デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治13年2月16日（1880年）

是日栄一、アメリカ人ディケンス夫妻ヲ飛鳥山ノ別邸ニ請ジテ午餐会ヲ開キ日本料理ヲ供ス。参議大隈重信・参議井上馨出席ス。

（芝崎確次郎）　日記簿　　明治一三年　　　　（芝崎猪根吉氏所蔵）
第二月十三日　晴
○上略
今夜来ル十六日王子ヘ来客之事ニ付、諸方ヘノ手紙御渡シ、明朝配達可致旨被命候事
○下略
第二日十四日　晴
本日例刻出頭、昨夜被命候出状配達方取計候、又外務省ヘ借物ハ増田氏使ニ差出候事、直ニ帰リ候ニ付、王子ヘ差越シ置候　○下略
第二月十五日　晴
休日
午後一時頃ヨリ王子御別荘ヘ参リ、庭師並植木屋・大工等ヘ引合　○下略
第二月十六日
今暁雨降、九時ニ止雨、夫ヨリ到客之手配ニ相成、十二時王子ヘ罷出
 - 第25巻 p.632 -ページ画像 
来客名左ニ
　公使
　　米国　デケツソン《（デケンソン）》
　　　　　同人妻
　　横浜　ウヱルヒン《（アルウイン）》
　　　　　同人妹
　　大隈公　　井上公　　福地　　大倉
　　上野公　　松田肇　　益田　　かやば町
午後五時退散
芸人ニハ長唄連中五人
茶ノ湯壱人　新橋・芳原芸妓九人
大盛会ノ事
八時馬車ニテ帰宅、邸ヘ当宿致候事

（井上馨）　書翰　　渋沢栄一宛　（明治一三年）二月一六日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（須永一郎氏所蔵）
貴書拝読、陳ハヂツキンソン氏只今来臨、依而外務省馬車ニテ即刻送リ遣シ候間、貴君等ニモ速ニ御出向、夫々御配慮無之而ハ間ニ合不申候、且小生モ可成早々参趨可仕候
右御答如斯候　頓首
　　二月十六日　　　　　　　　　　　　　　　　　井上馨
　　　　渋沢栄一殿

青淵先生六十年史　竜門社編　　第二巻・第六二六頁　明治三三年六月再版刊
　○第五十八章　公益及公共事業
　　　　第七節　外賓接待
○上略
明治十三年二月十六日デツケンソン夫婦・アルウイン夫婦・大隈重信井上馨等ヲ招ク　○下略

東京日日新聞　　第二四五三号　明治一三年二月一六日
○本日ハ大隈・井上両卿の御同行にて米賓デッキンソン氏を王子の抄紙部、および製紙会社へ伴はれ、渋沢君ハ其の別業にて日本食の午飯を以て同氏を饗応せらるゝよし、又た明日ハ同氏を府庁へ招かれ、府知事自から桑港水道会社製の木管の事を諮問あり、畢つて築地の支庁にて晩餐を饗せらるゝとぞ

東京日日新聞　　第二四四一号　明治一三年一月三一日
○此ごろ渡来せられたる米国の紳士デッキンソン氏が、四五日前渋沢栄一君の家を訪れて唔談の折り、我らが出発の前グラント君に面謁せしに、其許日本に赴かれなば必らず渋沢・福地両氏のうちに面会して予が同国に滞在中両氏並に各接待委員の厚遇を篤く謝し呉れられよ、殊に此の謝辞ハ一遍の口誼のみならず、予が心中に深く感銘して云ひ出でたることなるをも、其許より好く通じ呉れらるべしとの伝言なり
 - 第25巻 p.633 -ページ画像 
と、委細に語られしが、其後ち又たグラント君ハ、帰国の後ち人に遇ふ毎に、例も貴国のことを申出でられ、予が這回の周遊中いまだ日本に到りし時の如く愉快なることハあらず、接待の委員となりし人々が予を遇するの厚きのみか、諸事皆な活溌にして聊かも厭倦の色を現はさず、其の勉強の精神をもて考ふれば、他日必らず為す処あるの人民なるべしと賞揚せられ、我ら如き日常出入するものゝ耳にハ、所謂る蛸の入るほどなりしと申されたるよし、斯てこそ委員諸君も一時奔走の労を厭はれざりし甲斐ありけりと、記者も亦た喜びに堪へず

東京日日新聞　　第二四四八号　明治一三年二月九日
○井上外務卿ハ、先ごろ渡来せられし米国の紳士チツキンソン氏をその私邸へ招待して饗応せらるゝよしにて、渋沢栄一・福地源一郎の二君をはじめその他の諸紳士へも案内せられたりと