間、此測定程度を少しにても超越すれば生徒は忽ち躁暴状態に陥りて少しも命を用ゐずといふ、二・三人を除く外音楽に興味を持たぬ者なく、如何に攫み合ひて争ひ居る場合にても隣室にて風琴を鳴らせば忽ち中止す、人相は概して顱頂の発達乏しくして、顋著るしく尖れり、フヱノロジーにて顱頂は自尊心・強硬心の部位とし、アストロジーで顋は意力の表示なり
 - 第30巻 p.391 -ページ画像 
と説くこと当れるが如し、憶病・卑屈は白痴児の特性なりといふべきなり



〔参考〕財団法人滝乃川学園要覧 昭和一〇年五月刊(DK300038k-0018)
第30巻 p.391 ページ画像

財団法人滝乃川学園要覧  昭和一〇年五月刊
一、所在(一)本学園児童研究所―東京市豊島区西巣鴨四丁目一二六
    (二)本学園校舎及寄宿舎―東京府下北多摩郡谷保村谷保六三一二
二、沿革 本学園は明治廿四年十二月石井亮一氏の創立する所にして大正九年九月その組織を変更して財団法人となし、子爵渋沢栄一氏理事長として学園を代表し、石井亮一氏学園長として園務を総理することゝなる。昭和三年八月廿五日児童研究所及附属印刷所を従来の所在地東京市豊島区西巣鴨町に存置し、新に府下北多摩郡谷保村大字谷保に約八千坪の地を得、寄宿舎・校舎礼拝堂・職員住宅等を新築してこゝに移転せり。
三、財団法人 設立者は精神の正常なる発達をなす能はざる児童の学理的研究、並にその保護教養施設の健全なる発達を冀望し、この卅年間経営し来れる旧滝乃川学園に属する資産を挙げて寄附行為を定め、財団法人を設立せるものなり。
四、理事会 大正九年九月財団法人組織となるや、子爵渋沢栄一氏理事長となり、藤瀬政次郎・武田秀雄・阪井徳太郎・大野孫平・小林彦五郎・杉浦義道・門馬常次の七氏理事となり、杉浦・門馬二理事常任となる。昭和二年藤瀬理事逝去、昭和五年杉浦理事逝去、昭和六年渋沢理事長逝去、昭和八年内田理事逝去、昭和十年三月男爵渡辺汀氏及大堀市治郎氏理事となる。
五、資産
  土地及建物
    西巣鴨所在
    谷保村所在
  器具器械 電話
六、目的及事業 本学園は精神の正常なる発達をなす能はざる児童に対する教育・医療・養護の施設、審査鑑別、並に斯業の普及発達を図るを目的とし、この目的を達するため本学園に於て行ふ事業の概目左の如し。
   一、保護教養所の設立経営
   二、研究所の設立経営
   三、審査鑑別
   四、保護事業従事者の養成
   五、その他本学園の目的を達するに特に必要と認むる事項
○下略



〔参考〕北豊島郡総覧 第一版 西・第九頁 昭和六年三月刊(DK300038k-0019)
第30巻 p.391-392 ページ画像

著作権保護期間中、著者没年不詳、および著作権調査中の著作物は、ウェブでの全文公開対象としておりません。
冊子版の『渋沢栄一伝記資料』をご参照ください。

〔参考〕財団法人滝乃川学園収容人員統計(DK300038k-0020)
第30巻 p.392 ページ画像

財団法人滝乃川学園収容人員統計      (財団法人竜門社所蔵)

図表を画像で表示財団法人滝乃川学園収容人員統計

  年度     人員  先年度末人員  年度内入   同出   年度末現在 大正 十年度   三四      一一     四    四一 大正十一年度   四一       六     五    四二 大正十二年度   四二       一     九    三四 大正十三年度   三四       四     五    三三 大正十四年度   三三      一一     七    三七 大正十五年度   三七       三     三    三七 昭和 元年 昭和 二年度   三七       二     七    三二 昭和 三年度   三二      一一     五    三八 昭和 四年度   三八       八     三    四三 昭和 五年度   四三       八     六    四四 昭和 六年度   四五      一二     九    四八 昭和 七年度   四八       三     四    四七 昭和 八年度   四七       九     七    四九 昭和 九年度   四九      一一     五    五五 昭和 十年度   五五       七     七    五五 昭和十一年度   五五      一〇     五    六〇 昭和十二年度   六〇      一七    一一    六六 昭和十三年度   六六      二一    二一    六六 昭和十四年度   六六      三二    二〇    七八 合 計     八六二     一八七   一四三   九〇六 昭和十六年度一月三十日現在                九一 


  備考 大正十年度以前ハ出火書類焼夫ノタメ不明
   ○右ハ財団法人滝乃川学園収容人員統計資料ニ関スル編纂係ノ問合セニ対シ同園ヨリ回答サレルモノナリ。