デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2024.12.1 / 最終更新日: 2025.3.16

別巻

談話四 余録

談話(四)
新聞・雑誌に掲載せられたる談話(承前)
昭和期 四一八 時事新報 第一五八七一号 昭和二年九月一日

■資料

四一八 時事新報  第一五八七一号 昭和二年九月一日  政府依頼は 大きな間違ひ 糸価救済につき 【渋沢栄一子語る】(DKB80044m)
別巻第8 p.130 ページ画像PDM 1.0 DEED

四一八 時事新報  第一五八七一号 昭和二年九月一日
  政府依頼は
    大きな間違ひ
      糸価救済につき
        渋沢栄一子語る
 卅日の時事新報の糸価救済に関する御議論は至極同感であります。
 最近の蚕糸業の発達については古くから関係を持つてゐまして、其隆盛を冀ふものでありますが、どうも少し工合が悪いと云うて、政府に依頼するのは賛成出来ませぬ。
 今の蚕糸業の状態では乾繭の装置が完全に出来ず、又農業倉庫等も普及せず、養蚕家が繭を持つてゐるのは八百屋物が何かの生物を持つてゐるやうなもので、永く持ち耐へが出来ず、勢ひ投売することとなつて繭の惨落、当事者の困窮となる訳でせうが、それでも、自力で其難関を越ゆる決心をせねばなりませぬ。
 今のやうに何でも彼んでも少し苦しくなると政府に依頼するやうなことでは、我国の実業も此先きどうなるか深憂に堪へませぬ。
 一体政府が世話を焼けば巧く行くやうに思ふのは、大きな間違ひである。世の中は各人が、其能に応じて、知識を進め地位を高めるやう努力する所に進歩があるのです。政治上の関係もありませうが、どうも此頃のやうに独立心が欠乏して、徒に政府に依頼する風潮は好ましくありませぬ。