デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2024.12.1 / 最終更新日: 2025.3.16

別巻

談話四 余録

談話(四)
新聞・雑誌に掲載せられたる談話(承前)
昭和期 四一六 竜門雑誌 第四六五号 昭和二年六月

■資料

四一六 竜門雑誌  第四六五号 昭和二年六月  ○青淵先生説話集其他 ○中略 台銀問題と我財界に就て(DKB80042m)
別巻第8 p.124-125 ページ画像PDM 1.0 DEED

四一六 竜門雑誌  第四六五号 昭和二年六月
 - 別巻第8 p.125 -ページ画像 
  ○青淵先生説話集其他
○中略
    台銀問題と我財界に就て
 特殊銀行たる台銀が今回の如き不始末を醸したことは経済界の恨事として遺憾に堪えない。勿論当の責任は経営者側の杜撰放漫に在るけれども、之が監督の任に在る当局の怠慢も免かるるに由ない。
 例へば子弟の教育にしても、両親の監督が厳に過ぎれば子弟の為に好ましからぬは勿論だが、余りに放任に流れた結果放縦無頼の子になつては、その親の責任と云はなければならない。
 而して今回の事は、単に一台銀、一監督官庁の不行届なるに止まらず、国際的に我経済界を不信ならしめるものである。
 予はこの間の事を憂慮した結果、単に老婆心から前内閣の緊急勅令案通過に、枢府方面の懇意筋を辿り、平沼氏、八代氏其他の方に私見を御述べしたに過ぎないが、事、憲法に相反すると云ふ理由の為に否決せられ、憲政会内閣の総辞職を見たのは遺憾であるが、又止むを得ない結果であつた。
 然し乍ら、之を以て直ちに我財界の前途を全然悲観して了ふのは、当を得ないであらうが、最近の貨幣価値が低下した事にしても、斯る巨資を一商店に貸し出した事の責を、経営者として当然負はねばなるまい。
 云ふまでも無く政治と経済とは不離の関係にあるが、両者が余りに接近して立入り過ぎると弊害の起る場合が多くなる。
 経済界の事は民間事業家に一任し、当局者はこれを高所より監督して深く干渉せぬを良とするが、多くの場合当局が余りに民間事業に立ち入り過ぎる嫌ひがある。即ち政、経混じて財界に悪例を残し易い。
 官庁は高所よりの監督を厳重にし、民間事業は真面目に事業を経営するに至れば、我が財界は円滑に進展し、今回の如き財界の不祥事は緩和さるるに至るであらう。(経済公報五月号所載)