デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

3章 国際親善
3節 国際団体及ビ親善事業
21款 太平洋問題調査会
■綱文

第37巻 p.580-584(DK370126k) ページ画像

昭和2年8月9日(1927年)

是日、太平洋問題調査会第二回大会ニ出席ノイギリス国代員サー・フレデリック・エヌ・ホワイト、支那代員及ビ日本代員歓迎午餐会、並ニ報告会東京会館ニ催サル。栄一出席ス。


■資料

太平洋問題調査会書類(一)(DK370126k-0001)
第37巻 p.580 ページ画像

太平洋問題調査会書類(一)        (渋沢子爵家所蔵)
(別筆朱書)
昭和二、八、八
拝啓
時下益御清適奉賀候、然ハ去六月末横浜出帆、ホノルヽに於て開催の第二回太平洋問題調査大会へ出席したる我代表者、来る八月八日帰朝可致候に付ては、右一行及び同会に出席の後、同船にて我国に渡来する英国代員サー・フレデリツク・ホハイト氏、ウエブスター教授夫妻及米国実業家ジエローム・グリーン氏夫妻の歓迎を兼ね、代員の報告会を開催致度候間、炎暑の折柄乍御迷惑来九日正午丸ノ内東京会館へ御光来被成下度、此段御案内申上候 敬具
  昭和二年八月六日       太平洋問題調査会
                      渋沢栄一
                      井上準之助
    子爵渋沢栄一殿
 追申
 一、当日は御平服にて尊来願上候
 二、乍御手数御来否封中端書○欠クにて御回示被下度候


(太平洋問題調査会)理事会評議員会書類綴(DK370126k-0002)
第37巻 p.580-581 ページ画像

(太平洋問題調査会)理事会評議員会書類綴
                 (太平洋問題調査会所蔵)
    会務報告(第二回大会以後)
一、第二回大会ニ出席シタル日本代表一行ハプレジデント・タフト号ニテ七月廿九日ホノルルヲ発シ、昭和二年八月八日横浜ニ帰着ス
 右ノ内、沢柳博士ハ既ニ米大陸ニ渡リ、鈴木文治氏ハ、ハワイニ滞留ス
二、昭和二年八月九日正午、東京会館ニ於テ第二回大会出席者歓迎午餐会並報告会ヲ開催ス、出席者左ノ如シ
 代員 石井徹氏          山崎直方氏
    高柳賢三氏         同令夫人
    高木八尺氏         団伊能氏
    那須皓氏          同令夫人
    鶴見祐輔氏         同令夫人
    星野愛子女史        斎藤惣一氏
    武田胤雄氏
    サー・フレデリック・ホワイト氏
    ゼローム・デー・グリーン氏 同令夫人
 - 第37巻 p.581 -ページ画像 
    ウエブスター教授      同令夫人
    洪業教授          鮑明鈐博士
    青木節一氏
     客
  子爵渋沢栄一氏         井上準之助氏
    団琢磨氏          添田寿一氏
    増田明六氏         頭本元貞氏
    大橋新太郎氏  以上廿八名
三、○略ス
                    一九二八、二、一


集会日時通知表 昭和二年(DK370126k-0003)
第37巻 p.581 ページ画像

集会日時通知表 昭和二年        (渋沢子爵家所蔵)
八月九日 火 正午 英国代員サー・フレデリク・ホハイト其他歓迎会(東京会館)



〔参考〕太平洋問題調査会書類(一)(DK370126k-0004)
第37巻 p.581-584 ページ画像

太平洋問題調査会書類(一)        (渋沢子爵家所蔵)
拝啓
時下益御清栄奉賀候、陳者今般ホノルヽに開催せられし本会第二回大会に就ては、一方ならぬ御厚情を賜はり深謝仕候、一行十四名去る六月廿九日横浜を出帆し、七月八日無事ホノルヽ着、同月十五日より廿八日迄会議に参加し、種々重要なる問題に就き審議討究致し、太平洋沿岸諸国間の了解、国際親善の為め幾分の貢献をなし得たる事と信じ居候、会議終了後、七月廿九日同地を発して帰路に就き、本月八日代表者一同無事帰着仕候間、他事乍ら御休心被下度候、該会議に関する詳細なる報告は、目下編纂中に有之、いづれ御手許に差上ぐべく候得共、別紙に概要を記して御清鑑に供へ申候、先は取り敢へず帰朝の御挨拶旁右の御報告申上度如斯御座候 敬具
  昭和二年八月十九日   太平洋問題調査会
                 常務理事 斎藤惣一
    子爵渋沢栄一殿
          御取次中
(別紙)
    第二回太平洋問題調査会大会概要
一、会議期間 一九二七年七月十五日より同月廿八日迄
二、会議地 ホノルル市プナホ学院内
三、プログラム 毎日朝夕二回会合し、会議の形式を全会員出席の「全会討議」と、部分的「円卓討議」とに別ち、問題を細密に討議する為め、大体に於て左の四方面より太平洋の諸問題を取扱ふことに予定されて居た。
  (一)文化・宗教・教育及社会制度
  (二)資源・産業・商業及財政
  (三)人種・人口及食糧問題
  (四)政治・法律及外交
四、主要なる問題 最初一週間のプログラムは、予め定められて居
 - 第37巻 p.582 -ページ画像 
たのであるが、開会前これを変更して全く新にプログラムを作製することゝなつた。
  今回のプログラム中、支那問題は全会を通じて最も重要なる地位を占め、特にその治外法権・不平等条約撤廃、関税自主権、割譲地、租借地問題のため三日間の時日を之に充てたのである。
  移民問題は之に次いで慎重に考究せられ、二日間之が審議を行つたのである。次には人口食糧問題重視せられ、其他委任統治・国際教育・外国伝道・無電及通信の諸問題対外投資・産業化問題、太平洋の外交・文化と教育等の諸問題を討議し、最後に本会の将来に対する討議を終つて閉会したのである。
五、日本と関係ある諸問題に就いて
  日本と関係ある諸問題の中、支那問題については満蒙問題、廿一ケ条問題などが論ぜられた。
  人口及食糧問題は我が国に於て充分な準備のあつた為め、一般の注意を惹き、日本の現情並に将来の問題に対して、深甚の考慮が払はれることゝなつた。
  移民問題に就いては、日米の関する限りに於ては、今回の会議に於ては寧ろ米国側のとる態度によつて、我が国の歩調を定むることゝし、第一、移民問題は完了終結の問題でないこと、第二、日本は敢て米国に移民を送らんとするのではない、第三、日本人の遺憾とするところは国際信義礼譲の無視された点であること、第四には、日系市民の問題は元来米国の問題であるが、日本人の関心事である、若し協力する点があれば喜んで応じたい。第五、移民法実施、入国に関する実際上種々の困難などを挙げ、日本は米国の有識階級の輿論と力を飽くまで信じ、忍耐して正当に解決せらるゝことを待つと云ふ様な態度に出で、米国側に於ては好感を以て迎へ、集団として移民を送らるゝのは困るが、日本は比率制に満足するであらうか、との質問も発せられたのである。尚ウイルバー会長が米国を代表して述べたステートメントに於ては、明かに比率制を採用すべきであると論じて居つた。無電問題に関しては、討議に附すべきや否やの議論があつたが、米国代表よりステートメントが発表された。
  委任統治・太平洋の外交・国際教育・外国伝道・対外投資等の諸問題に於ても、日本に関係ある幾多の問題が取扱はれた。
六、各国の代表者 今回の会議に列したる代表者は、総べて百廿八名にして、之を各国別にする時は
  日本廿一名(内、朝鮮より三名)
  支那十四名
  加奈太十六名
  米本国四十四名
  英国十四名
  比律賓三名
  ハワイ十五名
  右代表者の多くは、政治・実業・教育・宗教、其他の方面に於て
 - 第37巻 p.583 -ページ画像 
国際的知名の人々である。例へば
  英国代表
   サー・フレデリツク・ホワイト氏 前印度国会議長
   ライオネル・カーチス氏 王立外交調査会名誉幹事
  米国代表
   ヂョーヂ・エッチ・ブレークスリー博士 クラーク大学教授
   ワーレス・エム・アレキサンダー氏 実業家
   エドワード・ゼー・ハンナ 大司教
   ウイリアム・エッチ・キルパトリック博士 コロンビア大学教授
   ジェムズ・テー・シヨットウエル博士 同上
   アイビー・リー氏 新聞雑誌経営者
   チェスター・ロウエル氏 著述家・政治家
   レイ・ライマン・ウイルバー博士 スタンフオード大学総長
  加奈太代表
   サー・アーサー・カレー氏 前カナダ出征軍総司令官・マギル大学総長
  濠洲代表
   エフ・ダブリユー・エグルストン氏 前濠洲ビクトリア州検事総長兼鉄道長官
  支那代表
   鮑明鈐氏 北京師範大学政治学教授
   劉鴻生氏 上海水泥公司総理
   余日章氏 華府会議国民代表
六《(マヽ)》、第一回大会との比較 今回は新たに英国代表者の加はるあり、而もその数十有四名、多くは王立外交調査会関係者にして、英国に於ける対外輿論指導の地位にあるもので、支那問題討議に際しては、会議の空気頗る緊張の度を加へた。要之第一回の大会が試験的なりしに比し、今回は建設的・研究的であつた。本会議の重要視されたることは国際聯盟より特に三名のオブザーバーを派遣して、会議の詳細なる報告を求めしに徴しても明白なる、事実である。
七、調査会の性質 本会の目的は、創立以来太平洋沿岸諸国相互間に存する諸問題に就き、正確なる事実を闡明し意志の疎通を計るにあつた、この目的を達する為め特に国家、或は団体の代表者としてゞなく自由に各個人の立場より科学的に研究審議するものでこれは会の特色である。今回も前回と同じく何等の決議をすることはなかつた。併し英国の参加と共に問題を具体化し、実績を挙ぐるに努めやうとする傾向が鮮かになつて来た。
八、調査会の将来 本会は基礎益々鞏固となり、会員は増加し、太平洋問題解決に資する所が少くない事と考へられる。現に本年は英国新たに来り加はり、次回は墨国・露国等が参加するであらう従つて本会の調査部は益々多忙となり、其の取扱ふ範囲も拡張されて来たのである。
 - 第37巻 p.584 -ページ画像 
九、次回に対する希望 本年度会議の一般情勢より察して、太平洋問題の重心は寧ろ東洋にあり、従つて次回の会合は東洋の一地点に開催するを熱望する者多く、殊に日本に於て開催されんことは幹部並に会員の熱望する所であつた。
                   一九二七、八、二〇