デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

  詳細検索へ

公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

6章 学術及ビ其他ノ文化事業
1節 学術
6款 社団法人温故学会
■綱文

第46巻 p.375-380(DK460109k) ページ画像

大正11年10月20日(1922年)

当学会ハ組織ヲ社団法人ニ改メ、是日認可サル。栄一、井上通泰・芳賀矢一等ト共ニ賛助会員トシテコレニ参与シ、改組後ハ維持会員トナリ、歿年ニ及ブ。


■資料

温故学会書類(DK460109k-0001)
第46巻 p.375 ページ画像

温故学会書類               (社団法人温故学会所蔵)
  大正十一年八月十二日      主幹 塙忠雄
賛助会員
  渋沢子爵栄一
  井上博士(印)
  芳賀博士(印)
    社団法人申請につき伺
過般口頭にて開陳いたしおき候帝国大学より版木下附につき本会を社団法人に組織の件(右ハ本会永久維持のため法人組織はかねてよりの計画に有之候)主務官庁たる文部省に出頭、主任属とうち合せの末、別紙のとほり書類作成仕り候間回覧に供し候、裁決を仰き申候次第に御座候、幸ニ御裁決被下候ハヽ明治四十三年以来賛助会員として御監督被下候御高志を以て引つゝきそのまま設立者たることを御承諾下され、御署名御調印願度候(御調印願候本書は本義御裁決のうへ自分持参いたし可申候)
今回の申請書自分起案には、創立当時より説明いたしおき候処、繁雑に渉る嫌ありと主任属より注意有之、本会の経緯は一切相省き候事に御坐候
要するにまづ社団法人に組織いたし候うへ、実際に於ける維持の方法等は主幹《理事(太字ハ朱書)》としておひおひ起案いたし御高見を伺ひ可申、且特別会員《賛助》の推薦主幹代理《理事》の件なども自分胸算も御坐候間、更めて御高裁を仰き可申、また定款変更も総会の決議次第なれば、実行のうへ不便不備のかども候ハヽその場合に相当手続の覚悟に御座候
こゝに書類回覧に供し御高慮相伺候也
   ○別紙見当ラズ。
 - 第46巻 p.376 -ページ画像 

塙保己一先生 全 阪本百次郎著 附録・第一―七頁昭和四年三月刊(DK460109k-0002)
第46巻 p.376-379 ページ画像

塙保己一先生 全 阪本百次郎著 附録・第一―七頁昭和四年三月刊
    社団法人温故学会々則並定款
 明治四十三年末創立ノ温故学会ヲ大正十一年十月社団法人ニ組織シ定款ノ条項ニ従ヒ規則及役員ヲ左ノ通リ訂正ス
 詳細ノコトハ定款ノ所定ニヨル
      社団法人温故学会規則
第一 本会ノ名称ヲ社団法人温故学会ト称ス
第二 本会ノ目的ハ塙検校ノ遺志ヲ継紹シソノ遺業ノ大成ヲ図ル
第三 前条ノ目的ヲ遂行スルタメ左ノ事業ヲナス
 一、群書類従版木全部ノ保管
 一、図書縦覧所設置
 一、講演・講義ノ開催
 一、塙検校ノ著書及古書ノ翻刻
第四 本会ハ左ノ会員ヲ以テ組織ス
 一、賛助会員
 一、通常会員
 一、維持会員
第五 本会事務所ヲ東京府下豊多摩郡渋谷町大字下渋谷字氷川裏三三八ニ置ク
          維持会員 子爵    渋沢栄一
               医学博士  井上通泰
               林学博士  中村弥六
               工学博士  山田直矢
               貴族院議員 内藤久寛
               同文学博士 上田万年
               理事    斎藤茂三郎
          以上

文部省東普三六七号
                社団法人温故学会設立者
                      塙忠雄
                       外三名
大正十一年十月四日付申請社団法人温故学会設立ノ件民法第三十四条ニ依リ許可ス
  大正十一年十月二十日
              文部大臣 鎌田栄吉
      社団法人設立ノ件申請
今般別紙定款ニ依リ社団法人温故学会ヲ設立イタシタク候ニツキ、民法第三十四条ニ依リ御許可相成度、所要書類添付此段及申請候也
  大正十一年十月四日
                社団法人温故学会設立者
                      塙忠雄
                       四谷区寺町廿二
 - 第46巻 p.377 -ページ画像 
                   子爵 渋沢栄一
                       日本橋区兜町二
                      井上通泰
                       麹町区内幸町一、三
                      芳賀矢一
                       小石川区竹早町卅二
    文部大臣 鎌田栄吉殿
      社団法人温故学会定款
       第一章 目的及事業
第一条 本会ハ塙検校ノ遺志ヲ継承シ、ソノ事業ノ大成ヲ図リ特ニ群書類従版木一万七千枚余(百四十年前彫刻ニ係ルモノ)ヲ永久ニ維持保管シテ学界ニ貢献スルヲ目的トス
第二条 本会ハ第一条ノ目的ヲ達センタメ左ノ事業ヲナス
 一、群書類従版木一万七千枚余ヲ保管シコレヲ学生及公衆ノ縦覧ニ供シ、実物教育ノ資料トシテ学界ノ裨益ヲ計ルコト
 二、塙検校ノ著書及古書ノ刊行、群書類従ノ木版刷立等ヲ設計シ会員及希望者ニ頒布シテ学界ノ裨益ヲ計ルコト
 三、図書縦覧所ヲ設置シ、無料ニテ閲覧セシメ学界ノ裨益ヲ計ルコト
 四、時々講演・講義ヲ開催シテ学界ノ裨益ヲ計ルコト
 五、ソノ他塙検校ノ遺業復興ト共ニ学界ニ裨益アリト認ムル事項
      第二章 名称及事務所
第三条 本会ハ社団法人温故学会ト称ス
第四条 本会ハ事務所ヲ東京府豊多摩郡渋谷町大字下渋谷字氷川裏三三八ニ置ク
      第三章 会員
第五条 本会ノ会員ヲ賛助会員・通常会員・維持会員ノ三種トス
  一、賛助会員ハ本会ニ特別ノ功労アリタル者又ハ徳望学識アル者ニシテ本会ノ推薦シタル者
  一、普通会員ハ本会ノ主旨ヲ賛成シ本会ノ事業ヲ援護スル者
  一、維持会員ハ本会設立者及第八条ノ手続ヲ経テ入会シ本会維持ノ責任アル者
第六条 賛助会員ノ推薦ハ総会ノ決議ヲ経テ決行スルコト
第七条 普通会員タラントスル者ハソノ旨ヲ理事ニ申出ツルモノトス、退会セントスルトキモ亦同シ
    前項ニ依リ入会ノ申出ヲ為シタル者ト雖、総会ノ決議ヲ経テ謝絶スルコトアルヘシ
第八条 維持会員タラントスル者ハソノ旨理事ニ申出テ、理事ハ総会ノ決議ヲ経テ決行スルコト
    退会セントスルトキモ亦同シ
     第四章 役員及職制
第九条 本会ニ左ノ役員ヲ置ク
      一、理事 一名
      一、理事代理 一名
 - 第46巻 p.378 -ページ画像 
第十条 理事ハ民法ノ規定ニヨリ本会ヲ代表ス
第十一条 理事ハ維持会員ノ互選トシ、其任期ハ終身トス
第十二条 理事代理ハ理事ニ於テ賛助会員又ハ維持会員中ヨリ予メ定メタル者ヲ以テコレニ充テ、理事故障アルトキソノ事務ヲ代理ス
第十三条 役員ノ職制ヲ定ムルコト左ノ如シ
  一、理事ハ会務ヲ処理シ会議ノ際議長トナル
  二、理事ハ財産管理者トシテ法定上ノ責任ヲ負フモノトス
       第五章 総会
第十四条 総会ハ毎年九月十二日コレヲ開会ス、但臨時開会スルコトアルヘシ
第十五条 総会ニ於テ行フヘキ事業概ネ左ノ如シ
  一、経費予算ノ決議及決算ノ承認ニ関スル件
  二、第二条中ノ重要ナル事業ニ関スル件
  三、定款ノ変更ニ関スル件
  四、賛助会員・維持会員ノ入退会ニ係ル件
  五、資産ノ管理処分ニ関スル件
  六、会務ノ報告其他理事ニ於テ必要ト認メタル事項
第十六条 総会ハ少クトモ五日以前ニ会議ノ目的タル要点ヲ記載シタル書面ヲ以テ理事ヨリコレヲ招集スルモノトス
第十七条 総会ハ会員ノ過半数出席スルニアラサレハ開会スルコトヲ得ス
第十八条 議事ハ出席会員ノ過半数ヲ以テ決ス、可否同数ナルトキハ議長ノ決スルトコロニヨル
       第六章 資産
第十九条 本会ノ資産ハ左ノ如シ
  一、本会設立後、東京帝国大学ヨリ下附セラルヘキ群書類従版木全部
  二、会員其他ヨリ寄附又ハ贈遺ニ係ル金銭物品
  三、本会ノ事業又ハ所有財産ヨリ生スル収入及其他ノ雑収入
  四、其他本会ノ所有ニ係ハル各種ノ動産及不動産
第二十条 本会ノ経費ハ前条第三号ニ依ル収入又ハ其他ノ資産ノ一部ヲ以テ支弁ス
第廿一条 前条前段ニ係ル収入少キタメ本会ノ経理困難ナル場合ハ、理事ハ其経費ヲ負担シ本会維持ノ責務ヲツクスモノトス
第廿二条 本会ノ会計年度ハ毎年九月一日ニ始マリ、翌年八月卅一日ニ終ル
第廿三条 資産ノ管理及処分ニ関スル手続ハ総会ノ議決ヲ経テ理事コレヲ定ム
       第七章 附則
第廿四条 本会ノ定款ハ総会ニ於テ会員ノ過半数出席シ其過半数ノ同意ヲ得テ議決シ、主務官庁ノ許可ヲ経ルニアラサレハ、之ヲ変更スルコトヲ得ス
第廿五条 本会設立当時ニ於ケル理事ノ職務ハ東京市四谷区寺町廿二
 - 第46巻 p.379 -ページ画像 
番地塙忠雄コレヲ行フ


青淵先生職任年表(未定稿) 昭和六年十二月調 竜門社編 竜門雑誌第五一九号別刷・第一五頁 昭和六年一二月(DK460109k-0003)
第46巻 p.379 ページ画像

青淵先生職任年表(未定稿) 昭和六年十二月調 竜門社編
              竜門雑誌第五一九号別刷・第一五頁昭和六年一二月
    明治年代
 年
四三 末 ―温故学会賛助員―大正一一、一〇、―社団法人〃維持会員―昭和六、一一。


斎藤茂三郎談話筆記(DK460109k-0004)
第46巻 p.379 ページ画像

斎藤茂三郎談話筆記             (財団法人竜門社所蔵)
                  昭和一五年八月二八日於温故学会松浦総蔵聴取
 社団法人になる以前の温故学会は全く塙忠雄氏の個人事業で、歌の会とか群書類従の分布を主とした位であつて、余り社会的な活躍はしなかつた。子爵さん(青淵先生)は確かに賛助員位ひであつたと思ひます


塙保己一先生 全 阪本百次郎著 附録・第八―一〇頁昭和四年三月刊(DK460109k-0005)
第46巻 p.379-380 ページ画像

塙保己一先生 全 阪本百次郎著 附録・第八―一〇頁昭和四年三月刊
光栄記念群書類従原版刷立設計
空前ノ偉人塙検校ノ遺業復興ノタメ組織シタル温故学会ハ明治四十四年末ニ群書類従原版刷立ヲ開始シ、殊ニ
東宮職各宮家御用命ノ光栄記念刷立モ無滞終了シ、次ニ検校百年祭、(大正十年九月)ヲ期シタル百部完成モ予定以上ノ賛同者ヲ得タリ
コノ既成事業ヲ発揮スル為メ、前記光栄記念刷立ヲ継続シテ、更ニ長期刷立ノ設計ハ塙理事ノ立案シタルモノナリ
自分等ハマタ温故学会ノ基礎ヲ永久的確実タラシムルノ必要ヲ感シ、維持会員トシテ温故学会ノ法人組織ヲ出願シ、文部大臣ノ認可ヲ得タリ、ソレト同時ニ東京帝国大学ヨリ群書類従原版全部ノ下附ヲ受ケタルハ本会ノ面目トスルトコロナリ
カク温故学会ソノモノハ法人組織トナリ、原版全部本部ノ所有ニ帰シタレハ刷立事業ノ基礎モ亦確実トナレリ
シカシテ塙理事ガ検校ノ宿願タル図書普及ノ手段トシテ長期刷立設計ヲ立案シタルハ、後裔者トシテ相当ナル行為ト認メ、紙端ニ署名セリ乞フ塙理事ノ計画ニ賛同アランコトヲ
  大正十二年四月
                   子爵 渋沢栄一
                 医学博士 井上通泰
                 文学博士 芳賀矢一
        ――――――――――
塙撿挍ノ遺業復興ヲ主旨トスルトコロノ温故学会ハ、渋沢子爵・井上博士・芳賀博士ノ監督援護ノモトニ明治四十三年末ニ創立シタル学会ナリ
今回学会ノ基礎ヲ永久的確実ナラシメン為メ法人組織ヲ出願シ、大正十一年十月二十日文部大臣ノ認可ヲ受ケ、維持会員トシテ渋沢子爵、芳賀・井上両博士、及ビ塙忠雄ハ理事ノ職ニ就キ、ココニ社団法人温故学会トナレリ、ソレト同時ニ東京帝国大学ヨリ、群書類従原版全部
 - 第46巻 p.380 -ページ画像 
(一万七千枚余)ノ下附ヲ辱ウシタルモノナリ
  ――附言――
 コノ群書類従原版ハ明治初年塙家ヨリ其筋ヘ献納シ、ソノ後東京帝国大学ノ保管ニ属セシヲ、明治四十四年末原版使用認可ヲ得テ刷立ヲ開始シ、今日ニ至レルモノナルヲ、今回該原版全部ヲ本会ニ下附セラレタルナリ

右原版刷立ニツキテハ明治四十四年末ヨリト大正二年三月ヨリトノ二期ニ渉リ、予約方法ニヨリ合計五十三部ヲ完全ニ終了シ、ツイデ大正四年五月
東宮職及皇子御殿ヨリ御用ニツキ刷立納本可致旨ノ御下命アリタリ、本会ハ空前ノ光栄トシ光栄記念ノ名ヲ冠シ、前同様ノ手続ニヨリ賛同者ヲ得テ二十一部ヲ刷立テ、コレマタ全部終了シ、次ニ撿挍百年祭、(大正十年九月)マデニ通計百部ヲ完成センコトヲ期シ、予定以上ノ賛同者(五十二名)ヲ得テコレマタ全部終了シ、実ニ通計百二十六部ヲ算セリ(賛同者人名参照)
今ヤ上納本モ無滞終了シ百部完成ノ計画モ予定以上ノ成績ナリ、忠雄ノ感激何モノカコレニ加ヘン
ココニ忠雄ハ既往ノ経験ニヨリ光栄記念刷立ヲ継続シテ、更ニ特別予約方法ニヨリ長期刷立設計書ヲ立案シタルモノナリ
抑群書類従ハ塙撿挍カ安永八年ヨリ文政二年ニ至ル四十年間ニ渉レル出版事業ニシテ、ソノ当時幕府勧誘ノモトニ諸侯其他諸家ニ頒チタルモノニシテ、コレニ使用シタル原版ハ現ニ温故学会倉庫ニ保管セル壱万七千枚余ノモノソレナリ
コノ百四十年前ノ原版ヲ刷立テ、製本ノ体裁等ハ純日本式ニ装幀シ、開版当時ソノママノ群書類従ヲ同好ノ諸賢ニ提供センタメ設計シタル特別予約方法ナリ
コハ全ク塙撿挍ノ宿願タル図書普及ノ事業ニシテ本会ノ目的ヲ達セムトスルニ外ナラズ
冀クハ本会ガ既往ノ事実ヲ信頼セラレ、撿挍ノ宿願ヲ諒セラレ、忠雄ガ計画ヲ容レラレ光栄記念群書類従長期刷立ニ賛同セラレンコトヲ懇請スルコト深甚ナリ
                    理事 塙忠雄