デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

3章 国際親善
3節 国際団体及ビ親善事業
13款 社団法人国際聯盟協会
■綱文

第37巻 p.74-90(DK370009k) ページ画像

大正15年5月8日(1926年)

是日午前、当協会第二回全国支部長会議、貴族院議長官舎ニ開カル。栄一出席シテ挨拶ヲ述ブ。午後、当協会第六回通常総会、丸ノ内日本工業倶楽部ニ開カル。引続キ出席シテソノ議長トナル。


■資料

国際聯盟協会書類(二) 【(謄写版) 拝啓 時下陽春の候 愈々御清穆奉大賀候…】(DK370009k-0001)
第37巻 p.74-75 ページ画像

国際聯盟協会書類(二)             (渋沢子爵家所蔵)
 - 第37巻 p.75 -ページ画像 
(謄写版)
 拝啓 時下陽春の候 愈々御清穆奉大賀候、陳者兼て貴意を得候通り、来る五月八日(土)午前十時より貴院議長官舎に於て、第二回全国支部長会議を催し、更に同日午后三時より工業倶楽部に於て、第六回通常総会を開催の筈の処、総会に関する御打合を請度、前記支部長会議後引続第六十二回理事会を開催候間、万障御差繰御光臨被下度、此段御案内申上候
 次に添付の定款改正案○後掲ニ同ジは、第六十一回理事会に於て構成せられたる特別委員会にて作成せる原案に有之候、何卒御査閲の上至急御賛成を賜はり度、此段得貴意候 敬具
  五月三日
                   国際聯盟協会々長
                      子爵 渋沢栄一
    (四字手書)
    渋沢栄一殿
 追て前記理事会に御出席の有無、前記定款改正案に対する御意見折返御回答願上候
  ○右書翰ハ理事宛ノモノナリ。
  ○右ニ第六十二回理事会ヲモ併セ開催スル如ク記セドモ、第六十二回理事会ハ是ヨリ後チ七月二十一日ニ開カル。


国際聯盟協会書類(二) 【第二回支部長会議 案】(DK370009k-0002)
第37巻 p.75 ページ画像

国際聯盟協会書類(二)            (渋沢子爵家所蔵)
    第二回支部長会議 案
 時日 五月八日(土)午前十時
 場所 貴族院議長官舎
    次第
一、挨拶      総裁及会長
一、会務及会計報告
          副会長及会計監督
一、各支部会務及会計報告
          支部代表
一、協議事項
    本部提案
    支部提案
       イ、地方支部と学生支部との関係
       ロ、会友の募集
       ハ、巡回講演
一、食事


国際聯盟協会書類(二) 【(謄写版) 第二回全国支部長会議議事要録】(DK370009k-0003)
第37巻 p.75-79 ページ画像

国際聯盟協会書類(二)          (渋沢子爵家所蔵)
(謄写版)
    第二回全国支部長会議議事要録
                 大正十五年五月八日午前十時於東京丸の内貴族院議長官舎
御出席
 愛媛支部          主事    久保儀平氏
 - 第37巻 p.76 -ページ画像 
 香川支部         支部長    林毅陸氏
 島根支部         支部長代理  佐藤喜八郎氏
 同            理事代理   滝川辰郎氏
 鳥取支部         支部長代理  岡沢盛造氏
 同            常務理事   福田秀太郎氏
 同            倉吉部会主事 倉繁良造氏
 神戸支部         理事     武藤健氏
 京都支部         理事     竹上藤次郎氏
 同            主事     春日哲氏
 茨城支部         支部長代理  佐藤幸一氏
 大阪支部                欠席
 名古屋支部               欠席
 長崎支部                欠席
 和歌山支部               欠席
本部側           総裁 公爵  徳川家達氏
              会長 子爵  渋沢栄一氏
              副会長    添田寿一氏
              理事     林毅陸氏
              同      田川大吉郎氏
              同      頭本元貞氏
              同      山川端夫氏
              同      山田三郎氏《(山田三良)》
              同      下村宏氏
              同      秋月左都夫氏
              主事     加藤外松氏
      協議事項
 添田副会長 本会々務の大様を報告し
 渋沢会長 子は昨年は病気欠席勝ちであつたが、会務は幸に進展し本年度よりは政府は本会に対し年額五万円の補助を与ふることゝなり民間の寄附金継続に就ても目下折角努力中の旨を述べ
 添田副会長 総会に提出すべき定款改正案に就き説明を為し、出席各支部代表の賛成を求めた
    人種差別撤廃及人口調節問題
 島根・鳥取両支部合同提案に就き、島根支部の滝川辰次郎氏《(滝川辰郎)》より左の如く説明あり
国際聯盟協会聯合会に愬へて、人種差別撤廃の機運促進及ひ人口調節問題の解決に関し、一層の努力を払はしむるの件
(理由)人種差別的法律規則、並に其観念の撤廃は、世界各国民の平和的聯盟を永遠に可能あらしむる根本条件にして、実に国際道徳の根基と云はざるべからず、これヴエルサイユ会議の当初より我国の代表の主張せる所にして、特に吾人が不遇なる各民族の為め万国に獅子吼する所なり、然るに聯盟規約上、此事の徹底を見ざるは痛恨事にして、之が徹底の機運を促進すべく、世界の輿論に向つて策動し不断の努力をなさば、また我国際聯盟協会の使命なりと信ず、仍
 - 第37巻 p.77 -ページ画像 
て先づ本協会より国際聯盟協会聯合会に愬へ、正々堂々の主張を以て人種差別撤廃の機運を促進するの方法を取らしむべし、また今日各国人口の分布を見るに、或る国は地域広大にして人口稀薄なるに拘らず、徒らに門戸を閉ざして容易に他を入れざるあり、また或る国は、地域狭少にして人口過大なるに拘らず、他に移殖民の途を得んと欲するも能はづして、国民漸次飢餓に切迫しつゝあるあり、今にして彼此各国移殖民の自由を許し、世界同胞各個人の生存権確立の可能を図らずむば、彼の「飢餓は人間をして狂暴に導く」のウイルソンの至言の如く、遂に世界をして再び争闘を繰り返へさしめざらんと欲するも能はざるか如き状態となるやも保すべからず、これまた本聯盟協会が最もこれを顧念して、聯合会に愬へ世界各国人口調節問題の平和的解決に就て、一層の努力を払はしむるの要、最も切なる所以と思惟す
 大能真氏(加藤主事代理) 本問題に関する協会従来の努力を説明(本会発行パンフレツト第五十五輯一〇―一一頁、同第五十八輯参照)
 渋沢会長 より子等多年の尽力に就て説明あり、今後共前記両支部の提案の主旨は、日本国民の輿論を代表するものであるから、機会ある毎に之が貫徹に努力すべし
    宣伝に関する諸提案
鳥取支部の提案として、岡沢盛造氏より左の如く説明す
 1 平和デーを一層有効ならしむる事
 2、国際教育に関する図書を出版する事
 3、婦人に関する宣伝に就て、特に考慮を払ひ、最も適切の方法を講ずる事
 4、全国各地のエスペラント協会と連絡を図る事
 5、青少年訓練に国際教育を加味せしむべく努力する事
(理由)右(1)に就ては、十一月十一日の平和デーは未だ一般に普及せざるの憾あり、聯盟協会は毎年其の以前に印刷物等に依りて全国各学校・教会・寺院等に宣伝し、其の趣旨を明らかに示し、夫々相当の施設を以て其日を記念せしむるやう努めんことを望む
 右(2)に就て、国際教育は国際に関する理知教育よりも、寧ろ心情教育に依りて平和協調の精神を啓倍すること一層有効なり、之れが為めには世界平和に貢献せし偉人名士の肖像画、及び其列伝等は最も必要なるにも拘らず、未だ其方面の図書頗る欠乏せり、仍て本協会に於て是等の図書出版に就き、充分努力せられん事を望む。右(3)(4)(5)の事項は本協会事業の精神より推して其緊要なること自明の問題なり。当支部は最も熟心に之を希望提案す
 加藤主事 より本部にて既に実行し来れる□を報告し、実行上幾多・難関の存する次第を説明し、其れら難関の存するにも不拘、前提諸提案の如きは当然、本会の努べき所なれば、能ふ限り実行すべしと述ぶ
  尚平和デーを世界的に統一することの望ましき事、エスペラント協会との協力に関して注意すべき点、岡田文部大臣の思想取締方針
 - 第37巻 p.78 -ページ画像 
に就て、多数の諸氏より交々意見を開陳する所があつた
    常設地方特置員の件
 鳥取支部より左の提案あり
 全国各地方を大別し、聯盟協会本部直属の常設特置員を設け、当該地内に於ける各支部と本部、並に各支部間の連絡に尽きしむると同時に、各支部を扶けて極力其発達助長に勉めしめ、尚ほ特に該地方内一般の巡回宣伝に努力せしむるの件
(理由)真に国際聯盟協会の目的を達せんためには、更に大に地方支部の発達を図り、全国民的の普及に鋭意せざるべからず、然るに地方支部一般に創立日尚ほ浅く、其力未だ微弱にして自ら常住不断の努力を積み難く、加之、地方一般の理解乏しき国民の間に在りて、其発達の遅々たるものあり、或は之がため折角成立したる支部にして、忽ち衰退を見つゝあるが如きものなきにあらず、何等か各支部発達助長の方策を講ぜざるべからず、之が為め本部より重要人物の講演者を派遣するが如きも、上乗の策なりと雖も、一年・二年に一面の斯種講演者派遣あるのみにては、未だ其の効果足らずして、多く一時的に終るの嫌あり、仍て各種の実状に徴し、吾人は既設各支部の配置を参酌して数支部を一括包含するが如く地方を大別し、例へば東北区・近畿区・山陰区と云ふが如き区劃を定め、是等各区に少くとも一名本部直属の常設特置員を設け、常に受持区内を巡回して、各支部と本部間又支部と支部間の連絡を図るは勿論、各支部の計画運動を扶援して其発《(展脱カ)》を助長せしめ、尚ほ進んで地方特殊の状況に適応したる方法を考究して、極力一般の宣伝勧誘に努めしめ、逐次支部の増設を図らしむる事、最も時宜に適したる方策なりと思惟す、但し斯くの如き特置員の設置方法としては、本部より特殊の役員を派遣駐在せしむるも可なり、又、各区にある適任者に嘱託して行はしむるも可なり、協会の情況並に資力を顧慮し、出来得る限りの程度方法を以て、要は直に此案の実現を望む
 加藤主事 右提案の主旨には元より賛成なれば、能ふ限り其の実行に努むべし
    講習会の件
講習会開設に関する希望の件
(理由)聯盟協会の講習会を各地方に於て本部の催又は其の充分なる援助の下に於ける支部の主催に依り、成るべく回数多く開催を望む
 (鳥取支部提案)
 右も能ふ限り実現すべし
    巡回講演の件
 地方より本部に講師派遣を請ふ時は、成る可く数県に亘り巡回講演となるやう準備あり度し(本部より希望)
    会計の件
一、支部で取立た会費は、成るべく早く送金あり度し
二、其の氏名を必ず報告あり度し
三、送金の際、本部の承諾なく補助金と称して差引いて送金することなき様注意あり度し
 - 第37巻 p.79 -ページ画像 
四、会計(四月より翌年三月までの報告は必ず毎年四月中本部まで報告あり度し(本部より希望)
    紀念撮影
    午餐


国際聯盟協会書類(二) 【(印刷物・葉書) 拝啓、時下愈々御清穆奉大賀候、陳者本協会第六回通常総会を…】(DK370009k-0004)
第37巻 p.79 ページ画像

国際聯盟協会書類(二)          (渋沢子爵家所蔵)
(印刷物・葉書)
拝啓、時下愈々御清穆奉大賀候、陳者本協会第六回通常総会を左記次第に依り開催仕候間、万障御差繰御光臨被下度、此段御案内申上候
                           敬具
  大正十五年四月廿九日
                社団法人国際聯盟協会々長
                     子爵 渋沢栄一
 一 時日   大正十五年五月八日(土)午後三時
 一 場所   東京市丸ノ内(東京駅前)日本工業倶楽部
 一、開会の辞            会長   渋沢栄一
 二、会務報告            副会長  添田寿一
 三、会計報告            会計監督 深井英五
 四、予算協賛(説明)        副会長  添田寿一
 五、定款改正
 六、晩餐
 七、会員五分間演説
  (外務大臣出席)
 追而、一、晩餐会費金参円は、当日会場入口にて申受候
    二、準備の都合も有之出席の有無、五月六日迄に御知らせ願上候
  ○右ハ一般会員ニ対スル案内状ナリ。


国際聯盟協会書類(二) 【(印刷物) 社団法人国際聯盟協会】(DK370009k-0005)
第37巻 p.79 ページ画像

国際聯盟協会書類(二)          (渋沢子爵家所蔵)
(印刷物)
    社団法人国際聯盟協会
   第六回通常総会次第
               (大正十五年五月八日於東京丸ノ内日本工業倶楽部)
一、開会の辞              渋沢会長
二、大正十四年度会務報告        添田副会長
三、大正十四年度会計報告        深井会計監督
四、議案(説明、添田副会長)
  イ、大正十五年度予算承認の件
  ロ、役員補欠選挙
  ハ、定款一部改正の件
五、講演「学芸協力委員会に就て」    山田三良博士
六、食事
七、五分間卓上演説

 - 第37巻 p.80 -ページ画像 

国際聯盟協会書類(二) 【(謄写版) 社団法人国際聯盟協会第六回総会議事要録】(DK370009k-0006)
第37巻 p.80-84 ページ画像

国際聯盟協会書類(二)         (渋沢子爵家所蔵)
(謄写版)
社団法人国際聯盟協会第六回総会議事要録
                  大正十五年五月八日 於東京市丸之内日本工業倶楽部
  出席者
会員
 長藤太○外七十九名氏名略
    第六回通常総会議事録
      (速記者遅着の為め要点を記録するに止む)
△渋沢会長議長席につき開会を宣す
△添田寿一氏(副会長)別冊「大正十四年度社団法人国際聯盟協会会務報告」に基き、其の要点を説述す
△深井英五氏(会計監督)別紙「社団法人国際聯盟協会大正十四年度会計報告」を説明し、満場異議なく之を承認す
△添田寿一氏(副会長)別紙「社団法人国際聯盟協会大正十五年度予算」を説明す
△田川大吉郎氏 右予算収入の部中、利子を五千円に見積りたるは過少ならずやと指摘す
△深井英五氏 前年度の例に必ずしも做ふを得ざる理由として、詳細説明す
△渋沢会長 予算に於ては原案通り、利子収入五千円とし、然し実際は最も有利なる利殖に努むることを忘れざるやう注意すべしと述べ、可決す
△阪本釤之助氏 支出の部中、人件費並に事務所借料の増額について説明を求む
△加藤外松氏(主事) 右は主事の俸給を前年度予算に於ては組み込まなかつたのを、本年度に於ては組み込んだ結果であること、並に聯盟事務局情報部東京支局に室を提供することを予想した結果、事務所借料の増額を見たる所以を説明す
△渋沢会長 予算に対し会員の賛成を求め、一同異議なく可決す
                    (以下速記録による)
○議長(子爵渋沢栄一君) 続イテ理事ノ任期ガ満チマシタニ付イテ、其選挙ノコトヲ御願致シマス
○副会長(添田寿一君) 唯今議題ニナリマシタ理事ノ補欠選挙ハ、美濃部君ト岡君ノ任期ガ過ギマシタ結果、其補欠ヲオ願ヒスルノデゴザイマス
○近藤乾郎君 皆サン如何デスカ、是ハ会長ニ御一任ニナツテハ、
    (拍手起ル)
○議長(渋沢栄一君) 補欠選挙ハ此席カラ指名スルヤウニト云フ全会一致ノ御希望ノヤウデアリマス、是レヨリ申上マス、長岡春一君、是レハ新シク御願ヒスル、岡実君、是ハ再任デゴザイマス、此ノ両君ニ御願スルコトニ致シマス、左様御承知願ヒマス
○議長(子爵渋沢栄一君) 続イテ定款ノ一部改正ノ問題デゴザイマスル、改正案○後掲ハ御手許ニ差出シテ御座居マス筈デゴザイマスル
 - 第37巻 p.81 -ページ画像 
○副会長(添田寿一君)此ノ改正ノ個条ハ三個条デゴザイマス、御手許ニ差上ゲテゴザイマスル案ニゴザイマスル如ク、八条・九条・十三条デゴザイマス、此主眼ト致シマスルノハ八条ニ理事ノ数ヲ増ヤシマシタコト、夫レカラ会計監督ト云フノヲ加ヘマシタコトデゴザイマス段々事務モ多クナリマシテ、理事モ現在ノ数デハ少シ不足ヲ告ゲルト云フ所カラ、此増加ヲ願ヒマシタノデゴザイマス、ソレカラ会計監督モ定款ニ於ケル一ノ仕事ニシタイト云フ目的ヲ以テ、改正ヲ願ヒタイノデゴザイマス
ソレカラ第九条ニハ、今迄ノ選挙ノ方法ガ多少不備ト認メマシテ、此ノ選挙ニ関スル事柄ヲ明瞭ニ致シマシタ積リデゴザイマス、十三条ハ矢張リ此九条ノ改正ノ結果、並ニ八条カラ主事ト云フ字ヲ除キマシタ結果デアリマス、ドウカ賛成ヲ願ヒマス
○宮岡恒次郎君 議事ノ順序デゴザイマスガ、今副会長カラ総括シテ御説明ガアリマシタケレドモ、矢張リ議事ノ順序トシテハ各条ニ就キマシテ、別々ニ議サレル御積リデアリマセウカ。如何デアリマセウカ
○議長(子爵渋沢栄一君)如何デゴザイマセウ、各別ニヤツテ行ツタ方ガ宜ウゴザイマセウ、ソレデハ定款改正案ノ第八条第一項ヲ左ノ如ク改メ第二項ヲ削除スル、本会ニ左ノ役員ヲ置ク、会長一名・副会長二名・理事三十名以内・監事六名以内・会計監督一名・評議員若干名斯ウ改正シタイト云フノデス
      (異議ナシ」ト呼ブ者アリ)
      (拍手起ル)
○議長(渋沢栄一君)第八条ノ改正ハ全会一致ノ御同意ヲ得タモノト認メマス、次ハ第九条ヲ左ノ通リ改ム、第九条会長・副会長ハ理事会ニ於テ理事中ヨリ選挙ス、理事・監事及会計監督ハ評議員会ニ於テ会員中ヨリ選挙ス
評議員ハ総会ニ於テ会員中ヨリ選挙ス、支部ハ会員五十名毎ニ一名ノ評議員ヲ、其支部会員中ヨリ選挙スルコトヲ得、理事・監事・会計監督及評議員ノ任期ハ二年トス、但シ再選スルコトヲ得、理事ハ毎年其半数ヲ改選ス、補欠選挙ニ依ル役員ノ任期ハ、前任者任期ノ残部トス是ガ九条ノ改正デゴザイマス
○副会長(添田寿一君)一寸先刻ノ説明ニ洩レテ居リマスル点ヲ申上ゲマスガ、此九条ノ四項ニ「支部ハ会員五十名毎ニ一名ノ評議員ヲ其支部会員中ヨリ選出スルコトヲ得」ト云フコトヲ設ケマシタル所以ハ成可ク支部ト本部トノ関係ヲ密ニシタイト云フ趣旨デ、斯ク致シマシタ、ソレカラ先刻三個条ト申上ケマシタノハ誤マリデ四個条デゴザイマス、第十五条ノ役員トアルヲ評議員ト改ムト云フノガゴザイマス
○竹上藤治郎君 唯今副会長ノ御説明ノ支部選出ノ評議員ト云フノハ現在ノ者ハドウ云ウコトニナリマスカ、新タニ選マレマスカ、現在アリマスモノハソレヲ以テ当テルノデアリマスカ
○副会長(添田寿一君)現在ニハ一向変化ハ来サヌ積リデゴザイマス
○竹上藤治郎君 今ノ評議員ハ支部選出ノ評議員デハナイト云フノデスカ
○副会長(添田寿一君)ナイトカアルトカ云フコトデハナイ
 - 第37巻 p.82 -ページ画像 
今ノ御方ガ御止メニナレバ詰リ支部ノ会員中ヨリ代表的ノ者ヲ選ブ、五十名毎ニ一名選ブ
○竹上藤治郎君 了解致シマシタ、原案ニ賛成致シマス
○議長(子爵渋沢栄一君)第九条ノ改正案ハ、是レデ別ニ御異議ハゴザイマセンカ
      (「異議ナシ」ト呼ブ者アリ)
○議長(渋沢栄一君)ソレデハ第十三条第一項ヲ第二項トシ、第一項トシテ左ノ文字ヲ加フ、本会ニ主事一名ヲ置ク、是ハ条項ノ置キ所ガ違ウダケデアリマス、別ニ御異議ハナイデセウカ
      (異議ナシト呼ブ者アリ)
○議長(子爵渋沢栄一君)ソレデハ次ノ第十五条第二項中、役員トアルヲ評議員ト改ム、是ハ別ニ御異議ハゴザイマセヌカ
      (「異議ナシ」ト呼フ者アリ)
○議長(子爵渋沢栄一君)ソレデハ定款ノ改正ハ全会一致デ可決ニ相成リマシタ、是レデ提案致シマシタ案ハ議了致シマシテゴザイマス、御注意ノ点デモゴザイマスナラ、此機会ニ御示シ置キヲ戴キタウゴザイマス―――ソレデハ是レデ会議ハ終リマスガ、甚ダ不慣レノ議長デ会議ガ彼是レト錯雑致シマシタガ、深ク御詫ヲ申上ゲマス、ソレカラ申上ゲ後レマシタガ、此ノ事ヲ実施スル迄ノ間ノコトハドウゾ理事ニ御任セ置キヲ願ヒタウゴザイマス、何レ其手続ヲ経ナケレバナラヌ必要モゴザイマス、政府ノ認可ヲ受ケネバナリマセン、ソレラノコトハ御委任ヲ願ヒマス
      (拍手起ル)
○議長(子爵渋沢栄一君)是レカラ山田博士ノ御講演ガアリマス
          ―――――――――――――――
(印刷物)
                    社団法人国際聯盟協会
    大正十四年度会計報告
      収入之部
                           円
 寄附金                 七六、一三〇・〇〇
 利子                   六、九五九・五四
 会員収入                 八、七五三・五九
 刊行物売上代               一、九三四・二〇
 雑収入                    一〇一・六四
 前年度繰越金             一〇〇、一六六・四七
 合計                 一九四、〇四五・四四
      支出之部
                           円
 俸給                  一一、一二二・〇〇
 嘱託報酬                 三、三八四・五九
 雑給                   八、八五六・九六
 事務所借料                二、一六〇・〇〇
 図書購入費                一、五一一・六〇
 文房具消耗品               一、一六九・六三
 雑費                     三五五・五九
 - 第37巻 p.83 -ページ画像 
 集会及接待費               三、二〇五・九二
 什器                     九八七・三〇
 印刷及刊行費              二三、九七六・五九
 議演会諸費                六、一九三・〇六
 国際聯盟協会聯合会費          一一、五〇九・八二
 宣伝拡張費                五、七七八・二二
 通信逓送費                四、六八五・〇九
 国債証券                 一、一二〇・一四
 銀行預金               一〇七、九七六・二六
 手許在金                    五二・六七
 合計                 一九四、〇四五・四四
      備考
  銀行預金内訳
                           円
 定期預金                七九、〇〇〇・〇〇
 特別当座預金              二二、〇六六・四九
 当座預金                 六、九〇九・七七
        ―――――――――――――――
(印刷物)
                    社団法人国際聯盟協会
    大正十五年度予算(自大正十五年四月至大正十六年三月)
      収入之部
                           円
 下附金                 五〇、〇〇〇・〇〇
 寄附金                 六四、六三〇・〇〇
 利子                   五、〇〇〇・〇〇
 会費                   七、五〇〇・〇〇
 刊行物売上代               一、五〇〇・〇〇
 雑収入                    一〇〇・〇〇
 十四年度より繰越金          一〇九、一四九・〇七
 合計                 二三七、八七九・〇七
      支出之部
                           円
 俸給                  二三、六四〇・〇〇
 嘱託報酬                 四、八〇〇・〇〇
 雑給                  一四、六九二・〇〇
 事務所借料                四、一四〇・〇〇
 図書購入費                二、三五〇・〇〇
 什器                   二、〇〇〇・〇〇
 文房具消耗品               一、八〇〇・〇〇
 雑費                     六〇〇・〇〇
 集会及接待費               三、〇〇〇・〇〇
 印刷及刊行費              二七、五〇〇・〇〇
 講演会諸費                八、〇〇〇・〇〇
 海外費                 三〇、〇〇〇・〇〇
 宣伝拡張費               一三、一四〇・〇〇
 通信逓送費                六、〇〇〇・〇〇
 - 第37巻 p.84 -ページ画像 
 予備費                 一〇、〇〇〇・〇〇
 翌年度へ繰越金             八六、二一七・〇七
 合計                 二三七、八七九・〇七

(印刷物)
    定款改正案
  第八条第一項ヲ左ノ如ク改メ、第二項ヲ削除ス
 本会ニ左ノ役員ヲ置ク
 会長一名、副会長二名、理事三十名以内、監事六名以内、会計監督一名、評議員若干名
  第九条ヲ左ノ通リ改ム
第九条 会長・副会長ハ理事会ニ於テ理事中ヨリ選挙ス
 理事・監事及会計監督ハ評議員会ニ於テ会員中ヨリ選挙ス
 評議員ハ総会ニ於テ会員中ヨリ選挙ス
 支部ハ会員五十名毎ニ一名ノ評議員ヲ、其支部会員中ヨリ選出スルコトヲ得
 理事・監事・会計監督及評議員ノ任期ハ二年トス、但シ再選スルコトヲ得
 理事ハ毎年其半数ヲ改選ス
 補欠選挙ニ依ル役員ノ任期ハ前任者任期ノ残部トス
  第十三条第一項ヲ第二項トシ、第一項トシテ左ノ文字ヲ加フ
本会ニ主事一名ヲ置ク
 第十五条第二項中役員トアルヲ評議員ト改ム
  ○当協会第五回通常総会ハ大正十四年五月九日丸ノ内生命保険会社協会ニ開カレ、前年度決算ノ承認、本年度予算ノ協賛、役員ノ選挙、平和議定書ニ関スル決議等ヲナセリ。栄一出席セズ。(「社団法人国際聯盟協会会務報告」大正十四年度第二頁―三頁)平和議定書ニ関スル決議ハ同年五月十一日外務大臣其他ニ提出セリ、同日ノ条参照。
  ○第一回支部長会議ハ大正十四年五月九日貴族院議長官舎ニ開カル。本部ト支部トノ聯絡、国際聯盟主義宣伝ノ方法等ノ問題ヲ議セリ。栄一出席セズ。「国際聯盟協会第一回全回支部長会議議事要録」ニ拠ル。


(田川大吉郎) 書翰 渋沢栄一宛(大正一五年)五月九日(DK370009k-0007)
第37巻 p.84-85 ページ画像

(田川大吉郎) 書翰  渋沢栄一宛(大正一五年)五月九日
                     (渋沢子爵家所蔵)
啓上
昨日は総会席上、お妨け致した形になり、相済みませんでした、御詫申上ます、私の申した趣意は、閣下等の実際の扱ひ振りを、危ぶんた訳ではありません、昨年の成績にくらべて、今年の予算の少いのを、私自ら不情理と感ずると同時に、他から指摘せられんことを虞れたのであります、予算の査定には、私も参加しました、その時には、三万二千円の繰越は、明瞭になつてゐませんでした、私はこれを抜きにしての、推定―五千円の利子収入―と覚えてゐます、これだけの繰越があり、且、約七千円と、昨年の利子収入が、確定した以上、これを斟酌して更定するのが、穏当と考へ、それを思ひ出ながら、御相談する機会を得なかつたのを、議会と政党といふ関係では無いし、遠慮に及
 - 第37巻 p.85 -ページ画像 
ぶまいと自解して発議した次第であります
右、後の事ながら、疏明いたし置きます、非礼は、御寛恕を願ひます終りに臨み、例も乍ら、閣下の精励、指導し下さることを深く感謝し御健康を祈ります 匆々
  五月九日
                      田川大吉郎
    子爵渋沢栄一様
          閣下


中外商業新報 第一四四四〇号大正一五年五月九日 聯盟協会総会(DK370009k-0008)
第37巻 p.85 ページ画像

中外商業新報  第一四四四〇号大正一五年五月九日
    聯盟協会総会
国際聯盟協会総会は八日午後三時工業クラブに開会、渋沢会長以下出席、塩沢博士より会計報告あり討議の結果、本年度予算廿三万七千円を可決し、次で山田・米田両博士の講演あつて食堂に入り、幣原外相・沢柳・藤沢・近藤諸博士の卓上演説等あり、盛会裡に同九時過散会


国際知識 第六巻第六号・第一三九頁大正一五年六月 本協会総会と我等(DK370009k-0009)
第37巻 p.85 ページ画像

国際知識  第六巻第六号・第一三九頁大正一五年六月
    本協会総会と我等
 五月八日貴族院議長官舎で開かれた第二回全国支部会議と、工業倶楽部で開かれた第六回通常総会とは、本会の将来に幾多の影響を及ぼすものとして注意に価する
 吾人が第一に注意しなければならぬことは、本年度に於て政府より本会に年五万円の補助があることである、此は去る五十議会に於て、本会に対する国庫補助建議案が貴衆両院を通過したのに基因する。
 第二に会長渋沢子爵の熱誠なる勧説によつて、民間有志の本会に対する寄附金の継続も殆ど確実である。たゞ従来本会に対する有志の寄附金は、東京及横浜に限られてゐたが、将来は全国の有志より高援を期待すること、切なるものがある。
 第三に定款の改正である。従来は本会の役員即ち理事・評議員等は総会に於て会員が互選したものであるが、新しき定款により会員は評議員を選挙し、評議員は理事を選挙し、理事は会長・副会長を選挙する事となつた。次に地方支部は支部会員五十名毎に一名の評議員を、其の支部会員中より選出し得ることゝ改められた。新定款の期する処は支部の発言権を増し、又評議員会の権限責任を加ふるにあること勿論であるが、幸にして新定款に依り会務の運用愈々円滑に、本会が真に国民輿論の権威ある機関たるに至らんことを祈る。(十五、五、中旬)


国際知識 第六巻第七号・第一四二頁大正一五年七月 社団法人国際聯盟協会 第六回通常総会概報(DK370009k-0010)
第37巻 p.85-86 ページ画像

国際知識  第六巻第七号・第一四二頁大正一五年七月
  =社団法人国際聯盟協会=
    第六回通常総会概報
      ◇五月八日於東京丸ノ内工業倶楽部
 恒例による本協会第六回通常総会は、去る五月八日午后四時より、東京に於て開会された。当日は幣原外相も政務多忙中にも拘らず特に
 - 第37巻 p.86 -ページ画像 
出席され、本号巻頭所掲の如き演説を試み、大いに本協会の将来を激励する所あり、また山田三良博士の学芸協力問題、米田実博士の英国炭坑争議に就いての、夫れ夫れ有益なる講演もあり、晩餐席上では会員の五分間演説が賑ひ、盛会裡に午后九時散会した。
(出席者)
長藤太○以下七十九名氏名略
○下略


国際知識 第六巻第七号・第二―四頁大正一五年七月 時代思潮と国際関係 外務大臣 幣原喜重郎(DK370009k-0011)
第37巻 p.86-87 ページ画像

国際知識  第六巻第七号・第二―四頁大正一五年七月
    時代思潮と国際関係
                 外務大臣 幣原喜重郎
 今夕は沈黙の美徳を守るといふ明瞭な諒解の下に出席したのであるが、座長より沈黙の美徳を破れとの要求があつたので、これに応じないのは国際協調の精神に反することになるから、兎も角当座の所感を述べて責を塞ぐこととする。
 欧洲近来の形勢を大観するに、世界大戦の後を受けて、一時混乱を極めた政治界・経済界は、さきにドーズ案の確定により安定の曙光を見最近にはロカルノ条約の締結によつて、益々光明を認むるに至つたドーズ案の確定、ロカルノ条約の締結はもとより重要ではあるが、当時世人は余りに多くを、これに期待したのではないかと思ふ。ロカルノ条約が締結さるれば、恰も平和の天国が地上に現出したかのやうに楽観し、聯盟理事国増員問題に関する関係列国間の協調が破れると、忽ちロカルノ精神が水泡に帰したるが如く、悲観せるものもあつたやうであるが、我々の見るところでは、右の様な楽観・悲観はともに何れも見当違ひで、条約の真価を誤解したものである。凡そ条約は時勢を作るものではなく、時勢が条約を作るものである。条約は短時日の間に作り得られるが、時勢は急速に一変するものではない。殊に過去数百年の永きに互る国際間の猜疑不信の念は、一朝一夕に消え失せるものではなく、折に触れ時に応じて、その片鱗を現はすことあるは、遺憾ながら之を否定し得ない。約三百年前ヴエニス駐箚の英国大使サー・ヘンリー・ウオツトンは戯れ書きの中に『大使は自国の利益のために外国を欺く目的を以て派遣された正直なる人間なり』と記したことがある、之は譎詐常なき外交に対する痛切なる諷刺である。屡々引用せられるリンカンの名言中に『諸君は暫の間ならば、総ての人を欺くことが出来る。また一部の人に対してならば、永い間欺くことも出来る。しかし総ての人を永い間欺くことは出来ない』と云つたことがあるが、交通通信の機関が発達し、人智の進歩したる今日、少数の人に対しても、たとへ暫らくと雖、欺くことは困難である。近代の国際関係に於て不正悪辣なる外交が、永く成功せる例はないと信ずる。然るに今も尚多年の誤れる観念に支配せられ、個人関係と国際関係とはその道徳標準を異にするが如くに考へ、権謀術数を以て外交上の要諦と信ずる人が少くないやうである。
 かくの如き現状の下に、平和の天国に到達するのは中々容易の業ではなく、途中幾多の紆余曲折を経なければならぬが、翻つて人心の趨
 - 第37巻 p.87 -ページ画像 
く大勢を見るに、今や世界が漸次進化の道程にある事は亦疑を容れぬ国際聯盟が成立し、現に活動しつつある事実そのものは、世界の進歩を明らかに物語つてゐる。世界大戦前に於ては国際聯盟、又はこれに類似の考案がないではなかつたが、列国政府間に具体的論議の問題とはならなかつた。しかるに五年間に亘る世界大戦の悲惨なる経験は、世人を覚醒せしめ、将来かくの如き惨禍より世界を救ひ、戦争を予防減滅せしめんとする努力が具体的事実として現はれ、遂に国際聯盟の規約はヴエルサイユ条約の劈頭に掲げらるゝに至つたのである。之を以て見れば聯盟を作り出せるものはウイルソン大統領にも非ず、ロイドジヨージ首相にも非ずして、寧ろ輿論の大勢、世界の進歩である。
 聯盟の一大目的である軍備縮少に就ては、海軍の関する限り、ワシントンに於て五大海軍国の間に協定の成立を見たものもあつたが、其の協定とても海軍軍備の全部には及んで居らぬ、尚ほ陸軍・空軍の問題に至つては、国際聯盟の諸機関に於て熱心に研究中なるも、未だ何等具体的考案を得るに至らない。近日軍備縮少に関する準備委員会が開催されることになつてゐるが、其の結果は今より遽に予測することを得ない。しかしながら本問題の今日に至る迄の経過を通観するに、其の中には自ら世界進歩の一階段を示す事実の認めらるゝものなきに非ず、即ち世界何れの国も正面から、軍備縮少の大目的に向つて反対の声を挙げるものなく、また挙げ得るものもないのは事実である。今から約二十年前ヘーグに万国平和会議が開かれた際、軍事専門の或者はサーベルの柄に手をかけ乍ら、この会議が我国の国防計画に関して一指を染むることをも許さないと宣言し、軍備縮少の問題は海牙会議に於て、到々立消えとなつた。当時の情勢に比すれば、今日軍縮に対する世界各国の態度が全く違つて来たことは明瞭である。今日は最早軍縮を目的とする国際会議の招集に対し、公然且主義として反対する国はなくなつた、仮令内心之を好まざるものがあつても、主義上の反対を避け、他に適当なる不参加の理由を求むるのを常とする。かくの如く世人が軍縮の計画を歓迎するのは、或は偽善に出づるものがあるかも知れぬ、しかし偽善の行為にても、全然良心の痲痺してゐるに勝る万々である。要之、軍縮に反対することは輿論に鑑み、不可能となつたことことは、確かに世界の一大進歩と看做すことが出来る。軍備縮少の目的は一年や二年の間には達せられない迄も、世界の輿論は当然其の帰結に達せねば止まぬであらうと思ふ。
 国際聯盟には幾多の欠点があり、種々の批評があるけれども、聯盟の基礎は人類活動の各方面に根を張り、将来益々発展すべき運命を有つてゐるのである。而して日本は聯盟各国共同の目的に対し、協力すべき条約上・徳義上・重大の義務を有する事は、玆に事新しく繰返す迄もない事と信ずる。聯盟協会は世界列国の同種の協会と協力して、聯盟の目的達成に大に努めらるゝに当り、帝国議会が今般少額乍ら補助金の支出に協算を与へたことは、本協会の責任を益々重からしむる所以であつて、自分は外務の当局として協会の努力に謝意を表すると共に、将来の成功を祈つて已まぬものである。
       (五月八日、本協会第六回総会に於ける演説)

 - 第37巻 p.88 -ページ画像 


〔参考〕国際知識 第六巻第六号・第一一頁大正一五年六月 国際聯盟と学芸協力 日本学芸協力委員会の創設 法学博士 山田三良(DK370009k-0012)
第37巻 p.88 ページ画像

国際知識 第六巻第六号・第一一頁大正一五年六月
    国際聯盟と学芸協力
      日本学芸協力委員会の創設
                 法学博士 山田三良
○上略
  五、我国に於ける国内委員会の成立
 以上略述せる如く、国際聯盟の創設したる学芸協力国際委員会は、各国学界を連絡し其の協力を以て、聯盟思想の発達普及を促進すべき使命を有するものにして、此の使命を達成せんが為には、各国学界の積極的協力を確保すること絶対的に必要なるが故に、右国際委員会は各国に於ける国内委員会の成立を希望し、各国政府に対して斯る委員会の組織を慫慂して已まないのである。且国際聯盟も亦未だ斯る委員会を設立せざる諸国に対して、速かに之を設立せんことを勧誘するのみならず、最近第六回総会に於ては、将来青年子女の間に国際聯盟に関する思想を普及せしむる事、各国の歴史教科書中、徒らに敵慨心を鼓舞するか如き記載事項を訂正する事、図書の交換貸借、図書目録の作製頒布を促進すること、等に関し各国に於ける国内委員会の協力を求むることに決した。従つて我が国家は国際聯盟の最も有力なる一員として、聯盟のこの運動に呼応し、自他共同の利益の為に、進んで之に協力すべき責任を有するものと言はねばならぬ。又我が学界は政府又は国際聯盟を介して、国際委員会と間接に交渉するよりは、寧ろ自ら之と直接に交渉することを得べき連絡機関を創設して、一方に於ては国際委員会の事業を援助すると共に、他方に於ては我邦の学術技芸を世界各国に紹介すべく努力もねばならぬ。特に欧米を通して我邦の文化に対する誤解の甚しき現代に於ては、我が学界は此の権威ある国際委員会に依りて、東洋文化の真相を欧米に宣伝し、東西文化の融和を計り、国民相互の誤解を一掃する上に於て、誠に重大なる使命を有するものと言はねばならぬ、然れどもこれは頗る困難なる大事業であつて、多方面の人智と巨額の資財とを要するが故に、今遽かに之を実現するに足るべき一大機関を設立するに由なきことは、吾人の遺憾に堪へざる所である。然も何かの方法を以て、我国に於ける国内委員会を設立することは目下の急務である。予が這回、我が国際聯盟協会の諒解を以て、長岡条約局長・小村侯爵・粟屋専門学務局長・姉崎文学博士・宮島医学博士等と共に極めて小規模の学芸協力委員会を組織するに至つたのは、所謂応急設備にして他日の準備委員会たるに過ぎないのである。予は世上先達の諸士幸に之を援助し鞭撻せられ、有力なる一大委員会成立の機運を促進せられんことを切望して已まない。



〔参考〕国際知識 第六巻第六号・第一四四―一四五頁大正一五年六月 聯盟協会本部だより 学芸協力委員会発会式兼相談会(DK370009k-0013)
第37巻 p.88-90 ページ画像

国際知識  第六巻第六号・第一四四―一四五頁大正一五年六月
 ○聯盟協会本部だより
    学芸協力委員会発会式兼相談会
 大正十五年五月三十日正午、東京丸の内銀行倶楽部にて開催、出席者左の通り。
 - 第37巻 p.89 -ページ画像 
帝国学士院法科大学教授      法学博士 山田三良
右 同 文科大学教授       文学博士 姉崎正治
北里研究所理事兼部長・慶応義塾大学講師 衆議院議員
                 医学博士 宮島幹之助
侯爵                    小村欣一
文部省専門学務局長             粟屋謙
聯盟協会主事                加藤外松
文部省専門学務局学術課長          菊沢季麿
外務省条約局第三課長            栗山茂
      一、成立事情
 栗山茂氏並に山田三良氏より、本委員会成立の事情について説明あり、各方面との折衝の結果、主として帝国学士院が主脳となり、聯盟協会が手足となつて働くことゝなり、今日発会式兼相談会を開くに至つたものである。
      二、委員及委員長
 本委員会の委員として、山田三良・姉崎正治・宮島幹之助・小村欣一・長岡春一・粟屋謙氏以上六人が挙げられ、委員長として山田三良氏が推された。
      三、幹事
 加藤外松(聯盟協会との連絡に当る)菊沢季麿(文部省との連絡に当る)栗山茂(外務省との連絡に当り、且本委員会の会計を主管す)以上三氏が専任せられた。
      四、事務所及事務員
 事務所は東京市芝公園六号地協調会館国際聯盟協会内学芸協力委員会(電話青山三〇六三番)事務は前記聯盟協会の事務員が当る事と決定した。
      五、名称
 本委員会を学芸協力委員会と称することゝなつた。
      六、四つの部
 本委員会の事業を行ふに就いて、取りあへず左の四部並にその主任者を定めた。
 A 大学連絡部 山田三良
 B 学術研究部 宮島幹之助
 C 文学美術部 姉崎正治
 D 演芸音楽部 小村欣一
      七、外務大臣に建議の件
 本委員会及委員の全員一致を以て、外務大臣が適当の学者を(例へば田中館愛橘博士の如き)国際聯盟の学芸協力委員会(Committeeon Intellectual Cooperation)に委員の一人として代表せられ、速かにその実現を見るやう尽力あらんことを希望する旨、建議することを決議した。
      八、図書目録の作成
 右に関しては適当なる目録なく、これを本委員会に於て引き受くるは容易の業でない関係上、取りあへず菊沢氏に於て適当の向にあたり
 - 第37巻 p.90 -ページ画像 
を付け、便法を研究することとなつた。
      九、其他の諸件
(イ)本邦に於ける学術上の発見
(ロ)帝国学士院授賞
(ハ)本邦公私大学情報(新講堂の設置、新教授の任命その他諸般の事項に当る)
(ニ)新刊図書目録
(ホ)其他学界・教育界・美術音楽芸術界の情報
(ヘ)本邦に於ける美術に関する現行法律制度
(ト)本邦に於ける美術教育の現状(美術学校及中小学校の図画教授)
(チ)本邦に於ける美術奨励法(帝展・二科会など)
(リ)本邦に於ける現存の美術家団体
(ヌ)本邦各地に於ける博物館・美術館
(ル)本邦に於ける古代・中世・近世・現代の美術発達を正確に詳細に記述せる政府刊行物、又は権威ある著書雑誌の蒐集並に送付
(ヲ)日本美術の発達を系統的に研究する資料たるべき博物館・美術館・帝展・二科会等のカタログ・写真帳・写本を蒐集送附する件
(ワ)朝鮮・台湾及満洲に於ける古来の美術研究の資料となるべきものを蒐集送附する件(以上)



〔参考〕渋沢栄一書翰 控 杉村陽太郎宛大正一五年九月九日(DK370009k-0014)
第37巻 p.90 ページ画像

渋沢栄一書翰 控  杉村陽太郎宛大正一五年九月九日   (渋沢子爵家所蔵)
(太字ハ朱書)
大正十五年九月九日付渋沢正雄氏紹介状
    杉村氏宛 案
拝啓、爾来御疎情ニ打過候処、益御清泰奉賀候、然ハ国際聯盟協会も其後追々主事変更致、最近加藤外松氏も辞任致候、如此始終変更致候ハ協会の為め面白からす、継続従事致得る人をと存じ、副会長並に理事諸氏等と評議中ニ候、一方会務も完全ニ発展と申には無之候も、支部も大分設立せられ一般の国際知識も漸次発達之模様ニ候、此等ニ付てハ追て詳細申上候積に御座候
 玆ニ一書を添候ハ、老生三男正雄と申者、従来東京ニ於て実業界に努力致居候処、今般其関係事業上欧米ニ出張致事と相成候に付、貴地ニ罷越候節ハ、御訪問致候様申聞置候間、参上候ハヽ御引見の上、御差支無之限り御便宜御与被下度候
右得貴意度、如此御座候 敬具
  大正十五年九月九日          渋沢栄一
    杉村陽太郎様
  ○杉村ハ第一回ノ当協会主事ナリ。