デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

3章 国際親善
5節 外賓接待
15款 其他ノ外国人接待
■綱文

第39巻 p.126-128(DK390055k) ページ画像

大正5年6月7日(1916年)

是日、春秋会主催、アメリカ合衆国人モートン・プリンス及ビジェー・ビー・ミレット招待晩餐会、築地精養軒ニ開カル。栄一出席シテ挨拶ヲ述ブ。


■資料

竜門雑誌 第三三七号・第九五―九七頁大正五年六月 ○春秋会晩餐会(DK390055k-0001)
第39巻 p.126-127 ページ画像

竜門雑誌 第三三七号・第九五―九七頁大正五年六月
○春秋会晩餐会 春秋会にては本月七日午後六時より築地精養軒に、米国人モルトン・プリンス博士及びミレツト氏を招待し晩餐会を催せり。当日青淵先生にも姉崎博士及宮岡恒次郎氏と共に、来賓として列席せられたる由なるが、午後七時食堂を開き、先づ黒岩周六氏春秋会長として歓迎の辞を述べ、次て青淵先生の挨拶ありたる後、プリンス博士は姉崎博士の通訳にて左記公開状の趣旨を述べ、満場の賛同を受け同十時半散会したる由なるか、来会者は各新聞社長等二十五名なりしと云ふ
    聯合諸国の人民へ白す
 下記亜米利加合衆国市民一同は、玆に本公開状を協商三国並に其与国の国民に呈す
 我等一同は協商国側の主張を是認し、之に同情を寄せ之と前途の希望を倶するものにして、本公開状はやがて米国人中多数が有する心事を語るものたるを疑はざるなり
 抑今回の欧洲大戦勃発以来、個人としての米国人は英仏及其与国に対して熱烈の同情を表し、独墺二国か戦闘上に用ゐたる残酷なる手段を憎む旨を公言したるもの少なからず、全国の新聞亦盛に同様の意見を発表したり、然れども米人愛国の至情は嘗て之を宣言体の文書として発表するに至らしめさりき、蓋し当初に於て之か声明を我政府に期待し、其後に於ては政府の対独外交に、将又政府か国際法規の擁護と、平和基礎保存の為に厳守せる中立態度に、何等累を及ほさんことを恐れたるか為なりとす
 されは我等は、今や其意見を玆に公表すへきの時機なりと認む、由
 - 第39巻 p.127 -ページ画像 
来我米国人は自由の為めに戦へる国民に対して同情を表するを辞せさるものなり、故に我等は自由と文明の最高理想を保護せんか為めに、目下戦争を為しつゝある国民に対し全国を通し同情同感を傾注しつゝあることを明にせんは我等の義務なりと信す、而して文明の進歩に切実の関係を有する道義の大問題に対し、冷淡なる態度を持するは米国人良心の堪ゆる能はさると、且や独逸人か今回の戦争に関して弁明を試むるもの頗る豊多なるに鑑み、我等は玆に宣言を為すの当然且必要なるを認むるものなり
 我等署名人一同は、独逸か過去に於て文明の増進に寄与したる所少なからざるを認めざるに非ず、学問に於て教育に於て我等米人か独逸の誘掖を受けたること甚だ少なからず、然りと雖とも今回の戦争に於ける独逸の態度を見れば、我等は文明擁護の為めに寧ろ独逸の敗北を希望せざるを得ざるなり
 独逸が白耳義を蹂躙したるは恕すべからざるの罪悪なり、我等米国人は独逸の無道悪虐を責めざるべからず、今回の戦争に於ける独逸の挙措は、実に国際法を破ぶり、道徳を破ぶりたるものと我等は確信す
 他日必ずや平和は克復すべし、然りと雖ども白耳義の国土を白耳義人及白耳義政府に返還せざる如き平和の克復は不可なり、白耳義をして戦禍によりて蒙むりたる損害を、恢復するを得るに足る償金を受くる能はざらしむるが如き平和の克復は不可なり、欧洲列強の間に介在する小国の権利を無視するに至らしむるが如き平和の克復は不可なり、将来斯くの如き悲惨なる戦争か二度と再び発生せざる為めの、保証を確立する能はざるが如き平和の克復は不可なり、斯かる姑息なる平和は幸福に非ずして寧ろ禍源たるなり
 我等か独墺側の敗北を祈りて英仏日伊及露の勝利を希望する理由は後者の勝利か白耳義と塞比亜の恢復を来たし、且軍国主義の破滅を来たさんことを信ずれはなり
   マサチユセツト州、ボストン市
       ホワード・エリオツト(鉄道業)
   コンネクチカツト州ニユーヘブン市
       ジー・テー・ラツド(ニール大学教授)
   ニユージヤシー州、サミツト市
       エツチ・ダブリユ・メービー(著述業)
   マサチユセツト州、ボストン市
       ジエー・ビー・ミレツト(出版業)
   同州同市
       モルトン・プリンス(医学者)
        外四百九十五名


中外商業新報 第一〇八三号大正五年六月八日 ○春秋会晩餐会(DK390055k-0002)
第39巻 p.127-128 ページ画像

中外商業新報 第一〇八三号大正五年六月八日
    ○春秋会晩餐会
春秋会は七日午後六時より、今回米国より来朝せるプリンス博士及ミレツト両氏を主賓とし、又渋沢男・姉崎博士・宮岡恒次郎氏を陪賓と
 - 第39巻 p.128 -ページ画像 
して招待し晩餐会を催せり、食後黒岩会長の挨拶に対し、プリンス博士及渋沢男の答辞あり、右終りて別室にて更に姉崎博士通訳の下にプリンス博士及ミレツト氏の演説あり、同十時半過ぎ散会せり