デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

3部 身辺

1章 家庭生活
4節 趣味
2款 和歌
■綱文

第29巻 p.227-228(DK290071k) ページ画像

明治41年8月(1908年)

是月栄一、北海道ニ旅行シ、帰途仙台ニ立寄リ松島ニ遊ビテ九月初旬帰京ス。是間、和歌ヲ詠ズ。


■資料

渋沢栄一 日記 明治四一年(DK290071k-0001)
第29巻 p.227-228 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治四一年     (渋沢子爵家所蔵)
八月十三日 快晴 暑
   ○去ル十一日東京ヲ発シ、北海道ニ向フ。兼子・正雄・愛子同伴ス。
    是日函館ニ在リ。
○上略
今朝東京留守宅八十島ヘ一書ヲ送リテ、秋光院墓碑ノ文字修正ノコトヲ申通ス
 きり出たす夏の氷はますらをのときしやひはのかけにやあるらむ
   ○中略。
八月二十三日 雨 冷
   ○旭川ニアリ。
 - 第29巻 p.228 -ページ画像 
(欄外)
 たち迎ふ人のこゝろにならひてや尾花もまねく里の夕暮
八月二十四日 曇夕晴 冷
○上略 四時頃ヨリアイヌ人ヲ集メテ熊祭ノ古式ヲ行ハシム、アイヌノ老幼男女来会スル者三・四十人古老先ツ古食器ヲ陳列シ酒ヲ盛テ神ヲ祭ル後、一ノ熊児ヲ場ノ中央ニ置テ多数ノアイヌ之ヲ巡リテ且ツ歌ヒ且ツ踊ル、其間約一時半、最後ニ場ノ中央ニ於テ熊ヲ絞殺スル真似シテ式ヲ畢ル、其様卑野ナレトモ亦古雅ノ趣アリキ ○下略
 あふものはみなあたらしき旅の空にふるき神代のさまも見るかな
   ○中略。
八月二十九日 曇 冷
   ○登別ニアリ。
(欄外)
 夕晴の谷間にのこる雲と見しはたちしいて湯の煙なりけり
八月三十日 晴 冷
   ○室蘭ニアリ。
(欄外)
 たのしさにおしむ日影《うつす》にくらへてはうきにたつ日のなかくもあるかな
   ○中略。
九月四日 雨 冷
   ○松島ニアリ。
(欄外)
    雨中松島湾に舟を浮へて
 月花のなかめはよそにまかせおきてあめにとひ来し松か浦島


(補遺)竜門雑誌 第二〇四号・第二〇頁 明治三八年五月 和歌(DK290071k-0002)
第29巻 p.228 ページ画像

(補遺)
竜門雑誌  第二〇四号・第二〇頁 明治三八年五月
 ○和歌
                      渋沢栄一
    ○二月十七日高橋日本銀行副総裁の欧米旅行の首途を祝ひて
 咲いてん春のいろ香をこと国にまつ手をりませやまふきの花
    ○陸奥なる農家の人より其子の出征を祝ひて歌よめといひおこされたれは
 とく行きて君か利鎌になき払へかれのこりたる露のしこ草
    ○比田ぬしの高齢を祝ひて
 君かつむよはひのかすは名におへる比田のかりほのよねとなるまで
    ○寄山祝
 吹く風にたゝよふ雪は《(雲カ)》ふもとにてゆふ日くまなき雪の不二の根
    ○徳川公爵を迎へまつりて庭園の牡丹を見たるに雨少しく降りたれは
 降りかゝる雨はなみたかふかみくさはなもむかしをしのふなるらむ