デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

2部 実業・経済

3章 商工業
12節 電気
2款 猪苗代水力電気株式会社
■綱文

第53巻 p.305-315(DK530053k) ページ画像

明治44年10月30日(1911年)

是ヨリ先、栄一、豊川良平・仙石貢・原六郎等ト共ニ当会社設立ニ尽力ス。是日、東京商業会議所ニ於テ創立総会開カル。栄一出席シ、議長トナリテ議事ヲ司宰ス。


■資料

渋沢栄一 日記 明治四三年(DK530053k-0001)
第53巻 p.305 ページ画像

渋沢栄一 日記 明治四三年       (渋沢子爵家所蔵)
十一月八日 晴 軽寒
○上略 第一銀行ニ於テ午飧ス、後亦事務所ニ抵リテ益田孝氏ノ来訪ニ接ス、猪苗代水力電気事業ニ関シ懇々注意アリタリ○下略


銀行通信録 第五〇巻第三〇二号・第七五―七六頁 明治四三年一二月 ○猪苗代水力電気の計画(DK530053k-0002)
第53巻 p.305 ページ画像

銀行通信録 第五〇巻第三〇二号・第七五―七六頁 明治四三年一二月
    ○猪苗代水力電気の計画
今回三井・三菱を中心とし、渋沢男爵・近藤廉平・浜口吉右衛門・原六郎氏等の発企にて資本金千七百五十万円を投じ、岩代国猪苗代湖の水流を利用して東京方面に電力を供給する目的を以て、水力電気会設立の計画あり、其内容は猪苗代湖より流出する日橋川の水量は最小八百個、最大千六百個の水量を利用し得るに足るを以て、四箇所に発電所を設け、平常は六万五千馬力、夕刻後電力使用の大なる数時間は十三万馬力迄を発電し得る設計にて、明年四月工事に着手し、四十五年中には完成する予定なりと云ふ


渋沢栄一 日記 明治四四年(DK530053k-0003)
第53巻 p.305 ページ画像

渋沢栄一 日記 明治四四年       (渋沢子爵家所蔵)
七月十四日 晴 暑
○上略 又仙石貢事務所ニ抵リ、猪苗代水力電気会社発起人会ニ出席ス、畢テ午飧ヲ共ニシ○下略
   ○中略。
七月二十日 曇 暑
午前七時起床入浴シテ朝飧ヲ食ス、後相見磐氏ノ来訪ニ接ス、木村政次郎氏ノ添書ニテ猪苗代水力電気会社ノ株式ニ関スル事ヲ談ス○下略


竜門雑誌 第二七八号・第四二頁 明治四四年七月 ○猪苗代水電認可(DK530053k-0004)
第53巻 p.305-306 ページ画像

竜門雑誌 第二七八号・第四二頁 明治四四年七月
○猪苗代水電認可 青淵先生を首めとし近藤廉平・豊川良平・浜口吉右衛門・原六郎・波多野承五郎・仙石貢・白石直治の諸氏発起にて昨年九月より計画中なりし、猪苗代水力電気株式会社(資本金弐千百万円)の創立に付き、昨冬電気事業経営の認可申請中のところ、七月四日付にて逓信大臣の認可を得たるを以て愈々会社創立事務に著手すべく、十一日を以て起業目論見書を発表したるが、其目論見書に依れば総資本金弐千壱百万円にして、東京着八万六千馬力を得るの計画にて
 - 第53巻 p.306 -ページ画像 
第一期事業として壱千四百参拾万円の資本額を以て東京着馬力六万一千を得、一キロワツト時壱銭四厘売りにて年一割三分の配当を為し得るの計算なりと。


猪苗代水力電気説明書 猪苗代水力電気株式会社起業目論見書 第一一―一九頁 (明治四四年七月)刊(DK530053k-0005)
第53巻 p.306-308 ページ画像

猪苗代水力電気説明書
猪苗代水力電気株式会社起業目論見書 第一一―一九頁 (明治四四年七月)刊
    猪苗代水力電気株式会社起業目論見書
      会社ノ目的
当会社ノ目的ハ、水源ヲ猪苗代湖ニ発スル日橋川ノ流下シテ若松平原ニ至ル間ノ急勾配ヲ利用シテ電力ヲ発生セシメ、福島県下各地、及ヒ発電所東京間送電線路経過地方・東京市並ニ其附近ニ電力ヲ供給スルニアリ
      資本金
当会社ハ株式組織ニシテ、資本金総額ハ金弐千壱百万円、之ヲ四十二万株ニ分チ、一株ノ金額ヲ五十円トス、其支途ハ工事概算調ニ示スカ如シ
      土木工事設計ノ概要
当会社ノ水路ハ地形ニ応シ四段ニ区分シ、各区ニ発電所ヲ建設スルモノトス
第一水路 福島県河沼郡日橋村大字八田字戸ノ口(十六橋下約八百間)地先ニ取入口ヲ設ケ、日橋川ノ河水ヲ引用シ、隧道一個所長百間開渠延長千三百七十間、即チ総延長千四百七十間ノ水路ヲ新設シ同大字字粟畑ニ至リ、水槽ヲ経テ六条(内一条ハ予備トス)ノ鋼鉄管(内径六呎三吋)ニ依リ、有効落差三百四十九尺〇二ヲ得テ発電所ニ送水ス、排水ハ放水路ニ依リ本川ニ放流ス、水路ノ勾配ハ全線ヲ通シテ千分一トス
第二水路 同郡同村同大字字粟畑ヲ取入口トシ、隧道一個所、長四百十間(中間ニ横坑ヲ設置ス)開渠延長三百四十間、即チ総延長七百五十間ノ水路ヲ新設シ、同大字字大林ニ至リ水槽ヲ経テ五条(内一条ハ予備トス)ノ鋼鉄管(内径七呎)ニ依リ、有効落差二百二十五尺六二ヲ得テ発電所ニ送水ス、排水ハ放水路ニ依リ本川ニ合セシム水路ノ勾配ハ第一水路ト同様ナリ
第三水路 同郡同村同大字字日橋ヲ取入口トシ、隧道二個所、延長二百四十間、開渠延長七百二十間、即チ総延長九百六十間ノ水路ヲ新設シ、同大字字川廻リニ至リ水槽ヲ経テ四条(内一条ハ予備トス)ノ鋼鉄管(内径七呎)ニ依リ、有効落差百十六尺ヲ得テ発電所ニ送水ス、排水ハ放水路ニ依リ本川ニ合セシム、水路ノ勾配ハ隧道千五百分一開渠二千分一トス
第四水路 同県耶麻郡磐梯村大字大谷字打越ニ取入口ヲ設ケ、隧道一個所、長二百六十五間、開渠延長千五百九十五間、即チ総延長千八百六十間ノ水路ヲ新設シ同郡駒形村大字金橋字切立山下ニ至リ、水槽ヲ経テ四条(内一条ハ予備トス)ノ銅鉄管(内径六呎六吋)ニ依リ、有効落差二百四尺五ヲ得テ発電所ヘ送水ス、排水ハ放水路ニ依リ本川ニ放流ス、水路勾配ハ隧道千八百分一開渠二千五百分一トス
以上ノ水路並ニ発電所ノ中第一及ビ第二ニ属スルモノハ第一期工事ト
 - 第53巻 p.307 -ページ画像 
シ、他ハ之レヲ第二期工事トシテ着手スルモノトス
      電気工事設計概要
発電所ニ於テハ「フランシス」形水車ヲ以テ三相交流式発電機ニ直結シ、之レヲ逓昇変圧器ニ拠リ電圧ヲ逓昇シテ東京ニ輸送シ、東京終点ニ於ケル電線路電圧ハ十万「ヴォルト」ノ特別高圧トナシ、東京変圧所ニ於テ此電圧ヲ逓降変圧器ニ拠リテ電圧ヲ逓降セシメ、各需用者ニ供給スルモノトス
第一発電所ニ於テハ、一万一千馬力水車及六千五百「キロワット」発電機各六台(内一台ハ予備トス)ヲ据付クルモノトス
第二発電所ニ於テハ、九千馬力水車及五千「キロワット」発電機各五台(一台ハ予備トス)ヲ据付クルモノトス
第三発電所ニ於テハ、四千五百馬力水車二千五百「キロワット」発電機各四台(内一台ハ予備トス)ヲ据付クルモノトス
第四発電所ニ於テハ、七千五百馬力水車及四千二百「キロワット」発電機各四台(内一台ハ予備トス)ヲ据付クルモノトス
電線路ハ各発電所ヲ連絡スル所謂連絡線、及東京変圧所ニ至ル主幹送電線路共ニ架空吊線式ニシテ、全部鉄塔ヲ用ヒ裸導線ヲ架設ス、電線路ハ総テ複線トシ、主幹送電線路ニハ各鉄塔ニ二組宛ノ導線ヲ架設シ連絡線路ハ各鉄塔ニ一組宛ノ導線ヲ架設ス、主幹送電線路ハ福島県ヨリ栃木・茨城・埼玉ノ三県ヲ経テ東京府ニ入リ、東京変圧所ニ入ルモノニシテ其亘長百五十哩ナリ、第一・第二ノ発電所間、及主幹送電線中二組ノ鉄塔ト三組ノ導線トハ第一期工事トシ、第三・第四ノ発電所第二・第三・第四発電所間電線路、及主幹送電線ノ残余ノ一組ノ導線ハ第二期工事トシテ施工スルモノトス
      水量及馬力数
水量ハ説明書ニ記載セル如ク豊富ナルモノニシテ、発電所ニ於テ理論馬力数ヲ積算スレハ十二万九千四百五十馬力ニ昇ル、之ヲ東京変圧所ニ送電シテ尚八万六千馬力ヲ算スルコトヲ得
      工事費概算 (全部ニ対スル分)
 金弐千壱百万円          資本金総額
   内訳
  金弐拾五万円           創立費
  金参百参万四千五百八拾五円    発電水路費
  金千五百七拾壱万六千弐百参拾七円 電気工事費
  金弐拾六万七千参百参拾円     本社費
  金弐拾四万六千五百円       測量及工事監督費
  金百四拾八万五千参百四拾八円   予備費
      事業上ノ収支概算 (全部ニ対スル分)
一金参百九拾弐万四千四百八拾円   収入
 但東京変圧所ニ於テ販売シ得ル電力ノ総計ハ
  「キロワット」数      六四、〇〇〇(東京着馬力 八六、〇〇〇)
  ニシテ全部ノ電力ヲ仮リニ平均
  一年ヲ通シテ荷重率         五〇「パーセント」
  一「キロワット」時ノ値段  壱銭四厘(壱馬力約四五円六〇相当)トス
 - 第53巻 p.308 -ページ画像 
一金九拾万八千百七拾壱円       支出
一金参百壱万六千参百九円       差引利益金
   内
  金拾五万八百拾五円        法定積立金
  金弐拾弐万八千参百円       資本減損償却金
  金弐百六拾参万七千百九拾四円   純利益金
   但資本金弐千壱百万円ニ対シ壱ケ年約壱割弐分五厘ノ利率ニ当ル
      工事費概算   (第一期事業ニ対スル分)
一金壱千四百参拾万円        資本金総額
   内訳
  金弐拾五万円           創立費
  金壱百八拾四万六百拾円      発電水路費
  金壱千七拾万四千百五拾壱円    電気工事費
  金弐拾万八千五百円        本社費
  金拾七万壱千円          測量及工事監督費
  金壱百拾弐万五千七百参拾九円   予備費
      事業上ノ収支概算(第一期事業ニ対スル分)
一金弐百七拾八万六千六百八拾七円  収入
 但東京変圧所ニ於テ販売シ得ル電力ノ総計ハ
  「キロワット」数      四五、四四五(東京着馬力 六一、〇〇〇)
  ニシテ全部ノ電力ヲ仮リニ平均
  一年ヲ通シテ荷重率         五〇「パーセント」
  一「キロワット」時ノ値段    壱銭四厘(壱馬力約四五円六〇相当)トス
一金六拾四万九千五拾円       支出
一金弐百拾参万七千六百参拾七円   差引利益金
   内
  金拾万六千八百八拾弐円      法定積立金
  金拾六万九千円          資本減損償却金
  金百八拾六万壱千七百五拾五円   純利益金
   但シ資本金壱千四百参拾万円ニ対シ壱ケ年約壱割参分ノ利率ニ当ル
  明治四十四年七月         右発起人
                    男爵 渋沢栄一
                       近藤廉平
                       豊川良平
                       浜口吉右衛門
                       原六郎
                       波多野承五郎
                       仙石貢
                       白石直治


猪苗代水力電気株式会社定款 第一―六頁 (明治四四年七月)刊(DK530053k-0006)
第53巻 p.308-311 ページ画像

猪苗代水力電気株式会社定款 第一―六頁 (明治四四年七月)刊
    猪苗代水力電気株式会社定款
 - 第53巻 p.309 -ページ画像 
      第一章 総則
第一条 本会社ハ猪苗代水力電気株式会社ト称ス
第二条 本会社ハ福島県下猪苗代湖水ヲ利用シ、同湖ヨリ流下スル日橋川沿岸ニ発電所ヲ設置シ、電力ヲ発生シ之ヲ供給販売スルヲ以テ目的トス
第三条 本会社ノ資本総額ハ金弐千壱百万円トス
第四条 本会社ハ本店ヲ東京市ニ置ク
第五条 本会社ノ営業年限ハ会社設立ノ日ヨリ起算シ満四十年トス
第六条 本会社ノ公告ハ、本店又ハ支店所在地ノ管轄区裁判所ノ商業登記ヲ公示スル新聞紙ニ掲載ス
第七条 株主ハ本会社ノ定メタル式ニ拠リ印鑑ヲ提出シ、且ツ住所ヲ届出置クヘシ之ヲ変更シタルトキ亦同シ
 住所カ外国ニアルトキハ、日本ニ於ケル仮住所ヲ届出ツヘシ
      第二章 株式
第八条 本会社株式ノ総数ヲ四拾弐万株トシ、一株ノ金額ヲ金五拾円トス
第九条 本会社ノ株券ハ壱株券・拾株券・百株券・千株券ノ四種トス
第十条 本会社ノ株主ハ無記名式株券ヲ請求スルコトヲ得ス
第十一条 株金払込ノ金額期日場所ハ取締役会ニ於テ決定シ、少クトモ払込期日二週間前ニ各株主ニ催告ス
第十二条 本会社株主カ株金払込期日迄ニ払込ヲ為ササルトキハ、其ノ払込ムヘキ金額ニ対シ延滞日数ニ応シ金百円ニ付一日金四銭ノ割合ヲ以テ延滞利息ヲ支払ヒ、尚延滞ヨリ生シタル諸費用及損害ヲ賠償スヘシ
第十三条 株式ノ名義書換、株券ノ合併、分割、氏名、其他ノ更正、株券ノ毀損、亡失ニヨル再渡ニ就テハ本会社ノ定メタル株式取扱手続ニ拠ルヘシ
第十四条 株式ノ名義書替、及氏名其他ノ更正ハ株券一枚ニ付金拾銭株券ノ合併分割、及再渡ハ壱枚ヲ作成スル毎ニ金弐拾銭ヲ請求者ヨリ手数料トシテ仕払フヘシ
第十五条 亡失シタル株券ノ再渡ハ亡失株券ノ無効タル旨ヲ二種以上ノ新聞紙ニ公告シ、六十日ヲ経テ新株券ヲ交附ス、但シ其公告ハ三日間トシ其ノ公告費用ハ請求者ノ負担トス
第十六条 本会社ハ公告ヲナシ、毎期決算期ノ翌日ヨリ三十日以内株式名義書換ヲ停止ス
      第三章 総会
第十七条 総会ハ定時・臨時ノ二種ニ分チ、定時総会ハ毎年四月・十月ノ二回ニ招集シ、臨時総会ハ取締役若クハ監査役ニ於テ必要ト認メタルトキ、又ハ本会社資本ノ十分ノ一以上ニ当ル株主ヨリ請求アリタルトキ之ヲ招集ス
第十八条 総会招集ノ通知書ハ少クトモ会日二週間前ニ各株主ニ発送ス、但通知書ニハ会議ノ目的タル事項ヲ記載ス
 総会ノ議事ハ、前項通知事項ノ外他議ニ渉ルヲ得ス
第十九条 株主カ代理人ヲ以テ議決権ヲ行ハントスルトキハ、本会社
 - 第53巻 p.310 -ページ画像 
ノ株主ニ限リ代理セシムルコトヲ得、但委任状ノ提出ヲ要ス
第二十条 議決権ハ一株ヲ以テ一個トス、商法及定款ニ別段ノ規定アル外総会ノ決議ハ、出席株主議決権ノ過半数ニヨリテ之ヲ定ム
 決議ニ際シ、可否同数ナルトキハ会長之ヲ決ス
第二十一条 総会ノ会長ハ社長又ハ専務取締役之ニ当ル、社長又ハ専務取締役差支アルトキハ他ノ取締役之ニ任ス、取締役差支アルトキハ出席株主中ヨリ之ヲ選挙ス
第二十二条 総会ノ議事ハ其要領ヲ摘録シ、会長及出席監査役之ニ署名捺印シ本会社ニ保存ス
      第四章 取締役及監査役
第二十三条 本会社ニ取締役九名以下、監査役三名以下ヲ置ク
第二十四条 取締役ハ互選ヲ以テ社長一名専務取締役一名ヲ選任ス
第二十五条 取締役ハ本会社ノ株式五百株以上、監査役ハ弐百株以上ヲ有スルモノノ中ヨリ総会ニ於テ之ヲ選任ス
第二十六条 取締役ノ任期ハ三年、監査役ノ任期ハ一年トス
第二十七条 取締役カ監査役ニ供托スヘキ株券ハ本会社ノ株式五百株トス
第二十八条 取締役又ハ監査役ニ欠員ヲ生シタルトキハ、補欠選任ヲ為スヘシ
 其当選者ハ前任者ノ残任期間在任スルモノトス、但欠員ヲ生スルモ法律上規定ノ人員アリテ業務ニ支障ヲ生セサル場合ハ、補欠選任ヲ猶予スルコトヲ得
第二十九条 取締役及ヒ監査役ノ報酬ハ総会ノ決議ヲ以テ之ヲ定ム
      第五章 計算
第三十条 本会社ノ総勘定ハ一ケ年ヲ二期ニ分チ、四月ヨリ九月迄ヲ前半期トシ、十月ヨリ翌年三月迄ヲ後半期トシ、各期ニ決算ヲナスヘシ
第三十一条 毎季利益金ノ配当ヲ受クル株主ハ、其ノ決算期末日ノ現在者トス
      第六章 雑則
第三十二条 当会社ノ負担スヘキ創立費用ハ金弐万円ヲ上ラサルモノトス
第三十三条 創立総会ニ於テ選任セラレタル取締役ノ任期ハ明治四十七年四月、監査役ノ任期ハ明治四十五年四月ニ終了スルモノトス
右定款ノ相違ナキコトヲ証スル為メ玆ニ署名捺印ス
  明治四十四年七月十四日
            東京市深川区福住町四番地
                男爵 渋沢栄一印
            東京市牛込区市ケ谷田町一丁目八番地
                   近藤廉平印
            東京市小石川区水道町三十七番地
                   豊川良平印
            東京市日本橋区小網町三丁目二十七番地
                   浜口吉右衛門印
 - 第53巻 p.311 -ページ画像 
         東京府荏原郡品川町大字北品川宿三百二十五番地
                   原六郎印
            東京市麹町区上二番町十三番地
                   波多野承五郎印
            東京市麻布区富士見町二十一番地
                   仙石貢印
            東京市麻布区飯倉町四丁目二十二番地
                   白石直治印
   ○右定款中第五条ノ「営業年限」ヲ「存立時期」ニ訂正シ、第六条ノ「又ハ支店」ノ四字ヲ削除ス。明治四十五年四月二十五日第一回株主総会ニ於テ承認。


(八十鳥親徳)日録 明治四四年(DK530053k-0007)
第53巻 p.311 ページ画像

(八十鳥親徳)日録 明治四四年    (八十島親義氏所蔵)
七月二十八日 曇 涼
朝出勤、仙石貢氏ヲ其事務所ニ訪フ、猪苗代水電ノ事ニ関シ、男爵ノ使トシテ也○下略
   ○中略。
九月十八日 晴 暑シ
朝出勤、男爵感冒出勤ナシ、命ニ依リ猪苗代電気発起人会ニ臨ム、仙石・白石・近藤廉平新男爵、豊川・荘・原六等ノ歴々揃ナレトモ開業前若干ノ利足配当ヲ為スヤ否ヤノ問題ニ対シ之ヲ決シ兼ネ、又自説ヲ以テ指導スル人モナク、結局此件ハ次回廻トナル、其他未払込一万九百株ノ催告其他数件評議アリキ○下略


(猪苗代水力電気株式会社) 第一回報告書 第一―三頁 (明治四五年)刊(DK530053k-0008)
第53巻 p.311-312 ページ画像

(猪苗代水力電気株式会社) 第一回報告書 第一―三頁 (明治四五年)刊
    第一回報告書(自明治四十四年十月三十日 至同四十五年三月三十一日)
○上略
      営業報告
     創立総会
明治四十四年十月三十日東京市麹町区有楽町一丁目一番地東京商業会議所ニ於テ創立総会ヲ開ク、出席株主委任状共一千四百四人、此株数三十四万九千五百四十七箇ニシテ、各法定員数ニ達シタルヲ以テ創立事務ノ報告ヲナシ左記事項ノ決議及選挙ヲ為セリ
 一、創立費支出承認ノ件
   金壱万九千八百四拾六円七拾八銭 創立費支出総額
 一、定款ノ承認及必要ナル修正ニ関スル件
   定款第二十六条第三十一条ヲ左ノ通リ修正セントス
    第二十六条中監査役ノ任期「一年」トアルヲ「二年」ト改ム
    第三十一条中毎期利益金ノ下ニ「又ハ利息」ノ四字ヲ加フ
   定款中第六章雑則以下ヲ削除シ、新ニ第五章中ニ左ノ一条ヲ加フ
    第三十二条 本会社ハ開業ヲ為スニ至ルマテ年五分ノ利息ヲ株主ニ配当ス
 一、取締役監査役ノ選挙
 - 第53巻 p.312 -ページ画像 
   当選者左ノ通リ
   取締役 豊川良平  仙石貢   近藤廉平
       白石直治  原六郎   浜口吉右衛門
       荘清次郎  松方正作  若尾民造
   監査役 朝田又七  町田忠治  各務幸一郎
 役員当選後直ニ商法第百三十四条ノ調査ヲ了シ、監査役各務幸一郎取締役及監査役ヲ代表シテ調査事項ノ適法ナルコトヲ報告ス
 一、取締役及監査役ニ対スル報酬ノ件、
   一、金弐万五千円 取締役及監査役報酬年額
 一、創立総会ハ明治四十四年七月四日附電第二一五九号ノ一電気事業許可命令書記載ノ条項ヲ遵守シ営業ヲ為スヘキコトヲ決議スルノ件


竜門雑誌 第二八五号・第四二頁 明治四五年二月 ○猪苗代水電創立総会(DK530053k-0009)
第53巻 p.312 ページ画像

竜門雑誌 第二八五号・第四二頁 明治四五年二月
○猪苗代水電創立総会 猪苗代水力電気株式会社にては、一月三十日午後一時より東京商業会議所に於て創立総会を開き、仙石貢氏の発議にて、青淵先生会長席に着き、仙石氏の創立事務報告に次で工学博士白石直治氏より(一)水量は極て豊富にして、会社は灌漑用水に障礙を加へざる範囲内に於て、優に三十五億立方尺の水を利用し得ること(二)会社は湖水沿岸の住民と利害関係を一にせるを以て、反対を受くるの理由なきこと(三)電力の輸送に十万ヴオルトの高圧電気を使用するは建設費を節約せしむるの趣旨に出でたるものにして、十万ヴオルトを以て特に危険視し、甚しきは我国に於て絶対不可能となすが如きは全く門外漢の観測にして毫も耳を傾くるに足らざること(四)会社は電力の販路に就て注意を怠らざる積りなれども、明治五十年に至らば東京市内に於て需要する電力は約二十万馬力に達すべく、既設会社及本社の工事完成の暁に於ても供給過多に陥る虞れなきを以て株主は意を安んじて可なり、況して会社は奥羽線及び岩越線中急勾配の個処に電力を供給することに就て鉄道院と内約あれば、販路に窮することは、絶対に之れなかるべき旨の説明あり、終つて当日の議題たる(一)創立費一万九千八百四十六円七十八銭支出承認の件(二)定款の承認及び必要なる修正に関する件(三)取締役及び監査役に対する報酬(二万五千円)の件は何れも満場の承認を得て可決し、取締役及び監査役の選挙は会長の指名に決し、青淵先生より左の諸氏を指名したり
 取締役 豊川良平・仙石貢・白石直治・近藤廉平・荘清次郎・松方正作・原六郎・若尾民造・浜口吉右衛門
 監査役 朝田又七・町田忠治・各務幸一郎
尚ほ議事終了後取締役及び監査役より、商法百三十四条に拠る調査事項を報告し、三時頃散会したり、因に社長には仙石貢氏、専務取締役に白石直治氏就任することに内定せりと。
   ○右記事冒頭ニ一月三十日ト記セルハ誤ニシテ十月(明治四十四年)三十日ヲ正トス。
 - 第53巻 p.313 -ページ画像 

渋沢栄一 日記 明治四四年(DK530053k-0010)
第53巻 p.313 ページ画像

渋沢栄一 日記 明治四四年       (渋沢子爵家所蔵)
十二月十二日 半晴 寒
○上略 午後五時、浜町常盤屋ニ抵リ、猪苗代水電会社ノ宴会ニ出席ス、桂・林・原・後藤其他ノ関係官庁ノ人々来会ス、一場ノ謝詞ヲ述ブ、夜十時散会帰宿ス


原六郎翁伝 原邦造編 中巻・第三五七―三五八頁 昭和二年一一月刊〔昭和一二年一一月〕(DK530053k-0011)
第53巻 p.313 ページ画像

原六郎翁伝 原邦造編 中巻・第三五七―三五八頁 昭和二年一一月刊
 ○後篇 第十章 其他の企業興隆に対する翁の貢献
    第一節 東京電灯会社と猪苗代水力電気会社
○上略
当時翁○原六郎が既に猪苗代水力電気株式会社設立の発起人に加はつてゐたことは勿論である。同年○明治四十四年三月二十五日の発起人会では資本金五千万円に対する各発起人の持株並びに引受株数が決定せられた。更に六月には会社設立の認可を得、七月十四日の発起人会では渋沢男を議長として定款が議決せられた。その間翁は大倉喜八郎氏・村井吉兵衛氏・若尾幾造氏・安田善次郎氏等を誘つて株主に引き入れ、自ら壱万七千百株を引受けてゐる。○中略
 かやうにして猪苗代水力電気株式会社は成立し、その創立総会は同年十月三十一日《(三十)》に開かれた。その日の模様を翁自ら次のやうに記してゐる。
 「猪苗代水電創立総会に出席す。渋沢男会頭にて一時開会す。定款修正、創立費弐万余円、其他承諾の後、役員選挙には取締に豊川・原・浜口・仙石・白石・荘内《(衍カ)》・若尾・近藤・松方の九名を、又監査役に朝田又七・町田忠治・各務幸一郎の三名を選び、創立費壱万九千円なり。白石博士の説明によれば電圧の十万五千ボルトは何の支障もなき事。東京市の電力需要は明治五十年には二十万馬力を要すべし云々」
 即ち第一期工事は猪苗代湖の豊富な水力を利用して三万七千五百キロワットの電力を起し、東京府下尾久町田端変電所迄約百四十哩の間を十一万五千ヴォルトの高圧を以て送電する計画が樹てられたのである。同年十一月八日に開かれた最初の重役会では取締役・監査役全員出席し、重役会開催日の事、工事費の事、技術的に非常に貢献のあつた仙石・白石両博士に対する創立報酬などが決められた。○下略
   ○三月二十五日発起人会ニ栄一出席セズ。
   ○右記事中若尾幾造トアルハ若尾民造ノ誤ナランカ。


東京電灯株式会社開業五十年史 同社編 第一二四―一二五頁 昭和一一年八月刊(DK530053k-0012)
第53巻 p.313-314 ページ画像

東京電灯株式会社開業五十年史 同社編 第一二四―一二五頁 昭和一一年八月刊
 ○第三期 飛躍時代(大正元年より同末期迄)
    四 電力卸売事業の勃興
○上略
 明治四十二・三年の交仙石貢・白石直治両博士等は福島県猪苗代湖の水利の有望なることに着目して、猪苗代湖の日橋川水系に水利権を有する東北電力・日本水力電気両社の権利を承継し、一方猪苗代水利使用の開拓者たる安積疏水組合とも交渉して、天然の大貯水池たる猪
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苗代湖の豊富なる水力を利用し、第一期工事として三万七千五百キロワットの電力を発生し、東京府下尾久町田端変電所迄約百四十哩の間を十一万五千ヴオルトの高圧を以て送電する計画を樹立した。同計画は明治四十五年三月起工、大正三年十一月一部竣成し、翌四年三月に至つて完成した。この長距離高圧送電事業は当時我国電気界に於ては真に破天荒のことに属せるのみならず世界に於ても第三位と称され、その成功は本邦長距離送電事業の発達に大いに貢献する所があつた。
○下略



〔参考〕日下義雄伝 同伝記編纂所編 第二四〇―二四一頁 昭和三年三月刊(DK530053k-0013)
第53巻 p.314 ページ画像

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〔参考〕渋沢栄一書翰 八十島親徳宛 (明治三二年)八月一七日(DK530053k-0014)
第53巻 p.314 ページ画像

渋沢栄一書翰 八十島親徳宛 (明治三二年)八月一七日 (八十島親義氏所蔵)
一書申進候、然者過日御申聞之日橋川水利組合之事ハ一昨夜日下○義雄 佐治○幸平 両氏ニ申談候処、共ニ存立を企望之由ニ候、尤も連名中両人ハ出金六ツケ敷由ニ候得共、其他ハ差支無之筈、就而楠本○正隆・梅浦○精一・浅野○総一郎等ヘハ当方より再応申遣し、是非出金為致、既ニ仕払たる費用ハ差引残高ハ第一銀行ニ預ケ置候積ニ申談置候、又其出納其外之取扱ハ佐治氏相任し候筈ニ候、就而ハ別紙○欠ク 貴方ヘ相廻し置候間佐治も出京中ニ付一応御引合被成前陳東京三人ヘ之掛合方御取斗可被成候、右之段昨日失念せしニ付書状ニて申進候 匆々
  八月十七日
                         栄一
    八十島親徳殿



〔参考〕(八十島親徳)日録 明治三七年(DK530053k-0015)
第53巻 p.314-315 ページ画像

(八十島親徳)日録 明治三七年    (八十島親義氏所蔵)
 - 第53巻 p.315 -ページ画像 
九月廿日 終日雨
○上略 四時ヨリ王子ニ至リ、主人公ニ拝面ノ上○中略 日橋川水力電気組合処分ノ件○中略 陳上指図ヲ乞ヒ、夕食ヲ共ニ命セラレ緩話、十時帰宅ス



〔参考〕渋沢栄一 日記 明治三八年(DK530053k-0016)
第53巻 p.315 ページ画像

渋沢栄一 日記 明治三八年      (渋沢子爵家所蔵)
二月二十四日 晴 軽暖
○上略 九時四十六分発ノ汽車ニテ兜町事務所ニ抵リ会津水力電気組合ノ会合ヲ開ク、浅野・日下・佐治・梅浦氏等来会ス○下略
   ○会津水力電気組合ナルモノ明ラカナラザレドモ、日本水力電気株式会社ノ母胎ナラント思量ス。