デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

5章 教育
4節 教育行政関係
1款 教育調査会
■綱文

第46巻 p.268-277(DK460082k) ページ画像

大正2年10月29日(1913年)

是日、文部大臣官邸ニ於テ、当調査会開催セラレ、栄一並ニ中野武営・豊川良平・早川千吉郎等ノ提出ニ係ル、学制改革ニ関スル建議案付議セラル。次イデ十一月十四日開カレタル当調査会ニ栄一出席シテ提案理由ヲ説明ス。


■資料

東京日日新聞 第一三二六九号 大正二年一〇月二四日 ○教育調査会議案(DK460082k-0001)
第46巻 p.268 ページ画像

東京日日新聞  第一三二六九号 大正二年一〇月二四日
    ○教育調査会議案
教育調査会は来る二十九日午後一時より文相官邸に於て開会するに決し、二十三日夫れぞれ委員に通牒を発したるが、文部省より諮問すべき学制改革案(商科大学年限短縮・高師存廃案其他)は尚脱稿せざるを以て之等は孰れも次回に譲り、当日は渋沢・中野・豊川・早川氏等の実業家側より提出したる年限短縮案及成瀬仁蔵・花井卓蔵氏等の女子教育振興に関する案並に杉浦重剛氏の国民思想統一に関する件等、主として建議案につき協議すべしと


東京日日新聞 第一三二七〇号 大正二年一〇月二五日 ○教育調査会開会(DK460082k-0002)
第46巻 p.268-269 ページ画像

東京日日新聞  第一三二七〇号 大正二年一〇月二五日
    ○教育調査会開会
教育調査会は来る二十九日午後一時より永田町の文相官邸に於て開会するに決したるが、之より先き調査会員中の一部有志は某所に会合し
 - 第46巻 p.269 -ページ画像 
教育調査会は単に文部省の諮問を受けて学制問題を審□するのみならず、更に会員自身も亦その意見を建議若くは開陳して、現代教育の欠陥を補はざるべからずとの申合をなし、その結果劈頭第一、左の諸建議案を提出するに決したれば、当日は此等の建議案を附議さるゝに至るべく、例の商大問題・単科大学問題・大学高等学校年限短縮問題・高師存廃等は尚ほ未脱稿に属するを以て、孰れ次回に文部省より諮問さるゝ事となるべし、委員の建議案左の如し
 一、国民思想の統一に関する件
 一、学風の改良に関する件
 一、官私立学校の待遇平等に関する件
 一、立憲的世界的思想涵養に関する件
 一、精神教育の改善に関する件
 一、教育者の待遇改良に関する件
 一、女子高等教育奨励に関する件
 一、学制改革に関する件(各種学校を含む)
尚ほ渋沢・中野・豊川・早川氏等の実業家側より数項の建議案も提出されたるが、その内容は(一)自治の精神に関する件(二)信念の養成に関する件(三)実際的人物養成に関する件(四)年限短縮に関する件を除くの外、他の前記委員の提出案と略同様のものなりと


東京日日新聞 第一三二七二号 大正二年一〇月二七日 ○調査会建議案内容(DK460082k-0003)
第46巻 p.269-270 ページ画像

東京日日新聞  第一三二七二号 大正二年一〇月二七日
    ○調査会建議案内容
来る二十九日午後一時半より永田町の文相官邸に於て開会の筈なる教育調査会に附議せらるゝ会員の建議案大要左の如し
  △国民思想統一に関する件(杉浦重剛氏提出)
 全文四項より成り、国民思想統一の方法として法律・政令は凡て教育勅語の趣旨を貫徹普及せしむるにある事、皇室に直接接近せる諸大官連は教育勅語の趣旨を実践躬行せしむる事、一年志願兵及徴兵猶予の特点は国民皆兵の趣旨に反するを以て此特点を削除する事、出版物の取締は従来内務に一任されしも今後は文部・内務合議の上にて適当なる取締法を講ぜしむるの事
  △立憲的国民思想養成に関する件(高田早苗氏等提出)
 現在中等学校に於ける法制経済科以外、尚立憲的国民思想養成のため国民科様の学科を新設せしむる事
  △女子の高等教育奨励に関する件(成瀬仁蔵・花井卓蔵氏等提出)
 現在の高等女学校以外、女子の専門学校及大学を認許し綜合・単科其何れかに依らしむる事
  △学制改革に関する件(花井卓蔵氏提出)
 各種学校学年を短縮し並に官私学校の待遇を平等にする事
  △学制改善に関する件(渋沢栄一・中野武営・豊川良平・早川千吉郎氏等提出)
 現行学制は年限長きに失するを以て成るべく之を短縮する事、官私学校の待遇を平等にする事、人格の修養に一層重きを置く事、実用的教育の改善普及を図る事、体育の養成を図る事、現行試験制度を
 - 第46巻 p.270 -ページ画像 
改正して予備的教育の弊害を芟除する事
右に就き文部当局者は今回提出せられたる議案が何れも教育上重要のものたるには相違なく、就中一年志願兵徴兵猶予問題の如き、現行制度にありては学校の卒業期と入営期との間に聯絡を欠けるを以て、何等かの改正を必要とすべく、試験制度の如きも文部は夙に其弊あるを認め、小学校にありては平素の成績を考査し、毎学年の試験成績に重きを置かざる事、中学校に対しては科目に依りては学年試験を行はざる等の途を開き、試験成績を重視せざるにも拘らず、全国各学校尚ほ滔々として試験を争ひ、其結果延ひて中学をして単に予備的教育たるに了らしむるの傾向なきにあらざるを以て、是非とも其改正を必要とすべく、又立憲的国民思想養成に就ては小学校に於ては既に其読本に於て国民納税の義務より憲法選挙法の大要に至るまで教授せしめ、中学にありては法制経済科を置き其思想涵養に怠らざるも、而も教員の関係より全国中学校中法制経済科を設置するもの猶約三分の一に過ぎざる状況なるを以て、是等に対しても何等か適当の方法を講じて普及せしむるの必要あり、其他年限短縮問題の如き、文部の空論なるのみならず社会一般の希望する所なるを以て、是非とも今回の調査会にて解決せしめたく、之を要するに今回の建議は文部省も大体に於て同意なりと明言するを憚らずといへり


中外商業新報 第九八八五号 大正二年一〇月三一日 ○実業家と教育 根本的改正意見提出(DK460082k-0004)
第46巻 p.270 ページ画像

中外商業新報  第九八八五号 大正二年一〇月三一日
    ○実業家と教育
      根本的改正意見提出
 実業家側の教育調査委員は、従来の調査が動もすれば学研的に流れ充分の効果を奏せざりしより、今回は実際的活動の方面より種々の意見を同会へ提出する由にて、先づ教育の根本方針に於て、第一修学年限の短縮、第二品性の陶冶、第三教育の優遇、第四実用的智識の普及を標榜し、之に対する具体的意見をも提出する筈なりと


東京日日新聞 第一三二八九号 大正二年一一月一三日 ○来るべき教育調査会(DK460082k-0005)
第46巻 p.270 ページ画像

東京日日新聞  第一三二八九号 大正二年一一月一三日
    ○来るべき教育調査会
教育調査会は来る十四日午後一時半より永田町の文相官邸に於て開会の筈なるが、同会へ提出せらるべき文部省よりの諮問案は尚大学及び直轄各学校との間に交渉未済のものあるを以て、当日は多分委員よりの建議案につき附議するに止まるべく、而も今日までに提出されたる委員の建議案は数件に達し、中には全く正反対のものもありて、一々之を審議するに於ては少からざる手数を要するより、差当りては前回よりの引続議案たる杉浦重剛氏の国民精神統一案及渋沢男等実業家よりの提出に係る建議案だけを附議し、其他は全部を一括して特別委員に附託し審議する事となるべし


中外商業新報 第九九〇〇号 大正二年一一月一五日 ○教育調査総会 六建議案の審議(DK460082k-0006)
第46巻 p.270-271 ページ画像

中外商業新報  第九九〇〇号 大正二年一一月一五日
    ○教育調査総会
      六建議案の審議
 - 第46巻 p.271 -ページ画像 
教育調査会は十四日午後一時半より文相官邸に開会、奥田副総裁以下各委員並に福原次官其他各局長出席、劈頭△国民精神統一案 を附議し、前回に引続き提案杉浦重剛氏より原案を説明し、次に江木千之氏は当局の意見を問ひたるに、福原次官は各国の事例を引いて教育機関の設備及び教員俸給の支弁方法に就き答弁する所あり、渋沢男は△教育方針改善案 に就き提案の理由を(一)修業年限の短縮(二)官私学の待遇(三)人格修養の急務(四)実業教育の改善(五)体育の奨励(六)試験制度の改正(七)教育者の待遇(八)自治的思想の養成の各項に渉りて詳細なる説明ありたる後△立憲思想養成案に入り 提出者高田早苗氏より説明し、将来の国民は立憲的世界的ならざるべからざるを以て、能く憲政及自治制の運用を会得せしめ、列国と伍して克く親和角逐し得る政治経済的知識を与ふるの必要を述べ、終つて箕浦勝人氏は提出者花井卓蔵氏に代り△学制改革案 の説明を為し、各種学校に於ける教科目を整理し修業年限を短縮し且つ大学教育は必ずしも独り官立大学のみに止めず私立を認め、且つ其待遇を平等たらしむベしと述べ、最後に成瀬仁蔵氏の△女子高等教育奨励案△学風改善案 の二案を提げて滔々一時間余に渉り提案の理由を説明し、前案に対しては女子の綜合・単科併用の大学及び専門学校設立の必要を述べ、後案に対しては現行の消極的受動的なる教育方針を積極的自動的に改ため、宗教的精神の涵養を鼓吹し以て敬虔敦厚の気風を養成せざるべからずと述べたるに対し、江木・高木の諸氏より種々の質問あり結局右建議を一括して委員九名に附托し、調査の上更に重複連絡ある諸事項を綜合統一する事に決し、奥田文相より本年中は来る廿六日及来月三日・十六日の三回総会を開き、明年よりは毎月期日を定めて開会する旨を告げ、五時散会、特別委員左の如し
 菊池大麓・江本千之・岡田良平・成瀬仁蔵・杉浦重剛・高田早苗・鵜沢総明・早川千吉郎・本郷房太郎
因に、特別委員会は廿七日午後一時第一回委員会を開会することに決せり


中外商業新報 第九九一二号 大正二年一一月二七日 ○学制案の討議 昨日の教育調査会 二案倶に委員附托(DK460082k-0007)
第46巻 p.271-272 ページ画像

中外商業新報  第九九一二号 大正二年一一月二七日
    ○学制案の討議
      昨日の教育調査会
      二案倶に委員附托
教育調査会は廿六日午後一時半より文相官邸に於て開会、菊池・江木渋沢・関・高木・岡田・小松原・箕浦・水野・早川・改野・桑田・鵜沢・豊川・中野・高田・杉浦・鎌田・成瀬・本郷・山屋の各委員出席の上、奥田文相閣議の為め欠席し、菊池男代つて議長席に就き、文部省諮問に係る学制案を附議し、第一諮問案なる
  △直轄学校始業期統一に関する件
に就き福原次官は提案の理由を説明して曰く
 現在の制度に依れば、小学校及中学校は何れも四月を以て学年開始の期と為せるに拘はらず、大学・高等学校其他各種専門学校の一部は九月を以て学年の開始と為せるが故に、中学校を卒業せる者が進
 - 第46巻 p.272 -ページ画像 
んで高等の学校に入学せんとするに当りて、数ケ月の間隙あり、之が為に徒に修学の期間の長からしむるのみならず、其の間秩序ある学校生活を離るゝが為に、自然学生の品性風紀に悪影響を及ぼすの虞なしとせず、之れ単に学年短縮の利あるのみならず、高級学校との入学上の連絡を完ふせんとするにあり
と述べ、高木・関・本郷諸氏の原案賛成説に対し、岡田氏は本案の実施に就き具体的方法如何と問ひ尚其方法如何によりては賛否俄に決し難しと述べ、高田氏は高等学校の入学選抜試験に就き質問する所あり最後に江木氏は反対派の急先鋒として滔々一時間余に渉り現行制度の沿革を説明し、直轄学校の始業期を改めんよりは寧ろ小中学をして九月に繰上ぐるに如かずと述べ、福原次官は之に対し、現行制度成定の当時は直轄学校入学者の資格限定せられたりしを以て、九月を便利となせしも、現在にては中学卒業者以外入学し得ざるの規定あるにより四月と改むるを適当と信ず、尚此際江木氏の意見の如く仮りに小中学校の入学期を改めんか、啻に其学校数の多きのみならず実に地方財政に多大の影響を及ぼすべきに依り、到底実施する能はざるべしと答弁し、小松原氏の委員を挙げて更に調査すべしとの提議ありたるに依り第二諮問案の審議に移り
  △法科大学の学年短縮に関する件
に就き福原次官再び説明し
 帝国大学法科大学の修業年限は現在四ケ年なるも、第四学年の最終一学期は専ら学年試験及卒業試験の為に之を充つるの状況なるを以て、卒業試験は之を廃止し、其他授業科目等に相当の改正を施す事とせば、修業年限を一箇年短縮するも斯学最高教育の目的を達するに支障なしと認むるに依り、修業年限を三箇年に改むる事と為さん云々
と述べ、高田・箕浦・江木・岡田等諸氏の学科課程の変更方法其他に関する質問に対し、福原次官・松浦専門学務局長の答弁ありたる後、渋沢男は、余等の教育方針改善に関する建議案に多大の関係あるを以て、第一案の如く委員に附託せられんことを希望し、高田氏の動議により、両案を一括して前回建議調査の委員と同一委員に附託する事に決し、午後四時散会せり、因に同調査委員菊池・江木・岡田・成瀬・杉浦・高田・鵜沢・早川・本郷の九氏は二十七日午後一時半より文相官邸に於て同特別委員会を開く筈也


中外商業新報 第九九一九号 大正二年一二月四日 ○教育調査委員会(DK460082k-0008)
第46巻 p.272-273 ページ画像

中外商業新報  第九九一九号 大正二年一二月四日
    ○教育調査委員会
教育調査会にては三日午後二時より文相官邸に於て引続き特別委員会開会、奥田文相、菊池・早川・高田・杉浦・岡田・成瀬・本郷・江木水野子(傍聴)の各委員、並福原次官、田所普通・松浦専門両局長、粟屋・武部両幹事等列席、菊池委員長会長席に着き劈頭杉浦氏の提案に係る徴兵猶余に関する件を附議せるが、福原・本郷の両次官は交々起つて一年志願兵に関する徴兵猶余の撤廃は到底目下の処にては実施すること甚だ困難なりと弁じ、結局文部と陸軍との間に於て交渉の上
 - 第46巻 p.273 -ページ画像 
更に修正案を提出することに決し、次に文部省の諮問案たる法科大学年限短縮案外一件に移り、種々凝議せしが決定に至らず、四時半散会せり、因に次回は十三日開会の筈


集会日時通知表 大正二年(DK460082k-0009)
第46巻 p.273 ページ画像

集会日時通知表  大正二年        (渋沢子爵家所蔵)
十二月十七日 水 午後一時半 教育調査会(文部大臣官舎)


中外商業新報 第九九三三号 大正二年一二月一八日 ○教育調査総会 年限短縮案可決(DK460082k-0010)
第46巻 p.273 ページ画像

中外商業新報  第九九三三号 大正二年一二月一八日
    ○教育調査総会
      年限短縮案可決
教育調査会総会は十七日午後一時より文相官邸に於て開会、奥田副総裁を始め菊池・成瀬・関・九鬼・鎌田・箕浦・水野・早川・高田・江木・桑田・杉浦・渋沢・箕浦《(衍)》・高木・岡田・本郷・山屋の各委員出席奥田文相会長席に着き、先づ文部省の諮問案たる(一)法科大学年限短縮案(二)高等学校学年繰上案、即ち法科大学卒業年限四年を三ケ年に短縮する件及び高等学校学年を四月に繰上ぐる件なるが、右に関し菊池委員長より委員会の経過を報告し、両案とも異議なく可決せりと述べ、二・三の質問応答ありて大多数にて可決し、次に(一)甲種商業学校に二部を新設し、修業年限を一ケ年とし、中学校卒業生を入学せしむる件外一件は、松浦専門学務局長の説明ありて四時半散会せり、因に学年を四月に繰上ぐる件は学科其他の都合に依りて直に実施すること能はず、右は明後年度より実施さるべく、又年限短縮に関しては大学側との交渉の上ならでは決定せざるも、明年度より実施さるべしと聞く


中外商業新報 第九九三四号 大正二年一二月一九日 ○試験制度改正決定 十八日の教育調査会(DK460082k-0011)
第46巻 p.273 ページ画像

中外商業新報  第九九三四号 大正二年一二月一九日
    ○試験制度改正決定
      十八日の教育調査会
教育調査会にては十八日午後一時より文相官邸に於て特別委員会開会奥田文相を始め各委員並に水野子・高木男・山屋氏等傍聴として出席先づ渋沢男等実業家より建議せられたる官私学校試験統一に関する件を附議せり、該案は所謂私学優遇案とも云ふべきものにして、従来文官高等試験、判事・検事・弁護士試験に就きては帝国大学卒業生は予備試験を免除せられ、又は無試験にて夫々登用せられたるが、私立学校卒業生に対しては此の特典なし、此際帝国大学卒業生の特典を撤廃して、私立学校卒業生と同一の試験を受けしむべしと云ふに在り、委員会にては種々議論あり、江木千之氏と文部当局との間に、二・三の質問応答ありたるが、結局委員会にては大多数にて可決し、六時散会せり、因に教育調査会は本年度は之にて一先づ打切り、明年早々開会せらるべしと


中外商業新報 第九九五四号 大正三年一月一一日 ○甲種商業二部教授(DK460082k-0012)
第46巻 p.273-274 ページ画像

中外商業新報  第九九五四号 大正三年一月一一日
    ○甲種商業二部教授
文部省は来る十四日開会の教育調査会に甲種商業学校に二部教授制を
 - 第46巻 p.274 -ページ画像 
設置する件を諮問する由なるが、該制度を採用する必要は中学校其他の実業学校卒業生に高等なる商業上の智識を附与せんとするにあらん修業期を一ケ年とし本年四月より開始の予定なり


渋沢栄一 日記 大正三年(DK460082k-0013)
第46巻 p.274 ページ画像

渋沢栄一 日記  大正三年        (渋沢子爵家所蔵)
一月六日 晴 夕曇
午前七時半起床、静坐入浴、畢テ朝飧ヲ食シ、後○中略 試験制度改正企望者総代二名ト面話ス○下略
  ○中略。
一月十四日 曇時々雨降リ南風強ク寒気大ニ減ス
○上略 午飧後教育調査会ニ抵リ、委員会ニ参列ス○下略
  ○栄一、是年五月二日東京ヲ発シ中国ニ旅行シ、六月十五日帰国ス。本資料第三十二巻所収「中国行」参照。


中外商業新報 第一〇〇五五号 大正三年四月二二日 ○教育調査会更新(DK460082k-0014)
第46巻 p.274 ページ画像

中外商業新報  第一〇〇五五号 大正三年四月二二日
    ○教育調査会更新
山本内閣総辞職と共に教育調査会総裁樺山伯及び同副総裁奥田氏は辞表提出中なりしが、会員の一部には同会設置の趣旨に基き全く政治圏外に超越し、内閣の更迭に左右せられず、独立の調査機関として引続き各種の諸教育制度を調査審議すべしとの説あるも、文部省側にては今後に於ても学制改革を続行するの方針なるも、教育調査会に於て種種の改廃を議決し其実行を文部に逼るが如き事ありては、施政上余程の困難を来す懼れあるに依り、新文相をして副総裁の地位に在らしめ以て其間の疏通を計るべしとの説あるを以て、正・副総裁に対しては一応形式上の留任を勧告するに止め、結局は一木新文相奥田氏に代りて副総裁となるべく、総裁は当分欠員の儘と為し、追つて適当なる人選を行ひ、一木文相より奏薦して勅命あるべしと
  ○山本内閣ニ次イデ大隈内閣ノ成立セルハ大正三年四月十六日ナリ。文部大臣ハ一木喜徳郎。(創元社版、昭和三十年十一月刊「日本史研究事典」ニヨル)


中外商業新報 第一〇〇七〇号 大正三年五月七日 ○教育調査会正副総裁 加藤男と一木文相(DK460082k-0015)
第46巻 p.274 ページ画像

中外商業新報  第一〇〇七〇号 大正三年五月七日
    ○教育調査会正副総裁
      加藤男と一木文相
六日左の如く任命ありたり
            枢密顧問官従二位勲一等文学博士男爵 加藤弘之
教育調査会総裁被仰付
            文部大臣従三位勲二等法学博士 一木喜徳郎
教育調査会副総裁被仰付


中外商業新報 第一〇〇九三号 大正三年五月三〇日 ○教育調査総会 小学校令改正附議(DK460082k-0016)
第46巻 p.274-275 ページ画像

中外商業新報  第一〇〇九三号 大正三年五月三〇日
    ○教育調査総会
      小学校令改正附議
一木文相就任後の第一回教育調査総会は二十九日午後三時三十分より
 - 第46巻 p.275 -ページ画像 
文相官邸に於て開会、加藤総裁、一木副総裁、関・成瀬・菊池・鎌田高木・岡田・三土・早川・豊川・江木・桑田・水野(子)・大島・山屋・小松原の各委員並に福原・田所・松浦の諸氏出席、菊池大麓氏議長席に着き、劈頭加藤男・一木文相の就任挨拶あり、畢つて福原次官より
 現行小学校令第三十二条に但し書を加へ、満五年九ケ月にして身体健康なるものは入学を許可す
即ち従来は満六年に達せざるものは入学を許可せざりしを改めて入学期を三ケ月繰上げたるものなりと説明するや、江木・菊池・岡田・高木・鎌田氏等の質問ありたるが、結局異議なき儘九名の特別委員に附托し、五時三十分散会せり


中外商業新報 第一〇一一三号 大正三年六月一九日 ○教育調査総会(DK460082k-0017)
第46巻 p.275 ページ画像

中外商業新報  第一〇一一三号 大正三年六月一九日
    ○教育調査総会
教育調査会は十九日午後二時より文相官邸に於て総会を開き、曩に特別委員会に於て可決したる文部省諮問の学齢繰下案を附議し、菊池委員長より委員会の経過報告ありたる後、実施上に関し二・三の条件を附して異議なく可決するに至るべし


中外商業新報 第一〇一三二号 大正三年七月八日 ○学制案審議 七日の教育調査会(DK460082k-0018)
第46巻 p.275 ページ画像

中外商業新報  第一〇一三二号 大正三年七月八日
    ○学制案審議
       七日の教育調査会
教育調査会は引続き七日午後二時より文相官邸に於て開会、小松原・菊池・山屋・成瀬・鎌田・三土・水野・渋沢・箕浦・桑田・高木・山川・辻・嘉納・蜂須賀侯等各委員出席、前回に引続き先づ江木案に就き審議する筈なりしが、提案者たる江木氏病気欠席の為め後廻しとなし、更に菊池案を附議せるが、高木男・蜂須賀侯・辻男・三土・桑田山川・嘉納氏等より(一)学芸大学とは如何なる者なるか(二)学芸大学二ケ年修業者は帝国大学の法医工各科大学に入学せしむべき理由如何との質問続出したるが、之に対し菊池男の答弁あり、何等決定の運びに至らず五時散会せり、次回は来る十四日開会と決し、文部省の提案に係る大学校令案愈よ九日第一回総会を開くべしと


中外商業新報 第一〇一三四号 大正三年七月一〇日 ○大学校案審議 九日の教育調査会(DK460082k-0019)
第46巻 p.275-276 ページ画像

中外商業新報  第一〇一三四号 大正三年七月一〇日
    ○大学校案審議
      九日の教育調査会
新大学校案は愈々九日午後二時より文相官邸に於て第一回総会を開く加藤総裁を始め、菊池・鎌田・小松原・関・成瀬・箕浦・水野(子)蜂須賀(侯)・三土・早川・改野・桑田・渋沢(男)・花井・高木・大島・山屋・辻(男)・山川・嘉納・手島・江原の各委員並に文部省側より一木文相・福原次官・松浦専門学務局長等出席、先づ福原次官より大学校令に関する提案の理由を説明し、了つて鎌田・三土・桑田・渋沢・蜂須賀侯等諸氏より質問続出せるが、之れを綜合すれば、本案は年限短縮に関係あるが学制問題未だ解決せざる今日、該案のみ決す
 - 第46巻 p.276 -ページ画像 
るは矛盾せずや如何と突込めば、福原次官は
 予て調査中なりし大学校令は今回愈々成案を得たれば教育調査会に附議せる次第にして、年限短縮とは別個の問題なれば、分割しても敢て差支なかるべしと認め居れり、又本案を急ぎ審議すべき必要なしと云ふも、従来より優れるものなれば可成速かに施行するを適当と信ぜり
と軽く受け流し、更に予科定員五十名と限れる理由を質せば、福原次官は普通教育の完全を期するにありと答へ、大学と専門部との教授を分離せる理由如何と質せば、次官は準備教育の程度を異にする為なりと弁明し、畢つて菊池男は該特別委員には全委員を挙げんことを審議し、異議なく可決、尚ほ学制案に関する菊池・江木両案も亦大学校案と一括して審議することゝなし、五時散会せり、次回は十四日午後二時開会すべしと


中外商業新報 第一〇一三九号 大正三年七月一五日 ○教育調査会 学制案審議(DK460082k-0020)
第46巻 p.276 ページ画像

中外商業新報  第一〇一三九号 大正三年七月一五日
    ○教育調査会
      学制案審議
教育調査委員会は引続き十四日午後二時より文相官邸に開会、成瀬・関・九鬼・鎌田・小松原・箕浦・水野・三土・江木・桑田・鵜沢・高木・大島・豊川・山屋・蜂須賀・辻・山川・嘉納・手島・江原・中野渋沢の各委員並に一木文相・福原次官等列席、小松原英太郎氏会長席に着き劈頭江木千之氏は自己の提案たる学制改革に関し、独逸・仏蘭西の実例を引き約一時間に亘り説明する処あり、之に対し山川健次郎鎌田栄吉・鵜沢総明・三土忠造氏等より続々賛同し、江木氏之に応答し、了つて辻男より過般帝国教育会に於て調査せる学校系統に関し縷縷陳述する処ありしが、江木・鵜沢・菊池男の三委員より、本案は全会委員会の議題に付すべきや否や、調査会議事規則に依れば建議案を提出するは会員三名以上の賛成者を要す、然るに本案は未だ辻・高木両男の署名あるのみにて定規の賛成者なければ其形式に於て欠くる処ありと反対するや、夫より議論沸騰し、更に鵜沢氏より辻男に対し三名以上の賛成者を得て提出せられたしと述べ、右に就き辻男は箕浦・蜂須賀侯等七名の賛成を得て正式に総会に附議することに決し、五時散会せり、次会は十八日・二十日・二十四日・二十七日・三十日開会と決す


中外商業新報 第一〇二〇〇号 大正三年九月一四日 ○実業教育奨励調査(DK460082k-0021)
第46巻 p.276 ページ画像

中外商業新報  第一〇二〇〇号 大正三年九月一四日
    ○実業教育奨励調査
文部省に於ては戦時に際し特に実業教育の振興に関する調査中なりしが、従来同省には商工業教育の奨励費なく、且つ平時にありては其要求も比較的閑却さるゝの傾向ありしも、今回の戦乱に於て軍国産業振作の輿論勃興したるを機とし、農商務省は一般実業に対し積極的奨励の実を挙ぐ可く目下調査を急きつゝあれば、随つて文部省にては之が根本たる実業教育奨励に関し農商務省の調査結了を俟つて、其方法を取る可く発表する処ある可しと云ふ

 - 第46巻 p.277 -ページ画像 


〔参考〕集会日時通知表 大正三年(DK460082k-0022)
第46巻 p.277 ページ画像

集会日時通知表  大正三年        (渋沢子爵家所蔵)
九月廿二日 火 午後二時 教育調査委員会(文部大臣官邸)
  ○以下他ニ資料ヲ欠ク。依ツテ「参考」トシテ収ム。
十月二日  金 午後二時 教育調査会委員会(文部大臣官邸)
  ○中略。
十月七日  水 午後二時 教育調査会々議(文部大臣官邸)
  ○中略。
十月二十日 火 午後二時 教育調査会(文部大臣官邸)
  ○中略。
十月廿三日 金 午後二時 教育調査会(文部大臣官邸)
  ○中略。
十月廿七日 火 午後一時 文部大臣ヲ御訪問ノ約(文部省)
        午後二時 教育調査会



〔参考〕中外商業新報 第一〇二四四号 大正三年一〇月二八日 ○教育調査委員会(DK460082k-0023)
第46巻 p.277 ページ画像

中外商業新報  第一〇二四四号 大正三年一〇月二八日
    ○教育調査委員会
学制案教育調査委員会は、廿七日午後二時半より、文相官邸に於て開会、蜂須賀委員長以下各委員全部、文部省より福原次官出席、前回の委員会に於て三土忠造委員より提出せし、学制改正案の審議に移り、三土氏は各委員の質問に応じ、余の改正案は、中学校と高等学校と聯続したる学校を新に設置し、而して前後通じて七ケ年と為すにあり、要するに現在制度よりも、大学の学生は中学校に於て一ケ年年限を短縮せられ、入学期繰上げに於て半ケ年短縮さるゝ訳なりと述べ、尚次回に於て、同案に対し質問を続行することに決し、午後五時半散会せり