デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

6章 対外事業
1節 韓国
2款 京釜鉄道株式会社
■綱文

第16巻 p.453-454(DK160069k) ページ画像

明治34年9月29日(1901年)

是日栄一、当会社取締役会長トシテ、東洋経済新報社社長天野為之外二十二名ノ都下新聞雑誌社社長ヲ帝国ホテルニ招宴シ、会社ノ景況ヲ述ベ後援ヲ請フ。


■資料

京釜鉄道株式会社事務所日誌 明治三四年(DK160069k-0001)
第16巻 p.453 ページ画像

京釜鉄道株式会社事務所日誌  明治三四年
                      (竹内広氏所蔵)
九月二十九日 日曜日 半晴
日下常務出社、一森課長出社
本日午後六時より各新聞社長ヲ帝国ホテルニ招待ス、来会スルモノ凡テ二十三社ナリ、会長、尾崎・日下両常務出席セラル、会長及尾崎常務の演説あり、天野為之氏東洋経済雑誌社長《(新報)》トテ来会、社 《(欠字)》ヲ代表して答礼了、九時半散会ス


渋沢栄一 日記 明治三四年(DK160069k-0002)
第16巻 p.453 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治三四年        (渋沢子爵家所蔵)
九月二十九日 雨
○上略 此日帝国ホテルニ於テ新聞記者ヲ招宴ス
  ○「東京経済雑誌」ヲ探索スルモ該誌ニハ記事ナシ。


竜門雑誌 第一六一号・第三三―三四頁明治三四年一〇月 京釜鉄道会社の新聞記者招待会(DK160069k-0003)
第16巻 p.453-454 ページ画像

竜門雑誌  第一六一号・第三三―三四頁明治三四年一〇月
    京釜鉄道会社の新聞記者招待会
京釜鉄道会社に於ては去月廿九日社長たる青淵先生及尾崎・日下の両取締役等主人となり、府下の各新聞社員・通信社員等を帝国ホテルに招き、従来の経過及び起工式の模様其他将来の設計等に付種々の懇談あり、晩餐を供せられたるが、夫より先生には左の意味の演説を為されたり
 余は謹で御多忙なる諸君が日曜日の休日なるにも拘は《(ら)》ず来会せられたるの厚意を謝す、京釜鉄道の事は今更喋々するの要なく耳聡き諸君は業既に詳細の事を御承知なるべきも、折角の厚意に対し極めて簡単に余の所感を暫時陳述すべし、京釜鉄道は実に二十七年役の結果として一日も速かに其貫通を期せざるを得ざる所のものなるが、政府及議会も大に我等に力を添へられ一般鉄道会社に比して特別の恩典を附与せられ、五十万円に上らずして十万円にて会社の創立を認められ、且つ六朱補給ある上に十倍の社債募集を許せらるゝが如き、皆本鉄道が決して一個人の手にのみ経営すべきものにあらざるを知るに足るべし、又韓国と我国との貿易を見るに年々一千七八百万円あり、特に韓国物品の取引先は幾んど我国一手に在りと云ふも敢て誣言にあらず、左なれば本鉄道は他の一般私設鉄道と異にして全く国家事業の一分にて、全たく愛国者の共に経営すべき事業なりと云ふべし、又一方株主の利益と云ふ側よりするも其の有利は余の認む所にて、諸君宜しく本鉄道の成立に一臂の力を添へられんことを云々
 - 第16巻 p.454 -ページ画像 
右終るや尾崎三良男は韓国に於ける近事談を為せり、其大要左の如し
 余は去十七日を以て帰朝せり、此に諸君に言ふべき事は既に新聞紙上にも散見するを以て別に喋々言説するの必要なし、然りと雖も只此に諸君に一言すべきは韓国の事決して縄墨を以て律すべからざるの一事なり、此間種々の困難を経過し且つ種々の方策を要する者あり、特に敷地の買収には最も苦心したり、約款には墓地を避くるの項あり、是れ亦最も苦心せし所なり、工事請負方を内地人に命ずるや将た韓人に命ずるやは是れ亦当時研究すべき問題なりしなり、同国鉄道院とも相談したる結果遂に韓国人夫請負会社に命ずる事と為したり、是れ我内地人の企望者には甚だ失望せしめたるには相違なきも、亦同国請負料の安直にして而かも本会社の利益少からざるを如何せんや、起工式には同国皇帝陛下・皇太子殿下の御名代として西安君・東寧君の臨場あり斯る事は韓国開国以来未曾有の事なりし由にて非常の盛況を極めたり、式辞は竹内綱氏、祝辞は朴外部大臣演説し、林公使は韓国皇帝の万歳を祝し、朴外部大臣我が天皇陛下の万歳を祝し、米国公使は京釜鉄道の万歳を、小生は来賓の万歳を祝して非常の満足を表したり云々
之に次て東洋経済新報社の天野為之氏来賓一同を代表して会社の厚待を謝し、其れより京釜鉄道は啻に国家的鉄道たるのみならず、渋沢男の云はれし如く営利の眼を以て見るも亦確に有望なる一線路にして、実に将来世界の鉄道たるべきの命を有するものなり、故に会社の理事者は断然たる決心を以て万難を排し進まざるべからざるのみならず、国民亦会社を援助して其志を成さしめざるべからずと述べ、畢て別室に移り種々の談話あり午後九時頃散会せり