デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

大正14年10月30日（1925年）

是日栄一、当校商議員吉岡耒作・富田泰三ト飛鳥山邸ニテ面会シ、公民教育ニツキ懇話ス。

集会日時通知表　　大正一四年　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
拾月三十日　金　吉岡・富田両氏来約（アスカ山）

（渋沢治太郎）書翰　　渋沢栄一宛　大正一四年一〇月三〇日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
　　　　　　　　　　　　　　　　　（別筆）
　　　　　　　　　　　　　　　　　大正十四年十月三十日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢治太郎氏来状
謹啓
秋高く季節に入り朝夕別して冷気を感し候折柄、倍々御機嫌克く入らせられ恭悦ニ存候、兼々厚き御尊慮を忝ふし居る村の公民教育の儀ニ付、其以来農繁季中ハ充分ニ経営の緒ニ就くを得ざりしも、是よりハ灯下親しむの季節ニ相成り候旁々以て相当なる実を挙け、村内青年共の恩恵を受けせしむべき秋来れりと、校長以下専任教師ハ勿論外部より補佐の任を尽さるゝ商議員諸氏も、時々集会して其方針を整而著々研究して進行中ニ候も、如何にせん初歩の事故速時ニ理想を実現するを得ず千里の途ニ一歩つゝ丹精致し可申候、恰も本日吉岡耒作氏・富田泰三氏参邸致し、此事業の補佐役として常ニ懇ろなる援助と本村産業上の改良に改善ニ新しき導きと施設とニ応援致され居り又実物教化ニ努力致され居り候、更ニ将来の計劃等ニ関し考究するニ現在の状況を申上て種々御教示を仰上べく親しく閣下ニ拝面致し度存居候処、先般小生参邸拝願の節特ニ有り難き御言葉ニ接し候間、早速両氏ニ告け本日罷出て御繁忙中の一閑を御割愛頂き両氏ニ拝面の栄を給へ、本村教育上ニ関する御教授と奨励の資料ニ御言葉を賜る事を得ハ幸福とする所ニ御座候、小生も同道可致筈の処差支へ生し欠礼致し候、尚両氏ニ理化学研究所を見学致させ下さる様先日御仰せ頂き候ニ付き、大ニ光栄至極と其等の願望を以て御伺致候間何分宜敷願上候　敬具
　　十月三十日　　　　　　　　　　　　　　　渋沢治太郎
　　　　渋沢子爵閣下
　時下急ニ冷気加わり候折柄折角御用心被遊様祈上候