デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.3.6

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

2部 実業・経済

7章 経済団体及ビ民間諸会
2節 其他ノ経済団体及ビ民間諸会
7款 東京商工奨励館設立期成会
■綱文

第56巻 p.318-326(DK560090k) ページ画像

大正6年10月(1917年)

是ヨリ先、東京府ニ於ケル商工業助長機関設置ノ機運昂リ、是月、当期成会組織セラル。栄一、推サレテ会長トナリ、爾後、其建設資金ノ募集ニツキ、尽力スルトコロ少ナカラズ。七年十月、当期成会ハ右醵金ヲ東京府ニ寄付シ、之ニヨリ十年十月、府立東京商工奨励館ノ建設成ル。栄一、其顧問ニ挙ゲラレ、在任歿年ニ及ブ。


■資料

集会日時通知表 大正六年(DK560090k-0001)
第56巻 p.318 ページ画像

集会日時通知表  大正六年        (渋沢子爵家所蔵)
七月廿四日 火 午前十時 商工奨学館《(励)》ノ件(帝国ホテル)


東京商工奨励館設立趣意書 第一―六頁 刊(DK560090k-0002)
第56巻 p.318-320 ページ画像

東京商工奨励館設立趣意書  第一―六頁 刊
    東京商工奨励館設立趣意書
吾カ国商工業ハ、時局ノ影響ヲ受ケ異常ナル隆昌ヲ来シタリ、即チ世界市場ニ於ケル先進工業国ノ供給杜絶ハ、著シク本邦製品ニ対スル需要ヲ増加シ、為メニ過去三箇年ニ亘リテ無慮十二億円ノ輸出超過ヲ見ルニ至レリ、之ヲ東京府ノミニ就テ見ルモ、工産額大正二年度ニ於テ二億三千七百万円ナリシモノ、昨年度ニ於テハ実ニ一躍四億四千七百万円ニ達シ、其ノ工場数ノ如キ大小併セテ正ニ一万三千、従業者及職工十六万人ヲ算スル現況ニ進ミタリ
然レトモ、斯ノ如キ経済界ノ好況ハ果シテ永続スヘキモノナリヤ否ヤ大ニ疑問トスル所ナリ、若シ吾カ国民ニシテ目前ノ小利ニ安ムシ、戦後ノ大計ヲ忽ニセムカ、今日ノ好況ハ急転シテ大ナル不況ニ陥ルコト絶無ナリトハ何人モ断定スルコト能ハサラム、殊ニ戦後列強カ戦争ニ由リテ蒙レル創痍ヲ癒セムカ為メ、国内ノ産業ヲ振興シ、国民ノ経済力ヲ活用セムトシテ、アラユル手段ニ出ツヘキコトヲ想見スルトキハ今日ニ於テ戦後準備ノ必要益々切ナルヲ感セサルヲ得ス
戦後経済界ニ対スル準備トシテ考慮スヘキモノ 一、製品ノ改良 二販路ノ拡張 三、生産能率ノ増進等最モ重要ナル事項タルヘシ、而シテ此ノ目的ヲ達スルノ方法多々アルヘシト雖、商工業者ノ中心トナリテ、実地ニ其ノ指導ヲ与フル設備ノ完成ハ正ニ焦眉ノ急ニ属スト謂ハサルヘカラス
斯ノ如キ商工助長機関ハ夙ニ各府県其ノ必要ヲ認メ、之カ建設ヲ企図セルモノ尠カラス、就中大阪府ニ於ケル工業試験場並ニ商品陳列館、愛知県ニ於ケル工業研究所並ニ商品陳列館ノ如キハ各々其ノ設立ニ鉅資ヲ投シ、同地商工業者ノ為メニ年年数万件ノ試験分析ノ依頼ニ応シ又ハ絶エス製品見本ヲ陳列シ、取引ノ仲介ヲ試ミ、営業者ヲ指導シ、製品改良販路拡張ニ意ヲ須ヒ、其ノ効果大ニ見ルヘキモノアリ、然ル
 - 第56巻 p.319 -ページ画像 
ニ吾カ東京府ニ於テハ前述ノ如ク巨額ノ工産物ヲ有スル大工業地ナルニ拘ハラス、従来何等斯種施設ノアラサリシハ最モ遺憾ニ堪ヘサル所ニシテ、是レ吾人カ今回東京商工奨励館ヲ建設シ、本府ニ於ケル商工業ノ中心設備タラシメムコトヲ企図セル所以ナリ、今其ノ事業ノ大要ヲ挙クレハ左ノ如シ
一、工業原料並ニ製品ノ試験鑑定分析ヲ行ヒ、優良品製作ノ方法ヲ研究シテ其ノ結果ヲ公表スルノ外、製造者躬カラ時々遭遇スル技術上ノ疑問ニ対シ親切ニ応答シ、或ハ共ニ之ヲ研究シ、以テ指導誘掖ノ任ヲ竭スコト、是レ本府下ニ於ケルカ如ク中以下製造家カ全体ノ五割五分以上ヲ占ムル地ニ於テ殊ニ必要ナル事項トス
二、簡易ニシテ而モ実用ニ適スル斬新ナル機械類ヲ陳列シ、一般工業家ニ機械使用ノ有利ナルコトヲ実地ニ知ラシメ、併セテ之ニ関スル発明ヲ助長スルコト、本府ノ如ク工産品ノ大部分カ手工業者若ハ簡単不備ナル機械道具ニ依テ製作セラルル地ニ於テハ最モ必要ナル事項ナリ
三、商品見本並ニ参考品陳列場ヲ設ケ、当業者ヲシテ実地ニ海外販路就中需要者ノ嗜好流行ノ変遷等ヲ知ラシムル外、尚専門ノ調査員ヲ置キ其ノ調査ヲ為サシメ、実地並ニ調査ノ二方面ヨリ製品改善ヲ促シ、同時ニ内外商取引ノ仲介ヲ行ヒ、又図案相談部ヲモ併置スルコト
四、建物ノ一部ヲ集会所ニ充テ、商工業ニ関スル講話会・展覧会・競技会・品評会等ニ供スルコト、是レ多衆ノ会合ニ適スル設備ヲ欠ク現在ニ於テ殊ニ其ノ必要ヲ感スル所ナリ
五、府下店員職工ノ修養慰安其ノ他地位ノ改善ヲ計リ、以テ業務ノ能率ヲ増進スルコトニ努ムルコト、是レ企業者ト被傭者トノ関係ヲ益益厚カラシムルノ必要上特ニ施設ヲ望ム事項ナリ
以上五項ハ将ニ設立セムトスル東京商工奨励館ノ主トシテ行ハムトスル任務ナリ、幸ニ大方ノ賛成ヲ得、本館設立ノ暁ニ於テハ、本府商工業界ノ亨クル利益蓋シ莫大ナルモノアルヘシ、希クハ之カ設立ニ関シ十分ナル援助ヲ与ヘラレムコトヲ
参考
      商工奨励館ノ事業
一、当業者ノ為メ若ハ其ノ依頼ニ依リ工業製品ノ製作技術ニ関スル試験ヲ行ヒ、又ハ工業用原料及製品ノ鑑定分析ヲ行フコト
二、主トシテ小規模工業者ニ要スル機械ノ蒐集又ハ寄贈ヲ受ケ、之カ運転ヲ行ヒ、縦覧ニ供シ、並ニ之ヲ実地ニ使用セシムルコト、機械器具ノ質問ニ応答シ及実地指導ヲ行フコト
三、本府製品ノ見本参考品ノ陳列
四、本府製産品ノ展覧会・品評会及競技会ノ開催
五、海外市場実地ノ踏査及販路拡張ノ幇助
六、商工ニ関スル図書・雑誌・図案・標本類ノ蒐集閲覧、報告案内等ノ発刊頒布
七、意匠・図案・広告・商標及店頭装飾ノ指導
八、職工従業者地位ノ改善、工業知識ノ普及、業務能率ノ増進等ニ関
 - 第56巻 p.320 -ページ画像 
スル研究並ニ施設
   ○東京商工奨励館建設配置図略ス。


東京商工奨励館設立期成会規約(DK560090k-0003)
第56巻 p.320 ページ画像

東京商工奨励館設立期成会規約    (渋沢子爵家所蔵)
(印刷物)
第一条 本会ハ東京商工奨励館設立期成会ト称ス
第二条 本会ノ事務所ヲ東京市内ニ置ク
第三条 本会ハ東京商工奨励館ヲ設立シ生産品ノ改善、海外販路ノ拡張其ノ他府下商工業ノ発達ヲ図ルヲ以テ目的トス
第四条 ○略ス
第五条 東京商工奨励館ノ建設費ハ有志ノ寄附金ニ依リ、其ノ管理経営ヲ東京府ニ請フモノトス
第六条 本会ニ顧問・賛助員及ビ左ノ役員ヲ置ク
     会長      壱名
     副会長     弐名
     常務委員    若干名
     評議員     若干名
第七条 本会ノ役員ハ発起人ニ於テ之ヲ推挙ス
第八条 会長ハ本会一切ノ事務ヲ統轄シ、常務委員会及評議員会ノ議長トナリ本会ヲ代表ス
 副会長ハ会長ヲ補佐シ会長ノ代理ヲナス
 常務委員ハ本会ノ常務ヲ処理ス
 評議員ハ会長ノ諮問ニ応シ重要事項ノ協議ニ参与ス
第九条 本会ノ議事ハ出席者ノ過半数ヲ以テ決ス
第十条 本会ノ経費ハ寄附金及雑収入ヲ以テ之ニ充ツ
第十一条 寄附金ハ拾円以上トシ、寄附者ノ氏名並ニ収支決算ハ新聞紙上ヲ以テ報告ス
第十二条 本会ハ東京商工奨励館ノ設立及其ノ附帯事項ノ終了ヲ以テ解散ス
第十三条 本規約施行ニ関シ必要ナル事項ハ常務委員会ノ議決ヲ以テ之ヲ定ム
    以上


青淵先生職任年表(未定稿) 昭和六年十二月調 竜門社編 竜門雑誌第五一九号別刷・第一九頁 昭和六年一二月刊(DK560090k-0004)
第56巻 p.320 ページ画像

青淵先生職任年表 (未定稿) 昭和六年十二月調 竜門社編
                竜門雑誌第五一九号別刷・第一九頁 昭和六年一二月刊
    大正年代
 年  月
 六 一〇 ―東京商工奨励館期成会長―。大、一一、四、―〃館顧問―昭和六、一一。


渋沢栄一 日記 大正七年(DK560090k-0005)
第56巻 p.320-321 ページ画像

渋沢栄一 日記  大正七年       (渋沢子爵家所蔵)
二月二十五日 晴 寒気厳ナラス湯河原ト差異ナキニ似タリ
○上略 午後二時東京府知事井上氏来リ、府下奨励館ノ事ニ付懇々依頼セラル、依テ承諾ヲ与フ○下略
 - 第56巻 p.321 -ページ画像 
   ○中略。
三月十四日 晴 日ヲ追フテ寒威ノ減スルヲ覚フ
○上略 五時事務所ニ抵リ、上山次官・水上氏・星野錫氏等ノ来訪ニ接ス
(欄外記事)
 ○上略 星野氏ハ商工奨励会ノ事ヲ談ス
 ○下略
   ○中略。
三月二十二日 晴
○上略 十一時半帝国ホテルニ抵リ、東京府商工奨励館建設ノ会議ニ列席ス、議事畢リテ午飧ヲ為シ ○下略


集会日時通知表 大正七年(DK560090k-0006)
第56巻 p.321 ページ画像

集会日時通知表  大正七年       (渋沢子爵家所蔵)
三月廿二日 金 午前十一時 商工奨励館ノ件(帝国ホテル)
   ○中略。
三月三十日 土 午前十一時 商工奨励会ノ件(築地精養軒)


竜門雑誌 第三五九号・第七六―七七頁 大正七年四月 ○東京商工奨励館設立進捗(DK560090k-0007)
第56巻 p.321 ページ画像

竜門雑誌  第三五九号・第七六―七七頁 大正七年四月
○東京商工奨励館設立進捗 五十八万円の予算を以て東京府庁構内に建設せらるべき東京商工奨励館は、会長に青淵先生、副会長に藤山雷太・星野錫氏、顧問に早川千吉郎氏其他知名の士、常議委員には商業会議所員及び実業組合員を挙ぐることに内定せるやにて、三月二十二日帝国ホテルに第一回の打合せ会を催したる由なるが、追て三月三十日正午築地精養軒に於て都下の各商工組合長二百余名を招待して午餐会を催し、席上青淵先生及び星野副会長等より同館設立の趣旨を説明する所あり、各組合長之が評議員となりて寄附金募集方に尽力せられんことを希望せられ、各組合長亦其趣旨を賛して閉会を告げ、午後一時散会せりと云ふ。


渋沢栄一 日記 大正七年(DK560090k-0008)
第56巻 p.321 ページ画像

渋沢栄一 日記  大正七年       (渋沢子爵家所蔵)
四月十三日 雨 終日雨降ル気候寒シ桜花風雨ノ為ニ散乱ス
○上略 東京府ニ抵リ、商工奨励会《(館カ)》ノ事ヲ談ス ○下略


集会日時通知表 大正七年(DK560090k-0009)
第56巻 p.321 ページ画像

集会日時通知表  大正七年       (渋沢子爵家所蔵)
四月十三日 土 午後三時 商工奨励館ノ件(東京府庁)


中外商業新報 第一一五一一号 大正七年四月一八日 ○商工奨励館の陣容 会長に渋沢男、副会長・顧問等ニ大実業家を網羅(DK560090k-0010)
第56巻 p.321-322 ページ画像

中外商業新報  第一一五一一号 大正七年四月一八日
    ○商工奨励館の陣容
      会長に渋沢男、副会長・顧問等ニ大実業家を網羅
  ◇……愈よ寄附金募集着手
曩に詳報したる東京府下各種製品の改良、販路の拡張等に就て中流以下の商工業者の相談対手となるべき商工奨励館設立の件は
▽議愈々進捗 し、今回之が設立期成同盟会成り、役員に左の諸有力実業家・学者就任を承諾せり
 - 第56巻 p.322 -ページ画像 
  会長           男爵 渋沢栄一
  副会長 商業会議所会頭     藤山雷太
  同   東京実業組合聯合会々長 星野錫
  □顧問   岩崎小弥太男外五十二名
  □常務委員 稲茂登三郎外十四名
右の如くにして愈々
▽寄附金募集 に着手せるが、之が総額百万円、一口十円以上、敷地は東京府庁構内度量衡器検定所及び産婆試験所を取払ひ約二千余坪を得、三階建鉄筋コンクリートたらしむべし、而して経常費は年額十万円以上なるが、右は東京府に於て負担する事となれり、猶ほ寄附金申込締切期日は、五月卅日限りにて府農商課内同会事務所に宛つべく、更に
▽寄附金申込 の方法は一時払ひと分割払込とあり、一時払は本年十二月三十一日限り、分割払込は二ケ年間に八回以内に分割して払込むを得るものなりと、申込み場所は同会直接又は第一・第十五・第百・安田・三井・三菱の六銀行なりと


竜門雑誌 第三六〇号・第七七頁 大正七年五月 ○東京商工奨励館設立進捗(DK560090k-0011)
第56巻 p.322 ページ画像

竜門雑誌  第三六〇号・第七七頁 大正七年五月
○東京商工奨励館設立進捗 既報の如く青淵先生を会長に、藤山・星野両氏を副会長とせる東京商工奨励館は、顧問に岩崎小弥太・三井八郎右衛門・古川虎之助・大倉喜八郎・井上公二・服部金太郎・浅野総一郎・大橋新太郎・大川平三郎・山下亀三郎・高松豊吉氏等五十三名常務委員に稲茂登三郎・井出百太郎氏等十五名の有力なる実業家及び学者賛成の下に愈々寄附金の募集に着手せる由なるが、之が総額は百万円にして、一口拾円以上とし、敷地は東京府庁構内約三千坪を利用し、三階建鉄筋コンクリートたらしむる計画にして、斯くて東京府下各種製品の改良、販路の拡張に就き、商工業者の相談対手となるべき方針なりと。
 因に右寄附金申込は五月末日迄にして、十二月末日迄に払込べく、百円以上の申込の分のみは大正九年六月末日迄に八回以内に分割して払込むことを得といふ。


集会日時通知表 大正七年(DK560090k-0012)
第56巻 p.322 ページ画像

集会日時通知表  大正七年        (渋沢子爵家所蔵)
五月廿八日 火 午前十一時 商工奨励館ノ件(帝国ホテル)


竜門雑誌 第三六一号・第八三頁 大正七年六月 ○東京府商工奨励館建設進捗(DK560090k-0013)
第56巻 p.322-323 ページ画像

竜門雑誌  第三六一号・第八三頁 大正七年六月
○東京府商工奨励館建設進捗 五月二十八日青淵先生、井上東京府知事主催となり田尻市長・早川千吉郎・団琢磨・桐島像一・浅野総一郎井上公二・服部金太郎・山下亀三郎・大川平三郎・和田豊治氏等八十余名の実業家を帝国ホテルに招待して、東京府物産品試食会を催し、席上青淵先生及び井上府知事より今回設立せんとする東京府商工奨励館建築寄附金勧誘あり、今後更に同館費の公募に着手する由なるが、既に其席上に於て三井・岩崎両家の各七万円、古河氏の四万円、浅野氏の三万円を初筆として大川・服部両氏の各一万円等、及び各実業家
 - 第56巻 p.323 -ページ画像 
諸同業組合よりの申込たる寄附金等を加算すれば既に卅余万円に達したる由なれば、来月末日の締切迄には百万円に達すべき見込なりと。因に該建設工事は協賛を経て本年末より着手すべしと云ふ。


集会日時通知表 大正七年(DK560090k-0014)
第56巻 p.323 ページ画像

集会日時通知表  大正七年       (渋沢子爵家所蔵)
七月一日 月 午後六時 商工奨励館ノ件(帝国ホテル)


竜門雑誌 第三六六号・第五四―五五頁 大正七年一一月 ○商工奨励館事務進捗(DK560090k-0015)
第56巻 p.323 ページ画像

竜門雑誌  第三六六号・第五四―五五頁 大正七年一一月
○商工奨励館事務進捗 去十月十日開会せる臨時東京府会は、劈頭井上府知事の挨拶に次ぎ、商工奨励館設置の提議に就き、青淵先生・藤山・星野諸氏の熱心なる尽力に依り、府以外東京商業会議所・東京実業聯合会其他各種団体並に有志諸氏の後援を得、該館設立維持費として、金百万円の寄附ありたりと報告し、其設計及将来の計画に関する詳細なる件に就ては、次回の通常府会に於て審議すべきが、大体の方針に関しては充分の審議あるべきを希望し、終て酒井府会議長より府会開会を宣して日程に入るや、商工奨励館の設立維持に関する収支を特別会計とするの件、及大正七年度商工奨励館歳入歳出予算の両案を一括して議題とし、木内氏の提議にて九名の委員附託となり散会したる由。


渋沢栄一 日記 大正八年(DK560090k-0016)
第56巻 p.323 ページ画像

渋沢栄一 日記  大正八年      (渋沢子爵家所蔵)
六月十一日 曇又雨 冷
○上略 午後六時帝国ホテルニ抵リ、井上府知事ノ招宴ニ出席ス、夜九時過帰宅ス
此夜井上府知事宴会席上ニ於テ発病、即夜帝国ホテル内ニ死去ス、但脳溢血症トノ事ナリ、人生ノ不可測真ニ夢ノ如キ感ナクンハアラザルナリ


竜門雑誌 第三八三号・第三〇―三二頁 大正九年四月 ○東京府政に就て 青淵先生(DK560090k-0017)
第56巻 p.323-324 ページ画像

竜門雑誌  第三八三号・第三〇―三二頁 大正九年四月
    ○東京府政に就て
                      青淵先生
 本篇は「実業公論」記者が東京府政に就て、青淵先生を訪問して其意見を聞かれたるものゝ由にて、同誌九月号に掲載せるものなり。
                         (編者識)
○上略 我東京府が大に力を致して努力尽瘁せらるゝ三大綱目に対し、玆に聊か一言せんと欲する所以なり。
○中略
 第三『民資の増殖』に就て、第一に商工業の奨励に努め、数年来諸方面の後援を得て多大の寄附金を募集し、商工奨励館を設置して化学製品の試験、工業用原料の鑑定分析、工業に要する機械類の陳列並其の実地使用、其他品評会、或は海外貿易殊に海外の販路拡張の幇助と云ふが如き事務を司り ○中略
 故井上知事の如きは此点に就て言行両ながら完かりし名府尹にして余等の如きも常に其知遇に感じ、常に其相談相手ともなり、寄附金募
 - 第56巻 p.324 -ページ画像 
集等に関しても亦手伝をなし、商工奨励会館の如きも今や既に入札建築に取掛れり、唯だ冀ふ所のものは徒らに口舌の煩を棄てゝ軽挙事に赴くことなく、深思熟考して府民一般の利害休戚に重きを置き、府政を刷新して一意須らく実行の好成績を期せざる可からざるなり ○下略


集会日時通知表 大正一〇年(DK560090k-0018)
第56巻 p.324 ページ画像

集会日時通知表  大正一〇年       (渋沢子爵家所蔵)
六月廿九日 水 午後一時 東京商工奨励会館参観


東京商工奨励館概要 第一―五頁 刊(DK560090k-0019)
第56巻 p.324-325 ページ画像

東京商工奨励館概要  第一―五頁 刊
    歴史及び業務
大正三年七月世界大戦勃発するや、輸出貿易の激増を見、延て国内工業の発展を来し、新規の工業にして事業の基礎を確立したるもの少からざると共に、従来専ら輸入に俟ちたる商品にして、自給を為すの域に達せるもの多きを見るに至れり。然れども斯くの如き経済界の好況は決して永続すべきにあらず、一度戦争の終結を見んか、列強は産業の復興に全力を注ぎ、国力の恢復に有ゆる手段を取り、為に経済的競争は戦前に比して数倍すべき事明かなるを以て、是に処するの準備として製品の改良、販路の拡張、生産能率の増進等につき、国民上下の注意を惹起すべく、識者の間に努力せられ、我が東京府当局に於ても亦研究を怠らざりしが、是の目的を達成するの一手段としては、有力なる商工機関を設立し、以て本府に於ける商工業の中心設備たり、中小商工業者の懇切なる相談対手たらしむるを、最も急務なるべしとしたり。
是より先き府下の三・四実業家よりも粗製濫造防止の一端として、実用的機械工具陳列館の建設を東京府に建議し来りしを以て、兼ねて研究協議を進むる処ありし結果、東京府・東京商業会議所・東京実業組合聯合会は相協力して調査研究する処あり。更らに大規模の一大商工機関を設置するの適切なるを決して、着々其の歩を進むる処あり。
爾来幾多の協議を重ねたる後、大正六年十月、東京商工奨励館設立期成会組織せられ、渋沢子爵を会長に推し、藤山東京商業会議所会頭・星野東京実業組合聯合会長両氏を副会長とし、更に斯館の成立につきて熱心是が誘導に当りたる井上知事を始め、東京府会議長・東京市長岩崎・三井両男等凡て六十余名の有力なる実業家を顧問とし、府下に於ける同業組合を以て是が会員とし、館の建設に要する費用は、是を一般の寄附に仰ぐに決し、杉原氏を常務顧問に、稲茂登・井出・橋本西沢・大塚・岡田・松田・内藤・倉持・山崎・松崎・阿部・関根・角倉・柴田の十五氏を常務委員に挙げて、着々計画の進捗を図りたるが期成会の趣旨を賛して、寄附を申込めるもの多く、其の員数二千八百余人に達し、寄附募集予定額たる一百万円に達するの見込殆んど確実となれるを以て、大正七年秋、期成会長渋沢子爵は一切の醵金を挙げて東京府に寄附せられしにつき、東京府は同年十月十九日の臨時府会にて、正式に是が受領を可決したり。
東京府に於ては、其の後種々実施上に関する調査を遂ぐる所あり。大正八年七月、土工を起し、爾来二年有余を費し十年十月を以て竣成し
 - 第56巻 p.325 -ページ画像 
たり。
本館には工業試験部・商品陳列部・調査部・庶務部の四部を置く。各部の業務とする処を掲ぐれば左の如し。
      工業試験部
 一、化学的製品の製作技術に関する研究調査及試験に関する事項
 二、工業用原料及製品の鑑定試験又は分析に関する事項
 三、工業に要する機械類の陳列並其の実地使用に関する事項
 四、機械器具に関する研究調査諮問応答及実地指導に関する事項
      商品陳列部
 一、本府生産に係る貿易品並製作上模範若は商取引上参考となるべき物品の蒐集陳列縦覧及保管に関する事項
 二、本府重要生産品の陳列、共進会・品評会、及競技会の開催に関する事項
      調査部
 一、輸出入の調査、貿易事務の幇助に関する事項
 二、本府生産調査並内外商取引の紹介に関する事項
 三、商工に関する図書の蒐集、閲覧、報告及案内等の刊行頒布に関する事項
 四、意匠・図案・広告・商標等に関する調査及指導に関する事項
 五、職工店員従業者の養成改善等の研究に関する事項
      庶務部
 一、庶務会計に関する一切の事項


竜門雑誌 第四二〇号・第六〇―六一頁 大正一二年五月 ○東京商工奨励館(DK560090k-0020)
第56巻 p.325 ページ画像

竜門雑誌  第四二〇号・第六〇―六一頁 大正一二年五月
○東京商工奨励館 府立東京商工奨励館は諸般の設備殆ど整ひたるを以て、今回左の諸氏を顧問並に商議員に依嘱し、四月七日午前十時同館に於て第一回の会合を為し、宇佐美知事より大正十一年度の事業経過の報告に次いで、早崎副館長より十二年度予算十五万三千円の大要説明あり、十二年度の事業としては展覧会・商品見本購入或は能率増進等の諸事業を実行する旨を報告後、青淵先生は商品及び包装改良、能率の増進に就き、団琢磨氏は陳列品の価格等は屡ば変更して実際市場相場と大差無きやうせられ度し等の希望あり、正午午餐を共にして散会せる由
 △顧問 青淵先生・井上準之助・星野錫・和田豊治・団琢磨・藤山雷太・木村久寿弥太・杉原栄三郎、
 △商議員 稲茂登三郎・橋本直一・西沢善七・堀江正三郎・大塚栄吉・田崎忠恕・塚本藤三郎・内藤彦一・倉持長吉・山崎亀吉・前田多門・松崎伊三郎・松崎半三郎・松本福松・松田幸治郎・松岡文次郎・阿部吾市・三輪善兵衛・篠原三千郎



〔参考〕竜門雑誌 第四三四号・第八五―八六頁 大正一三年一一月 青淵先生動静大要(DK560090k-0021)
第56巻 p.325 ページ画像

竜門雑誌  第四三四号・第八五―八六頁 大正一三年一一月
    青淵先生動静大要
      十月中
二十五日 ○上略 奢侈防止講演会(商工奨励館)に出席。
 - 第56巻 p.326 -ページ画像 



〔参考〕竜門雑誌 第四五九号・第八七頁 大正一五年一二月 青淵先生動静大要(DK560090k-0022)
第56巻 p.326 ページ画像

竜門雑誌  第四五九号・第八七頁 大正一五年一二月
    青淵先生動静大要
      十一月中
十日 勤倹奨励講演会(商工奨励館)



〔参考〕(府立東京商工奨励館)昭和十一年度事業報告 第一一一頁 昭和一二年六月刊(DK560090k-0023)
第56巻 p.326 ページ画像

(府立東京商工奨励館)昭和十一年度事業報告
                     第一一一頁 昭和一二年六月刊
 ○附録
    沿革及事業一般
 府立東京商工奨励館の創立は大正五・六年の交、戦後の列国経済戦に応するため、中小商工業家の相談相手たるべき産業振興機関設置の必要唱道せられたるに其の端を発す。即ち商工奨励館設立期成会長渋沢子爵は都下の有力なる実業家より醵金壱百万円を得て、大正七年十月東京府に寄附を申出でられ、府は是が受領を諾し、爾来其の運用に当れるものなり。
   ○栄一ノ東京商工奨励館設立期成会会長就任及ビ解任ノ記録ハ同館ニ保存セラレズ。大正十二年九月関東大震災後同館ヨリ栄一ニ発送セル見舞状ノ宛名ニ「顧問子爵渋沢栄一殿」トアリ。



〔参考〕竜門雑誌 第五一八号・第四二頁 昭和六年一一月 ○弔詞 【牛塚虎太郎】(DK560090k-0024)
第56巻 p.326 ページ画像

竜門雑誌  第五一八号・第四二頁 昭和六年一一月
 ○弔詞
    ○
○上略 降ツテ世界大戦乱ノ漸ク酣ナルノ時ニ方テ、将ニ来ラントスル列国ノ経済戦争ニ準備スルカ為、粗製濫造ノ改善機関ノ設立ニ尽力セラレ、自カラ東京商工奨励館ノ設立期成会々長ト為リテ、寄附金ノ募集並ニ其ノ建設ニ努メ、以テ本府商工業ノ振興ニ資益セラレシ所極メテ大ナルモノアリシノミナラス ○下略
  昭和六年十一月十五日
                東京府知事 牛塚虎太郎
   ○右ハ栄一ノ葬儀ニ際シ贈ラレタル東京府知事ノ弔詞ノ一部ナリ。