デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

2部 社会公共事業

1章 社会事業
4節 災害救恤
3款 震災救恤
■綱文

第24巻 p.603-604(DK240078k) ページ画像

明治24年10月(1891年)

是月ノ愛知・岐阜両県下震災ニ際シ、栄一、罹災者救助費トシテ金百円ヲ、更ニ九鬼紋七外二名ト共同シ金六十三円余、又矢島作郎外一名ト共同シ金三十一円ヲ賑恤ス。


■資料

青淵先生公私履歴台帳(DK240078k-0001)
第24巻 p.603 ページ画像

青淵先生公私履歴台帳           (渋沢子爵家所蔵)
    賞典
同 ○明治廿七年四月十三日 明治二十四年十月震災ノ節、愛知・岐阜両県下被害者救助トシテ金百円施与候段、奇特ニ付為其賞木杯一組下賜候事     同 ○賞勲局
○中略
同 ○明治廿八年三月一日 明治二十四年十月愛知県下震災ノ節、九鬼紋七外二名ト共同金六拾三円余賑恤候段、奇特ニ付為其賞木杯一個下賜候事    同 ○賞勲局
明治廿八年三月一日 明治二十四年十月愛知県下震災ノ節、矢島作郎外一名ト共同金三拾壱円余賑恤候段、奇特ニ候事              同 ○賞勲局



〔参考〕東京日日新聞 第六〇〇八号 明治二四年一〇月二九日 ○昨朝の地震(DK240078k-0002)
第24巻 p.603-604 ページ画像

東京日日新聞  第六〇〇八号 明治二四年一〇月二九日
    ○昨朝の地震
○震動十九回 一昨夜より昨廿八日午後三時まで都合十九回の地震ありたり、其内最も激烈なりしものを昨払暁のものとす、中央気象台に於ける其験測左の如し
 発震時   廿八日午前六時三十九分十一秒
 震動の時間 七分時間
 震動の方向 東西
 最大水平動 二、四秒時間に付三十一、五粍(曲尺一寸四厘)
 最大上下動 二、四秒時間に付四、五粍(一分五厘)
 性質    緩慢
 此地震は最初緩慢なる微動に起り、漸次震動大となり、三十三秒時を経て殊に著るしく、其後十二秒時を経て東西方向に於て著しき前記最大水平動に達し、又十二秒時を経て南北の方向に於て著しき震動を顕し、三分時の後漸次微弱となれり
 又上下動は、水平動に後るゝこと二十秒にして発し、漸次震動を増し、一分三十七秒の後前記の最大震動に達し、爾後漸次微弱となり遂に静止せり
 - 第24巻 p.604 -ページ画像 
○下略



〔参考〕東京日日新聞 第六〇〇九号 明治二四年一〇月三〇日 ○愛知県下の震災(DK240078k-0003)
第24巻 p.604 ページ画像

東京日日新聞  第六〇〇九号 明治二四年一〇月三〇日
    ○愛知県下の震災
○死人千五百三十三人(廿九日午後一時五十五分名古屋発) 唯今迄の報告は同県下死人千五百卅三人・負傷者四百卅六人・潰家九千四百七十五戸、其他道路・鉄道・堤防・溜池の破損多し
 被害の甚しきは丹羽・葉栗・東西春日井・中島・愛知の六郡と名古屋市なり、遭難者は皆露宿し、目下炊出し救助中、今に震動止まず三河全国は損害少し
 第三師団の兵隊は憲兵及警察官と共に潰家の取片付け、又非常の警戒の補助をなし、市中を警邏せり、名古屋監獄は大破に付、未決囚はこれを監外に出し、憲兵及び師団兵にて守衛の補助をせり、盗難の害少し、出火十余ケ所あり、戸数分明ならず
○下略



〔参考〕東京日日新聞 第六〇〇九号 明治二四年一〇月三〇日 大震!!(DK240078k-0004)
第24巻 p.604 ページ画像

東京日日新聞  第六〇〇九号 明治二四年一〇月三〇日
    大震!!
安政の大地震と云へば、之れを談ずるだにも都下の人士をして当時を追懐せしめ、戦慄せしめざるはなし、蓋し自ら其の酸鼻の実況を目撃し万死の危難を免れ来りたるが故なり、今や愛知・岐阜・福井の三県を初めとして、其他二・三の府県に於ても我同胞数十万の生民は略ぼ安政の震災と相同じき惨状を目撃し、数千の人民は為めに死傷の不幸に陥りたるぞ是非もなき
一昨朝我都下に於てせる軽震は、僅かに都人士の夢を覚ませしに過ぎざれば、何人も左程とは思はざりしが、昨朝来東海道諸県及び関西府県より続々接手する所ろの報道に拠れバ、各地の災害頗る甚しかりしのみならず、殊に岐阜・名古屋の如きハ尤も甚しかりしものゝ如し、岐阜市に於ては人家悉く転倒、且つ全焼、死傷数を知らず、同県下笠松・竹ケ鼻等も人家概ね転倒せるのみならず、木曾川近傍土地陥落、剰へ出水の災に罹れりと云ひ、又た尾張の枇杷島・一ノ宮・津島・岩倉・稲沢等にては全村家屋悉く倒れ、出水夥しく火焔四方に起り、昨朝までの調査に依れば、愛知県下のみにて即死千五百卅余人・負傷二千五百六十余人に達せりと、而して其精細の調査は未だ之れを知るに由なし、其他監獄・裁判所・停車場等の転倒、鉄道の破潰等惨状実に目も当てられざる如くなりと云ふ、吾曹は昨日を以て特に社員数名を岐阜・愛知の両県下に派出し実地を視察せしめたれば、詳細の報道を読者に与ふることを怠らざるべし、実に安政以来非常の震災なりと云ふも亦た過言に非ざるを悲しむなり
○下略