デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

3章 国際親善
2節 米国加州日本移民排斥問題
3款 日米関係委員会
■綱文

第35巻 p.175-177(DK350038k) ページ画像

昭和5年10月28日(1930年)

是日、当委員会小委員会、丸ノ内東京銀行倶楽部ニ開カル。栄一出席シテ、太平洋沿岸諸国実業家大会開催ノ提案其他ニ関シテ協議ス。


■資料

日米関係委員会往復書類(三)(DK350038k-0001)
第35巻 p.175 ページ画像

日米関係委員会往復書類(三)     (日米関係委員会所蔵)
       (別筆)
      案(子爵御一覧修正済)
拝啓、益御適奉賀候、然ば今般桑港商業会議所副会頭リンチ氏並にホノルヽ市前ハワイ知事フアーリントン氏より、太平洋沿岸諸国の実業家大会を開催致度希望を以て、別紙写の通り小生宛照会致来候に付ては、此際日米関係委員会開催いたし篤と御協議致度と存候得共、先づ以て小数の委員各位に御出席を煩し、右に関する御意見相伺度と存候間、御迷惑ながら来る十八日(木曜日)正午丸ノ内一丁目銀行倶楽部へ尊来被成下度、此段御願迄匆々如此御座候 敬具
  昭和五年九月九日
                      渋沢栄一
          殿
 尚ほ当日は左記諸氏に御出席相願置候
  新渡戸氏・堀越氏・団氏・頭本氏・内田氏・串田氏・藤山氏・阪谷氏・森村氏(イロハ順)
  御諾否乍御手数御一報願上候
  ○別紙ヲ欠ク。


日米関係委員会往復書類(三)(DK350038k-0002)
第35巻 p.175-176 ページ画像

日米関係委員会往復書類(三)    (日米関係委員会所蔵)
拝啓、益御清適奉賀候、然ば過般リンチ氏並にフアーリントン氏より来請の件に関し御協議願度、去月十八日御会合相願候処、老生折悪く所労の為め延期相願恐縮至極に存候、然る処頃日漸く旧に復し候に就ては甚だ勝手ながら、来廿八日(火)正午東京銀行倶楽部に於て一会相催し、右の外二・三の事項を加へ左記各項に付篤と御高見伺度と存候間、御多忙中御迷惑とは存上候得共枉て御光来被成下度、此段更めて御通知申上度匆々如此御座候 敬具
    協議事項
 一、桑港並にホノルヽに於て開催せらるべき太平洋沿岸諸国代表実業家大会の件
 一、加州大学に日本講座設置の件
 - 第35巻 p.176 -ページ画像 
  一、移民法改正に関する情勢研究の件
  一、太平洋問題調査会大会に於ける支那問題の件
                  以上
  昭和五年十月廿三日           渋沢栄一
 追申
  一、当日は左記諸氏に御出席相願置候
    新渡戸氏・堀越氏・団氏・頭本氏・内田氏・串田氏・藤山氏・阪谷氏・森村氏(イロハ順)
  二、粗餐の用意致置候間御承知置被下度候
  三、御諾否乍御手数御回示願上候


日米関係委員会集会ニ関スル控(DK350038k-0003)
第35巻 p.176 ページ画像

日米関係委員会集会ニ関スル控     (日米関係委員会所蔵)
 昭和五年十月二十八日(火)正午於東京銀行倶楽部
 太平洋沿岸諸国実業家大会開催の提案外三件に関する協議会
  (別筆)
  遺憾なから旅行の為め       欠新渡戸稲造
                 (太丸ハ朱書)
                   ○堀越善重郎
                   ○団琢磨
  目下旅行中に付          欠頭本元貞
  目下旅行中に付          欠内田嘉吉
  同日無拠差支有之         欠串田万蔵
  目下旅行中に付          欠藤山雷太
                   ○阪谷芳郎
                   ○森村市左衛門

                   ○渋沢栄一
                   ○白石喜太郎
                   ○小畑久五郎


日米関係委員会集会記事摘要(二)(DK350038k-0004)
第35巻 p.176-177 ページ画像

日米関係委員会集会記事摘要(二)   (日米関係委員会所蔵)
 昭和五年十月廿八日(火)正午於東京銀行倶楽部
 日米関係委員会小委員会開催
  出席委員
   渋沢子爵・阪谷男爵・団男爵・森村男爵・堀越氏
  幹事
   白石・小畑
    協議事項
一、太平洋沿岸諸国代表実業家大会の件
 桑港リンチ氏及ホノルヽ市フアーリントン氏の来信
一、移民法修正状勢研究の件
 下院移民委員長アルバート・ジヨンソン氏の意見に関するアキスリング氏来書
一、加州大学に日本講座設置の件
 桑港フランク・エチ・スミス氏来状
    概要記事
 - 第35巻 p.177 -ページ画像 
午後零時半渋沢子爵座長席に就き、上記の問題に付き協議を遂げたる結果、左の如く決定したり
一、太平洋沿岸諸国代表実業家大会の件
 右に対する外務省の意嚮を通商局長にたゞし、尚ほ渋沢子爵個人の資格にて日本経済聯盟会・日本貿易協会及日本商工会議所の意見を求め、此等を参考としてリンチ氏及フアリントン氏に回答を発する事、但此種会合には可成代員を派したきものなるに付此会にも適当の人を出したし、猶相当有力なる向に奮発を請ひたきものなりとの意見出で一同賛意を表せり、尚ほ又一方リンチ氏及フアリントン氏に対して、全然別箇の企図なるや或は桑港とホノルヽとの間に相互の了解を得しものなるやを質問したしとの意見出でたるも、書状往復の為め余りに遷延すべしとの反対あり、結局照会せざることゝなりたり
一、移民法修正状勢研究の件
 心ある米国人が移民法修正の必要を認め居ることは疑なき所にして渋沢子爵に対し之を明言し、日本人に対し恐縮せりと言ふは決して辞令のみにあらず衷心よりの声なり、此点より見て同法修正の気運動き居ると断じて差支なし、唯日本の方より積極的に出るときは必ず結果面白からず、米国の事は米国に於て始末すべし、他よりの干渉は迷惑なりとの感強き為めなり、此点より見て本件は如何かと思はるとの意見出で一同大体賛同せり
一、加州大学に日本講座設置の件
 スミス氏来状の趣旨は、加州大学日本講座担任教授久能氏適任にあらざるに付、他の有為の人を以て代へたく、其為め約四十万円の基金を醵出せられたしと云ふに在るが
 (イ)資金の点は目下の不況に鑑み到底其醵集は不可能なるべく、若し是非出金する必要あれば基金とせず、毎年の費用を都度送金する外なかるべし
 (ロ)久能氏の適否に付ては調査する必要ありと思はるゝに付、主として通商局長の意見をきくこととしたし
 (ハ)加州大学に寄附金をなすことゝならば加州の他の大学の関係も考慮する必要ありて、相当大なる問題として考ふる必要あるへし
等の意見あり、結局先以て通商局長に引合ふことゝなりたり
                        以上