デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

3章 国際親善
3節 国際団体及ビ親善事業
13款 社団法人国際聯盟協会
■綱文

第37巻 p.320-334(DK370083k) ページ画像

昭和5年11月5日(1930年)

是日、当協会第九十一回理事会、当協会事務所ニ開カレ、栄一出席ス。尚、国際聯盟映画「建設」ノ一部トシテ、右栄一ノ出席セル同理事会ノ実況ヲ撮影ス。

是日夕、イギリス国経済使節来訪ニヨル当協会経済委員会トノ懇談会、丸ノ内中央亭ニ開カレ、栄一、会長トシテソノ招請ヲナス。


■資料

国際聯盟協会書類(五) 【(謄写版) 写 昭和五年十一月一日】(DK370083k-0001)
第37巻 p.320 ページ画像

国際聯盟協会書類(五)          (渋沢子爵家所蔵)
(謄写版)

  昭和五年十一月一日        国際聯盟協会々長
                      渋沢栄一
拝啓、愈御清適奉賀候、陳者乍唐突来る五日(火)正午より協会集会室に於て、第九十一回理事会相開き候に付、御多忙中御繰合御出席被下度《(乍恐縮脱カ)》、此段御通知申上候 敬具
 追て、昨年協会に於て募集したる、国際聯盟映画脚本一等当選「建設」を今般撮影中に候処、広く海外にも紹介の関係上、映画中に本協会理事会の実況を挿入致度希望に有之候に就ては、甚だ御迷惑に存候得共、当日御会合の機を利用致度候間、右御含みの上御足労相煩はし度奉願上候


社団法人国際聯盟協会会務報告 昭和五年度 同協会編 第一七頁昭和六年五月刊(DK370083k-0002)
第37巻 p.320 ページ画像

社団法人国際聯盟協会会務報告 昭和五年度 同協会編
                       第一七頁
                       昭和六年五月刊
    三、理事会
○上略
第九十一回 十一月五日正午より協会集会室に開く、出席者―渋沢会長、阪谷・山川両副会長、神川・松永・宮岡・岡・関屋・田村・山田各理事、江口監事、奥山主事
 当日同理事会の実況を撮影し、国際聯盟映画「建設」の一場面に挿入す。
○下略
   ○右映画ノ一場面ニハ、栄一会長トシテ登場ス。
 - 第37巻 p.321 -ページ画像 


国際聯盟協会映画脚本懸賞募集一等当選国際親善映画『建設』(全四巻)(DK370083k-0003)
第37巻 p.321 ページ画像

国際聯盟協会映画脚本懸賞募集一等当選国際親善映画『建設』(全四巻)
                    (渋沢子爵家所蔵)
(印刷物)
    梗概
 稲垣真一は、父親の没後母親の手一つで育てられて居たが、至つて真面目で、学校の成績もよかつた。一日彼は、放課後ある神社の境内を過ぎんとする時、一外人が万年筆を忘れたのを、其の忘れて来た社務所に取りに行つたが、途中ある少年が、木から落ちやうとして居るのを助けてゐたため、其の外人は、其場から去つてしまつた。真一は故意に万年筆を盗んだと思はれる事が、海外人にどんな悪い感じを与へるかを憂へ、苦心の極、辛うじて其の居所を尋ねあてた。それは英人ベンネツト博士と称して、丸の内某ホテルに滞在中である事を国際聯盟協会の尽力に因つて知る事を得たのであつた。真一は早速其の万年筆を届けようとする際、過つて自動車のために負傷したが、彼は人事不省の間にも尚且万年筆の事を口走る有様だつた。母親は彼に代つて万年筆をベンネツト博士の許に事情を附して届けた。博士は、日本少年の誠意に感動して其の行為に報ゆるべく、偶々開催中の国際聯盟協会理事会に於て、渋沢会長以下の賛成を得て、真一を其故国に伴ひ彼の前途をより以上全からしめようとした。真一は、ベンネツト博士に伴はれて、嬉々とし横浜を出帆して行つた……。
 かくして国際親善の実は、一歩一歩と「建設」されて行くのであつた。
○中略
                 (昭和五年十一月十日完成)


(長尾盛之助)書翰 渋沢栄一宛昭和五年一一月一五日(DK370083k-0004)
第37巻 p.321 ページ画像

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国際聯盟協会書類(五) 【写 昭和五年十月二十八日】(DK370083k-0005)
第37巻 p.321-322 ページ画像

国際聯盟協会書類(五)           (渋沢子爵家所蔵)

  昭和五年十月二十八日     国際聯盟協会々長
 - 第37巻 p.322 -ページ画像 
                      渋沢栄一
拝啓、秋冷の候愈御清適奉賀候、陳者英国経済使節の本邦来訪に際し本協会経済委員会と同使節一行との懇談の為、来る十一月五日午後四時より丸ノ内中央亭本店に於て、茶話会相催候に就ては、御繁用中乍恐縮同刻御来臨被成下度、此段御案内申上候 敬具


社団法人国際聯盟協会会務報告 昭和五年度 同協会編 第二五頁昭和六年五月刊(DK370083k-0006)
第37巻 p.322 ページ画像

社団法人国際聯盟協会会務報告 昭和五年度 同協会編
                       第二五頁
                       昭和六年五月刊
○五、委員会
   ○経済委員会
○上略

第二十三回 十一月五日、丸ノ内中央亭にて、本協会理事をも交へて英国経済使節と懇談す。
○下略
   ○右懇談会ニハ栄一ノ出欠明ナラズ。「集会日時通知表」ニハ記入サレ居レドモ疑ヒヲ存ス。


国際知識 第九巻第一二号・資料第一―一一頁昭和四年一二月 国際経済問題に関する本協会の主張(DK370083k-0007)
第37巻 p.322-331 ページ画像

国際知識 第九巻第一二号・資料第一―一一頁昭和四年一二月
    国際経済問題に関する本協会の主張
 我が国際聯盟協会では、本年三月二十七日常設経済委員会を設置して以来、今年十月末迄に十回の委員会総会と、二十回余の特別委員会とを開催し、慎重審議、国際経済問題の研究をなして左の成案を得た因に委員の芳名は左の通り。
  経済委員会委員芳名(順序不同)
山川端夫氏(委員長)
玉木懿夫氏  井上雅二氏  川西実三氏  成瀬義春氏
長岡徳治氏  石井徹氏   三谷隆信氏  東栄二氏
守田藤之助氏 浅利順四郎氏 青木節一氏  倉橋藤治郎氏
志立鉄次郎氏 佐藤庄四郎氏 上田貞次郎氏 北岡寿逸氏
寺島成信氏  小汀利得氏  千石興太郎氏 高島誠一氏
川島信太郎氏 宮崎清則氏  清水安治氏  渥美育郎氏
長野朗氏   油谷恭一氏  渡辺鉄蔵氏  斎藤良衛氏
島田孝一氏  膳桂之助氏  山本熊一氏  若松虎雄氏
飯田九州雄氏 田中貢氏   永井亜歴山氏 菱沼勇氏
大川周明氏  洪純一氏   那須皓氏   黒田鴻五氏
依田信太郎氏 田辺畏三男氏 長沢柳作氏  谷口恒二氏
渋沢信一氏  諸井桃二氏  松田泰二郎氏 高久甚之助氏
角田隆郎氏  長川豊樹氏  奥山清治氏  乾精末氏
    国際聯盟協会常設経済委員会の決議
一、プラーグ経済会議の決議と我が委員会
 プラーグ国際経済会議の決議に従ひ、若し将来補助国際経済委員会が設立せられたる時は、我が常設経済委員会を直に国内経済聯絡委員会として、右の補助国際経済委員会と聯絡して活動すること。
二、国際経済条約の批准促進問題
 - 第37巻 p.323 -ページ画像 
 (イ)国際聯盟の機関(経済委員会、特別の外交官会議)に於て起草締結せらるゝ経済関係の国際条約にして、今後成立するものに就ては、各国に於て之が批准の為必要なる手続をとるべき期間を出来得る限り明定すること。
  右国際条約に就ては、締約国中の特定数の国が批准するときは、同条約は実施せらるゝ旨の規定を設くること。
 (ロ)前記性質の条約にして既に成立し居れるものに就ては、各国はなるべく速に之が批准の手続をとることに努むること。
 (ハ)国際労働総会に於て決定する労働に関する条約の批准関係に就ては、此際平和条約の規定を変更するの意なきこと。
三、経済政策に関する原則問題
 各国はその国策として、又は他国に対する関係に於て国際経済会議の決議に反する行動を採らざること。
四、関税政策に就て
 関税に関しては通商条約中に、一般的且無条件の最恵国条款を挿入すること。但し右最恵国条款に対しては左記除外例を認むること。
 (一)一定国境地帯内住民の利益に関する輸出入関税の免除。
 (二)関税同盟に関する特恵。
 (三)植民地(国際聯盟員たる自治領及印度を除く)及管治地の産物に対する特例。
 因に此点に関し左の決議を附加した。
 「条約は当然植民地に及ぶものとす、除外する必要あるときは関係国の協議により之を定むること。」
 (四)奨励金附貨物に対し差別的関税を設くる場合。
 (五)内国漁業及内国漁業に準ずべきものに対する例外。
 (参考 公安・衛生・専売に関する場合は、関税に就ては例外を認むべきに非ざるも、関税以外の問題に就ては同一条件を充すに於ては、之を差別することを得ざるものとす。
 備考一、同一貨物に対する関税率は、陸境による場合と海港による場合とにより差別を設くるを得ざるものとす。但し一九二三年の海港規程第七条に定むるが如き、特殊例外事情による適用を妨ぐることなきものとす。
  (海港の国際制度に関する規程左記第七条参照)
 第七条 特別なる地理上・経済上又は技術上の特殊状態に基づく理由の如き、例外を設くるの正当なる特別理由ある場合を除くの外、締約国の主権又は権力の下にある海港に於て課せらるる関税は、同国の他の関税境界に於て同一種類に属し、同一発送地より来り、又は同一到達地に到る貨物に課せらるゝ関税を超ゆることを得ず。
  締約国の一が貨物を輸入し又は輸出する他の通路に於て、前記の特別理由により関税上の特別利益を許与するときは同国はその主権権力又はの下にある海岸による輸入又は輸出に対する不公正なる差別の手段として、該便益を使用することを得ず。
 備考二、輸入国の重要産業に危害を与へ、又は之を破壊するを目的
 - 第37巻 p.324 -ページ画像 
とすること明瞭なるが如きダンピングは之を行はざることに付、適当なる国際的協定成立せざる以前に於ては、輸入国は此の種ダンピングの濫用防止に対し、適当の対抗的措置を採り得べきものと認む。但し右対抗的措置は必要以上に苛酷ならざるやう注意を要す。
 (参照)関税定率法第五条の二
  不当廉売品の輸入又は輸入品の不当廉売に因り、本邦に於ける重要産業が危害を被るの虞あるときは、勅令の定むる所に依り不当廉売審査委員会の審査を経て、当該物品を指定し之に対し期間を定め、別表に定むる関税の外、其の正当価格と同額以下の関税を課することを得。
  前項の規定に依り指定せられたる物品にして、既に輸入せられ不当廉売者、又は其の代理人の所有、又は所持に係るものに対しては、前項の規定に準じ不当廉売者、又は其の代理人より附加関税を追徴することを得。
五、通商条約に関する原則問題
 商品の取引、資本の流通、経済事業の法律上の地位及外国労働者の条件等に関し、平等互恵的の保障を有する長期の通商条約を締結すべきこと、但し右通商条約の締結に就ては、密接なる関係を有する諸国に一般に適用せらるべきことを、条件とするも差支なきこと。
六、経済及交通関係国際条約の登録公表問題
 一切の経済及交通関係の条約は、直に之を国際聯盟事務局に登録すること。
 国際聯盟事務局は右登録したる条約を速に公表すること。
七、国際労働条約を一般通商条約中に挿入するの件
 国際労働会議に於て採択したる条約、殊に華府条約の条項を通商条約中に挿入することは、適当に非ずと認むること。
八、外貨排斥団体取締に関する件
 締約国は自国民が団体を組織して、他の締約国の一国又は数国の利益を害するの目的を以て、該国又は其の国民との通商・交通・企業・金融、其他経済上の自由を直接、若くは間接に妨ぐるの行為を為すことを禁遏する為、有効且適切なる措置を執ることを約す。
九、経済統計に関する決議
 (一)経済統計に関する国際条約は、各国経済統計の統一改善を促し、内外経済事情の比較判明上、最も必要のものたるのみならず別に過重なる義務を各国に負担せしむるものに非ず、大体に於て適当なりと認むるを以て、政府に於て速に之が批准の手続を執られんことを望む。
 (二)我国に於ける各種の経済統計は、本条約の定むる所に準拠して之が充実を期すべく、殊に産業に関する従来の統計は、甚しく不充分なるものあるを以て、本条約の実施を機とし必要に応じ之に関する経費・規定・機関等の整備充実を計り、以て之等重要なる統計を速に刷新改善せられことを望む。
 (三)我国従来の統計には同一事実に付、各所に於て各自同種の統
 - 第37巻 p.325 -ページ画像 
計を重複して作製せらるゝものあり、為めに関係者に対して煩雑なる手続と不便とを与ふると共に、之が利用者をして迷はしめ、却て統計の価値を充分に発揮せしめ得ざるものなしとせず、政府は宜しく此弊を矯め、出来得る限り統計の重複作製を避け、同一事実に関する統計は適当なる機関に於て、唯一正確なるものを作製するの手段を講ぜられんことを望む。
 (四)各種統計は可成速に之が編整を遂げ、出来得る限り迅速に公表し、以て一般の利用に便にせられんことを望む。
 (五)民間に於て作成する各種統計に就ても亦、前記諸項に準じて改善せられんことを望む。
一〇、人口問題研究常設機関設置に関する建議書
 本会は我国の現状に鑑み、人口問題を科学的に研究する常設機関の急速なる設置の必要を認め、政府が自ら之を設置するか、又は国庫の補助を以て適当なる民間の団体に対し、之が設置を勧奨せむことを望む。
  理由
 人口問題が我国刻下の最重要問題の一たることは、今更贅言を要せざる所、政府が曩に人口食糧問題調査会を設けられたる所以も亦之に在るべし、然れども人口問題は国内関係より之を言ふも亦国際関係より之を観るも、極めて複雑多岐にして啻に人口夫れ自身に関する量的方面、即ち其の増減・移動・構成・分布並に質的方面即ち健康・智能・道徳方面に関する研究を必要とするのみならず、人口と相対的関係に立ちて、常に問題の重点を左右する社会的・政治的・経済的諸要素を併せ考究するに非ざれば、到底其の真相を把握し、此れが根本的解決策を見出すこと能はざるものなり。而して斯の如きは各方面の権威を網羅し広く各般の資料を蒐集し、専心之が研究に当るの機関あるに非ざれば、到底其の目的を達することを得ず。此れ本会が人口問題研究に関する特別機関設置の必要を唱ふる所以なり。而して人口問題は永続的性質を有するものにして、此れが研究は継続的に行ふに非ざれば価値無く、組織的に研究するに非ざれば、其の真相を究むること難し。又問題は動もすれば人をして熱せしめ、且つ偏見に捉はれしめ易き結果、人類社会に無用の闘争を生ぜしむる虞あるものなるを以て、冷静に客観的に事相を究明して、問題の真相を世人の理智に訴ふるは、世界平和確保の上より見るも極めて必要のことに属す。殊に我国に於ては本問題が特に国家の重要問題として内に外に、従来屡々唱道主唱せられたる所なりと雖も常に之が基礎をなすべき科学的根拠を欠けるやの恨みあり、此れ本会が人口問題研究の機関が常設的にして且つ科学的たらむことを望む所以なり。終りに人口問題の国家的性質に鑑み、且つ之れが研究には関係各省の協力を必要とすると共に、尠からざる経費を要すべきに由り、調査研究の機関は国家自ら此れを設くるか、又は国家よりの物的並に精神的の援助を豊富にして、民間の公益団体をして之れを施設せしむるの必要ありとなすものなり。
一一、沿岸貿易及内水航行問題に関する決議
 - 第37巻 p.326 -ページ画像 
 (一)開港間の沿岸貿易は、相互的条件を以て外国船舶に之を開放すること、沿岸貿易はその本来の性質に顧み、之を拡充して解釈適用すべきものに非ず、例へば大洋を越へての航海は、之を沿岸貿易と認むべきものに非ざること。
  開港とは其の名称の如何に拘らず、外国船舶の為に現に開かれ、又は今後開かるべき港を云ふこと。
 (二)国際河川は外国船舶の航行の為、之を開放すること。
  国際河川内の開港間、又は国際河川内開港と他の領水内開港との間の貿易は、之を一般沿岸貿易の場合と同視し、相互条件を以て外国船舶に一切の沿岸貿易を許与する国の船舶に対し、開放すること。
 (三)国内河川内に開港ある場合に於ては、国際河川の場合に準じ開放すること。
 (四)開港は可成多数之を設けられんことを希望すること。
附帯決議
 「開港間の沿岸貿易を相互的条件を以て、外国船舶に開放するに当りては、運用上我国の利益を阻害せざる措置をとらんことを望む」
一二、関税低下に関し国際会議開催に付き
    国際聯盟総会決議に対する政府への建議書
 国際聯盟は本年九月二十三日の総会に於て為されたる決議に基き、今後二ケ年又は三ケ年間現行関税を増加せず、若くは新関税を設け又は国際通商上に、新なる障壁を設けざることの協定を締結すべき国際会議の開催に関し、右会議に参加するの意思ありや否やに就き政府に問合せ有之候趣承知仕候処、右は一九二七年の国際経済会議の勧告を、効果あらしむべき絶好の機会たるのみならず、日本と通商上深き利害関係ある諸国との間に、右条約の成立を見ることは日本に取りて極めて有利なりと被存候間、直に右会議に御参加相成候様希望仕候、此段建議候也
一三、関税据置に関する一般条約案
 明年一月末開催、国際聯盟主催外交官会議に於て、左記趣旨の国際条約の成立せんことを希望す。
 第一条 各締約国は本条約調印の際、公表済み最近年度其の国輸入統計表掲記特定品目の輸入総額の三割以上が、他の締約国の一により製産輸入せらるゝものある場合には、当該品目の輸入税率を本条約調印の日より向ふ二ケ年間引上げざるべきことを約す。但し右三割以上の輸入を占むる当該物品輸出国の同意を得たる場合には、此の限に非ず。
 第二条 左記何れか一つ場合に該当するときは、前条の規定に拘はらず関税率を引上ぐることを得。
  一、引上げられたる輸入税額と同一の税額を、同一又は類似の内国製産品に対し賦課するとき。
  二、締約国の通商航海に対し、区別待遇を賦与する国の製産品に対し、報復の目的を以て特別の関税を課するとき。
 - 第37巻 p.327 -ページ画像 
  三、輸出奨励金を受くる物品に対し、相殺の目的を以て特別関税を課するとき。
  四、不当廉売により締約国重要産業が危害を被るの虞あるとき。
 第三条 締約国は本条約の実施に関し、当該国産品を輸入する主要関係国、又は地域が均しく之に参加することを条件とすることを得。但し右様実施の条件とする前記主要関係国、又は地域の数は三個を超ゆることを得ず。
一四、関税制度に関する決議
 (一)一国の関税は財政上の目的に出づると、産業上の必要に基くとを問はず、出来得る限り低率に置くべきこと。
 (二)別国との関税協定を予想し、之に備ふる為一般税率と最低税率との開きを特に甚だしくし、又は国定税率を必要以上に引上げ若くは引下げを留保するが如き措置を採らざること。
 (三)関税率の制定又は関税の協定をなすの際、最恵国条款の働きを無効ならしむるが如き、税目の細分を行はざること。
 (四)関税率は出来得る丈け変更せざるべく、又相互の条件により右据置を約するは、国際通商上望ましきものなること。
 (五)関税率の引上実施には緊急の場合の外、実施前相当の猶予を置くべく、又廻漕中の貨物には旧税賦課の利益を得しむること。
一五、関税賦課標準に関する決議
 (一)関税率は出来得る丈け従量にて定むること、又同一品に対し従量従価を併課することは、絶対に之を避くること。
 (二)従価税の賦課標準は、輸出価格に運賃保険料、其他の諸掛を加算せるものを適当と認むること。
 (三)従価税を従量税に変更し、又は課税の標準に変更を加ふる場合には、之が為め事実上関税引上げの結果を見るが如きことなきやう注意を加ふべきこと。
 (四)従量税が一定従価率を標準として定められたる場合に於て、輸入価格が下落する場合には右に対応し、従量税を引下ぐべきこと。
 (五)前記一乃至四の趣旨の目的を達する為、国際的措置を採るを可とすること。
一六、関税以外の通商衡平問題に関する決議
 (一)輸入国の重要産業に危害を与へ、又は之を破壊するを目的とすること明瞭なるが如きダンピングは、之を行はざることに就き適当なる国際的措置を講ずるを可なりと認むること。
 (二)補助奨励金の濫用は、通商の衡平を阻害するのみならず、一般国民の負担に於て特定少数者に直接の利益を与ふるものにして弊害多きものなる処、一国に於て此の制度を実行するときは、他の競争国にては之れを真似同様の措置を採るに至り、又対手国は之れが為め関税引上げ等、対抗手段を採るに至るべきに付き、出来得る限り其範囲並に程度を限定すべきこと。
 (三)度量衡に関しては一八八五年、所謂メートル条約諸国間に締結せられたるも、現に英・米等の諸国は碼封度法を併用せるため
 - 第37巻 p.328 -ページ画像 
未だ度量衡に関しては国際的に完全に統一せらるゝに至らざるを以て、一定の時期以後はメートル法を専用することに付、国際的措置を講ずるの要ありと認むること。
 (四)商標及表記問題に関しては、一九二五年ヘーグに於て工業所有権保護条約の改正を為し、我国亦其調印国なるも未だ批准し居らず、而して之に批准することを得る期限は、既に経過したり。然れども右の改正条約が広く行はるゝことは、経済上の不正なる国際的競争を防止し、通商の衡平を保持する上に効果大なるべきを以て、政府に於ては速に之に加入する為め、必要なる手続を執られむことを望むこと。
一七、関税行政及手続上の処置に関する決議
 関税手続簡捷に関する国際条約は、之が成立には帝国の主張与つて力あるものなるのみならず、既に調印後六ケ年の久しきに渉り、主要各国に於て批准を完了し、又帝国法制上何等の支障なきものに属す。而して其の趣旨たるや国際通商上、過重・不必要・専擅的なる関税手続を廃止すると共に、各国の通商に対し衡平平等なる待遇を附与するにあり。本邦対外通商増進上甚だ利益あるものなるを以て政府は速に之を批准せられんことを望む。
 (参考)本条約調印日 一九二三年十一月三日
     調印国    三十七ケ国
     条約実施日  一九二四年十一月二十七日より
     批准国(一九二九・八・三一日現在)
     墺、白、伯、英、濠、南阿、新西蘭、印度、勃、支、チエツコ、丁、埃及、芬、仏、独、希、匈、伊、ルクセンブルグ、モロツコ、和(蘭領印度を含む)、諾、波斯、羅、セルブルクロアト・スロヴエーヌ、暹、瑞典、テユニス。
一八、海運同盟に関する決議
 海運同盟は海運業の性質上、之れが成立を容認すべきものと認む。但し国際平和及通商上の発達に資せんが為、左記の点に注意を要す
 (一)荷主及船主間の利益を衡平に調整するが為、荷主の団結を容易ならしむる等、適当なる措置を講ずること。
 (二)同盟規約及協定賃率表は、当該汽船会社所属国官憲に届出づべく、又営業上の秘密に渉らざる限り公表すること。
 (三)既設海運同盟はその維持上、著しき支障を来たすの虞なき限り、衡平なる条件の下に新会社の加入を許すこと。
一九、外国人待遇条約案に関する決議
 最近巴里に於て、国際聯盟主催の外交官会議の議題となり居る外国人待遇条約案に付ては、元来本邦委員の提唱に其端を発せるものにして、其の趣旨とする所は外国人の入国問題には触れざるを遺憾とするも、その入国後の待遇に関しては、従来に於ける我国の主張と大体に於て一致し、世界各国就中日本と経済上の利害関係密接なる諸国に、之れが実行を見るに至ることは全関係国に採り甚だ有利なり。併も右条約案実行は本邦現行法制上多大の不便あるものと云ふ
 - 第37巻 p.329 -ページ画像 
を得ざるに付、我政府に於ては単に該会議に参加するのみならず、本条約案に対し、左記各項修正を加へたる上、本邦全権をして之に調印せしむるの運びに至らしめんことを適当と認む。
  修正要項
 (一)本条約は法制の実施、及その運用の完備せる文明諸国間、及その国民に対し適用せらるゝものにして、特殊の法制の下にある国、及其の国民に対しては、前記法制の実施及運用の完備するに至りて始めて本条約案の実施せらるべき趣旨を適当なる方法を以て、本条約中に明かにし置くこと。
 (二)前文中終りより三行目の「商業」は、その範囲狭きに過ぐるを以て「経済的活動」と改むること。
 (三)第二条中、内国民又は隣接国民に対する但書を削除すること。
 (四)第三条及第四条は存置するを可とすること。
 (五)第六条中の「外国人に関する警察法規」は「外国人に一様に適用せらるゝ警察法規」と改むること。
 (六)第七条第一項末段に、第九条第二項中段所載「内国民及外国人に対し、差別なく適用せらるべし」なる句を附加すること。
 (七)同条第二項「差別的の規則」なる字句は、内国人との差別なる意味を明瞭に規定すること。
 (八)同条第二項(ハ)中沿岸貿易は外国人に対し、相互条件附最恵国待遇を賦与すべき趣旨に改むること。
 (九)第十条第一項中の「財産権(Patrimonial rights)に関し」なる字句は不要に付、削除すること。
  「附帯決議」第十条第三項に関し、政府に対し左の希望決議をなせり。
  「台湾に於ては現在は土地所有権を外国人に禁止し居れども、速に内地同様に国防に関係なき地域に於ては、外国人に土地所有権を認むる方針をとられんことを希望す。」
 (一〇)第十条第四項中、不動産又は有価証券の取得に対し、国家の重要なる経済的資源の不当なる支配云々なる留保を附するは、余り広汎にすぎて濫用せらるゝ虞あるに付、一層限定的字句に修正すること。
 (一一)第十一条第一項中、司法上又は行政上の負担、又は職務なる字句は意味稍不明なるに付、外国人が本項の下に免除を受くべき負担職務の範囲を明瞭にすること。
 (一二)第十四条第一項の規定は、船舶二重課税免除に関する本邦現行法、及右法律を基礎とし締結せる諸取極に反するも、本項の趣旨とするところは、国際通商上適当なるを以て之を認むることゝし、本邦現行法に対しては適当なる修正増補をなし、船舶による収益に就ては、本条約の如き船主国籍主義と本邦現行法の如き船籍主義とを併用して、二重課税免除の措置をとること。
 (一三)第十五条中、第十一条(第一項)とある所の括孤内に「第三項・第四項・第五項」を加ふること。
 (一四)第十六条第三項の末文を、外国人一般に適用せらるゝ法令に
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遵由すべしと改むること。
 (一五)第二十一条中「国際通商」なる字句を「国際的経済活動」と改むること。
 (一六)第二十二条中の「直接交渉又は他の友誼的方法により解決することを得ざる云々」の字句は、余りに抽象的なるを以て、輸出入禁止制限撤廃条約第八条の例に倣ひ、具体的解決方法を規定するを可と認む。尚第十条第四項等の重大なる国家の利害に影響する規定は、之を本規定より除外するを可と認むること。
 (一七)第二十八条第一項の「保護領」の次に「海外領土」Overseas territories)なる字句を挿入すること。
 (一八)第二十八条第一項の終りに、左記趣旨の但書を加ふること。「但し締約国は前段の規定により、或る領域の一部に対し本条約の適用を留保する場合と雖も、右領域内に於て本条約加盟国人民の間に、本条約中内国民待遇又は最恵国待遇を保障せる事項に関し、何等の差別待遇をなすことを得ず。」
 (一九)第二十九条は削除すること、但し止むを得ざる場合には右に代へ、議定書又は議事録中に「本条約の規定は特別の明文ある場合の外、外国人の入国問題に付、何等触れたるものに非ざる趣旨」を明かにするも差支なきこと。
 (二〇)議定書第二に関し、第一項及第二項を削除すること、(本決議第三参照)
 (二一)議定書第七第三項に関し
 第一案、後段但書を全部削除すること。
 第二案、但書の末尾に入国後に於ける外国労働者被傭人、其他賃銀を受くる者の滞在・定住に関する保障につき、最恵国待遇を附加すること。
 (二二)本最終議定書の趣旨に就ては異存なきも、労働者の入国及入国後の待遇に付ても、最恵国待遇を必要とする本邦の主張に杆格せざるやう、適当の修正を加ふること、但し本件に就ては本決議第一の点をも考慮すること。
二〇、ガストン・レヴイ氏提出の報告
 ガストン・レヴイ氏提出の決議案は賛成すべきものとす。我国の産業組合運動は、左記事項の実現を目標とし、其の進展を期すべく、産業組合中央会に於て指導奨励を加へつゝあり、而して現在の状勢は未だ国際的運動に対して満足なる活動をなし得ざるを遺憾なりとす雖も、将来国内に於ける運動の完成を期すると共に、国際的運動に向つて、進出をなさんとするものにして、原則として本決議案に一致するものとす。
 (一)過去及現在に於けるが如き、金融事業に偏したる我国産業組合の状態を改めて、購買・販売・利用事業の積極的発達を期すること。
 (二)各種産業組合聯合会の活動を図るが為め、総ての産業組合は地方的聯合会の絶対的利用を期すること。
 (三)各種の既設及今後新設せらるべき全国的聯合会に対して、絶
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対的加入と絶対的利用を実現して、全産業組合の団結による生産事業を行ひ、又全組合員の生産物の販売を行ふこと。
 (四)都市に於ける産業組合の発達を図り、殊に消費者の産業組合の活動を促進して、生産者の産業組合との聯絡を密接ならしむること。
  (附記) レ氏の報告といふのは、産業組合の国際的協力が世界平和の促進に寄与すること大なるを述べたもので、プラーグ経済会議に提出したものである。
   ○尚本年度中ニ行ハレタル理事会左ノ如シ。但、栄一出席セズ。(「社団法人国際聯盟協会会務報告」昭和五年度ニヨル)
     回数   月日     会場      議題要約
    第九十二回 十二月十二日 当協会集会室  一、昭和六年度予算審議の件
    第九十三回 三月三十日  〃       一、昭和六年度予算案承認
                         一、本協会婦人部会費取扱の件他
    第九十四回 四月二十一日 日本工業倶楽部 一、昭和五年度決算報告
                         一、第十一回通常総会及び第七回支部長会議開催の件
                         一、第一回通常総会に提出すべき決議案「国際紛争平和処理促進の件」(平和促進の決議と軍縮問願に関する決議とを区別して二つの決議案を作成することゝして、その起草委員を会長より指名選任することに決定)
                           其他


国際メール 第七〇号・第七丁昭和五年一一月一〇日 英国経済使節懇談会(DK370083k-0008)
第37巻 p.331-332 ページ画像

国際メール 第七〇号・第七丁昭和五年一一月一〇日
(謄写版)
    ○英国経済使節懇談会
 本協会主催の英国経済使節懇談会は去る十一月五日午後四時より中央亭に開催、使節側より団長トンプソン卿を初め九名の出席あり、邦人側より阪谷男・山川博士・神川教授・宮岡氏・田村氏・山田博士・頭本氏其他にて二十五名の出席あり、阪谷男開会の辞を述べ、ワイルド氏団長に代りて謝辞を述ぶ、次で双方より発言者を指名し、大要左の如き意見が交換された。
 (イ)志立氏=英国が保護関税に傾く結果は啻に日英両国の通商関係を阻むのみならず、両国の国交、世界の平和にも影響するものなる故、英国は自由通商の精神貫徹に努められたし。
 (ロ)アーレン卿=英国は戦後市場を失ひ、且つ関税障壁の高まれるに対し、極力低下に努めたるも諸国が保護貿易を捨てざる為、英国貿易が保護主義に傾くは止むを得ず。又印度の関税に対しては英本国に支配の力なし、理想としては支那・印度の生活向上と購買力増進を計り日英共同の繁栄を来すにある。
 (ハ)頭本氏=米国は従来支那に対し利害関係少かりし故、英と其政策
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を異にしたるが今は関係密接なるに至れり、今後は日英米三国協調して支那の平和維持、購買力増加を計り度し。
 其他数氏の意見の開陳があつた。


国際聯盟協会書類(五) 【(謄写版) (ゴム印) 供御参考】(DK370083k-0009)
第37巻 p.332-334 ページ画像

国際聯盟協会書類(五) (渋沢子爵家所蔵)
(謄写版)
 (ゴム印)
 供御参考
経済委員会書類第百十五号(昭和五年十一月一日)
    第二十二回経済委員会議事
一、日時及場所 昭和五年十月三十一日午後五時より国際聯盟協会集会室にて。
一、出席者(順序不同)
  山川委員長・飯田九州雄氏・上田貞次郎氏・猪谷善一氏・浅川栄次郎氏・千石興太郎氏・清水安治氏・志立鉄次郎氏・川西実三氏・小汀利得氏・倉橋藤治郎氏・奥山清治氏・大熊真氏・牧内正男氏・山形誠一氏・安間徳勝氏。
一、議事大要
  英国経済使節に対する覚書草案(書類第百十三号)を審議し、別紙第百十六号の如く確定を見た。但し字句の点に就ては当日の会合に於て決せず事務局側にて会後適宜案文したる部分あり。又確定覚書に於ては覚書草案中の具体的事項を削除したる点あるも、此れらの削除したる部分は懇談会の席上にて若し問題が起れば述ぶることゝしたり。
(別紙・謄写版)
 (ゴム印)
 供御参考
経済委員会書類第百十六号(昭和五年十一月一日)
    英国経済使節に対する覚書
英国経済界の有力者から成る極東経済使節一行が政府の命を受け、英日、英支間の貿易状態を調査し、併せてその改善を図る手段を講究する目的を以て、今般我国に来訪せられたるに際し、我日本国際聯盟協会経済委員会が同使節一行を迎へて本日玆に相会し、諸般の経済問題に関し互に腹蔵なき意見を交換する機会を得たのは我等の最も欣快とするところである。我等は英国経済使節一行が長途数ケ月間の視察中幸ひ健康に恵まれ、よくその使命を全うせられんことを切望する。
我が経済委員会は英国経済使節の本邦来訪の報に接し、こは我国と英国との経済上の提携を一層密接ならしむると共に相互の理解を増進し更に国際経済の進歩に寄与し得る絶好の機会であると考へて居るので玆に懇談会を開くに至つたのである。英国使節が来朝以来、非常に多忙なる日程を有せらるゝに拘らず、御来会を得たることは我等一同が大いに感謝せんとするところである。
(一)一九二七年五月の国際経済会議閉会の辞に於て議長チユニス氏は「国際通商は本来又は一般的に勝敗の問題にも非ず、又他に不利益を与へて自己が利益を得んとする問題にも非ずして相互に利益を享受するものなりとの事実が必然本会議の基礎をなすものなり」と述
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べたが、我経済委員会は此チユニス氏の言葉が、そのまゝ日英両国間の経済関係にも適用せらるべきものであるといふことを固く信ずる。従つて日英両国の資本技術労働等に関して出来得る限りの提携協力を図ることが国民相互の幸福なることを痛感するのである。然し乍ら、今日の状態に於ては日英間のかゝる提携協力が未だ充分であるとは言ひ難い。日英両国の経済的提携には猶多くの発展を図るべき余地が残されてゐると思はれるのである。
(二)我が国際聯盟協会経済委員会は人類の福祉は各国民の協力を完全にすることによつて達成し得べく、排他的なる闘争は仮令勝者に幸福を齎らすとするも畢竟一時的のものに過ぎないといふことを確信するものである。此の事は隣邦支那に関する諸種の国際問題に就ても亦同様であつて、今日支那を以て列国の角逐闘争場裡なりと見做す思想には甚だ危険なるものあるを痛感せざるを得ないのである。我等は飽迄支那に於ても列国及支那の協力が単に経済的方面に於てのみならず、保健・教育・交通・宗教・風紀等の根本問題に於ても完全円満に達成せられなければならぬことを認める。これが今日の支那全国民の要求である国民的向上を計る唯一の手段であると信ずるこれが為には列国は今日一層の協調的態度をとらなければならぬと共に、他方支那自身も排外的なる行動を慎まなければ、列国も支那も徒らに不幸を見るに終るであらうといふことを惧れる。
(三)大英帝国内にはその結合の基礎を特恵関税の設定によつて鞏固にしやうとする有力なる主張があり現に或種の特恵関税も実在してゐるのであるが、此れが為国際経済の円満なる発展が妨げられる虞あるのである。何となれば大英帝国内に於ては英本国は勿論、印度及海外自治領は何れも国際聯盟構成の一員として、他の聯盟国と全く同等の待遇を受けて居るのであるから英本国・印度及海外自治領相互間の関係は恰も他の国家相互間の関係と同様に見做さるべきものであるのに拘らず、特恵関税の利益に対しては、他の諸国は最恵国条款を楯にするも均霑し得ないのである。即ち特恵関税は排他的性質を有し、国際聯盟の根本精神である通商衡平待遇の精神に反するのみならず、英本国・印度及海外自治領相互間の貿易に特恵を与へんが為に外国品に新に課税し、若くは現行関税を引上ぐるが如き場合が若しありとすれば、それは関税の引下げを力説した国際経済会議の勧告及所謂関税休戦条約に反することになるのである。然かのみならず、実際の貿易関係から見ると、我国は地理的に英国の自治領及印度に接近して居て、我国と此等の地域との貿易は益々増加しつつあるし、現在に於ても我国の輸出貿易中、全欧羅巴の占むる割合は八・一%に過ぎないが、印度は七・四%、加奈陀は一・三%、濠洲は二・五%、新西蘭〇・一%であるから、此らの地域は総体に於て全欧羅巴よりも重要なる地位を占むる訳である。従つて英帝国特恵関税は国際通商の円満なる発展に対する障碍をなすと共に、我国に及ぼす影響は甚だ大なるものがあると言はなければならない。
(四)今年三月印度が綿布の関税引上げをなし、且その際差別関税を設定したことは我国朝野に大なるセンセーシヨンを起し、我が政府は勿
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論、日本商工会議所・大日本紡績聯合会・自由通商協会・日印協会等夫々英本国若くは印度に対し抗議するところがあつたが、我が聯盟協会経済委員会に於ても本年三月七日左の決議をなし更に理事会の同意を得てその趣意を印度に伝へた。
      印度綿布引上問題に関する決議
  印度の綿布関税引上案の内容は全体として国際経済会議の勧告に反するものである。又そのうち英国品を除外し、他国品にのみ五分の差別的附加税を課せんとし、殊に生地綿布に対して一ポンド最低三アンナ半の税率を課せんとすることは事実上我国産品の輸入を禁止せんとするものであつて、之は日印通商条約第一条に違反すると認めらるゝのみならず、関税休戦条約の論議せらるゝ今日誠に遺憾に堪へない。故に本会は此際断乎として印度の関税引上げ殊に差別的関税の賦課に反対するものである。
 然るに此れらの抗議はすべて英国及印度の顧みる処とならず、綿布関税は現に実施中である。此事たる国際通商の円満なる発展を妨ぐるのみならず、日英両国間に伝統的に継続し来つた親善関係に影響を及ぼすこと少からぬものがある。
(五)我等は更に我国の周囲にありて、通商関係の直接且緊密なる英国自治領及印度と我国との条約関係が、国際通商の保障として不充分であることを認めざるを得ない。
(別紙・謄写版)
 (ゴム印)
 供御参考
(六)我国民は今日正当なる手段に依り世界の市場に進出することを期し且実際上相当の進出を為して居る。此趨勢は将来に於ても尚継続せられ展開せらるべきものである。然かも日英両国は互に相協力し相支持することに依つて、両国貿易に尚一層の発展を見ることを得るのである。世界の市場は日英両国が互に他を妨ぐることなき限り、相提携して各自の貿易の発達を計るに充分の余地があるのである。日英両国の貿易の進路が或る一方面に於て強く接触し錯綜する場合に於ても、両国が互に公正なる競争と節制ある態度とに終始するならば、何等危虞する所がないのである。
 それで我々は競争は飽まで公正ならしむることに努め、他方に於ては自己を制し他を排する為に、例へば不当なる関税障壁、或はその他の通商上の障碍を設けて、不当なる経済的発展を妨ぐるが如きことは極力之を避けねばならぬ。之が為には、我々は出来得る限り日英両国の有力者が必要に応じ、隔意なき意見を交換し、相協調して自他共に相利し相進展し、所謂共存共栄の実を挙ぐることに努力するを必要と思ふて居る。今回英国の最も有力なる経済使節の来朝は日英両国間に横はる諸問題に関して、如何に之を取扱ひ之を処理して以て両国親善の伝統的紐帯を固くすべきやをお互に考慮するの機会を与ふるものである。
                          以上
 「附記」本文は経済委員会書類第百十六号英国経済使節に対する覚書の続きをなすものであります。