デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

2部 実業・経済

1章 金融
1節 銀行
1款 株式会社第一銀行
■綱文

第50巻 p.27-52(DK500006k) ページ画像

明治43年2月5日(1910年)


 - 第50巻 p.28 -ページ画像 

是ヨリ先、大蔵大臣桂太郎五分利公債ヲ四分利以下ノ低利公債ニ借換ヘント欲シ、当行頭取栄一等ニソノ斡旋ヲ依頼ス。栄一、横浜正金銀行頭取高橋是清ト謀リ、是日各銀行ノ間ニ公債下請組合ヲ組織ス。コレニヨリ是年二月・四月ニ於ケル両度ノ四分利内国債募集ノ成功ヲ見ル。


■資料

渋沢栄一 日記 明治四三年(DK500006k-0001)
第50巻 p.28-29 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治四三年         (渋沢子爵家所蔵)
一月二十四日 晴又曇 寒
○上略 八時半三田ニ桂大蔵大臣邸ヲ訪ヘ、面会シテ○中略後金融及公債整理ニ関シテ種々ノ談話アリ○下略
  ○中略。
一月二十六日 雪 寒甚
○上略 桂首相ヲ永田町官邸ニ訪ヘ○中略四時半ヨリ各同業者参集シテ公債借替ニ関スル要談アリ、七時晩飧シ更ニ談話ヲ継続シ、明日十一時過ヨリ日本銀行ニ集会ノ事ヲ約シ、八時半散会ス
一月二十七日 晴 寒
○上略 九時半第一銀行ニ抵リ、重役会ヲ開キ要件ヲ議決ス、十一時半日本銀行ニ抵リ、正副総裁及豊川・早川・園田・池田・安田ノ諸氏ト共ニ、昨夜大蔵大臣邸ニ於テ協議セシ公債借替ニ関スル方法ニ関シ種々ノ討議アリ、午飧後五時頃ニ至リテ概要ヲ議決シ、尚大阪ヨリ来会スヘキ五行ノ着京ヲ待テ、之ヲ確定スヘキ事トシテ散会ス○下略
  ○中略。
一月二十九日 曇 寒
○上略 四時半桂大蔵大臣官舎ニ抵リ、公債借替ノ事ニ関シ、京阪各銀行会同ノ協議ヲ為ス○下略
一月三十日 曇 寒
○上略 午前十時三井集会所ニ抵リ、京阪各銀行者ト共ニ公債借替ニ関スル方法及各行ニ於テ引受クヘキ高ニ付種々ノ協議ヲ為ス、午飧後ニ至ルモ決定セス、衆議紛々ノ有様ナリシヲ以テ、取扱手続及引受割合ニ関スル覚書ヲ作リテ各自ノ協賛ヲ求メ、概略妥協ヲ得タルヲ以テ○中略十時桂侯爵邸ニ抵リ、今日各銀行協議決定セシ要項及引受予定ノ高ヲ報告ス、夜一時王子ニ帰宿ス
一月三十一日 晴 寒
○上略 午前十時兜町事務所ニ抵リ事務ヲ処理ス、佐々木氏来リ公債借換ノ事ヲ談ス○中略十一時半日本銀行ニ抵リ、各銀行ト組合規約其他ノ要務ヲ協議ス○中略夜十時過王子ニ帰宿シ○中略各銀行ヨリ大蔵大臣ヘ提出スヘキ書面ヲ起草ス
二月一日 晴 寒
○上略 午後三時日本銀行ニ抵リ、公債借換ノ方法及下請組合規約協定ノ会議ヲ開キ、種々ノ議論アリシモ夜ニ入リテ之ヲ議了シ、七時半散会帰宿ス○下略
二月二日 晴 寒
○上略 午前十時半永田町桂大蔵大臣官舎ヲ訪ヒ、高橋是清氏ト共ニ公債
 - 第50巻 p.29 -ページ画像 
借換ニ係ル各銀行下請組合規約ヲ協定スルニ至レル次第ヲ報告シ、其書類ニ両人ハ幹事銀行ノ資格ヲ以テ調印進達ス、十二時第一銀行ニ抵リ午飧シ、且頃日来ノ手続ヲ佐々木氏ニ談話ス○中略五時築地瓢屋ニ抵リ、京阪各銀行懇親会ニ出席ス、朝来大蔵大臣ニ書面進達ノ事ヲ報告ス○下略


勝田家文書(DK500006k-0002)
第50巻 p.29-31 ページ画像

勝田家文書                  (大蔵省所蔵)
今般諸公債証書借換ノ廟算御確定相成候ニ付テハ、私共各銀行ニ於テ応募尽力可仕旨、御示諭ノ趣謹承仕候、右者国家ノ利率革新ノ宏謨ト奉存候ニ付、各自其力ニ応シテ尽瘁可仕候、就テ右取扱ニ関シ、各銀行ノ間ニ別紙ノ規約協定仕候間、御聞置相成度候、且此借換公債ノ引受保証仕候ニ付テハ、左記ノ要項予メ御承認被下度候、依テ規約写相添、此段上申仕候也
    要項
一、公債政策ニ関スル既定ノ方針ヲ鞏固ニ維持セラルヽ事
二、償還期限ニ達シ居ル諸公債ハ、総テ低利ニ借換ル政府ノ方針ヲ、相当ノ方式ニテ世間ニ宣言セラルヽ事
三、郵便貯金ノ利率ハ速ニ引下ケラルヽ事
四、向後公債償還ノ手続(目論見書トモ)及時期ニ付テハ、此組合ノ意見ヲ徴セラルヽ事
五、公債借換ノ実行ハ向後先ツ此組合ニ協議セラルヽ事
                         以上
  明治四十三年二月五日
           下請銀行組合幹事
             第一銀行頭取
                    男爵 渋沢栄一
             横浜正金銀行頭取
                    男爵 高橋是清
    大蔵大臣 侯爵 桂太郎殿
(別紙)
此度政府ニ於テ五分利付内国公債ヲ四分利以下ノ低利公債ニ借換ノ方針ヲ定メ、着手ノ第一トシテ此際新ニ四分利付公債額面壱億円ノ発行ヲ為シ、其収入ヲ以テ五分利付公債ノ償還ニ充当スル計画ヲ立テラレ下名ノ銀行者ニ下請組合ヲ作ルコトヲ慫慂セラレタルニ付、我等一同協議ノ上、政府ノ計画ヲ賛助シ、公債低利借換ノ事業ヲ首尾好ク成功ナラシムル目的ヲ以テ下請組合ヲ作リ、玆ニ規約ヲ設ケ、互ニ固ク守ル事ヲ誓フ
 第一条 下請額ハ其都度発行額ノ多少ニ依リ、各銀行応分ニ引請ケル事
 第二条 組合銀行ハ各自下請ニ依テ分担引受ヲ為シタル公債ヲ発行価格以下ニテ他ニ売渡サヽル事
 第三条 組合銀行ハ各自ノ下請高ヲ組合以外ノ資本者ニ再下請ヲ為サシムルコトヲ得、此場合ニ於テハ其組合銀行ハ再下請者ニ前条ノ取極メヲ厳守セシムヘキ責任アルモノトス
 - 第50巻 p.30 -ページ画像 
 第四条 組合銀行中分担引受ヲ為シタル公債ヲ、発行価格以下ニテ売却スヘキ必要ヲ生シタル時ハ、其事情ヲ組合ニ申出、其承諾ヲ得テ処分スルモノトス
 第五条 前条ノ場合ニ当リ、組合ニ於テ其公債ノ処分ヲ引受ルコトニ決定シタル時ハ、売却者ハ公債発行価格ヨリ下請料ヲ引去リタル価格ニテ、公債ノ処分方ヲ組合ニ一任スルモノトス
 第六条 組合銀行以外ニ於テ、新公債ヲ発行価格以下ニテ市場ニ売出シ《(マヽ)》モノアルトキハ、組合ハ之ヲ買取リ、又ハ其筋ニ交渉シテ市価ノ維持ニ力ムルコト
 第七条 第二回以下ノ借換ヲ発行スヘキ時機及金額ニ就テハ、組合ニ於テ協議ノ末、政府ニ交渉スルコトヲ怠ラサル事
 第八条 組合銀行ハ其引受タル公債ノ売却高ヲ、毎週一回相互ニ報告スルコト
 第九条 組合銀行代表者ヲ以テ協議会ヲ組織シ、本組合ニ関スル諸般ノ協議ヲ為スモノトス
   本組合ニ幹事二名ヲ置キ、一切ノ事務ヲ統轄シ、本組合ヲ代表セシムルコト
 第十条 組合銀行中万一本規約ニ違反シタル行為アリタルトキハ、幹事ハ協議会ヲ招集シ、審査ノ上全会員三分ノ二以上ノ同意ヲ以テ、除名ノ処分ヲ為スコト
 第十一条 本規約実施後二ケ年ニ至リ開議《(マヽ)》、社会ノ状況ニ依リ必要ト認ムルトキハ、組合銀行ハ其筋ト協議シ此規約ヲ改定シ、又ハ組合ヲ解散スルコト

    命令書
             日本銀行総裁 男爵 松尾臣善
今般五分利付内国債借換ノ為メ、四分利公債一億円ヲ募集スルニ付、其行ニ於テハ右ノ内二千五百万円ノ下請ヲ為シ、且ツ残額七千五百万円ノ下請ニ付、株式会社横浜正金銀行・株式会社日本興業銀行・三菱合資会社銀行部・株式会社三井銀行・株式会社十五銀行・株式会社第一銀行・株式会社第百銀行合名会社安田銀行・株式会社第三銀行・合名会社鴻池銀行・株式会社浪速銀行・住友銀行・山口銀行・株式会社北浜銀行・株式会社三十四銀行ヲ以テ組織シタル下請銀行組合ト、左ノ趣旨ニ基キ契約ヲ締結スヘシ
一、銀行組合ハ公衆ノ応募額面総高カ一億円ニ満タサルトキハ、前記下請額ノ割合ニ応シ其不足額ヲ引受クルノ責ニ任スルコト
二、銀行組合カ引受クヘキ国債ノ応募価格ハ最低発行価格トスルコト
三、銀行組合カ契約ニ違反シタルカ為メ政府ニ損害ヲ生シタルトキハ連帯シテ之カ弁償ノ責ニ任スルコト
四、日本銀行ハ、銀行組合カ本公債下請ノ責ニ任シタル報酬トシテ、下請額ノ百分ノ一ニ相当スル下請料ヲ、其払込完了ノトキニ於テ組合銀行ニ交付スルコト
下請総額ニ対スル下請料トシテ百万円ヲ其行ニ支給スルニ付キ、前項第四号ノ下請料ハ其内ヨリ之ヲ支給スヘシ
  明治四十三年二月四日   大蔵大臣 侯爵 桂太郎
 - 第50巻 p.31 -ページ画像 
(欄外、勝田主計筆)

 極秘
 本契約期限満了ニ付、渋沢男ヨリ高橋男ヲ誘ハレ、政府ノ意志ヲ聞キタシトノコトニテ、二月七日高橋男ヨリ話有之、同夜蔵相ニ相談、形式ニ於テハ廃シ情意ニ於テ存続ノコトニ決シ、二月十日高橋男ヨリ渋沢男ニ通知
  勝田


公爵桂太郎伝 徳富猪一郎編 坤巻・第七七二―七七六頁大正六年二月刊(DK500006k-0003)
第50巻 p.31-32 ページ画像

公爵桂太郎伝 徳富猪一郎編  坤巻・第七七二―七七六頁大正六年二月刊
 ○第十編 第四章 国債整理
    二 五分利公債整理の発表
約弐億四千万円の正貨準備、約五千六百万円の発行余力、是れ兌換制度開始以来未た曾て見さる所。日本銀行日歩の壱銭参厘、市中割引日歩の壱銭壱厘、定期預金利率の四分、是れ明治二十六年以来初めて見る所。我国の利率は、此時に於て、確かに一個の革命に遭遇したるものと称すへく。其の結果として、内地公債は殆んと弐拾年来の高価を示めし、海外に於ける本邦有価証券、亦た頻りに高報を齎らせり。此時に遭遇して、時の為政家は果して何事を為すへきか。公は果して何事を為さんと欲したりしか。内外五分利公債整理、声は天籟の如くに響けり。公は四十三年一月廿六日、東西有力なる銀行家を官邸に招集して、其の計画を公表し、其の援助を求めたり。
然れとも、公か五分利付公債整理の断行を決心せるは、敢て此時に始りしにはあらさる也。同年新春、世は未た屠蘇の酔より醒めやらぬ一月十八日、鮟鱇会の永代橋畔日本銀行旧建物内に開かれたる席上なりき。興湧き席乱れ、杯盤狼藉たるの時、侯・松方を座の一隅に拉し、頻りに国債整理に付て、其の好機逸すへからさるを説くものあり。時の日本銀行総裁男爵松尾臣善、亦た其側に在り。聞く所なきものゝ如し。翌早朝松尾総裁より、其人に来訪を求むるの電話あり。其人、急遽松尾の邸に至れは、総裁は確むるに前夜の一言、時の戯語にあらさるなきやを以てし。其の然らさるを聞くに及ひて、暗示するに政府決心の存する所を以てす。是れ東西銀行家の前に、公債整理計画の発表せられたる、週余日前の事にして。鮟鱇会の席上、某銀行家か侯・松方に勧説するの時には、公の整理計画は既に定まり居たりし也。否な時の前後は必すしも尋究するを要せすして可也。
○中略
蓋し内外五分利付公債の整理は、財政整理に伴随する公の終局の目的にして。既定及ひ予定の募債中止せられたるも其の目的は玆に在り。還債年額の増加せられたるも、其目的は玆に在り。鉄道特別会計の設置せられたるも、将た郵便貯金利子の引下けられたるも、其の目的亦た玆に在り。比の目的を解し、而して時機の既に熟せるを知る某銀行家は、其の前年末に於て、公に対して整理の着手を慫慂し、且つ自ら進んて、一手に一億円を引受けんことを申出てたる位也。而して其の端緒の開かれたるは、西園寺内閣の当時、西園寺首相を慫慂して、国債整理基金特別会計を創設せしめたる時に在りし也。其の今日に於て発表せられたるは、唯画竜の此時に至りて漸く点睛せられたるのみ。公は其後四十三年十一月名古屋銀行集会所に
 - 第50巻 p.32 -ページ画像 
於て語りて左の如く曰へり。
 此の財政の方針に於きまして、公債償還に力を多く致しました事は単に公債の価格を高くしやうと云ふのみでは無かつたのである。唯現在して居る所の公債の値を高くするだけてはありませぬ。財政の整理をなし、或は財政と経済の調和を図ると云ふのみではない。偖て之を致しまして、而して第二に到る所のものは、何であるかと云ふと、公債の低利借換、即ち高い所の利息を払つて居る所のものを低利に借換へやうと云ふ事が、即ち目的であります。決して公債の値の釣上けのみをなすか目的でないと云ふ事が、申迄もないことは諸君も御承知の事と考へます。


国債沿革略 大蔵省理財局編 第一巻・第七―八頁大正六年三月刊(DK500006k-0004)
第50巻 p.32 ページ画像

国債沿革略 大蔵省理財局編  第一巻・第七―八頁大正六年三月刊
 ○第一編 第一章 総括
    第一節 国債ノ沿革概要
○上略
我国債ハ曠古ノ戦役ヲ経テ其ノ額俄ニ膨脹シ、而モ時局ノ急ニ迫ラレ内外市場ニ於テ募集シタル国債ノ一部ニハ、高利又ハ短期ノモノアルニ因リ、之ヲ整理償還センカ為メ、政府ハ明治三十八年十一月ニ四分利付英貨公債ヲ、同四十年三月ニ五分利英貨公債ヲ募集シ、尋テ同四十一年ニ至リ国庫債券整理公債ヲ発行シ、以テ六分利付国庫債券、同英貨公債ノ全部、並ニ償還満期ニ瀕セル第一回国庫債券一部ノ借換ヲ為シタリ、然ルニ同四十三年一月末ニ至リ、国債ノ未償還額ハ仍ホ二十五億八千五百余万円ノ鉅額ヲ算シ、之ニ伴フ毎年ノ利子額モ約一億二千二百余万円ノ多キニ上リ、国民ノ負担決シテ軽シトセサルヲ以テ之カ低利借換ヲ遂行シテ其ノ負担ヲ軽減スルハ、戦後ノ財政整理上最モ緊切ノ事業タルノミナラス、我国カ国際上ニ占ムル地位並ニ信用ニ鑑ミ五分ノ国債利率ハ其ノ当ヲ得タルモノニアラス、時偶々公債ノ市価上進シ金融頗ル緩慢ヲ極メシニ因リ、政府ハ此ノ機会ヲ利用シ国債利率ヲシテ四分標準ニ低下セシメント欲シ、一気呵成借換ヲ断行スルニ決定シ、其ノ年二月ニ第一回四分利公債ヲ募集シ、引続キ翌三月ニハ第二回四分利公債募集ノコトヲ発表シ、其ノ他償還元金ノ代リトシテ第一回四分利公債ノ特別発行ヲ為シ、又外国市場ニ在リテハ相踵キテ四分利付仏貨公債及第三回四分利付英貨公債ヲ募集シ、是等ノ借換資金ト一般歳入トヲ財源トシ、頼テ以テ既ニ据置期限ノ経過シタル五分利付国債ヲ一掃スルコトヲ得タリ
○下略


銀行通信録 第四九巻第二九二号・第三五―三九頁明治四三年二月 内債借替四分利公債発行(DK500006k-0005)
第50巻 p.32-39 ページ画像

銀行通信録  第四九巻第二九二号・第三五―三九頁明治四三年二月
    ○内債借替四分利公債発行
政府は前年来着々公債の償還を実行し来りたる結果、近来公債の市価著しく騰貴して、遂に額面を抜くに至りたるより、此機に乗じ愈々内債を借替へ四分利公債を発行するの計画を立て、之が第一着として桂大蔵大臣は一月二十六日、日本銀行正副総裁の外、渋沢・豊川・園田早川・安田・池田の東京銀行家諸氏を官邸に招集して、右に関する交
 - 第50巻 p.33 -ページ画像 
渉を開始する所あり、越へて二十九日に至り、小山・志立・原田・町田・岩下・永田の大阪銀行家諸氏も亦、大蔵大臣の招集に応じて内債借替の協議に参加し、夫より三十一日に至りては日本興業銀行の添田寿一氏も之に加はり、之にて今回の協議に預りたる銀行家は都合左の十五行十五名となれり
 松尾男爵(日本銀行)   高橋男爵(正金銀行)
 渋沢男爵(第一銀行)   豊川良平(三菱銀行)
 園田孝吉(十五銀行)   早川千吉郎(三井銀行)
 安田善三郎(安田銀行)  池田謙三(第百銀行)
 添田寿一(興業銀行)
    以上東京側
 小山健三(三十四銀行)  志立鉄次郎(住友銀行)
 町田忠治(山口銀行)   原田二郎(鴻池銀行)
 岩下清周(北浜銀行)   永田仁助(浪速銀行)
    以上大阪側
斯くて同日より翌二月一日に亘り協議を重ねたる結果、前記十五行に於て「シンヂケート」を組織し、今回借替発行に係る四分利公債の下受保証を為すことに決し、各条項に付官民の意見一致したるを以て、政府は愈々二月二日を以て内債借替に関する言明と共に、四分利公債要項及其他の諸計算を発表せり、内債借替に関する政府の言明左の如し
    内債借替に関する言明
 高利の国債を借換へ低利の国債と為し、以て国庫の負担を軽減するは実に財政上の要務なり、故に欧米各国に於ては古来夙に高利国債の借換整理に腐心し、苟くも時機の乗ずべきものあらば借換の断行に躊躇せずして、其成績大に観るべき者あり、我国に於ても往年六分以上利付の各種国債を借換ふる為め、五分利付整理公債を発行し錯綜を極めたる諸種の高利国債を統一整理し、又近くは六分利付英貨公債及び国庫債券の借換を行ひ、財政上著大の効果を奏したるは今尚世人の記臆に新たなる所なり、今や空前の戦役を経過し、我国債の額は俄然膨脹し、最近数次に行はれたる償還を以てしても尚今日無慮二十五億八千五百有余万円の多きに上り、国民の負担決して鮮しとせざるを以て、之が低利借換を実行して国庫の負担を寡少ならしめ、併せて国民の負担を軽減するは戦後の財政を整理する上に於て、最も重要なる事業たるのみならず、我国の最近国際上に占むるに至りし地位に鑑み、今日の国債利率の標準を以て満足すべからざるは明かなる所なるを以て、政府は一昨年財政計画を立つるに当り深く此の点に留意し、国債の低利借換を以て重要なる目的の一としたることは内外の認識する所なり、而して今日内国債として現存する五分利付国債の未償還額を計算するに、裏書附公債を除き其総額十三億二千三百有余万円にして、之に対する一ケ年度利子所要額は凡そ六千六百有余万円なるが故に、仮に之を六十ケ年満期の四分利付国債に借換ふるものとせば、損益計算上発行価格を百に付九十五の割合とし、其発行価格差減額を各年の利子額に加へ、之を前記
 - 第50巻 p.34 -ページ画像 
五分利付国債の利子年額に比較するに、借換に因り年々国庫の支出を減ずべき額は凡そ千十七万円の多きに及ぶべし、尚又内国公債の借換に止まらず海外に現存する公債をも漸次低利に借換ふるに於ては、国庫の利益する所更に増加すべきを以て、借換事業の財政上に多大の効果を生ずる事は、此一事を以て観るも明なりとす、且つ夫れ市場に於ける一般金利は金融の状勢に応じて常に高低あるべきは勿論なりと雖も、借換の事一たび功を奏し、我が内国債の利率が四分を常態と為すの暁に至ては、自ら地方債其他の債券利率の標準と為り、一般投資観念の変遷を来たし、一般金利の標準も之に随伴して低下すべきは自然の趨勢なり、従つて民間資金の融通円滑となり各般事業の利益を増進し、内地産業の発展を来すべきは疑を容れず是に依つて之を観るに、国債の借換は独り国庫の負担を軽減し、財政上に資する所多きものあるのみならず、経済上亦た裨益する所大なりと云ふべし、今や我国債の市価は財政の基礎鞏固なると、国債政策の確立したるに因るの外、金融緩慢の反響を受けて漸次昂騰の気運に嚮ひ、既に額面以上に達し、尚ほ将来上進の趨勢を呈せり、故に此好機を逸せず玆に五分利付内国債を整理して四分利付のものと為し、以て財政上及び経済上の利便を図るは、最も適切且つ緊要の措置なりと信ず、仍て先づ此際約一億円の低利借換を試み、爾後相踵ぎて此計画の遂行を努め、以て借換事業の完成を期せんとす
又政府の発表したる第一回四分利公債要項其他の諸計算左の如し
      第一回四分利公債要項
一募集額    一億円
一利率     百分の四
一据置期限   十箇年
一償還期限   据置満期後五十箇年
一利子仕払期  毎年六月一日、十二月一日
一最低発行価格 額面百円に付九十五円
一応募保証金  申込高百円に付五円
一募入決定   同年三月五日
一応募金払込期及割払金額
 第一期 三月五日  金五円(保証金振替)
 第二期 三月十五日 金二十円
 第三期 四月一日  金二十円
 第四期 五月二日  金五十円
一五分利付国債の代用価格
(一)代用の予告又は預託を為したるもの 額面百円に付百二円、
 但三月及九月利払の分は一円二十五銭を減ず
(二)代用の予告又は預託を為さゞるもの 同上百一円六十銭
 但同上
一募入方法 申込高が募集予定額を超過する時は、応募価格の高きものより順次之を採り、其価格同じきものは申込の高に割合減少し、割当高五十円に満たざるものは之を除き、更に之を五十円以上の分に配当す
 - 第50巻 p.35 -ページ画像 
一五分利付国債代用予告及預託を為せる申込は、募入決定の場合に優先権を有す
    現金払込利益調
第一期 三月五日 払込金五円
 六月一日迄八十九日 利子年四分の割四銭八厘七毛六七
第二期 三月十五日 同 二十円
 同    七十九日 利子同十七銭三厘一毛五〇
第三期 四月一日 同二十円
 同    六十二日 利子同十三銭五厘八毛九〇
第四期 五月二日 同 五十円
 同    三十一日 利子同十六銭九厘八毛六三
  計 払込金九十五円、利子金五十二銭八厘(端数切上)
此処へ六月一日に利子金二円を受取ることを得べきに由り、差引金一円四十七銭二厘益
     現金払込利廻り計算
(甲)四十三年(自三月五日至十二月一日)間の計算
 利子     四円
 発行価格の差 二銭二毛余
  但差額五円に対し六十箇年四分の年金率に依り算出したるもの
   計 四円二銭二毛余
 之に対する元金積数(五円二百七十二日分、二十円二百六十二日分、二十円二百四十五日分、五十円二百十四日分)
   二万二千二百円
     即ち日歩 一銭八厘一毛余に当る
 利廻り歩合 六分六厘〇毛六余
(乙)翌年以後毎一箇年の計算
 利子     四円
 発行価格の差 二銭二毛余
  但同上
   計 四円二銭二毛余
 之に対する元金 九十五円
 利廻り歩合 四分二厘三毛一余
     証券代用払込利廻り計算
(甲)四十三年(自三月五日至十二月一日)間の計算
 利子     四円
 発行価格の差 二銭二毛余
  但し差額五円に対し六十箇年四分の年金率に依り算したるもの代用価格の差七十五銭
  但代用価格百二円の内、代用国債の含有利子一円二十五銭を控除したるもの
   計 四円七十七銭二毛余
 之に対する元金積数(九十五円の二百七十日分)
   二万五千八百四十円
     即ち日歩一銭八厘四毛六余に当る
 - 第50巻 p.36 -ページ画像 
  利廻り歩合 六分七厘三毛七余
(乙)翌年以後毎一箇年の計算
  利子     四円
  発行価格の差 二銭二毛余
   但同上
    計 四円二銭二毛
  之に対する元金 九十五円
  利廻り歩合 四分二厘三毛余
右四分利公債要項中五分利公債の代用価格を百二円としたるは、一月より三月に至るまでの利子一円二十五銭、期限繰上払込に対する日歩三十九銭八厘九毛及び旧公債償還手続約一ケ月間速了に対する日歩四十一銭六厘を合したるものにして、公債代用の予告を為さす又は預託を為さずして、後日公債を以て払込まんとするものは繰上払込の事実なきを以て、其日歩三十九銭八厘九毛即ち約四十銭を差引き、代用価格を一円六十銭としたるものなり、又公債代用の申込が募集高に超過したるときは、第一国庫債券・第二海軍公債・第三整理公債・第四軍事公債・第五帝国五分利公債・第六台湾事業公債の順位を以て、之を割当つる筈なり
又新公債は六月一日に前六箇月分の利子金二円を支払ふものなるを以て、応募者は前記現金払込利益調中に記するが如く約一円五十銭の打歩を利する勘定となり、尚政府より「シンヂケート」に向て支払ふべき手数料は、額面百円に付一円と定めたり、而して一億円の四分利公債を発行し、九千五百円の五分利公債を償還するに於ては、政府は利子に於て毎年約七十五万円の利益を得へしと雖も、前述の如く応募者に対する打歩一円五十銭及「シンヂケート」手数料一円、合計二円五十銭を差引けば手取九十二円五十銭となり、政府の利益は実際六十二万五千円となる計算なり
斯くて「シンヂケート」加入銀行は、各自規約書に調印すると同時に政府との契約は「シンヂケート」の幹事たる渋沢・高橋の両男、一同を代表し日本銀行を通じて之を締結することゝなり、二月四日正式に双方の調印を了りたるを以て、政府は翌五日大蔵省令第三号、同第四号を以て左の如く四分利公債規程及国債仮証券規則を発布せり
      第一回四分利公債規程
 第一条 政府は国債整理基金特別会計法第五条第一項に依り、公債一億円を募集す
 第二条 本公債の利率は一箇年百分の四とす
 第三条 本公債の証券は大日本帝国政府四分利公債証書とし、其の額面金額は五十円、百円、五百円、千円、五千円及一万円の六種とす
 第四条 本公債の元金は明治四十三年より十箇年据置き、其の翌年より向五十箇年間に之を償還す
 第五条 本公債の利子仕払期は、毎年六月一日及十二月一日とす
 第六条 本公債初期の利子は全半箇年分を附す
 第七条 本公債の発行価格は額面金額百円に付、其の最低を九十五
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円とす
 第八条 本公債の応募申込期間は明治四十三年二月十九日より同月二十五日迄とす、但し取扱銀行は応募者の便宜に由り二月十九日前と雖、申込を受くることを得
 第九条 本公債の応募者は、応募高、応募価格及住所氏名を詳記したる申込書に、申込高百円に付五円の保証金を添へ、之を取扱銀行に提出すべし
  前項の応募価格には十銭位に満たざる端数を附することを得ず
 第十条 従前発行の五分利付公債証券又は五分利付登録国債は、左に掲ぐる代用価格を以て計算し、本公債応募払込の現金に代用することを得
  (一)六月、十二月及五月、十一月利払のもの(額面金額又は登録金額百円に付)百二円
  (二)三月、九月利払もの(同上)百円七十五銭
  無記名国債証券の附属利札中、明治四十三年五月以降の利払期に属するもの欠欠せるときは、前項各号の代用価格中其の欠欠利札に於ける利子相当の金額を控除す
  第一項の国債にして既に当籤又は満期等に因り元金償還期日の到来したるものは、応募払込の現金に代用することを得ず
 第十一条 国債証券又は登録国債を以て本公債応募払込の現金に代用せむとする者は、応募申込の際、国債証券に在りては其名称、額面金額種類及枚数を、登録国債に在りては其の種別、金額、記号番号及記名を予告し、又は該国債証券を取扱銀行に預託し置くことを要す
  前項に依り甲種国債登録簿の登録国債代用の予告を為し、又は代用証券を預託する場合に於ては、保証金を納むることを要せず
 第十二条 本公債の応募高、募集予定額を超過するときは、其の応募価格の高きものより順次之を採り、応募予定額に満つるに至りて止む
 第十三条 国債証券又は登録国債を以て、本公債応募払込の現金に代用する者の応募高は、優先に募入せらるゝものとす
 第十四条 本公債の応募申込に対する募入の決定は、明治四十三年三月五日迄に之を為し、取扱銀行より其の旨を応募者に通知す
 第十五条 前条に依り募入決定の通知を受けたる者は、左の区別に従ひ募入高に対する現金を取扱銀行に払込むべし、但し第一期払込は保証金を以て之に充つ
   第一期 明治四十三年三月五日金五円 (募入高百円に付)
   第二期 同年同月十五日金二十円   (同上)
   第三期 同年四月一日金二十円    (同上)
   第四期 同年五月二日金五十円    (同上)
  最低発行価格よりも高き価額を以て申込をなしたる者は、第二期払込と共に其の差額を払込むべし
 第十六条 取扱銀行は応募者の便宜に由り、前条第一項の各払込期日前と雖、其の払込を受くることを得
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  応募者は第二期以後に於て後の一期、又は数期分を前期に繰上け払込を為すことを得
 第十七条 無記名国債証券又は乙種国債登録簿の登録国債代用の予告を為したる者は、募入決定の通知を受けたるとき直に其証券を取扱銀行に提供すべし、此場合に於ては第十五条第一項但書の規定に拘らず保証金を還付す
  代用の予告を為したる甲種国債登録簿の登録国債及預託したる国債証券は、第一期に於て現金の払込に代用納付したるものと看做す
 第十八条 本公債応募払込の現金に代用する国債証券、又は登録国債の代用価額が払込むべき現金の額を超過するときは、前条第一項に該当するものに在りては国債証券提供の時に於て、同条第二項に該当するものに在りては第二期に於て、該超過額に相当する現金を払戻すものとす、但し現金の払戻は五十円を限度とす
 第十九条 本公債応募金の払込を延滞したる者は、払込期限の翌日より現払込の日まで、払込金百円に付日歩四銭の割合を以て利子を納むべし
  前項払込を延滞したる者か払込期限後三箇月以内に払込を為さゞるときは、之に対する応募の申込を無効とし、既に払込みたる金額は之を政府の所得とす
  国債証券代用の予告を為したる者に付ては、第二期を以て払込期限と看做し、前二項を準用す
 第二十条 代用の予告を為し、又は預託を為したる国債証券又は登録国債に付ては、新規登録、登録変更、登録簿移記、登録除却及所管店転換の取扱を為さず、但し相続、遺贈、強制執行、又は氏名変更の場合は此の限に在らず
 第二十一条 本公債の応募者第二期の払込を為したるときは、仮証券を交付し、払込完了の上之を引換に本証券を交付す、但し国債規則第二十五条に依り、甲種国債登録簿に登録の請求を為したる者に対しては、仮証券と引換に登録済証書を交付す
  前項の規定は第二期以前に払込を完了したる場合に之を準用す、但し国債規則第廿五条に依り、甲種国債登録簿登録の請求を為したるときは、此の限に在らず
      附則
  本令は公布の日より之を施行す
      国債仮証券規則
 第一条 国債の募集に際し、発行する仮証券は総て記名とす、仮証券の額面金額の種類は本証券に従ふ
 第二条 国債募集金の払込を数期に分つ場合は、取扱店に於て毎期払込を受くるに従ひ、仮証券に其の金額を記入し之に証印す、但し供託又は質権設定等の事故に因り、払込の際仮証券を呈示すること能はざる者は其の旨を証明すべし、此の場合に於ては其の金額を仮証券に記入する代りに、之に対し仮に領収証書を交付す
 第三条 国債仮証券の記名変更又は所管取扱店の転換を受けむとす
 - 第50巻 p.39 -ページ画像 
る者は、国債規則第二十八条又は第三十三条の規定に準し、之を取扱店に請求すべし、但相続、遺贈及強制執行の場合を除く外国債募集金の払込を延滞したる者は、其の払込を了りたる後に非ざれば記名変更、又は所管取扱店転換の請求を為すことを得ず
 第四条 国債仮証券を滅失し又は紛失したる者は、二名以上の保証人を立て其事実を取扱店に証明し、国債募集金の払込中に在りては代仮証券の交付を、払込完了後に在りては之に対する本証券の交付を請求することを得
  前項の請求ありたる後、原仮証券を発見したる者は速に其旨を取扱店に届出づべし、此場合に於て既に代仮証券、若は本証券の交付を了り、又は交付手続中なるときは原仮証券を返還せしむ
 第五条 第二条但書の規定に依り交付を受けたる領収証書を滅失し又は紛失したる者が仮証券を提出して払込金額の記入を受けんとするときは、二名以上の保証人を立て其旨を取扱店に証明すべし
 第六条 国債募集払込の延滞に因り、無効と為りたる仮証券を所持する者は、速に之を取扱店に還付すべし
 第七条 国債規則第三条、第七条、第八条、第二十四条及第四十六条の規定は、国債仮証券に之を準用す


渋沢栄一 日記 明治四三年(DK500006k-0006)
第50巻 p.39-40 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治四三年         (渋沢子爵家所蔵)
二月十六日 晴 寒
○上略 午前十一時日本銀行ニ抵リ、高橋・深井二氏ニ面会シテ公債借替ニ関スル爾後ノ取扱手続ヲ詳知ス○下略
  ○中略。
二月十八日 晴 寒
○上略 公債仲買林氏来リ、再下請ノ事ヲ請フ○下略
  ○中略。
二月二十二日 晴 寒
○上略 午後四時再ヒ日本銀行ニ抵リ、松尾氏ニ面会ス、借替公債ノ事ヲ談ス、是ヨリ先小池・神田・福島三氏来リ、公債ニ関スル談アリ○下略
  ○中略。
二月二十七日 晴 風寒
○上略 五時築地ノ瓢屋ニ抵リ、大蔵大臣ノ招宴ニ出席ス、桂大臣・若槻次官其他銀行者来会ス、一場ノ答辞ヲ述フ○下略
二月二十八日 曇 寒
○上略 十時日本銀行ニ抵リ、借替公債応募締切ノ報告及割付ノ事ヲ協議ス、又価格維持又ハ第二回施行ニ関スル意見ヲ打合ハス○中略日本銀行集会所《(マヽ)》ニ抵リ、日本銀行ヨリノ饗宴ニ出席ス、桂首相臨席アリ、銀行者来会スル者三十五・六名ナリ、夜十時散会帰宿ス
  ○中略。
三月三日 晴 寒
○上略 午前十一時日本銀行ニ抵リテ、松尾総裁ニ面会シテ公債借替ニ付次回ノ手続ヲ談ス○下略
  ○中略。
 - 第50巻 p.40 -ページ画像 
三月七日 晴 寒
○上略 午後二時半桂総理大臣邸ニ抵リ、松本総裁《(松尾)》・高橋氏・若槻氏等ト公債借替ノ事ヲ協議ス○下略
  ○中略。
三月九日 曇 寒
○上略 六時半桂総理大臣永田町邸ニ抵リ、公債借替ニ関スル会議アリ、晩飧後大臣及大蔵省当局者及日本銀行総裁、各組合銀行者会同シテ、大蔵省提出ノ原案ニ付テ種々ノ協議アリ、夜十一時散会○下略
  ○中略。
三月十八日 晴 軽寒
○上略 午後二時日本銀行ニ抵リ、高橋是清氏ト公債買入ニ関スル事ヲ内議ス○下略
  ○中略。
四月八日 曇 軽寒
○上略 午飧後日本銀行ニ抵リ、公債借替ニ関スル事務ヲ協議ス○下略
  ○中略。
五月五日 曇 暖
○上略 午飧会○外相ノ米人招待ニ出席ス、畢テ高橋是清氏ト共ニ大蔵省ニ抵リ、若槻次官ニ面会シテ公債償還ノ事ヲ談ス、更ニ日本銀行ニ抵リ、松尾総裁ト同様ノ事ヲ談ス、後第一銀行ニ抵リ佐々木氏ト行務ヲ談ス○下略
五月六日 晴 暖
○上略 午後二時日本銀行ニ抵リ、東京ノ公債下受銀行相談会ヲ開キ、公債ニ関スル協議ヲ為ス、議論多ク協定セス、来ル九日ヲ期シ大阪同業者ヲ会同シテ議定スヘキ事ヲ約シテ散会ス○下略
  ○中略。
五月八日 晴 暖
○上略 午前十一時東洋協会ニ於テ桂大蔵大臣ニ面会シ、公債下受組合ニ関スル内情ヲ談話ス
○下略
五月九日 晴 暖
○上略 午前九時日本銀行ニ抵リ、公債下受組合会ヲ開キ種々ノ協議ヲ為ス○下略
五月十日 曇 暖
○上略 午前九時桂大蔵大臣ヲ官舎ニ訪ヒ、昨日日本銀行ニ於テ協議セシ公債組合ノ決議ヲ報告シ、向後ノ事ヲ談ス


竜門雑誌 第二六二号・第五六―六二頁明治四三年三月 ○借替新公債とシンヂケート(DK500006k-0007)
第50巻 p.40-43 ページ画像

竜門雑誌  第二六二号・第五六―六二頁明治四三年三月
    ○借替新公債とシンヂケート
桂大蔵大臣は五分利公債を四分利公債に借替する件に付き、一月二十六日午後五時より日本銀行総裁松尾男爵、同副総裁高橋男爵、日本興業銀行総裁添田寿一、園田孝吉・豊川良平・早川千吉郎・安田善次郎池田謙三諸氏及び青淵先生を官邸に招きて協議する所ありたり、蓋し政府は既に据置年限の経過せる公債は、適当の時機に於て漸次之を低利公債に借替せるの方針にして、今後幾回かに亘り之を実行するに就
 - 第50巻 p.41 -ページ画像 
ては、募集上の新例を開きて成功を期せんとするに在るものゝ如く、即ち日本銀行をして正金・三井・三菱・第一・第十五・第百・安田・第三の東京銀行と、鴻池・住友・浪速・山口・北浜・三十四の大阪方銀行とを以て、一のシンヂケートを組織せしめて所謂アンダーライターとなし、募集上の引受保証を為さしめんとの意向にて、其意見を徴したるものなるが如く、翌二十七日午前十一時より東京各銀行家諸氏は日本銀行に参集して凝議する所あり、越えて三十日午前十時、前記東京・大阪の各銀行家諸氏は三井集会所に会合し、青淵先生を座長とし、内債借替に関する細目に付き協議の結果、一定の成案を得たるを以て、青淵先生と小山健三氏は各銀行を代表して、同夜直に桂総理大臣を訪ひ答申する所ありしと云ふ、翌三十一日朝、松尾日本銀行総裁は桂総理大臣の旨を受け、銀行家の答申に対する政府の返答を齎らし同日午前十一時より日本銀行楼上に会合せる京阪十五銀行家に伝へたり、席上種々の意見ありし由なれども、結局松尾総裁の齎らせる政府の意見通り纏り、玆に政府と十五個銀行、即ち正金・興銀・三井・三菱・第一・十五・第百・安田・第三・鴻池・住友・浪速・山口・北浜三十四銀行より成るシンヂケートの間に、内債借替引受保証に関する交渉全く成立を告ぐるに至れり、此に於て政府は二月五日大蔵省令第三号を以て借換新公債規程を発表したり、即ち左の如し。
      ○借換新公債規程○略ス
斯くて二月二十五日を以て締切りたる四分利借替公債の応募額は、公債提供と現金応募を合せ一億八千七十七万円に達し、玆に政府は予期の目的を達することを得たり
      △二次内債の借替
第二次四分利公債発行に関する協議を為さんため、桂大蔵大臣は九日午後五時、永田町の総理官邸に於て松尾日銀総裁を始め、引受シンヂケート銀行家、青淵先生(第一)、高橋男(正金)、豊川(三菱)、早川(三井)、園田(十五)、添田(興銀)、安田(安田)、小山(三四)志立(住友)、町田(山口)、小塚(北浜)、原田(鴻池)、永田(浪速)の諸氏を招待し、政府側より若槻大蔵次官、勝田理財局長、塚田国債局長、長島秘書官等列席したり、一同相会するや直ちに晩餐を共にしたる後
 △桂総理 は第一回発行の際に於ける銀行家の労を謝し、今回いよいよ従前よりの計画通り、引続き第二回四分利公債を発行し、国債借替の目的に向つて進まんとするに就ては、亦銀行家諸氏の尽力に俟たざるべからず、然るに幸ひ今日の状況は第一回に於て五千万円の現金募入を得たりしを以て、海軍公債の全部七百万円及び整理公債の四千三百万円を償還するを得る事となりたる外、九日、来年度予算の貴族院を通過したる結果として、六千八十万円を以て第二回国庫債券を償還し得るの有様となり居れば、事情は前回に比し大に優れるものあらんと信ずるに因り、玆に政府の私案を提供し、シンヂケート各位の意見を聞かんことを欲す
とて一場の挨拶を述べたるに、之れに対して青淵先生一通り答辞を陳べたり、次で銀行側にありては政府の私案たる発行総額一億円とあり
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しに対し、二億円説を主張したるものありしが、政府の之に対する意向は勿論二億円を一時に発行するも別段懸念するに非らずと雖も、斯る事は成る可く大事を取り急がず迫らず、経済界に幾分にても変動を与へざるを期するを以て得策とすべしと云ふにありしを以て結局一億円と決し、其他借替方法に付てもシンヂケート側に多少の意見ありたるも、第二回内債借替の条件並に国債償還に関する事項を決定し、且つ取扱其他手続上に便法を設くることは、第一回に経験も積みたる事なれば、シンヂケート銀行家諸氏は十日午前十時日本銀行に再会して協議を重ぬることを約して同午後十時三十分散会したり、同夜の決定したる細目左の如し
      △国債抽籤償還
第一回現金募入額五千万円を以て海軍公債全部七百万円、整理公債四千三百万円を抽籤償還することに一決し、抽籤は四月十一日に行ひ、四月三十日には現金を仕払ふ事に決定したり、尚ほ其告示は両三日中に官報にて之を発表すべし
      △第二回内債条件
 一、発行総額 一億円
 一、利率 年四分
 一、最低発行価格 九十五円
 一、据置期限 発行の年より十箇年
 一、償還期限 据置満期五十箇年
 一、利子支払期 三月一日、九月一日
 一、初期の利子 六箇月分全部を支払ふ事
 一、申込開始期日 四月四日
 一、締切期日 四月十一日
 一、募入決定期 四月十九日
 一、払込期日 四期に分つ、即ち左の如し
 (一期) 四月十九日 五円(保証金振替)
 (二期) 五月三十日 二十円
 (三期) 六月三十日 二十円
 (四期) 八月十日 五十円
 一、代用公債価格
  六月及び十二月利払期のもの 百二円九十銭
  三月及び九月利払期のもの 百一円六十五銭
 一、募入方法 公債代用応募たると現金応募たるを問はず、凡て応募価格の高きものより順次に之れを募入し、若し価格の同じき場合は公債代用申込のものに、優先権を与ふること
右の如き条件にて借替を行ふに就ては、其取扱方法中、改善を要すへきものあり、即ち第一次の借替を行ふ際には、仲買人福島浪蔵・小池国三・神田鐳三三氏、各銀行の下受けを為せしかども、其取扱方法中不備の廉少からずとて、松尾総裁を初め、渋沢男・豊川・早川・添田安田・松方・池田・小山・志立・町田・小塚・原田・永田の引受銀行家諸氏、及び政府側よりは若槻次官・塚田国債局長、十日日本銀行に会合し、午前十一時過より午後四時三十分迄数時間に亘り協議を遂げ
 - 第50巻 p.43 -ページ画像 
たる結果、決定を見るに至れりと云ふ、其の大要左の如し
 △取扱銀行増加 第一回の経験に鑑み、今回は大に取扱銀行を増加することゝなし、其増加方法は日本銀行に一任するも、大体は日露戦役当時国庫債券の発行を扱ひたる銀行を標準として、之を取扱銀行として採用し、尚ほ不足の分は日本銀行に於て適当と認むる銀行を指定する事
 △仲買人の再引受 全国取引所の仲買人の再引受は、大体之を認めたるも、仲買人の引受ける部分には兎角浮動し易き応募多き事は前回に於て明に認められたる所なれば、今回は一定の条件を承諾するならば再下受を為し得べき事に決したり、即ち其一定の条件とは、仲買人の引受けたる公債は之れを発行価格以下にて売却せず、自己の取引銀行の如き一定の場所に供託すべしと云ふに在り、而して神田・小池・福島の三仲買人の再下受は、前回の例に因り前記一般の仲買人と同様の条件を履行すべき事
 △供託証券応募便法 各種供託証券を提供し、借替応募の方法は前回の時便法開かれしも、猶ほ一層簡便の手続に因り、応募し得るやう取計ふ事を必要とし、今回は供託公債又は登録公債を以て応募するには、単に主務官庁又は日本銀行へ証書代用応募を為す旨予告するのみにて十分なりとし、又代用応募を為さんとする公債に質権の設定せられあるが如き場合には、第一、二回の公債応募者を通じ其利益の為め速かに本証券を交付する事
 △華族応募便法 華族の世襲財産として存する公債を以て乗替応募を為さんとするには、其手続頗る複雑なるを以て、此等応募者の便宜上相当簡易なる手続を定むるため、大蔵省は宮内省と相談して適当の方法を講ずる事
 △取扱手数料 仲買人が銀行に応募申込を為したる場合に、日本銀行は二十五銭の中取扱銀行に一半を取扱料として、他の一半を仲買人に周旋料として与へたるは前回の約束なりしも、今回は前記の如き二重に手数料を支払ふ事を避くる事とし、其詳細は日本銀行に於て調査の上決定する事、随て一般仲買人に対する手数料は前回より増加すべき事
 △一般銀行と仲買人 一般銀行が甲引受団銀行より再引受を約したる時は、他の乙銀行より再引受を約するを得ざれ共、仲買人は一銀行に限らず、再引受を約するを得る事、並に一般銀行が引受団銀行と再引受を約したる時は、其手数料を定むる事は各引受銀行の任意たる事


銀行通信録 第四九巻第二九三号・第六六―六七頁明治四三年三月 内国経済時事 第一回四分利公債募集成績(DK500006k-0008)
第50巻 p.43-44 ページ画像

銀行通信録  第四九巻第二九三号・第六六―六七頁明治四三年三月
 ○内国経済時事
    ○第一回四分利公債募集成績
内債借替の目的を以て発行せられたる第一回四分利公債一億円は、予定の如く二月十九日を以て応募申込を開始せられ、同二十五日を以て締切となれり、之より先き政府は借替に関する各種の計算を発表して新公債応募の有利なることを示せるのみならず、二月十六日には第二
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回国庫債券一千万円の償還を発表して借替の外に続々現金償還を決行することを暗示し、同時に供託公債乗替の便法を定め、之に関する大蔵省令を発布せしが、一方下引受「シンヂケート」に於ても亦株式仲買人小池国三・福島浪蔵・神田鐳蔵三氏の申込に依り、二月十二日各自の引受分担額より五百万円の再引受を為さしむることに決し、続いて締切の前日たる二月二十四日に至り、一般の株式仲買人に対しても応募取次を為すものには、百円に付十二銭五厘の手数料を支出することゝなりしかば、前記三名を除きたる仲買人二十名は、各自百万円宛を醵出し、都合二千万円の現金応募を為すことゝなれり、然れども新公債募集の成績は従来の例に反し、締切当日迄絶対に秘密に附せられたるを以て、或は二倍と云ひ或は三倍と云ひ世評区々なりしが、愈々締切当日に及び「シンヂケート」引受の分を除き、約一億八千円に上りたること明瞭となれり、但し此中には「シンヂケート」加入の銀行が、普通の資本家として申込みたる分をも包含すること勿論なり、而して右の応募高は其後報告遅延の分を加へたる結果、愈々総額一億八千七十七万四千四百円と確定し、其内証券代用申込は約六千余万円にして、現金応募は彼是れ一億二千万円に上りたり、斯くて募入の方法は三月五日に至り、証券代用及現金応募中、価格以上申込の分は優先募入となし、其池は応募者と其応募額の如何を見て、適宜之を按排することに決したり


銀行通信録 第四九巻第二九五号・第一五―一六頁明治四三年五月 四分利外債発行、裏書公債償還並第三回内債借替 第三回内債借替(DK500006k-0009)
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銀行通信録  第四九巻第二九五号・第一五―一六頁明治四三年五月
 ○四分利外債発行、裏書公債償還並第三回内債借替
    第三回内債借替
政府は英貨公債を発行して裏書公債の全部を償還すると同時に、仏貨公債四億五千万法(一億七千四百十五万円)を発行し、之を財源として既に据置期限を経過せる五分利内債中、前記裏書公債を差引きたる残額一億九千余万円に対し、第三回内債借替を実行することに決し、五月六日大蔵省告示第七十一号を以て左の如く公示せり
 整理公債全部、軍事公債(裏書附のものを除く)全部、台湾事業公債(台湾事業公債法第三条第一項に依る分)全部及据置期限の経過せる五分利公債(裏書附のものを除く)全部は、左の通之を償還す
  明治四十三年五月六日
               大蔵大臣 侯爵 桂太郎
   公債種目          償還期日
  整理公債全部       明治四十三年五月三十一日
  軍事公債全部       同年六月三十日
  台湾事業公債全部     同上
  五分利公債全部(い号・ろ号・に号・ほ号・へ号・と号・ち号・ぬ号・る号)       同年七月三十日
即ち償還期限の経過したる公債は、前後三回に分ち全部現金を以て之を償還するものにして、各公債の内訳は二回の借替に際し、代用払込に供せられたるものありて、其現在高を知ること能はざるも、大略整理公債七千万円、軍事公債六千万円、台湾事業公債九万二千円、五分
 - 第50巻 p.45 -ページ画像 
利公債六千万円位なるべく、而して一億九千余万円の公債中、自然に海外に売行きたるもの約七千万円に達し居るを以て、内地に於て償還せらるゝものは一億二千余万円に過ぎざるべしと云ふ、尤も仏貨公債募集金一億七千余万円のみにては、一億九千余万円の公債を償還するに由なきも、此は公債整理基金中の償還資金を以て之を補充する筈なり、而して政府は公債所有者の便宜を計り、現金を受取る代りに四分利公債を望む者には、随意乗換を許すことゝし、五月六日大蔵省令第二十三号を以て、左の公債乗換規程を公布せり
 第一条 五分利付国債償還の場合に於て、債権者の望あるときは政府は償還元金の代りとして、額面百円に付九十五円の割合を以て国債整理基金特別会計法第五条に依り、四分利公債を交付す
  前項に依り交付する公債は、第一回四分利公債とす
 第二条 前条に依り四分利公債の交付を受けむとする者は、五分利付国債に対する元金の償還を請求すると同時に、其の旨を取扱銀行に申込むべし
  前項の請求は、償還期日の到来せざる国債に付ても之を為すことを得、此の場合に於ては其の請求のときを以て償還期日と看做す
第三条 本公債の利子は、申込の日の属する月の一日より之を起算す
  明治四十三年六月一日渡利子に限り、領収証書と引換に之を其の引受人に仕払ふ
      附則
 本令は公布の日より之を施行す
  明治四十三年五月六日   大蔵大臣 侯爵 桂太郎
即ち現金仕払を欲せざる者に対しては、額面百円に付九十五円の割合を以て四分利公債を交付し、又申込日の遅速に拘らず其月の月割利子金額を仕払ひ、尚償還期日の到来せざる公債に就ても乗換を許すこととせり、而して公債の交付を第一回四分利公債と定めたるは、証券の交付を迅速ならしむる為めにして、公債乗換の期間は別に定めなきも此は他日適当の時期を以て之を締切り之を公示する筈なり、之を要するに右の内債借替に依りて据置期限の経過せる五分利公債は、全部四分利公債に借替へられ、公債借替問題も玆に一段落を告ぐることゝなれり


銀行通信録 第四九巻第二九六号・第六八頁明治四三年六月 内国経済時事 公債引受「シンヂケート」の存続(DK500006k-0010)
第50巻 p.45 ページ画像

銀行通信録  第四九巻第二九六号・第六八頁明治四三年六月
 ○内国経済時事
    ○公債引受「シンヂケート」の存続
政府は四分利外債の成立に依り、国債償還資源を充実し得たるを以て据置期限経過の公債償還に就ては、最早「シンジケート」の後援を待つの要なきに至りたるも、当初の行懸り上、尚ほ暫く内規を守るの必要あり、尚ほ明年にも入らば再び「シンジケート」の助力を要するものなきを保せざるを以て、五月九日○明治四三年「シンヂケート」代表者日本銀行に会合の際、政府と交渉の上、今後も従前の通り「シンジケート」を存続することに決したり

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銀行通信録 第五〇巻第三〇一号・第五一頁明治四三年一一月 内国銀行要報 公債引受「シンヂケート」銀行申合(DK500006k-0011)
第50巻 p.46 ページ画像

銀行通信録  第五〇巻第三〇一号・第五一頁明治四三年一一月
 ○内国銀行要報
    ○公債引受「シンヂケート」銀行申合
公債引受「シンヂケート」銀行代表者は、全国交換所聯合懇親会を好機とし、十月○明治四三年二十四日東京銀行集会所に於て渋沢男(第一)、高橋男(正金)、添田(興業)、豊川(三菱)、早川(三井)、安田(安田)、池田(第百)、小山(三十四)、芦田(鴻池)、中田(住友)、小塚(北浜)、阪野(山口)、永田(浪速)の諸氏会合し、種々協議の結果「シンヂケート」は今後に継続し、政府の公債償還借替を引受くるのみならず、確実なる社債を引受け、又清国に於て必要ある時は共同出資を為す等、日本銀行を中心として金融界の円滑を図るの機関たらしむることを申合せたり



〔参考〕銀行通信録 第四九巻第二九四号・第一八―二一頁明治四三年四月 国債借換に就きて 法学博士 河津暹(DK500006k-0012)
第50巻 p.46-49 ページ画像

銀行通信録  第四九巻第二九四号・第一八―二一頁明治四三年四月
    ○国債借換に就きて
                 法学博士 河津暹
      一
我国債は近年暴に増加して総額無慮二十五億八千五百余万円となり、之が為に支払ふ利子毎年約一億二千二百余万円の多きに上れり、其整理が我国財政の現状に照し急務たるは何人も異論ある可らざるなり、財政の現状に照し急務なりといふは、独り国債の募集に応じたる資本家の利益よりいふにあらず、又国家信用の増進よりいふにあらす、国債より生ずる国民負担を軽減し、之によりて国民経済の発達を庶幾する点よりも亦いふなり、国債借換は国債の償還と相待つて国債整理の骨子をなすものなり、政府が国債整理に力を致すは何人もよく知る所なり、されば金融緩慢の趨勢と政府が頻りに国債整理等に焦慮努力したる結果、国債の市価が額面以上に上りたるに乗じ、国債借換の事業に着手したるは、予輩は国債整理の手段として洵に当を得たるものなることを信ぜんとす、当局の説明する所に由れば、内国債として現存する五分利附国債の未償還額は、裏書附国債を除き総額十三億二千三百万円余にして、其利子一箇年約六千六百万円を超ゆるが故に、仮りに之を六十年満期の四分利附国債に借換るものとせば、其発行価格を額面の九割五分となし、其発行価額差減額を利子の中に繰込み計算するも尚、為に国庫の負担を軽減すること毎年千万円を起ゆるといへり其借換事業の我財政の上に影響する所少からざるを知るべし、其の国民経済等に及す間接の利益に至つては、一二にして止まらざるなり、予輩は借換事業の成功せんことを望むや切なり、政府は五分利附国債中、据置期限を経過せるもの約五億万円なるが故に、四十三、四年度の還債財源を差引残額四億万円を借換へんと欲し、曩に銀行家に諮り下受「シンジーケート」を組織せしめ、一億万円を替換へたり、之に次で第二次借換に着手し、第一次の借換の際に於る経験に本き、募集手続等に夥多の改良を施し、一億万円を借換ゆべきことを発表したり政府も熱心に此事に当り、下受銀行等も亦政府の意のある所を諒とし
 - 第50巻 p.47 -ページ画像 
熱心に此事に従ふ可きが故に、第二次の借換は第一次の借換の際に比し、更に良好の成績を挙ぐべきは予輩の私に推測する所なり、其の推測を確かむべき事情は、第一に国民は漸く国債借換の理に通じ、額面以上に上れる旧国債を其額面にて償還せらるゝよりも、寧ろ新国債の募集に応ずるを計算上利益とすべきが故に、曩に其応募を手控へしものも之に応ずるに至るべく、第二には第一次借換の経験に本き、応募手続上夥多の改良を加へたるを以て、曩に応募せざりしものも進んで応募するに至るべく、而かも金融の趨勢は依然として緩慢にして、資金の需要の激増すべき見込もあらざるが故に、第二次の借換も亦成功すべきを予言せんと欲す
      二
予輩は政府が国債の借換に着手し、而かも所期の目的を達したるは、財政目下の状況上成功なりといへり、この点につきて世上多少の議論なきにあらず、こゝに予輩の見る所を披陳して識者の教を待たんと欲す、政府が国債借換を行ひて成功すべき時期並に条件は二あり、第一は金融緩慢にして、政府がこれ等の計画をなすも之に応ずるものあり而かも事業界に何等の悪影響を起す虞なきこと、第二には国家財政の基礎鞏固にして、其信用厚く、従て国債の如きは額面価額以上にあること即ち是なり、政府がこの事業に着手したる所以は、蓋し金融甚だ緩慢にして、金利は益々低落する勢あると、一面には一時八十円を下りし国債も其価格を恢復し、額面以上に上りたるが故に、此機を逸せざらんが為なりしなるべし、金融の緩慢は眼前の事実なり、近ろに至りて資金の需要多少動き初めたるが如くなれども、緩慢の趨勢は依然として変ることなし、政府がこの機を逸せざりしは実に其所を得たりといふ可し、若し金融界漸く繁忙となり、資金の需要大に増加するに至れば、政府は借換事業をなし得るも比較的不利益なる条件に忍ばざるを得ざるなり、今回の借換が政府にとりて甚だ利益なる条件にてなすことを得たるは、下受銀行家の尽力も亦与つて力あることなるべしと雖も、政府がよくこの機会を捕捉し得たる為なりと思はる、四分の利率発行価格九割五分は、我国経済にとりて低率に過ぐる感なきにあらずと雖も、兎に角政府にとりて有利なる条件にて借換をなすを得たるは、金融緩慢の賜なりといはざる可らざるなり、国債の市価が額面以上に上りたることは、政府をしてこの挙を思ひ立たしめし一原因なるべし、国債の市価が額面以上に上りたるは、必しも我国の財政の基礎が鞏固となりたるを証明せず、我国の信用が著しく増加したることを示すものにあらず、政府は国債の価格を釣り上ぐるにつき百方術を講じたり、政府が非募債主義を標榜して以て天下に臨みしは、決して小策と称す可らずと雖も、其以外に於て夥多の小策を弄したり、予輩は敢て小策といふ、何となれば政府にして一面非募債主義に由ると同時に、一面税制を整理し財政をして順好ならしむる時は、国債の価格は求めずして昂進すべきなり、政府のなす所税制の整理財政の改良に与ることなしといふにあらず、本年の議会に於ても夥多の計画施設の発表ありたりと雖も、予輩を以て之を見るに税制の根本的革新と見る可からず、社会の認めて悪税となすものも依然として廃止せられざる
 - 第50巻 p.48 -ページ画像 
なり、其改正せられたるものもいはゞ枝葉の改正のみ、根本的改正とは認む可らざるに似たり、税制を論ずるものにして依然として非難の声を断たざるは其証とすべし、是等の非難中悉く耳を藉すべきものに非ざるは勿論なりと雖も、之れと同時に悉く之を棄て省みざる程価値なきものに非るなり、予輩の見る所を以てすれば、現今の税制従て財政組織は一大斧鉞を揮つて、其根蔕より改革せざる可らず、其改革を待つて初て其の基礎鞏固たるを得べきを信ぜんとするものなり、財政の基礎鞏固にして、国家の信用は大に増進す可きなり、此事予輩曾て嘱を受けて露国の国債償還の沿革事情を叙述したる際、最後に注意したる所なり、「公債を整理し一面には国民の負担を軽減し一面には其国の信用を高めんと欲せば、先づ其根元に遡りて其財政を鞏固にせざる可らず、財政を鞏固にせんと欲せば一面には租税制度を改善し、更に其歳出に適当の節減を加ふると共に、一面には民力を涵養し国民経済の基礎を鞏固ならしめざる可らず」と、予輩は今日尚此ことの真理なるを確信するものなり、この見地よりすれば我国財政の状態は、国債借換をして有利に成就せしむる程、鞏固なりとはいふ可らず、論者の中今回の借換を以て一大冒険なりと称するものあるは、蓋しこの謂なる可し、故に第一次・第二次の借換に於て、幸に成功したりと雖も永く有利なる条件に於て国債の借換をなさんと欲せば、一面其根元に遡りて財政の基礎を鞏固にし、以て国民経済をして発展せしむること一面には我国資金の充実して、第一・第二次の借換条件を以て、資本家の喜ぶ所となる暁を待たざる可らざるなり、政府は第一次・第二次の国債借換に於て、既に少からざる小策を用ひたり、下受銀行等も亦政府の意を諒とし、少からず力をこゝに致せり、今後尚引続きて小策によりてこの偉業を成就せしめんことは、蓋し困難なるべし、須く其根元に遡りて国債整理の基礎を作らざる可らざるなり
国債借換の条件にして未だ甚だ備はらざるに拘らず、金融界の趨勢に乗じ、国庫にとりて甚だ有利なる条件を以て借換をなし得たるは、下受銀行の協力あるにせよ、政府の成功といふを得べし、若し財政の状態にして甚だ変ずることなしと仮定し、金融界漸く繁忙となり金利上進の勢を示せば、到底かくの如き有利なる条件に於て借換をなし得ざりしやも未だ知る可らざるなり、政府がこの機会を逸せざりしは、予輩之を賀せざるを得ざるなり
      三
政府の第一次並に第二次の借換は、実に成功したるものとして祝福したり、次に来るべき問題は、政府は第三次・第四次の借換に於て、前と同じ条件に於て之をなし遂ぐるを得るや否やにあり、予輩予言者にあらず、我国金融界の趨勢につきて予言すること能はずと雖も、第一次・第二次の借換に於る条件は我国経済進歩の状態に比し、寧ろ低率なるやの感あり、我国金融の状勢を以てせば、欧洲市場に於る借換の条件に比し多少不利ならざる可らず、従て我内国債の利廻にして我国経済の状態に比し稍少しとせば、これ等四分利附公債は下落の傾向を示すことなきやは、予輩私に疑なき能はざるなり、予輩は衷心かくの如きことを望むものなりと雖も、四囲の事情等に照し、かくの如き現
 - 第50巻 p.49 -ページ画像 
象を見るに至らずして已むべきやは私に疑あるものなり、此不祥の予言にして事実ならしめん乎、政府は今後の借換につきて同じ有利なる条件に於て、之をなすこと能はざるやも未だ知る可らず、若し条件を改めなば勿論借換を継続するを得べしと雖も、かくては第一次・第二次に借換へたる国債は、更に下落すべきを以て、政府の立脚点より見て之をなすこと能はざるは明なり、故に政府は金融財政の状勢の国債借換に有利となる暁まで、之を待たざる可らざるなり、予輩のこの結論は上に述べたる前提が正しとしての上なり、予輩は金融界の状勢に迂きものなれば、其前提が正しきや否やは読者の判断に待たざる可らざるなり
      四
世上下受「シンジケート」につきて論議するものあり、予輩の見る所を以てすれば、内国債を借換ゆるに当りて下受「シンジケート」をして之を担保せしむるが如きは、権道にして正道にあらざるなり、外国市場に於て公債を募る場合の如きは、外国の資本家は其募集国の信用につきて甚だ信頼すること能はざるが故に、下受「シンジケート」ありて其間に介立するの要ありと雖も、内国市場に於ては国家の信用は最も強大ならざるを得ず、国家が内国債を募集するに方り、外国市場に於て募集すると同じ組織を択びたるは、恰も国家の信用はこれ等銀行家によりて維持せらるゝに当り、甚だ妙ならざるなり、思ふに政府が甚だ有利なる条件にて借換をなすに方り、能く蹉跌することなからしむる為に、寧ろ不必要なる組織に頼りたるなる可し、予輩はこの事を以て必しも政府の失敗とはいはず、只其の常道にあらざるを陳ぶるに止めんと欲す
      五
以上陳べたる所を要約するに、今回の国債借換の条件十分に備はらざるに拘らず、我国には未だ曾て見ざる有利なる条件にて借換をなし得たるは、政府が、銀行家等の努力と相待ちて、金融緩慢の機会を捕捉したるものにて、其間多少の小策行はれ、又多少非難すべきことなきにあらざるにもせよ、其成功たるは疑なきなり、其成功したる範囲に於て我国民の負担を減じ得たるものなるが故に、予輩は之を慶賀・祝福せんと欲するなり、其の成功したりといふ丈、其条件たる我国財政金融の状勢に比し、常正のものにあらざるが故に、引続きてこの条件にて借換をなすこと難かるべし、国債借換は国債整理の一骨子なり、故に之をして永く成功せんとせば、一面には従来標榜し来れる非募債主義を飽くまで厳守して、資本家に安心を与ふると同時に、税制を初め財政制度を改正し、以て財政の基礎を鞏固にし、国民経済の発展、資本の充実を図らざる可らざるなり        (四月一日記)



〔参考〕銀行通信録 第五一巻第三〇三号・第七九―八〇頁明治四四年一月 内国経済時事 公債借替の経過(DK500006k-0013)
第50巻 p.49-51 ページ画像

銀行通信録  第五一巻第三〇三号・第七九―八〇頁明治四四年一月
 ○内国経済時事
    ○公債借替の経過
公債借換の為め、昨年二月並に三月の両度に募集せる第一回及第二回四分利内国債の締切結果、左の如し
 - 第50巻 p.50 -ページ画像 

         第一回           第二回
                 円             円
 募集額   一〇〇、〇〇〇、〇〇〇   一〇〇、〇〇〇、〇〇〇
 公債代用   六八、六八三、一〇〇    九三、三五七、五五〇
 現金応募   三一、三一六、〇〇〇     六、六四一、九五〇
 手取額    九五、〇〇七、六八三    九五、〇〇二、一三八

又昨年五月、大蔵省令第二十二号を以て公債償還を受くる者の便宜を計り、現金の代りに四分利公債の交附を望む者に対し、百円に付九十五円の割合を以て四分利公債を交附したる結果、九月迄の交附額は七千四百三十六万三千五百五十円に達したり、尚ほ五月中巴里及倫敦に於て募集せる四分利外債の実収、左の如し
      巴里発行
 発行額                  四億五千万法
 実収額(邦貨換算) 一億五千九百三十四万七千二百五十円
      倫敦発行
 発行額                    千百万磅
 裏書公債代用          四百七十九万八千二百磅
 現金払込             六百二十万一千八百磅
 実収額(邦貨換算)       九千七百四十七万五千円
右内外債募集金の外、四十三年度一般会計繰入金及び四十二年度繰越金を加へ、合計六億二万四千九百三十三円を財源として、五億二千三百一万五千七百六十円の国債を償還したるが、該財源の内訳を示せば左の如し
                           円
 公債募集金           五一七、四七七、五三八
 一般会計繰入金          六〇、八〇〇、〇〇〇
 四十二年度繰越金         二一、七四七、三九五
  合計             六〇〇、〇二四、九三三
以上の財源を以て償還されたる国債は、現金を以て償還されたるもの二億五千九十六万六千七百六十円、並に払込金に代用されたるもの及四分利公債に乗換へたるもの二億七千二百四万九千円なるが、其各種公債別の金額を示せば左の如し
      現金償還額
                           円
 海軍公債              四、七八七、〇〇〇
 整理公債             八〇、四二七、六五〇
 軍事公債             五八、二三三、〇〇〇
 五分利公債            六九、四〇九、一五〇
 第二回国庫債券          三一、六一七、五二五
 煙草専売国庫債券          六、四〇〇、三五〇
 台湾事業公債               九二、〇八五
  計              二五〇、九六六、七六〇
      払込代用及乗換額
                           円
 海軍公債              三、五〇九、七〇〇
 整理公債             八二、一二四、四〇〇
 軍事公債             五五、一六五、二五〇
 五分利              六八、〇九一、四〇〇
 - 第50巻 p.51 -ページ画像 
 甲号五分利             三、二九六、六〇〇
 乙号五分利             一、五八五、九〇〇
 特別五分利            二〇、四七二、九〇〇
 第一回国庫債券               八、〇二五
 第二回同上            二四、七四一、七二五
 第三回同上            一二、〇一一、二五〇
 第四回同上                   一〇〇
 煙草専売国庫債券          一、〇四一、一〇〇
 台湾事業公債                  六五〇
  計              二七二、〇四九、〇〇〇



〔参考〕渋沢栄一 日記 明治四四年(DK500006k-0014)
第50巻 p.51 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治四四年         (渋沢子爵家所蔵)
三月十五日 晴 寒
○上略 二時日本銀行ニ抵リ、高橋是清氏ニ面会シテ、国債償還ノ方法ヲ協議ス○下略
  ○中略。
三月三十一日 曇 軽寒
○上略 日本銀行ニ抵リ○中略高橋是清氏ト共ニ桂大蔵大臣ヲ其邸ニ訪ヘ、公債ニ関スル請願ヲ為ス○下略



〔参考〕東京経済雑誌 第六四巻第一六一二号・第三三頁明治四四年九月一六日 銀行家の蔵相招待(DK500006k-0015)
第50巻 p.51 ページ画像

東京経済雑誌  第六四巻第一六一二号・第三三頁明治四四年九月一六日
    ○銀行家の蔵相招待
市内主なる銀行家諸氏は、今回大蔵大臣に就任したる山本達雄氏を、十二日午後六時より花屋敷の常盤屋に招待し、新任祝賀の宴を催せり出席者は正賓山本蔵相を始め、主人側渋沢男・佐々木勇之助・早川千吉郎・池田成彬・豊川良平・三村君平・串田万蔵・池田謙三・松方巌成瀬正恭の諸氏にして、主人側にて、是れ迄台閣に列したる人々にして官吏以外の出身者は未曾有たるに拘らず、今回山本氏の実業界より一躍して、蔵相の印綬を帯たるの光栄を頌し、且つは将来を規祝したりしかば、同氏も深く其懇情を謝して歓語尽きず、一同胸襟を開きて感興沸くが如かりしが、談全く時事に渉らず午後十時散会せり



〔参考〕渋沢栄一 日記 明治四五年(DK500006k-0016)
第50巻 p.51-52 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治四五年         (渋沢子爵家所蔵)
三月九日 晴 寒
○上略 再ヒ事務所ニ抵リ書類ヲ検閲ス○中略山本蔵相来リ公債償還ノ方法ヲ内話ス○下略
  ○中略。
三月十二日 曇 寒
○上略 四時銀行集会所ニ抵リ、手形交換所聯合会ニ出席シ、京坂銀行シンヂケート諸氏ト要務ヲ協議ス○下略
  ○中略。
五月二日 曇 暖
午前七時半起床、入浴シテ朝飧ス、後、宇野武氏ノ来訪ニ接シ、公債政策ニ関シテ、大阪ニ於ル銀行大会ノ景況、及之レニ付テノ意見ヲ演
 - 第50巻 p.52 -ページ画像 
説ス○下略



〔参考〕渋沢栄一 日記 大正二年(DK500006k-0017)
第50巻 p.52 ページ画像

渋沢栄一 日記  大正二年          (渋沢子爵家所蔵)
二月二十二日 小雨 寒
○上略 東京シンチケート千早正次郎来話ス○下略