デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

6章 対外事業
1節 韓国
1款 韓国ニ於ケル第一銀行
■綱文

第16巻 p.51-52(DK160010k) ページ画像

明治28年1月17日(1895年)

是ヨリ先、二十七年十二月大蔵大臣渡辺国武ハ韓国ノ貿易及経済上ニ関スル意見ヲ第一国立銀行ニ求ム。仍テ是日栄一、第一銀行頭取トシテ答書ヲ以テ意見ヲ開陳ス。


■資料

第一銀行五十年史稿 巻四・第五三―五六頁 大正一二年刊(DK160010k-0001)
第16巻 p.51-52 ページ画像

第一銀行五十年史稿 巻四・第五三―五六頁 大正一二年刊
 ○第一編 第四章 営業の満期
    第四節 朝鮮支店の発達
○上略
是より先明治二十七年十二月、本行は大蔵大臣渡辺国武より朝鮮の貿易及経済上に関する意見を求めらる、其諮問事項は
(一)朝鮮に於て金利の高き理由、及低利の資本を供給する方法、(二)清露欧米等へ為替取引を開くの必要ありや否、(三)銀貨紙幣交換の景況及将来流通の見込、(四)朝鮮の貨幣制度及銀行設置の方法の四件なりき、本行頭取は翌年一月十七日答書を裁してそれぞれ意見を開陳せしが、第四項に対する処置として左の三策を述べたり。
 一朝鮮政府に於て其資本の全部又は幾部を出し財政上の機関として一銀行を設置せしめ、此銀行に兌換銀券発行の権利を付与し、国庫金取扱の事務及造幣の事務等財政上の要務を負担せしむるは都て我国の日本銀行の如くならしめ、其兌換券を以て同国内に流通せしむる事
 二朝鮮の開港場へ我日本銀行の兌換券交換所を設け朝鮮政府は我日本銀行の兌換券を以て同国内の通貨として国内に流通せしむる事
 三朝鮮政府に於て開港場出店の本邦銀行に特約して開港場に流通する銀行券を発行せしめ、其貿易の進歩を謀る事
第一策を細説して曰く、「第一の方法は、朝鮮政府の体面と其国利とに於ては完全なるべしと云とも、既に同政府に於て其資本を出すの余力なかるべく、又同国人民に就て募集するも決して之を得る能はざるべし、縦令之を得るとするも従来財政に慣行なき同国政府に於て紙幣を発行するは終に交換基金の適度を誤り、不換紙幣となるの恐あるを以て本邦人及他国商人に通用するを得ざるべければ之を言ふは易くして今之を実施すること能はざるべし、故に若し此方法に拠るとせば特に朝鮮政府より本邦の巨大なる商估又は銀行へ委託し、相当の約款を設けて此事を専任せしむるを可とす、朝鮮政府に於て実に之を企望して適当の約定を為すに於ては本邦の銀行者又は商估は或は之に応ずるものあるべしと思惟す」以上三策中これを最上の策となす由をも附言せり、本行が夙に朝鮮の中央銀行たるを辞せざる決心を有せしを知るべし、此意見は日韓関係のますます親密を加へ我が勢力の増進するに従ひて漸次に行はれ、最初まづ右の答申中の第三なる銀行券発行の実現となり後遂に第一策なる中央銀行の任務に就けり、此の如くにして本行の朝鮮における発達は次第に其歩を進めたり。
 - 第16巻 p.52 -ページ画像 
○下略