デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.16

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

2部 実業・経済

1章 金融
1節 銀行
3款 特殊銀行 6. 株式会社日仏銀行
■綱文

第50巻 p.319-356(DK500063k) ページ画像

大正元年8月13日(1912年)


 - 第50巻 p.320 -ページ画像 

是ヨリ先栄一、日仏銀行ノ設立ニ関与スル所アリシガ、是日当行ノ相談役トナル。爾後屡々相談会ニ出席ス。


■資料

渋沢栄一 日記 明治四五年(DK500063k-0001)
第50巻 p.320 ページ画像

渋沢栄一日記  明治四五年          (渋沢子爵家所蔵)
二月十一日 晴 寒
○上略 三時半内田山井上侯ヲ訪フ、高橋・水町・添田諸氏ト共ニ日仏銀行設立ニ関シ、種々ノ談話アリ○下略
  ○中略。
四月十二日 晴 軽寒
○上略 十二時第一銀行ニ抵リテ午飧シ、食後直ニ大蔵省ニ抵リ、勝田主計・添田寿一二氏ト共ニ日仏銀行ノ事ヲ談ス、二時第一銀行ニ抵リテ重役会ヲ開キ、要件ヲ議決ス、四時三菱会社ニ抵リ、岩崎・豊川二氏ニ面会シテ、日仏銀行ノ事ヲ談ス
○下略
  ○中略。
四月三十日 晴 暖
○上略 午前十時三井集会所ニ抵リ、井上侯及大蔵省勝田氏、外務省倉知氏、其他日本銀行・正金銀行・興業銀行、三井・三菱両銀行員等ト日仏銀行創立ノ事ヲ議ス、種々ノ協議アリ共ニ午飧ヲ食ス、午後三時ニ散会ス
○下略
  ○中略。
五月二十七日 晴 暖
○上略 外務省ニ抵リ、倉知次官ト日仏銀行ノ事ヲ談ス○下略
  ○中略。
六月二十三日 晴 暑
○上略 十時山本大蔵大臣ヲ永田町官邸ニ訪ヒ、目下ノ財政経済ニ関シ其意見ヲ縷述セラル、且日仏銀行ノ事○中略 ニ付テモ充分ニ其考案ヲ示サル○下略


中外商業新報 第九三四一号 明治四五年五月二日 日仏銀行協議(DK500063k-0002)
第50巻 p.320 ページ画像

中外商業新報  第九三四一号 明治四五年五月二日
    日仏銀行協議
日仏銀行設立に付ては既に両国政府の認可もあり、添田興銀総裁は来る五日巴里に着し、直に之が取極めを調印し、創立総会を開催する手続を取る筈なるが、尚今後のことに就き協議を要する点もあるを以て卅日井上老侯を始めとし、勝田理財局長・倉知政務局長及び日銀・正銀・興銀・三井・三菱・第一の各当事者、三井集会所に会合種々打合せを為す所ありし由にて、同日の会合にて更に諸般のこと大に進捗したるやに聞く


中外商業新報 第九三四六号 明治四五年五月七日 日仏銀行商議開始(DK500063k-0003)
第50巻 p.320-321 ページ画像

中外商業新報  第九三四六号 明治四五年五月七日
    日仏銀行商議開始
日仏銀行設立に関する要務を帯び、仏国に急行したる添田興銀総裁は
 - 第50巻 p.321 -ページ画像 
予記の旅程を経、五日無事巴里に到着したる旨電報ありたり、因に同総裁は直に仏国側銀行当事者等と会見、各般の商議に取掛りし由にて之に凡そ一週間を要すべき見込なれば、日仏銀行創立総会を開き、之が発表を見るは来る十二・三日頃ならんかと


中外商業新報 第九三五一号 明治四五年五月一二日 日仏銀行進行(DK500063k-0004)
第50巻 p.321 ページ画像

中外商業新報  第九三五一号 明治四五年五月一二日
    日仏銀行進行
添田興銀総裁の渡仏後、日仏銀行設立交渉は大体円満なる進行を見たるも、仏国側の印度支那銀行は、従来より支那印度地方の金融機関となり居れば、更に日仏銀行が支那方面に手を延ばすときは、同行と重複の嫌ひあれば、日仏銀行の営業区域は支那を除かんとの希望あり、日本側に於ては直接に支那方面に投資するの必要なきも、日本を経由し間接に清国に放資するは差支なからんとの希望あり、仏国外務省及び大蔵省の意見を徴する必要もありたるため、交渉は多少遷延したるが、会見の上懇談を遂げたるに、我国の真意能く了解され、我が希望の如くに円満なる解決を告げたる旨、十一日財務官より其筋に電報ありたる由なれば、日仏銀行設立交渉は今後着々進捗し、近々株主総会の招集、登記の申請其他設立行為に着手することゝなるべく、其成立を見るは遠からざるべしと


中外商業新報 第九三六三号 明治四五年五月二四日 日仏銀行進捗(DK500063k-0005)
第50巻 p.321 ページ画像

中外商業新報  第九三六三号 明治四五年五月二四日
    日仏銀行進捗
日仏銀行交渉は、印度支那銀行の営業範囲に関する事項の為め、一時多少行悩みの形勢を呈したるも、其後日仏両当事者の意志疎通に依り交渉は円満なる進行を遂げんとする矢先、倫敦に於て清国大借款に対する六国資本団の会合あり、仏国側銀行家中の有力者之に列席したるが為め、交渉一時中止せられたるが、其後六国資本団代表者の会合は日露両国と四国の意見一致せざるに依り、単純なる経済問題より転じて外交問題に入り、六国資本団代表者は該問題の解決せらるゝ迄は、会議を催すの必要なきに至りしかば、仏国代表者は帰国することゝなり、為めに日仏銀行の交渉は今や大に進行したる由なるが、何様交渉内容の一部が大借款に関係し居ることとて、愈其設立を見るには尚多少の時日を要すべしと


中外商業新報 第九三七二号 明治四五年六月二日 日仏銀行の其後(DK500063k-0006)
第50巻 p.321 ページ画像

中外商業新報  第九三七二号 明治四五年六月二日
    日仏銀行の其後
借款問題の為め、日仏銀行交渉は一時中止の状態となりしも、該問題の行悩後、日仏銀行関係銀行家の帰仏と共に交渉更に開始せられ、彼我共に意見の交換し居る由なるが、近日の中、添田総裁より具体的の報告に接する筈なりと


中外商業新報 第九三八八号 明治四五年六月一八日 日仏銀行愈設立(DK500063k-0007)
第50巻 p.321-322 ページ画像

中外商業新報 第九三八八号 明治四五年六月一八日
日仏銀行愈設立
日仏銀行の交渉協議は、其後総て順調に進捗し、根本の問題は最早確
 - 第50巻 p.322 -ページ画像 
定さるゝに至り、近く本月下旬を以てソシヱテ・ゼネラル銀行(仏国側)・日本興業銀行(日本側)両者に依て創立会を開き、同時に株式の割当も決定し、来月初旬最終の創立総会を開き正式に銀行の成立を見るに至るべし、されば之が発表を見るは遅くも来月十日前後ならん


中外商業新報 第九三八九号 明治四五年六月一九日 日仏銀行創立順序 設立手続着々進行(DK500063k-0008)
第50巻 p.322 ページ画像

中外商業新報  第九三八九号 明治四五年六月一九日
    日仏銀行創立順序
      設立手続着々進行
日仏銀行の設立に関する諸般の障害は悉く除却せられ、今回愈々創立手続に着手することゝなりしは既報の如くなるが、ソシヱテー・ヂヱネラル及びバンク・ド・パリー両行との間に於ける定款の協定は既に終了したれば、来る廿四日第一回創立総会を開きて、株式の募集即ち参加銀行を決定する由、参加銀行は仏国側にてはソシヱテー・ゼネラル、バンク・ド・パリー、印度支那銀行等七行にて、最初報道の通り也、斯くて株式の割当確定と共に直ちに制規の払込みを為さしめ、七月三日更に第二回創立総会を開きて定款の承認、役員の選挙を行ひ、愈々銀行を成立せしむる筈なりと


中外商業新報 第九三九一号 明治四五年六月二一日 日仏銀行創立協議 創立準備着々進行(DK500063k-0009)
第50巻 p.322 ページ画像

中外商業新報  第九三九一号 明治四五年六月二一日
    日仏銀行創立協議
      創立準備着々進行
日仏銀行交渉及び創立手続着々進捗し、巴里に於ては十八日も十九日も協議開かれし由にて、近々創立総会を開かるゝ筈に付き、我国の同行関係者等も二・三日中に会合を催し、各株式の配当及其他に関し打合せを為す由


中外商業新報 第九三九二号 明治四五年六月二二日 日仏銀行の協議 関係銀行家の会合(DK500063k-0010)
第50巻 p.322 ページ画像

中外商業新報  第九三九二号 明治四五年六月二二日
    日仏銀行の協議
      関係銀行家の会合
日仏銀行創立準備は、巴里に於て着々進捗し、愈々二十四日創立総会開会さるゝ運びとなりしより、廿一日午後一時日仏銀行に関係ある各銀行家は興業銀行に会合し、是迄の交渉経過、株式の配当及今後の方針等に付いて協議せり、大蔵省より橋本次官・勝田理財局長・森銀行課長、日本銀行より高橋・水町の正副総裁列席し、関係銀行よりは渋沢男(第一)・三島子(正金)・早川千吉郎・池田成彬(三井)・三村君平(三菱)諸氏の列席あり、勝田理財局長より交渉経過を報告し、種々打合す所ありたり、而して二十四日の創立総会は興銀とソシエテー・ゼネラル及巴里和蘭銀行とにて開会し、該総会の終了後正式に関係銀行に株式を配当し、更に七月三日総会を開催し銀行を成立せしむることゝなれりと、尚重役は仏国より七名、日本より五名選出し、総裁はソシエテー・ゼネラルの重役中より選任し、副総裁には添田興銀総裁選任せらるゝ筈なりと、又債券発行、印度支那銀行との営業範囲等に付ても、最初の計劃と大差なく至極円満に解決せし由

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中外商業新報 第九三九三号 明治四五年六月二三日 日仏銀行要領 組織及営業の範囲(DK500063k-0011)
第50巻 p.323-324 ページ画像

中外商業新報  第九三九三号 明治四五年六月二三日
    日仏銀行要領
      組織及営業の範囲
日仏銀行定款は十八日添田興銀総裁とソシヱテー・ゼネラル及巴里和蘭両行代表者の会見協商に依り、一と先づ決定せられたるを以て、添田総裁より該定款に対する我国大蔵省及関係銀行の意見を徴し来り、該関係者は二十一日興銀に会合し定款を審議したるは既報の如くなるが、各関係者共格別の異議なく、直に承諾の通知を発したる由、又ソシヱテー・ゼネラルに於ても同日関係者の会合を催せる筈にて、是亦格別の異議なかりし、斯くて定款は愈々作成せられ、来る二十四日迄に第一回払込(株金の四分の一)を為し、同日総会を開く筈、定款の要項及今後の創立手続を聞くに如左
△今後の創立手続 二十四日の総会に於ては、添田総裁及ソシヱテーゼネラル及巴里和蘭両行代表者会合の上、定款及持株を決定し、定款は公証人の公簿に記入せられて法律上確定し、株式は仏蘭西側にて六百万円、日本側にて四百万円引受け、之を各銀行に割当つる筈なり、而して七月三日更に第二回創立総会を開きて役員の選挙を終了し、之を監督官庁に届出で、爰に創立行為を完成するものなり
△営業の範囲 は預金、貸付、手形の割引、動産・不動産の担保貸付債券の発行、債券類及株式の引受等を包含し、其範囲頗る広汎にして営業地域は東洋全般に及び、印度支那銀行との間に於ても営業上の範囲を設くることなし、尤も六国借款の範囲に立ち入り之と競争するは厳密に之を禁止し、若し競争の憂ある場合は両者の交譲に依り、互に妥協することゝなせり
△重役員数及選任 重役は十二名乃至十五名とし巴里本店及び東京支店に相当の員数を置く、又総裁はソシヱテー・ゼネラルの重役中より選任し副総裁は興銀の正副総裁中より選任す、而して重役の員数を幾何とするやは七月三日の総会にて定めらるゝことゝなり居るも、今回は多分十二名と定められ、巴里の本店に七名、東京支店に五名在留せしむることゝなるべし、又巴里在留の重役には日本人を一名加はらしむると共に、東京在留の重役中にも仏人を一名加はらしむることゝなるべし、尚総裁・副総裁は第二回の創立総会にて決定せらるゝ筈なり
△日仏の加入銀行 加入銀行の選定は日本にては興銀、仏国にてはソシヱテー・ゼネラル及巴里和蘭両銀行の定むる所なるが、仏国側にては印度支那銀行を加入せしむるは明かなる模様なるも、其他は不明の由にて従つて加入銀行の果して七行なるや否やは固より判明せず、又日本側に於ては興銀・正金・第一・三井・三菱の五行加入するに決定せるも、正金銀行に付ては現行条例が株主たる場合を限定せる結果法律上如何やとの疑あり、目下法律家に嘱託して調査中なり、蓋し正金は是迄日仏銀行設立の一中心として大に尽瘁せることなれば、仮令法律の株主たるを禁ずるも好意的に日仏銀行の営業に種々の便宜を与ふる筈なりと、尚加入銀行の株式引受額は興銀二百万円、他の四行は五十万宛均分に引受け、若し正金の株主たるを得ざる暁は、同行割当額たる五十万円は興銀にて引受くる由なり
 - 第50巻 p.324 -ページ画像 
△債券の発行 日仏銀行は普通債券及び特別債券を発行するの権利を有し、普通債券の発行は払込資本金の三倍を最高限度とし、特別債券は債券発行額の十分の一に相当の担保を提供するときは、無限に之を発行することを得、尤も特別債券は地方公共団体の使用に限局され居るを以て、目下の資本金にては充分に其目的を達し得ざるの憂なきにあらざるも、他方に於てプロモーターとして債券発行の仲介を為すに因り、其金融機関として偉大の勢力を有するや明かなり
△営業開始期 は未定なるも、第二回総会の終了後は単に届出を以て会社を成立せしむることなれば、営業の開始は多分七月上旬なるべし


中外商業新報 第九三九六号 明治四五年六月二六日 日仏銀行総会(DK500063k-0012)
第50巻 p.324 ページ画像

中外商業新報  第九三九六号 明治四五年六月二六日
    日仏銀行総会
日仏銀行第一回創立総会は、予定の如く二十四日巴里にて開会、定款の確定、株主の割当等、会社創立に関する事項を原案通り可決し、尚重役の選任、営業方針の協定、其他細目に渉る事項は総て之を来月三日の第二回創立総会にて決することゝなりし旨、其筋に電報ありし由


中外商業新報 第九三九七号 明治四五年六月二七日 日仏銀行と正金 正金割当株の処分(DK500063k-0013)
第50巻 p.324 ページ画像

中外商業新報  第九三九七号 明治四五年六月二七日
    日仏銀行と正金
      正金割当株の処分
日仏銀行の日本側所有に属すべき株式四百万円中二百万円は興銀にて引受け、他の二百万は正金・第一・三井・三菱の四行に均分にて割当つる筈なりしも、正金は現行条例上株主たるを得ざるの疑あり、過般来法律家に嘱託して調査中なりしが、各法律家の意見は何れも正金の株主たるを得ずと云ふに一致せるものゝ如く、従つて正金割当株の一部は三島同行頭取個人として引受け、他は全部興銀にて引受くるに決定せりと


中外商業新報 第九四〇四号 明治四五年七月四日 日仏銀行総会 手続終了と重役選定(DK500063k-0014)
第50巻 p.324 ページ画像

中外商業新報  第九四〇四号 明治四五年七月四日
    日仏銀行総会
      手続終了と重役選定
日仏銀行最終の創立総会は、三日巴里に於て開会せられしが、其結果は未だ電報なかりしも、諸事同会に於て決定、此に同行の完全なる成立を見たる筈也、而して日本人重役としては添田寿一氏副総裁となり巽孝之丞氏(正金倫敦支店長)取締役に選定されし筈にて、他の重役は後日更に選挙あるべしと


中外商業新報 第九四〇五号 明治四五年七月五日 日仏銀行成立 創立総会無事結了(DK500063k-0015)
第50巻 p.324-325 ページ画像

中外商業新報  第九四〇五号 明治四五年七月五日
    日仏銀行成立
      創立総会無事結了
日仏銀行設立に就ては、巴里に於て既に去月廿四日第一回創立総会を開き大体の事項は決定し、夫々其手続を採りしが、愈々三日更に第二回創立総会を開き最後の確定を為したり、之に付き同日添田興銀総裁より左の電報ありたり
 - 第50巻 p.325 -ページ画像 
 創立総会無事結了し、会社として完全なる成立を告げたり
而して他の事項に付ては別に入電なかりしが、諸事予定の如くに決定したるものと見ゆ、尚重役に付ては十二名中七名は仏国側、五名は日本側にして、仏国側は全部三日の総会に於て選定され、日本側は添田氏・巽氏(巽氏は正金銀行倫敦支店首席としての就任)選定され、他の三名は後日選定せらるゝ筈也、因に添田氏は近く巴里を出発し帰途に就くべし、多分来月初旬には帰京すべしと


銀行通信録 第五四巻第三二一号・第六〇―六一頁 大正元年七月 ○内国銀行要報 日仏銀行の成立(DK500063k-0016)
第50巻 p.325-326 ページ画像

銀行通信録  第五四巻第三二一号・第六〇―六一頁 大正元年七月
 ○内国銀行要報
    ○日仏銀行の成立
日仏銀行の設立に就ては、彼の六国借款問題との関係上交渉延引しつつありしが、愈々双方の協議熟し、六月二十四日巴里に於て第一回創立総会を開き、定款及持株を決定したる上、直ちに四分の一の払込を了り、次で七月三日を以て第二回創立総会を開き、無事成立を告げたり、同銀行内容として判明せるもの大略左の如し
日仏銀行の資本金は総額一千万円にして、内六百万円は仏国側資本家四百万円は日本側資本家に於て引受の予定なるが、唯々創立の際は便宜上仏国側の分は「ソシヱテー・ゼネラール」及巴里和蘭銀行両行にて引受け、又日本側の分は日本興業銀行にて引受け、追て之を加入銀行に配当することゝせり
日仏銀行の営業課目は、預金・貸附・手形割引等一般銀行業務を行ふの外、債券を発行し、又自から「プロモーター」となりて企業を為すことを得べし、而して債券の発行は普通払込資本金の三倍を越ゆること能はさるも、地方公共団体の為めに発行する特別債券は、発行総額十分の一の担保を提出するに於ては、無限に之を発行することを得るなり
日仏銀行の営業地域は広く東洋全般に及ぶと雖も、彼の六国借款に就ては、日仏銀行の出資者たるべき印度支那銀行が右借款団の一員たる関係上、日仏銀行は全然其範囲に立ち入らざることに決定し、此他の方面に就ては印度支那銀行と互譲の精神を以て、双方協議を遂ぐることゝなれり
日仏銀行の出資者は仏国側に在ては「ソシヱテイ・ゼネラール」、巴里和蘭銀行、印度支那銀行、「コント・デ・コント」、「リオネー・パリジアン」五行の加入すべきことは確定不動の事実なれども、「クレヂー・リオネー」、「クレヂー・フォンシェー」の二行は、未だ決定に至らざるものゝ如し、又日本側に在ては日本興業銀行に於て二百万円を引受け、正金・第一・三井・三菱四行に於て各五十万円宛を引受くる筈なるも、唯々正金銀行は条例及定款に於て債券保全の場合を除くの外、妄りに株式を所有すること能はざるの規定あるに依り、結局三島頭取其他個人の名義にて引受のこととなるべしと云ふ
日仏銀行の重役は仏国側七名、日本側五名とし、其の中総裁は「ソシヱテー・ゼネラール」重役アンリー・ゲルノー氏、副総裁は日本興業銀行総裁添田寿一氏、東京支店詰仏国側重役は巴里和蘭銀行重役グン
 - 第50巻 p.326 -ページ画像 
ツブルグ氏、巴里本店詰日本側重役は正金銀行倫敦支店詰巽孝之丞氏就任のことに決定し、他は追て之を選定する筈なり


銀行通信録 第五四巻第三二二号・第四四―四五頁 大正元年八月 ○内国銀行要報 日仏銀行成立後報(DK500063k-0017)
第50巻 p.326-327 ページ画像

銀行通信録  第五四巻第三二二号・第四四―四五頁 大正元年八月
 ○内国銀行要報
    ○日仏銀行成立後報
日仏銀行成立の状況に就ては前号(六〇頁)に記する所ありしが、七月三日日本興業銀行総裁添田寿一氏が一株主の質問に応じ談話したる所は、此間の消息を詳にするに足るものあるを以て、左に之を掲載す
 日仏銀行は今日俄に起りたる問題にあらずして、従来興業銀行は巴里のグンツブルグ男を其代理者とし、仏国金融界と連絡を保ちつゝありしが、仏国金融界との関係を一層密接ならしむる必要上、日仏銀行を設立するの議久しき以前に起り、種々交渉を累ねつゝありたり、四月に及び其の機漸く熟し、諸準備も整ひたるを以て不肖渡仏することゝなれり
 然るに六国借款問題等の為め、大に其設立に時日を要したりしも、六月二十四日に仏国法に所謂第一創立総会を開き、翌七月三日に第二創立総会を開き、仏国法律に依て完全なる設立を見るに至れり、本行の資本金は二千五百万法即ち邦貨約一千万円にして、内六百万円は仏国側の出資にかゝり、其余の四百万円を日本側の出資なりとす、然かも此四百万円は之を興銀のみにて保有せんよりは、三井・三菱・第一・正金の如き有力なる銀行の加入あること、将来業務発展上得策なるより、目下其交渉中なり、頭取はゲルノー氏なるが、氏は彼の国官界並に民間の双方に経験ありて、最適任者を以て目せらる、副頭取には不肖之に任ることゝなれり、而して重役は仏国側七名、日本側五名の内、八名は已に任命済なり、仏国に於ては最も適当なる営業所を取引所の近傍に選定し、支配人・副支配人其他の使用人も一先づ任命を了したれば、営業所工事竣成の上は、何時にても営業を開始するを得る次第にして、仏国側より云ふときは、本行は完全に成立を告げたるものにして、本邦に於ても亦目下営業開始の準備を急ぎつゝあり
 興業銀行とグ男との従来の関係は此銀行の成立と共に消滅し、今後は仏国に於ける興業銀行の事務は、一切日仏銀行に依て処理せらるる事となるべし、日仏銀行には其の株主として発起人たる「ソシヱテー・ゼネラール」、「バンク・ド・パリ」、添田寿一の外、最も有力なる仏・英・露の銀行を網羅せるを以て、将来業務の発展上多大の便宜あるを信ず
 営業地域の範囲に関し種々の世評ある由なるも、了解に苦む所にして、其の活動範囲は将来の実務に依りて決定するの外なかるべし
 債券発行高僅少に過ぎずやとの懸念もある由なれど、是亦憂ふるに足らず、仏国に於ては銀行としては「クレヂー・フォンシェー」の外多額の債券を発行するものなし、況や債券発行に依頼せずとも、銀行業を盛大に営み得ることは各位御熟知の通りなり
 要するに営業の将来は之を実務に徴すべきものにして、日本側出資
 - 第50巻 p.327 -ページ画像 
の四百万円中の大部分は、興業銀行の出資にかゝる事なれば、日仏銀行の繁栄の如何は、其株主たる興業銀行の利害に関すること重大なるを以て、株主諸君も能ふ限り此新設銀行の発展に助勢あらんことを希ふ、又日仏銀行本店側の考へにては、成るべく費用を省く等の為め、事務取扱を興業銀行に委任する積なり
 斯くの如くして生じたる日仏銀行は、日仏両国間の経済界の連鎖として重要なる一機関たるが故に、株主諸彦と共に誠心誠意其の発展を希はざるを得ず
 終りに臨み、日仏銀行設立に関しては、森財務官心得には特に非常に尽力せられ、其他大蔵省・外務省の当該官、日本銀行正副総裁、在仏の知友諸氏も不一方斡旋尽力せられ、其結果辛うじて成立するを見るに至れるが故、謹で玆に満腔の謝意を表し、併せて各位が日仏銀行の将来につき御高庇を賜はらんことを祈る
右談話の中、外国側株主は仏国七銀行のみの予定なりしに、其後他の銀行を始め英露両国の銀行よりも加入を申込み、其数三十余行に及べりと云ふ、又日本側株主の割当株は其後左の如く決定せり
 日本興業銀行          一万二千株
   (一株は五百フランにして邦貨約二百円)
 第一銀行            二千五百株
 三井銀行            二千五百株
 三菱銀行            二千五百株
 三島正金頭取             百株
 巽正金倫敦支店長           百株
 他の重役三名           各百株宛
  合計 二万株(千万法にして邦貨約四百万円)
又日本側重役は添田・巽両氏の外、井上辰九郎・斎藤恂・渡辺千冬の三氏就任することに決し、尚渋沢男・早川千吉郎・三村君平・三島子の四氏は、相談役に推挙することゝなれり


中外商業新報 第九四三三号 大正元年八月二日 日仏銀行協議 井上侯爵邸の会合(DK500063k-0018)
第50巻 p.327 ページ画像

中外商業新報  第九四三三号 大正元年八月二日
    日仏銀行協議
      井上侯爵邸の会合
日仏銀行設立に関する要務を帯び、仏京巴里に出張中なりし興業銀行総裁添田寿一氏は、今回創立事務を終へ帰朝したるを以て、一日午後二時より内田山井上侯爵邸に同銀行に関係ある諸氏、即ち勝田理財局長、高橋・水町日銀正副総裁、渋沢男(第一銀行)、早川千吉郎(三井銀行)、三村君平(三菱銀行)、三島頭取(正金銀行)、添田寿一・佃一予(興業銀行)参集し、老侯を中心とし先づ添田氏より創立上に関する諸般の報告を為し、次で諸種の協議を為す所ありし由


中外商業新報 第九四三五号 大正元年八月四日 日仏銀行成立談 添田興銀総裁演説(DK500063k-0019)
第50巻 p.327-329 ページ画像

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冊子版の『渋沢栄一伝記資料』をご参照ください。

中外商業新報 第九四三九号 大正元年八月八日 日仏銀行の協議 大臣銀行家の会合(DK500063k-0020)
第50巻 p.329 ページ画像

中外商業新報  第九四三九号 大正元年八月八日
    日仏銀行の協議
      大臣銀行家の会合
七日午前九時より内田山井上侯爵邸に、内田外務大臣・山本大蔵大臣を始め、勝田理財局長・高橋日銀総裁・添田興銀総裁・三島正金頭取・渋沢男(第一銀行)、早川千吉郎(三井銀行)、三村君平(三菱銀行)の諸氏参集し、老侯を中心とし日仏銀行最終の決定を為し、株式割当重役選定・営業開始に関する諸般の事、同行に対する今後の方針等に関し最も重要なる協議を行ひ、午餐の後再び前議を継続し午後三時散会せり、思ふに外相・蔵相其他の顔振れより察すれば、日仏銀行を中心とせる外交・財政の諸問題を始めとして、今後此銀行を如何に利用し、所謂日仏両国の経済連鎖を如何に結付け、其効果を如何に発揚せんか等の重要事項をも含みしものならんと推せらる


中外商業新報 第九四三九号 大正元年八月八日 日仏銀行重役内定 相談役四氏も決定(DK500063k-0021)
第50巻 p.329 ページ画像

中外商業新報  第九四三九号 大正元年八月八日
    日仏銀行重役内定
      相談役四氏も決定
日仏銀行の仏国側重役は既に選定され、日本側重役も副総裁には添田興銀総裁就任し、取締役には巽正金倫敦支店長就任し、尚三名の取締役を選定さる都合なりしが、三名中二名は興業銀行現理事より、一名は他より選任するに決し、其顔振も内定したり、而して興銀より出づる重役は井上辰九郎・斎藤恂の両氏にして、他より出づる一名は渡辺千冬氏(先月迄炭礦会社専務たりし)なりと伝へらる、尚定款には別段の定めなきも、日本側にては相談役を設くるに決し、渋沢男(第一銀行)、早川千吉郎(三井銀行)、三村君平(三菱銀行)、三島子(正金銀行)の四氏を之に推挙するに内定したりと


中外商業新報 第九四四三号 大正元年八月一二日 井上侯邸の会合 日仏銀行関係者を招く(DK500063k-0022)
第50巻 p.329-330 ページ画像

中外商業新報  第九四四三号 大正元年八月一二日
    井上侯邸の会合
      日仏銀行関係者を招く
日仏銀行の創立手続は順次好都合に進行し、既に株式の割当申込も決定し、重役も全部内定し、今や幕を開いて業務を開始する計りの運びとなりしを以て、井上老侯には十一日午前十時内田山の自邸に、当初より此銀行に関係の倉知外務次官・勝田大蔵省理財局長・高橋日銀総裁・添田興銀総裁・三島正金頭取・渋沢男・早川千吉郎・三村君平の諸氏を始め、今回重役に内定したる渡辺千冬・井上辰九郎・斎藤恂の三氏(巽氏は欠席)を招き、老侯自ら中心となりていとも懇篤なる集合を催ふされたり、先づ新重役の披露あり、続て老侯には日仏銀行創
 - 第50巻 p.330 -ページ画像 
立の由来より今後のことに付て迄、一同の服膺すべき懇ろなる訓諭的談話を試みられ、午餐の後互に日仏銀行の成立を祝福し、前途の発展に付き談話の交換し、一同老侯の厚意を深く謝し、午後二時順次退散したりしとぞ


竜門雑誌 第二九一号・第七六―七七頁 大正元年八月 ○日仏銀行の成立(DK500063k-0023)
第50巻 p.330 ページ画像

竜門雑誌  第二九一号・第七六―七七頁 大正元年八月
○日仏銀行の成立 日仏銀行は既に仏国に於ては確実に成立を告げたれども、日本側に於ける東京支店の設立は未だ形式に於て其運びに至らず、右関係者は寄々協議中なりしが、八月七日午前九時より、青淵先生・高橋男・添田寿一・早川千吉郎・三村君平諸氏は井上侯邸に参集し、山本蔵相・内田外相及勝田理財局長と会見し、先づ添田寿一氏は同銀行設立の経過及定款の解釈等に付きて詳細なる説明を為し、更に営業方針其他に就て互に意見を交換したる結果、両大臣とも之れが設立並に営業開始を公認することゝ為り、玆に於て各関係銀行も初めて正式に資金を醵出することを決したり、即ち日本側引受株数二万株(一株二百円、総額金四百万円)の割宛額左の如し
                          株
 日本興業銀行              一二、〇〇〇
 三井銀行                 二、五〇〇
 三菱銀行                 二、五〇〇
 第一銀行                 二、五〇〇
 三島弥太郎                  一〇〇
 巽孝之丞                   一〇〇
 其他取締役三名                三〇〇
斯くて日本側の理事及び相談役は予て内定せし通り、十三日に至り左の如く確定したり
 副総裁兼東京支店長      (興銀総裁)添田寿一
 理事             (興銀理事)斎藤恂
 同                (同上)井上辰九郎
 同           (正金倫敦支店長)巽孝之丞
 同                    渡辺千冬
 相談役            (正金頭取)三島弥太郎
 同            (第一銀行頭取)青淵先生
 同            (三井銀行専務)早川千吉郎
 同            (三菱銀行部長)三村君平
尚ほ総裁ゲルノー氏の調印を要する支店設置の登記手続書は、八月末迄に仏国より本邦に到着すべきを以て、直に登記手続を為し、一方に銀行条例の定むる所に由り、主務大臣より支店営業開始の認可を得て初めて一切の手続を終了する次第なりといふ


銀行通信録 第五四巻第三二三号・第四七―四八頁 大正元年九月 ○内国銀行要報 日仏銀行の重役及株主(DK500063k-0024)
第50巻 p.330-332 ページ画像

銀行通信録  第五四巻第三二三号・第四七―四八頁 大正元年九月
 ○内国銀行要報
    ○日仏銀行の重役及株主
過般成立を告げたる日仏銀行の各重役は愈々左の如く決定せり
 総裁  ゲルノー氏       副総裁 添田寿一氏
 - 第50巻 p.331 -ページ画像 
 取締役 グンツブルグ氏     取締役 ブスケー氏
 同   フヰナリー氏      同   ラバシー氏
 同   フルワー氏       同   巽孝之丞氏
 同   井上辰九郎氏      同   斎藤恂氏
尚、渋沢男・早川千吉郎・三村君平・三島子の四氏は、日本側相談役に推挙せられたること既報の如し
又日本側株式は既報の如く

  株主           持株         金額
                   株             円
 日本興業銀行       一二、〇〇〇     二、四〇〇、〇〇〇
 第一銀行          二、五〇〇       五〇〇、〇〇〇
 三井銀行          二、五〇〇       五〇〇、〇〇〇
 三菱銀行部         二五、〇〇       五〇〇、〇〇〇
 三島正金銀行頭取        一〇〇        二〇、〇〇〇
 巽正金銀行倫敦支店長      一〇〇        二〇、〇〇〇
 井上日本興業銀行理事      一〇〇        二〇、〇〇〇
 斎藤同             一〇〇        二〇、〇〇〇
 渡辺千冬氏           一〇〇        二〇、〇〇〇

にして外国側株主は左の如し
 
 株主           組織又は職業         資本
                                      法
 巴里和蘭銀行       仏蘭西株式会社       一〇〇、〇〇〇、〇〇〇
 ソシエテ・ゼネラル    同             五〇〇、〇〇〇、〇〇〇
 仏蘭西預金銀行      同ソシエテ、ゼネラルの子銀行 二五、〇〇〇、〇〇〇
 瑞西預金銀行       瑞西会社、同         二五、〇〇〇、〇〇〇
 アルサス銀行       独逸会社、同         二〇、〇〇〇、〇〇〇
 有価証券銀行       仏蘭西株式会社、同      二五、〇〇〇、〇〇〇
 巴里割引銀行       仏蘭西株式会社       二〇〇、〇〇〇、〇〇〇
 仏蘭西商工銀行      同              六〇、〇〇〇、〇〇〇
 巴里同盟銀行       同              六〇、〇〇〇、〇〇〇
 仏蘭西動産銀行      同              六〇、〇〇〇、〇〇〇
 印度支那銀行       同              三六、〇〇〇、〇〇〇
 仏蘭西鉱業銀行      同              二五、〇〇〇、〇〇〇
 商工銀行         同               八、五〇〇、〇〇〇
 アルジエリアン銀行    同               八、〇〇〇、〇〇〇
                                      留
 露亜銀行         露西亜株式会社        四五、〇〇〇、〇〇〇
 聖彼斯堡私立商業銀行   同              三〇、〇〇〇、〇〇〇
 ロツテルダミツシエ・バンクフエライニグング            フローリン
              和蘭株式会社         二〇、〇〇〇、〇〇〇
                                      法
 アンヴエルス銀行     白耳義株式会社        二〇、〇〇〇、〇〇〇
                                      磅
 セントラル・マイニング  英国株式会社          五、一〇〇、〇〇〇
 バース銀行        同              一二、五〇〇、〇〇〇
 サー・アーネスト・
        カッセル氏 倫敦
 ジエー・ペイテル氏    アルジエリアン銀行頭取
 ヱム・ヴエルヌイユ氏   巴里株式取引所理事長
 アルベルト・カーン氏   巴里
 ダブリユー・コツホ氏   倫敦パンミユア・ゴルドン商会重役
 - 第50巻 p.332 -ページ画像 
 アツヂス氏        香港上海銀行重役
 エドモン・テリー氏    巴里操觚者
 エヌ・ジー及エス・パルダツク商会
              巴里銀行家
 ラザール兄弟商会     同
 イルスレル商会      同
 エル・ヒルシユ      倫敦銀行家
 スーフリーズ商会     巴里
 デマツシー氏       巴里デマツシー及スエリエール商会内
                                      法
              会社資本合計      一、八五六、〇〇〇、〇〇〇
              私人銀行資本(仮定)合計  六〇〇、〇〇〇、〇〇〇
               計          二、四五六、〇〇〇、〇〇〇

即ち外国側株主は三十三の多きに上り、銀行其大部分を占め、内株式組織に係る銀行並に会社の数二十、其資本金総額十八億五千六百万法個人銀行十三、其見積資本金六億法、合計二十四億五千六百万法に達し、此内個人銀行の分は余程内輪に見積られたるが故に、其実質は此総計額よりも遥に大なるべき見込なり、今試みに此資本金総額の各株主平均額を見るに、各株主の資力実に七千四百万法に当り、新会社の株式引受人の平均資力が斯の如く巨大なるは、海外に於ても極めて稀有のことなりと云ふ、但し仏国に於て有力なる「クレヂ・リオネー」銀行のみは日仏銀行の株主に加はらず、近頃に至り露国外務省の手を経て露仏銀行設立の運動を開始したるやの風説あるも、此は単に風説に過ぎざるべしとなり


中外商業新報 第九四四三号 大正元年八月一二日 日仏銀行成立 日本側当局者に望む(DK500063k-0025)
第50巻 p.332-333 ページ画像

中外商業新報  第九四四三号 大正元年八月一二日
    日仏銀行成立
      日本側当局者に望む
過日来進捗中なりし日仏銀行は、今回略ぼ完成を告げて、遠からず事業を開始する迄の運となれり。元来豊富にして低利なる外国の資金を輸入し、内外金融市場の聯絡を取りて、我経済界の発達に資するが為めには、夙に日本興業銀行の在るあり。同行は倫敦を主として巴里其他の市場に有する大なる信用に依り、従来既に屡々外資を輸入して内地の財界に貢献する所ありたるが、日仏銀行の成立は即ち此点に於て更に一進歩を遂げたるものとして、余輩の衷心より歓迎せんとする所なり。
日仏銀行成立の由来に就ては、是迄も屡々報道する所ありたる通り、外国側は巴里に於ける第一流の銀行たるソシエテ・ゼネラル及びバンク・ド・パリを始め、仏・英其他の有力銀行が多数に参加せる上、日側は日本興業銀行・正金銀行・三井・三菱・第一等の我金融界に牛耳を執れる各銀行が、孰れも株式を引受くる事となれるなり。而して資本金二千五百万法、即ち約一千万円の中、六百万円は外国側、四百万円は日本側の出資に依り、重役は仏国側七名、日本側五名にし、総裁ゲルノー氏は、自から巴里の本店を主宰し、副総裁添田寿一氏は東京支店を管理することゝなれるなり。左れば日仏銀行の成立に依りて、日本の経済界は巴里を主として英仏の経済界と一層聯絡を緊密にし、
 - 第50巻 p.333 -ページ画像 
内外市場の疏通は為めに著しく円滑を増す事となれるなり。其結果が日本の経済界に取りて至大の利益を齎すは勿論、仏蘭西側の享くる利益も亦、尠少ならざる可し。言ふ迄も無く仏蘭西は世界の資本国にして、其無限大に豊富なる資本は、露・独を始め常に世界の各方面に放下せられ居るなり。然るに日本は如何と云ふに、事業は兎も角、資本の点に於ては残念ながら甚だ貧弱なりと謂はざる可らず。故に今仏国の資本を輸入することは、日本の経済上の此欠点を補足し得て、資本欠乏の為めに控制され居たる企業を、自由に振興せしめ得る事となる一方には、余りある仏国の資本も、亦好個の投資口を得て、充分に之を利用することを得る訳なり。左れば内外経済界の採長補短の妙用は日仏銀行の成立に由りて始めて遺憾なく発揮さるゝに至らん。特に余輩の喜ぶ可き事は支那に対する関係なり。元来支那は我国と同文同種の誼あるのみならず、経済上・政治上共に最も密接なる関係を有す。左れば支那の秩序を恢復して、其開進発展を扶くることは是れ実に我邦の義務にして、亦自然の天職とも謂ふ可きなり。然らば如何にして支那の開進発展を扶く可き乎と云ふに、俗諺に謂ふ先立つものは金にて、今日の支那を開進発展せしむるに最も急要なるは資金なり。然るに我邦は前にも述ぶる如く、資本の点に於ては、内国の経済界を運転するにだも不足を感ずる程に欠乏し居る次第なれば、資本の提供に由りて支那の開進発展を扶けんとする誠意は、却々以て充分に実現し得ざるなり。是れ余輩の常に遺憾としたる所なるが、今回日仏銀行の成立に依りて、豊富なる資本を融通し得る事となれるに就ては、此の遺憾も自然に払拭さるゝ訳なり。而して他日若し機会だにあらば、支那に取りても自ら利益する所少なからざる可し。支那の企業上の調査研究に就ては既に東亜興業会社の在るあり。故に同社が其本領を発揮して、此方面の調査研究に一段の努力を試み、其結果として若し資金を要するものあらば、思ふに日仏銀行は決して此の急需を回避せざる可きなり。斯く見来れば日仏銀行の成立は、日仏両国の経済上に至大の利益を寄与すると共に、自然の結果亦或は支那の開進発展にも貢献する所ある可きなり。
唯だ此場合余輩が日仏銀行の日本側当局者に対して希望に堪へざるは切に其責任の重大なる所以を念ふて、日仏銀行の効果を挙ぐるに糸毫の遺憾だも無きを期すること是れなり。這は今更言ふ迄も無きことなれど、若しも当局者が経営其道を誤り、万が一にも損失を見るが如きことあらば、开は啻に当局者の不名誉たるに止まらず、又実に日本経済界全体の不名誉たるを免れず。不名誉は仮りに忍ぶ可しとするも、之が為めに外国資本家の信用を失墜して、今後に於ける外国市場との握手、従つて内外資本の共通に関する企画を困難ならしむるに至らば开は実に取り返しの附かぬ一大損失たる可ければなり。賢明なる当局者に対して聊か蛇足の観はあれど、万一の場合を慮りて婆心を寄すること此の如し。


中外商業新報 第九四四七号 大正元年八月一六日 日仏銀行相談会(DK500063k-0026)
第50巻 p.333-334 ページ画像

中外商業新報  第九四四七号 大正元年八月一六日
    日仏銀行相談会
 - 第50巻 p.334 -ページ画像 
日仏銀行は総ての機関整ひ、着々営業開始の運びとなりしを以て、先づ第一回の相談役会を、十五日午前九時より日本興業銀行楼上に開き相談役渋沢男・三島子・早川千吉郎・三村君平の四氏、並に同行重役たる添田副総裁、巽《(マヽ)》・井上・斎藤・渡辺の各取締役、及び大蔵省より勝田理財局長列席し、種々協議を重ね、今後毎週一回(水曜日)相談役会を開くことを決し、尚今後の営業上に付き打合せを為す所ありて散会せり


(株式会社日仏銀行)相談会議事録(DK500063k-0027)
第50巻 p.334-335 ページ画像

(株式会社日仏銀行)相談会議事録   (株式会社日仏銀行所蔵)
    日仏銀行相談会議事録
  大正元年八月十五日午前九時開会
          出席者 大蔵省理財局長 勝田主計
                   子爵 三島弥太郎
                   男爵 渋沢栄一
                      早川千吉郎
                      三村君平
                      添田寿一
                      井上辰九郎
                      斎藤恂
                      渡辺千冬
一、森財務官心得ト往復電報ノ件
 添田委員会々長ヨリ八月八日倫敦ヘ発信(第一)支店制採用ノ件、(第二)日本側重役選任並ヒニ其一人ヲシテ支配人ヲ兼ネシムルノ件、(第三)日仏銀行カ興業銀行及正金銀行ノ代理店タルノ件、(第四)日本側株式ノ引受方ニ関スル件、(第五)今後着手スヘキ事業ニ関スル件、(第六)印度支那銀行ト日仏銀行トノ協約ニ関スル件(以上)、ニ関スル電報並ヒニ八月十一日倫敦ヨリ受信シタル電報、及八月十四日倫敦ヘ発信シタル電報ニ付報告アリ
一、相談会内規ノ件
 右ニ付会長ヨリ原案ニ付説明シ、二・三修正ノ上別紙ノ通決定ス
一、日仏銀行ニ関スル欧洲トノ電報往復ニ関スル件
 右ニ付テハ今後ハ可成日仏銀行東京支店ヨリ、直接巴里本店ト交渉スルコトヽシ、ソレト同時ニ大蔵省並ヒニ森財務官心得トノ間ニ存在スル従前ノ関係ヲ害セサル様努ムヘク、是等ノ件ニ関シテハ添田委員会々長ノ手心ニ一任スルコトヽス
一、理財局長出席ニ関スル件
 相談会ハ理財局長ニ爾後毎回出席ヲ希望シタルニ、局長ハ之ヲ承諾セラレタリ
一、日仏銀行投資ニ関スル件
 如何ナル目的物ニ向ツテ投資スヘキヤ、小口ノ投資例ヘハ十万円以下ノ融通ノ可否其他ニ付、各自ノ意見ヲ吐露シ種々ノ懇談アリ、殊ニ東洋拓殖会社々債引受ノ件ニ関シ会長ヨリ説明シ、支那ニ対スル投資ニ付テハ、直チニ調査研究ニ着手スルコトヽシタリ
 右ノ外日仏銀行業務開始ラ世人ニ周知セシムル方法ニ関シ、意見交
 - 第50巻 p.335 -ページ画像 
換ノ結果尚ホ勘考スルコトヽス
 此日仏文定款ヲ配付シ、訳文ハ出来次第配付ノコトニ定ム
(別紙)
      相談会内規
  一、相談会ハ定時及臨時ニ日仏銀行東京委員会々長之ヲ開催ス
  二、定時相談会ハ当分ノ内、毎週水曜日午前九時日本興業銀行楼上ニ之ヲ開会ス
   但当日休日ニ該当スルトキハ其翌日トス
  三、臨時相談会ハ相談会々員ノ請求アルトキ、又ハ臨時必要アルトキ、何時ニテモ之ヲ開会ス
  四、相談会ノ議題トスヘキ重ナル事項ハ左ノ如シ
   イ、一口拾万円以上ノ貸附又ハ割引
   ロ、一口拾万円以上ノ証券ノ引受発行又ハ発売
   ハ、定款ノ変更及重要ナル規則ノ設定又ハ改廃
   ニ、日本側重役及支配人ノ異動
   ホ、日本側株主ノ異動
   ヘ、其他日仏銀行東京委員会々長ノ必要ト認ムル事項
  五、日仏銀行東京委員会々長ハ業務上重要ナル事項、及営業ノ状況ヲ相談会ニ於テ報告スルモノトス
  六、相談会ニ欠席シタル会員ニ対シテハ、便宜ノ方法ニヨリ報告スルモノトス
  七、相談会ノ議事ハ議事録ニ記入シ、次会ニ於テ承諾ヲ求ムルモノトス


竜門雑誌 第二九二号・第五八頁 大正元年九月 日仏銀行相談会(DK500063k-0028)
第50巻 p.335 ページ画像

竜門雑誌  第二九二号・第五八頁 大正元年九月
○日仏銀行相談会 前号所報の如く日仏銀行は総ての設備整ひたるを以て、八月十五日午前九時より第一回相談会を日本興業銀行楼上に於て開会し、相談役青淵先生・三島子爵・早川千吉郎・三村君平四氏、並に同行重役添田副総裁、巽《(マヽ)》・井上・斎藤・渡辺の各取締役、及大蔵省より勝田理財局長列席し、営業上に付き協議する所あり、尚ほ今後毎週水曜日に相談役会を開くことを決し、散会せりとなり。


(株式会社日仏銀行)相談会議事録(DK500063k-0029)
第50巻 p.335-336 ページ画像

(株式会社日仏銀行)相談会議事録    (株式会社日仏銀行所蔵)
    日仏銀行相談会議事録
  大正元年八月二十二日午前九時開会
          出席者 大蔵省理財局長 勝田主計
                   子爵 三島弥太郎
                   男爵 渋沢栄一
                      早川千吉郎
                      三村君平
                      添田寿一
                      斎藤恂
                      渡辺千冬
一、前回議事録承認ノ件
 - 第50巻 p.336 -ページ画像 
 八月十五日相談会議事録ヲ朗読シ、全会一致ヲ以テ承認ス
一、印度支那銀行トノ協定案ニ関スル件
 右ハ別紙第一号○略ス 即チ第五協定案ヲ原案トシテ協議ニ付シ、第二条ハ原案ヲ存シ、第一条・第三条全部ヲ改メテ別紙第二号ノ通ニ決定ス、原案第四条ハ之ヲ協約文中ヨリ削除シ、駐仏大使ニ仏国政府ニ対シ口頭ヲ以テ原案ヨリ「シ又ハ勢力ヲ取得」ノ八字ヲ除却シタル趣旨ヲ以テ、陳述ヲ乞フコトヽス
 右ニ関スル外務省其他必要ノ筋トノ交渉ハ、之ヲ勝田理財局長ニ依頼シ、局長ハ之ヲ承諾セラレタリ
一、日仏銀行東京委員会々則ニ関スル件
 右ハ朗読ノ上添田会長之カ説明ヲナシタリ
以上ヲ了リ、勝田局長ハ森財務官心得宛発電スヘキ文案ヲ作成シ、其趣旨ヲ説明セラレタリ

別紙第二号
      第一条
日仏銀行カ支那ニ於テ支店又ハ出張所ヲ開設セムトスルトキハ、印度支那銀行ト協議スヘシ
      第二条
改革借款ノ発行ニ関聯セル期間中、日仏銀行ハ借款契約団体ト何等ノ競争ヲナサス、又形式ノ如何ニ拘ハラス競争ニ参加セサルノ義務アルモノトス
右期間中、日仏銀行ハ清国政府ニ対シテ直接間接タルヲ問ハス、資金ヲ供給スヘキ事業ニハ総テ従事セサルヘシ
改革借款カ不発行決定ノ場合ニハ、右ノ契約条項ハ無効タルヘシ
      第三条
日仏銀行及印度支那銀行ハ、支那ニ於ケル仕事ニ関シ相互ノ競争ヲ避クル趣旨ヲ以テ、支那中央政府ト締結スヘキ借款又ハ貸金ニ関シテハ印度支那銀行ニ於テ先ツ着手シタルモノニ対シ、日仏銀行ハ好意的援助ヲ為シ、日仏銀行ニ於テ先ツ着手シタルモノニ対シテハ、印度支那銀行ハ亦好意的援助ヲ為スヘシ


(株式会社日仏銀行)相談会議事録(DK500063k-0030)
第50巻 p.336-337 ページ画像

(株式会社日仏銀行)相談会議事録    (株式会社日仏銀行所蔵)
    日仏銀行相談会議事録
  大正元年八月二十九日午前十時開会
          出席者 大蔵省理財局長 勝田主計
                  子爵 三島弥太郎
                  男爵 渋沢栄一
                     早川千吉郎
                     三村君平
                     添田寿一
                     斎藤恂
                     渡辺千冬
一、前回議事録承認ノ件
 - 第50巻 p.337 -ページ画像 
 八月二十二日相談会議事録ヲ朗読シ、全会一致ヲ以テ承認ス
一、印度支那銀行トノ協定案ニ関スル件
 右ニ付八月二十三日特第百四十一号ヲ以テ倫敦ヘ発信ノ電報ニ対シ八月二十八日倫敦ヨリ受信特第九十四号、即チ当方ヨリノ改正案ニ付テ、(一)仏国側重役カ同様ノ態度ニ出ツルコト能ハサレハ、日本側ハ単独ニ在仏全権大使ヲシテ主張セシムル考ナルカ、(二)第一条A原案ニハ代理店トアレト、貴案ニハ出張所ト改メタルハ アヂヤンスハ削除、問題外ニ置ク意味ナリヤ、B原案ニハ印度支那銀行ノ同意ヲ要スル考ナルカ、貴案ニハ協議ト改メタルハ一応協議スルモ、印支銀行ノ同意セサルトキハ、是ニ拘ハラス執行スル権利ヲ保留スル意味ナリヤトアルニ対シ、一同協議ノ結果、(一)ニ対シテハ右ハ日本側トシテノ態度ニ非ス、日仏銀行トシテノ立場ヨリ見テ正当並ニ利益ト信シタルコトニシテ、仏国側重役トハ意見ノ相違アルヲ信セス万一意見相違スルモ可成感情ヲ害セサルヤウシタシ、(二)Aハ誤記、Bハ強チ印度支那銀行ノ意思ニ反シテマテ行動セントスルニ非ス、随テ協定トシテハ単ニ協議スル辺ニ止メ置クノ趣旨ヲ以テ返電ヲナスコトニ議決セリ
一、支那借款ニ関スル件
 早川氏ヨリ徐通鉄道借款ニ関シ、三井物産会社ニ申出アリタル件ニ付紹介アリ、同氏ハ本件ハ進ンテ之ニ応スルノ意志ヲ以テ討議ノ題目タラシメントスルニ非ス、支那問題ニ付テハ漸次之ヨリ研究ノ歩ヲ進ムルノ必要アレトモ、実際ノ問題ニ対スルニ非レハ研究ニ着手セントスルモ手ヲ著クルニ由ナシ、即チ玆ニ一例トシテ本案ヲ諸君ノ参考ニ供セントスト述ヘラレ、之ニ対シ勝田局長ハ支那ノ投資モ可ナリ、唯其初メニ於テ慎重ノ注意ヲナサヽレハ、徒ニ日仏銀行ノ前途ニ害アルノミ、殊ニ支那ニ於ケル事業ノ過半ハ収支償サルヲ聞ク、一言諸君ノ注意ヲ促サントスト述ヘラレ、早川氏ハ局長ノ意見モ尤モナリ、唯事慎重ニ過キテ徒ニ退嬰為スナキモ、余リニ腑甲斐ナキ故、兎ニ角研究ノ歩ハ進メラレタシト述ヘラル、全会両氏ノ言ヲ諒トシ、兎ニ角徐通鉄道借款ノ件ニ付テハ渡辺氏ニ今少シ研究シテ其結果ヲ相談会ニ報告センコトヲ委嘱ス


(株式会社日仏銀行)相談会議事録(DK500063k-0031)
第50巻 p.337-338 ページ画像

(株式会社日仏銀行)相談会議事録    (株式会社日仏銀行所蔵)
    日仏銀行相談会議事録
  大正元年九月二日午前九時三十分開会《(五カ)》
          出席者 大蔵省理財局長 勝田主計
                   子爵 三島弥太郎
                   男爵 渋沢栄一
                      早川千吉郎
                      三村君平
                      添田寿一
                      斎藤恂
一、前回議事録承認ノ件
 八月二十九日相談会議事録ヲ朗読シ、全会一致ヲ以テ承認ス
 - 第50巻 p.338 -ページ画像 
一、石井大使ヨリノ返電ニ関スル件
 前回決議ノ電報ニ対シ、在仏石井大使ヨリ返電アリ、之ニ付テ相互ノ間充分ノ意思疏通ヲ欠クモノナルニ依リ、尚ホ一応当方ノ意思ノ存スル所ヲ明カニシテ、石井大使ヘ外務大臣ヨリ別紙ノ如ク電報セラレンコトヲ請フ事ニ決ス
右了リテ クレヂ リオネー 北京ニ仏国銀行設立ノ計画アル旨新聞ノ記事アリ、之ニ付テハ直ニ在巴ガンツブルグ男ニ電報及書面ヲ発シ事実ノ真相及ヒ印度支那銀行トノ関係等詳報セラレンコトヲ要求シタル旨、添田副総裁ヨリ報告アリタリ
(別紙)
    巴里 石井大使宛          内田大臣
 貴電第一〇九号ニ関シ、協約締結遷延ノ義ハ貴見一応御尤ナルモ、八月七日ヲ以テ印度支那銀行ヨリ右締結ヲ申込ミ来リタル行掛リモアリ、早晩之ヲ実行セサルヘカラサルモノトセハ、已ニ大体打合ヲ遂ケタル協約案ヲ、独リ我方ノ都合ノミニテ故ナク不確定ノ状態ニ放任シ置クコトハ、日仏銀行成立ノ曲折ニ顧ミ、印度支那銀行ニ対スル情義上面白カラサルノミナラス、永久ニ之ヲ遷延セシムルコト亦不可能ナルヘク、且該協約ナルモノハ支那ニ於ケル日仏銀行ノ活動範囲ヲ律スヘキ根本的重要事項ナルヲ以テ、之ヲ明確ニシ誤解ノ原因ヲ後日ニ残ササルコト緊要ナルニ付、此際先方ノ申込ニ対シ我意見ヲ申述フルコト然ルヘシト思料シ、貴官ヲ煩ハシ我修正意見ノ貫徹ヲ図ラムトナシタル次第ナリ、尚一旦貴地ニ於テ打合済ノ協約案ニ対シ、今更修正意見ヲ提出スルコトハ仏国銀行家及政府側ノ思惑モ如何ヤトハ当方ニ於テモ懸念セサルニアラサルモ、当方関係者ハ該協約案ナルモノハ大体ノ趣旨ニ付合意成立シタル迄ニテ、字句体裁ノ如キハ愈ヨ確定ノ際ニ当リ相当修正ヲ加フルノ余地アル義ト心得居リシ次第ニテ、今回提出シタル修正意見モ、寧ロ形式上ノ理由ヲ主トシ、実質上ニ於テハ大同小異ナリト云フヲ得ヘキヲ以テ、先方ニ於テ十分我方ノ趣旨ヲ了解スルニ於テハ、自然意思疏通ヲ見ルコト困難ニアラサルヘシト思考ス、往電第一一〇号(三)ノ声明案ハ財務官宛大蔵大臣ノ訓電ト同一趣旨ニテ、決シテ利益均分主義ヲ破壊セムトスル趣旨ニアラス、唯タ若シ出来得ヘクムハ斯ル声明ノ不必要ナルコトヲ、先方ニ了解セシメタキ当方ノ精神ヲ申添タル迄ナリ、尤右声明ハ日本側株主ノ意向ナリト云ヘハ、事実上日仏銀行ノ声明ニ異ナラサル訳合ナルモ、御交渉ノ上ニテ、仏国政府カ是非日仏銀行ヲシテ、文書ヲ以テ右声明ヲナサシメムコトヲ要求スル義ナルニ於テハ、前電記載ノ如キ文字ヲ省キ、日仏銀行ヨリ之ヲ声明セシムルモ不得已次第ト思考ス、貴電(四)ニ関シテハ大蔵省ヨリ財務官ニ説明シアル趣ニ付御聴取アリタシ、要スルニ前陳ノ次第ナルニ付貴官ハ当方ノ事情ヲ諒トシ、精々御尽力相成度、尚本件実行上先ツ日仏銀行仏国側関係者ト打合ヲナスノ必要ヲ認メラルル点ニ付テハ貴官ノ裁量ニ依リ仏国側重役ニ交渉ノ上、我修正意見ヲ翼賛セシムル様可然御取計アリタシ

 - 第50巻 p.339 -ページ画像 

(株式会社日仏銀行)相談会議事録(DK500063k-0032)
第50巻 p.339 ページ画像

(株式会社日仏銀行)相談会議事録   (株式会社日仏銀行所蔵)
    日仏銀行相談会議事録
  大正元年九月二十四日午前十時開会
               出席者 子爵 三島弥太郎
                   男爵 渋沢栄一
                      早川千吉郎
                      三村君平
                      添田寿一
                      井上辰九郎
                      斎藤恂
                      渡辺千冬
一、前回議事録承認ノ件
 九月五日相談会議事録ヲ朗読シ、全会一致ヲ以テ之ヲ承認ス
一、クレヂ リオネー支配人ボンゾン氏ト会見報告
 添田副総裁・渋沢男爵・三島子爵ヨリ、ボンゾン氏ト会見ノ顛末ニ付報告アリタリ
一、本店ヨリ来電ノ件
 九月十九日巴里発電、同日開会ノ日仏銀行本店重役会議ニ於テ、当方ヨリノ提議ヲ全部承諾シ、保証ハ一切感謝シテ之ヲ廃止ノコトニ決定ス、尚ホ巽・斎藤・井上・渡辺ハ全会一致ヲ以テ取締役ニ選任セラレタル旨申来リタルニ対シ、右電信ハ之ヲ必要ノ向キニ報告シ之ニ対シ当方ヨリ謝意ヲ表シ、尚来電ニ付其内容ヲ問合セタルコトヲ添田副総裁ヨリ報告アリタリ、右来電ニ付キテハ相談会員一同満足ノ意ヲ表シタリ
一、財務官心得ヨリ来電ノ件
 森財務官心得ヨリ、今回本店重役会議ニ於テ当方ノ提議ヲ全部承認セルハ グンツブルグ男爵ノ斡旋与ツテ力アルコト、仏国重役会議ハ東洋拓殖会社々債ヲ十月中ニ発行セントスルノ希望アルコト、右発行ニ方リテハ一応コツホ氏ニ交渉スルヲ可トスルコト等ニ付、来電アリタル旨報告アリ、右ニ関シコツホ氏ヘハ興業銀行ヨリ照会スヘキ旨、添田副総裁ヨリ報告アリタリ
一、石井大使ヨリ来電ノ件
 九月廿日付ヲ以テ石井大使ヨリ内田外務大臣宛来電ニ付報告シ、仏国株主ノ意嚮トシテ述ヘアル、仏国株主ハ本件ニ付異議ナキモ我ヨリ進ンテ口ヲ開クハ不得策ニ付、先方ノ督促ニ従ヒ漸次交渉ノ歩ヲ進ムルノ件ハ、一同モ亦同意ナルコトヲ石井大使ニ通スルコトニ決定ス


(株式会社日仏銀行)相談会議事録(DK500063k-0033)
第50巻 p.339-341 ページ画像

(株式会社日仏銀行)相談会議事録    (株式会社日仏銀行所蔵)
    日仏銀行相談会議事録
  大正元年十月十八日午前十一時開会
           出席者 大蔵省理財局長 勝田主計
                    男爵 渋沢栄一
                       早川千吉郎
 - 第50巻 p.340 -ページ画像 
                       三村君平
                       添田寿一
                       井上辰九郎
                       渡辺千冬
一、前回議事録承認ノ件
 九月二十四日相談会議事録ヲ朗読シ、全会一致ヲ以テ之ヲ承認ス
一、東洋拓殖株式会社社債発行ニ関スル件
 右ニ付添田副総裁ヨリ、東洋拓殖株式会社社債発行ニ付テハ、日本興業銀行ハ愈々正式ニ同社ヨリ社債発行ノ依頼書並ニ委任状ヲ受領シタル旨報告アリ、之ニ付キ早川氏ハ、東洋拓殖株式会社社債発行ノ決定セラレタルハ、日仏銀行ノ成立ト関係ナシト言フヘカラス、自分ノ希望トシテハ、寧ロ日本興業銀行ノ手ヲ経スシテ、直接ニ日仏銀行ニ委托セラルルヲ以テ至当ノ順序ナリト信ス、添田副総裁ハ此点ニ付考慮ヲ費サレンコトヲ望ムト述ヘラレ、勝田局長ハ大蔵省モ此辺ノコトニ関シ、日本側株主ノ考如何ヲ添田氏ニ念ヲ押シタル上、日本興業銀行ニ委托スルニ至レリトノ旨ヲ述ヘラレ、添田副総裁ハ、東洋拓殖株式会社社債発行ノ件ハ、今日発生シタルモノニ非スシテ、既ニ数年前ヨリ日本興業銀行ハ此問題ニ付キ講究ヲ費シ労務ヲ執レルモノニシテ、今日之ヲ直チニ日本興業銀行ノ手ヨリ離シテ、日仏銀行直接ノ事業トスルハ、穏当ニ非サル旨弁セラルルトコロアリ、猶ホ今後ノ業務ニ付テハ、其時ニ臨ンテ事毎ニ協議ノ上之ヲ決定スルコトトシ、今日既ニコツホ其他ヘ発信シタル暁ニ於テ、之ヲ日仏直接ノ業務ニ改ムルハ困難ナリト述ヘラレ、渋沢男爵ハ自分ハ大体早川氏ノ説ニ賛成ナリ、自分ハ日本興業銀行ノ労務ヲ無視セントスルニハ非サレトモ、殆ト総テノ斯ル事項ハ銀行家ノ手ヲ経テ日仏銀行ニ移サルルモノナルカ故ニ、労務ニ対シテ第一ニ取次タル銀行カ常ニ介在スルニ至テハ、之ニ対スル報酬ヲ支払ハサルヘカラス、此ノ如クンハ日仏銀行ノ関与セル業務ハ、常ニ多額ノ費用ヲ要シ、其結果トシテ発行事務ヲ困難ナラシムル虞レナキニ非ス、自分ハ早川氏ノ言ノ如ク、日本興業銀行ハ其襟度ヲ大ニシテ、本業務ヲ直接日仏銀行ノ業務タラシメンコトヲ希望スト述ヘラル、其他本件ニ付キ懇談時ヲ移シ、添田副総裁ヨリ兎ニ角日本興業銀行ノ意志ヲ声明センニハ、一応重役会議ヲ開クノ必要アリト述ヘラレ、其儘決定ニ至ラスシテ已ム
一、日仏銀行関係電報料ノ件
 日本銀行ヨリ大蔵省ニ対シ、日仏銀行関係電信料七月以後ノ分金六千五百八拾七円拾銭也請求アリタルニ対シ、協議ノ結果其一半ノ負担ヲ大蔵省ニ乞ヒ、他ノ一半ヲ日仏銀行ニ於テ負担スルコトニシ、大蔵省ノ決定ヲ待チタル上、添田副総裁ハ其旨日仏銀行巴里本店ニ申送ルコトトス
一、渡辺取締役渡欧ノ件
 右ニ関シ巴里ヨリ同氏ノ渡欧ハ希望スルトコロナレトモ、会社創立ノ際ニモ有之、且市場不振ニ付キ来春マテ之ヲ延期スルコト然ルヘシトノ電報ニ接シタル旨、添田副総裁ヨリ報告アリタリ
 - 第50巻 p.341 -ページ画像 
 其他東洋拓殖株式会社営業状態調査ノ件ニ付キ、渡辺氏渡欧ノ際、朝鮮ニ立寄ラルレハ便宜ナルヘシトノ寺内総督ヨリ井上侯爵宛ノ電報ヲ披露シ、尚ホ日仏銀行ト日本興業銀行トノ契約ヲ一同ニ配付ス
  午後一時閉会


中外商業新報 第九五一六号 大正元年一〇月二四日 日仏銀行の協議会(DK500063k-0034)
第50巻 p.341 ページ画像

中外商業新報  第九五一六号 大正元年一〇月二四日
    日仏銀行の協議会
日仏銀行にては二十三日午前十時より、興銀楼上に於て重役会議を開き、営業方針其他に付て協議する所あり、大蔵省より勝田理財局長、銀行より添田副総裁、井上・斎藤・渡辺の各取締役、及渋沢・三島・早川・三村の各相談役会合、審議の後午後一時半散会せり、因に同行支店開業申請書類は過般到着したるも、書式其他の手続に於て不備の点ありたるが為め、更に本店に向つて訂正願書の再送付方を請求せる由にて、支店の正式開業迄には多少の時日を要すべしと


(株式会社日仏銀行)相談会議事録(DK500063k-0035)
第50巻 p.341-344 ページ画像

(株式会社日仏銀行)相談会議事録    (株式会社日仏銀行所蔵)
    日仏銀行相談会議事録
  大正元年十月廿三日午前十時三十分開会
          出席者 大蔵省理財局長 勝田主計
                   子爵 三島弥太郎
                   男爵 渋沢栄一
                      早川千吉郎
                      三村君平
                      添田寿一
                      井上辰九郎
                      斎藤恂
                      渡辺千冬
一、前回議事録承認ノ件
 十月十八日相談会議事録ヲ朗読シ、之ヲ決定ス
一、日仏銀行関係電報料ノ件
 添田副総裁ヨリ、大蔵省ヨリ七・八両月分、日仏銀行関係電報料ノ内報ニ接シ、其一半即チ金六千五百八十七円十銭ハ、日仏銀行ニ於テ負担スヘキ旨ノ照会アリタル由報告アリ、右ニ付キ添田副総裁・渡辺取締役ヨリ勝田局長ニ対シ、九月以後ノ電報料ハ金額モ多カラサルヘキヲ以テ、一先ツ此辺ニテ打切リ、以後ノ分ハ大蔵省ニ於テ負担セラレタキ旨、希望ヲ述ヘラレタリ
一、前回相談会未了事件報告ノ件
 右ニ付キ添田副総裁ヨリ、東洋拓殖株式会社々債ニ関シテハ、日本興業銀行ハ之ヲ直接ニ日仏銀行ノ事務ニ移スコトヲ欲セス、尚又大蔵大臣ニ於テハ、前回早川氏ノ説カレタルトコロニ近キ意見ヲ有セラルルヤウ聞取リタル旨報告アリ
一、日仏銀行興業銀行契約ニ関スル件
 右ニ付キテハ一時間以上ニ亘リテ各自ノ意見ヲ交換シタルカ、今其大要ヲ摘記スレハ左ノ如シ
 - 第50巻 p.342 -ページ画像 
 渋沢男爵 自分ノ憂フルトコロハ、東洋拓殖会社ノコトノミニ非ス今後日仏銀行カ業務ヲ為スニ方リ、本契約ハ業務ノ総テヲ律スルモノニシテ事甚タ重要ナリ、自分ハ元来斯ル契約ノ存在シタルヲ知ラス、自分ノ考ハ日仏銀行ノタメニ力ヲ致スノ考ナリシモ、此契約ニ依レハ、日本興業銀行ノ手先タルニ過キサルノ感アリ云々、ソレヨリ男爵ハ井上侯爵ノ勧誘ニ依リ株主タルニ至リタル当時ノ事情、並ニ本月十九日井上侯爵ト会見ノ模様、並ニ侯爵モ斯ル契約ノ存在ハ毫モ知ラレサリシ等ノコトニ付キ述ヘラレ、更ニ進ンテ、自分ハ出資者タル第一銀行頭取タルノ立場ヨリシテ論センニ、若シ当初此契約ノ存在セルコトヲ熟知セハ、必ズヤ日仏銀行ニ投資セサリシナラント思ハル、今ニ於テ深ク自ラ不明ヲ恥ツルトコロナリ、且吾々日本側株主ノ日仏銀行ニ対スル関係ニ付テモ、自分等ノ考ト添田君ノ考トノ間ニハ大ナル径庭アルヲ見ル、乍併自分等ハ今ニ於テ彼是議論ヲ費サンヨリハ、直チニ相談会員ヲ辞任スルノ可ナルヲ考ヘ、早川・三村両君トモ相談シタルニ、早川君ハ、直チニ辞任ヲナサンヨリハ一応添田君ト十分談話ヲ交換シタル後ニ於テ之ヲ決行スルモ遅カラストノ説ヲ述ヘラレ、吾々ハ其為メ今日相談会ノ開会ヲ冀望シタル所以ナリ
 添田副総裁 元来此契約タル、予備協約ニ其基礎ヲ置ケルモノニシテ、自分ノ渡仏シタルハ此協約ヲ調印センカタメニ外ナラス、而シテ其予備協約ナルモノハ、大蔵省ニ於テモ、又今日此所ニ出席セラルル三島子爵ニ於テモ、既ニ熟知セラルルトコロノモノナリ、自分ハ仏国ニ在テ株主諸君カ代理店ヲ支店トセントスル等、其希望ヲ述ヘラレタルヲ見テ、其以前ニ於テ既ニ是等ノコトハ承知セラレテノコトヽ思居リタルノミナラス、又帰朝ノ上井上侯爵邸ニ於テモ其内容ハ之ヲ報告シタル積リナリ、故ニ更メテ契約ノ成文ニ付テ諸君ノ一覧ヲ求メサリシカ、元来日仏銀行ノ契約ナルモノハ単ニ興業銀行トノ間ニ存在スルノミナラス、又正金銀行トモ契約アリ、自分ハ是等ヲ一々株主ニ示スニモ及ハサルコトト信シ居リタリ、仏国ニ於ケル多数株主モ此契約ハ承知シ居ラス、尚又此契約案ノ精神ハ株主ノ間ニ等差ヲ付セントスルヲ目的トセルニ非ス、日本興業銀行ナル一機関ニ特権ヲ与ヘタルニ過キス、希クハ今日ハ残ストコロナク互ニ所思ヲ述ヘ、雨降テ地固マル様致シ度シ
 三村氏 唯今添田氏ハ予備協約ナルモノノ存在ヲ説明セラレ、今問題トナレル契約ニ付テハ、大蔵省モ既ニ承知ノ旨述ヘラレタリ、若シ果シテ然ラハ、大蔵省ハ何ノ必要アリテ東洋拓殖株式会社々債発行ノ件ニ付キ、添田氏ニ対シ株主其他ノ意見ニ付キ念ヲ押サレタルヤ、又今日大蔵大臣ハ早川氏ノ説ニ同意ノ旨ヲ語ラレタリトノコトナルカ、之モ了解スルコト能ハス、勝田局長ノ説明ヲ得ハ幸ナリ
 早川氏 自分ハ今日マテ斯ル契約ノ存在セルヲ知ラス、又井上侯爵邸ニ於テモ、本契約ニ付キ十分ノ報告アリタリト信スルコト能ハス吾々ノ言ハント欲スルトコロノコトハ渋沢男爵ニ依リテ殆ト要ヲ尽サレタリ、今玆ニ言ヲ重ヌルハ殆ト其必要ナキモ、一応勝田局長ノ説明ヲ乞ハント欲スルハ、大蔵省ハ、日本興業銀行ノ存在セルニ何
 - 第50巻 p.343 -ページ画像 
カ故ニ吾々他ノ株主ヲ之ニ加ヘントスルノ意思ヲ抱カレシヤ
 三島子爵 論点ハ帰着スルトコロ手数料ニ在テ存スルヤウ思ハル、何トカ具体的方法ニ依リテ解決スルノ途ナキヤ、斯ク言ヘハトテ自分ハ、株主銀行カ少許ノ手数料ヲ欲スルカタメニ、論議ヲ為スモノト解セルニ非ス、唯興業銀行ノ取得スヘキ手数料ヲ興業銀行カ取得セサレハ、其分ニ付テハ少クトモ六分ハ外国人ノ手ニ帰スルモノナルノミナラス、今更既ニ成立セル契約ハ如何トモスルコト能ハサルカ故ニ、理論上解決ヲ其辺ニ求ムルノ途ナキヤヲ考慮セラレンコトヲ望ムモノナリ
 勝田局長 三島子爵ノ具体的解決方法ヲ希望セラルルハ十分研究ノ値アリト信ス、唯自分ハソレニ先チテ、日仏銀行ニ対スル大蔵省ノ態度及日仏銀行成立ノ来歴ニ付少シク述ヘント欲ス、元来大蔵大臣ハ日仏銀行ノ設立ヲ必要ナリト認メ、政府トシテ出来得ルタケ之ニ援助ヲ与フルト共ニ、銀行ノ組織其他些末ノ点ニ付テハ敢テ干渉セス、当事者間ニ於テ決定スヘキモノナリトノ考ヲ抱カレ、随テ政府ハ或ハ日仏本店ニ預金ヲ為シ、或ハ財務官ノ使用ヲ許可シ、或ハ又電信料ノ負担ヲモ為セルモ、進ンテ細事ニ立入リタルコトナシ、之レ大蔵大臣大体ノ方針ナリ、又日仏銀行成立ノ来歴ニ付テ述ヘンニ当初日仏銀行談ノ出テタルハ前内閣ノ時ニシテ、既ニ興業銀行ノ存在セルニ日仏銀行ヲ設立スルノ必要如何トハ、当時問題トナリタルトコロナリ、然ルニ従来我国ニ於テ英米独等ノ資本ハ輸入セラレタレトモ、未タ十分仏資ヲ利用スルニ至ラス、如何ニシテ之ヲ利用センカノ手段ニ付テハ、人々ノ考慮ヲ費セルトコロナリシカ、幸ニシテ仏蘭西側ヨリ日仏銀行談ヲ提起セラレタル以上ハ、其計画ヲ助長スルコトニ決シ居リタルニ、或事情ヨリシテ一時之ヲ中止シ居リ、其後支那関係ヨリシテ井上侯爵ノ発意ニ依リ再ヒ復活セラレ、本年三月十八日当方ヨリ其旨先方ニ通知シ、森財務官心得ヨリ予備協約ナルモノヲ申来ルニ至レリ、其予備協約ニ依レハ、大体仏蘭西ニ於テハソシエテ・ゼネラールヲ主脳トシ、我国ニ於テハ興業銀行ヲ主脳トスルノ精神ヲ以テ成立チ居リ、此第一契約案ニ付テハ井上侯爵日本銀行正副総裁、三島子爵等モ承知セラルルトコロナリ、然ルニ其後日本興業銀行以外ニ他ノ株主ヲ加フルコトトナリ、之ニ付テハ該契約案モ亦変更セラレサルヲ得ストハ想像シタルトコロナリ、唯強ヰテ言ヘハ、大蔵大臣モ自分モ此新契約ナルモノハ今回初メテ一覧シタルモノニシテ、添田君ノ善意ハ疑ハサレトモ、玆ニ幾分ノ手落ナシトハ言フヘカラス、右ノ次第ニ付曩ニ三村君ヨリ述ヘラレタル点ニ付テハ、大蔵大臣従来ノ態度ヨリ之ヲ了解セラレンコトヲ希望ス、又早川君ヨリ述ヘラレタル点ニ付テハ、表面ニ於テハ従来仏資ノ利用セラレサルヲ遺憾トセルヨリシテ、日仏銀行ノ成立ヲ希望セリト答ヘント欲ス、唯裡面ニ於テハ興業銀行以外ノ我国第一流ノ銀行ノ加入スルヲ以テ、必要ナリト認メタリト答ヘント欲ス
 早川氏 勝田局長ノ言ニ徴スルモ、吾々ノ株主トナリシハ仏蘭西ノ株主ト同シク、単純ナル出資者タルニ止マラス、其助力ハ日仏銀行事業経営ノ上ニ必要ナリト認メラレタルニ由ルモノニシテ、吾々ヲ
 - 第50巻 p.344 -ページ画像 
仏蘭西ニ於ケル多数株主ト同一視セントスルノ添田君ノ議論ニハ、同意ヲ表スルコト能ハス
 渋沢男爵 吾々ハ今日執ルヘキ途トシテハ、唯相談会々員ヲ辞任スルニ在リ
 早川氏 単リ相談会々員ヲ辞任スルノミナラス、株主タルコトヲモ欲セス、吾々株主ノ地位カ本店ニ認メラレサル以上ハ、吾々カ引退リテモ差シタル大事トハナルマシ
 三村氏 既ニ吾々ノ加入カ単ナル株主タラント欲スルノミナラス、国家的ノ見地ヨリシテ加入シタルモノナル以上ハ、之ヲ以テ単純ナル株主ト認メラルルハ其意ヲ得ス
 添田副総裁 要ハ事業ヲ為スニアリ、日仏銀行ノ繁栄ニアリ、然レトモ労ニ報ユルニ報酬ヲ以テスルハ商業上ノ原則ナリ、希クハ此契約ヲ存在セシメ、其範囲内ニ於テ此問題ヲ解決シ、調和ノ途ヲ講センハ如何
 渋沢男爵 労ヲ執レルモノニ報酬ヲ与フルハ可ナリ、唯斯クテハ或ハ債務者ヲ損シ、或ハ発行銀行ヲ損シ、或ハ債権者ヲ損スルノ結果ヲ見ルヘキノミ、吾々ノ意思ハ報酬ヲ欲シテ議論スルニ非ス、此旨ヲ了解セラレンコトヲ望ム
 添田副総裁 貴意ハ諒セリ、本日ハ之ヲ以テ散会シ、更メテ相談会ヲ開キテハ如何
 早川氏 吾々ノ決意ハ明白ニシテ今既ニ述ヘタルカ如シ、希クハ添田君ニ於テ考慮ヲ費サレンコトヲ望ム
 添田副総裁 諸君ノ意思ハ十分之ヲ了解セリ、尚一応相談会ヲ開クコトトシ、今日ハ散会セント欲ス
 一同之ニ賛シ散会ス
  于時午後零時三十分


竜門雑誌 第二九四号・第七二頁 大正元年一一月 ○日仏銀行重役会(DK500063k-0036)
第50巻 p.344 ページ画像

竜門雑誌  第二九四号・第七二頁 大正元年一一月
○日仏銀行重役会 日仏銀行にては十月廿三日午後一時より、日本興業銀行に於て定例重役会を開きたり、出席者は相談役青淵先生・三島子・早川千吉郎・三村君平諸氏及重役一同にて、大蔵省よりは勝田理財局長臨席して、同行支店事務開始及重要業務に関し協議したる由。


中外商業新報 第九五四五号 大正元年一一月二二日 日仏銀行の協議(DK500063k-0037)
第50巻 p.344 ページ画像

中外商業新報  第九五四五号 大正元年一一月二二日
    日仏銀行の協議
日仏銀行にては過般東京支店の開設登記を終了して近く営業開始の運びに至れるが、大蔵省理財局長勝田主計、興銀総裁仏銀副総裁添田寿一、興銀副総裁佃一予、仏銀取締役渡辺千冬、相談役渋沢男・早川千吉郎・三村君平の諸氏及び高橋日銀総裁・水町同副総裁・三島正金頭取の諸氏は二十一日午後二時より内田山なる井上侯爵邸に会合し、予ての懸案たる興銀と仏銀との関係及仏銀と株主との関係等に関する事項を協定したる後、各種の事項に付き互に意見を交換する所ありし由


(株式会社日仏銀行)相談会議事録(DK500063k-0038)
第50巻 p.344-345 ページ画像

(株式会社日仏銀行)相談会議事録   (株式会社日仏銀行所蔵)
 - 第50巻 p.345 -ページ画像 
    日仏銀行相談会議事録
  大正元年十一月二十五日午前十時開会
          出席者 大蔵省理財局長 勝田主計
                   男爵 渋沢栄一
                      早川千吉郎
                      三村君平
                      添田寿一
                      井上辰九郎
                      斎藤恂
                      渡辺千冬
一、東洋拓殖株式会社々債ノ件
 東洋拓殖株式会社々債ノ件ニ付テハ、日本興業銀行ニ於テ先ツ其委任ヲ受クルコトニ打合ハセタリ
一、日本興業銀行及株主銀行間契約ノ件
 日仏銀行及日本興業銀行間ノ契約ニ関シ、株主銀行間ニ於テ決定セル覚書ニ付キ、株主銀行代表者トシテ各自追テ署名捺印スルコトニ決ス
一、開業ノ件
 明二十六日開業届ヲ大蔵大臣宛提出ノコトニ決定ス
一、台湾銀行大倉組ヨリ融通申込ノ件
 渡辺取締役ヨリ申込ノ内容ニ付キ報告アリ、添田副総裁ヨリ本店及申込者ニ対スル交渉ノ形式ニ付提案アリ、尚ホ各自考究スルコトトシ決定ヲ延期ス
一、東京支店ノ店舗ヲ日本興業銀行ヨリ分立セシムルノ件
 東京支店ノ店舗並ニ使用人ヲ日本興業銀行ヨリ分立セシムルコトハ東京支店ノ発展ヲ計ルニ於テ必要ト認ムルカ故ニ、其趣旨ト理由トヲ本店ニ照会シ、承諾ノ通知ヲ俟テ其準備ニ着手スルコトニ決ス
一、東京委員会々則改正ノ件
一、日本関係業務ハ可成之ヲ東京支店ニ於テ取扱フノ件
一、渡辺取締役渡欧ノ件


中外商業新報 第九五五〇号 大正元年一一月二七日 日仏銀行支店開業(DK500063k-0039)
第50巻 p.345 ページ画像

中外商業新報  第九五五〇号 大正元年一一月二七日
    日仏銀行支店開業
日仏銀行東京支店は総ての準備成りたるを以て、愈々二十六日を以て開業し、同日主務省に支店開業の届出をなし、尚仏国本店に向け開業の旨を電報せりと


(株式会社日仏銀行)相談会議事録(DK500063k-0040)
第50巻 p.345-347 ページ画像

(株式会社日仏銀行)相談会議事録   (株式会社日仏銀行所蔵)
  大正元年十二月十一日午前十時三十分開会
          出席者 大蔵省理財局長 勝田主計
                   男爵 渋沢栄一
                      早川千吉郎
                      三村君平
                      添田寿一
 - 第50巻 p.346 -ページ画像 
                      井上辰九郎
                      斎藤恂
                      渡辺千冬
一、議事録承認ノ件
 十月二十三日及十一月二十五日相談会議事録ヲ朗読シ、可決確定ス
一、諸般ノ報告
一、東京委員会々則改正案
一、台湾銀行及大倉組ヨリ申込ノ融通ニ関スル件
 右ニ付キ渡辺取締役ヨリ申込ノ条件、担保ノ性質等ニ付キ、説明アリタリ
 渋沢男爵ハ添田副総裁ニ向テ考案ナキヤヲ質サル
 添田副総裁ハ、仏国ヨリ低利ノ資金ヲ輸入センカタメニハ、直接高利ノモノヲ提供スルハ不可ナリ、又仏国資本家ヲシテ十分安心セシムルノ必要アリ、殊ニ其初メニ於テ最モ安固ナル業務ヲ紹介スルノ必要アルカ故ニ、仏国ヨリ資金ノ融通ヲ計ルニ方リテハ、各日本側株主銀行ハ共同シテ裏書又ハ保証ノ任ニ当リ、其損益ハ持株ニ比例シテ分割担当スルヲ以テ相当ト認ムルカ故ニ、台湾銀行及大倉組ノ申込ノ如キモ此方法ニ倚ランコトヲ希望スト述ヘラレ、之ニ対シ
 渋沢男爵ハ、大体ニ於テ賛同ノ意ヲ表セラレ、安全ナル形式ノ下ニ低利ノ資金ヲ輸入スルノ必要ヲ説カル
 勝田局長ハ、日本ニ於テハ今後支那ノ借款其他ニ付キ、又日本内地ノ事業資金トシテ多大ノ外資ヲ必要トスルハ明カナルカ故ニ、各銀行カ共同保証ノ形式ノ下ニ低利資金ノ輸入ヲ企画セラルルハ最モ賛成ナリ、唯然ル以上ハ何トカ巨額ノ資金ヲ一時ニ輸入シ、必要ニ応シテ之ヲ投資セラルルノ方法ヲ講セラレテハ如何云々ト言明セラル之ニ対シ早川千吉郎・三村君平両氏ヨリ、添田副総裁ノ所説ノ主意ニハ固ヨリ反対スルトコロニ非サレトモ、毎次各関係銀行ノ保証ヲ要ストセラルルハ、其時ニ臨ンテ或ハ各銀行各個ノ事情モアルヘキカ故ニ、時々ノ事項ニ依リ各銀行ノ態度ヲ決定スルコトトスル方、至当ナラスヤト述ヘラル
 添田副総裁ハ、折角共同一致シテ事ニ当ルコトニ決セル以上ハ、可成事実ニ之ヲ現ハシタシ、然シ保証問題ハ別トシテモ、各株主銀行ハ仕事ヲ日仏支店ニ持込ムコトニ尽力シ、損益ハ其持株数ニ応シ分賦スルト云フ大体ノ原則ハ認メラレンコトヲ祈ル旨ヲ述ヘラレタルニ、一同其事ハ勿論ナリ、然シ保証ノ事ハ実際ノ場合ニ依リテ決スルコトトセン
 次テ渡辺取締役ハ、自分ノ希望スルトコロハ固ヨリ低利資金ノ輸入ニ在ルカ故ニ、敢テ添田副総裁ノ説ニ反対スルモノニハ非サルノミナラス、事ニ応シ時ニ臨ンテ其方法ニ依ルノ利益アルハ謂フヲ俟タサルトコロナリ、然レトモ自分ノ希望スルトコロハ、日本・支那等ノ業務ハ必ス一応東京支店ヲ通過シテ処置セラルルヲ原則トスルト共ニ、東京支店ハ本店ヨリ利息付キノ資金ヲ仰キ居ルカ故ニ、東京支店ハ或業務ヲ為スニ方リテハ、必スヤ東京支店ノ利益ヲモ顧慮セサルヘカラス、若シ仏資ヲ使用スルニ当リ常ニ各銀行ノ保証ヲ要ス
 - 第50巻 p.347 -ページ画像 
ルモノトセハ、一定ノ資金カ債務者ノ手ニ入ルニ方リ、其間ニ第一東京支店ノ収益、第二保証銀行ヘ支払フヘキ保証料、第三為替ノ危険等、総テヲ計算スルニ於テハ低利資金ノ輸入ヲ企ツルト云フモ、場合ニ依リテハ其結果却テ低利ナラサルノ憾ミアルヲ見ルヘキナリ殊ニ東京支店開店ノ当初ニ於テ、日本第一流ノ銀行カ共同保証ヲ為スニ於テハ、今後ノ金融談ニ付テ必スヤ同様共同保証ヲ希望スルノ虞レアルヲ予想セサルヘカラス、今般ノ業務ニ付テ言フモ、台湾銀行ノ分ノ如キハ其資金ノ用途カ支那ニ在ルモ、其形式ニ於テハ毫モ支那関係ノ体裁ヲ具備スルモノニ非ス、自分ハ自分ノ渡欧ニ関スル先方ノ意見ノ通知ニ接スルモ二週日ヲ出テサルヘク、若シ来年匆々渡欧スルコトトナルニ於テハ、之ヲ直接先方ト協商スルコトトシ、仏国ニ齎スヘキ一ノ土産トセント欲ス、云々
 玆ニ於テ台湾銀行・大倉組ノ二件ハ、渡辺取締役渡欧ノ節、直接交渉ノコトニ決ス


(株式会社日仏銀行) 相談会議事録(DK500063k-0041)
第50巻 p.347-348 ページ画像

(株式会社日仏銀行) 相談会議事録     (株式会社日仏銀行所蔵)
  大正元年拾弐月弐拾八日
         午前拾時参拾分開会
               出席者 男爵 渋沢栄一
                      早川千吉郎
                      三村君平
                      添田寿一
                      井上辰九郎
                      斎藤恂
                      渡辺千冬
一、前回議事録承認ノ件
 拾弐月拾壱日相談会議事録ヲ朗読シ、全会一致ヲ以テ承認ス
一、印度支那銀行ト協約ノ件
 印度支那銀行ト協約ノ件ニ付テハ、石井大使ヨリ外務大臣宛拾弐月拾七日及弐拾日付ヲ以テ、原案ニ同意スルノ得策ナル旨ノ電信ニ接シ、又拾壱月弐拾弐日ヲ以テ、同大使ヨリ内田外務大臣宛来信、並ニ其添付書類トシテ具男覚書、ドリゾン シモン グンツブルグ諸氏ノ書面写到着シ居リ、渡辺取締役ヨリ其内容ニ付キ朗読説明アリ尚昨日添田副総裁及渡辺取締役カ若槻大蔵大臣ヨリ直接ニ聴取リタル同大臣ノ意見ニ付キ左ノ通リ説明アリタリ
 大臣曰ク、印度支那銀行ノ件ニ付キ今日次官欠席ニテ打合ハスヘキ時間無ケレトモ、本件ハ急速ニ取運フノ必要アリト思フカ故ニ、不取敢予ノ意見ヲ申述ヘントス、元来此件ハ日仏銀行株主間ノ意見ノ相違ニシテ大蔵大臣ノ干与スヘキ事件ニ非スト思フ、然レトモ予ニ対シテ或ハ仏国ノ事情、財政ノ事情ニ通スルノ故ヲ以テ、御相談トナラハ意見ヲ申スヘキモ、予ハ原案ト修正案トヲ比較シテ大ナル相違ヲ見ス、固ヨリ幾分修正案ノ方日本ノ為メニ利益アルヲ見レトモ殊更ニ修正案ヲ提出シテ之ヲ固執スルノ必要ヲ見ス、故ニ修正案ニシテ直チニ先方ニ認容セラルヘキモノナラシメハ、固ヨリ修正案ヲ
 - 第50巻 p.348 -ページ画像 
賛成スヘキモ、斯ノ如ク石井大使ヨリシテ先方ニ於テハ原案ヲ固執シ居ル以上ハ、之ニ反対ノ態度ヲ執ルカタメニ、遂ニ日仏銀行ヲシテ看板許リノモノナラシメ、仏蘭西大蔵大臣ヲシテ東洋拓殖会社其他ノ社債等ニ付テハ、許可ヲ与ヘサルカ如キ事情ニ陥ラシメハ、我国ノ不利ヤ大ナリ、予ハ諸君ノ決定ニ干与スルモノニ非サルカ故ニ如何ナル方針ニ依ラルルモ敢テ問フ所ニ非サレトモ、予一箇ノ私見トシテハ原案ヲ認容スルヲ可ナリト信ス、唯字句ノ修正ノ如キハ若シ希望アラハ之ヲ申伝フルモ差支ナカルヘシ、尚外務大臣ヲ経テノ事件ナルカ故ニ、今日桂外務大臣ノ意見ヲ聞キタルニ、全ク予ト同様ノ意見ヲ有セラルルカ如シ
 添田副総裁ヨリ、斯ノ如キ事情ノ下ニ於テハ今ヤ荏苒日ヲ送リ或ハ先方ノ誤解ヲ招キ、或ハ日仏銀行業務ノ故障ヲ来スカ如キコトアラハ甚タ遺憾ナルカ故ニ、此際原案ニ付キ同意ヲ表スル方得策ナルヘシトノ所説アリ
 渋沢男爵・早川千吉郎氏モ、吾々当初ノ意思ハ敢テ協定案ハ之ヲ固執セサルヘカラサル絶対的理由ナシ、添田副総裁ノ説ニ同意ナル旨述ヘラル、玆ニ於テ石井大使ニハ、貴電ノ趣キモ有之且今後ノ仕事上故障無カラシムルタメ、協定ノ原案ニ同意スルコトニ決定セリトノ趣旨ヲ以テ、返電発送ヲ当局ニ依頼セントノ添田副総裁ノ所説ニ一同同意、可決確定ス、唯為念渡辺取締役ヲ労シテ、尚重要ナル筋ノ同意ヲ求メタル上、政府ニ上申ノコトトス
一、株主銀行保証ノ件


渋沢栄一 日記 大正二年(DK500063k-0042)
第50巻 p.348 ページ画像

渋沢栄一 日記  大正二年          (渋沢子爵家所蔵)
一月十一日 晴 寒
○上略 午前十一時井上侯邸ニ抵リ日仏銀行ノ事ヲ協議ス、高橋・三島・早川・三村、勝田大蔵次官、興業銀行ノ人々来会ス、種々評議ノ末、添田氏病気快方ヲ待テ再議スヘキ事ト定ム○下略
  ○中略。
一月十四日 晴 寒
○上略 十一時日本興業銀行ニ抵リ日仏銀行相談会ニ出席シ、勝田次官・三島正金頭取、早川・三村ノ諸氏ト共ニ添田・渡辺氏等ノ提案ヲ審議ス○下略
  ○中略。
二月四日 晴 寒
○上略 午後三時事務所ニ抵リ○中略 渡辺千冬氏日仏銀行ノ事ヲ談話ス○下略


(株式会社日仏銀行) 相談会議事録(DK500063k-0043)
第50巻 p.348-349 ページ画像

(株式会社日仏銀行) 相談会議事録   (株式会社日仏銀行所蔵)
    日仏銀行相談会議事録
  大正二年一月十四日午前十一時開会
             出席者 大蔵次官 勝田主計
                   子爵 三島弥太郎
                   男爵 渋沢栄一
                      早川千吉郎
 - 第50巻 p.349 -ページ画像 
                      三村君平
                      添田寿一
                      井上辰九郎
                      斎藤恂
                      渡辺千冬
一、印度支那銀行協約ニ関スル件
 右ニ付キテハ別紙ノ通リ之ヲ可決シ、一応重要ナル筋ニ協議ノ上、外務省ニ発電案ヲ依頼スルコトニ決ス
一、渡辺取締役渡仏ニ関スル件
 渡辺取締役渡仏ニ付テハ、仏国ニ於テ協議スヘキ事項ヲ同取締役ニ於テ説明ヲ附シテ箇条書ニ記載シ、適当ノ時機ニ於テ之ヲ協議スルコトニ決ス
 (別紙)
 日仏銀行日本側株主ハ、同行ト印度支那銀行トノ間ノ協定ニ付キ、其提議ノ容レラレサリシコトヲ頗ル遺憾トスルモ、協約締結済ノ今日強ヰテ之カ修正ヲ主張スルカ如キ態度ヲ執ルヲ好マス、将来支那ニ於テ実際放資スル場合ニハ、其都度両行間ニ好意的妥協ノ余地十分存スルコトヲ確信ス、猶日本側株主ノ提議シタル所ハ、言明シタル如ク両行間ノ関係ヲ一層親善ナラシメ、可成競争ヲ避ケントスルノ主意ニ出テタルモノニシテ、其内渡辺取締役渡仏ノ上説明スヘキ旨申出テタリ、貴使ハ右ノ主旨ヲ仏国政府及貴地銀行干係者ニ伝達セラレタシ。


(株式会社日仏銀行)相談会議事録(DK500063k-0044)
第50巻 p.349 ページ画像

(株式会社日仏銀行)相談会議事録   (株式会社日仏銀行所蔵)
    日仏銀行相談会議事録
  大正二年五月二十九日午前拾時開議
               出席者 男爵 渋沢栄一
                      早川千吉郎
                      三村君平
                  副総裁 志立鉄次郎
                      井上辰九郎
                      エル・マルチニー
                      斎藤恂
                      渡辺千冬
   志立副総裁会長席ニ著ク
一、志立副総裁ヨリ開会ノ挨拶アリ、渡辺取締役ヨリ東京委員会々則改正案ニ付キ、本店ノ承諾アリタル旨及ヒ近々支店分離ノコト決行ノ件報告アリタリ
次ニ渡辺取締役ヨリ、中仏銀行ノ成立困難ノ報道ニ付キ、仏紙ノ伝フルトコロヲ述ヘ、渋沢男爵ヨリ中国興業会社ニ付キ、来歴及現状ノ談話アリタリ


(株式会社日仏銀行)相談会議事録(DK500063k-0045)
第50巻 p.349-350 ページ画像

(株式会社日仏銀行)相談会議事録   (株式会社日仏銀行所蔵)
    日仏銀行相談会議事録
 - 第50巻 p.350 -ページ画像 
  大正二年六月二十五日午前十一時開議
               出席者 男爵 渋沢栄一
                      早川千吉郎
                      三村君平
                      志村鉄次郎
                      井上辰九郎
                      エル・マルチニー
                      斎藤恂
                      渡辺千冬
志立副総裁ヨリ本店営業成蹟ニ付キ報告アリタリ
尚渡辺取締役本年拾月渡仏ノコトヲ報告シ、右ニ関シ各相談役ノ希望ヲ述ヘラレタキ旨、附言セラレタリ
次ニ渋沢男爵ヨリ、日仏銀行本店ノ支那ニ対スル方針及日本ニ於ケル社債等ニ関スル方針ニ付質問アリ、渡辺取締役ヨリ詳細説明アリタリ続イテ早川氏曰ク、日本ノ第一流会社ノ営業状態ニ付テハ、平日ヨリ本店ニ之ヲ説明シ置キ、其資金入用ノ場合ニ於テ多クノ労スルトコロナクシテ、其供給ヲ受クルコトニシタシ
右ニ付渡辺取締役ヨリ、次ノ相談会迄ニ第一流会社ヲ選択シ、相談会ノ承認ヲ受クヘキ旨述ヘラレタリ
三村氏曰ク、単リ会社ヲ選択スルノミナラス、株主銀行ニ於テハ是等ノ会社ニ向ツテハ裏書ヲ為スコトマテ追加セハ、仏蘭西ニ於テモ大イニ安心スルトコロアラン
尚早川氏ハ、日仏銀行ハ勧業債券・興業債券其他、大イニ活動センコトヲ望ム旨述ヘラル
渋沢男爵・早川氏等ノ発議ニ依リ、渡辺取締役渡仏前、先方ニ於テ協議ノ個条ヲ列記シ、来ルヘキ相談会ニ於テ協議ヲナスコトトス
其他種々ノ要件ニ付談話、時ヲ移シ午後一時散会ス


(株式会社日仏銀行)相談会議事録(DK500063k-0046)
第50巻 p.350-351 ページ画像

(株式会社日仏銀行)相談会議事録   (株式会社日仏銀行所蔵)
    相談会議事録
  大正弐年八月九日午前九時開議
             出席者 大蔵次官 勝田主計
                   男爵 渋沢栄一
                      早川千吉郎
                      三村君平
                      志立鉄次郎
                      エル・マルチニー
                      渡辺千冬
                      小野英二郎
                      青木鉄太郎
先ツ志立副総裁ヨリ、本店ヨリ渡辺、マルチニー両取締役九月拾五日頃迄ニ渡仏スヘシトノ電信ニ接シタルニ付テハ、両氏出発前十分諸種ノ打合ハセヲ為シ置クノ必要ナルヲ信シ、今日相談会ヲ開会シタル次第ナリ、就テハ先ツ第一ニ玆ニ御協議致度キハ、小野・青木両興銀理
 - 第50巻 p.351 -ページ画像 
事ハ未タ日仏銀行取締役ニ選挙セラレサルモ、既ニ選挙ニ至ルマテノ各種ノ手続ハ結了致シ居リ、唯本店ヨリノ返事ヲ待チ居ルノミナルカ事務ノ連絡ヲ便宜ナラシムルタメニ、今日特ニ両氏ノ出席ヲ求メタル方他日ノタメニ宜シカラント信ス、ト述ヘラレタリ
一同異議無シ
即チ両氏ノ出席ヲ求ム
渡辺取締役ヨリ、中国興業会社今後ノ活動ノ経過其他ニ付キ、渋沢男爵ニ説明ヲ求メラル
渋沢男爵ハ創立ヨリ今日ニ至ルマテノ来歴ヲ縷述シ、尚今後仏蘭西ノ資本ノ供給ヲ求ムル場合尠カラサルヘキ旨談話アリタリ
早川千吉郎氏ヨリ、勧業債券及興業債券ヲ仏国ニ於テ発行ヲ試ムルノ必要ナルコトヲ述ヘラレ、一同之ニ賛成ス
勝田次官ヨリ、仏蘭西ノ資本ヲ輸入スルニハ、仏蘭西ニ於テ証券ヲ発行スルコトカ必要ナルヤ、或ハ又日本ニ於テ発行シタルモノヲ仏蘭西ニ輸入スルノ事実上不可能ナルヤ等ニ付キ、仏蘭西ニ於テ十分研究スルノ価値アルヘキ旨注意アリタリ
右ニ対シ渡辺氏ヨリ今日マテニ知リ得タル事情ヲ述ヘ、尚氏ハ追加シテ、発行事務ヨリモ、銀行ノ取引ノ作用殊ニ手形作用ヲ以テ、仏蘭西ノ資本カ来ルニ非サレハ、日仏銀行ヲ設ケタル目的ノ大半ハ没セラルル所以ヲ述ヘラレタリ
渋沢男爵ヨリモ手形作用ニ依リ仏資ヲ輸入スルノ必要ナル所以ヲ述ヘラレ、例ヘハ今日三重紡績ノ如キ堅実ナル会社アルニ方リ、其発行シタル手形ニ対シ仏資ヲ輸入スルノ不可能ナルヤ否ヤニ付キ、疑問ヲ発セラル
渡辺取締役ハ其所見ヲ述ヘ、尚早川千吉郎氏ハ斯ル事実問題ヲ以テ仏国ニ赴キ、先方ノ意志ヲ確カムルヲ便トスル旨述ヘラレ、一同是ニ賛成ス
渡辺氏ハ第一銀行佐々木氏ニ就キ、右ノ点ニ関シ協議ヲ為スヘキ旨述ヘラレタリ
尚此外各種ノ議論アリタル末、勧業銀行債券・興業銀行債券等ニ付テハ、政府モ関係アルコトナルヲ以テ、恰モ大蔵大臣ハ明日旅行ニ赴クカ故ニ、今日中ニ渡辺取締役大蔵大臣ニ面会シテ、今日ノ相談会ノ模様ヲ陳述スルコトトナシ、尚出来得ヘクンハ志立副総裁モ同行シテ、今日ノ相談会ノ意思ヲ述ヘラレタシトノコトニ決定シ、拾壱時過キ散会シタリ


(株式会社日仏銀行)相談会議事録(DK500063k-0047)
第50巻 p.351-355 ページ画像

(株式会社日仏銀行)相談会議事録   (株式会社日仏銀行所蔵)
    日仏銀行相談会議事録
  大正二年八月二十七日午後二時開議
              出席者 財務官 森賢吾
                   男爵 渋沢栄一
                      水町袈裟六
                      早川千吉郎
                      三村君平
 - 第50巻 p.352 -ページ画像 
                      志立鉄次郎
                      エル・マルチニー
                      渡辺千冬
                      小野英二郎
                      青木鉄太郎
先ツ志立氏ハ左ノ通リ述ヘラル
 此度マルチニー、渡辺両君カ渡仏セラルルニ付テハ、其出発前ニ於テ、日仏銀行日本側株主諸君ノ高慮ヲ十分承ハリ置クコトハ、何ヨリモ必要ナリト信シタリ、元来日仏銀行ハ日本政府ヨリ精神的ニ又物質的ニ多大ノ援助ヲ受ケ居レリ、然ルニ今日ニ於テハ尚未タ本支店間事情ノ疏通完全ナリト言フコトヲ得ス、此機会ニ於テ政府当局者並ニ相談役等各位ノ御意見ヲ充分吐露セラレ、日本側ノ総テノ希望又ハ不満足ノ点アラハ之ヲ明白ニ述ヘ、両氏ヲ労シテ之ヲ本店ニ伝ヘンコトヲ希望ス、今日ハ勝田次官出席ノ約アリタルモ、水害ノ為メニ欠席セラレタルハ遺憾ナリ
次ニ渋沢男ハ左ノ意見ヲ陳述セラレタリ
 此度東京支店ヨリ渡辺千冬、マルチニー両君カ渡仏セラルルニ付テハ、自分ハ日仏銀行株主ノ一人トシテ、宿昔ノ希望ト意見トヲ左ニ開陳セント欲ス
 日仏銀行ハ往年、日本ノ財務官トグンツブルグ男爵トノ協議ニ其根源ヲ発シタルモノニシテ、当初ヨリ純然タル営利会社トハ其目的ヲ異ニシ居ルコトハ明白ナリ、而シテ吾々カ日仏銀行ノ株主トナリタルモ決シテ単純ニ好箇ノ投資物トシテ其株ヲ引受ケタルニ非ス、之ニ依テ日仏両国ノ関係ヲ一層密接ナラシメ、其経済的連鎖ノ欠缼ヲ補ハントスル微意ノ存シタルコトハ玆ニ明言スルヲ憚ラス、単リ株主ノミナラス日本政府並ニ日本ノ有力ナル人々カ、日仏銀行ノ設立及其発展ニ力ヲ致スハ此辺ノ期待アルカタメナリ、然ルニ日仏銀行ノ現状ハ未タ当初ノ目的ヲ十分達シタリト云フコト能ハス、然レトモ自分ハ未タ全ク失望ハセサルナリ、此度両君カ渡仏セラレテ事情ノ貫徹スルアラハ、今后ノ発展ノタメニ甚タ利益アルコトト信ス
 両君渡仏ニ際シ、自分等ノ先ツ何ヨリモ希望スルトコロハ、日仏銀行創立ニ当リ仏国政府ヨリ必スヤ多大ノ援助アリタルヘキヲ以テ、両君到着ノ上ハ仏国政府当局者ニ向テ、吾々株主感謝ノ意ヲ叙述セラルルコト是ナリ、是ト共ニ又吾人ノ感謝スルトコロハ、日本政府カ本店ニ対シ五百万円ノ預金ヲナシタルカ如キ、又東洋拓殖会社ノ社債ハ当初仏国市場ニ於テハ壱千万円募集スルノ予定ナリシヲ、政府ハ吾々ノ希望ヲ容レテ全部弐千万円ヲ、日仏銀行成立第一ノ事業トシテ、仏国ニ於テ発行スルコトヲ許可セラレタルカ如キ、最モ著シキモノニシテ、此点ニ付テハ本店ノ重役諸君モ亦吾々ト同一ナル感情ヲ有セラルルコトハ疑ヲ容レサルトコロナリ
 吾々ハ、本店重役諸君カ日本ニ対スル友情ノ大ナルコト、日本近年ノ商工業ノ発展ニ付十分ナル認識ヲ有セラルルコト、又最モ進取的ナル我商工業者ノ智慮ト勤勉トニ付キ、満足ナル信任ヲ有セラルルコトヲ疑ハス、故ニ玆ニ平常ヨリ考慮スルトコロノモノヲ述ヘント
 - 第50巻 p.353 -ページ画像 
欲ス
    一、資金融通ノ件
 仏蘭西ノ資本ヲ日本ニ融通スルニ付テハ、其形式ハ之ヲ大別シテ二トナスコトヲ得ヘシ、即チ(一)発行業務ニ依テ新ラタナル有価証券ヲ仏国市場ニ発行シ、又ハ従来日本ニ発行セラレ居ル有価証券ヲ仏国ニ輸入スルコト、(二)銀行ノ取引作用ニ依リテ手形ノ流通ヲ円満ナラシムルコト、之ナリ、発行業務ニ付テハ後段ニ之ヲ述フヘキモ、先ツ銀行ノ取引作用ニ依ル資金ノ融通ニ付キ一言センニ、従来遺憾ノ点尠カラス、今之ヲ左ニ列叙スヘシ
 イ、金額 日本ニ於テモ各銀行ノ資本金ハ欧羅巴ニ於ケルカ如ク漸次増加スルノ傾向アリ、随テ第一流ノ銀行カ日常取引スル金額ハ決シテ少額ナルモノニ非ス、是等ノ銀行ト取引ヲ開カント欲スル場合
 ニ、其金額カ余リニ少許ナルニ於テハ、其結果是等銀行ハ其手数ノ繁多ナルヲ厭フテ、終ニ其取引ヲ謝スルニ至ラン
 ロ、期限 吾々カ実行シ又ハ見聞スルトコロニ依レハ、英国ニ於テハ手形ノ期限ハ三ケ月・四ケ月又ハ六ケ月等アレトモ、引受銀行ト債務トノ間ニハ特約アリテ多クノ場合二年位ヲ最少期限トシテ、手形引受ノ契約ヲナセリ、然ルニ日仏銀行本店ノ意思ナリトシテ、東京支店ヨリ吾人ノ聞クトコロニ依レハ、多クハ三ケ月ヲ期限トシテ三ケ月後ニ於テハ債権者ノ希望ニ依リテハ返済セサルヘカラサルモノナリトノコトナリ、斯ノ如キハ単リ為替ノ危険ヲ負担スルコト多大ナルノミナラス、遠隔ノ地ニ融通スル商工業資金トシテハ不適当ナル条件ナルコトハ申スマテモナキコトナリ、此点ニ付キ一層寛容ナル条件ヲ決定スルニ非サレハ、日本ト仏国トノ手形引受業務ハ多大ノ望ヲ嘱スヘカラサルナリ
 ハ、担保 従来本店ノ希望トシテ吾人ノ聞クトコロノ条件中、最モ面白カラサル点ハ担保ニ関スルコト、之ナリ、日本ニ於テ英国ト手形ノ取引ヲナス金額ハ決シテ少許ノモノニ非サレトモ、日本ノ銀行カ未タ甞テ担保ヲ欧羅巴迄送付シタルコトヲ聞カス、然ルニ本店ニ於テハ担保物ヲ日本銀行ニ預入レ、其保護預リ証書ヲ欧羅巴ニ送付セントスルモ之ヲ斥ケ、現実ニ担保ヲ欧羅巴ノ一都市ニ預入ルルコトヲ要スト云フ、斯ノ如キハ殆ト実行ヲ望ムヘカラサルコトニ属ス況ンヤ期限ハ三ケ月以上タルコトヲ許ササルニ於テハ、本店ノ希望スルトコロハ実行シ能ハサルモノト言ハサルヘカラス、吾々カ英国諸銀行トノ取引ニ於テハ、担保ハ引受銀行ノ指定スル日本ノ或銀行ニ預入レ、若クハ日本銀行ニ保護預ヲナシ、其預リ証書ヲ欧羅巴ニ送付スルヲ常トス、此点ニ付テ本店ノ重役諸君ノ研究ト考慮トヲ煩ハスモノナリ
 ニ、利率 割引利率ハ一定セル時ノ相場ニ依ルモノナルカ故ニ、敢テ論議スル限リニ非サレトモ、借入ノ支払フ利率・手数料其他ノ総テカ、手形ヲ英国ニ売ルヨリ高キニ於テハ、日仏銀行設立ノ効果アリト云フコト能ハス、吾人ノ希望スルトコロハ、本店ハ日本トノ取引ニ於テ最好ノ条件ヲ附シ、飽クマテ支店ノ活動ニ便宜ヲ与ヘンコト、之ナリ
 - 第50巻 p.354 -ページ画像 
    二、発行業務
 発行業務ニ付テ吾々ノ知ラント欲スルトコロハ、仏蘭西ニ於テハ日本政府ノ保証セサル日本ノ有価証券ヲ発行スルコトハ、絶対的ニ不可能ナリト思惟セラルルヤ、日本近年ノ経済上ノ発達ハ各種工業ノ進歩ニ伴フテ年一年ニ増大シ、殊ニ紡績事業・砂糖精製業・製紙事業・瓦斯・電灯・水力電気、其他有望ナル事業尠カラス、是等諸会社ノ社債等ヲ、政府保証等ニ関セスシテ仏国ニテ発行スルコトハ、絶対的ニ不可能ナリヤ、又吾人ノ希望スルトコロハ、日本ニ於ケル興業債券及勧業債券ヲ仏国市場ニ発行スルコトニシテ、是等半官的債券ヲ巴里市場ニ発行セラルルハ、吾人従来ノ希望ナリ、玆ニ特書シテ重役諸君ノ研究ト尽力トヲ希望ス
    三、支那ニ於ケル事業資金
 支那カ多大ノ富源ヲ有シ居ルコトハ言ヲ俟タス、而テ日本ハ支那ト其地接近シテ且文字ヲ同フシ、日本人ニシテ支那内地ニ在ルモノ他国民ニ比シテ最モ多ク、支那ヲ研究スルニ於テモ日本人カ最好ノ地位ニ在ルハ明ナル事実ナリ、此時ニ方テ日本人ノ手ニ依リ発見セラレ若クハ獲得セラレタル企業、又ハ利権カ、日仏銀行ニ依リテ其資本ノ供給ヲ企望セラレタル場合ニ、日仏銀行ハ是ニ対シ十分ノ考慮ヲ廻ラサレンコトヲ望ム、殊ニ日本ニハ最近中国興業会社ナルモノ其資本金五百万円ヲ以テ組織セラレ、右会社ハ日本及支那ノ最モ有力ナル資本家・実業家ニ依リテ設立セラレタルモノナルカ故ニ、他日此会社カ活動スル場合ニ於テハ、多クノ有利ナル投資物ヲ発見スヘキハ、今日ヨリ予想シ得ルトコロナリ、而テ日仏銀行ハ支那ノ事業ニ要スル資金ノ仲介ヲナスニ最モ適当ナル地位ニ在ルハ、吾々ノ固ク信スルトコロナリ
    四、支店ノ利用
 日仏銀行設立当時ニ於テ、東京ニ支店ヲ設置スルノ利益ナルヲ主張シタルハ、東京ニ支店ヲ設置スルニ於テ始メテ日仏銀行カ十分其目的ヲ達シ得ヘシト信シタルカ故ナリ、日本ニ於ケル得意先ノ撰択、事業ノ性質ノ調査、資金需要ノ状況ノ調査、資本家・事業家等ト接触ヲ維持スルコト等ノタメニ、支店ノ存在カ必要ナルハ言ヲ俟タサルナリ、又英国銀行ノ如キハ支店ヲ有セサルニ拘ラス、尚ホ担保物ヲ日本ノ或銀行ニ保管セシムルニ、日仏銀行ニ於テハ日本銀行ヲ利用セス、支店ヲ利用セス、総テ担保ハ欧羅巴ニ送付セシムルト云フカ如キハ不得策ノコトナリ
 此点ニ付キテ特ニ本店重役諸君ノ考慮ヲ促シ、在東京ノ支店ノ意義ヲ宜ク認知シ、支店ノ当事者ヲ能ク信任シ、善ク働セ、東京支店ヲ十分満足ニ利用セラレテ、本銀行ノ発展ニ資セラレンコトヲ企望シテ已マサルナリ、吾人ノ日仏銀行ニ嘱望スルトコロノモノ一ニシテ足ラス、然レトモ今ハ其最モ急ヲ要シ且最モ必要ナリトスルモノヲ述ヘタリ、日仏銀行設立ノ当初ニ於テハ、日本ノ公衆ハ最モ多大ノ望ヲ嘱シタルニ拘ラス、今ヤ日仏銀行ニ対シテ失望ノ声ヲ聞クコト稀ナラス、吾人ハ此度吾々ノ信任スル渡辺、マルチニー両君カ渡仏セラルルノ機会ニ於テ、是等ノ諸点ニ付キ十分ノ研究ヲ費サレ、日
 - 第50巻 p.355 -ページ画像 
仏両国ノタメニ、又日仏両国経済界ノタメニ、日仏銀行カ活動セラレンコトヲ希望ニ堪エサルナリ、云々


(株式会社日仏銀行) 相談会議事録(DK500063k-0048)
第50巻 p.355 ページ画像

(株式会社日仏銀行) 相談会議事録   (株式会社日仏銀行所蔵)
    相談会議事録
  大正参年参月六日
         午後参時 開議
               出席者
                   男爵 渋沢栄一
                      水町袈裟六
                      早川千吉郎
                      三村君平
                      志立鉄次郎
                      青木鉄太郎
                      小野英二郎
                      渡辺千冬
先ツ志立副総裁ヨリ左ノ通述ヘラル
 予テ東京支店ヨリ ガンツブルグ男爵迄申進置キタル漢口水電公司借款ノ件ニ付、此程ニ至リ仏国ヨリ技師リシユモン氏ヲ、弐月弐拾参日ヲ以テ巴里ヲ出発セシメタル旨報知アリタルニ付テ、同氏ハ漢口水電視察ノ后ハ来朝ノ事故、此機会ヲ利用シテ日本ノ電気事業会社ノ視察ヲ乞フカ如キハ、日仏銀行ノ業務ノ上ニ有益ナル結果ヲ来スコトナキヤヲ思ヒ、今日ノ御会合ヲ煩ハシ、各位ノ御高見ヲ承ハラント欲シタル次第ナリ
右ニ続テ渡辺取締役ヨリ、当初昨年拾弐月、渋沢男爵ヨリ漢口水電ニ関スル談話アリ、続テ東亜興業会社ト交渉ノ結果、仏国ガンツブルグ男爵ト数度書信又ハ電信ヲ往復シ、遂ニ今日ニ及ヒタル来歴ヲ詳細ニ報告アリタリ
尚又昨夜古市東亜興業会社長ヨリノ談話ニ依レハ、支那政府保証ニ難関ヲ生シタル旨、併セテ報告アリタリ
右ニ付渋沢男爵ハ、左ノ如ク述ヘラル
 此際執ルヘキ手段ハ、一方ニ於テハ東亜興業会社及外務省ニ督促シテ、支那政府ノ保証ヲ得ルコトニ力ヲ竭シ、他方ニ於テハ日本ノ重ナル電気事業会社ニ技師来朝ノ旨ヲ通告シテ、外資輸入ノ希望ノ有無ヲ問合セ置クカ如キモ一法ナルヘシ、云々
各員意見交換ノ後散会ス
 于時午後五時


(株式会社日仏銀行) 相談会議事録(DK500063k-0049)
第50巻 p.355-356 ページ画像

(株式会社日仏銀行) 相談会議事録   (株式会社日仏銀行所蔵)
    相談会議事録
  大正参年四月弐拾九日
         午前九時参拾分開議
             出席者 理財局長 山崎四男六
                   男爵 渋沢栄一
 - 第50巻 p.356 -ページ画像 
                      早川千吉郎
                      志立鉄次郎
                      青木鉄太郎
                      小野英二郎
                      渡辺千冬
先ツ志立副総裁ヨリ、本日相談会開会ノ趣旨ヲ左ノ如ク述ヘラル
 今回渋沢男爵渡支セラルルニ付テハ、御帰朝迄ニハ時日モアルコトナレハ、此際俄ニ相談会ヲ催シタル次第ナリ、渋沢男爵渡支ノ御用向ハ如何ナルコトニヤ、其辺モ伺ヒ度シ云々
次テ山崎理財局長ニ対シ、従来ハ勝田次官カ相談会ニ臨席セラレタルニ、今後ハ山崎理財局長カ出席セラルルコト御承諾相成タルハ、吾々一同ノ感謝スルトコロナリト述ヘラル
次ニ渋沢男爵ハ左ノ如ク述ヘラル
 自分今回渡支ノ目的ハ決テ業務又ハ利権ヲ要求セントスルニ非ス、一ノ視察的旅行ニ過キサルナリ、然レトモ若シ適当ノ機会アルニ方リテハ、中日実業会社ノコトニ付テ述フルトコロアルハ申スマテモナシ、中日実業会社ハ自分カ第一ニ創立ヲ企画シタルトコロニシテ自分ハ当局者ニ非サレトモ、此会社カ其目的ヲ実行スルニ至ルハ、希望シテ已マサルナリ
男爵ハ尚渡辺取締役ヨリノ希望ニ対シ、日仏銀行ニ付テモ固ヨリ同様ナル考ヲ有シ居レリ、自分カ日仏銀行ノ相談役タルコトハ、自分ト日仏銀行トノ密接ナル関係ヲ示スモノニシテ、自分ハ各地ノ大官ニ面会シ、適当ノ場合ニ於テ、日仏銀行ノ精神ニ付テ十分説明スルトコロアルヘシ、云々ト述ヘラル
次ニ渡辺取締役ヨリ、本渓湖担保大倉組借款申込ニ関スル仏国ヨリノ来信ニ付、報告説明アリタリ
其他諸種ノ問題ニ付、各自意見ヲ交換シタリ
右了テ散会ス
 于時午前拾壱時也


集会日時通知表 大正四年(DK500063k-0050)
第50巻 p.356 ページ画像

集会日時通知表  大正四年       (渋沢子爵家所蔵)
二月十日  水 午前十時半 日仏銀行相談会(同行)
  ○中略。
三月十七日 水 午前十時半 日仏銀行相談会(同行)


渋沢栄一 日記 大正四年(DK500063k-0051)
第50巻 p.356 ページ画像

渋沢栄一 日記  大正四年          (渋沢子爵家所蔵)
三月十七日 晴
○上略 午前十時日仏銀行支店ニ抵リ、相談役会ニ出席ス○下略



〔参考〕集会日時通知表 大正五年(DK500063k-0052)
第50巻 p.356 ページ画像

集会日時通知表  大正五年        (渋沢子爵家所蔵)
八月廿九日 火 午後二―三時 日仏銀行渡辺氏来約(兜町)
  ○中略。
九月六日  水 午前十一時 日仏銀行相談会(同銀行)