デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

8章 軍事関係諸事業
1節 第一次世界大戦関係
1款 対独開戦
■綱文

第48巻 p.489-490(DK480142k) ページ画像

大正3年8月19日(1914年)

是日、東京・大阪・京都・横浜・神戸及ビ名古屋市ノ実業家、総理大臣大隈重信及ビ内閣諸大臣ヲ築地精養軒ニ招待シテ晩餐会ヲ開ク。栄一出席シテ、主人側ヲ代表シテ挨拶ヲ述ブ。


■資料

東京商業会議所月報 第七巻・第八号大正三年八月 ○実業家晩餐会(DK480142k-0001)
第48巻 p.489 ページ画像

東京商業会議所月報 第七巻・第八号大正三年八月
    ○実業家晩餐会
時局問題に関し過般大隈首相官邸に招待されたる東京・大阪・京都・横浜・神戸・名古屋、六大市都の実業家は、十九日午後六時大隈首相以下各大臣及各省次官並に仙石総裁・江木翰長・伊沢警視総監・安河内警察局長等を築地精養軒に招待して晩餐会を催したり、出席者来賓側二十二名、主人側東京五十七名、京都七名、大阪十六名、横浜九名、神戸四名、名古屋五名、計九十八名、合計百十名、七時食堂を開きデザートコースに入るや、渋沢男の挨拶に次で大隈首相及び若槻蔵相の演説(大要は別記)あり、之に対し更に渋沢男の謝辞あり、歓談を重ねて午後十時過ぎ散会したり
      渋沢男の挨拶○後掲ニツキ略ス


東京日日新聞 第一三五七〇号大正三年八月二十一日 実業家返礼招待会 首相・蔵相の演説(DK480142k-0002)
第48巻 p.489-490 ページ画像

東京日日新聞 第一三五七〇号大正三年八月二十一日
    実業家返礼招待会    首相・蔵相の演説
時局問題に関し曩に首相官邸に招待を受けたる東京及大阪・京都・名古屋・神戸・横浜の五大都市実業家は聯合して、十九日午後六時より築地精養軒に首相以下各省大臣・次官・高橋法制局長官・江木内閣翰長・仙石鉄道院総裁・伊沢警視総監を招待し返礼を兼ねたる懇話会を催したるが、七時廿分先づ食堂を開き、渋沢男主人側を代表して挨拶を為し、大隈首相・若槻蔵相来賓側を代表して左の演説をなし、後宴を撤して懇談数刻十時散会せり、実業家側の出席者左の如し
 安田善三郎・三村君平・高橋豊吉・根津嘉一郎・浅野総一郎・服部金太郎・中野武営・藤山雷太・大倉喜八郎・和田豊治・早川千吉郎・前川太兵衛《(前川太郎兵衛)》・高田慎蔵・大橋新太郎・村井吉兵衛・加藤正義・近藤廉平・池田謙三・福井菊三郎・豊川良平・佐々木勇之助・志村源太郎・井上準之助・志立鉄次郎・馬越恭平・渋沢栄一・柿沼谷蔵・小野金六・朝吹英二(以上東京)田中源太郎・飯田新七・浜岡光哲・川島甚兵衛・湯浅七左衛門・大村彦太郎(以上京都)平賀義美・稲畑勝太郎・新田長次郎・小山健三・土居通夫・今西林三郎・中橋徳
 - 第48巻 p.490 -ページ画像 
五郎・片岡直温・岡橋治助・鈴木馬左也・広海二三郎・高倉藤平・広岡恵三・板野兼通・尼崎伊三郎(以上大阪)大谷嘉兵衛・小野光景・来栖壮兵衛・若尾幾造・渡辺福三郎・茂木惣兵衛・木村利右衛門・増田増蔵・安部幸兵衛・中村房次郎(以上横浜)川崎芳太郎・岸本豊太郎・小寺謙吉(以上神戸)神野金之助・鈴木惣兵衛・伊藤次郎左衛門・滝定助・上遠野富之助・岡谷惣助・伊藤由太郎(以上名古屋)
      渋沢男爵の演説○後掲ニツキ略ス


竜門雑誌 第三一六号・第六七―六八頁大正三年九月 ○挙国一致の先駆(DK480142k-0003)
第48巻 p.490 ページ画像

竜門雑誌 第三一六号・第六七―六八頁大正三年九月
○挙国一致の先駆 東京外五大都市の実業家諸氏は八月十九日午後六時より築地精養軒に大隈首相以下各大臣次官を招待して晩餐会を開きたり、席上青淵先生は主人側を代表して挨拶を兼ね、左の如き一場の演説を為されたりと云ふ。
 吾々は過日首相官邸に於て懇切なる対時局策を拝聴したり、今や容易ならざる事件は目下何れの所に発生するやを期し難きも、吾々は飽く迄も平和を望んで止まず、然し時局の前途は如何に展開せらるるやに就ては、吾々は内閣員諸公と同様憂慮しつゝあるを以て、此際一言を述べ、諸公の参考に資せん、吾邦が東洋に於て禍心ありと云ふが如きことは絶対に之れなきは、総理及外務大臣の述べられたる如くなるが、同盟国に対する信義を尽す上より、数日中に或は如何なる事件発生するやも知るべからず、其場合に於ては吾等は過去十年前の如く、挙国一致事に当るを希望す、今回の事変に際し、英国の行動を見るに平時保守・改進両党互に相鬩ぎ合ふも、一朝国家の大事となるや従来の行動を一変し過去の政争を相忘れたるが如く一致協力の態度に出でたるは、アングロサクソン人種の特質を発揮したるものと謂ふべきなり、吾々日本国民も亦英国民の態度に鑑み愈々砲火相見ゆる場合となれば、飽く迄真理に服従して之を貫徹するは我が大和民族の本性也、吾々は今や国家の大事件に遭遇せり、宜しく挙国一致之を解決するに努力せざるべからず。