デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

大正12年6月29日（1923年）

是ヨリ先、大正十一年四月ノ地震ノタメ留日中華基督教青年会ノ建物破損ス。当会ハ伊集院彦吉及ビ栄一等ノ協力ヲ得テ、対支実業懇話会会員タル、各会社ノ寄付金四万円ヲ得テ修理ニ着手シ、是日其落成式ヲ挙グ。栄一出席シテ祝詞ヲ述ブ。

集会日時通知表　　大正一二年　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
六月十七日　日　正午　日華学会ノ件（東京会館）
　　○中略。
六月廿九日　金　午後三時　中華留日基督教青年会々館落成式（北神保町十同会館）

竜門雑誌　　第四二二号・第六四―六五頁大正一二年七月
○中華留日基督教青年会館修築落成式　中華留日基督教青年会館修築落成式は六月二十九日午後三時より神田区北神保町なる同会館に於て挙行せられ、馬総幹事の挨拶並に報告の後、内田外相・米国大使の祝詞代読あり、最後に青淵先生は「目下支那本国に於ては排日運動旺んにして、忌はしき報道を耳にするも、それはそれとして今回日本人の尽力に依りて留日学生諸君の為めに会館の修築落成を告げたるは洵に喜ばしき事なり」とて論語の章句を引用せられ、日支親善の一日も忽にすべからざる所以の祝詞演説ありて盛会裡に散会せる由なり。

財団法人日華学会第八回年報　自大正十三年四月至大正十四年三月　第四一頁大正一四年八月刊
　　　　既往ニ於テ本会ガ為シタル重ナル事項
○上略
一、留日中華基督教青年会ハ明治四十年ノ創立以来、基督教ノ精神ニ則リ在留学生ノ人格向上ニ務ムルノ傍ラ、学生唯一ノ社交機関トシテ使用セラレシガ、大正十一年四月震災ニ罹リ建物大破損ヲ蒙リ会務ヲ中止セザルヲ得ザルニ至リタルヲ以テ、同会復旧工事費募集方ニツキ同会ノ創立者王正廷及ビ在上海同会総本部総幹事余日章両氏ヨリ依頼アリタルト東京在任ノ同会幹事馬伯援氏ヨリ依頼アリタルニ依リ、本会ハ理事会ヲ開キ先ツ金壱万円ヲ寄附スルコトニ決議シ伊集院男爵・渋沢子爵・本会理事等ノ協力ヲ得テ、日華実業協会援助ノ下ニ寄附ヲ募リ、対支実業懇話会員タル各会社ヨリ多大ノ同情寄附ヲ受ケ所要工費金四万円ヲ得ルニ至リ、大正十一年末起工、大
 - 第36巻 p.129 -ページ画像 
正十二年四月大修繕完ク成リ六月二十九日其ノ落成式ヲ挙ゲタリ。於此同青年会ハ再ビ従前ノ如ク事業ヲ継続スルコトヲ得、在留学生ノ喜ビハ元ヨリ、一般中国人モ深甚ノ謝意ヲ表明シ居レリ
○下略

財団法人日華学会第十四回年報　自昭和五年四月至昭和六年三月　第六―七頁昭和六年六月刊
　　　　既往ニ於ケル重ナル事項
○上略
一、留日中華基督教青年会ハ明治四十年創立以来、基督教ノ精神ニ則リ在留学生ノ人格向上ニ努ムル傍ラ、学生唯一ノ社交機関トシテ使用セラレシカ、同会建物（三階建木造）ハ大正十一年四月地震ノ際煙突倒壊シ大破損ヲ蒙リ、会務ヲ中止セザルヲ得ザルニ至リタルヲ以テ、同会復旧工事費募集方ニツキ同会創立者ノ一人王正廷及ビ在上海同会総本部総幹事余日章ノ両氏ヨリ依頼アリタルト、東京在住ノ同会幹事馬伯援氏ヨリ懇請ヲ受ケタルニ依リ、本会ハ理事会ヲ開キ協議ノ結果、先ツ金壱万円ヲ寄附スルコトニ決セリ。尚ホ本会ハ伊集院男爵、渋沢子爵、其他ノ協力ヲ得、日華実業協会援助ノ下ニ資金募集ニ従事シ、対支実業懇話会員タル各会社ヨリ多大ノ同情ヲ得所要工費金四万円ヲ得ルニ至リ大正十一年末起工、十二年四月大修理完成、六月二十九日落成式ヲ挙ゲルヲ得タリ。於是同青年会ハ再ヒ従前ノ如ク事業ヲ継続スルコトヲ得、在留学生ノ喜ビハ固ヨリ一般中国人モ深甚ノ謝意ヲ表明セリ。
　此ノ尽力ヲ徳トシテ時ノ支那政府曹錕大総統ハ関係者ヘ、左ノ通リ勲章ヲ贈ラレタリ
　　　頭等宝光嘉禾章　伊集院男爵　　四等嘉禾章　江口定条
　　　同　　　　　　　渋沢子爵　　　同　　　　　白岩竜平
　　　四等嘉禾章　　　内藤久寛　　　同　　　　　山井格太郎
○下略

財団法人日華学会事業概要　　第一三―一五頁大正一二年七月刊
　　　　○中華基督教青年会寄附金募集に関する件
　中華基督教青年会は明治四十年の創立に係り、留学生唯一の社交機関なりしが、大正十一年四月震災に罹り建物大破損を蒙り会務を中止せざるを得ざるに至りたるを以て、同会復旧工事費募集方につき同会の創立者王正延、同会本部の総幹事余日章両氏より依頼ありたると、東京在任の同会幹事馬白援氏《（馬伯援）》より懇請ありたるに依り、本会は理事会を開き、先つ金壱万円を寄附することに決議し、伊集院男爵・渋沢子爵、本会理事等の協力を得、而して又日華実業協会援助の下に寄附を募り、主として対支実業懇話会員たる各会社より多大の同情寄附を受け、所要工費金四万円を得て大正十一年末起工本年四月大修繕完く成り、六月廿九日其落成式を挙ぐるに至れり。於此同青年会は再び従前の如く事業を継続することを得、在留学生の喜は元より一般中国人も深甚の謝意を表明し居れり。左に其寄附金額と寄附者名を挙ぐべし
　　一金壱万円也　　　　　　日華学会
 - 第36巻 p.130 -ページ画像 
　　一金壱千円也　　　　伯爵内田康哉氏
　　一金五百円也　　　　男爵伊集院彦吉氏
　　一金五百円也　　　　子爵渋沢栄一氏
　　一金弐千五百円也　　　　三菱合資会社
　　一金弐千円也　　　　　　児玉謙次氏
　　一金弐千円也　　　　　　伊東米治郎氏
　　一金弐千五百円也　　　　三井合名会社
　　一金壱千円也　　　　　　台湾製糖会社
　　一金弐千五百円也　　　　南満鉄道会社
　　一金弐千円也　　　　　　大日本麦酒会社
　　一金壱千円也　　　　　　井上準之助氏
　　一金壱千五百円也　　　　日本興業銀行
　　一金壱千円也　　　　　　大日本製糖会社
　　一金壱千円也　　　　　　大倉組
　　一金壱千円也　　　　　　富士瓦斯紡績会社
　　一金壱千円也　　　　　　東洋拓殖会社
　　一金壱千円也　　　　　　古河合名会社古河電気会社
　　一金八百円也　　　　　　朝鮮銀行
　　一金五百円也　　　　　　久原鉱業会社
　　一金壱千円也　　　　　　住友合資会社住友銀行
　　一金五百円也　　　　　　日清汽船会社
　　一金参百円也　　　　　　台湾銀行
　　一金五百円也　　　　　　高田商会
　　一金五百円也　　　　　　東亜興業会社
　　一金五百円也　　　　　　呉錦堂氏
　　一金参百円也　　　　　　丸山喜之七氏
　　一金弐百円也　　　　　　御園生由蔵氏