デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2024.12.1 / 最終更新日: 2025.3.16

別巻

談話四 余録

談話(四)
新聞・雑誌に掲載せられたる談話(承前)
昭和期 四二六 糧友 第三巻第一号 昭和三年一月

■資料

四二六 糧友  第三巻第一号 昭和三年一月  農業の電化 【子爵 渋沢栄一】(DKB80052m)
別巻第8 p.144 ページ画像PDM 1.0 DEED

四二六 糧友  第三巻第一号 昭和三年一月
    農業の電化
                   子爵 渋沢栄一
 糧食の問題に就きましては、何時も私の気になります事は、糧食を生産する我国農業の事で御座ゐまして、現今の学界や政治界なども農業に対する力の入れ方が足りぬと思ひます。また農家自身に於きましても、もう少し自ら最新の学理を応用致しまして、其経営法を合理的にする様に努力して戴きたいのであります。
 凡そ物事は変化があり、変化にともなつて進歩がある。政治でも、実業でも、学説でも皆さうであつて、例へば幕府が倒れて明治維新となつたのは政治の大変化であつた。それから欧洲の学問が入つて学界はもとより、商工業も大変化を来たしてゐる。近頃の経済界の動揺なども進歩の一階梯かも知れませぬ。静かに考へますれば数へ尽せぬ程の変化進歩がありまする。蒸汽機関の応用は人間に大きな変化と進歩を与へ、更に電気の応用に到つて最も激しい変化を与へました。
 処が農業に対して我が国に電気の利用といふことは如何でありませうか、昨年末に電気学者や電気関係の方々の前で話した事でありますが、学者は実際にうとく、実際家が学理に暗いといはれる。従つて学者の知識を一般に実際化することが尠いのではないか、電気に付てはその点は大に利用されて来たが、然し農村に目を向けたならば全く電気の応用が乏しいと思ふ。私は学者でないから分らないけれども、電気の力を植物に対して何等かの応用の余地があると思ふ。そして電気を農業に応用したならば電力事業も大きく出来る、全体農業が従来の仕来りで進まないのを、先づ電気応用で耕作、潅漑、繁植等に利用し即ち農業電化といふものをやつて貰ひ度いと意見を述べたが、兎に角農業経営にもう少し科学の応用をしなくてはなりませぬ。
 今後我国の人口は益々殖えまするが、矢張り農産によるより外はありませぬ。我国の集約的農法を徹底さすに、更に大に電気等の科学を応用しまして其経営法を進歩させます為に、糧食関係の本会に於ては全国的に之を促進されたいものであります。